たったひとつの願い   作:Jget

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籠城戦

 

守衛がパニックになりながら報告したライノの接近はAN-94たちにも聞こえていた。

地鳴りのような足音も聞こえる。

今にも、あの時のチェイスを思い出してしまいそうだ。

 

「AK-12……大丈夫なのか?」

「どうかした?」

 

M4SOPMODⅡがAN-94の肩に触る。

 

「あ、ああ……」

「友達、なんだっけ?」

「は?」

「AK-12のこと」

 

友達……AK-12との関係はそういう者だろうか?

AR小隊とは友達と言える。

だが、AK-12と関係は彼女たちと同じか?

ただの同僚といえば踏み込みすぎている……

 

「分からない」

「そっか」

 

AN-94はAK-12を見る。

だが、AK-12に緊張はあれど、動揺も不満もなさそうだ。

 

「AK-12に指揮官は信頼されている。それに、賭けるしかない」

 

それだけで会話は終わってしまった。

どうせ、今から行っても遅い。

飛び出してしまえばグレネーダーのM4SOPMODⅡを守れない。

ユーリ指揮官とAK-12自身に賭けるしかないのだ。

 

そのころ、当人のAK-12はユーリとともにライノを待ち構えていた。

 

「お出ましだ。来るぞ」

 

地鳴りのような駆動音を挙げながら、機械のサイの形をした重火力ドローン”ライノ”が突撃してくる。

 

「伏せろ!」

「────!!!」

 

突如、ライノが備え付けられているマシンガンで検問所を粉砕し、突撃してきた。

マシンガンの弾痕の先には検問所で立っていた警備兵がいた。

彼が伏せろと言わなければ、バラバラになっていた。

 

「突っ込んでくるわ!!」

 

ライノが猛突し、検問所を突破するとそのままバンカーの入り口にある玄関を吹っ飛ばして強引に侵入してきた。

 

「くっ!」

「なんて強引な奴なの!?AK-15といい勝負じゃない!?」

 

突進で粉々に吹き飛ばされた、玄関の瓦礫を避けながら2人はライノと対峙する。

継ぎはぎのモジュール、雑に取り付けられた装甲。

見るも哀れな姿だ。

だが、ここを守る者たちにとって誰よりも脅威だ。

1階、2階からライノに対して集中砲火が来る。

ユーリも様子見でDD MK18を発砲。

集中攻撃された弾丸はほぼ全て命中したが……

 

「……やっぱり駄目か」

「見てわかるでしょうが」

 

予想した通り、ライノにはこれといったダメージになっていない。

ライノが咆哮のような駆動音を鳴らす。

 

「わかっていると思うが、奴の正面立つな!あの突進はやばい!」

「ええ、わかってる!」

 

ユーリはパワードスーツを稼働させ、突進を飛び上がって避けると、空中に舞い上がった瓦礫にバッタのような山なりの軌道で何度も飛び乗りながら、ライノの側面に貼り付いた。

 

「取りついた!これで!!」

 

ユーリは手榴弾のピンを一瞬で引き抜き、装甲の隙間に投げ込んだ。

素早く飛び去ると、すぐにライノがユーリに向いて突撃する瞬間、手榴弾が爆発した。

 

「よし……うまくいった」

「うまくいった?ああ、確かにあれがあんたのやり方だったわね!────なんて、命知らずな!」

 

相変わらず馬鹿がやるようにしか思えない戦術だ。

M4A1もあれほど露骨とは思わないだろう!

 

「おい!AK-12!!」

「────あ」

 

しまった。ユーリの戦法に気を取られすぎた、もう目の前にはライノの尻尾が────

 

「────カッ!?」

 

AK-12はライノの尻尾の一撃によって、いい具合に吹っ飛ばされていく。

野球で例えれば、そう、二塁はかたいくらいの距離を飛んでいきバンカーの壁にめり込んでしまった。

 

「アイツめ!」

 

突如、ライノからスモークグレネードを投げつけられる。

 

「くそっ!」

 

目くらましまで…あるのか。

周りの状況が見えなくなっていたが、同時にライノの視界を塞いでいた。

今や見当違いのところに突進や重機関銃をまき散らしている。

なんにせよ、怪我の功名だ。その僅かな猶予でAK-12のもとに急いで駆け寄り状態を確かめた。

 

「大丈夫か!?」

「くっ……くそっ!あの、サイ野郎!」

 

AK-12の体は大きく壁にめり込んでいるがそれでも、悪態が壁の奥から聞こえてきた。

ユーリはすぐにAK-12を出られるようにするため近くの壁をパワードスーツによって強化された拳で粉砕する。

壁の破壊を数回繰り返して、ようやくAK-12は壁の奥から這い出てくる。

 

「手酷くやられたようだな」

「うるさい!!」

「うるさいのはあいつだ」

「────!!」

 

ライノの駆動音が地鳴りを響かせる。

防音機能があるヘッドセットが無かったら鼓膜が破けていたかもしれない。

 

「いいニュースがある」

「へえ?」

「ライノの仕様が前と変わってないようだ」

 

金属プレートがグレネードの爆発で剥がれ落ちる。

そして、その奥にはプロタイプゆえのむき出しの通信アンテナが露出していた。

 

「あれで奴もオンラインだ、お前の電子妨害が聞くはず」

「……パパ、そのためにグレネードを?」

「ああ。何度も繰り返して吹っ飛ばすと思っていたのか?」

 

正直、すると思っていた。

というか、E.L.I.D相手にそんなことをしたという話を聞いたことがある。

 

「さぁ、もうワンラウンドだ。AK-12、ライノをクラックできないなんてことはないよな」

「それは中身を見ない限りは何とも、理屈はおんなじはずよ。人形と同じ規格のネットワークが使われているなら接続できる。でも、権限が変わったときに自爆する機能が備わってるかも」

「やってくれ。脅威にならないなら、それで十分だ」

 

AK-12は電子戦をするため、己の出力を”振りなおす”。

 

「パパ、時間を頂戴。戦闘しながらクラックしてみるけどいうまでもなく戦闘能力は落ちる。それでもいい?」

「わかっている。だから、俺と組ませたんだ」

 

ある程度の振り直しが終わった。

AK-12の閉じられていた瞼が開かれ、模様のような瞳が露わになる。

 

「ちゃんと、考えた編成をしているってわけね。それじゃあ、始めるわよ────深度演算、開始」

 

ライノが正面を引き付けているとき、その隙を縫うよう静かに移動している部隊も来ていた。

彼女たちはライノが放ったスモークに隠れてやってきたのだ。

 

「ライノが正面を引き付けている」

「私たちの出番だ」

 

正面玄関がライノに破壊され気を取られているうちに複数の襲撃者らが玄関の中に乗り込む。

もちろん玄関より前にいた守衛は突破した。

幸い、自分で蒔いたスモークもまだ残っているので気が付かれないはずだ。

彼らは遮蔽物に身を潜めつつ、慎重に内部に入ろうとしたとき……

 

「敵!!」

 

どこを起点に気が付いたかわからない。

それでも、ユーリはその煙の中に隠れていた人形に向かって発砲。

2体の人形に5.56ミリが命中した。

 

「な、なに!?」

 

ユーリの銃撃で居場所を掴んだ、2階にいる人形たちが一斉に銃撃を断続的に浴びせる。

 

「おい!ばれてるぞ!」

「まだでるなよ!?」

<2階にいる奴らに制圧射撃だ!>

<お前たちはライノが削るのを待て────>

 

さらに瓦礫と化した壁の後ろで第2派として、待機していた人形が攻撃を抑えるために制圧射撃をしようとしたところ、後続の人形たち向かってM203とM320のグレネードランチャーの砲撃が襲い掛かる。

 

「後続のチームが吹っ飛んだ!?」

「こっちも、う、動けない!」

「支援チーム!何とかしろ!」

 

襲撃者側は、制圧射撃で身動き取れない。

そのため、後方に控えている狙撃銃を持つメンバーに攻撃を要請。

 

「後から来る奴はグレネードランチャーに任せろ!とにかく撃ちまくれ!」

「奴らを動かすんじゃない!」

「弾はたくさんあるんだ!残念だった────」

 

そのとき、制圧射撃をしていたをM249を持っていた人形の顔面が弾丸にえぐり取られた。

Ots-14を持った金髪の人形が確認したが、撃たれた人形はピクピクと痙攣し、そのまま動かなくなった。

 

「スナイパー!!」

 

狙撃手に狙われている。

その事実は隠れることを優先させ、隠れながらの射撃は制圧射撃の精度を下げてしまった。

このままでは、敵に入られる。

無線で屋上にスナイパーに無線を入れる。

 

「狙撃チーム!マークスマンをやれ!」

<了解、見つけた>

 

SVchを構えて、腹ばいの姿勢で敵を探していたスナイパーがマークスマンを見つけ出す。

思っていたより遠い。

スコープのメモリ1つ分くらい調整して狙った方がいいだろう。

メモリを調整して、引き金を引き絞る。

ドン、と腹に響く振動を鳴らして、弾丸が飛んでいく。

スナイパーが狙った先を確認すると、その先に血しぶきが上がった。

 

「倒したぞ」

<礼を言う、これでまた元の仕事に戻れる>

 

2階の兵士たちは、再度制圧射撃を開始する。

 

「おい!こっちに向かっている敵の数が減ってないか?」

 

制圧射撃をしていた兵士の一人が異変に気が付く。

30人ほどいた、チームが10人ほど減っている気がした。死体も見えない。

 

「1階のチーム。玄関まで来ているかもしれない、気をつけろ」

 

無線で1階の危機を知らせる。

彼らの懸念通り、マークスマンでどうにか気をそらした直後に飛び込んだ人形たちが玄関の前に来ていたのだ。

 

「忘れるなよ。もう、お前らも後がないんだからな」

 

「マロース。”よい子を寝かせる”の用意は」

<できている、これから”消灯を始める”>

 

防衛側の人形らに潜り込んで居たひとりの人形が持ち場をこっそり離れた。

 

「え、ちょっと……」

 

たまたま持ち場を離れていた人形の行動をちょうどリロードしていた、64式短機関銃が偶然見かけてしまう。

持ち場を離れた人形は1階に降り、そのまま電力室に向かう。

 

「待って!逃げる気なの!?こんな山奥じゃ逃げられませんって、黙っておいてあげますから持ち場に…」

 

そこまで言って、64式短機関銃は人形がグレネードを持っていることに気が付く。

 

「待ってください…そ、それで何を────」

 

言い終わる前に、64式短機関銃の喉を弾丸が貫いた。

 

「か……っ!?」

 

64式短機関銃は「信じられない」という目で自分を撃った味方であるはずの人形を見た。

人形はハンドガンを向けていた。

 

「どうして────」

 

さらに数発弾丸が頭と胸のコアに撃ち抜かれ、64式短機関銃は射殺された。

裏切り者の人形は周囲を警戒したが、銃撃が激しすぎてこっちに気が付いていないらしい。

安全を確認できたので、そのまま仕事を再開することにした。

電力室の扉を開けると、ピンを引き抜き電力室ににグレネードを投げ込んだ。

 

<消灯する>

 

グレネードは爆発して、電力室は炎を上げながら爆発する。

 

「明かりが!?」

 

電力室がやられたことで、あらかじめ備え付けられた自家発電装置を備えている地下以外の建物の明かりすべて消えてしまった。

 

「落ち着け!暗視装置だ!」

 

人形や兵士たちは少しだけ動揺したが、すぐに立て直して暗視装置を使って視界を確保した。

 

「敵はどこだ!?」

「あ!あそこだ!」

 

真っ暗な視界だ。誰が狙っているのかすら、土煙が見えないからわからない。

無駄弾を撃たないため、HK33を持っている1階の戦術人形が敵の位置を知らせるためにレーザーを点灯する。

しかし、レーザーサイトを使ったのが失敗したらしい。

同じ暗視装置を持っていた、敵がレーザーの先にいる姿を捉えた。

 

「ごっ……!?」

 

何十もの弾丸がレーザーの先に飛んでいく。

レーザー点灯させた人形は集中砲火で即死。そしてさらに近くにいた軍の兵士の首元に跳弾し、銃弾が当たりせき込みながら死んでいった。

 

「畜生!レーザーで位置を補足しやがった!」

 

撃たれて集中力が削がれる。

その時、その電力を切った裏切り者の人形は1階から2階に上がっていた。

階段を登った時、持ち場を離れたことに気が付かれると思っていたが、焦っているのと、真っ暗なせいでそもそも持ち場を離れたことにすら気が付かない。

 

「(ここは安心か)」

 

人形はそのまま屋上に向かう。

屋上では、スナイパーの兵士たちが必死にスコープで敵を探していた。

後ろから忍び寄る人形。

スナイパーらは狙撃に集中して気が付かない。

気が付いたとしても、味方だから撃つとも思えなかったろう。

渇いた音が2回、2発ずつ鳴り響いた。

スナイパーは頭を撃たれて即死した。

 

「こちら、マロース。スナイパーも処理した」

<お前になら抱かれてもいい。よし、さっさとケリをつけてやる>

 

更に隠れていた新たな人形の襲撃者らが入っていく。

スナイパーがいる位置なら確実に見つかるような場所から堂々と入っていく。

 

「来た……」

その入り口はHK416がグレネードランチャーで砲撃支援している場所に繋がっている。

 

「……!」

 

見張っていたM4A1が侵入者の動きを感づいた。

そして、自分たちグレネードランチャーを放つ砲兵の処理にやってきたのだろう。

人形らがドアの前にC4を張りつける。

 

「起爆!!」

 

ドアをC4で粉砕し、侵入し、武器を抜き、人形たちが中に入る。

そこはバンカーの地下に繋がる通路だ。

ここに守りがいても手薄のはず。

いても人間の兵士、自分たちは人間より高い能力を持った戦術人形。

近接能力でかなうわけもなく、ここは狭い。

相手より早く武器を構え、容易く制圧できる。

……なんて、思っているんだろう。

だが、大切なことを忘れている。

裏口から入り、C4を使って飛び込んだ瞬間────

 

「くらえ!!」

 

M4A1が侵入者に向かって引き金を1回絞った。

その瞬間、無数に飛び散る弾丸が侵入者ら向かって飛んでいき、数人にまとめて命中した。

 

「敵だ!ライフル持ってる!」

「もう1発!」

 

M4A1はコッキングをした後、もう一度引き金を引き絞る。

再び”散弾”が襲撃者らに襲い掛かる。

 

「下がれ!下がれ!!」

「ライフルって言ったじゃない!?」

 

襲撃者側が幼い女の声で怒鳴りあっている。

相手は戦術人形か。同僚だろうか?それとも保安局?

 

「私はどっちでも構わないけど…ね!」

 

そうだ。

どっちであったとしても気にしない。

 

「敵が来た?」

「ちょっとまってて!すぐに何とかする!」

 

撃ち合った音がHK416にも聞こえたらしい。

慌てて入口に戻る人形たちに向って、M4A1はピンを抜いて手榴弾を投げつけながら答えた。

こんっ!と床に転がる音がしたすぐ後に、通路の奥が爆音と土煙に包まれた。

M4A1が投げた手榴弾は人形たちが隠れている列の中央で爆発した。

 

「ゲホッ……!」

「あ、、あ、う、うで…、どこ…」

 

入口からかわいそうになる要はうめき声が聞こえる。

 

「うおおおおおおお!!!」

 

それでもまだ任務を続けようとしたやつがいた。

全身がスタぼろになりながらも、唸り声をあげて通路を突破しようとした人形が現れる。

 

「ハッ……!」

 

だが、半狂乱でどこに敵がいるかもわからないで突撃するのは隙だらけであることと変わらない。

敵を目の前にいるのに気が付かず通り過ぎた人形の足元にM4A1は散弾を叩き込んだ。

 

「────ッッ!?」

 

左足が引きちぎられて、片膝をつく。

M4A1はコッキングをして散弾を排莢、そして、片膝をついた人形の髪を掴んで引っ張り上げる。

人形の顔をみて確信した。

 

「へぇ……」

 

あれは、自分たちが警備していた町を血の海に染めた人形の1体だった。

 

「やめて────」

 

背中に銃口を押し当てる。

人形の顔が恐怖にゆがむ。

必死にこの後起きることを怖がり命乞いをする。

 

────知るか

 

M4A1はトリガーを引き絞り、背中から無数の散弾を浴びせ人形のコアを粉々にした。

コイツらは、命乞いする人たちのお願いを聞かなかった。

 

「ふぅっ……」

 

M4A1は通路にいる虫の息の敵に銃弾を撃ち込み、とどめを刺す。

奥でせき込んでいた人形たちのうめき声も聞こえなくなった。

 

「これで静かよ……今はね」

「グレネード以外に何を使ったの?すごい音がしたわよ」

 

M4A1は「これのこと?」と自分のライフルの下部に取り付けられた武器を指さし、HK416は頷く。

 

「M26 MASSアンダーバレルショットガン。接近戦にはこれがいいと思ったのよ」

「よくそんな武器を使いこなせるわね。それ、ドアの施錠をぶち壊すものでしょ?」

「接近戦でも使えたようね」

 

ここは狭い。

彼女らは相手より早く武器を構え、容易く制圧できる。……なんて、思っているんだろう。

だが、そもそも大切なことを忘れている。

────狭い通路の王者は常にショットガンだ。

 

<M16A1だ、お客さんが来たようだな。こっちにも派手な音が聞こえたぞ>

「ええ。でも全員倒したわ。HK416も砲撃に集中できている」

<余裕があるってか?なら、こっちの仕事を楽にしてもらおうじゃないか。2階が手ひどくやられて、進行を止められない。スナイパーに何とかしてもらいたいが、応答もない。敵は玄関にじりじりと接近してきてやがる。追い払ってくれ>

 

無線越しのM16A1の口調では余裕そうだが、状況は危なそうだ。

 

「グレネード弾の余裕ある?」

「あいつ等のしりぬぐいをする分は余っているわ」

 

HK416もすでに新しい榴弾を装填している。

M4A1が位置を確認した。

 

「玄関。そこを狙って」

「了解」

 

HK416がサイトのメモリを調整、M320を発射する。

ポンッ!と気の抜けた発射音とともに、渇いた爆発音がこだました。

 

<うおっ!すげえ!ボウリングのピンみたいに吹っ飛んだ!これはストライクだ!>

 

吹き飛んだ光景はあまり想像したくないものだろうが、とりあえずは片付いたらしい。

 

「スナイパーの報告が無いのはどうする?狙撃でやられたのかも」

<AR-15を確認に行かせた。やられてたら、あいつが代わりをやる>

 

同時刻、STAR-15は階段を駆け上がっていた。

相分からず外からはすさまじい衝撃と銃撃音何度も何度も耳をつんざく。

あんなのを相手に指揮官とAN-94の相棒2人だけ。

 

「(冗談のような話ね……!)」

 

STAR-15は内心悪態をつくが、戦いはまだ続いている。

それに比べたら、自分の状況は大したことないのだろうと思い、STAR-15が階段を上る。

 

「……あなたは?」

 

2階から屋上に上がろうとした瞬間、バッタリ鉢合わせしてしまった。

屋上から降りてくる人形と……

 

「あなた、Cz-75?2階にいたはずじゃ」

「お、屋上の様子を確認して……」

 

緊張からか震えるように人形は報告した。

誰が行かせた?行かせたなんて報告を聞いてないはずだ。

 

「スナイパーの人はダメでした」

「え?軍の人、死んだって、こと?」

 

人形はこくりと頷く。

 

「そう……スナイパーがやられたんだから、報告ししないと。ああ、そうだ。代わりのスナイパー、私がやらないといけないの……ああもう!」

 

STAR-15は屋上を目指す。

たぶん、屋上は新手のスナイパーを警戒した敵のスナイパーが目を光らせているだろう。

とにかく死体でもなんでも使って相手に見つからないようにして、敵を見つけそして敵より早く弾丸を叩き込まないといけないのだ。

 

「……狙撃はなし」

 

屋上を一瞬だけ見る。

狙撃はなし、味方のスナイパーが後頭部から出血している光景が見えた。

……後頭部?スナイパーと撃ち合っているなら、真正面のはず。

後ろから撃たれるなんて、ありえない。

STAR-15に悪寒が走る。

 

「ねえ、確認しに行ったとき他に鉢合わせしなかった────」

 

STAR-15が振り向いた瞬間。

自分の背中を狙おうとした銃口と目が合う。

 

「────!!」

 

ズドン!とライノが建物に激突。

ユーリがAK-12から引き離すために誘導したものではあるが、それでもすさまじい衝撃だ。

 

<うっ……くそ!まだか!?>

<もう少しよ!!>

 

地響きが走り、引き金は引かれてSTAR-15に向かって弾丸が飛ぶ。

だが、激突の衝撃で狙いがぶれた。

放たれた銃弾はSTAR-15の頭ではなく髪留めに当たる。

 

「あ、アンタ何のつもりで!?」

「クソ!」

 

悪態で確信した、こいつは自分を殺そうとしたと。

しかも、もう一度自分に銃口を向けようとしている。

あの拳銃を何とかしなければまずい!

 

「くっ!!」

 

STAR-15が反撃で発砲しようとした。

しかし、それよりも早くに人形が飛び込み、自分のライフルを蹴っ飛ばしはじき落とす。

スリングなんてつけてないライフルは手から離れれば落ちていくだけ。

銃ががたんごとん、と階段の手すりにぶつかりながら地下に落ちてしまった。

 

「────うううっ!!」

 

ドアのガラスに激突し、ガラスが割れた。

 

「なめんな!!」

 

精一杯の力で、膝蹴りを食らわせる。

顔面を蹴られて一瞬ひるんだ人形の隙に、STAR-15がもう一度人形の顔面を蹴っ飛ばし階段から蹴り落とす。

どたどた、と音を立てながら人形が下の階に転がり落ちていく。

 

「武器…‥!武器!」

 

メインアームのライフルがない。

STAR-15は武器になりそうなものがないか、床を見まわし自分がぶつかった時に割れたガラス片を拾い上げる。

 

「思い知らせてやる……!」

 

この時、STAR-15は自分のレッグホルスターに差し込んでいたサイドアームのSIG P226のことを忘れていた。

人形は足をやられたらしい。

這い這いになりながら必死に自分のCz-75を拾おうとしている。

────させるか、ぶっ殺してやる。

 

「逃げるな……!」

 

STAR-15はCz-75に馬乗りの姿勢で押さえつけると、拾ったガラス片で思いっきり突き刺した。

 

「────いっぎ!!?」

 

Cz-75の表情が苦悶に歪む。

────同情を誘っているのか?

 

「────いたっ!やめっ!!」

 

聞きたくない。

STAR-15は再び、ガラス片を突き刺した。

 

「────!!────!!」

 

自分がもはや何の声を上げているかすらわからない、

ただ刺す、刺す。

顔刺す。

喉を刺す!

刺す!刺すっ!!

手を抜いたら、こいつがまた殺そうとする!

こいつが動かなくなるまで刺す!!

 

こっちも半狂乱だった。

さっきまで味方だった人形を死にたくないという一心で何度も何度も刺し続け、いつもは大した感覚じゃなかった刺すというおぞましい感覚に変わり、それでも死にたくないから、刺すのを止めなかった。

 

「はあ……はあ、はあ、はあ…!」

 

しばらく突き刺しているうちに、目の前の人形が動かなくなったのに気付いた。

そして、彼女は自分が殺した。

それが分かった。

でも、それはあいつが私を殺そうしたから。

じぶんはわるくない、

わるいのあいつ。

 

「はあ……はあ、あ、あ、はあ、あ……」

 

わたしはわるないはずなのに、

あかいあかい。

あたまが、いたい。

 

「ごほ……ご……」

 

くちからあかいので、た。

あいつのとおなじ、あかい。

あかい、の?わたしも流れている?

わたしとこいつ、おなじ?

 

「あんた何やらかしたの!?」

 

階段から落っこちた音がうるさかったのか、それとも報告が遅かったのか。

金髪のOts-14が血みどろの状況をみて動揺する。

 

「AR小隊め!正体をあららわしたな!!このイカれ女!!」

「何してしてるのよ!?」

「裏切者が!よくも私の部下を!!」

 

金髪の人形がなにかものすごい勢いで怒りながら、銃を向ける。

灰色の人形はそれを止めた。

 

「おい!はっきりして!何があった!?」

 

怒鳴っているのは、金色の人形と灰色のかみ、UMP、なんだっけ?45だっけ?

 

「こいつ、こいつの、こいつのせい……こいつ、わたし、殺そうした」

「裏切者ってこと!?Ots-14!あんたの管轄でしょ!?なんで気が付かないのよ!?」

「こいつが嘘ついてるんじゃない!?」

「人形が嘘つけるわけないでしょうが!!」

「……あいつ、スナイパーを殺しやがった……。ついでに私も……だから、返り討ちにしてやったのよ……!」

 

STAR-15が撃たれたスナイパーを指さす。

UMP45が近くに落ちた薬莢を調べる。

 

「確かに…Cz-75が使っていた薬莢が転がっているわ」

「ありえない!あいつとは長いのよ!?本当に彼女がやったの!?」

「……そうよ」

 

そこまで、話して自分が、なにをしたか、わかった気がする。

そして、すごい、吐きたくなった。

 

「……っ!!」

 

だが、ぐっとこらえる。

昨日から何も食べてないから、特に吐き出すようなものはなかった。

けれど、吐いてしまったら。2度と立ち上がれなくなるような気がしたから。

 

「……悪い。迷惑かけたわ」

「ええ、迷惑だったわ。こんな銃まで落としてくれちゃって。早速で悪いけど、狙撃の代わりはできる?」

「ええ、ある程度なら」

「じゃあ、やりなさい。このままじゃ建物に入られる」

 

UMP45とOts-14が下に降りる。

 

「……狙撃はなかったはず────」

 

STAR-15も覚悟を決めて外に出ようした瞬間、すぐ近くの扉に銃弾がかすめた。

 

「くそっ…、畜しょ、う!」

 

STAR-15は素早く伏せる。

次々と弾丸が扉にあたる、必死になりながら匍匐前進して、兵士たちがさっきまで撃っていた狙撃地点まで移動する。

腹ばいになりながら、吐きそうになりながら、必死に死体を盾にするという嫌悪感が止まらない行為をして、STAR-15は死体の腹に銃を立てかけて敵を探る。

 

「あの野ろうっ……」

 

STAR-15はいら立ちを隠せない、スコープの反射がくっきり見えている。

暗視に頼っているから反射を見つけられないととでも思っているの!?

私がクメレンタの人形どもの嫌がらせのせいで、バッテリーが足りなくなり暗視機能を使わない狙撃を強いられたことを忘れているらしい。

 

「……よく見えるわ」

 

そこまで、心の中で悪態をつきながら気が付いたことがある。

スコープのレンズあの高さから落ちたのに、ヒビ一つ入ってない。

流石は実物のスナイパースコープだ。

普段使っているI.O.P製のレプリカだったら、ひび割れて狙えたものになってない。

 

「────そこ」

 

吐きそうな気分がとっくに収まっていた。

STAR-15がスナイパーがいる位置に狙いを定めて引き金を引き絞る。

暗い夜の戦場だが、敵を仕留めた血しぶきが見えた。

 

「────スナイパーを仕留めた!!」

 

無線を入れて、しばらくの無事を知らせたとき新しい無線が入る。

1階の玄関で守りにあたっていた人形たちだ。

 

<突破される!ぐあああっ!?>

 

だが、一歩遅かったらしい。

1階にいた部隊が制圧され、撃たれたと思わせるうめき声が聞こえる。

 

<あいつら盾を?ゲッ!?ゴホッ!?>

 

様子がおかしい。

人形たちの対応が後手に回っている。

その違和感に気が付いたのは2階にいた人形たちもだった。

 

「何があった!?」

「行ってみよう!!

 

今は敵の追加は来ていない。

M4SOPMODⅡはAN-94、兵士と一緒に1階を目指す。

 

「見つけた!!────うひゃあ!?」

「下がって!」

 

上から下の階に繋がる階段に到達した時、数回の散弾が飛んでくる。

AN-94がM4SOPMODⅡと入れ替わりで反撃でライフルを発砲するが、盾に守られてしまい効果が薄い。

 

「大尉!1階に到達した敵部隊と遭遇!ショットガンとシールドで武装している模様!!────くッ!?」

 

兵士が報告している間にも立て続けで散弾が襲いかかる。

一同は射線を切れる位置まで下がることを強いられる。

 

<ショットガンだと!?厄介な人形を投入したな……。それは、グリフィンが新しく採用したショットガンという最新人形だ。俺も見たことがある>

「地下に行こうとしている!阻止しないと!」

 

M4SOPMODⅡのいう通り下の階に繋がる階段に近付きつつあった。

それに焦ったか、M4SOPMODⅡはM203にグレネード弾を装填した。

 

「馬鹿野郎!下の連中に破片が飛ぶだろうが!!」

 

それを見た兵士が怒鳴って止める。

ここは階段だ。

もしグレネードランチャーを放ったら、そのランチャーの破片が下に降り注いでしまう。

 

「そんな!?ああくそ!M4お姉ちゃんがいればいいのに!お姉ちゃんはショットガンを完封したんだ!」

「本当なの?」

<完封というか……あいつの慢心をついた形なんだけど、とりあえず指示を出しましょう>

 

指示を出す?

こっちに来れないのか?

 

<私たちはちょっと、困ったことになってて……>

 

だが、今言った通りM4A1はAN-94達のサポートに行けそうにない。

 

「────くそっ!諦めが悪い!」

 

手ひどい反撃を受けて敵は逆上したらしく、M4A1とHK416のところに次々と新手の人形たちが来ていたのだ。

弾丸はM4A1に向かって飛んでいる。

グレネードの妨害よりも、M4A1を仕留めることに躍起になっているようだった。

 

「……こちらも攻撃を受けていて、ショットガンの対処法はこちらで指示を出します!正規軍の方もよろしいですか?」

<構わん!ここから生きて帰れるなら、プライドなんぞ捨てたほうがましだ!!>

 

さらに盾を持った人形達が地下に降りてくる。

 

「盾持ちが下に来たぞ!?どうすればいい!?」

<まずは迎撃!そしたら、絶対グレネード投げてくる!投げ返して!>

「来たなこのシールド野郎!!」

 

待ち伏せしていたUMP45が降りてきた敵に向かって発砲する。

 

「撃ってきた!」

「下にいるぞ!!」

「グレネード!!」

 

案の定グレネードが投げられる。

UMP45が投げ返そうとしたが、ショットガンの散弾が降り注ぐ。

 

「────くっ!近づけない!」

「こっちでやる!」

 

アキの声が聞こえた。

それと同時に弾かれたように飛び出してジグザグに動きながら散弾を避けて、手榴弾を投げ返した。

 

敵が騒ぎ出す声が聞こえ、盾を床に起き爆発から身を守った。

 

「なんとか投げ返した!次は!?」

<フラッシュ投げて!!盾持ちの後ろに!>

「9!フラッシュバンを!!」

 

UMP9がUMP45の援護を受けながら、握りしめていたフラッシュバンを投げつける。

 

「────フラッシュ!!」

 

UMP9が投げたフラッシュバンは見事シールドを通り越して、列の真ん中で光り輝いた。

 

「────ぐわっ!?」

「────ま、眩しっ!?」

 

<SOPⅡ!AN-94!盾持ちを狙って!!>

「よぉし!!」

「くらえ!」

 

敵はフラッシュバンで視界を奪われた。

AN-94とM4SOPMODⅡ、そしてエゴールの部下の兵士たちが盾の後ろに隠れていた人形達が構える。

 

「盾持ちを狙え!!」

 

人形は早く視界を元に戻してしまう。

その為、先に狙うのは盾を持った人形だ。

 

「M1014がやられた!?」

「最新のショットガンの人形なのに!?」

 

慌てて、人形らは2階に銃を向けた。

その姿を見て、アキはニヤリと笑う。

 

「上に気を取られたな!!」

 

アキはBrenの引き金を引き絞り、7.62×39の破壊力抜群の弾丸を叩き込む。

戦術人形のボディが紙切れのように引きちぎられていく。

 

「う、上からも下からも……あぁっ!?」

 

進む道も逃げる道も塞がれたらできることはない。

人形達は地下に降りる前に人形達は全滅した。

 

「よし……なんとかなったな」

 

一方、玄関でライノを相手していたユーリとAK-12の攻防にも変化が現れた。

 

「よし……システムのファイアウォールをもう少しで突破できるわ……」

「────!」

 

ライノはAK-12の方向を見ると、駆動音を鳴らした。

ファイアウォールを突破されると、近くに居ればそれを排除する機能があるらしい。

ライノがAK-12に向って突進を仕掛ける。

 

「さすがに何度もはやらせるか!」

 

だが、AK-12に”なんとかする”と言っていたユーリが二度は同じ目に合わせない。

 

「くらえ!アンカー!!」

 

本来は何かにひっかけて登ったり下りたりするためのグラップリング用のフックを射出し、継ぎはぎの装甲を挟み込む。

 

「ぬううう……っ!!」

 

ユーリが装甲を全力で引っぱった。

スペック上の牽引力はパワードスーツにより大きく向上しているが、

しかし、その苦痛をものともせず装甲を引きちぎった。

引き抜かれた装甲に引っ張られるようにライノは転倒、AK-12の横を地響きを上げながら転がっていく。

 

「バカ!もっと!うまく転がしなさい!」

「覚えておくよ。……クラックの進捗は?」

「あと少しよ!でも、ファイアーウォールのシステムトラップの数が尋常じゃない!慎重にやらないと……もう少し、時間を稼げる?」

「────!」

 

転がったライノが起き上がる。

 

「わかった!もう少し何とかしてみよう!」

 

ユーリはさっき倒した敵の兵士から奪ったスモークグレネードのピンを引き抜く。

そして、それをライノに投げつける。

 

「────!」

 

ライノが一瞬、姿を見失う。

しかし、スキャン機能で煙の奥を透かして調べ上げる。

スキャンが始まったころにはユーリ接近していたので、隙は一瞬で十分だったが。

 

「えぐり取ってやる!!」

 

その発言にふさわしく、ユーリは片手にナイフを持ち、もう片手にMK18を持ちこたえる。

近接戦と射撃を両立したスタイルだが、それにしては乱暴か、いい加減なスタイルだろうとAK-12は初めてあの構えを見たときに思った。

 

「ふうっ!!」

 

ユーリは装甲が外れた方向に移動する。

それはライノも予想済み、その方向に向かって機銃を向けていた。

だが、即座にライノの足元に滑り込み、機銃の向いていない反対側にすり抜けるとまだ残っている隙間めがけてナイフを突き刺す。

 

さらに、はがれた装甲の隙間にMK18の5.56ミリをフルオートで叩き込んだ。

 

「コアに響いたか?」

 

兵士同士が撃ち合うなら乱暴なスタイルだが、人間じゃない”化け物”ならその乱暴さがちょうどいいのかもしれない。

ただ、ユーリはそこまで乱暴には考えていなかった。

手りゅう弾を隙間に食い込ませていた時から、ライノのコアがどこで守られていたか予想はついていた。

破損具合から見れば、ナイフでも簡単に引きはがせそうな突貫工事だった。

ナイフを最初に使うのなら、最初か抜けばいい。

乱暴というより、極端な思考で行動していた。

 

「やっぱり…俺が怖いか?」

 

そもそも、ライノを倒す役割をユーリは持っていない。

ライノを倒すのはあくまでAK-12。

脅威を誤認さえできればそれでいいのだ。

 

「クラック完了!!もう、おとなしくしなさい!このツギハギが!」

 

ほら、時間稼ぎは終わったらしい。

ライノの動きがバグの起きたゲームのように不可思議だ。

元に戻そうとしているのと、AK-12の妨害がせめぎあっているんだろう。

 

「言うことを聞かせて敵を攻撃させるのは手間か……よし、AK-12!自滅させろ!」

「了解!!」

 

AK-12はライノの内蔵する機関砲やまだ使っていなかった爆弾を、自分に向けさせて自分を殺させる。

突貫工事の装甲は自分からの攻撃を守れず、あっという間にライノはボロボロになっていく。

 

「よおし……あと、ちょっとで……うきゃっ!?」

 

AK-12の足元が突然爆発した。

 

「AK-12!!」

「あっつ……!何が……?」

 

ゴロゴロと地べたを転がり、AK-12は何が起きたか分からないまま立ち上がる。

立ち上がった時、AK-12があのライノの唸り声を聞いた。

 

「しまった────」

 

ライノが「よくもやってくれたな」と言いたげにこちらを向くとこちらをひき潰すために突進してきた。

 

「(あ、終わった)」

 

すどん!!と地響きが鳴り響く。

AK-12が外壁側にいたので、バンカーに激突することはなかった。

それでも、突進の威力というのは凄まじいものだった。

狙われたAK-12はひとたまりもないだろう。

 

「大丈夫か!?」

「え、ええ……助かったわ」

 

ユーリが茫然自失と化していたAK-12を抱えて、よけなかったら。

ライノはもう一度、2人目掛けて、突進しようとしたが…突然、ぴたりと動きが止まりそして踵を返してバンカーから出て行ってしまった。

 

「逃げたか……」

「損傷が大きくて、撤退させてみたいね……助かった」

 

死を目の前にして、「助かった」ことを理解したAK-12は思わず安堵の息を吐いていた。

 

そして、M4A1達は未だ迫り来る敵との銃撃戦を続けていた。

 

「くそ……!弾が!」

「今だ!」

 

M4A1がリロードしている隙に人形の1人が接近する。

 

「────クッ…ソ!!」

 

M4A1は急いで左足のホルスター突っ込んでいるUSPを引き抜き、9ミリで動きを止める。

そして、右足のホルスターからFNX-45を引き抜き、9ミリより強い衝撃を叩き込める、45ACP……それも、火薬を多めに入れた強装弾を顔面に叩き込んでやった。

 

「────」

 

肉が捲れた顔面から、接近したのは人形から耐弾用の防護剤が見えたが、45ACPにはあまり関係ないようだった。

 

「またやられたぞ!サイドアームを使った!!」

「2人がかりだ!2人がかりならハンドガン程度────」

 

まだ、接近してくる。

今度は人間と人形で2対1を仕掛けてくるらしい。確かに、サイドアームを使う状況で数で押されるのはまずい、そう思った時その2人組に5.56ミリが襲いかかった。

 

「援護する!今のうちにリロードを!!」

 

援護したのはHK416らしい。

砲撃はどうしたのか?

 

「グレネードの支援はどうしたの!?」

「敵が引いてる!もう、射程外よ!」

 

<こちら、ラプターワン!ライノの迎撃に成功した!敵も引いている!>

 

ラプターワン……これは、ユーリのコールサインだ。

ということは、やったのか!?

あの、サイのような巨大ドローンをたった2人で追い払ったと!?

 

「いいニュースを聞いた!?」

「ええ!希望が見えてきた!!」

 

HK416が「希望」なんて珍しい表現を使う。

それほど事態はいい方向に逆転した。

 

「ショットガンが!!」

「なんだ!?」

 

さらに敵に都合の悪い知らせが相次ぐ。

 

「地下の入り口に突入したショットガンがやられた!」

「クソ!?あのエリートが!?」

「あいつら、指示を受けながら戦っていたらしい!指示を出していたのは……M4A1だ!!」

「あのヘタレがショットガンを倒す指示を出せたって!?いつの間にコッチをなめるようになったんだ!?あいつら、あれだけ殴って、蹴ってアタシらの序列を教育してやったのに!?これだから、ブルパップを使わない人形っていうのは!?」

 

M4A1がピクリと、手を止めた。

聞き覚えのある人形の声が聞こえた。……クメレンタの人形達の声だ。

忘れるはずもない、その中には、街を襲ったMDRもいた。

 

「アンタの前の同僚の評判の悪さは聞いたことがあるけど……本物は違うわね」

「こんなのは序の口よ。悪質なクレームが来た時の憂さ晴らしで、自分より弱い奴に素手でトイレを掃除させられることだって珍しくない」

 

M4A1の後ろに移動したHK416が彼女から衝撃な話を聞かされて、不潔さからくる不快感を覚えた。

 

「あいつ等だけでも殺すんだよ!あの池の中に入りたいのか!!」

 

MDRからの怒声を聞いた人形が怯えを振り切るように突っ込んでくる。

だが、待ち伏せしていたM4A1の射撃であっけなく返り討ちにあう。

 

「池?」

「さっきのトイレ掃除のことは覚えてる?実は拒んだり、戦績が悪い奴は氷や雪で凍った池の穴に放り込まれるのよ。しかも、池の中には人の肉の味を覚えた魚がいてね……人形でもお構いなしについばんで来る。最初は足をばたつかせれば、逃げるんだけど……次第に寒さで体温が下がって……動きが鈍ると……」

「……冗談でしょ?」

 

HK416はM4A1の話を聞いて戦慄した。

 

「本当の話よ。あの池で何人生きながら、泣きながら、喰われていく人形を見たこともある……私もある人形を庇った時に同じ目にあった……私は運が良かった。でも、大体は運が良くない子ばかり」

「……だから、公聴会を止めようとしてるの!?」

「あいつ等の口をふさがないとどうなるかわかってるだろ!とにかく追い詰めるんだ!」

「あのふざけたくそアマども!絶対に全部ぶち撒けてやるわ!!」

 

クメレンタ指揮官の人形の規律は結果は出るが残忍という話は何度も聞いていた。

しかし、コレは残忍で済ませていい話ではない。

普段は正義感を金にならないものと感じるHK416ですら、この時は激しい義憤を抑えきれなかった。

 

「弾が少ないわね……そっちは?」

「こっちも心もとないわ。あっちは死体からマガジンを拾えるでしょうけど……」

「こっちはジリ貧……」

 

HK416はマガジンが今使っている14発と30発入りが2個。サイドアームのHK45が4発。M320は5発残っているが、ここで使うのは論外だ。

M4A1は今使っているマガジン10発と40発入りが1個、アンダーバレルのM26と、サイトアームのUSPは弾切れ、FNX-45が8発。

こうしてみると、40ミリに容量を食われていたとはいえ、HK416も結構弾丸を消費しているらしい。

 

「弾丸を集中しましょう。私は前に出てMDRに接近し続けるから、416は牽制射撃を多めにしてほしいから、余っている5.56と45口径を交換よ」

 

幸い、先に進んだ人形2体がこっちの迎撃でやられているので警戒している。

今のうちにM4A1とHK416は持っている5.56ミリと45ACPを交換した。

 

「……準備は?」

「いつでも」

 

M4A1がまだ敵が潜んでいる廊下にライフルを立てかけて、その肩に銃口を立てかけたHK416が背中に張り付く。

 

「よし……!あんた、JS9をぶっ殺してくれたそうじゃない!?」

 

M4A1が廊下で自分の部下を殺した恨みを強く叫ぶ。

 

「あのチャイニーズかぶれがなんだって?」

「そいつブルパップの銃を使ってたわよ」

 

MDR、乗ってきた。

相手はまだこちらが「待ち」の姿勢のままだと思っている。

声の方向からどの位置にいるか分かった。

2つ奥の角だ。

 

「は?」

「ブルパップの押し売りより、誰がブルパップの銃火器を使っているかお勉強した方がいいんじゃない!?」

「この野郎……援護しろ!私が仕留めてやる!」

 

挑発が効いてる、前からそういうやつだった。

インターネットのポロっとした指摘にすら反応して、殴り込みに行くような奴だった。

 

「今!!」

 

物陰から複数の銃口が向かれたのを確認した。

M4A1とHK416は向かれた銃口に向かって勢いよく弾丸を叩き込む。

 

「カッ!?」

「ヒッ!?」

「やばっ!?」

 

仲間の1人がやられて、人形たちは急いで身を隠した。

 

「行くわよ!」

 

M4A1が前進するするのに合わせて、HK416も歩きながら銃撃した。

弾丸は1発1発正確に、引き金を引き絞りながら人形たちが隠れた壁に向かって撃ちこむ。

反撃の為にその身を乗り出しても、撃たれる…その恐怖に耐えられるのは人形でも少ないだろう。

 

やがて、人形の1体が隠れた通路が目の前のところまで近づく。

M4A1は銃口を上に向けるハイレディという構えを取る。

 

「この化け物がっ!?」

 

隠れてナイフで仕留めようとした、人形が飛び出す。

だが、上に向けていたライフルでそれをガードし、そのまま銃でナイフをはじいて、そのままストックで驚愕した人形の頭を叩きのめす。

 

「人でなしがなんですって?」

「こいつ!」

 

仲間がやられ、次は自分の番だと焦った人形は身を乗り出した人形は既に銃口を向けていたHK416の銃撃に撃ち抜かれる。

レーダーにも敵反応は1つしかない。

残りはMDRだけだ。

 

M4A1とHK416は代わる代わる、銃撃を叩き込み接近する。

いよいよこれまでか?MDRも焦りだす。

あんな弱虫のM4A1と小汚いことまでがせいぜいなのに高い金を吹っ掛ける404の人形に殺されるなんて、いやだ。

息を荒げ、冷静さを欠きながら自分の

 

「弾切れ!」

 

M4A1が弾切れの合図を出す。

HK416が引き続き銃撃を与える。

 

「くそ!こっちも弾切れ!」

 

HK416の弾も切れた。

この瞬間、MDRに希望が見えてきた。

残っているのはナイフだけだろう。

弾丸を取ろうとしてもその間は無防備だ。

 

「(今しか、この状況を逆転できるのは今しかない!)」

 

覚悟を決めて、銃口を廊下に向けたMDRが見たのは

 

「サイドアームのことを忘れたわね」

「ハッ!?」

 

既に自分にFNX-45という銃口を向けている、M4A1の姿だった。

あらかじめ狙いを定めていたのは、M4A1だった。

至近距離による、45ACPは何発もMDRの体を粉砕し、貫通し、壁に貼り付けにした。

 

「ごっ……!かっ……!」

 

流石に45ACPは急所に当たらなくてもよく効いたらしい。

苦しそうに人工血液を吐きながら、床に横たわるMDRはM4A1をにらみつけている。

 

「このタイプのマガジンは……よし、入る」

 

いつの間にか銃を落としていたらしい。

HK416がMDRの銃に入っていたマガジンを拝借していた。

 

<駄目だ!ライノがクラックされていうことを聞かない!一度撤退する!!>

<MDRの部隊が返ってきてないけど!?>

<もういい!ほっとけ!!>

「”ほっとけ”ですって……お友達にも見捨てられたようね」

 

HK416はMDRを煽るが、M4A1は動けなくなったMDRをじっと、見下ろすだけだった。

 

「M4」

 

HK416が拾ったマグプル製のマガジンを手渡したので、FNXを向けながらリロードした。

このマガジンはHK416の銃には入らなかったらしい。

 

「馬鹿が……おまえたち、あの公聴会で何をバラ、されるのか、知らないくせに……」

 

MDRが口を開いて出た言葉は、M4A1達を無知であるかのように煽る言葉だった。

 

「覚悟はできてる。私も、クメレンタにされた指示を聞いていた人形だけど法の裁きを受ける覚悟はできているわ……私の指揮官を昔、殺そうとしたAK-12もそうよ」

「はっ、ははっ……」

 

まだ笑っている。

まだ、馬鹿にしている。

まだ、M4A1たちが知らない事実があるとでも言いたげだ。

 

「何が面白いわけ?」

「お前……本当に、なにも教えてもらってないんだな……あの、ユーリって指揮官が何を話すっていうのを、さ。AK-12の裏切り?それしか、知らないのか……?ははっ!……ほんとに、傑作っ……は、はははっ」

 

不気味だ。

まるで、M4A1らが取り返しのつかないことをしているのを嘲笑している姿が、不気味だ。

 

「皮肉な、もんだ……お前が幸せそうに尻尾を振っている、主人はお前の事を、生まれければ良かったと思っているだろうさ……」

「何か知ってそうな口ぶりね?」

 

「はっ……なら、教えてやる。お前らの指揮官はある事件の生き残りさ……その事実を公表しようとしてる」

 

「当時、I.O.Pには鉄血工場より技術力はあったが……生産の規模は格段に負けていた。そして、それは株価にも出たんだと……」

 

「焦った代表のハーウェルは、生産規模を拡大するための工場を建てられる土地を探してた……そんな時にプスコフのとある町に”旧ロシア軍”の軍人を匿っていたっていううわさが流れてた……」

 

「ちょうど、新ソ連になったばかりの混乱……町一つで虐殺が起きても気にやしない……稼ぎ時と思ったハーウェルは過激な連中を焚きつけて、その町の人間を皆殺しにする勢いで破壊しまくったのさ」

 

「出来上がった工場を知っているだろう。I.O.Pの先進技術開発センター……お前が生まれたところだよ」

「……!」

 

そのいやな予感が、的中した。

私が生まれたところは……ユーリの、故郷があった、ところだった。

 

「狂ってる……!」

「そうさ、はは、狂ってるのさ……狂った土地で作られたんだ、人形も狂ってるに決まってるだろ……っ、人形は、生まれた時からな……!」

 

HK416の発言にMDRは開き直るように笑う。

 

「生き残りは、全員”反逆者”というお題目で戦場に飛ばされた。ちょうど、第三次世界大戦もあった、からな……はは、死ぬ場所も沢山あったわけさ。だが、ユーリの野郎は生き延びた……だから、ユーリが何かばらす前に始末しようとAK-12が送り込まれたのさ、結果は失敗だが」

「放っておけばいいじゃない……!誰が信じるのよ!?」

 

自分でも擁護できないほどひどい発言だが、それでもたったひとりの生き残りを始末するのに大勢を巻き込むなんて、M4A1にはとても信じられなった。

 

「証拠をもっているからさ……あいつは、その過激派の録画した悪趣味な虐殺なビデオを回収して回っているんだからな……!極めつけにあの土地の利権書を全部隠し持っている……。あの土地は買い取ったってことになってる。ユーリが、それを提出すればそれはデタラメだってばれる。強制捜査をすることになったら、埋められた死体を掘り起こされるさ……公聴会でバラされた保安局も終わりさ。当時の事件を保安局がこぞって隠ぺいしたんだからな……」

 

AK-12がユーリを殺そうとした理由も本当はそれなのか。

自分の短期的に得る利益のために……虐殺をして、それを隠し通すために殺させようとたのか。

 

「これが明るみになったら、お前たちの立場も危ういぞ……?それが分かっているから、お前の指揮官は本当のことを言わないんだ」

 

確かにこれが明るみなったら保安局は絶対として、I.O.Pの批判だって相当なものだろう。

それを前提にして、公聴会を始めようとしている人間たちの口を封じようとするのは生き残りたいと思う行動としては当然のものかもしれない。

 

「クソ……あの時、AK-12が、しくじらなければ……アイツが死んでいたら────」

 

そこまで、話してMDRの息が止まった。

いや、止められた。

 

「……お、おま……」

「聞きたいことを話してくれてありがとう、ご褒美を上げる」

 

足の位置が喉から、頭に変わりさっきよりも強い力で踏みつけられる。

M4A1はMDRの頭を踏み潰すつもりらしい。

 

「あなたの主張は分かった。でも、殺す」

 

確かに、公聴会を始めようとしている連中の口を封じようとするのは生き残りたいと思う行動としては当然のものかもしれない。

ただ、それとこれは話が別の事情がM4A1にはある。

 

「お、おい……!あいつを生かして置いたら、鉄血との戦いに」

「それとこれは別の話よ、あんたらが殺しまわってくれたあの町にある本屋さんも燃やしてくれたね?」

 

M4A1の声がどんどん冷たい、無慈悲なものに変わっていく。

 

「綺麗な本屋さんでね。AN-94も紹介するほどのお気に入りのお店だっていうのに、あなた燃やしてくれちゃって……」

「ほ……本屋って」

「でも、私があんたにこうしたい理由の一番の理由が他にあってね……M16姉さんを迎えに行く際、燃やされた本屋の中に、女の子が見えたのよ……」

 

その女の子は私が本屋による度に自分の気にっている本を進めてくれた。

ネタばれ気味なのは、どうかと思うけれどそれでもあそこの時間は自分も気にいていた。

だけど、M4A1はその女の子が火だるまになって、走りながら息絶えた瞬間を目撃していた。

 

「あなた、その女の子に言うべきことがあるでしょ?」

「……女の子って……誰?」

 

そうか。

覚えてないのか、自分で苦しめて殺した子供のことすら、こいつには他人事だったか。

やっぱり、こいつはこういうやつだった。

 

「そう。もういいわ────聞いた私がバカだった」

「おい!やめっ────」

 

殺した人間のこと、それも無抵抗の人間を殺したこと忘れるような奴に、情けをかける道理なんて初めからなかった。

M4A1は足に体重を乗せて、彼女の頭を踏み潰した。

 

「……汚な」

 

水風船のように踏み潰されはじけ飛んだ肉片をさぞ汚そうに吐き捨てた。

 

「……M4」

「何?」

 

足が返り血で真っ赤になった、M4A1にHK416は思わず声をかける。

だが、M4A1はHK416の方を見返さず、ただ下を見ているだけだった。

それだけでも、今のM4A1はとにかく恐ろしく見えた。

 

「……大丈夫」

 

M4A1の今言った、「大丈夫」とはどういう意味だろうか?

MDRの発言を気にしていないという意味か?まだ戦えるという意味か?もう安全という意味か?

その答えはM4A1自身にも分からない。

 

<……MDR。撤退していないのか?お前はどこにいる>

「この声は……」

 

MDRの持っていた無線から声が漏れる。

M4A1はこの無線からの声に聞き覚えがある。

 

<おい、答えろ>

「……ずいぶん、久しぶりじゃない」

 

M4A1は無線を取って、相手に話しかける。

 

<……M4A1か?>

「そうよ」

 

無線の相手はしばらく黙り込んでから、無線が切られた。

 

「知り合い?」

「ええ。あいつはクメレンタの副官”AK-74”、よ。今の無線はリーダーが各隊員にかける個人無線……あいつが今回の襲撃部隊のリーダーっていうことね」

 

M4A1はこの人形のことをよく知っているらしい。

それにM4A1は今まで見せたことのない、強い怒りを抱え込んだ表情をしている。

 

「踏み込んだことを聞くようだけど……AK-74っていう人形と何かあったの?」

「……あいつはクメレンタの最強の人形……そして、私が知っている人形の中で最も残虐な戦術人形よ」

 

 

 

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