たったひとつの願い   作:Jget

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内乱

 

内乱

 ・国の統治機構を破壊し、又はその領土において国権を排除して権力を行使し、その他憲法の定める統治の基本秩序を壊乱することを目的として暴動をした者は、内乱の罪とし、次の区別に従って処断する。

  1.首謀者は、死刑又は無期拘禁刑に処する。

  2.謀議に参与し、又は群衆を指揮した者は無期又は3年以上の禁錮に処し、その他諸般の職務に従事した者は1年以上10年以下の拘禁刑に処する。

  3.付和随行し、その他単に暴動に参加した者は、3年以下の拘禁刑に処する。

 

 前項の罪の未遂は、罰する。

 ただし、同項第3号に規定する者については、この限りでない。

 

刑法第77条より

 

敵の鉄血人形がこちらに向かって走ってくる。

照準を合わせて、発砲する。

サプレッサーは5.56ミリの銃声をタッタッタ…と人の足音のような銃声に変える。

 

「次」

 

敵は倒れてた。

別の敵にめがけて引き金を引き、敵を壊して、戦場を進む。

さらに奥から鉄血の狙撃兵がこちらに向けてスコープを向けるのが見るよりも感覚で解った。

 

「お生憎様」

 

狙われていようが関係あるまい、もうこちらは引き金を引いて、狙撃兵の頭を貫く動作が終わっている。

案の定、狙撃兵はこちらに狙いをつけるまでの距離や目安を測る前に絶命した。

 

「うん?」

 

黒髪の人形の隣で、同じく銃撃したピンク色の髪をした人形の隣で、至近距離での銃撃を浴び血だらけで倒れていた、鉄血兵がが立ち上がろうとしていた。

まだ…彼女は気が付いてない。鉄血兵が立ち上がり、サブアームで攻撃しようとしたその刹那には

 

その兵士は銃撃していた銃の反動を抑えていた、もう片方の手でホルスターから引き抜かれた取り出されたFN-FNXの45口径の衝撃で顔面が押しつぶされた。

 

「────!!」

 

ギョッとした、相棒はAR-15はこちらを見た。

やっぱり、気づいていなかったか…まぁ、仕方あるまいこの激戦だ、見落としなんてしない方がおかしい。

 

「"AR-15"。止めはちゃんと刺して、もう…指揮官の二の轍を踏む事はしないで頂戴」

「分かったわ、”M4”」

 

指揮官が死んだ、そう言われた時の記憶が蘇る。

 

「戦場での死に綺麗も汚いもない…死は終わり、そのもの…」

 

指揮官が昔、どこかの誰かに戦場でどんな風に死ぬのが幸せか?そんなふざけた質問に真摯に答えた時のことを思い出す。

 

「だから、指揮官は味方の誰かを死なせるのをとても嫌った」

 

だから、こそ彼の指揮では死者が少なかった、それでいてこちらの命を奪う相手には容赦がなくて…そんな彼のなのに…

「(私にはそんな彼だからこそ貴女は好きだったの?とは疑問に感じるわ。でも、あなたの記憶の中の彼は無慈悲、無情な…その強さに…)」

 

嘲笑うかの様にストーカーの様に語りかける声が聞こえる。

砲弾が飛ばされる音が聞こえる、この場にいたら私は砲弾でやられてしまうだろう。

 

「…違う」

 

その予想着弾地点から素早く離れ、待ちわびたとばかりに湧いてきた鉄血兵が現れた。

待ち伏せしていた。

でも、効果はあまりない。M4A1はライフルを掃射して容易く薙ぎ払う。

 

「…!!」

「終わりよ」

 

銃弾で、粉雪が巻き上がる。

敵はこっちを見失った、この隙は鉄血の致命傷だ。

M4A1オイルが入ったドラム缶に手榴弾を入れて、ピン抜き、蓋をする。

 

「くたばれっ!!」

 

銃撃が薄くなったタイミングで勢いよくドラム缶を鉄血めがけての方向に蹴り飛ばした。

 

「(指揮官が、敵に容赦しないのは救える命を出来る限り救いたいから、戦場での死がどんな形であれ醜いのを知っているからこそ、その醜さをせめて…仲間を…自分の手に届く範囲で無くしたかったから!!)」

 

手榴弾が爆発するタイミングで破片を飛ばすための爆薬がオイルに誘爆して…ドオオオン!!と原に響き渡る爆発音がこだまする。

炎を立てて燃え上がる、突然目の前に来た爆発に敵はなす術もなく、焼き尽くされていく…

 

「うわアあ"あ"ア"…」

「死ね」

 

いくら人形といえど燃え上がる炎に包まれて行くのは相当辛いだろう、手に持っていた武器すら放り投げて雪で身体を濡らして、火を消そうとしたようだが、炎の動きで丸わかりだ、躊躇いなく銃撃を加えて絶命させる。

そもそも、オイルで引火した火が水で消える訳がない、そして先ほどの混乱が功を制し鉄血の中にポジションを勝手に変える奴らが出てきた。狙いどうりだ、鴨撃ちにしてやる。

 

「…!!」

「最後まで馬鹿正直にポジションの専念ご苦労様」

 

続け様に襲いかかるトラブルで敵の攻撃が弱まった隙にAK-12が最後まで任されていたポジションに専念した鉄血兵の頭を撃ち抜く、

この結果残りは混乱して勝手な行動をする奴らだけが残されて、その対応する間すらなく残りが倒された。

 

「戦闘終了」

 

AK-12から周囲の敵が殲滅されたという知らせを受ける。

 

「弾薬は?」

「残弾、残り8割」

「残り半分」

「了解。私は残り7割。AR-15、予備マガジンよ。よく狙って」

「…了解」

 

AK-12、AR-15、そして私の順番に弾薬の報告を受ける。

やはりSTAR-15のサブアームも同時に使用して弾幕を張るのは殲滅の効率は良いが弾薬の効率は良くないようだ。

 

なんで、こんな事態になったのか?

それは、3日前の軍隊とPMCs合同の鉄血殲滅作戦が、原因だ。

もっと振り返ると、私がペルシカさんの不安が原因で、あの毎日クソまずいシナモンロールしか食べられず、ビデオメッセージしか心を落ち着かせる手段がなかったあの隔離施設に4か月も叩き込まれていたことから思い出した方がいいだろうか。

いつものようにシナモンロールに文句を垂れ流していたら、突然、鉄血とそのその首魁のエルダーブレインに襲撃を受け、私の中に何かが入り込み、文字通り”動かなくなってしまった”。

そんな私を動けるようにするために、M16姉さんは犠牲になったという。

私がいない間、いつの間に消えたり現れたりしていたRO635が代理をしていた。

そして、私が意識を取り戻して動けるようになったころには正規軍と協力して鉄血をせん滅する作戦が始まっていた。

不安もあった。でも、あの時公聴会の事件で一緒に戦ったエゴールも参加していたから、大丈夫だろうと…油断していた。

油断していたのが、いけなかった。

 

突然、正規軍に裏切られたのだ。

私は気が付けば砲撃を食らって、死んだと思ったSTAR-15と研修の時に知り合ったAN-94に救われていた。そして、彼女らから真相を聞かされた。

SOPⅡもROはあろうことか、エゴールに撃たれたのだという。私も軍の砲撃で倒れていたらしい。

ユーリの訃報も聞かされた。誰が殺したかは分からない。

位置的に考えれば、たぶん正規軍だ。

 

これを知った私は凄い怒りを覚えた。

セーフルームの全部を叩き壊したくなったし、自分の心の支えがすべて外れた気がして叫ぶことしかできなかった。必死にAN-94が止めたらしい、彼女の鼻はまだ私に殴られ時に流れた鼻血が流れている。

それで、落ち着かせるために現れたAK-12がこういった。

「おめでとう、指揮官を守れなかったわね」と、そして、こうも言った。「憂さ晴らしに奴らの陰謀を全部壊さない?」と私はAK-12の顎を蹴り飛ばし、その誘いに乗ったのだ。

もう、私には何も残ってはいない。今までは、AR小隊や指揮官に迷惑をかけたくなくて、"いい子"をしていた。

でも、今はその失うのものがない。もう、こっちは好きにやらせてもらう。

 

どんなことをしても、誰を殺そうが、構いやしないわ。

 

 

「まー随分と手ひどく殺したわねえ。鉄血だから、どーでもいいけど。隊長さん?私たち、何かする事はあるかしら?」

「全周警戒して待機。…それだけ」

 

合流地点の確保の後特にやる事もなさそうなAK-12がつまらないわね、とボヤきながら屈伸をしていた。

M4A1は切り株に座って、今さっき使ったハンドガンを調べた。

 

「それ、お気に入り?」

「…」

 

ふと、退屈そうにしていたAK-12が先ほど私が使っていたFNXに使った分を補充する為にマガジンに弾を詰めていたのを見つけ、話しかけてきた。

 

「…だったら?」

 

言葉を返すかどうか悩んだがしばらく沈黙して考えてから返す事にした、暫く私のFNXを観察していると言葉を紡ぐ。

 

「随分と信頼しているのね、やっぱり壊れにくいのかな?」

「壊すわけがないわ」

 

見ると、サブアームがわりにナイフを軽く回転させながら弄んでいた、AK-12曰く「コッチの方が使い易い」らしい。

 

「大切な人から貰ったんだから」

「それって…ペルシカとか?」

「いえ…もっと大切な人よ」

「…へぇ、あなたの指揮官様の贈り物だからって?」

 

軽い興味からなかなか目を離せない様な如くAK-12は私のFNXを凝視していた、そんなに気になる事だろうか?次の瞬間、AK-12が台に置いていたFNXを取ろうとしていた…!

 

「触らないで!!!!」

 

気づけば私は叫んでいただが、AK-12はそんなのお構いなしと言わんばかりにヒョイとFNXを拾い上げ、ガチャガチャとおもちゃで遊ぶ様に弄んでいた。

 

「返して」

「嫌よ、そもそも貴女がこれ手放し…」

 

バンッ!と乾いた音が鳴って、AN-94は何事か?と2人のほうを見た。

私はAK-12の頬を引っ叩いたのだ。それも強めに。

これ以上会話なんて続ければ状況から手に入れた証拠で揚げ足を取るに違いない、だとしたら黙らせるのが一番だと思い、AK-12の頬を気づいたら引っ叩いていた。

 

「…何のつもり?」

「触るな…って、言ったでしょ。返して」

 

暫くして、AK-12がこちらを目を閉じたまま睨み、そのままFNXをこちらに返してきた。

急いでFNXを取り返し、私はどこか傷が付いていないか必死にそれこそ舐め回す様に探した。

 

「傷なんてつけてないわよ」

「うるさい!!」

 

AK-12が心配するなという旨の発言をしたがそれがムカついてしまい、AK-12にキツく言い返す結果となってしまった。

 

「はいはい、悪かったわね。だから、さっきのように顎を蹴り上げるのはやめなさい」

「どうして触ったの…!!」

 

あまりにもイライラさせる態度だったのでつい、鋭い視線をAK-12に刺すように見つめてしまった、それを見たAK-12は「はぐらかせるものじゃないわね」と覚悟を決めたらしく銃を立て掛けると資材の山に腰を降ろし、脚を組んで語り出した。

 

「あなたの指揮官が昔軍人だったことは…まあ、公聴会の件で知ってるか」

 

この話題には熱が覚めたと言いたげな態度になんだか見下された様な気がして腹が立つ。

 

「…指揮官が、エゴールの仲間だって言いたいわけ?」

 

AK-12にM4A1が詰め寄る。

M4A1にとってはユーリを暗殺しようした過去がある、AK-12こそ裏切り者に見える。そんな人形が事実かどうか別として、許しがたい発言をしているように感じた。

 

「はああああ……」

 

対するAK-12は非常にうんざりしたような声色でため息を吐いた。

それは、とても露骨なものでとても不快なものだった。

 

「彼が昔正規軍にいたからと言って、裏切り者だと思うの?」

「あんたはそう言いたそうに見えるわよ」

「そんなわけないでしょう?そもそも、今回の騒動は正規軍特殊作戰司令部…KCCOがやったこと。他は様子見よだから、私たちはこーんな積まない雪の町で突っ立ていられる。私が思うに、公聴会で悪事がばれたにお咎めなし表面上ではあるけど、お咎めなしな保安局どもやお偉方の無能っぷりに我慢ならなくなって起きた国の内乱よ」

 

AK-12の話は続く。

 

「この新ソ連って国は恩知らずしかいないのよ。事実、保安局の力を削ぐという音がある、あなたの指揮官は躊躇いなく消された。彼は良い意味でソ連人らしくないからね。で……あんたの銃を拝見したのはあんたがユーリから銃を貰ったという事実があるからよ」

「もらった銃に何かこだわりでもあると?」

「そうじゃなくて……私ら人形よ?ID登録されて、ID登録している武器を自由自在に使いこなして、敵に撃ちまくっている。でも、ID登録されてない武器は基本渡されない」

 

当然だろう。人形に反乱されたら、IDを参照してその武器を使えなくすればいい。

事実、鉄血が反乱しているわけで…その必要さは日に日に増している。

 

「でも、あなたは彼からそのID登録されてない拳銃を貰ってる。よほど、撃たれない自身が恩知らずっていう範囲がまさか、人間だけに当てはまるとでも思ってたの?」

「いや、それは……」

 

いや、そうだ。

ユーリは鉄血だけじゃない、すでにAK-12にも裏切られている。

その経験をしたら、まず人形なんか信用しない。でも、ユーリは自分に命を預ける、いや危険に晒すくらいのことをした。

どうして、気が付かなかったのだろうか。

 

「私がユーリに信頼される理由をあなた知りたかったってこと?」

「それと、もし自爆トラップとか入ってたら面白いなーとなんて思って拝見させて貰ったわ」

 

そんな、地面に落ちた銃に地雷を設置するような……

 

「真相はパパに直接会って、聞くしかないか。確かに、死んだとしか思えない遺留品の痕跡だけど、あからさますぎる。…私はパパが死んだとは到底思えないのよねぇ…」

 

さすが、自分の娘として振舞った挙句、父親役を殺そうとして失敗した人形だ説得力は違う。

 

「…私は本当であることに賭けたいわね、M4は?」

「聞くまでもないことでしょ?」

「…ふーん、相当彼とはお熱なのね…ムカツクわ」

「もし、指揮官が生きているのなら。私は…」

 

そこまで言うとAK-12は水を差すように言葉投げた、

 

「とはいえ、再開を”アンジェ”がさせてくれるか知らねえ、私の予想は拒否よ。"任務を優先だ"と…でも彼なら生き残れるでしょうよ」

「…どうしてそう言い切れるのよ?」

「私がそっち以上にパパを見てきているから」

 

瞳こそ見られないが、真面目に言っていると言う雰囲気が理解できた、恐らくAK-12は迷いなく「生き残れる」と言っている…?

 

「まぁ、多分貴女には想像つかないと思うけど、強化装備…まぁ、隊長が昔使っていたアーマーね。その装備をしている時の強さはM4、あなた以上よ?」

「それはバンカーの攻防戦で知ってる」

「あなた見たのは”出来損ない”の方よ、”本物”はその比じゃないわ。一捻りよ、一捻り」

 

まさか…その強化装備と言うのがどのくらいか知らないが人間が人形一捻り?そんな事があり得るのだろうか…?AK-12が続ける

 

「ま、良くも悪くも人間って、普段じゃ考えられないくらいの力を持っているのよ、コレはホントの話。ま、興味があるなら彼女に聞きなさいな」

 

AK-12が指差した方向を見ると…

 

「久しぶりね…と言ってもついさっきぶりだろうけど…」

 

左腕が義手の女性傭兵と"アンジェ"こと"アンジェリア"が合流地点にたどり着いていた。

 

「あなたがアンジェリアさん?」

「改造の調子は良さそうね」

 

M4A1の調子を見て、少し満足した。悪いニュースと不確定なニュースが多くて私の中のハードルも下がっているんだろう。

 

「えぇ、コレでも私を上回る軍人の武器があると伺ったばかりですが」

 

…と思ったらこれだ、誰が話したなんて予想のつく、そしてM4が何が言いたいのかの予想もついてしまった。

 

「アンタ喋ったの?」

「隠す理由もないでしょ?」

 

それはそうだが、正直このタイミングで言われるのはあまり宜しくない。余計な希望を持たせて空振りなんてさせるのはお互いに悪印象になる。

 

「まぁ、彼の話くらいはしたら?信用の足しにはなるし」

「…ハイハイ。じゃあ、いつの話から始めようかしらねえ」

 

それはそれで、逆に殺されそうになるのではないかと思ったが逃げ道を塞がれる以上、少しでも私を信用してくれるのなら賭けに出る価値あるかも知れない。

 

「じゃあ最初から話すわ。まず私とユーリ…あなたの指揮官と知り合いよ。知り合いのコネ使ってAN-94もあんたの所によこしたわ。まさか、今また同じチームになるなんては思ってなかったけど」

「……へぇ」

 

M4がその発言に興味を持ったらしい、私の発言にもを一瞬見開いたのが見えた。

 

「そうね…どこから話そうかしら…」

 

しばらく思案して、先ずは1番初めの出会いを話す事にしようと思った。

 

────彼との出会いは…もう、そりゃあ"偶然"だったわね。

 

「はぁ…はぁっ!」

 

頼みの綱の拳銃を撃ちまくる。

弾丸は怪物たちをほんの僅かだけ倒した。

 

「クソッ!!弾が……」

 

────化け物達との戦闘で仲間と逸れて孤立無縁おまけに弾薬すら無くなっていた。

そんなのおわりだ。

隠れるところもなくただ、ただ、逃げていつの間にか囲まれていた。

 

「そこら中にはE.L.I.D!?もう、この状況じゃ、逃げられない…か」

 

怪物の唸り声が耳に触れる。

 

「…もう、終わりね」

 

────化け物が数メートルまで迫って死を覚悟したその時には砲弾の音が迫った。

見捨てられたな。

 

「面制圧が…始まったのね…」

 

運が良ければ、食われずに燃やされるだけで済む……けど、私はその日だけ、いつも以上に運が良かった。

 

迫り来る化け物の唸り声が減っていく。

何が起きた?

 

────それが最初は一体何なのか?そして私の周りに何が起きたのか?その時、全く分からなかったわ。

 

でも、E.L.I.Dの返り血を浴びながら見た光景はもっと信じられない物だった。

最初に聞こえたのは、ガシャッ…ガシャッ…と機械の足音、そして次に金属の塊みたい、いや金属の塊?剣がまるで…人の形している様な…?

それ以上に驚いたのは、で、でも…いや、そもそも、アレは…

 

あの前の”それ”────今、私を助けたことだった。

 

 

『こちら、ヴェルグ1。要救助者発見。しかし、要救助者の周りにE.L.I.D、戦闘許可を』

<ヴェルグ1、許可する>

『了解』

 

金属の塊が喋ったのには驚いたわ。でも、通信の声も聞こえたから宇宙人ではなかったと安心したわ。

 

『じっとしろ』

 

一人がそう言ったのを聞くと腕から光の剣が見えた、後でそれが高出力のレーザーだと知ったけど、それがE.L.I.Dを容易くなます斬りにしたのは確かね。

 

『危ないからな』

 

それに続けて数体のE.L.I.Dが彼に飛び掛かったけど、それを物ともしないで腕から現れたレーザーで一直線で切り、真っ二つした。しかも、その真っ二つの死体がレーザーの出力で現れる熱線で吹き飛んだ、

 

「…凄い」

 

敵か、味方か、それすら分からないのに、気が付けばそう言っていた。

振り回すだけスラスラと敵を切り裂いていくだけでも驚きなのに、1番驚いたのはその機動力よ。

まるでフィクションの中でスローモーション中に長くなる時間を無視して動いているのをスローモーションされている側から見た光景がこんな物だろうとさえ思えてくる。

あれ以上に素早い動きをしたのは、彼ら以外にはいない。

 

しばらく、なます切りしていたけど……私の周りにE.L.I.Dがいなくなると背中のロボットアーム型のガンマウントが動いた。

 

『相変わらず、騒がしい。効率良く行くか』

 

多分、私を近距離で襲いかかる敵も居なくなったから、銃を使う方向にシフトしたんだと思うでも、レーザー以上の速さで薙ぎ払って行ったことは事実だった。

そして、掃除するようにE.L.I.Dはハチの巣にされて私は助かった。

 

『殲滅終了────保安局員さん、今回は運がよかったな』

 

そう言って、アイツは私にその拳銃に対応したマガジンを手渡してきて…ヘルメットを外したの

 

「初めまして、俺たちはソ連外務省対外変異体駆除部隊"ヴェルークト"のユーリ・フレーヴェンだ。コールサインはヴェルグ1。お前達の仲間に頼まれてここまで助けにきた」

 

────

───

 

「こんなところよ、どう?気に入った?」

 

M4A1はアンジェリアの話を黙って聞いていた。

その無表情からは驚きが入っているのか、嬉しさが入っているのか、なつかしさが入っているのかそれはうかがい知れない。

 

M4A1達がタイミングが訪れるまで、アンジェリアの話を聞いていたころ散り散りになったグリフィンの中で比較的統制が取れた人形たちとその指揮官は生き残りの捜索と現状の把握に努めている。

 

「物資見つけた!」

「トラップがないか確認しなさい!正規軍の物資は鉄血以上にガードが堅いはずよ!」

 

いまだに鳴り響き続ける砲撃音が支配する。要はまだ戦いは続いていて、この状況の読めない戦場を撤退しようにも誰が銃口を向けないか誰もが不安になっている。

 

「ここにも…」

 

1人のグリフィン指揮官が体から炎を出して、完全に動かなった戦術人形の残骸を見つけた。

正確に言えば見つけてしまっただろうか?まるで…そう、偶然にも目と目が合ってしまったかの様に、

 

「…」

 

誰にも気づかれない様に、その遺体の開かれた目をゆっくり閉じさせる。

今日この1日だけでも数えきれない程の命が奪われている、なのにこんな目の前に失われた命に向けてだけこんな事をするのはとても身勝手な行為なのかもしれない。

ましてや、彼女らの命を預かっている"指揮官"の立場からしては…

だが……

 

「ユーリ」

「ああ。MP7か、戻ってきたな」

「なんとかね、この辺りの偵察が済んだよ」

 

彼女の服に雪が付着している。

ずっと伏せながら移動していたのだろう。

 

「状況は?」

「こっから先のルートはダメ。鉄血の電子戦攻撃を受けた軍の人形達が暴れてる…こっちにまだ飛び火してないのが幸いかな」

 

MP7A1。

彼女はあのSTAR-15がエルダーブレインと刺し違えるつもり行った、戦いの後に送り込まれた人形だ。

最初は悪びれもせず、自分を「監視役」と名乗り隔離されたM4A1の後釜に座るように副官になった。

クルーガーかヘリアンかそれとも別のグリフィンの偉い人か、とにかく俺がM4A1の為になにかやらかすのではないかと思って送り付けられたらしい。

 

「何よ?」

「ああ、いや……」

「こんなに危ないから”飼育員”のアンタを置いて逃げ出すかもって?思ってた?」

 

意外だったのは、ROが来て動かなくなったM4A1が居ないAR小隊に対しては自分の身分は伏せながら協力的だったことだ。

今回こそ逃げるのかと思ったが、彼女は今でも自分に付き合っている。

 

「無理無理、逃げられないって。指揮のない人形がどれだけ人間のスペックより上でも知恵比べで軽くオダブツ。それに逃げたら監視役の仕事を果たせない」

「言われてみればそうか。よし、予定通り回り道して行こう。急げば、このエリアの鉄血と正規軍の間を抜けられるかもしれない」

 

うまく行けば軍に追いつかれず…かつ、なるべく少ない戦力の鉄血との戦闘で済むという事だ。

 

「カリーナ、次の行動が決まったから。戦術人形達全員に行動開始の合図を出して」

「わかりました、みなさーん!!」

 

カリーナが無線や拡声器を併用して、行動開始の合図を出すと指示を受けた人形達が慌ただしく動き出していた。

 

「よし、次どうするか決まったから説明する」

 

戦術人形達が全員集まってきたタイミングでマップを広げる。

 

「今回の作戦はフェーズ1からフェーズ4まで段階的に分けて行動する」

「長丁場だな…」

「弾足りるの…」

 

人形たちは自分の手持ちを心配しだした。

 

「フェーズが終わるごとに次のフェーズの作戦を伝えるやり方で行く」

 

「なんだそれ?」

「…こんなのやったことあるの?」

「…ありませんよ」

 

普通の作戦から全部説明する必要があるだろうがそもそもこの状況は普通とはかけ離れていることにみんな困惑している。

それなら経験上同じような状況で切り抜けられたであろう、方法に頼るしか無い。

 

「理由はもし作戦の最中になんらかの綻びが発生して、次のフェーズでの作戦に支障が出た場合に備えて、次の作戦を数多く伝えるより、フェーズ毎に考案するのが1番安全性が高いからだ」

 

他にも、この作戦自体がここにいる人形全員が必要になると言うのもあるが、その辺りは作戦が進むにつれて理解できるだろう。

 

「では、初めの作戦であるフェーズ1について説明する」

 

自分達がいる位置とその周りにいる、鉄血、そして今一番避けなからばならない正規軍の部隊の位置を分かる限りで算出した。

 

「この通り、正規軍が我々が正規ルートで倒れるであろう場所に行手を妨げる様に配置されている。正直、現時点の装備では軍用人形全部を相手するのは自殺と同義。…が」

 

先程、MP7達が偵察してくれた時の状況をマップに付け加える。

 

「現時点では軍の人形は我々ではなく、今も尚鉄血を攻撃してくれている。その為、この正規ルートとは別のこの辺りにある、山岳地帯の地形を利用して、木々の地形を味方に付けながら、行動すれば"軍の"攻撃は避けることができる」

 

それでも、問題はまだ残っている、

今度は3D上のホログラムの鉄血を所々の地点に置いた無論、"コイツがここにいる"と言うマークみたいなものだ。

 

「このスナイパー達がもしも迂回してきた経路向かうよう正規軍の軍用人形に攻撃した場合、迂回ルートも塞いでくる可能性が高くなるには丁度良い位置にいる、だからこそこのスナイパーを先に排除しない限り、犠牲が大きくなる」

 

だが、この場合人形達はバックアップがある為、あまりこの件を重要視しないが知れない、

ヘリ無しでここから生きて出るにはどうやっても2日はかかる、(本当は全員で生きて出たいが)その為にも"普段通り"のグリフィンの積極的に犠牲になりにいくやり方は自重して貰わなければならない。

だがらこそ、本来は全くやらないはずの…

 

「恐らく軍がこちらを攻撃し出した理由がグリフィンの人形が傘に乗っ取られたと解釈された場合、感染防止の為にバックアップデータが消されている可能性も否定できない」

 

人形達がざわつき出す…そう、本来やらない筈のパニックを誘発する事にした、

 

「従って一度体がなくなってバックアップをとるにしても、部隊の人形が回収される事に依存するしか無い」

 

はっきり言ってしまえば人形は自分で考えて行動する事は確かにできる…だが、それが自分にとって本当に正しいか?というのを自分自身で肯定できない。

 

「だからこそこの状況下では味方を犠牲にする方法は推奨出来ない、その為にもこの作戦の場合だけは個々の人形の勝手な行動はしないで欲しい、あくまでプラン通りに任務をしなければ生き残れないだろう」

 

その為に、グリフィンには戦術人形にどれが最良なのかそれを伝えるのが今しなければならない指揮官の役目だ。

 

「話を戻す。フェーズ1で部隊は計3つに分ける。3つの部隊それぞれ独立の作戦を遂行してもらう」

 

ある程度現状を理解して貰ったところでいよいよこの作戦に必要な人材を選出する。

 

「第一部隊はスナイパーとその位置を補足する、ハンドガンで構成。このチームは主に正規軍を呼び寄せようとするスナイパーを排除してもらいたい」

 

まずは初期段階でスナイパーを倒す。

まずそうしなければ正規軍から隠れながら撤退するという目標を達成することができない。

 

「続いて、第二部隊。ここはアサルトライフルとサブマシンガン、少人数のハンドガンの部隊で構成する、この部隊がやる事は主に、正規軍を鉄血側に向かせるための工作活動に従事してほしい、この部隊には私も編入する」

 

電磁障害が酷くなるかも知れないこの状況でベストなタイミングで呼び寄せるにしてもカメラなどに問題が起きたタイミングがズレでもしたら目も当てられない。

だがらこそ適切なタイミングを監督できるのならいたほうが良いだろう。

 

「最後はショットガンとマシンガンの第三部隊、君達は1番先に迂回ルートを通って貰った後に次の補給と司令部に使えそうな施設を確保と防衛してもらいたい」

 

正直、この部隊が1番危険な気がする。

ショットガンはまだ、決まった運用法も確立されてない新型。

スナイパーを適切なタイミング倒せるわけでもないし下手をしたらマニュアル操作に切り替わった時に捕捉される可能性すらある、下手したら、軍の人形と戦う可能性がある部隊だ。

 

「フェーズ1の動きはこうだ。まず第一部隊がスナイパーを排除する、第一部隊が動いたタイミングで第三部隊が先行、高所の地帯を維持したまま正規軍の動きを把握しながら目標のポイントまで移動」

 

「その後に第二部隊に第三部隊が把握した分の正規軍の動きを報告、その報告を頼りに第二部隊が正規軍を呼び寄せるためのデコイ、及びIEDを設置」

 

「IEDを設置した後に、第二部隊と第一部隊に合流、第三部隊は予定通り施設を確保、第三部隊が施設で確保したタイミングで軍に陽動を開始」

 

「陽動されたタイミングで確保された施設に最大速度で施設に急行第二部隊と第一部隊が施設までたどり着いた段階でバリケードを設置次のフェーズの準備までの時間を稼ぐ」

 

この作戦は、とにかくスピードと情報が第一だ、そのことを人形達も作戦を聞いて理解してくれたらしい。

 

「それじゃあ、部隊を編成して準備を始めて、準備が終わったら迅速行動を開始!」

 

「「「「了解!!!」」」」

 

 

「飼育員」

「MP7?」

「あの…これ、見つけだんだけどどうする?」

 

MP7は手に持っていた、M4A1のだと思われる腕を見せてきた。

 

「M4……」

 

他が見当たったとは話していない。つまり、M4A1の腕しか見当たらなかったんだろう。

M4A1の残骸が近くに転がっているかもしれないし、腕だけなくして生きているかもしれない。

たしかに、別に我々は多い荷物を持って移動しているわけではない。

だが、危険な行為だ。

相手に語る算段や要素も全く無い以上迅速にこの戦域を脱出しなければ、ここで血の沼に沈むしか無い。

 

「…仕方ない」

 

後ろめたい行為だが、仕方あるまい。

左手の薬指につけていた誓約の証である指輪だけを取り外して、腕はこの場で捨てる事にした

 

「M4を探さないの?本当にこれでよかったの…?」

「賭けよう。M4(レイラ)がまだ生きていることに、指輪だけ持ってれば彼女に返してあげられるかもしれない」

 

最後に彼女にあったのは、確証を感じられないのは単純にがエルダーブレインと接触した際にメンタルアウトさせられ横になっていた姿だった。

定期的に送られるビデオメッセージが彼女の声を聴いた最後だったなんて……思いたくない。

AK-12はなんていうだろうか?

いや、きっと「私には優しくしてくれないの?」と揶揄うかもな。あいつ、ノンデリカシーなところあるし。

 

「レコーダー…は聞いていなければ良いんだけど…」

 

念のため。死んだときに備えてボイスレコーダーまで用意していた。

昔いたところでは、それを用意するのは当たり前だったから。

…それが正規軍の人形から攻撃を避ける為に死を偽装したら、それがトリガーとなってボイスレコーダーを再生させてしまった。

 

「もし、レコーダーを聞いてしまっていたら、不味いけど…」

 

そもそも、現時点で自分がM4A1に大切思われているかも分からない状況で、こんな事思う事自体がおこがましいと言うか…何というべきが…

 

「指揮官様、準備が整いました」

 

いや、そう言うのは今この場を切り抜けてから考えるべきだろう。

生き残る事が出来なければ考える事も、確かめることだってままならない。

 

「よし、前進しよう」

 

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