午前8時
「あ……」
食堂でバッタリとM4A1とAN-94は出くわす。
「どうしたの?」
表情は変わらないようだが、昨日の件で不快感を抱えているのは何となくわかった。
「昨日のことを謝りたくて……」
「もういいわ。次は気をつけてください」
次は気をつけてね。
今まで気にしなくていい、と言ってくれたM4A1が次は気をつけろ、と言った。
しかも敬語で。そんなの、半分見捨てられたような物だ。
それだけの迷惑を私はこのグリフィンにかけてしまったのは誰の目にも明らかだった。
AN-94は食事にありつく。
味気ないグリフィンの食事がいつもより味気ない物に変わっていた。
軍用人形のAN-94がここまで周りに迷惑をかけるなんて……
「AK-12なら、どうしたんだろうか……」
なんて、今ここにいないAK-12の事を黙々と朝食を食べながら、AN-94は考えていた。
────
そろそろ、今日の研修が始まる。
今日は鉄血工造の報告があったルートの軽いパトロールはずだ。
集合場所に着く。
そこでは、先にAR小隊が到着しており、何か話しているらしい。
「でも、気になることがあるよねー。何でスレイヴドールがあの場所にやって来たんだろ?」
「大方カルテルの尻拭いじゃないのかぁ?アイツらも知ってたようなんだろ?」
「だとしなくても、カルテルの人間まで殺すことに説明が付かないわよ」
「カルテルの連中がマトモな考えで動くかよ」
「それはそうだけどさー」
AR小隊は昨日の件で、気になったことを話していたらしい。
あの後、麻薬の病人はどうなったなど、
なぜ、スレイブドールがやって来たのか、
おととい遭遇したクレーマーはなんで指揮官のユーリを知ってたとか、
様々な憶測が出ては潰されていく、そんなたわいない世間話だった。
「おはよう……」
AN-94が恐る恐る挨拶をするとAR小隊はいつも通り挨拶する。
「よっ、昨日は大胆だったな」
「やめてくれ……」
M16A1に思い出したくもない痴態を掘り起こされてAN-94は意図せず鬱陶しげない態度を取ってしまった。
「まぁ、喧嘩にならずに済んだのはよかったんじゃない?」
「あー……前のクメレンタは指揮官だけじゃなくて、人形も最悪だったわね。酒を飲んだら乱闘なんて日常茶飯事、酒を飲まないガキを連れ込んで度数高いやつ飲ませて吐かせたり、銃をぶっ放したり……」
クメレンタ?聞いたことのない指揮官だ。
AN-94が不思議に思うと、STAR-15がそれに気がついたらしい。
「前の……そうね。ユーリ指揮官より前のAR小隊の指揮官よ」
「最低なヤツだよ!!」M4SOPMODⅡもベーッ!と舌を出して避難する。
「私達を道具と見てるのは念の為に確認したら、面倒かけるなー!って怒鳴るし、やっぱり間違ってたら"お前らのせいだろー!"って怒るんだよ!」
「その……何というか、よくクビにならないな……」
「隠したり、擦り付けるのは上手いからね!」
AR小隊は前の指揮官にはかなり苦労させられたらしい。
うんうんと、頷く彼女達からその苦労が感じ取られる。
「AN-94と何かあったの?アイツ、あなたに負い目を感じてるようだけど」
「別に……会話と言っても、あの子に謝られたから"次は気をつけて"と話しただけよ」
「……あなた、そんなこと言ったの?」
STAR-15は本当に怒っているのか?と思ったらしい。
当のM4A1は全く怒るような心当たりはない……ないが……
「……お店に迷惑かけたんだから次はそうしないようにするのが常識でしょ?」
「でも、あなたはそういう時は"気にしなくていい"なんて、甘っちょろい言葉使ってたはずよ"次は気をつけてね"なんて、言わなかった」
「そうだっけ?」なんて、表情をM4A1は浮かべている。
自覚はなかっんだろう。ちょっと注意したつもりが、強い言葉を使ってしまったらしい。
自分では気づかない変化、というのは他人に見てもらわないとわからない物である。
「……わかった、後であの子にフォローしておくわ」
「そうしなさい。アンタの1番の長所を自分で潰したらオシマイよ」
午前10時
ブリーフィングルームにAR小隊の他には別の新人である指揮官に配属されている、FN小隊のFN FAL、FN Five-Seven、FN FNC FN 49がいた、まずユーリが入室する、入ってきた指揮官に一同は敬礼をする。
「楽にしていい」
指揮官が敬礼を解くようにいう。
私達は敬礼を説いた、私は思わず指揮官から晒してしまう。
「さて、アイツは……」
指揮官が足りない人員の状況を確認しようとしたタイミングでバタンと扉が勢いよく開かれる。
「間に合ったー!!ユーリ先輩!俺、セーフですよね?!」
「ギリギリね…緊急時はギリギリセーフなんてないんだから時間には余裕を持ってきて欲しいな?リト・ジェルフスキー指揮官...さて、ブリーフィングを始めよう。」
FN小隊の新任指揮官であるリトが遅刻ギリギリのタイミングでブリーフィングルームに入ってくる。
AN-94はこの新人は時間の大切さを理解してないらしいと思った。
先輩であり上司のAR小隊のユーリはまたか、とため息をつきブリーフィングを始める。
「さて、今回の仕事の内容を説明する。4日前に偵察ドローンで確認したところ、鉄血部隊が後方の舞台と合流して攻勢を仕掛けてきた為、迎撃任務をする事となった」
ウィンドウから送られてきた画像を見る数は後方の部隊と合わせると3個小隊程だろう。
2体のマンティコアが厄介だ。
「そんな話あった?」
「……いや、初耳だ」
M16A1とSTAR-15の話によるとこれは初耳らしい、違和感を感じる。
「AR小隊は前方に扇状に展開、広範囲からのグレネードランチャーの砲撃で削った後、通常戦闘で鉄血の部隊を迎え撃つ。なお、今回は森林地帯での複雑な近いでの戦闘のため、敵との距離は常に変化する。移動時の射線交錯、及び移動により、援護が受けられ常に移動する際の連絡は怠らないこと、いいね?」
「了解」
AR小隊とAN-94がユーリの命令を了解する。
「俺たちFN小隊は後方担当で防衛網を抜けた鉄血部隊を狩る、AR小隊には新入りが増えているがそれでも人数不足は否めないから、必ず出番があるだろう」
「了解」
FN小隊がリト指揮官の命令を受諾する。
「指揮官のコールサインは新しく私がラプターワン、リト指揮官がラプターツーにする。私は前方の基地からレーダー管制の指揮しつつ、そちらの要請に応じてロケットランチャーと対物ライフルで支援する。作戦の質問は……よし、ないな。1時間後に出発する、それでは解散!!」
ユーリ指揮官の合図で人形達が準備の為にブリーフィングルームを後にする。
「先輩!!少しいいですか?」
「なんだい?」
人形達の前で話せない事なのだろうか?
部屋を出ようとしたユーリにリトが呼び止める。
「今回の作戦なんで先輩が前衛に?あの程度に火力支援はいらないでしょう?」
「君の二次面接で戦闘訓練をしたね。ピンチの際に脇目を振らずにFALを助けに行ったのは覚えてる?」
「はい!仲間を守るのが俺の使命です!!」
「考えは素晴らしい。だがハッキリ言って、君はスキルが伴っていない。結局のところFALを助けるどころか逆に助けられていたじゃないか」
「……」
ユーリにマッチング時の失敗を指摘される。
軍人の時ならもっとキツい言葉を使って損害を自覚させるつもりだったが……ここは軍隊じゃない。
叱責もそれに見合ったものにするべきだ。
「君のやりたい事をできるようにするためにもまずは先輩の戦いを見て学ぶんだ、いいね?あと、私が死んだら引き継ぎを頼むつもりだからそのつもりで」
「それ、どう……いう?」
「その時になったらわかるよ。そうなりたくないなら、ちゃんと作戦の準備をしろ、いいね?」
リトに有無を言わせずユーリはくるりと背を向けブリーフィングルームを後にした。
12時になる。
STAR-15が作戦地域の配置について敵をスコープで捉えた。
「配置についたわ、AN-94?そっちの状況は?」
<STAR-15。こっちも大丈夫、ポイントCで待ち伏せの準備ができた>
<こちらM4SOPMODⅡ。変わらず、ポイントAでM16お姉ちゃんと一緒にいるよ>
<それと爆弾も設置完了だ。所定位置に鉄血がきたらドカンだ>
「AR-15からラプターワン、大体の準備が完了しました。鉄血の様子を教えて下さい」
STAR-15はAR小隊達が、各々の位置に配置された事をユーリに報告する。
「こちらラプターワン。確認した。監視カメラからのリンク映像を見る限り鉄血は進行の速度を速めている、およそ15分後に会敵。準備を急いだ方がいい」
<このタイミングでか?鉄血の奴ら、なんか焦っているのか?>
「それは鉄血に聞いて欲しい、だが警戒を怠らない方がいいのに変わりはないよ」
AR小隊との通信が終わる。
「防陣陣形ですか、隊長の十八番ですね」
「アキ」
ユーリの背後から、幽霊のように静かな動きでアキは現れた。
懐かしいものを見るようにAR小隊の陣形をみた。
「アキ、昨日の情報は助かった」
「運が良かったんですよ。あの方に頼まれたものを探していた時に偶然見つけたんです」
アキは録音を再生する。
スレイヴ・モジュールを開発した、"オヴニル・フレーヴェン"と保安局のエージェントが会合した時の音声記録だった。
<本当にお前のモジュールはバレないんだろうな?>
<おや、私を疑っているのかな?私の愛の作品を>
<確認しただけだ。貴様のモジュールは敵味方識別の為に事前に生体情報を認識させなければならない、せっかくグリフィンで協力者も得られたのにバレでもしたら……貴様も終わりだ、甥は本気で貴様を消しにかかるだろう>
<安心するといい。その為に特別製の自爆機能がある……貴様らが殺し損ねたヴェルークトに前のように殺し返させた足がつく心配は、ない>
「誰かから、アナタの情報が漏れてます……漏らしたのはAN-94でしょうか?彼女は保安局からの出向ですが……」
「いや……どうかな?来た時から疑ってたけど、あの子一度も電話しないんだよ……メールも」
しないのだ。AN-94は連絡を。
ある裏ワザで人形たちの検索履歴を調べたことがある。
子供の正しい距離間を検索したM4SOPMODⅡや高い酒を安く再現する方法を検索するM16A1や、18禁の動画見ようとして詐欺サイトに繋がってしまったSTAR-15や、デートで絶対に成功する方法を検索しているのは見つかったが……AN-94は仕事の時以外は、一切端末にアクセスしていない。
<こちらSTAR-15!ラプターワン、鉄血の先遣隊です!……敵の編成は────え、嘘!?敵にスレイヴドールが混ざっています!>
来たか。AN-94か、それとも別の誰かはわからない。
しかし、ここの作戦を漏らされているのは間違いなかった。
<先制で狙撃しますか?>
「M4達がまだ射程外だ、もう少し引きつけてから攻撃をするんだ」
<了解>
「叔父さん……」
前々から、自分の叔父は人でなしとは思っていた。
それでも、それなりの距離感を維持しようと思ったのに今、こうして牙を剥くやつに手を貸している。
半分失望した、だが、もう半分は感謝している。
こうして自分たちの動きを見てから、ご丁寧にスレイヴモジュールをつけてこっちに向かってきてくれたんだから。
「作戦が漏れているとはいえ、いいように食いついてくれましたね。"エサ"の出来がいいからでしょうか?」
アキと自分がエサの立場である事を知りながら、それを出来がいいと表現する。
自己肯定感の強い証だ。
「ああ。それも、高級なのが2つもあるんだからな」
なら、その表現に乗っからせてもらうとしよう。
AR-15はスコープで敵の接近を待つ。
ドラグーンタイプの鉄血が4体1組グループが3組とサブマシンガンを持った鉄血が3体1組グループが同じく3組恐らく先遣隊だろう。
そのうち、1割ほどにスレイブドールが混じっている。
「まだなの……!」
STAR-15がスコープに一番後ろにいるサブマシンガンを持つ鉄血のグループに照準を合わせる、今は無風だスコープの上下左右を調節しなくても、真っ直ぐサイトの真ん中を通るだろう。
<しかし、あんなに目立つのに気づかないものなのね……>
M4A1が敵に狙いをつけながら、たわいない事を言った。
たから、私は報告したんだろう。
<AN-94はどう思う?>
<私?えーっと……>
M4A1は話を振ることでAN-94にコミュニケーションを取らせようとしているらしい。
この様子を見るに、フォローはちゃんと入れたようだ。
<あと少し>
<もう少し...>
M4A1とAN-94が鉄血に光学照準機に照準を合わている。
後少しで、10mで射程内だ。
鉄血のドラグーンがガシャ...ガシャ...と音を立てながらこちらに近づいてくる距離は後50メートルを切っている。鉄血の1人が爆弾を設置した車の裏を覗き込もうとした...
<餌に食いついた、撃つんだAR-15>
「了解、攻撃します」
指揮官の合図で車を確認しようした鉄血の後ろの敵を狙撃する。
弾道は真っ直ぐ飛び、鉄血の額を貫き弾丸に押し倒される様に倒れこむ。
「ス、スナイ────」
車を調べていた鉄血とその狙撃された近くにいた鉄血が周りに知らせようとする前にその2人も続け様に狙撃素早く倒したおかげで周りにはまだ気付かれていない。
ドラグーンが随伴の部隊が来ない不審がったタイミングで
<いくわよ!>
<了解>
M4A1とAN-94がフルオートで掃射を始める。
ドラグーンの機動力も多数の銃撃で何が起きたかわからないまま一掃される。
<後続のお出ましだ。STAR-15、離れるんだ>
銃撃に気づいた鉄血の本体がこちらに集まってくる。
「了解!……マンティコアが来た!範囲外まで逃げる!」
数は指揮官の予想通り敵の数は80〜90ぐらいいた。おまけにマンティコアを2機前衛に配置している。
この装甲兵器相手に自分の5.56ミリや300ブラックアウトで立ち向かうのは無茶があると言うものだ。
後方にいるM4A1とAN-94の援護射撃を受けながら、全力で範囲外まで逃げる。
「うわっ!?近っ……!!」
STAR-15の3センチ隣に生えていた木にレーザーが着弾し、木屑が口に入る。
吐き出しそうな気持ちを抑えて、STAR-15は全速力で走る。
「範囲外まで離れた。爆破していいわよ!────やって!!」
十分離れたタイミングでSTAR-15がM16A1に「到着した」と連絡する。
<よしM16、爆破しろ>
<了解、IED起爆>
M16A1が旧式の携帯電話を鳴らす鉄血の行く手を阻む様に設置された車に仕掛けられた、多数のIED(即席爆弾装置)を敵が一番密集しているところだけ起爆させる。
ドン!、ドン!、ドン!と車両が立て続けにIEDが爆発して鉄血が爆発に巻き込まれ、車両が持ち上がる。
その車両は運良く生き残っていた鉄血の兵隊を無慈悲にプレスしていく。
突然の爆発で焦った鉄血兵達はマンティコアを盾にして前進する。
<指揮官!!>
「あぁ…目標補足!!これでも喰らえ!!」
STAR-15が銃に取り付けたレーザーの照射を確認し、照射された位置に向かってマンティコアを前進させたタイミングで司令基地の屋上からFGM-148…通称「ジャベリン」を発射。
ミサイルが暫く加速した後急上昇そのままマンティコアの頭上にミサイルが直撃マンティコアとそれを盾にしていた鉄血兵が粉々に吹き飛んだ。
ジャベリンはアキが用意してくれたものだ。
────
───
「────クッ…!!」
「ゥウ……!!」
ジャベリンの着弾による強烈な爆風と吹き飛ばされる瓦礫、砂利にに思わず思わず身を隠してしまうM4A1とAN-94。
「大丈夫?今のは強烈だったわね」
「ああ」
M4A1の手を取り、AN-94は立ち上がる。
<そのまま全員散開して、後退!!>
予定通りマンティコアを一体倒されて鉄血兵が動揺している間に、M4A1とAN-94はSTAR-15をカバーをしながら交代。
予定していた目標ポイントに下がる。
追いかけようドラグーンが猛スピードで追いかけてくる……が、後退を済ませたSTAR-15が援護射撃をして食い止める。
「あら、硬そうじゃない。コイツの前には関係ないけど!」
アキが"KVP VKS"対物ライフルで装甲を持った人形のど真ん中に巨大な風穴を開けていく。
12.7×55mmは強力だ。直撃ではない、かすり傷ですら衝撃で致命傷になる。その分、打ち出された銃弾の反動は強烈だがバイポッドを取り付けた射撃ならその反動を大きく抑えられる。
立ったままなら反動で敵を見失いそうになる連続射撃も見失わないで次々と追手を始末できるというものだ。
<M16だ。ラプターワン!鉄血の奴ら、また増援を呼びやがった!かなりくる!>
<また増援を?仕方ない!残った爆弾を纏めて起爆しろ!!>
<了解!!明日から地道な後方支援作業を頑張んないとな!>
再度M16A1が携帯電話を鳴らす。
今度は破片を散らす爆発だけではなく、燃料の代わりに洗剤を混ぜた爆弾を起動させ、炎を広げた爆発も発生した炎は次々に燃え移り20以上の鉄血を焼き尽くす。
<またマンティコアが来ました!下がるにも、マンティコアをなんとかしないと……ラプターワン、お願いします!>
<了解!おかわりだ!!>
後方に控えていた2体目がM4達を追撃しようとする。
だが、先にアキがVKSで足を抉り体制を崩して足を止めた後、泣き面に蜂と言わんばかりに、M4A1がレーザー照射したマンティコアに向かって、2発目のFGM-148を2体目のマンティコアに食らわせ、バラバラに粉砕する。
「アッハッハ!!どおだぁっ!!」
SOPMODⅡの持つ銃のアンダーバレルに装着された、M203 グレネードランチャーから発射される榴弾が鉄血のシールド部隊を玉砕する。
2体目のマンティコアを破壊され鉄血の部隊は恐慌状態に陥り、統率を失なったのか、叫びながら突撃し始める。
数だけいてもしっかりフォーメーションやカバーをしなければ意味はない。既に待ち伏せの攻撃位置についたAR小隊は有利な位置をキープしながら銃撃し完全に鴨撃ち状態であった。
<FN小隊!そっちに鉄血がきたわよ!>
「わかった。あ、キタキタ……!」
「自然破壊の許可は出ている!派手に歓迎してあげなさい!」
何体かの鉄血が防衛網をすり抜けたが予め用意しておいたそれはFN小隊が待ち伏せし対応した。
FN小隊にもFALというグレネードランチャーをまた人形がいた為、同じようにすり潰されていく。
「ほらほら!こんな険しい森の中じゃお得意の集団戦が仇になるねぇ!」
「す、すみません!こんな弱いものイジメみたいですよね…!」
爆破範囲から逃げ出せても、Five-seveNの強化により連射速度が向上したFN49とFNCの追撃で逃げ切ることはかなわかった。
今ので一気にこちら側の優勢になった。
「……あれだけやられたのに、まだ来るの?また場所を変えないと……AN-94、援護をできそう?」
「問題ない」
このままで物量に押されてしまう事を考慮して適切な位置にする事にした。
「うん?何かしら?……しまった?!みんな!!」
移動している時にM4A1はあるものを見つけて、急いで連絡した。
<何だ?こっちも忙し────>
「防衛網の外側から別の部隊が来てます!……スレイブドールです!」
スレイブドール達は、鉄血に扮して回り込んでいた。
<無意味に見えた突撃の理由はこれか?普通の奴らを縦にさせてそのまま外側に行くつもりか?────おい!アレは……ハンターか?>
<こちら、STAR-15こっちもハンター見つけた!!しかも、スレイブモジュールを付けてる!M16、SOPⅡ!!気をつけて!!奴ら、私達の側面から来るつもりよ!!>
────
───
「ようやくおでましか」
「フッ、待ちくたびれちゃったわねぇ」
そう言ってユーリはAK-102を、アキはAKMSUを再現したショートカービンAKを持ち出し司令室を出る。
目の前には鉄血のハイエンドモデル"エクスキューショナー"が高周波ブレードを引きずりながら司令室に近づいていた。
「会いたかった...!会いたかったぞォ!!!ユーリ・フレエエェヴェエエエエエン!!!」
憤怒と歓喜の表情を浮かべたエクスキューショナーが高周波ブレードを振り上げる。
「てめえは許せねぇ…オレ様をぶっ殺して……ハンターを血祭りにあげたお前を……」
血眼になった瞳で司令室から現れるユーリを睨むエクスキューショナーを"誰だこいつ?"という表情でアキは見ている。
「成る程、復讐か…仲間思いじゃないか、部下を上手く使うところも指揮をする身としては中々のものだと思うよ」
ユーリは愛銃のAK-102を携えエクスキューショナーを見る。
「あぁアレか、アレはたまたまだ、お前達がドンパチやってるところの基地にお前が見えたから、グリフィンの人形はハンターに任せて俺様はアンタに一直線だ……」
そんな事より、とエクスキューショナーは高周波ブレードの剣先をユーリに向ける。
「本当に何にもわかんないバカどもの集まりなのね。鉄血てさ!!」
アキの態度も最もだ。
スレイブドールがそうでない人形を盾にしてるのなら、ハンターもエクスキューショナーを囮にしているのは考えられる。
「テメェに殺されたお陰で俺様のプライドがズタボロだ、その上ハンターまで蜂の巣にされたんなら、尚更黙ってられねェ、今日ココで!!」
「……来るぞ!」
「はい!」
高周波ブレードを地面に突き刺して────
「テメェらを殺す!!」
そのまま身体を勢いよく捻り高周波ブレードを切り上げる。
ブレードからは垂れる衝撃波がこちらをめがけて一直線に飛ぶ。
「……!」
ユーリとアキは素早く体を左にステップさせて高周波ブレードから引き起こされる、斬撃を回避する。
巻き上げられた砂利や砂がユーリに勢いよくかかる。
「大振り?最初からカンカンなのね、コイツ」
「ウオオオオオオッッ!!」
エクスキューショナーはユーリに向けて、イノシシのように突進してあっという間に距離を詰める。
「死ネヤァァァ!!!」
前と同じだ。
後ろに下がってもそのまま切り裂かれる、そう判断ユーリはエクスキューショナーに向けて接近。
「アキ!」
「はい!!」
ユーリに意識を向け、高周波ブレード勢いよく振り上げたタイミングでアキのAKの7.62ミリが脇腹を抉り、エクスキューショナーの体幹を崩す。
「隊長!!」
「────喰らえ!!」
よろめいた隙をつき、中段回し蹴りをエクスキューショナーの銃弾が抉った脇腹目掛けて、体重を思い切り乗せて叩き込む。
「────ゲッ!?ガッ…!!」
蹴り飛ばれたエクスキューショナーは身体をくの字に勢いよく後ろに飛ぶ。
その隙にユーリが後ろに距離を取りながら、AK-102の5.56ミリ弾をアキも7.62ミリ弾を浴びせる。
「くそぉ!!なっ……舐め、るなッ!?」
着地を狙った射撃を着地する前に高周波ブレード振り回し、弾を切り裂いて防ぐが完全には防ぎ切れず肩から血を流す。
「……仕留めきれませんでしたね。コレが続くとちょっとマズそうですね。隊長、どうします?」
アキのいう通り、不味いなとユーリは思う。
このエクスキューショナー、想定よりも立ち直りが早い。
一度撃破した時とは違い、遊びで殺そうとはせずに本気で殺そうとしているのが伺える。
「ブッ殺す……!」
エクスキューショナーはホルスターからサイドアームの拳銃を取り出した。近接戦と格闘戦を同時に行う気だ。
「ケリをつける気だな」
「隊長!今度は私が!!」
周囲に緊張が走る。
今度はアキが前に出る。
「コロぉおおおす!!!」
エクスキューショナーはアキにも殺意を向けるようになったらしい、唸り声も一段と大きくなる。
「喰らえっ!」
アキが銃撃を入れる。今度の銃撃は5.56とは違う7.62だ。
5.56より比較的破壊力のある弾丸にエクスキューショナ-は一旦動きを止めてしまう。
「よし!ここだ」
その止まった瞬間を逃さず、ユーリがAK-102から5.56弾を発射する。
銃弾はブレードを守れていない、エクスキューショナ-の拳銃を弾き飛ばし、続いて左胸も撃ち抜いた。
「がはあっ!!??────このおッ!?クソがああっ!?」
エクスキューショナ-は撃たれた衝撃でのけ反りながら、後ろに下がった。
「てめえら、調子乗ってんじゃねえぞ!ぶっころす……殺してやるっ!!」
なんども攻撃をキャンセルさせられても、エクスキューショナ-の士気は全く削がれず、むしろどんどん強くなっていく。
「しつこい女だ」
「”しつこいガラクタ”ですよ。しかし、諦めの悪いことこの上ないわね……また来ますよ。次はどっちがやります?」
────
───
「M4、ここで合ってるか?」
「ええ!あと1分もしないで、ハンターの信号がここを通るわ」
ユーリとアキがエクスキューショナ-と先頭に入った頃、AN-94とM4A1はハンター達を迎え打つ為に陣地を構えていた。
レーダーには確かにハンターが出す、特有の信号の波長がM4A1たちに近づいている。
「……鉄血のエリートか」
AN-94は緊張しているようだ。
乏しい表情からでも、その機敏はうかがえる。
「大丈夫よ。私は一度勝ったことあるし、あなたより強くないわ」
「だが、今回はそれよりもさらに強くなった、スレイヴドールをなんだろう?」
朝の気まずさは何処へ行ったのか、M4A1はAN-94を励まし、AN-94は初めて弱音染みたことを話した。
「実はね……ここだけの話、スレイヴドールを付けた奴にも勝ったことあるのよ」
「……なんだと?」
「そもそも、スレイヴモジュールやスレイヴドールを見つけたのは私とユーリだしね」
M4A1が唇に人差し指を立てながら、衝撃の事実を話した。
オフレコにしてほしいことは伝わったし、それほどAN-94を信頼しているということなんだろう。
「分かった。信頼しよう、M4A1」
「ありがとう。……そろそろ来るわ」
もう少しで、自分たちの視界にハンターが現れるころだ。
AN-94は銃のグリップを強く握りなおす。
姿が見えてくる……しかし、AN-94の前に現れたのは……
「しまった!?」
「マズいわ!騙された!」
M4A1達の目の前に現れたのは、ハンターではなく。
ハンターの信号を出すための機材を背負っていた、鉄血のスレイヴドールだった。
「おい待て──?──なんで、オレを」
「…シネ」
「ハンター、お前────」
それは唐突な事だった。
いきなり増援で現れたハンターが拳銃を向けて、エクスキューショナーの頭を撃ち抜いた。
「……やっぱり来たか」
「さすが保安局。鉄血にもダミーデータのフィルタリングをしないなんて、誰も信じないのは徹底してる。私達も鉄血もまとめて始末する気でしょーね」
ハンターがこちらに銃を向ける。ユーリ達も始末するつもりだ。
アキの予想は当たったらしい。
「……」
ハンターが拳銃の引き金を引き、普通のハンターが使っているものよりもさらに出力のレーザーが発射される。
「────くっ!」
ユーリが撃たれるよりも早く、スモークグレネード”RGD-2”を投げつけレーザーによって爆散する。
爆散と当時に大量の白いスモークが散布され、ユーリとアキの姿を消し去る。
「……」
目標を見失ったハンターはあたり一面にレーザーをバラまいた。
レーザーは命中しなかったが、巻き上げられた破片が2人に相応の痛みを与えてくる。
「前より強いな!やはり、スレイヴモジュールの効果か!」
「隊長!いったん下がりましょう」
「よし!AR小隊と合流して、リトの所まで後退しよう」
「AN-94も連れて行くんですか!?」
AN-94は保安局の人形、アキが黄色い声を上げるのは当然だった。
おそらくAN-94もAR小隊についていく形で合流するだろう。
もし、AN-94が今回の作戦を共有しているに違いない。
「こちらラプターワン!こっちの拠点が鉄血のエリートに食い込まれた!リトの所まで後退する!」
<M4SOPMODⅡ、了解!私が殿になるね!出来るだけ食い止めてから指揮官と合流するよ!>
<こちらM4A1!ハンターの信号を発見!今度こそ見つけたわ!>
<M4A1、先に行って回り込んで!出来るだけ奴の動きを抑える!>
「AN-94がハンターを食い止めようとしている……?アイツは部外者なのか?」
「本当にそうだったらいいけど……ですよね?」
ああ、とユーリは頷いた。
AN-94が逃がした。と嘘をついて見逃す可能性は十分ある。
「待て!」
ユーリたちの考えなど知ることもなく、AN-94はハンターに向けて決死の妨害を試みている。
何発撃っても、相手の動きは止まる兆しを見せない、そもそもこっちの5.45ミリが当たっているのかすらも全く分からない。
それだけ、すばしっこいのだあのハンターという鉄血エリートは。
「くっ」
ハンターの反撃がAN-94の膝を掠める。
怒りを覚えながら、5.45ミリで反撃する。
相手がよろめいた後、またユーリらを追いかけだした。どうやら、こんどは当たってくれたようだ。
M4A1……なにが一度勝ったことある相手だ!ただ、お前が化け物染みただけじゃないか!と大声で愚痴を上げそうになっていた。
しかし、そんな大声なんて上げる余裕なんてものはなく、役割を果たすだけで精一杯だった。
「できればここでお前を破壊できれば……AR小隊に手間は取らせなくてすむんだが……!」
如何せん敵が強いというか、まったくこっちの攻撃が当たらない。
まるで、AN-94というこちらの動きが完全に読まれている。
偶然と思ったAN-94の疑念が徐々に確信に変わっていった。
<AN-94!M16姉さんたちは先に合流地点に着いて、ラプターワンを待ってる!そっちの調子は?>
「ダメだ!ハンターをどうにか妨害しているが、こっちの動きが読まれているのか、なかなか攻撃が決まらない!M4A1、よくこいつを倒せたな!?」
<妙ね……確かにハンターは敵を分析して追い立てる人形だけど、そんなにすぐ読まれるものかしら?私がハンターと戦って捕まったときは2時間した後にパターンを読んでたわよ。出会って、10分も経ってないのにそこまで読み切ることなんてできるのかしら?>
STAR-15は褒められることではないが、ハンターと戦って捕まったことがある人形だ。
経験則から、違和感を感じている。
<とにかく迎え撃つしかねえわな。M4、後どれくらいで合流できる?>
<3分もかかりません、姉さんたちは今のうちに守りを固める準備を>
<おう。そうしとくよ>
M16達は、待ち伏せの戦いのスタイルに変更するらしい。
スレイヴドールに鉄血が盾にされた上、エリート人形の片割れもスレイヴドールのハンターに不意打ちして残骸になっている。
状況が有利なのは火を見るよりも明らかだ。
撤退もしないで鉄血が突撃するなら、万全で強固な陣地を敷いて遠距離から一方的に屠るのは被害が最もでない、安全でいい選択だ。
「M4と合流するまで、役目を全うしよう」
流される水のように、仕事をこなしているAN-94も自分から役目に集中するようになった。
彼女自身は気づいていないが、ガラッと違う空気に触れたことでAN-94も自然と変化し始めていた。
3分間、互いに疾走しながらの銃撃戦が続いた。
レーザーが木の側面に当たり、弾かれる。
弾かれた、レーザーがAN-94の頬に当たる。
「ううっ……」
さすがに頬を撃たれるのはよくなった。
頬の人工皮膚の奥に隠されたメタルプレートが衝撃で内部に押し込まれて、AN-94の頭部にある視覚モジュールを揺らした。
レンズのブレみたいに視界がぐらつく、思わず片膝をついてしまった。
ハンターがユーリらの元に向かいながら、拳銃を向ける。
マズい、照準は胸元にあるコアモジュールだ。
普通のハンターの火力は知らないが。このスレイヴドールの火力なら絶対に胸を貫いてコアモジュールは完全破壊されて、AR小隊を知らないバックアップ状態に逆戻りだ。
照射感覚からして、もうすぐレーザーが飛んでくる。
散々な決闘だ。引き金が引かれて、胸を貫かれて、もう終わりか、そう思った。
しかし……
「くたばれ!この死にぞこない!」
ハンターの進行方向で待ち伏せしていたM4A1が現れて、5.56ミリをお見舞いする。
進行方向に来ることを予想していなかったのか、ハンターは4発弾丸を喰らってしまう。
今来たのか!?そう思って、時計を見なおすと……ちょうど3分目に針が進んでいた。
「……っ!」
自分の不利を悟ったのか、ハンターは迷うことなく撤退を選択してユーリたちの追跡を中断して森の奥深くに撤退していった。
「大丈夫!?」
「あ、ああ……助かった」
……助かった。これでM4A1に何度助けて貰った?
日常生活だけでなく、戦闘ですら助けて貰ってしまった。
民間の人形に助けて貰うことは、軍用人形にとって屈辱であるはずなのに……感謝の言葉すら口に足してしまっている。
「その前に傷を確認しないと────っ……痛い」
レーザーが命中した顔を触ると、頬に穴が開いていた。
それは痛いだろう。
「顔に穴が空いてる。……鏡は見ない方がいいと思うわ」
「そう……」
相当酷い顔かもしれない、それに買ってもらったワンピースも泥だらけで、血だらけだ。
せっかく自分で選んだ服なのに……
「追い払ったんだし、私達もメンバーと合流しましょう」
「……了解」
M4A1の決定にAN-94はただ頷くことしかできなかった。
「M4が戻ってきたよー!!」
「こっちよ!」
AN-94とM4A1が合流に成功する。
ズタボロのAN-94を見て、AR小隊は戦いの激しさをFN小隊は転んだ時のかすり傷しかないM4と比較して頼りなさを感じていた。
「手ひどくやられたわね!何があったの!?」
「ハンターにいいように嬲られた……。スレイブモジュールをつけた人形は厄介だ、こっちの攻撃もほとんど読まれている」
「グリフィンの新しい脅威ね……でも、次は勝てるわよ。少し前に指揮官達もここにきたし、戦力差はこっちに有利になった」
「指揮官たち?」
M4A1は違和感を覚えた。
STAR-15達が先に交代し、指揮官、そしてM4A1とAN-94のグループでここに下がったはず。
指揮官は1人のグループのはずだ。
「またアナタ!?」
「こっちが言いたいわよ!?」
その"達"になる人物がアキだと知った瞬間、「またお前か!?」とM4A1は因縁に困惑してしまった。
「…で?セレセィンさんのお友達が今度はどのような理由で?」
「アタシもスレイブドールを追ってんのよ。コレはユーリ隊長にも許可もらってる」
「……隊長?」
誰のことだ?とM4A1は首を傾げる。
「ちょっと2人きりになれる?」
M4A1が頷いて、周りから目が届くが声が届かないくらいの距離まで離れた。
「私、昔は外務省でユーリ隊長と同じ部隊にいたのよ」
ということは、アキはユーリと同じE.L.I.D狩りをしていた人間なのか。
そして、AK-12が起こした事件の生き残り……。
「アナタもE.L.I.Dを倒していたんですか?」
「……ふーん、詳しいんだ。お前さ、何もん?」
そこまで話して、M4A1はゾッとした。
あの時の洋服店であった時と同じプレッシャー……それをさらに純粋に殺意に振り直した視線、ゾッとした。
次、下手なことを言ったら私の命がないことを理解してしまう。
「わ、私達はグリフィンの雇われです……ただ、指揮官の旧友というエゴールさんからあなた達の部隊の事を……」
「エゴールが?……たく!あのオッサン、元気だったなら私にも連絡くれりゃあいいのに!!」
言い方は粗暴になったが雰囲気が落ち着いた。
保安局ではないことをわかってくれたんだろう。
アキにもエゴールは信頼に足る人間であるらしい。
「じゃあ、私がここに来た理由も…この作戦をした理由もわかるんじゃないの?」
M4A1は誰にも聞かれないことを確認するために周囲を見回す。
M16達はこれからの守りに集中しているらしい。
聞かれる心配はなさそうだ。
「……保安局にユーリが狙われているんですか?」
「おー……人形にしては随分と察しがいいじゃない。て、ことは生まれつきかねぇ」
アキはユーリにも見せた写真をM4A1にも見せる。
「……殺人事件の写真ですか?これ?」
「そうよ。最近、人形絡みの変な事件が起きててね」
「変な事件?」
アキが見せたプロマイド写真には様々な死に方をしたことを示すチョーク跡を撮影した物が映っていた。
「ここんところ、ソ連の役人の死体が次々上がってるのよ。そして、どれも人形による他殺。なのに、忙しくしてるのは内務省だけで保安局はなーにんも動かない。同じ保安局の人間が死んでるのよ?」
確かに保安局が怪しいと思うのは無理もない。
グリフィンの職員が同じように立て続けに殺されたら、私たちも同じように疑う。
「死んだ連中には共通点があってね」
「共通点?」
「我らがクソッタレ新ソ連の問題を指摘する連中よ。それも、どれも本当のことを指摘する奴ら」
政権を疑うことは間違いだと、何度も何度も指導された。それでもコレは異常と分かる。新ソ連は問題点を放置したいのか?
自分の弱点を教えてくれる人間が殺されるのは、空いた穴を塞ぐのを放置するのと同じことだ。
「……」
「アンタはなんで?って、顔してるから答えるけど……アタシにもわからない。アタシだって確かめたくて方々の護衛を引き受けてるわけ」
セレセィンの人手不足を埋める形をしたのは、友人としての情だけではなく、本当に狙われるか?そして、誰に狙われるのかを確かめたかったらしい。
「セレセィンは襲われたし、ユーリ隊長も直で殴り込まれた。これで確信ができたわ。それには今回の改造されたスレイブドールが暗殺して回ってるんでしょーね」
確かに確実にいうことを聞いて死を恐れず、本来以上の性能を引き上げれた人形……そして、あのスラムで見せた自爆機能……。
暗殺には都合がいい。
「アキさん。ユーリ指揮官の叔父はスレイヴドールの開発に携わった事は聞いてます?」
「隊長から聞いてる。でも今更よ」
アキは叔父が犯人であることにコレと言って驚きはしてない。
「アイツは以前からやべー奴でね。効果がキチンと出るかわからないクスリをソ連中にばら撒いてソ連中大惨事、病気は治らないで気が狂ったように暴れ出し、病気が治っても一生眠り続けたケースは散々。内務省はカンカン……ユーリがその叔父と血縁関係になったことがバレた際には、クルーガーと関係拗れに拗れまくったわ。あのジジイの部下がE.L.I.Dがゲートを悔い破りそうっていう非常時にユーリの背中撃とうとしたのを止めなかったほどにはね」
「あぁ……」
E.L.I.Dですら、考えたくもない状況なのに血縁者のせいで味方のはずの人間にすら撃たれるなんて最悪だ。
そして戦犯になりかけた男はグリフィンという、人形の民間軍事会社なんて立ち上げた。
この人が人形……特にグリフィンの人形を警戒して嫌うわけだ。嫌わない理由が見当たらない。
「アナタに嫌われていることを承知して、聞きたいことがあるんですけれど……いいですか?」
「人形が質問すること以上にいい質問をするものだったらね、でなきゃぶっ殺す」
当然の態度だが、あまりにも物騒すぎる…M4A1はアキの気迫に押されそうになるのを堪えて質問した。
「AK-12の事は聞いています」
「そう。んじゃあ私がアンタらを嫌いなのは分かってるわけだ」
勿論。
私だって、人間に同じ目に合わされたらこの人より人間に対してひどい態度をとるだろう、話しかけられるすら腹が煮えくりかえるだろう。
「そのことを承知で伺いたいんですけれど、あなたは────」
その質問をした瞬間、アキはあんぐりと口をあげ、次には……
「────はぁあああい!?」
アキから間の抜けた大声が上がった。
そして、そこからアキの凄まじい叱責……というか、八つ当たり。
周りも気づかないフリをしていたがなんだなんだ?、と結局様子を見る羽目になっしまう。
「アンタはバカ!!ドアホ!!マセガキ!!」
「い、言い過ぎですよ!?」
「────おい、騒いでるんだ?」
M4A1がアキにぶっ叩かれていると、突風のような勢いで冷たい声が聞こえた。
M4A1とアキはびくり、と固まる。
声のした方向を恐る恐る振り向くと、オーガような形相の一歩手前のユーリがこっちを睨んでいた。
「……こっちが優勢とはいえ、油を売る暇なんてないと思うんだが?このまま油断して負けたいのか?」
「いっ!?いいえ!!??こんな状況で負け戦なんてする気はありませんって!!」
「だったら、ラプターツー……リト指揮官を手伝ってこい。退役軍人でもここが戦場であることを忘れるな」
「────はうっ!?はいっ!只今!!」
アキは風のようにダッシュして、リトの手伝いに戻って行った。
「アキに色々言われたんだろうが深く気にしなくていい。君が必要だ」
「本当ですか?」
ユーリに必要とされる。
それが怒られたことで消沈していたやる気を最大まで回復させた。
「……わ、私!AN-94を診てきます!」
コッチで言わなくてもM4A1は今何が必要とされることか、わかってるらしい。
コレが指揮できる人形の出せる賢さだろうか?
「今日のことが100回続いたら、必要とは思わなくなるだろうがな」
ユーリも半ば冗談で言った独り言、それが実現する日はないだろう、
数え切る前に生きてられる保証や余裕なんてどこにもないのだから。
ガリッ、ガリッ、とブーツの底で地面を削りハンターは他のスレイブドールを引き連れて、AR小隊らが守りを固める拠点に近づいている。
どうやら、顔を撃たれたAN-94の血の跡を辿って来たらしい。
「……」
血が止まらなければハンターはその後を追いかける。
戦闘能力は引き上げられているものの、思考は単調そのものだった。
「……60m」
ハンターが血液の先を見る。
血の先には土嚢が積まれており、裏から赤色の液体が流れており鉄ようなの匂いを感じる。
敵を捕捉したと考えたハンターは拳銃からレーザーを発射。
レーザーは一直線に向かい土嚢ごと撃ち抜いた。
反撃しようとしてもこちらから狙い撃てる。
待ち構えるハンターが攻撃の結果を確認すると……そこにはAN-94やユーリ……それどころか、誰もいなかった。
あったのは血と水を混ぜていたバケツだけだった
「……?」
ハンターがどこかに逃走したのかと思い、周囲を探したが瞬間────突如としてハンターらの足元が爆発した。
ハンターが吹き飛ばした土嚢の中に手榴弾を詰め込んでいたらしい。
吹き飛ばされた手榴弾が次々と坂を転がり落ちてはスレイヴドール目掛けて爆発していく。
「網に掛かったわ!やってやりなさい!!」
STAR-15が爆発の瞬間を確認して、合図を出す。
合図と同時に更に遠くで待ち構えていたFN小隊達が銃撃を始めた。
「うわぁ……えげつない」
グレネードを起点に追撃者を荒らしていく戦法を考えたリトにFive-seveNは引き気味だ。
しかし、人差し指は引き金は弾き続けていた。
若いからこそ考えられる柔軟、そして狡猾な戦略。
とはいえ、罠を考えたからといってバレたら終わりだ。
だから、あの巧妙なトラップを用意したのはアキだった。
それなりに長い戦いの経験と人形嫌いが組み合わさり、人形が何処を警戒するのか、どれが一番聞くのかをきめ細やかに設定したトラップは見事にスレイヴドール達をなぶり始めた。
「いいぞ!追撃だ!」
銃撃がハンターらの気を引いている間に、ユーリとM4SOPMODⅡ、M16A1、STAR-15の4人接近して罠から逃げようとした鉄血兵に追撃する。
「……!」
ハンターがユーリを見た瞬間、大破したスレイヴドールを盾にして強引に前進していく。
他の生き残りも同じことを始めた。
<やっぱり、隊長狙ってたか。遂に形振り構わなくなったわねぇ。じゃあ、仕上げちゃいましょ>
目的のおもちゃを見つけた猟犬のようにスレイブドールらは被害を無視して、ユーリ目掛けて襲い掛かろうとする。
「SOPⅡ!」
「おっけー!!」
スレイブドールの行動の変化をいち早く察知したSTAR-15によって3人に知らされ、M4SOPMODⅡはM203グレネードランチャーを構える。
「グレネードはっしゃー!!」
M203から、ボンッ!!と破裂したような発射音が鳴り響き榴弾がスレイブドールに向かって飛んでいく。
「────!!」
飛び出す榴弾を見たハンターらは急いで死骸を盾にしてグレネードを防ごうした……しかし、グレネードは爆発しなかった。
「……?」
グレネードは爆発せず、もくもくとスモークが上がっている。
M4SOPMODⅡが発車したのは爆発するHE弾ではない、スモーク弾だ。
「────!」
敵の位置を見失ったハンターたちはレーザーを乱射。
スモークのせいでレーザーが目立つようによく見える。
「今よ!」
「了解!」
味方を盾にしても、側面からの攻撃は守れない。
中世騎士の鎧の隙間を突くように、M4A1の銃撃が鋭くスレイヴドールたちに突き刺さる。
「片付けた!」
「後は任せろ!」
取り巻きを片付けたタイミングでAN-94がハンターに向かって突撃した。
ハンターもAN-94の接近を足音で気づいたらしい。
「来た……」
ハンターが予測された進路をとるAN-94に向かって照準を合わせて、引き金を引く。
<今!>
「了解」
しかし、AN-94はレーザーが飛び出す直前にジグザグに動いて回避した。
そして、ハンターにお返しのアサルトライフルの5.45ミリのライフル弾を叩き込む。
「カッ────!?」
ハンターは血反吐を吐く。
AN-94は一度後ろに下がって、距離をとる。
今度は止まってから精密射撃のハズ。
ハンターは機動力を生かすため、横に宙返りしながら二丁拳銃を放つ。
「来たぞ!」
<分かった!>
放たれた銃弾は豪雨のように降り注ぐAN-94の上を降り注ぐ。
全て提供された通りの動きを……
「……すると思ったか!?」
全て提供された通りの動きを……途中でやめてしまった。
攻撃の直前にAN-94は腰を下げて攻撃を中断、そのまま中腰の姿勢で5.45ミリを発射する。
「────っ!?」
全く予想だしない攻撃を浴びて、ハンターは少しよろめいた。
「っ……!」
ハンターは着地した瞬間に雷の軌道を描くように素早くバックステップ、それをAN-94がハンター以上のスピードで追いかけタックルを食らわせる。
そして、さらに追撃した。
今度は間接にダメージを与えていく。
「────!!」
流石にスレイヴドールと化し、感情を消されたハンターも突然自分通りにこの状況いかないには違和感を覚えたらしい。
出力が跳ね上がっている。
<スレイヴドールでも余裕がない、なんてことあるのね>
「ああ。M4の作戦が上手くいってるんだ」
ハンターを迎え撃つ作戦が始まる前にさかのぼる。
────!!
────ごめん、顔は痛いよね……
M4A1はユーリに命令された通り、AN-94の治療をしていた。
────いい方法があるんだけど……
────話してくれ
────あなたの行動が読まれているなら、途中で全く違う動きをしたら相手も焦るんじゃないかしら?
理屈としては正しいが……戦術人形の動きの癖を「はい、やめます」というのは簡単な事ではない。
1つ、1つに人形が立てたり、歩けるようにするための計算が入っているからだ。
無意識に実行できるように、無数の修正ができる人間とは違う。
────理想論だ
────私が完璧にバランスを取り直せる、キャンセルを指示できると言ったら?
────つまり、お前がハンターの攻撃を失敗させるチャンスを確実に判断して、指示をして……なおかつ、攻撃をキャンセルしても次の行動ができるように駆動系のプログラムを補助するのが可能とでもいうのか?
────そう。私にはできる。私は”指揮ができる人形”だからね。
良くてやけっぱち、悪くて狂気。
そんなものをM4A1から感じ取っていたがそんな話に乗るAN-94もAN-94だ。
しかも、その話に乗っておいてうまくいっているのがこの話の怖いところだ。
<いいわよ。そのまま、後ろの木を盾にしながら動いて>
迎撃を試みるが全て躱されるもうハンターとAN-94までの距離は5メートルもない。
ナイフを引き抜こうとした、AN-94をみてハンターも仕方なく拳銃を鈍器がわりにAN-94に頭目掛けて振り回す。
<受け止めて>
「ああ」
だが、ナイフの行動を即座にキャンセルして、振り回した腕を片手の手首で防ぐ。
続く2撃目の前に膝蹴りをハンターの鳩尾に食らわせる。
「────ァァ……」
体内を強烈な痛みと吐き気、そして寒気がハンターを襲う。
<蹴っ飛ばせ!>
「……ああ!」
そのままAN-94はハイキックがハンターの顎に直撃して攻撃を受け蹴り飛ばされた。
体が宙に浮く、
受け身をとれない、
体がバウンドして地面に転がる。
<よし、とどめよ!逃がすな!>
M4A1は見逃さない。
ハンターが立ち上がろうとした瞬間、AN-94に足を撃ち抜かれる。
関節部品が損傷したらしい、痛みに悶えるかのように転げ回るハンター。
<これは効いたわね>
「ポイズンバレットだ。毒入り」
AN-94が使う中東の戦場で使用された5.45ミリ弾が体内に染み込んだ弾薬が貫通せずに体の中を暴れまわる逸話から取られている。
関節が支えきれなくなり、ハンターは崩れ落ちてしまう。
倒れこんだ位置はAN-94には狙いやすい位置にいた。
<これで……>
「ああ、終わりだ」
AN-94はハンターの両手に2発ずつ銃弾を撃ち込み、とどめに胸元のコアモジュールに狙いを定める。
念のため、AN-94はマガジンを確認する。
「残り2発……」
ちょうどこれで弾切れ。
替えのマガジンもとっくに空っぽ、サイドアーム持ってくればよかった。
と、AK-12なら思っているんだろうな。私には……
「この2発で十分」
ハンターを胸元に手を突っ込み人工筋肉と骨格と粉砕して、コアモジュールを引きずり出す。
決して、ハンターの肉体に嫉妬があったわけではない。
嫉妬するとしたら、どんな服を着ても似合うM4A1の方だろう。
己の中の言い訳はそれくらいにしつつ、コアモジュールを確認する。
宣言通り、残りの2発でハンターにとどめを刺すことに成功したようだ。
「……なんとかなったな」
まさか、あんな荒唐無稽な方法で勝利に漕ぎつけるなんて。
AN-94は自分の手のひらを見つめ、手のひらを握る。
なんだろうか?この高揚感と達成感か……?
「仲間……か、何故だかわからないが、安心する言葉だ」
なんとも言えない気持ちになった時にM4A1達が私を呼ぶ。
表情こそ変わらなかったが私がAR小隊に近づくに連れて高揚感が増すのが分かる。
「これが……絆?」
────
───
「よーやく、くたばったわねえ」
アキは無残な様であるが、きちんと稼働停止しいるハンターの死骸を蹴っ飛ばして再確認する。
うめき声はナシ、反応はない。
「……スレイヴドール、今日は誰の命令で動いていたんだ?」
ユーリは液体窒素の入った瓶のふたを開ける。
スレイヴモジュールに機能があっても凍らせてしまえば動かない。
「アキ……キミはM4と何話してたんだ?」
スレイヴモジュールを液体窒素をかけて凍らせている間、アキとM4A1は何が原因で言い争いになった分からないので直接聞いた。
「あー……えーっと……」
一方のアキはモニョモニョと発言を濁そうする言葉を考えていた。
M4A1はあの時、こう言ったのだ。
────そのことを承知で伺いたいんですけれど、あなたは……指揮官のことは好きなんですか?
────は?
────私は指揮官が大好きです。異性として
────はぁあああい!?高望みしてんじゃないよ!?青二才が!?
人形が恋をした?
しかも、私が隊長を恋愛対象として見ている?
……見てるわけないだろ!このバカ人形!
────高望みしてんじゃないよ!?青二才が!!
────してません!してても、それにふさわしい人形になります!
────人形がそうしてるのが高望みだって言ってんのよ!
だから、ブッ叩いたのだ。あまりにも高望みする人形なのだから。
────アンタはバカ!!ドアホ!!マセガキ!!
────い、言い過ぎですよ!?
機械はぶっ叩けば治るはずだが、あのバカ人形M4A1様はブラウン管テレビ以上に低性能だったらしく、結局治ることはなかった。
「まぁ……本人から直接説明があるんじゃないです、か…ね?」
「何それ?とにかく、液体窒素がそろそろ……」
「……液体窒素、溶けてません?」
もう少しで完全に凍ると思った時、スレイブモジュールがいきなり赤い発光をして液体窒素を溶かしだし、自爆シーケンスに移行し始めていた。
「────ああくそ!叔父さんめ!随分と凝り性なことを!」
「逃げましょう!」
液体窒素まで対策済みだったとは、周りには誰もいない。
二人で、自爆範囲から逃れようとした。しかし……
「……シーケンス、中断?」
スレイヴモジュールのシーケンスが中断され、電源がオフになっていた。
<……間に合ってよかったわ>
何者かの足音がした。
ユーリとアキはその方向に視線を向ける。
「貴様っ……!?」
「なんで、君が……?」
その視線に現れた人形を見て、2人は驚愕した。
「本当に久しぶりね。アキ先輩、それと……パパ」
2人を驚愕させた人形はとても複雑そうな表情をして、恐る恐る2人の前に現れたのはかつてユーリらを裏切った人形"AK-12"だった。