たったひとつの願い   作:Jget

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籠城準備

 

新ソ連の首都モスクワに置かれたバンカー8は外で起きている混乱をよそに比較的静音を保っていた。

第三次世界の初期段階で発生した大規模核攻撃で、首脳陣の多くを失った教訓としてより多くの政治家や重要人物を匿うために数多く設置された避難施設……"バンカー"のひとつである。

 

「タバコあるか?」

「ねぇよ、取り上げられちまった」

 

その静音のバンカーの入り口は人知れず土嚢に固定されたPKM機関銃やRPK-74M機関銃のガンナーやAK-12アサルトライフルで武装し兵士達達が警備をしていたが……やはり、警備兵達も実感が沸かないらしく暇そうにしている。

 

「アイツら、随分余裕そうね。今は警察も対応しきれてないってのに」

「ここモスクワは全くと言っていいくらい被害がないからな……襲われでもないとそんなもんさ、だが……敵は今夜にもやってくるだろう」

 

ユーリの半歩後ろに付いている、AK-12は暇そうにうろついている警備兵達がここをしっかり守り切れるのか?と閉じた瞼から心配そうに眺めていた。

 

「お待たせしました」

「ユーリか」

 

エゴールが連れてきた、ペルシカの受け入れ準備を終えた……と思われるユーリが玄関の前で待っていたクルーガーの元に来ていた。

AK-12の姿も見えていたが、彼女が起こしてしまった事を知らないのか、クルーガーは気にしていない。

 

「前の銃はどうした?」

 

ユーリは前まで装備していた、AK-102ではなく……"DD MK18"をスリングで吊り下げていた。

 

「"スポンサー"からのご厚意ですよ。AR-15を使う戦術人形の指揮官なら、いっそコチラを選んだ方がいい……と提案されましてね」

 

ユーリはクルーガーが西側の武器を好んで使うなんてプライドはないのか?と言いたいのをなんとなく理解した。

でも、それは彼を「変わらないな」と呆れさせるだけだ。

 

「(スポンサー……?誰の事?書記長がそれなら、東側のAR-15を渡すはず……。誰が、パパを援助しているの?)」

 

ユーリのスポンサーというのは当然"あの方"だが、AK-12はあの方を知らないので、スポンサーの正体が誰なのか、皆目検討もついてない。

ユーリはクルーガーの方に視線を戻した。

 

「クルーガーさん?」

「ユーリ、俺は言ったはずだ。武器の能力、戦法、人間として能力の高さがいいから戦場で生き残れるわけではないとな」

「昔、私に説教臭く話してた、戦場で生き残る人は戦う理由の崇高さや臆病さ、自暴自棄という定規を持ちましょう、と?」

「あ、アキさん……」

 

クルーガーの発言をさもくだらなさそうに、リピートしながら気配もなくユーリの後ろから、Brenアサルトライフルの7.62×39モデルを持ったアキが現れた。

 

「ユーリの腰巾着か……」

「……ですって。ここにいる人間の3割は私が運んだのに、1割の人間も運べない民間軍事会社の社長様が腰巾着と表現されるとは……あはは!いいセンスをお持ちですね」

 

クルーガーは以前のユーリ達と仲の悪い時の癖が発露したようで、ユーリに今もなお従っているアキにも同様の態度を取るが、

アキはそれを意に介さず、純然な数値の比較と悪くみた表現でクルーガーを非難の仕返しをした。

 

「あら?なんか面白いことを言うなら、今がチャンスよ?AK-12?」

「い、いえ……今は、そのような状況ではありませんので」

 

AK-12は強張りそうな表情を無理やり我慢して、なるべく冷静にアキの話を流す。

アキは「そのような状況ね」といいながら続ける。

 

「クルーガー、伝言を伝えます。あなたはグリフィンの4割に裏切られた。あなたの人類の輝かしい未来の更新というのは、内輪揉めで起きた爆発の光という事ですか?それともおめおめと他人に便乗する事でしょうか?」

 

ユーリはそこを気にしている様子はなかった。

別のことを気にしているらしい。

だが、AK-12には違うだろう。

 

「情けないわよね?」

「い、いえ……」

「違うの?ああ、そっか。裏切られたやつより裏切った方が悪いか、それもそうよね!」

「……っ。はい」

 

グリフィンの件でクルーガーを避難するのと同時に、AK-12のことも責め立てているんだろう。

AK-12はアキの攻撃性が昔より悪化したように感じていた。そして、悪化させた原因が自分であることも理解していた。

 

「アキ、あまり虐めるな」

「はいはい。これ以上は控えますよ」

 

見兼ねたユーリが割って入る。

アキはすでに目的を果たし終えたのか、これ以上の追求はやめた。

 

「貴様の部下もお前も口数が多い。それに悪辣だ」

「……クルーガーさん。クメレンタ、という指揮官を知っておりますね?AR小隊が最初に配属された先の指揮官です」

 

クメレンタ。

その名前を出した時に、クルーガーの反応が変わった。

 

「どうしてもM4A1達がクビになるような人形とは思えない。何をやらせたか調べさせてもらいました」

 

ユーリはコピーした新聞記事を広げた。

 

「過去数百件のグリフィンでAR小隊の行動を公式データベース、民間のニュースを徹底的に漁りました。彼女たち随分と不可解な仕事に回されていたようですね、不自然な位におおく失踪事件に関わっている」

 

新聞記事には空き地に人が入ったドラム缶を捨てているM4A1らと思われる人形達がいた。

ユーリは冷静にクルーガーを問い詰める。

汚れ仕事をしていた人形の扱いが困って押し付けるならまだ許せる。

ただ、押し付けたタイミングと公聴会を被らせて、過去の罪状を追求して間接的に嵌めようとしている可能性があるなら話は別だ。

過去を清算せる場を権力を得るための政治に利用させるわけには行かないのだ。

 

ユーリが他にも写真を見せた。

それはクルーガーグリフィン&クルーガーを起業したばかりの写真のコピーだった。

 

「クメレンタ指揮官の写真見て驚きましたよ。正体があなたが汚れ仕事で使わせていた"グーラ・イヴァノワ"だったとは」

「内務省でも有名だったわよね。隠滅ためならどこまでも冷酷で残忍な事をする人間で……」

 

アキもクメレンタ……グーラのことを知っている。

クラーラの手で殺された人間の中にアキの知り合いもいたからだ。

 

「……随分と調べたな」

「前々からおかしかったんです。人形の分配がこの会社は偏っていた実力主義でも不自然なほど偏ってましたからね」

 

しばらく沈黙が続く。

……そして、その沈黙を破ったのはユーリだった。

 

「当初はさぞかし役にだったんでしょう。嫌がらせするライバルがありえないほど短期間で和解を申し出たのですから」

 

クルーガーは黙って話を聞いている。

そして、ユーリは続ける。

 

「でも、あなたがその功績に見合った優遇をし始めたら……クラーラは増長した。それでも、裏切らなかったから見て見ぬふりをしたようですが……今回の件でより保安局に鞍替えを持ちかけられて、グリフィンを裏切ったんでしょう?」

 

「彼女、かなり飽きっぽい人ですからね」とアキも続いた。

ユーリもアキもクメレンタとは何度か、本当に数えるほどの何度かだが会話したこともある。

クメレンタは飽きっぽくて、帰属意識が薄かった。

まるで、フィクションで定番の"悪徳傭兵"みたいに。

 

「そして、それなりの数の指揮官がクラーラについた。あなたは慌てて、唯一対抗できそうなこちらに頼った……私が書記長の息子の護衛を引き受けたら、矢継ぎ早に政府用人の護衛を引き受けたなんて」

「……お前の想像力には恐れ入る」

 

クルーガーはユーリの発言にYesもNoも回答していないが……いずれ今回の件で責任が追求された時、事実を喋らざる得ないだろう。

独断でやった事まで自分の責任を追いたがる男ではあるが、悪辣な罪までは背負わない男だ。

 

「随分好き放題講釈を垂れていたが、貴様はグリフィンを今日限りで辞めると伝えにきたのか?」

「いいえ、日和見かまして土壇場で裏切ったらここから部下もろとも叩き出すって、伝えてこいって言われたんですよ」

「誰にだ?」

「書記長だよ、分かるだろ?……そして────それは"俺"も同意見だ」

 

ユーリの一人称が"私"から"俺"に変わる。そして、先ほどまでの柔らかい物腰の声も突然鋭い声に切り替わった。

 

「クメレンタの部下が書記長の息子を護送している私の部下に対して……AR小隊を待ち伏せして襲ったようだ。あの人は控えめに言ってキレてたぞ?ああ、俺もエゴールもカンカンだ」

 

ユーリがM4A1とのやりとりを思い出す。

 

────街の人が……みんな……アイツらにっ

 

悲痛そうな声だった。

いかに住民が地獄を見せられたのかが想像がつく。

 

「あそこは責任を持って守るって契約した場所だ。なのにそちらの監督不行き届きのせいで今も散々な目に合ってる。俺はこの後の為に後回し。アンタも被害者で、これはこれは八つ当たりだ。……だが、アンタらは今は厳しい立場にいることを覚えておけ」

 

ユーリはクルーガーに背を向け、M4A1らを迎えにいこうとした。

 

「あっ……」

 

AK-12はユーリの後をそそくさと着いていく。

2人は刺客が今日にでも襲いかかる事を予期していた。

 

「ユーリ、俺からも質問がある」

「……何を?」

 

クルーガーからの質問が来る。

ユーリは足を止めて、彼の方に振り向いた。

 

「お前はこの件が終わってもグリフィンを辞めない理由はAR小隊が気になるからか?」

「……ご想像にお任せするよ」

 

ユーリはクルーガーの質問に否定をしなかった。

肯定もせず、ただ一言だけの回答だった。

気づけばユーリから殺気が消えていた。

 

「ふっ……」

 

そのやりとりを見てアキは顔を伏せた。

裏切られて泣きそうになったわけではない、どうしても笑いを堪えきれずに顔を隠したのだ。

ユーリが残る理由は一つ、"あの方"の命令を受けているから。

M4A1を始めとしたAR小隊の人形どもがユーリに頼り切りという現状で残るわけではない。

そう思うだけの理由はある。

アキの知るユーリはもう少しドライなのだ。

仲間や部下の命を守ろうと誠心誠意努力できる人間だが、何よりも命令を忠実に実行する。

あの方が"グリフィンをやめろ"と言ったら、彼は迷いなく抜けるだろう。

そこにM4A1に対する情の介在は通用しない。

 

<こちら、AR小隊のM4A1!対象をバンカー8まで送りたい!許可を!>

「……なんて、言ってるそばから」

 

迎えに動いたのは正解だった。

ユーリが無線を取る。

 

「ユーリ・フレーヴェン指揮官だ。3番駐車場の入り口で止まれ、そこで確認する」

<了解!>

 

ユーリはスイッチを入れ替え、周波数を警備兵たちの繋がっているものに切り替える。

 

「こちら"ダイヤモンド"です」

<はい、中尉どの>

「元、中尉ですよ」

<我々にとっては今でも中尉です>

「……どうも。本題に入ります。3番ゲートに護衛対象を載せた車両が来ます、トラップの解除を希望します」

<了解、直ちに実行します>

 

ユーリの事をよく知っている警備兵が3番ゲートにつながる道路のトラップを解除する。

 

「そこで止まって!!」

 

10分後……指示のあったAPC車両が指定された警備兵がいる入り口で止まる。

 

「車に集まれ!」

 

APC車両の状態を確認する為、警備兵たちが集まった。

 

「ひでぇな……」

「一体、モスクワの外で何が起きてんだ?」

 

待機している警備兵たちはAPCの惨状に衝撃を受けていた。

 

「悪い!通して」

「あ、中尉殿!」

 

人の集まりを掻き分けてAPCに近づくユーリとアキを見て急いで、道を開ける。

ユーリは兵に礼を言うと、コンコンと窓ガラスを叩いた。

 

「指揮官……」

「よく頑張ったな…M4、しばらくは安全だ」

 

窓ガラスが下にスライドしていき、ユーリとM4A1が顔を合わせる。

1週間くらいしか、間が空いてないのにとても長い時間離れているようにM4A1は感じた。

 

「わかりました。しばらく……ですか」

「そう、しばらくよ。思ってたよりしぶといわねぇ、どうやら肩書だけの人形だけってわけじゃなさそうね」

 

アキは生きていることをさぞ意外そうにM4A1に挨拶する。

 

「積もる話は後だ、警備兵達が気になってる。中を確認させてくれ」

「……どうぞ」

 

後部ドアがゆっくりと開く。

爆弾が入っているかもしれない。

兵士達が緊張しながら中を除くが入っているのは疲れ切ったように先で寝転がっている戦術人形と護衛対象だけだった。

 

「以上なし!OKです!」

「だが、外もひでぇが、中も相当だ…」

 

兵士がハンドサインで異常がないことを確認する。

ゲート係がその合図を見て柵を自動で外し、APCはバンカー8の地下駐車場の中に入っていく。

 

APCを停めると奥から、銀色の髪を靡かせた人形が迎えにやってきた。

 

「随分やられたわね」

「なによ?ここの警備人形は他人を慮(おもんばか)ってくれないの?」

「ちがう!あれは……!」

 

奥から迎えに来た人形を見て、AN-94は驚愕する。

 

「AK-12!?どうしてここに!?」

「ちょっと、頼み事をされてね。手伝いに来たわ」

 

AK-12は困り顔で説明する。

それでも構わないと、AN-94には喜びと驚愕が入り混じっている。

 

「……アンタの同僚?」

「ああ」

 

AN-94はSTAR-15に頷く。

いままで見た中で一番嬉しそうなAN-94を見たと思う。

 

「挨拶の前に護衛対象を一番安全な場所に移しましょう。奥までいけば案内人がいるはずよ」

 

ゾロゾロと人形達が降車してバンカーの中に入っていく。

……ただ、一体の人形をのぞいて。

M4A1は中に入る時、通りすがりにこちらを警戒した視線でAK-12を睨みつけていた。

 

「困ったわね」

 

あのM4A1っていう人形……銃のセーフティを外していた。

警戒している。

十中八九、私の過去を知っている。

 

「……静かね」

「ここにいたのか?」

「ずっとね」

 

しばらくは敵は来ないだろう。

装備を整えに来たAK-12の元にユーリが尋ねてきた。

 

「AK-12、お前の配置が決まった」

「どこ?」

「俺の隣だ」

 

AK-12は今の発言が聞き間違えじゃないのか?と耳を疑う。

だが、ユーリは冗談で話してるわけじゃないらしい。

 

「M4の報告でライノが使われているのが確認された」

「……ライノ?」

「保安局が少数採用するはずだった四足歩行の重火力ドローンだ。外務省に試験運用するように押し付けられたんだが……試験当日にお前が俺たちに襲いかかって」

 

あの兵器このことか。

たしか、勝手がわからないから動物方面の知識に明るい民間の大学院の人達を読んだんだっけ……でも、私はその人達を機密保持の為に……

命乞いする、彼らをこの手で殺害した。

 

「……」

 

AK-12は唇を噛み締める。

 

「……ごめん」

「今更だろ」

 

そうだ。

今更謝ってももう遅い。

そう思うと、M4A1に警戒されている事実は仕方ないのかもしれないと思ってしまう。

 

「……どうした?」

 

私は何か変なことをしたらしい。

ユーリはAK-12の顔を覗き込む。

 

「M4A1っていう人形はあなたの部下でしょう?」

「まぁ、そうだな」

「きっと、アイツは私のやった事を知ってる。誰が喋ったのか、そんなのはどうでもいいか。とにかく、私がアンタの隣にいるのはやめた方がいいんじゃない?」

 

自分がM4A1なら、そんなことをしたやつをその場で殺す。

人形の恥晒しという意味でもあるけれど、また味方を裏切るかもしれないやつなんて近くに置いておきたくない。

 

「前のようにはならないさ。あれは不意打ちだったからな、今度は違う」

「"あの装備を?"」

 

ユーリは頷く。

どうやらまだ開けられていないサプライボックスの中に対E.L.I.Dで使われるようなあの装備が。

 

「遅かれ早かれ、俺たちはここで籠城しなきゃならない。俺の近くにいろ。この作戦が終わるまでは守ってやる……大事な証人だからな」

 

大事な、証人か。

それが彼なりの精一杯の口実である事をAK-12何となくではあるが理解してしまった。

 

「そうね、よろしくお願いね。"中尉様"」

 

────

───

「しかし……ここにもグリフィンの人形がいるなんてな。どこも散々ときた。同じようにグリフィン同士で打ち合いをしたらしい」

 

バンカーの外側にある会議室に向かうM16A1が言いたいのは、バンカーで合流したグリフィンの戦術人形達の事だろう。

 

「えぇ。あちこちで散々な事が起きているけど、まさかグリフィン同士で撃ち合いする羽目になったのが私たちだけじゃなかったなんてね」

 

バンカーの中では同じように政府の重役を護衛していたグリフィンの人形達が別のグリフィン部隊や正体不明の部隊に攻撃された人形達と合流した。

 

「それに、全部の護衛部隊がここに来てませんね。ということは…」

「やめておけ、RO635。こんな状態だからこそ、私たちしか生き残ってないと考えてはいけない」

 

M16A1、STAR-15、RO635、そしてAN-94が会議室に到着する。

 

「あつつ……!」

「我慢して。今、ガラスを抜いたから。あとはここを固定して……」

 

「くそっ!!人形の解体師め!自分が生き残るたまにアタシを解体する気か!」

「ちがうって!必ず治すから信じてよ!?」

 

会議室には先に手当されているいるHK416とその手当てをしているM4A1とM4SOPMODⅡが先におり、人形達の応急処置に追われていた。

 

「よぉ、416。お前もざまあないな」

「うるさい!!……あっ!?いだっ!?」

「ああもう。まだ、固定してないのに動くから……」

 

M16A1と喧嘩しそうなHK416が固定完了してない素体でテーブルを叩き、激痛が走る。

それを迷惑そうに対処するM4A1とはまだ、話ができなさそうだ。

仕方なく、AN-94は辺りを見回す。

グリフィンの社長のクルーガー

ユーリを含めて指揮官は3人。

私たちと違って無傷なグリフィン人魚、3体ほど。

私たちよりマシなグリフィン人形、6体ほど。

私たちと同じくらいボロボロのグリフィン人形、8体ほど。

私たち以上にボロボロのグリフィン人形、10体ほど。

 

「はい。これで、固定できた……」

「っ……世話かけるわね」

「これは応急処置だから、無理しすぎると外れること忘れないで……あ、AN-94。来てたのね?気づかなくてごめん」

 

AN-94は気にしていないと首を横に振る。

 

「……忙しいんだろ?」

「……そうね」

 

M4A1は会議室にいる他の人形たちを見る、ここには今、戦える人形を全部集めているけれど、怪我をしている人形も例外ではなく……そういう人形は皆、痛みでうめき声を挙げていた。

 

ガチャンと扉が開く。

会議室の中にクルーガーとユーリ、アキ、エゴール……そして

 

「あら?遅刻?」

「いいや?」

 

そして、AK-12が入っていた。

 

「ごめん、AKS-74u。ちょっと席を変えるわ、固定はコレで十分だから」

「あ、うん。ありが、とう?」

 

M4A1はAK-12が突然襲いかからないか、警戒した視線で見つめながら彼女の後ろの席に座った。

 

「よく集まったな」

「……だれ?」

「いや、軍人さんでしょ?」

 

エゴールが言葉をかけるが、人形達は軍人であることしかわからない。

 

「紹介する。彼はバンカー8にペルシカ教授を輸送した正規軍のエゴール大尉だ。AR小隊とも……一応は顔見知りでいいのかな?」

 

ユーリはエゴールの紹介と一緒にM4A1をチラリとみる。

M4A1は頷いた。

ユーリは視線がAK-12の方に向いているのに気がついた。

警戒している……エゴールか、それとも人形を信頼できないアキが悪口代わりにバラしたのか。

いずれにせよ、AK-12がやったことは少なくともM4A1に知られていると見ていいだろう。

 

「はい。エゴール大尉と協力して、ペルシカ教授の救出に成功しました。この人は……味方ですよ」

 

グリフィンの人形達は今誰が信じられるか分かったものではない。

……だからこそ、確実に信用できるのは誰か知りたいはず。

M4A1によるエゴールの保証は場の雰囲気を多少落ち着かせた。

 

「……さて、知っての通り状況は最悪だ」

 

ユーリはプロジェクターを起動した。

ホログラムの画像がホワイトボードに貼り付けられる。

 

「まず、ここ。バンカー8の件だが……モスクワは保安局の徹底的な情報規制が敷かれていて、書記長が隠れていること、そしてその護衛を追いかけ回す為にあちこちで時間が起きていることも事は誰も知らない」

 

バンカー8はモスクワの端寄りの場所にある。

守りを固めたり、核攻撃から身を隠すにはちょうどいいところがここなんだろう。

 

「まぁ、コレが明るみになっても市民がなんて事するんだ、と言い出す奴は市民の中にはいないだろう……」

「どうして?」

 

M4SOPMODⅡがある意味当然の疑問を口にした。

グリフィンに例えれば、クルーガーが狙われているようなものだ。

 

「不人気なのよ、あの人」

 

だが、その答えはすぐにAK-12が答える。

 

「繰り上がりの書記長だし。それに彼の行った配分の見直し政策は"被支配地域"の分配を増やした。それが難民嫌いの縄張り意識の高い若者や愛国心が強い連中、仲間が死んだ事を無駄にしたくない連中の不況を貰ってる」

 

縄張り意識の高い連中は被支配地域とも呼べるベラルーシ、ハンガリー、キルギスという国々に差別的だ。

愛国心が強いのは、自分たちが優先されないと満足はできない。

そして、最後仲間が犠牲になった連中が厄介だ。

彼らは、自分の仲間達が死んだことに報いる為ならどんな外道も許されると勘違いしている。それは、そもそもその過程でどれほどの罪のない人間が自分たちの"憂さ晴らし"に殺されているのを忘れているほどだ。

 

「つまり、書記長が死のうが身内に殺されたと知ればパニックも怒りも沸かないだろう。……なにせ」

 

なにせ、と言うところでユーリはそれ以上はやめた。

 

「こちらの守りの話に入ろう。ここは、核攻撃を想定した新ソ連のシェルター施設だ。残念ながら火器兵装の数は心許ない」

 

シェルターなのだからそれはそうだ。

大きい爆撃から身を隠して、ある程度救助なりが来るまで耐えるのがこの施設の目的。

 

「つまり、君たちは戦力として貴重だ。特に、比較的低火力はあるが、迫撃砲を打てる戦力もある」

 

迫撃砲……多分、HK416のM320グレネードランチャーとM4SOPMODⅡのM203グレネードランチャーの事を話しているんだろう。

 

「そして、それは敵も同じ」

 

ユーリは別のホログラム画像に切り替える。

戦車や武装ヘリコプターを首都のど真ん中に出そうものなら、それこそパニックだろう。

建造物や人がヘリコプターや戦車の防弾で吹き飛ばされる映像が最終的にバツのマークに塗りつぶされた。

 

他国やテロリストと対峙しているわけでもない状況だ。

不人気の書記長が命の危機に晒されようが知ったこっちゃないが突然、自国の兵器が自国の軍人に向けられたら、誰を信じたら良いか分からずモスクワの秩序は崩壊する。

それは、ただ自分達の罪を隠蔽したい連中からしたら望まない結果だ。

 

だから、敵も民間人にバレない兵数でこちらを攻める。

だが……それにしては

 

「……どうした?M4?」

「いえ……それにしては、グリフィンの保護地域などを攻撃するのはリスクが高いのでは?……と」

「その事なら国民は気にしない」

 

M4A1の質問にエゴールが答えた。

 

「そもそも、グリフィンが警備している場所は政府から"売られた"地域をグリフィンが"落札"した地域だ。政府の意向、政策は反映されるが連中にとっては他人が死んだとしか思わない」

 

冷たい話だ。PMCsの管理下に入ったら他人か。

要は殺されようが逃げ惑うが勝手にしろというのがこの国の人間の考え方なのか。

 

それを聞いた人形たちの反応は様々だ。

怒るやつ、吐き気がするやつ、見捨てられることに寒気のするやつ、どうでも良いやつ。

 

「町が戦場になるほどの規模は持ってこれないだろう。だが、民間車両に偽装した戦闘車両で襲いにくる可能性は十分ある。楽観視は出来ない」

「兵器の配置はどうする?ユーリ?」

「敵はいつ攻めてくる?」

 

ユーリは少し考え、まとめて回答した方がいい事に気がついた。

 

「まとめて回答します。しばらく前にカーター将軍と連絡が取れましてね。増援を送っており、明日には到着するらしいです。時間がないのは、保安局のほうです。彼等の状況から見て、速攻で攻める必要があり、尚且つこの遮蔽物が少ないここに近づく為に敵は戦力が戦術人形である事を最大限利用するはず……夜に攻めるかと……持久戦をするために、多方面を監視できるよう分散して配置するべきです」

 

AN-94が手を挙げた。

 

「援軍を待たなくても、モスクワにも軍隊はともかく警察がいるはずでは?流石にモスクワにも警察や駐留している人にも防衛を頼めるのでは?」

「断られたわ」

 

地元の人間が助けてくれる。

そんな当たり前の望みはAK-12がきっぱり否定した。

 

「モスクワにいる連中は基本的に保安局と内務者の管轄よ。あいつら。圧力をかけられて動けなくしてる」

 

 

モスクワからの増援は期待できない。

 

「だから、モスクワの外に連絡を頼んだ……そして、我々は彼らが来てくれるまで持ちこたえないといけない」

 

ユーリは今度はバンカーのマップを出した。

バンカー8は来た時に見たときに確認した、2階建ての建物の上にさらに何層もの地下に繋がっているハイヴ上の建物だ。

 

「知っての通り、書記長は地下で数名の護衛と一緒にかくまわれており。彼らがここに来るにはこの最高機密レベルのロックを突破する必要があるけれど…ここのロックを考えたのは保安局だ。当然、設計時の脆弱性は知っているだろう。ここに来られたらアウト一歩手前だ」

 

建物一階と二階にグループのマークが置かれる。

 

「先制攻撃が肝だ。一階は戦術人形とエゴール大尉の部下の混合チーム、二階は戦術人形チームに対応してもらう」

 

二階で補足して、先制攻撃。突破されたらそれよりも大きな火力をそろえた一階で迎えうつという流れか。

 

「屋上には数名のエゴールの部下を置く。彼らしか精密狙撃用途のライフルを持っていないからな……」

 

SV-98。こんな時にあなたがいてくれたらよかったのに。

襲撃時に大破してコアは粉々に砕け散り、四肢がバラバラになったSV‐98のことをSTAR-15は思い出した。

この編成で明日までか。

 

「書記長の居る地下は3層の階段で仕切られてる。地下1階は404小隊とアキ地下2階はAR小隊のAR-15とM16A1」

「SOPⅡはランチャー役としてだが、M4A1は?」

「もう一つのランチャー護衛さ…。SOPⅡは広く見渡せる2階、HK416とM4A1は狙われにくい1階の裏口で砲撃する」

「416、M4A1を死なせたら容赦しねえからな」

「姉さん。それは逆では……」

「話を続ける。そして、最後の最後は近接戦闘がロック前は得意なエゴール大尉とその中でも選りすぐりの部下だ」

「指揮官は?」

「私は玄関だ。先方でライノを出すだろう…そいつを迎え撃つ。こっちが連絡取れなくなって以降のAR小隊の指揮権はクルーガー社長に任せる……よろしいですね?」

「勝手にしろ」

 

午前中にあれだけ言ったクルーガーを結局は一番奥に置いていたユーリは我ながらなんだかんだ甘いことをしたとも思う。

 

「指揮官、流石に貴方だけではあのドローンは」

「M4、大丈夫だ」

 

それとどこか生き残る可能性が低いかという同時に理の適った布陣を考えるのに抵抗がなくなっている自分は何だかんだ”指揮官”になっているなと思ってしまう。

 

「いいか。今日、明日が肝心だ。絶対に落とされるなよ!」

「了解!」

 

人形や兵士たちは解散し、ユーリとエゴールは調整のため会議室に残っていた。

 

「M4」

「AN-94。どうかした?」

「いや……ユーリ指揮官の件だ」

「彼は……大丈夫よ」

「何故?そう思える根拠は?」

「……呆れるかもしれないけど、あの人が"大丈夫"って、言ったから。あの人は私にできない約束はしなかった」

 

人形たちが武器庫に戻ると中に大量のアタッチメントが詰められていた箱が待っていた。

 

 

「すごい……これ、実物のホロサイトじゃない?」

「これ、いくらするっけ?」

「あなたの年収を超えるほどのレーザーサイトよ」

 

人形たちは箱の中に入っている高級な”実物”の装備に驚いていた。

しかも、全員が貰っても余るほどの数が敷き詰められていた」

 

「しかし、こんなにいい装備を貰えるなんて地獄に仏か?」

 

M16A1もキャリングハンドルを介して直付けできるACOGサイトを手に取りながら、武器庫で壁に背を預ける”アキ”に聞いた。

 

「ええ。全部使っていいわよ、これはあたしたちのスポンサー様からのご厚意だからね」

「スポンサー?」

 

アキはニッと笑う。

これ以上聞けば殺す。そんな笑顔だった。

M4A1も箱に入っていたとある武器に注目していた。

 

「へえ……これは、いいものね」

「M4も良いおもちゃを見つけたらしい。私もそのスポンサーには感謝しとくよ。……それにしても、あんた変なパワードスーツを着ているな」

 

M16A1の言う通り、アキの身にまとっているパワードスーツは一般的な全身を鋼鉄で身にまとう達磨のような形をしたものとは違い、骨のような外骨格を四肢を重点的に覆った鋭角的なパワードスーツを着ていた。

 

「そんか頼り甲斐のないやつで何するよ?」

「ふっ、お楽しみよ」

 

そうして、人形たちができる限りの装備を整えて。

それぞれが持ち場で土嚢などを積んでいたころ……

 

「AK-12」

 

AK-12が呼び止められる。

 

「少し、話せる?」

 

廊下から外を見ていたAK-12がたまたまあったM4A1に話しかけられる。

外の喧騒をチラリと確認する、外はまだ静かだ。

銃撃戦の気配はない。

 

「わかった。少しだけね」

 

M4からの私刑を覚悟していた。

廊下の奥の方まで移動した途端、AK-12の目の前に岩石のような拳がめり込むのではないかって。

 

「私をぶん殴るんじゃないの?」

「違う。話をしたいって言ったじゃない」

 

しかし、M4A1は何もしなかった。

 

「……そう。で?私に何を聞くの?」

 

AK-12は近くの消火器にいかにも行儀の悪い姿勢で座った。

 

「AN-94から、あなたのことを聞いたわ。あなたのおかげで自分の壊れた自信を取り戻せたって」

「あの子は一度プライドをいいようにへし折られちゃってね。まあ、ほとんど自業自得なんだけど……そんな時に新しい相方とソリが合わなくて、代わりに選んだのがAN-94なの。それがあの子にとって救いだったんでしょう」

「私も似たような経験がある。エリートだったけど。生まれた時から周りに妬まれて、見捨てられた。それを指揮官が助けてくれた」

 

AK-12は少し、懐かしむように駐車場のライトを見た。

外務省に試験運用で配属されたときに感じていたプライドっていうものは、落ちこぼれという名のもとに徹底的にへし折られた。

部隊の人間からは「役立たず」「人型粗大ごみ」なんてさんざん陰口もたたかれたけど、ユーリは私にやる気がある限り付き合ってくれた。

だから、今の逆境だらけの状況もやせ我慢で踏ん張れている。

 

「あなたと私が同じで。同情でもしてくれるって事?」

「して欲しいならする、でもあなたはそんなの欲しがらないでしょ?むしろ────いえ、それよりも私は前にあなたがやったことに後悔していることを知っている。あのスレイヴドールの押し寄せる戦場に私も現場にいたのよ」

 

あの時、隠れていたネズミか。

ユーリが追い払ったと思ったが、M4A1はしぶとく息をひそめて残っていたらしい。

 

「やっぱり、私がやった事を知っているんじゃない。ユーリに危害を加える前に私をここで始末しようって?」

「確かに私はあなたがやったことをムカついている。けど、私がそんな単細胞なことをするなら会ったらすぐ引き金を引いてる。私が言いたいのは、あなたは信頼できるってことを伝えに来た」

 

最初はとにかく許せなかったし、プロトタイプという事でしか接点のなく、ほとんど無関係なはずのAN-94にすら必要以上に敵意を向けてしまったくらいにはAK-12のことが嫌いだった。

 

けれども、AN-94から聞いたAK-12の人柄やあの森で吐露した彼女の強い後悔を見て、考えを少しずつ改めようと思った。

 

「私は……ユーリのことが好き。だから、あなたのやったことはまだ許すことは出来ない。でも、それとは別に本気であなたがあの人の為に出来ることがあるなら、償いの機会でなくても全力で取り組もうと思える人だとも理解している」

 

M4A1はAK-12に面と向かってユーリが好きなことを話した。

 

「あの人の所にいて、わかったことがある」

「例えば?」

「あの人は……どういうわけか死にたがっている。それほど、自分を憎いって思ってる」

 

AK-12は地面に目を向ける。

よくそこまで理解しているなと。

 

「死にたがってると思う理由は何?」

「あの人は司令部が陥落していないのに、私たちと戦場に出ている場面がいくつかある。それにとらなくていいいのちにかような責任まで積極的に取ろうとしている。ただのお人よしでは説明がつかないわ。それにアナタまで側に置くなんて……」

 

確かに、あんな目に合わせた自分をそばに置いたり「信じる」なんて言葉は使わない。

そんな事にすら気が付かず、M4A1という女はそれを理解していた。

 

「良い分析ね。確かにユーリの事を愛しているのは伝わったわ。恋愛的に」

「あなたもユーリの事を愛しているはず……姉と妹をしているからね。だからわかるの、アナタの家族愛をね。あなた、指揮官をお父さんの様に思ってない?」

「……っ」

 

そこまで言い当てられるなんて、思っていなかった。

 

「アンタの姉妹は幸せでしょうね。これは皮肉じゃない。本心で、羨ましいって、思って言ってる」

「素直に受け取っておくわ。結論から言うわ、アナタのことは言わないその代わりやって欲しいことがある」

 

「なにそれ?」

 

M4A1はAK-12に取り出した装置を見せる。

 

「アンタ……”それ”で、何をするつもり?」

「……お楽しみよ」

 

お楽しみとはいうが、"それ"はとても楽しみで使えるものじゃない。

 

「もし、自分が同じようなことになったら迷わず、私のコアを壊してほしい」

「また私が味方殺しさせろって?」

「アイツらに後がないことは知ってるでしょ?最悪死に物狂いで襲ってくる。そうなったら、こっちも死に物狂いでやるしかない」

 

────

───

 

「あのバカ…」

「馬鹿?」

 

アキと同じようなアーマーを観に纏ったユーリは何の意味かわからず聞き直した。

AK-12はM4A1との会話を終えて予定通りバンカーの玄関に布陣していた。

 

「あんたも悪い男よ。これで父親代わりなんだから私の世間体にも響く」

「お前の世間体は底値だろ…」

 

事実を言われてはいるがお前に言われたくないというような言葉をかけられてAK-12はムッとした。

 

「ここ2日を凌いで、カーター将軍の援軍が来て……数ヶ月後には公聴会会だけど、怖くないの?」

 

AK-12は話を公聴会の話に戻した。

 

「……怖いって?」

「わかり切った事を聞かないで。アンタはこの国でとっても余計な話をしようとしてるのよ?余計な話をして、世間から恨まれる」

 

たしかにこの真実はこの国で信じていた人間たちには凄まじい衝撃を生むだろう。

だが、その事実があったとしても……

 

「どうだろうか……確かに恨まれはするだろうけど、今更人形を頼り切っている人間たちがこの真実を知ったとしてもあれこれ自己弁護を並び立てて人形を使い続けるんじゃないか?」

「確かにその光景は目に浮かぶわ…保安局でもその是非で揉めたからね。でも、それで世の中大して変わらないならなんでグリフィンにらこれ以上いられないかもなんて話したのよ?」

 

ユーリはひとつため息をついた。

 

「お前なら言ってもいいだろ。俺はな、あの公聴会の後に除隊の件にされた査問を正式にやり直すことになってる」

 

公聴会の後に行われる査問のやり直し……

それが彼らのすべての真実を明かされた後に行われる。

 

「出来レースさ。査問会に呼びつけられるのは俺に同情的な奴ばっかり。それに、俺の場合は冤罪だからな…ま、確実に名誉をというやつを取り戻して原隊復帰。公聴会で俺を呼びつける理由はそういうものさ。事実を明らかにするのは俺がそれに便乗しただけ」

 

そうか誰も彼もがユーリたちを擁護するものばかりで来られた査問会。

それは形式的なもので現代復帰のための都合のいい言い訳か。

 

「なら、グリフィンなんていうでかい組織いなくても裏社会でコソコソこしてた方がもっと安定して軍に戻れたんじゃないの?あんな心細い数の人形しか貸してくれないグリフィンに入った理由は?」

「それは、まあ…別の理由があってさ。中身は教えられない」

「なによ?気になる事言うじゃない?これが最後の再会かもしれないんだからさ、ちょっとは────」

<────大変です!中尉!中尉!!>

 

2人の会話は鳴り響くパニック越しの報告で遮られた。

 

「……元中尉です。どうしました?」

<正面玄関に見た事ないドローンが向かってきます!かなりでかい!!>

「……見た目は?」

< サイのような見た目をしています!!>

 

来たか。

サイのような見た目……M4A1が装甲車で逃げる時に追いかけたドローンか!

初めて聞くような駆動音と銃撃音が鳴り響く。

 

「くっ!!」

 

玄関に置かれていたストッパーがあっけなく砕け散る。

そして、ドシン!ドシン!と地鳴りのような足音が響き渡る。

 

「AK-12、準備は?」

「出来てるわよ」

 

2人は迫り来るドローンを相手するため武器を構えた。

 

 

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