「────そう。クメレンタの人形は街でそんな事を」
「ああ……街が血の海だった」
「私達は……なにも出来なかった……」
助かった事で緊張と高揚感が切れたのか、AN-94とM16A1はぐったりとしていた。
運転はM4A1に任せている。
「それと、JS9はやられた……ダメだったよ」
「……そう」
M4A1は少しだけ顔を伏せた。
あれだけ、"気をつけろ"と言ったのにダメだったらしい。
信じるのは勝手だけど騙されるな、そう言ったのに騙されて……撃たれて、壊れてしまった。
「いい車を持ってきたな。どっから貰った?」
「ああ、その事についても話さないとね」
M4A1はM16A1達を救出する前に何が起きたのかを少しずつ語り出した。
────
───
M16A1を救出する少し前……
<……よかった。繋がらなかったらどうしようと思いました>
「何があって電話してきたの?────"RO635"?」
電話をしてきたのは、昔の知り合い……同僚のRO635だった。
今でなければ、もう少し親しげに会話ができたかもしれないが……
<どうもグリフィンで困ったことが起きたようで……>
「────困ったこと?」
<……今のあなたの機嫌が悪いことと関係があるかと────>
すると、突然RO側からなにかが引ったくられる音がした。
<久しぶりね、AR小隊。404のUMP45よ。急ぎで伝えたいことがあるの>
先ほどのROが電話をかけてきたのもびっくりだが、同じくUMP45がその場にいたことも驚きだ。
息遣いからUMP45は焦っているようにも見える。
「……あなたもいるなんて珍しい。トラブル?」
<ええ……厄介なことに巻き込まれてね。驚きなさい、同じグリフィンの殺し屋に追っかけられてるわ>
つまり逃げ込んできたのか。
グリフィンの殺し屋……なんてのはそう珍しくもないが、ROがいるI.O.P本社までやってくるという事はAR小隊にも関係しているに違いない。
<……昨日グリフィンの依頼を受けてある資料を回収しに行ったの>
────
───
よくある死体が放置されているような廃墟になった街にて、
404小隊の人形達が依頼を受けて回収されてない資料の回収をするため、完全に放棄された警察署を漁っていた。
「ケホッ!ケホッ!……うぅ、埃っぽい。とてもここで寝たくない」
「サボって416に怒られずに済んで良かったじゃない、G11。それにしても、ボロがすごいわねぇ。警察署もこうなったら、オシマイね」
警察署は街が崩壊した混乱が色濃く残っており、至る所で見られた弾痕やバリケードの残骸がその歴史を語っていた。
「45姉!資料室は燃えカスしかなかったよ!」
「燃やされたちゃったか……ご苦労様、9。416、そっちはどう?」
HK416は資料室とは別の場所を調べていた、見つけているかもしれない。
<……それらしい資料が入ってそうなものをいくつか見つけたわ。全部持っていくから確認しましょう>
「了解。じゃ、ホールで」
HK416とホールで集合した404小隊は彼女が持ってきたものをホールに置く。
「なるほど。金庫ね」
HK416が持ってきたのはどれも金庫だ。
金庫といっても片手で持てるサイズから、金塊を入れてるような大きいものまである。
「大きいのから開けようか……これは、ハッキングして……どれどれ?」
UMP45は一番大きい金庫を
「パスワードは6桁ね。数字は"114514"っと……」
UMP45がハッキングで見つけた数字をタッチすると金庫が開く。
「さぁて、中身は……あー、なるほど」
果たして中身が入っていたのはぎっしりと詰め込まれていた、トレーディングカードゲームのカードのファイルだった。
とても貴重なものなのだろう。
物によっては金塊よりも高いと聞く、しかしこの量を持ち帰っても雇い主が"それも渡せ"と脅して没収されるのがオチだ。
これは、次の後方支援の時についでで頂くとしよう。
「これじゃないわね。次」
次は中くらいの箱だ。
これは錠前でロックされていたが、簡単なピッキングで開いた。
やけにカンタンと思いながら開くと……
「おっほぉ……」
「……あ、あはは」
「……私のせいじゃないから」
小隊は思い思いのため息を吐く。
箱に入っていたのは、未成年が読めない雑誌、所謂"エロ本"と呼ばれる物だった。
「45姉、これ持っていい?」
「一生白い目で見られても構わないなら持っていけば?」
「エ?」
「私はいい趣味してると思うわ、UMP9」
「G11からみたら手遅れと思います」
最後に残ったのはこの小さい箱だった。
大きさは宝石箱と変わらない。
順番にボタンを押さないと開かないらしい。面倒な仕組みだな。
UMP45は指紋が浮き出る光をあてて、指紋を確認。
何度か失敗を繰り返して、ロックを解除させた。
「あぁ……USBメモリだったのね」
UMP45は宝石箱の中に隠されていたお宝を見つけた。
まさか、USB端末だったとは。
近くのパソコンを治して、USBの中身を見ると依頼主に言われた通りの資料のファイルがあった。
中身を確認したかったが、パスワードがかかってて開かない。
「絶妙にめんどくさいことするわね。ま、これ以上欲張ることもないか。とりあえず回収したんだから、戻りましょう」
「わぁ……ようやく帰れるよ」
特に興味があるわけでもないし、よくある依頼だ。
UMP45はそれ以上情報を抜き取るのは諦めて404小隊はUSBを持ち帰ることにした。
<依頼を完了したのは良かったんだけど、受け渡し先でね>
「静かね」
依頼人が待っているはずの拠点に到着した。
連絡を入れたら、指定された位置で待ってるはずだった。
「……うん?あれかな?」
数台のトラックがこっちに向かっている。
依頼主とその護衛だろうか?
UMP45は時計を見る。
「時間は……ギリギリセーフってところかしら?」
トラックが404小隊を取り囲むように停止した。
そして、トラックから10体ほどの戦術人形が降車する。
装備からして、人形らはグリフィンの人形達だった。
グリフィンは味方のはずだ。多分。
「……どういうこと?」
だが、そのグリフィンの人形達がこっちに銃口を向けている。
「やぁ!私は"PM-06"だよ!」
「リーダーのUMP45よ。どういうつもりか説明してもらえるかしら?」
「ウチの依頼人がそれを欲しがってねぇ、悪いけど、"力ずくでも"奪ってこいってさ!」
PM-06は挑発的な態度でUSBを渡すように脅す。
「……こっちこそ悪いけど、先約があるの。私達はこれを依頼主にここで直接渡すことになってる」
「直接?」
「ええ、直接。事情が変わったっていうならその依頼主と話をさせてもらえないかしら?その人に頼んで」
「勿論そのつもり。あなたの依頼主は指揮官と今頃話してるよ。イヤとは言えないさ」
「……脅迫のつもり?」
「そうそう、"アタシら"の依頼主の命令でさ。今頃、クメレンタ指揮官の方の人形達も動いてるんじゃないかなー?街一個占拠していいなんて太っ腹だ」
マズイ、PM-06の指揮官はクメレンタのようなきっと暴力や脅しに躊躇がない指揮官達らしい。
強引なやり方をしてでも結果は必ず出すつもりだ。
それに、この数の人形を動員できるのはグリフィンでも実力者だろう。
こいつらの話に乗ったら確実に終わりだ。
なんとしても逃げ切らないと……
"9?"
"おっけー、45姉"
グリフィンが使っているネットワークとは別に独自で組んだネットワークだけの会話でUMP45はUMP9に合図を送る。
「あっ」
UMP9が何かを落とした。
どうやら缶ジュースらしい。
「せっかく買ったコーラが……」
「何やってんのよ……」
「高かったのに……」
わざとらしくUMP45は呆れたのを見て、HK416とG11もあきれる演技をした。
だが、その後……
────バンッ!!と凄まじい爆音と真っ白な光が周囲を覆った。
「う……」
「まっ、まぶし!?」
人形達が視界と聴覚を奪われて404小隊を見失う、
「よっしゃ!大成功!!」
UMP9はイタズラが決まった子供のようにはしゃぎながら、ピンを捨てた。
UMP45がダッシュして、ジープに向かってダッシュする。
「うーん……?」
UMP45は走りながらジープの運転席でくつろいでいたドライバーの人形に狙いを定める。
突然の事態に運転手も慌てて自分の銃を探している。
「まっ!まって!」
ようやく自分の"MP2000"を見つけて取ろうとしたがもうUMP45が小さく開かれたドアの隙間から銃口を向けており、 45ACPを発射して射殺する。
「車を手に入れたわ!エンジンをかける!」
「時間を稼ぐわ」
404小隊の動きは早かった。
すぐにHK416が銃下部に取り付けたM320グレネードランチャーから黄色いスモークグレネードを発射する。
「なっ、何だこれっ!!??────あ"ッ!ズっ!?苦ジィッ!?」
「────モエ"ッ!モエデッ!?燃えデルッ!?」
「────ゴホッぉ!ごほぉっ!?」
グレネードが発せられた煙を浴びた人形が突然、苦しみ出し、のたうち回る。
「たっぷりコショウをぶち込んだスモークグレネードよ!!苦しめカスども!!」
"ペッパーガン"と呼ばれる物を応用した物だ。
コショウと言われるとお笑いがすぎると言われるかもしれないが、
実際、警察の制圧部隊は非殺傷兵器にコショウを詰め込んだライフルを運用している。
コショウは皮膚から体内に入り込み暴れ回る。
これは人工皮膚でフレームを覆っている戦術人形にも大変有効な兵器だ。
「ゴホッ!?ごっ!?このっ……!」
ショットガンを持った人形がUMP9に狙いを定める。
殺してやると思ってトリガーを引いた瞬間、コショウが喉に詰まり咳き込んでしまう。
それが照準のブレを産み、UMP9に放たれた弾丸は頭ではなく右腕に飛び散った。
「カッ!?」
UMP9の右腕が銃事蜂の巣のように弾け飛ぶ。
「乗って!早くっ!!!??」
「────!!」
UMP9が転げ回りながら車に飛び込む。
CAWSショットガンを持った人形が舌なめずりする。
フルオートで散弾を叩きつける。
ガラスに無数のひびが入り2発が貫通、UMP45の横に座っていたHK416の腹に当たった。
「ガっ!?……っく!」
「大丈夫なの!?」
「うるさい!アクセルを踏め!!」
「分かったよ、死ねえっ!!────このクソアマッ!!」
撃たれたHK416が痛みに耐えながら、UMP45にアクセルを踏むように指示をだす。
全力でアクセルを踏みジープを発進させる。
「ヒッ!?」
CAWSは慌ててジープに発砲したが威力が足りず轟音を立てるジープに引き潰された。
「────ウウっ……!?くそっ!あのアマっ!?私……!!私を撃ちやがった……!!────痛っ!いたいっ……!!あああっ!!ちくしょう!!!」
UMP9は泣き喚きながら、撃たれた右腕を抑える。
「あ、暴れないでよ!?弾が抜けないから!」
「痛いっ!?痛いっ……!!ショットガンの弾丸にワイヤーを仕込んだボール弾……!?クソぉっ!!クソガァっ……!!」
傷口のショットガン弾を引き抜こうとするが抜こうとすればするほど、弾の中にワイヤーがUMP9を切り裂き、呻き声は一層強くなる。
その間に、UMP45は奪ったジープの無線を弄りながら、心当たのある指揮官に片っ端から連絡をかける。
HK416も人工血液で赤く染まった手で携帯で連絡を試みる。
「無線はダメ!まともそうな指揮官に繋がらない!携帯はどう?」
「こっちも同じよ……!おまけに腹も撃たれて最悪……!」
「くそっ!!携帯も無線もだめね……!」
HK416はこれまで一緒に仕事した中でさっきのPM-06のような指揮官とは違う"まとも"な指揮官に連絡を繰り返して一向に電話が繋がらない。
「……UMP45。ど、どうするの?」
「掛けても電話に出ないんじゃなくて、つながらないなら妨害を受けているだけの可能性があるかもしれない、I.O.P本社に行くわ……そこなら、まだ独自のネットワークが使えるはず」
幸いここはI.O.P本社とは遠くない。
UMP45はアクセルを全力で踏み、本社に向かった。
I.O.P本社
「……はい。事前にアポイントがある方ですね、どうぞ」
時間がない。
お粗末なやり方だが、守衛の端末の表示だけクラックして見掛けだけ書き換えた許可証を見せて、とにかく本社のある場所に向かう。
UMP9は撃たれた右腕を布やテープで血が出ないように何とか隠し、その上に大きめの服を着てごまかしている。
HK416も出血しないように、腹をホッチキスでふさいでいる。
「どこに行くの?」
「AR小隊のペルシカのいるところ。噂だけだけどそこにある人形がいる、そいつの力でAR小隊に連絡を取るのよ」
ペルシカの研究施設に到着する。
中を素早く確認すると、どうやらペルシカはなにかしら対応に追われているらしい。
「だから、そんなことウチはしらな……」
「────動かないで!!」
「ちょっ!?ど、どど、どういうこと!?」
「いいから指示に従いなさい!?」
UMP45はペルシカに銃を向けて、指示を従うように促す。
「あの……ペルシカさん、さっき怒鳴り声が……ハッ!?」
「く、クソっ!」
様子を見に来た白いメッシュをした人形がペルシカの様子を見に来た時、偶然404の襲撃に鉢合わせてしまう。
HK416が銃口をいま現れた人形に向けた。
だが404側も偶然だったため、白いメッシュの人形が拳銃を引き抜く機会を与えてしまい膠着状態になる。
「あなたが……幻の5人目?」
「……まぁ、そう呼ぶ方もいますね」
「た、助けて!RO!!」
「アンタは黙ってて!」
余裕がない状態で、事態を余計ややこしくするペルシカの発言は手負いのUMP9を怒らせる。
だが、暴力ではなく暴言にとどめているのは自分らはクメレンタの人形ほど外道ではないという自負からだろうか。
「こんなやり方で来たのは謝るけど、私達もいま余裕がないの。訳も分からず、グリフィンの人形に殺されかけたんだから」
「あなた達も!?昨日から同じようなクレームが相次いでるのよ!」
まさか、ここだけに限った話ではなかったのか。
「助けてほしいことがある。あなた、AR小隊の幻の5人目よね?」
白いメッシュの人形は怪訝そうな目でペルシカの方を確認する。
「答えてあげて」
「はい。元AR小隊のRO635です、今はペルシカ博士の研究助手中です」
「目的はROだったの?」
「ええ。……単刀直入に聞きたいけど、今でもAR小隊と連絡を取れる?アンタらの特別なネットワークで」
「わかりました。ですが、私から掛けさせてください」
<……ということよ>
<うっ……45姉>
電話ごしから苦しそうな息遣いが聞こえる。
はあ、はあ、と荒い息遣いでUMP9は無惨に変わった腕を押さえているんだろう。
「怪我してるの?」
<ええ。グリフィンの人形に撃たれた……>
<グリフィンは…クルーガーは何考えてるの!?>
この事実はペルシカにパニックに近い混乱を与えたらしい。
<アナタ達を昔雇ってた"クメレンタ"が関わってるとも言ってた。M4に直接話を聞いた方が早いわ>
「姉さんから、クメレンタの所をクビになって馬鹿にしていることは知っている、水掛け論は無意味だって……知ってるでしょう?」
<クビになったとしても、パイプがあったり脅されていないなんて誰が保証できる?ユーリが使えないから、手土産に元鞘に戻ろうと考えることをM4A1様は否定できるのかしら?>
「……あなたねぇ」
M4A1はこの時UMP45に殺意を覚えた。
私がクメレンタに同類と思われるのは我慢できる。殺人はしていないが、悪事に何度も加担したから。
「ペルシカさんはいる?」
<いるけど、何を話すつもり?>
「お願い、頼みたいことがあるの」
揉め事を起こしたって事態を悪化させるだけだ、
出来るだけ、極めて落ち着いた口調で平静を装ってペルシカに連絡を頼む。
UMP45はペルシカに代わってくれた。
「お願いよ。ペルシカさん、UMP9を直してあげて」
<冗談でしょ!?>
「この状況以上の冗談があるとでも?」
<分かったわよ>
渋々ペルシカは納得してUMP9の修理を始めた。
「UMP45、私も誠意を見せたわ。アナタも誠意を見せて私の話を聞いて」
<……わかった>
UMP45も話を聞いてくれる気になっているらしい。
M4A1も自分たちが護衛の仕事中に襲撃を受けた事を伝えた。
「その子供を守るためにさっきまで銃撃戦をしてたわ。部下も1人やられた……」
一番の若手だってのに、あんなにあっさり死んだ。
「コアごと破壊されてるから、バックアップの記憶も結構昔のを使うしかない、実質別人ね。ハッキリ言わせてもらうけど、私はこんな話で時間なんか食ってられないのよ」
<……>
UMP45は黙って話を聞いていた。
<大体の状況はわかった。なら、私達が置かれている状況は────>
無線の奥からガラスが割れたような音が聞こえた。
「何が起きたの!?」
<通りに人が……人が集まって……人が撃たれてる!!>
その頃、I.O.P本社が置かれている企業城下町では、大きめのデモが行われていた。
──── 人が消えてる!グリフィンは捜査してくれないの?
────外に出たい!!このままじゃ水を買えない!綺麗じゃない水道水じゃ死んでしまう!
────子供を迎えに行かせてよ!?この前誘拐事件があったの!!だれか、子供の様子を教えて!!
よくある不平不満ではない、完全に無計画なロックダウンの弊害で苦しんでいる住民たちのアラートだった。
実はこの企業城下街では、此処何日かロックダウンが敷かれており住民は買い物すら許されない状況だった。
ペルシカは研究室にこもりきりで全く気がついていなかったが……
人形達がしばらくフェンス越しで眺めていた時、突如事態が一変する。
住民たちがいた所から、火炎瓶が投げつけられたのだ。
それがデモしている住民のグループに直撃。
「────わああああああ!!??」
「────助けてくれええっ!!」
燃え上がる住民は人形に助けを求める。
状況を確認できない人形達はデモがヒートアップしたと勘違いして、催涙ガスを発射する。
だが、催涙ガスを使ったのは失敗だった。
催涙ガスが炎に反応し、さらに人が燃え上がっていく。
さらにテロと勘違いした人形達は棍棒で殴りつけ住民たちにどんどん暴力的になっていく。
その混乱をじっと眺めていた、集団がいた。
パニックと同時に警備の注意が散漫になったのを確認するとパニックの波の間から銃口を向け警備員たちに向かった射撃を始めた。
警備員たちは何が起きたかも分からず次々と倒れていく。
跳弾した弾丸が、ガラスに命中した。
UMP45が聞いたのはその時の後だ。
<コッチも撃たれました!警備員も撃たれてる!>
<ど、どど、どうするの!?>
<今考えてます!ミス・ペルシカ!勝手に動かないで!!>
「すぐにペルシカさんのところに行くわよ!」
M4A1はすぐに部隊にI.O.P本社に向かうように命令を出した。
近場で助かった。
本社のある街までは車で2時間で着いた。
車を出来るだけ飛ばして、I.O.P本社のほうに到着すると……
「もう始まってる!」
「最悪!!」
「こちら、M4。ただいま到着した……でも、状況は最悪よ」
<最悪!?警備が突破されたの!?>
「違う……!もっと、おそろしいが起きてる……」
街はまともな状態ではなかった。
武器を持ってる人形ですらまともな思考回路になっておらず手当たり次第に発砲していて、住民たちの死体と血の海が作り出されていた。
「自分の身を守ろうとして人形達が手当たり次第に撃ちまくってる!RO!裏口の駐車場から入ってなんとかして合流してみるけど、耐える用意をしておいて!」
<了解!でも、こっちも正面ゲートを破られてます!中に敵がいるかも……近接戦は考えておいてください>
M4A1はこんな状況で不敵に笑ってしまった。
近接戦?得意分野よ。
裏口のゲートを裏技で開けて、ビルの中に侵入する。
退勤リストをみる……。
今、このビルに残っているのはペルシカさんと謎の襲撃者に撃たれて死んだ警備員だけ。
他はこの状況を見て、我先に逃げ出したか。
1回ずつ調べるのは手間だ時間が限られている以上は出たとこ勝負をするしかない。
とにかく上に、上にと上がっていると一つ上の階から足音が聞こえた。
「……聞こえた?」
M4A1が質問すると全員がうん、と頷いた、
上の階に侵入者。銃声がなんども響いている。
おそらく銃撃戦をしている。
私たちが今いるのは27階、ペルシカさんのいる階はおそらくいつも自分が困っている46階だ。
「ペルシカさんを探している侵入者かもしれない。上の階だけ調べて、すぐにすぐに46階に行きましょう」
人形達は頷き、28階に登るとそのオフィスにつながる部屋に素早く侵入した。
「おのれ…!ここにも入ってきていたか!上の階を探らせているやつの状況を確認しろ!」
「クォーツ2!アンバー達がそっちの状況を尋ねている!」
<45階についたが、こちらも戦術人形と接敵して足止めされている!対象がいる46階はかなり強度のある扉で守られてて侵入は厳しいが……>
「それはこっちも同じことか……」
オフィスの中では10数名の兵士たちと人形達が撃ち合っている。
グリフィンが呼んだ救出部隊だろうか?
M4A1達はそっと、非常用階段の扉を開けてオフィスに入る。
そして、M4A1は無線での会話で人形部隊の方に話しかける。
<ねぇ、あなた達…何処の部隊?>
<通信……?お前、どこの所属だ?>
<ユーリ指揮官所属のM4A1です!ペルシカさんの救出に来ました!>
<ペルシカへの救援……>
突如、通信が切られたと思ったらいきなり撃たれた。
まさか、コイツらもUMP45が話していたような襲撃者なのか!?
「カバーする!前進だ!!」
「…まずいっ!」
しかも、最悪なことに反対側から兵士達が接近してくる。
これでは誰が敵なのか分からないまま挟み撃ちされる!
「撃ち続けろっ!」
「……え?あの声」
接近する男の声に聞き覚えがあった。
M4A1は意を決して声を張り上げた。
「ねぇ、エゴールさんですか!?」
「M4A1か……。こっちに来い」
マガジンを抜いたライフルを見せながら、M4A1は声のする方向に慎重に接近した。
エゴールの姿を見た時には案の定、拳銃を向けられる。
「……つかぬ事を、聞きますけど、なぜエゴールさん達はここに?」
「クルーガーの要請で救出に来た。貴様らこそ何故ここに?」
「ペルシカさんから。襲撃を受けたって救援要請を受け取ってそのまま助け出そうと思って……エゴールさん、私達は書記長の息子をバンカー8まで護衛しています……きっと私たちは敵同士ではありません」
「そういうことか…」
エゴールは銃を下げた。
「こちら"アンバー"。クオーツ全てにつげる。非常階段からくるグリフィンの人形は"ダイヤモンド"が手配した人形だ。味方だ、攻撃するな」
「こちら、M4A1。護衛作戦メンバー全員に通達。I.O.P社内に正規軍の兵士たちは私たちの味方よ。攻撃しないで」
<了解!だけど、どの合言葉を使えばいい>
「……どうします?」
「俺たちが"ヤマ"という、お前達は"カワ"といえ」
「わかりました……。合言葉はカワよ。ヤマと言う言葉が帰ってきたら仲間だから」
これである程度の識別は出来ただろう。
クルーガーがペルシカの保護をさせる為に何らかの方法でエゴール大尉達を動かしたなら、グリフィン全部が敵になったわけではなさそうだ。
「お前は行かないのか?」
M4A1はかぶりを振った。
ここを突破されたら、ペルシカを救出出来たとしてもさっきの私のような挟み撃ちになって最悪だ。
「ここで敵を食い止めます。大丈夫、私こう見えてもAR小隊の中で一番強いんですよ?」
救出を行うのはSTAR-15たちで問題なくできる。
一番強い私がやるべきなのはその最悪な事態をより確実に食い止める事だ。
M4A1が銃撃戦に参加して、5分。
形勢は徐々にこちらに傾いていた。
M4A1の正確かつ、俊敏な射撃は敵が身を晒したらあっけなく射殺するような勢いだった。
「このまま押し切るぞ!」
心強い援軍を前に、兵士達も自信を取り戻し始めていた。
一方の襲撃者側も自信を取り戻すべく思い切った行動に出る。
「このまま調子乗らせるか!掻き回してやる!」
M4A1がリロードした隙を狙って、サブマシガンを持った人形が颯爽と飛び出す。
「クッ!クソッ!!」
兵士がその接近に気がつくその反応は間に合わなかった。
射撃よりも早くスライディングをして射線をきり、寝滑りながらの姿勢でサブマシンガンを発射。
「────グッ!?」
兵士の1人がやられた。
やったのはサブマシンガンを握っている人形か、他の人形より素早く動くし射撃も正確だ。
あれはエリート人形か?
「あれは私がやります!」
M4A1の照準がサブマシンガンの人形に向けられる。
コイツは強い人形だ!M4A1はそれを直感で確信した。
なら、コイツは私が相手しなければならない。
人形が素早く発砲しながら、M4A1に接近する。
「くっ……!」
早い。
動きもそうだが、何より判断が早い。
厄介だな、そう思った時に隙ができたのかと思ったのか新手のハンドガンを持った人形が接近した。
「邪魔よ!」
ハンドガンを持った人形の腕を掴み、絶対にM4A1を狙えない方向に曲げた後、元に戻そうと抵抗した隙をついて腕を離した。
いきなり自由になったので体がふらつく、そこにつけ込むようにM4A1は敵の顔面を蹴り飛ばし、ガラスにまで追いやる。
そして、M4A1は数発5.56ミリを叩き込んでその人形を始末する。
「────クッ!」
1人倒したところで、見失ったチャンスを敵は見逃してくれないらしい。
サブマシンガンの銃撃がM4A1の背中に命中した。
「(服の裏にプレート入れててよかった……)」
衝撃から、ホローポイント弾である方を理解する。
レベル3プレートを入れてなければ間違いなくやられていた。
M4A1を倒せないと察知したのかサブマシンガンの人形は机で入り組んだ所に逃げ込む。
「逃がさないわよ!」
M4A1は奥で援護射撃しようとした人形2体をヘッドショットで始末して、銃を上に持ち上げて出来るだけコンパクトにする"ハイレディ"と言う構えを取る。
さらに脚部の出力を上げて、一気に距離を詰める。
追いつかれることを想定していなかったのか、スペックの差を知らないのかサブマシガンの人形は慌てて角に逃げ込む。
「フッ……」
角の陰に隠れて追い抜きを狙うつもりか?
そう言う戦法は"グリフィン"の人形なら大体は取っている。
同じ戦法をとるなら、その戦法を熟知している方が有利だ。
銃撃を伏せて躱すと、そのままサブマシガンの銃口を握り、銃と人形ごと壁に叩きつけると、M4A1は左足のホルスターからUSPを取り出し腹に3発、叩き込み体感を粉砕した。
そこから頭を掴んで床に転がした後にアサルトライフルの銃口を背中に向けて、数発発砲。
コアが粉砕された音が聞こえ、敵を倒した事を理解した。
「えげつねぇ……」
兵士達はM4A1に頼もしさとその攻撃的な戦いに驚愕を感じていた。
そのころ、STAR-15達も必死に階段を駆け上がり、目的の46階に駆け上がる。
ゆっくりと音が出ないように扉を開けると、兵士たちを撃っている人形達の背後が見えた。
……回り込んでやった。混乱してる状況なのに勝機が見えてSTAR-15以外の人形も表情が緩んでいる。
STAR-15達は背後から、人形達を奇襲次々と鴨撃ちにしていく。
後ろと前を取られた人形達は隠れるところを奪われた。
そうなったら悲惨だ、次々と戦法も戦術と使うことができずあっけなく片付けられてしまった。
「カワ!!」
人形達を倒した後、M4SOPMODⅡが大声で合言葉を叫ぶ。
「────合図!合図!ヤマ!!味方だ!撃つな!」
「今から出るから撃たないで!ヤマよ!ヤマ!!」
さっき目の前で兵士の銃弾が横切ったので、64式短機関銃も半泣きになりながら合言葉を叫んで兵士たちと合流する。
「目標は?」
「この上の階だ。だが、入れてくれない。パニックなんだよ、博士」
「お任せを私は博士と顔見知りです」
STAR-15が扉の前に立つ。
無線のスイッチをいれ、RO達と通信を接続する。
「回収にきたわ!開けて!!」
STAR-15の無線を聞いたのか、扉のロックが開く。
奥でこっちに銃口を向けたROの姿があったがすぐに降ろしてくれた。
「AR-15、まだ、他者評価の為の戦いを?」
「寝ても覚めても……ペルシカ博士、もう安全です。私達が送り届けます」
「まって!あの兵士達はなんなの?」
「クルーガーの知り合いがよこした人達らしいですよ。404小隊も出てきなさい、このクソみたいな場所から出るわよ!」
ペルシカが出た後、404小隊の人形達がゾロゾロと出てきた。
「M4A1、確保したわ!そっちは?」
<了解!駐車場で合流よ!……ああっ!クソッ!!>
明らかにM4A1が不機嫌そうだ。
何があったの?
「どうしたの?」
<襲撃してきたやつの中にクメレンタの部下がいた、PP-90よ>
「アイツか……」
STAR-15もその人形を覚えていた。
「知り合い?」
「ええ。クメレンタの部下よ、後方撹乱が得意な奴だったんだけど……やり過ぎてね、敵に恨まれた挙句ヘイトをコッチに押し付けたもんだから、散々な目にあったわ、アイツとは2度と組みたくないわね」
<その心配はないわ、そいつは私が徹底的にぶっ壊したから>
いいニュースを聞いたと、STAR-15は皮肉げに笑う。
<地下駐車場で合流するわ。404小隊、ここより安全な場所に行きたかったら私の提案に乗るべきよ>
「……乗りましょう、ここにいてもジリ貧よ」
意外にもM4A1の提案にHK416が乗った。
UMP45も他に道がなさそうなので、M4A1に乗ることにした。
「仲間増えたわね」
────
───
「こっち!」
地下駐車場にはM4A1が待っていた。
「どれで逃げるの!?」
M4A1はすぐ近くの社用車を指さす。
「あんな頼りないやつに!?いやよ!あの装甲車にしなさい!」
ペルシカは頼りない社用車に乗るのを嫌がり、近くのエゴール達の乗ってきたAPCを指さす。
だが、それは悪手である事をM4A1は理解していた。
「あれは目立ちます!私たちが囮になって先に出ます、あなたは小回りで速度もでる社用車で逃げないと!炎上した車内で窒息死しますよ!?」
「────窒息!?」
「はいそうです!窒息です!!いいですか!ペルシカさん!アイツらは民間人や警察に紛れて火炎瓶を投げ込むイカれた連中なんです!」
M4A1はAPCの後部ドアを指さす。
遠目で見ると塗装にしか見えないが、近くで見ると黒焦げの跡だった。
「後部ドアの惨状が見えますか?エゴール大尉がきた時も火炎瓶を投げ込まれて息ができず苦しいハメになったらしいんです!出る時はそれ以上の目に間に合いますよ!?そうなりたいんですか!?」
「イヤよ!」
「────なら、社用車に乗りなさい!!」
M4A1が強引にペルシカを説得させ、社用車に載せる。
<エゴールだ。このまま、ペルシカ教授をバンカー8まで護送する>
「お願いします。私達は一度囮になった後、護衛対象を回収、バンカー8に向かいます……さあいくわよ!」
人形達を載せたAPCがまず先に駐車場を出た時、暴徒に偽装した男たちが予想通り、火炎瓶をAPCに投げつける。
「よし!食いついた!!行けっ!!イケッ!!」
こちらの号令でペルシカをのせた社用車が勢いよく飛び出していく、予想通りペルシカがいるとも思わず目もくれない。
「成功よ!」
「よし……私たちもこのクソみたいな街からさっさとオサラバ……ああ!クソッ!!また火炎瓶が!?────ちくしょう!!ガラシ越しでも熱いって!?」
「────出して!ほら、アクセル!!」
火炎瓶がもう、何本もAPCに投げ込まれている。
M4A1達は蒸し焼きになる前に急いで装甲車を走らせ、M16A1達のいる方へ向かった。
────
───
「そこに向かう途中でMDRの無線を聞いたから、周波数を変える連絡を出して……ここにきたらクメレンタの部下に追われているあなた達を見つけて、そのまま助けたというわけ」
「……どこも地獄だな」
「────このままバンカー8に行きましょう。幸い、この車は速度も燃料もたくさんある」
モスクワ:バンカー8の玄関前にて
M4A1達が必死の逃走劇を繰り広げているのに対し、新ソ連の首都モスクワは比較的静音を保っていた。
その静音のバンカーの入り口は人知れず土嚢に固定されたPKM機関銃やRPK-74M機関銃のガンナーやAK-12アサルトライフルで武装した兵士達達が警備をしていた。
「このアサルトライフル……結構イケてるな。アキに用意されたライフルも良さそうだが……触ってみると、こっちも正解だって分かるよ」
施設の目立ちそうで全く見つからない場所で、ペルシカ達といったI.O.Pやグリフィンの重鎮を受け入れた後、
空いた時間を使ってユーリとあの方と"同じ側のスタッフ"は頼んでいたものをできる限り用意してもらったものを確認していた。
「"ダニエルディフェンス:MK18"そいつはアメリカ製の中でもかなりの高級ライフルしても知られている」
「気が利くな」
「だが、コイツは今の技術で外見しか再現できないコピー品だ。まぁ、基本が優れているからキチンと兵器の役目は果たすだろうが……」
「気にするな。要望通りにいかないのを能力でカバーするのも兵士の仕事さ、それと……これは……テストタイプか?」
中にある機械の骨格を指さす。
仲間は頷く。
「新しい量産モデルを作るための先行量産型だ、性能は……まぁ、今のよりは悪いが役に立つだろう」
「感謝する」
「気にするな。どうせ、開発側も飾るための量はとっておいてある言ってるしな」
「わかった。なら、コイツは切り札として取っておこう。じゃあ、挨拶回りに行ってくる」
「こんなくだらない争いで死ぬなよ。"あの方"はお前にまだまだやってもらいたいことがあるみたいだからな」
ユーリは「わかってる」と、ニヤリと笑う。
ドレスアップは済ませた、披露宴前の挨拶回りといこう。
「待たせたな」
「そうでもないわ」
ユーリは外で待っている銀色の髪の人形に話しかけた。
人形は首を振り、ユーリの隣についた。
スタッフ達はユーリ達を怪訝な視線でみていた。
「見て、みんなこっちを睨んでる。きっと、私のせいね」
視線は自分たちの基地のように悠然とあるかユーリではなく、人形の方に向いている。
「パパ、あなたも私に同じような視線を向ける?」
「難しい質問だな……」
本当に難しそうにユーリは視線を逸らした。
本当に答え辛い話題なんだろう。
「だが、今日の行動には感謝してる。それは、自信を持って言える。ありがとう、"AK-12"」
AK-12。
そう呼ばれた銀髪の人形は嬉しそうに、悔やむように短く頷いた。
「……。ええ、期待に応えるわ」
「リラックスしていけ。仲間には言ってないが、お前はいつだって期待以上さ」