たったひとつの願い   作:Jget

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理由

カタカタと保安局がよく使っている、ペーパー型の端末でAK-12は周囲をスキャンする。

 

「……周囲には誰もいない、ここは安全よ。久しぶりね、アキ先輩……それと、パパ」

 

AK-12は端末をしまう。

安全にする必要があるということは、聞かれたくない話があるか、それともここでAK-12がユーリ達に会うこと自体がリスクある行為だということだ。

 

「安全……?アンタから初めて聞いたわそんな言葉。よくここにこられたわね、AK-12さん」

「ここにいくまでのルートは15パターン考えているわ、それにそれがガセ情報であった場合も────」

 

そこまで言いかけて、AK-12の不意をつく形で彼女の喉がアキに捕まれ、岩盤に背中を叩きつけられる。

 

「────AK-12、アンタさ?ふざけてられる立場?」

「……はぁ」

 

誰にでも理解できる求められている回答とは違う回答をした、AK-12にアキは静かに怒りをぶつける。

ユーリすらもため息をつき、拳銃のホルスターを引き抜こうとしていた。

 

「……ごめん」

 

AK-12もそんなつもりで言われたわけではないのはわかっていた。

アキ達は「あんなことをしておいて、よくここにやれる気になれたな」という意味で言っている。

でも、万が一……いや、そんな可能性もないことを知りながら自分の罪をはぐらかそうとしていた。

 

「ゴホっ…ゴボッ……!」

 

アキが喉から手を離され、解放されたAK-12は苦しそうに咳き込む。

 

「もし、次もふざけたらその首へし折ってやる」

「……もちろんよ。肝に銘じるわ」

 

AK-12は後悔する。

今のユーリ達には真面目な態度を取らなければならない。

昔のようにふざけてられた日々にはもう、戻れない。

 

「……で?もう一度聞くけど、よく私らの前に来られたものねぇ?それほど、アンタらにとって困ったことでもあった?」

「えぇ。あったの、実は────」

「────待て」

 

そう言いかけた所で、ユーリが雑木林の方に向かってナイフを投げた。

 

「ネズミだ」

 

ナイフは自分のすぐ隣の木に突き刺さった。

 

「聞き耳を立てられてるぞ、何処が安全だ」

「……あり得ない!さ、さっきスキャンした時には何処にも」

「相変わらず抜けてんのねぇ、アンタがスキャン終わったあとに潜んで聞き耳立ててたのよ……おい!出てきなさいよ!!」

 

森がガサっと音を立てた。

 

「────あ?逃げた……?もしかして、たまたま居合わせただけ?」

「……そのようだな」

 

アキは呆れたように笑う。

「コイツ、やっぱりダメじゃないか」って態度でAK-12を嘲笑っている。

 

「コレでようやく始められるな、AK-12。何を伝えに来た?」

 

AK-12は一つ深呼吸して、話し始めた。

 

「実は近いうちにソ連で抜き打ちで大規模な公聴会が行われるの。あなた達もリストに載ってるその公聴会への招待か参加資格が来るわ」

「ああ……アレか」

「そういえば、そんな話もあったわねぇ」

 

だが、知れば驚くのかと思っていたAK-12はユーリとアキの納得行ったような態度に違和感を覚える。

 

「……知ってるの?」

 

2人は頷く。

 

「昨年に書記長から直々に電報来た。”絶対にその日まで生き残ってくれ”という念押しと一緒にな」

「殺し回ることはあのおジィさんも予想済みってことね。公聴会の機密保持はそれなりに気を遣ってるののね」

「……そう」

 

AK-12は知っていて、しかも参加者であることに動揺をしていた。

もし、AK-12が刺客だったら鉄砲玉扱いもできない無能だ。

 

「今気にする話でもないが、公聴会の話がどこかから漏れたんだろうな。……それか」

「予め公聴会そのものを知っていて、自分の秘密が漏らされたら困るやつ」

 

どっちにしても手当たり次第に殺そうとしている。

殺す側には相当余裕がないらしい。

 

「昔のように各行政の横の連携がロクに取れたもんじゃない状態が続いてるってんならどこから漏れても、不思議じゃないわね」

 

3人は疲れたようにため息を吐く。

 

「とはいえ、保安局にとって私達が公聴会が来られるのはたまったもんじゃないでしょうね」

「ああ。俺たちも保安局に散々嫌な目にも遭わされたし、その証拠もキチンと確保している俺たちには死んでもらいたいんだろう」

「……で、アタシらをヴィンペル部隊でもけしかけて、殺したことが公聴会でチクられたり、サイアク殺し返されたりしたら保安局は丸ごと消し飛びかねないから、足もつかないスレイブドールを使った依頼をしたってわけですね」

「闇討ちで使うにはいい連中だ。保安局もリスクは少ない……まぁ、お前はスレイブドールにもされてない辺り……蚊帳の外なんだろうが」

 

保安局だって、情報を知る存在は少しでも減らしたいはず、AK-12も陰謀のメンバーだったら間違いなくスレイヴドールにされていた。

推察だけで、AK-12はシロと分かる。

 

「どうしてそれを教えに来たわけ?アンタにとっても都合が悪いでしょ?」

「……保安局も一枚岩じゃない。もっと言えば、私も保安局のやり方に全部賛同してるわけじゃないし、それに……」

 

AK-12は思い詰めたように逡巡し、少しの沈黙の後

 

「私にとってもこれはチャンスなの」

「チャンスだあ?」

「……保安局のやり方は間違っていた。それを世間に公表できるチャンスなの、私が犯した過ちだからこそ、正しい裁きが必要だと思ってる」

 

アキは納得していない。

AK-12は当然だと頷きながら続ける。

 

「人形がこれから過ちを犯すたびにすべて人間のせい、私は悪くないって言い逃れできるようになってしまったら人形たちはつけあがる様になる、気にくわないって言うだけで人を殺すかもしれない」

「犯罪者が一人前に責任ついて語ってるわけだ。アンタ、自分が鉄血レベルのクズだって自覚ある?」

 

AK-12は「あるわ」とはっきり答えた。

 

「人形にも自分の手は簡単に誰かの命を奪えてしまうものだって、責任があるってことを自覚しないといけない。……そのことを踏まえて、私はアナタに依頼したいことがあるの」

「依頼したいこと?」

 

アキが食いついた。

次の標的は興味があるのなら、アキは過去よりも今後のことに興味があるんだろう。

だが、AK-12のやったことは許されるべきではないことは、やってしまった彼女自身が分かっている。

 

「公聴会には当然、各方面の偉い人が集まる。彼らは真実を明らかにすると当時に政治的に気に入らない奴ら……まあ、ライバルって言うのかしら?それを蹴落とす場としても見ている」

「だから、邪魔者の排除に飽き足らず、保安局はあらかじめライバルの弱みを握りたいって訳か」

 

AK-12はうなずいた。

 

「……この子はあなたも知っているでしょう?」

 

政治に少しでも足を踏み入れたものなら、誰でも知っている。

 

「当たり前でしょうが、書記長の次男坊でしょう?」

 

AK-12が見せたプロマイド写真には、どこで隠し撮りしていたのか学校に通っている現ソ連書記長の次男が映っている。

 

「最近、保安局の基地で"ヴィンペル"どもが学校を中心に襲撃のシュミレートをしている頻度が増えた。それに”拷問をする”訓練もよ」

「拉致して、ガキを脅せば書記長サマも保安局に従うしかなくなるってことか」

「まだ予想とはいえ……無関係な未成年すら拷問か。変わらないなと思っていたが、あの組織も随分と変わってしまったな。……悪い方向に」

 

ヴィンペルは旧ソ連から続く、暗部的組織だ。

そして、任務を成功させるためにはどんな手段も許され、それが奴らの残虐さを助長させてもいる。

要は保安局の汚れ仕事部隊だ。

 

「保安局のカスどもはそこまでおかしくなったのかしらね?……あー、AK-12言わなくていいわよ。どうせ、新ソ連が出来たときからどうしようもない、ところでスタートしてたことくらいは予想できるし」

 

彼らに苦しい目に合わされたユーリとアキですら暴力と恐怖に頼り切りになった保安局の惨状に敵でありながら憐れみすら覚えている。

 

「隊長の知り合いにソ連のシークレットサービスもいましたよね?」

「今も続けているか分からないぞ?……やっては見る」

「お願い。人形の私が言うのもアレだけど、とても嫌な予感がするの」

 

一応、前向きな検討を始めたユーリたちにAK-12はわずかな希望を感じていた。

 

「……質問いいかしら?」

「何でもいいわ」

「仮に隊長がその依頼で誘って、それを取り付けて、ちゃんと守り切れたとしてさ?公聴会ではアンタが裏切った時の気持ちとか、どう殺したとかそれも全部詳らかに教えてくれるの?」

 

AK-12は目を一度だけ伏せた。

 

「……ええ。私も秘密裏に書記長と接触して、その話をすることにしたの。みんな信じてくれないとは思う。けれど…けれど……」

「けれど?私は悪くありませんって?それとも、反省してるから許してください、とか?」

 

だが、無辜の人間をその手にかけておいて許される事はない。

 

「……まさか。それは思い上がりで許されないことよ。ただ、私はあの日の贖いをしたい……あの日を私は一度も忘れず、ずっと苦しいの」

 

AK-12を振り返る。

今でも思い出すだけで、汗が止まらない。

必死に「殺さないで」「やめて」「痛い」と耳を覆いたくなるような叫びと苦しみの表情をありありと思い出す。

 

「……保安局はあなた達に怯えていた。軍隊とのバランスが崩れたら、彼らの目的が絶対に果たせないって思ってるから」

「目的?」

「どんな目的かは私にも分からない。でも、何か大きな使命感を持って何かを成し遂げようとしている。そして、結果の障害のあなた達を始末するために私を送り込んで中から壊したのよ」

 

今でも思い出すだけで、汗が止まらない。

 

「10数名の命と今後30年は解決できない生骸の脅威の放置を天秤に数千万の国民の信頼……そして、自分たちの今後の目的の安定を得るために、私の身体と意識は乗っ取られた」

 

必死に「殺さないで」「やめて」「痛い」と耳を覆いたくなるような叫びと苦しみの表情。

素手で引き抜いた人間の臓器の感触、友人のように語りかけてくれた人間を愛憎入り混じった死に様。

すべて、全て私がやった。

何度も何度も、勝手に動く身体にやめろと叫んだ。

なのに、ゲラゲラと笑って、命乞いする人間をゆっくり殺していた。とまれ、とまれ、と必死に祈りながら。

でも、結局……目の前に殺せる相手がいなくならない限り止まる事は無かった。

 

「責任を感じてないと思う?……そう思われても仕方ないわ、私は笑い声を上げながらひとりひとり殺していったものね、でも……自由にならない体にとまれ、とまれって、叫んでいた……でも、私は傍観することしかできなかった」

 

AK-12は空を見上げる。

今日一番で悲痛な表情になっていた。コイツは自分のしでかした事に一番苦しんでいるとすら思える。

 

「……」

「……」

 

ユーリとアキはため息を吐く。

彼女の所業を眼前で見ていなければ、許してしまいそうになるくらいにAK-12は苦しんでいるのを理解しまったからだ。

 

「事情はだいたいわかった。この依頼は裏を取ったら引き受ける」

「ありがとう……!」

「そのことを踏まえて聞きたい。お前の今の指揮官の"アンジェリア"はこの話を聞いているのか?」

 

AK-12は縦に頷く。

アンジェリアは"よろしい(ダー)"と言ったのか。

 

「私たちは反逆中で、絶賛保安局に面背服従の状態よ。アンジェは公聴会の話を聞いた時"もうどうにでもなれ"って、ヤケだったわ」

 

AK-12は”正しさ”という自分の為にまた裏切りをしているのだ。

 

「やっぱりって、感じですね。隊長」

「まぁ、アイツのゴールを考えればそうだろうな」

 

AK-12はユーリ達が驚くとも思ってた。

だが、大体は冷静さを失わないユーリはともかくとして、短気なアキですらアンジェリアの行動に納得をしていた、

今日は予想だにしなかったことが多すぎる。

 

「どうやらもうちょっとペースアップしないとまずいかもしれないわね。隊長、私は他にも公聴会に呼ばれるかもしれない人をリストアップして危険を知らせるようにします」

「任せた」

 

ユーリはアキの決定に頷いて先に帰らせた。

 

「2人きりだな」

「そうね……」

 

アキを先に帰らせたことで、ユーリとAK-12の2人きりになる。

だが、これはユーリが気を遣っているわけじゃない。

これから話す事はアキが既に知っていることだからだ。

 

「AK-12。伝えることがある。俺が公聴会何を伝えるか、それについてだ」

 

ユーリは公聴会について話す内容、真実を少しずつ静かに話し始めた。

最初はAK-12も興味を覚えたが、話が進んでいくにつれてどんどん顔色が悪くなっていった。

 

「そ、そんな……」

 

すべてを聞いた頃にはAK-12は立っていられなくなりがくりと崩れ落ちている。

 

「うそ……じゃ、ないんでしょうね」

「嘘か真実かを決めるのは君の自由だ。でも、俺はこの真実を公聴会で話す」

 

苦しそうにAK-12は瞼を抑える。

 

「改めて聞かせてくれ。AK-12、俺がこの真実を世間に明らかにすると知ったうえで味方をしてくれるのか?」

「……、……っ」

 

AK-12は2度深呼吸をした。

この真実は知らなければよかった、だけではない。

今後何十年に渡ってこの国の人間の自信と生きる希望を奪う真実だ。

この真実を闇に葬るだけで、これから何人が救われるのという前提すら踏みにじる形で、この真実を明らかにするという。

ユーリはAK-12にこのパンドラの箱の要のような、おぞましい真実を明らかにするための守り人になる覚悟はあるのかと説いている。

 

「どうする?今なら引き返せるぞ」

 

引き返せる、か。

ユーリ自身、自分の真実の意味を理解しているらしい。

まだ、選択肢を与えるという、親子の情をユーリは捨てきれない。

 

「……やるわ」

 

まるで永遠のような時間を錯覚しながらも、AK-12は頷いた。

ユーリの言葉は嘘偽りを感じなかった。

AK-12も親子の情を捨てきれなかったのだ。

 

「……やるわ。すべて、ぶちまけてやりましょう」

 

知り合いを大勢不幸にさせておいて、次は知り合いも見ず知らずの他人も関係なく大勢を不幸にする。

自嘲して気持ちが落ち着くなら、そうしたい。

しかし、これが自虐ひとつで気がまぎれるほど軽い話でないことは分かり切っていた。

 

「パパ……」

 

AK-12はユーリのもとに近づくと、思いっきりハグをかわした。

ユーリはハグをされながら小刻みに震えてるAK-12の不安と緊張を感じ取らずにはいられなかった。

 

「悪いことだっていうのは、分かってる。でも、お願い。少しだけ……ほんの少しだけ、こうさせて」

 

情に縋るなんて、AK-12らしくない。……なんて、今のAK-12しか知らないならこういう感想が出るんだろうか?

自分の知るAK-12はとにかく弱音を吐いたら、誰かに泣きついていた。

その都度鬱陶しがられるけれど、あの日が来るまで結局はこの子との縁を切ろうとする奴はいなかった。

AK-12は親子の縁に縋らなければならないほど必死になっているんだ。

それほどまでに追い詰められている。

 

「……余計な時間を貰っちゃったわね。もう、行くわ」

「そうか」

 

AK-12はユーリから離れた。

その挙動は少しだけ名残惜しそうだった。

 

「これから君は何をするんだ?」

「他の公聴会の参加者に危険がきた時のために予防線を張るわ、刺客が来たら前のように撃退出来るようにしたいの」

 

AK-12もそろそろ、自分の仕事をするために踵を返したところで、名残惜しそうに、首だけ振り返って、最後の質問をした。

 

「公聴会で真実を話すとき、あなたもその場にいてくれる?」

「────ああ、約束しよう」

 

それを聞いたAK-12は悲しそうに、されど救われたように嬉しそうに口元を緩ませた。

 

「……あなたはそういう人だったわね。ありがとう……そして、本当にごめんなさい。パパ」

 

AK-12の姿が見えなくなり、そして1人になる。

 

「……」

 

ユーリは懐に入っていた写真を取り出す。

AK-12とユーリで何気なく取られたツーショット写真。

写真には2人で楽しそうに鍋をかき回しているのが映っていた。

この時間が続くと思っていたんだ。

……でも、続かない。

 

「────もう、後戻りはできない」

 

ユーリは写真をしまった。

これは誰に託されたわけでもなく自分で決めたこと、何が残るや何処に辿り着くのかはわからない。

そもそもたどり着けるのかすら分からない。

だけど、自分の決めたことには自分で幕を引くべきだ。

 

「やるか」

 

ユーリも踵を返す。

3人が集まっていた場所にはもう、誰もいなくなった。

 

次の日────

 

時刻は午前9時

食堂ではハイエンドモデルを倒した話で盛り上がっていた。お陰でAN-94は質問攻めだ。

 

「お、今回の功労者様のお出ましだ!」

「またその話か?」

「やっぱり、軍用人形は違うねぇ。タイミング次第だったら良くて撤退、悪くて相打ちの状況だったからな、みんなお前のおかげで助かっているんだよ」

「成る程……」

「そう言うこと」

 

AN-94がいつものスープではなく、M4A1がいつも食べているグラタンを選んでみた。

M4A1がこちらの前に座った服を購入した日から、こうやって大勢がいる場で朝食を食べている、最初はこんなことに意味があるかわからなかったが、やっていくうちにそうでないと落ち着かなくなっていた。

 

「あ!お姉ちゃん!!」

 

いつもより遅れて、M4A1が食堂にいる。

しっかり者の彼女にしては珍しい遅い到着だ。

 

「お姉ちゃん。めずらしく、遅かったね?なんかあった?」

「え?べつに…」

「もしかしてねぼー?」

「朝にちょっと指揮官と話してね……」

 

M4A1はその話をしていたから遅れてしまったらしい。

AN-94にある考えが浮かぶ。

 

「告白か?」

「────!?」

 

周りの空気が一気に浮わつく。

 

「そうじゃなくて────」

「マジカヨ!?M4!お姉ちゃんは認めないぞ!」

「そうよ!M4なんかが指揮官と釣り合うわけねーわよ!!」

 

指揮官のユーリとの交際を認めないM16A1とSTAR-15。

ただし、M16A1はM4A1がユーリに奪われるのが気に食わず、STAR-15も同じように思いを寄せていたユーリをM4A1に奪われるのが気に食わずちぐはぐしていた。

 

「私と指揮官が話したのは────」

「んだとぉ!?M4に魅力がないって言いたいのかあ!?」

「なぁによ!?私だってM4に負けたかあないのよ!」

 

M4A1が何かを言おうとしているが、話のメインは意見が食い違い、2人はグイグイとぶつかり合いに変わっていた。

その骨肉の争いにM4A1はフラストレーションが高まっていく。

 

「M4A1に釣り合う男がいるなら見せてもらいたいもんだ!」

「はあ!?M4の方が釣り合わないわよ!指揮官に気に入られる要素なんて、一緒にいた時間くらいで────」

「────うるさいっ!違うっていってるでしょうっ!?」

 

我慢の限界が来たM4A1はテーブルを蹴飛ばし、今までない勢いで怒鳴り散らす。

怖い、怖すぎる、カルテルを怒鳴りつけた時より怖い。

でも、昨日の失望された時よりは怖くない。

 

「じゃあ何だよ?そこまでため息ついて……?」

「……そうねぇ。それは、今日のブリーフィングで思い知ることになるわ」

 

M4A1は別のテーブルに移動して、食事を一人で済ませてしまった。

かなりピリピリしている。

AN-94を含めた一同が顔を見合わせる。

どうやら相当重大なことが起きたらしい。

 

午前9時

ブリーフィングの時間だ。

 

人形たちは時間通りに席に着くが、まだブリーフィングの席に来ていない人間がいた。

 

「あれ、M4。指揮官は?」

「指揮官は来ない。基地を離れててしばらくは帰らないの」

 

一同は不安に駆られる。

指揮官がいない、ということは作戦でもないのに基地から出ないとならない重要なことが起きたということになる。

 

「指揮官が帰ってくるまでM4がこの基地の責任者ってこと?」

「カリーナさんではないのか?」

「あ、忘れてた……」

 

AR小隊は陰が薄くなっていく、カリーナをすっかり忘れていた。

AN-94は覚えていたが。

 

「マニュアルなら、カリーナさんに代行してもらいますが……この別件で基地から離れています。STAR-15の言う通り私が責任者よ」

「ピりピリしてたのはこれか」

「キンチョーするもんね……」

 

AR小隊はM4A1の苦労を想像して同情する。

だが、M4A1は「そうだったらどれだけ楽だったか」と言いたげにかぶりを振った。

 

「残念だけど、あなた達が知りたいピリピリした理由はこれから話すことで理解できるようになるわ」

 

M4A1は笑顔の仮面を張り付かせてM16A1とM4SOPMODⅡを睨む。

全員はふざけてられる状況じゃいないことをひしひしと感じていた。

 

「さて……」

 

周りの空気が引き締まったのを確認したM4A1はプロジェクターを起動させる。

プロジェクターが上空から撮影したマップ画像を映し出した。

 

「今日から私たちは休暇明けの、JS9達と一緒に護衛任務を引き受けることになります。通常時は、対象が無事かどうかの安全確認。ただし、護衛対象が何らかの形で襲撃を受けた場合……」

 

M4A1が慣れないマウスを操作をしながら、護衛対象の行動ルートを線で指し示す。

そして、襲撃のアイコンがマップにコピー&ペーストされる。

 

「即座に対象の安全を確保。移動して目標地点”ゲー”に護送、依頼主に引き渡す」

「ゲーは何処?」

 

はあ、とM4A1がため息を吐いた。

どうやら、これがM4A1のピリピリさせた原因らしい。

 

「新ソ連、首都モスクワの政治的重要地点”ルビャンカビル”にある、避難施設”バンカー8”」

 

一同にさらなる緊張が鳩走る。

バンカー8は第三次世界大戦以降に出来上がった、重要人物を死なせないための避難施設だった。

それだけ護衛対象は危険かもしれない状態に置かれている。

 

「……」

 

全員事の重大さをよく理解したらしい。全員が絶句していた。

多分、ここにいる全員この仕事はこれ以上ないくらい名誉であることは分かっている。

だが、同じくらい責任重大だ。

 

「ルビャンカビルまでは最低二日以上かかるため、最寄りのグリフィン保護地域で休憩と補給を整えることになります」

「M4、質問」

「どうしたの?」

「2つある。陸路のようだけど、ヘリは使えないの?」

「難しいですね。燃料が持たないのと……」

「……中継地点に、航空燃料が相手なかったの忘れてたわ。もうひとつ、雇い主は?だれ?」

「……雇い主は新ソ連書記長”アルドレオ・ヴォルフ”の護衛官、”ロマン・タラノヴ”。すでに中央委員会の許可は得ているらしいわ」

 

護衛官が依頼をすると来た、多分対象を守り切れるほどの自信がない、というより自分たちの全力以上に強大な敵がその対象を狙っている。

ユーリ・フレーヴェンはどうやってこの依頼を取り付けたのか、恐ろしくなってしまいそうだ。

 

「期限は2週間。その間に何もなければ、任務完了です」

「……終わりがあるのはありがたいわね。いつから?」

「今すぐにでも」

 

M4A1達は十分な準備を整えて、すぐに出動した。

 

数日掛けて、護衛地点に到着した。

護衛地点で、M4A1の話していた休暇中だったJS9と合流した。

 

「M4、待ってました。話は指揮官から伺ってます」

「分かったわ。じゃあ、やりましょう」

 

合流から、1時間くらい経って、合流地点に一台の車が到着する。

 

<そちらがユーリ・フレーヴェンさんの派遣された護衛チームですか?>

 

車の中からスピーカーを通して聞いてきた。

 

「お、降りないんですか……?」

 

JS9はみんなが思っていた言葉を口にする。

 

<申し訳ございません。我々も自由に使える時間も少なくて>

 

そんなに忙しいのか、護衛って。

セレセィンのときとは全然違うのかもしれない。

 

「分かりました。では、手早く確認を済ませましょう。確か、こちらを見せるようにと指揮官から伺ってます。これでいいですか?」

<確認します>

 

M4A1がユーリから預かっていた、バッジを車に向けて掲げる。

すると、車がバッジに赤外線レーザーを当てた。

バッジはレーザーに反応し、灰色から鈍い金色に輝いた。

 

<……確認できました。それでは、護衛の件に詳しい説明をします。>

 

車の中にいる護衛官から、説明を受ける。

護衛の内容を要約すると……

・グリフィンは最悪な状態が起きたときのための保険のため、襲撃者に気づかれない、民間人のように振る舞いをしてほしい。

・襲撃を受けてしまった場合は対象の安全確保後、即座に指定した電話番号に連絡をしてほしい。

・もし、襲撃者がだれか分かったら報告してほしい。

・護衛対象の安全は最優先にすること

 

こんなところだ。

普通の任務と変わらないが、どうも護衛官は自分たちが生きて居られる自信がないらしい。

むしろ、死んだ後の引継ぎとか遺言のように見える。

 

そうして、護衛官に任せられるように任務が始まった。

 

なるべく対象に見られないようにするために、M16A1とAN-94がクリーニング店を利用している客に扮している。

 

「はぁ、そろそろシャツの残りが厳しいわ」

「でも、これから寒くなるんでしょ?新しいの買うなんて、損しない?」

 

たわいない会話をして、民間人のように誤魔化す。

AN-94も民間人の格好をするのに慣れてきたらしい。

 

「そうなのよねぇ……お、ありゃあ」

 

何かを察知したM16A1がイヤホンのスイッチを押す。

 

「M4。対象が学校を出た」

<了解。64式短機関銃と交代して>

 

「ああ。……全く、それなのにクリーニング代は買う分だけかかるし……。交代した、一足先に戻る」

 

スーツ姿の64式短機関銃が護衛対象の後ろに着く。

 

「はあ。夜勤帰りの朝帰りはきっついわあ……。対象、担当の護衛官の車に乗ります」

<了解。よし、今日も異常なしね>

 

64式短機関銃がしばらく、他の尾行が来ないことを確認して車の移動が始まった事を見届けると、そのまま対象から離れる。

 

「まるで、張り込みですね」

 

JS9が双眼鏡のスコープを覗きながら対象の無事を確認する。

M4A1達は列をなして走る車を追いかけるようにM4A1も車を運転して、警戒を続ける。

ただ、護衛対象に気づかれないようにするために道路を一つ跨いだところから車を走らせて、対象を監視している。

この時間は大丈夫と余裕ができたのか、JS9が車内でチャーハンのおにぎりを口に着けて昼食を取り始める。

 

「刑事ドラマとかでよくあるじゃないですか。犯人を尾行するために長丁場かけて待ち伏せする、アレ」

 

ドラマというのは随分とこだわりがあって作られているらしい。

M4A1はその本物に近づけようとする気概に驚きを覚えた。

 

「ドラマも随分と設定が込んでるわね。知らなかった……そういうのあまり見たことなくて」

「M4A1はなにかドラマとか見ないのですか?」

「私?見てるよ?ただ……」

<SV-98です。報告があります>

 

M4A1が言いかけたところで、SV-98から通信が来た。

 

<護衛対象を乗せた車に数台が尾行しています。護衛対象は気づいているようですけれど……振り切れてなさそうです。この場合、どうすればいいでしょう?>

「依頼人からは自分の判断で倒していいらしいわ。でも……」

<分かってます。武装をしているかどうか確認してから行動します>

 

嫌な予感がする。

それは、隣に座っているJS9も感じていた。

 

「……ヤな予感がする。行くわよ」

「了解です」

 

……"もし"があっては遅い。

M4A1の車が多少の信号を無視して、護衛対象の車の車列と同じ列に到着したとき、車列が急に止まった。

 

「……え?何コレ?」

 

なんと、道路を数十人規模の小学生と教師が横断し道を塞いでいるのだ。

護衛の1人が何とか退かせようとクラクションを鳴らしたその瞬間────一斉に小学生たちと教師たちが護衛対象の車列に向かって銃撃を始めたのだ。

 

「えぇっ!?」

 

突然の事態でJS9も驚愕して固まっている。

今すぐ連絡しなければならない事をすっかり忘れてるらしい。

M4A1は代わりに全員に状況を報告する。

 

「────ちっ!全員!緊急通信!護衛車両が攻撃を受けている!直ちに移動の準備を!!」

 

M4A1の命令が伝達されると、全員が動揺を覚えながらも行動を始めた。

 

「JS9!!」

「────は、はいっ!?」

「攻撃されてるわ!さっさと助けにいく!!」

「────あっ!?ああっ!そっ、そうでしたね!」

 

尾行していた車両からも、銃を持った連中が護衛対象に向かって撃ちまくっている。

 

「捕まって!」

「え?」

 

M4A1は全力でアクセルを踏んで、襲撃者の所領の最終尻に向かって思いっきり激突する。

ぶつかった衝撃で車から降りようとした襲撃者が問答無用で吹っ飛ばされ赤い血だまりになった。

 

「行くわよ!!」

「いたた……。今日のM4はいつもより乱暴ですね……」

 

もうM4A1は車から降りて襲撃者と銃撃戦をしている。

JS9も衝撃からくる頭の痛みを抑えながら、銃を構えながら車両から出る。

 

「SV-98!護衛対象は?」

<なんとか、車の中で踏ん張っていますが……どうやら、C4を使って無理やり吹っ飛ばすつもりらしいです。急いで!>

 

銃声が入り混じった通信が聞こえる。

JS9も爆弾を妨害しながら報告しているのだろう。

 

「────どけ!」

 

まずは、囲み役の尾行たちだ。

M4A1がいままで以上に激しい銃撃で、襲撃者を倒していく。

まさか、周囲を囲んでいる自分たちが後ろから挟まれるとは思っておらず、奇襲は成功した。

M4A1の素早い反応速度とサブマシンガン並みの速度をもつ機動性に優れた動きは敵を翻弄し、バタバタと撃ち抜かれていく。

 

「M4!待ってください!」

 

JS9も引きずられるように前進して敵を倒しながら近づいていく。

まさか、まさか、本当に恐れていた事態が起きるなんて思っていなかった。

しかし、実査に起きてしまった上に事態は一刻を争う。

とはいえ、SV-98も狙撃による支援で妨害している、冷静さを欠かなくても間に合うだろう。

 

<……よし、もう少しでC4に弾丸を>

 

JS9は襲撃者でなく、C4に狙いを定めることにしたらしい。

賢い方法だ。

そうすれば、後は防弾車両に隠れていればいい。

集中を目の前に敵に絞る、JS9……あとは持久戦でM16A1達もくるので有利になるのはこっちだ。

危機を覚えながらもどこか楽観的に考えていたJS9はすぐにまた動揺を覚えることになる。

シュー!!っと何かと風を切り裂く音がして、次の瞬間ドン!!と花火のような爆発音が響き渡る。

 

「RPG……?」

 

RPG、対戦車擲弾。

あの一連の音の連続は間違いなく、それが発射された後のプロセスだ。

爆発音を追いかけるように、爆発した場所を確認する。

 

「SV-98!応答して!!」

 

M4A1がSV-98の安否を確認する。

RPGの擲弾が命中したところは何を隠そう……SV-98がさっきまで狙撃していた位置なのだから。

 

<M4!AR-15よ!SV-98のを使って話してる!……残念だけどSV-98は爆散したわ、文字通りね>

 

襲撃が起きたときに真っ先にSV-98と合流して狙撃支援を行うSTAR-15からの連絡はSV-98の生存に希望が断たれた事を意味し、敵がC4を設置するのに時間の余裕をない事を示していた。

 

<C4を持ってるやつが護衛対象の車に迫ってる!急いで!!>

「AR-15、あなたはロケットランチャーを何とかして!私たちはC4を止める。JS9、行くわよ!」

「……わ、わかり、ました」

 

短い付き合いだが、それなりに仲良くやっていた仲間があっけなくくたばってしまう。

映画のようにロケットランチャーは主人公を吹っ飛ばすための舞台装置ではなく、当てた相手を慈悲なく爆散させる恐ろしい兵器であったことを思い出さぜる得ない。

 

「────おい……!おいっ!!」

 

敵は目と鼻の先だ。

なので、M4A1は大声を上げる。これをすると大抵は敵であろうとなかろうと驚いて動きが止まる。

その一瞬の時間稼ぎの間にM4A1とJS9が発砲。

どうにかC4爆弾を取り付けられる前に敵を倒すことが出来た。

 

「JS9!中を調べて!」

「了解……!前の方はダメです!防弾ガラスが貫通しています!」

「後ろは!?」

「後ろも……ダメそう、いえ!一人生存者がいます!護衛対象です!」

 

護衛対象が生きている。

だが、苦しそうに呻いておりここから出さないといけないことは明白だった。

 

<M16だ。ただいま、到着した>

「姉さん!護衛対象が危険な状態よ!とにかくここから連れ出したい!手伝ってくれる!?」

<了解した。AN-94と私で運び出す。お二人さんはここを確保してくれ>

「分かった……!どうにかして────」

 

どうにかして、持ちこたえる。

そう返そうとした時、すぐ隣の車が爆破した。

 

<M4……!M4……!>

「い、生きてるわ……!AN-94。今のは何!?」

 

ギリギリだった。

敵の死体が盾になってなければ……SV-98のようになっていただろう。運が良かった。

しかし、爆発の正体が分からない。

 

<それはこっちが答える。厄介なことになったわ>

 

その爆発の正体にSTAR-15は気づいたらしい。

 

<ミサイル満載のドローンがそっちに向かってる。今車が爆発したのもそのドローンの襲撃よ>

<撃ち落せないのか?>

<無理ね。M16、ミサイルを今ぶち込んでいるドローンはMQ-9(リーパー)みたいなデカいドローンよ。こっちの火力が低すぎる>

「今回の襲撃者は随分とお金をかけてでも成功させたいみたいね」

 

多少の軽口を叩くM4A1だが、内心は自分たちと相手の戦力差に冷や汗をかいている。

こちらに空からの脅威に対抗できるすべを持っていない。

操縦者を倒せればその脅威もないだろうが、そこまで大きいドローンをならばこの銃撃戦の現場の外で動かしているに違いない。

要はこのドローン相手にできることはミサイルが命中しないように神だのみするしかない。

 

「ハッ……!」

 

M4A1がユーリからこの任務を受けたときの会話を思い出す。

今回の任務を引き受けるなら、死ぬことを前提で参加してほしい……なんて言われていた。

彼女もその覚悟を十二分に理解したうえで頼みを引き受けた、が……まさか、理不尽な敵相手に死ぬかもしれないとは思っていなかった。

 

「……とにかく、護衛対象を連れ出すことを優先して。あれは私が何とかする」

 

だが、それでも……だ。

ユーリは”あの時、私がAK-12とアキ、そしてユーリがいた場を偶然居合わせた知ったうえで”、お願いしてくれた。

脅しでもない、利用でもない、ただそこには信頼という意味が込められていたのをM4A1は感じ取っていた。

ドローン相手には何もできない……という前言を撤回させる素晴らしい兵器が護衛車両のトランクの中にあった。

こういう事も想定していたらしい。

 

「M4!今、対象を車から引きだしました!あとは……うわっ!?」

 

ドローンのミサイルがJS9のすぐ後ろの車両を吹き飛ばした。

JS9が人形じゃなかったら、衝撃で死亡していただろう。

 

「ああ、痛いっ!……ドローンはあなたにお願いすればいいんですよね!?」

「ええ!私に任せて」

 

M4A1は素早くトランクの中にあった兵器を引き出した。

彼女がトランクの中から引きだした兵器……それは、対ドローンランチャーだった。

 

「”ピシュチャル”対ドローンランチャー?古いけど、あのドローンを動けなくさせるには十分」

 

ジェット音を鳴らして、こちらに旋回するミサイルドローン。

衝撃でフレームが軋んだのか、よろよろと動きがノロいJS9を狙っている。

M4A1がランチャーを構える。

 

「────落ちろっ!」

 

ランチャーがオペレーターが操縦した動きを反映する信号、それを妨害する電磁パルスを発射した。

電磁パルスはUAVに命中し、操作命令の伝達を妨害されたUAVが空中でよろめいた。

 

「よし……もう一発!」

 

飛び方には変化あるが、まだ堕とせてはいない。

立て直すかもしれない。M4A1はもう一度、ランチャーを向ける。

 

「あの……クソ女、よくも……」

 

襲撃者の生き残りが、血だらけになりながらもドローンを落とそうとするM4A1に狙いを合わせる。

今ドローンを堕とそうとしているM4A1は、公聴会の開催を是とする新ソ連とグリフィンの害虫である。

この女は危険だ。ここで始末するべきだ。

照準が重なった、トリガーを引いて────

 

「あ……?カハッ!?」

 

トリガー引く機会は訪れなかった。

M4A1を撃とうした人形はSTAR-15によって見つけられ、腹を撃たれよろめきながら人形は崩れ落ちる。

 

「やった!今度こそ!」

 

完全にコントロールを失ったUAVがくるくると回転しながら落ちていき、地面に墜落。

誘爆したミサイルで木っ端みじんに爆発した。

無線から歓声が上がる。

 

<お手柄ね。M4、私に感謝しなさいよ。私が邪魔者を撃ってなかったらあなたの頭が吹っ飛んでたわ>

「……ということは、ランチャーも倒したの?」

<当り前よ>

 

STAR-15は自信満々に答える。

そうか、SV-98の仇討ちは彼女がやってくれたらしい。

 

<JS9です。AN-94達と合流しました!>

<催涙ガスを吸っているな……!とにかくここから離れないと!>

<だが、あいつ等まだあきらめないつもりらしい。また、車に乗って追いかけようとしてるぞ!?>

 

まだやるつもり!?残りを片付けるしかない……

 

<64式短機関銃、M4SOPMODⅡが参上!車は任せて!>

 

64式短機関銃とM4SOPMODⅡも現場にに到着。

追いかけようとする、襲撃者にグレネードランチャーで吹っ飛ばしていた。

 

「SOPⅡが間に合ったのね。よし…!M16姉さん。先に護衛大将を連れてそこから離脱して!私達は追手を片付けてから合流するわ!」

<……わかった。お前らが来るまで待ってるからな!>

<M4のことは任せなさい、付き合うわ。最後まで>

 

STAR-15の弾丸が車のタイヤを撃ち抜き、速度を落とす。

そして、M4A1が投げたグレネードが車の下に投げ込まれ横転する。

 

15分経った。

こちらがグレネードランチャーという火力兵器を持ち込んだこと、敵がUAVの喪失によってM4A1達の有利に傾きつつあった。

 

<残りは少ない!後は1時方向と12時方向にいるやつだけよ!>

<カバーしますよ!走って!>

 

すぐさま64式短機関銃はM4SOPMODⅡが狙いやすいところに移動するまで援護射撃する。

その間にM4SOPMODⅡが勢いよくダッシュしそのまま横方向に飛びこみ、敵の1人を倒した。

 

<12時のは倒したよ!>

「よし、1時の方は私がやる!」

 

M4A1も無線越しから援護の準備が出来たと報告を受けたので残りを始末するため前進する。

 

「見つけた!」

 

自身の戦闘能力を活かし人3人、4人と片付ける。

移動しながら襲撃者が乗ってきたと思われる車両に身を隠す。

 

<M4!残るは3人!!あれで最後よ!>

「撃て!壁抜きしろ!!」

 

最後の生き残りもM4A1に向かって車を貫通させて、仕留めようとしてきたが……車が防弾なお陰で弾丸が貫通されなかった。

 

「ふうっ……」

 

しばらく安全と知り、M4A1に余裕ができた。

M4A1は落ち着いて手榴弾のピンを引き抜き、焦らず爆発までの時間を数えてから車の上から敵の頭上にかけて投げつけた。

 

「────」

 

敵は手榴弾に気づくこともなく、頭上で爆発した手榴弾の破片で爆発を浴びて、最後の言葉をあげることなく絶命した。

 

「……終わったわ」

 

M4A1が車越しから敵を始末した事を確認すると、今度は襲撃者の生き残りを探した。

車は全部やられている。

ロケットランチャーや防弾ガラスを貫通できる弾丸で全員殺されていた。

護衛対象を乗せていた車内には催涙ガスが投げ込まれていてきつい匂いが鼻をつく。

JS9が後ろも終わってると、言いかけたのはこれが原因らしい。

M16A1から電話が来た。

 

<M4。護衛対象は持ち直した、今からグリフィンの中継地点で休憩する。そこで合流しよう>

「了解、何があるかわからない。気をつけてね」

<ああ。さっきのようなことが起きないように祈っててくれよ>

 

安堵の息をようやくつける。

そう思ったのも束の間、別の問題がすぐにやってきた。

 

「書記長の息子を狙うんなんて、とんでもないクソガキね。けど、このガキども……戦術人形ね」

「こっちの奴らもだ!」

 

子供の死体を調べてどこの誰だがを調べようとしたSTAR-15が驚くべきことをいい、M4SOPMODⅡも同じような事を言う。

M4A1もグレネードを倒した敵を調べる。

死骸はグレネードの影響で金属フレームが剥き出しになっており、人形であることを示していた。

 

「ここにいるのもみんなそうよ……しかも、装備がいい」

 

M4が戦術人形とは別に人間の襲撃者の持っている銃火器を見る。

ASVal消音銃にSR-2サブマシンガン、ライフルにはVSK-94やSVCh。

ソ連や東側の特殊部隊が使うような珍しい銃火器だ。

ただのギャングやテロリストにしては”お金がかかりすぎる”。

 

「コイツら一体……?」

 

M4A1の端末に通信が入った。

 

「この番号……」

 

M4A1はかけてきた相手の番号を見つめて、顔を顰めた。

まだ電話はなり続けている、M4A1はため息を吐いて電話を繋げる。

 

<……よかった。繋がらなかったらどうしようと思いました>

「何があって電話してきたの?────"RO635"?」

<どうもグリフィンで困ったことが起きたようで……>

 

その頃、M16達は車を走らせていた。

 

「しっかし、悪いな。予定だと、1週間で終わりなんだろ?研修?でも、こんなに付き合わせて……上司はなんか言ってるか?」

「いや、特に。本来だと指示が出ているんだが……全くその指示が来ていない、遺憾ながらな」

「はは。センスがよくなったな」

「いいんですか?見捨てられたり……あ、起きたようです」

 

護衛対象が目を覚ました。年齢は中学生くらいの男子だ。

どうやら、吸ったガスは少量のようだ。

対象は吐くのを堪えて、今は外の空気を吸って落ち着いている。

 

「た、助かった……。あの、あなたたちは?」

「あたしらは……そうだ、バックアップだ」

「父がよく、事態に備えて置くものだ……と言っていましたけど、今になって身に染みてます」

「親父さんの教育に感謝しろよ」

 

きちんとしたお偉方の子供なら、ちゃんと自分の状況を理解しているらしい。

 

「ユーリさんは?」

「……え?指揮官さんのこと知ってるんですか?」

「覚えてます。何年か前に父の指名で護衛をされてた人でしたから……」

「だからそんな仕事取り付けられたのか。すげぇな、アイツ」

 

3人は車内でユーリの人脈に舌を巻く。

どうやったら、ここまでの人脈をつくれたのか全く想像できない。

 

「僕も護衛の人に渡されたコレを使えていたらよかったんですけど……」

 

少年は拳銃……マカロフだろうか?

それを取り出した。

いざという時の自衛手段として持ち合わせているのか。

 

「……やめておくべきです」

 

珍しくAN-94が食い気味に否定した。

車内が言いようのない緊張を含んだ微妙な空気に包まれる。

 

「えー……っと、あなたが狙われた理由ってわかりますかねぇ?」

「それは、わからない……です」

 

そうだろう。

知ってたら、真っ先に私たちがその名前を出されて疑われている。

 

「ただ、"殺すな、痛めつける必要があるから"と怒鳴ってました」

「あのクソ野郎ども……!」

 

長い間車を走らせてようやく、目的の中継地点についらしい。

M16A1が「あれだ」と言って奥のゲートを指差した。

 

「ここか、随分と懐かしく感じる」

「ははっ。これまでが濃かったからな!」

 

あそこは私が2日目の研修で世話になった場所だ。

あの街にも補給できるものがあるはずだ。

 

「あそこまで行けば助かるのですか?」

「あー……いえ」

 

JS9は微妙な表情だ。

ここは中継地点だ。助かるというにはもう1日は頑張らないと。

 

「様子が変だ」

 

M16A1が首をかしげる。

よく見ると、門番の人形が初めて人形だったり……数が明らかに多い。

 

「……ああ。どうやらしくじったぽいよ?」

 

M16A1らを向かい入れるルートでは、人形と身なりの良さそうな男が何か揉めているようだ。

 

「失敗した!?ガキがバンカーに仕舞われたら。全部終わりだぞ!?」

「……慌てるなよ、そのために私たちがいるんだろう?」

「精一杯働いてもらうぞ……もし、働かないのなら────」

 

男は後ろの鉄格子を見る、人形はわざとらしい怯えた態度をとる。

M16A1がゲートに到着する。

 

「よぉ!また会ったな」

「……私は会いたくなかったよ。なぜここにいるんだ、"MDR"?」

 

親しげに話しかける迎えの人形。それは、MDRという旧型の携帯電話を腰にぶら下げてる人形だ。

M16A1とも知り合いのようだが、M16A1は心底嫌っている目つきで睨み返す。

 

<……知り合いか?>

「知り合いも何も……」

「────グアア、ウウウ!!!」

 

奥から何かを揺らす鉄の音が響き渡る。

……奥に獣のように血走った"何か"がいる。

それは本能的に、M16A1達はそれに脅威を覚えた。

 

「アイツのことはほっといていいよ。ああ、そうだった。勤めご苦労様。ガキを引き渡してよ」

「……どういうこった?」

「頭ん中大丈夫?車の中のガキはこっちが預かるって意味くらいわかるでしょ?アンタらの仕事は終わりって意味だよ」

 

引き渡せなんて……そんな話はバンカー8に到着した時以外に聞いてない。

明らかに怪しい。

 

「車の中のガキを引き渡したらどこに連れてくんだ?」

「うちのA-68エリアの基地だ。何度も言わせるなさっさと、引き渡すんだよ」

 

バンカー8じゃない、全然違う所だ。

ゾロゾロと人形達がM16A1達を取り囲むようにゲートから集まってくる。

 

<M16、どうした?……手伝おうか?>

「よせ!来るな!!」

 

M16A1がAN-94を制止させる。

 

「……友達がいるんだ?」

「……銃口向けて聞くんじゃねぇよ」

 

MDRとM16A1はそれぞれサイドアームのハンドガンを腹に押し当てていた。

M16A1は取り囲んだ、明らかに殺意を向けている人形達のことをよく覚えている、そして本来このエリアに来るはずがないことも。

 

「……ここの守衛はどうした?住民はどうなってる!?」

「アイツら?まぁ、協力をしてくれなかったら。"分からせた"」

 

MDRがチラッと、ゲートに建てられた古屋をみる。

M16A1の同じ方向を見る。

小屋の入り口に手だけがはみ出ている。

手はピクリとも動かない、そして……その手首から赤い血が流れた。

 

「────やりやがったなっ!?このクソ女!!」

 

M16A1が怒鳴った瞬間、MDRがストックでM16A1を殴り飛ばす。

 

「ちょっと、あなた達、一体何の!?────あっ!?」

 

JS9が驚いた車から出た瞬間、取り囲んでいた人形達がなんの躊躇いもなくJS9に向かって、銃を発砲した。

暴力的な彼女達にに口実なんて知ったことではない。

 

「カッ…!?カハッ……!?」

 

何発も銃弾を浴びて、JS9は地面に倒れる。

 

「────JS9っ!?そ、そんな!」

「AN-94っ!逃げろ!!」

「おい勝手に────グヘッ!?」

 

頭や胴体が銃撃でJS9が引きちぎられた光景を見て、護衛対象とAN-94が動揺している。

M16A1がMDRを殴り返してそう叫んだ。

 

「────」

 

頭の整理が追いつかない。

だが、AN-94はとにかくその言葉に従うほかない。

 

「ど、ドアがっ!?グヘッ!?」

 

ドアを蹴り飛ばし、宙を舞い、AN-94を狙った人形を押しつぶす。

隙ができた。

すぐさま護衛対象の子供を拾いあげ、車道を走る。

 

「────逃げる気だ!殺してもいい!逃すな!!」

 

悪魔のような声と猟犬のような銃弾が2人に襲いかかる。

とにかく脇目も振らず、車道を飛び降りて坂を転げ落ちる。

 

「────銃がっ!?」

 

烙印機能で自分の銃が粉砕されたことを理解する。

銃が銃撃を浴びてへし折れている。

トリガーを引いて弾丸を飛ばす機能は失われた、捨てるしかない。

 

「見失った!なんだ、あの動き!?」

「逃げられたぞ!?」

「はぁっ!?」

 

M16A1に殴り返されたMDRが怒鳴り、立ち上がる。

床に倒れ込んで、事切れた人形の足元が見える。

気絶しているのか?

 

「馬鹿が……友達一人助けるのにグリフィンを裏切るなんてね」

 

MDRはM16A1に銃を向けた……が、M16A1の姿はない。

床に座り込んでいたのはM16A1に始末された人形だった。

どうやら、カウンターをした後に拳銃なりライフルなりを発砲して、逃げ仰たらしい。

 

「逃したのか!?」

 

奥にいた男が怒鳴り散らす。

 

「ああ、そうだよ!!くそがぁっ!……探せぇっ!!」

 

MDRはそれよりも大きい怒鳴った号令をあげる。

それを聞いた人形達は車に乗り出す。

向かう先はAN-94が逃げた街、狩りが始まった。

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