敵が迫ってくる。M4A1は目の前の敵に向かって撃ちまくる。
────M4A1…どうするの!?
────離脱準備よ、ここで相手にする余裕はない。総員!!中継ステーションに向かう!ついて来られないならその場で隠れて!!
STAR-15が隠れていた柱に弾丸が当たり、粉塵が巻き上がる。
巻き上がる粉塵が顔に掛かり、せき込んだ。
────その決定忘れないでよ…自分で決断したんだからね
────みんなの為よ、中継ステーションをハッキングできるのは貴女とAN-94だけ。二人の安全確保をすることが優先だから
────急いで!!包囲のスピードが速い!!突破も出来なくなる!!
40分前…
「戻ったわ。…と言ってもあんまり良いニュースは無いけど」
「本題に入りましょう。今の軍の動きは?」
行動する前に、アンジェリアの指示で偵察していたAK-12が戻ってきた。
AK-12がビデオ映像を映す。
「見ての通り、軍は掃討を始めてる。このままじゃすぐにやって来るわ。それに前衛の偵察部隊でも私達が勝てる見込みすらない」
「予定通り中継ステーションを目指すのなら、確実に軍と衝突するでしょうね」
つまり、このまま作戦通りに動けば全滅するとSTAR-15は言っているのだ。
「どうする、M4?中継ステーションを取らなければ、KCCOが何の目的でこんな反乱を起こしたのかがわからない。カーター将軍は関与しているのかいないのか?データがきちんと残っている今のうちに回収した方がいい」
「けど、この数と撃ち合いなんてしたら…終わりよ。ここは回り道して通り過ぎるのを待つのが賢明よ」
AN-94とSTAR-15はそれぞれの意見を出す。
AK-12は何も言わない。
「AN-94の言うとおりにしましょう。AK-12の発言が正しいなら軍はまだ配置途中のはずよ。それならまだチャンスはある、装甲部隊が動いてしまったら何もかも手遅れになる。AK-12、進路を教えて奴らを避けて進むわ」
M4A1が出したのは、STAR-15との意見とは反対に時間をかけてしまったら帰って不利になる、と思ったのが私の見解だ。
AK-12は私の指示を聞くと、即座に予想進路のルートを提示した。
「このルートを通れば丁度レーダーの死角に入れる。まぁ、鉄血に出くわしたら面倒ね。閉鎖的な地形だし、加えて鉄血をレーダーで捕捉した時点でこっちにも攻撃が向く可能性は高い、それでも偵察範囲から考えると他のルートの方が危険よ」
鉄血はどうせどこに行こうが邪魔して来るに違いない。
そうやって今までも私たちを苦しめてきた、狡猾な奴らなのだ。今更現れようが手早く排除すればいいだけ。
M4A1が立ち上がった
「出発しましょう、手遅れになる前に。AK-12、アンジェさんが雇った404小隊に説明をするから通信繋いで」
「私がやってあげてもいいわよ」
「気持ちだけ受け取っておくわ。報告もできないんじゃあ、私にこの部隊の隊長を名乗る資格はないわ」
────
───
「概要はわかったわ。でも…ショックなニュースもあったわね」
「…死んだ!?そんな馬鹿な…あり得ない!何かの間違いよ…」
<遺留品の状況を見る限りでは、生きていると判断するには難しいわね>
M4A1から今回の目的と今後の方針の概要を説明された後に、よくお世話になったあのAR小隊の指揮官が"状況的"に見て殺されたという話にHK416は動揺していた。
UMP9は深刻な表情をしていたし、G11はコレは夢だと思いたがっていた。
「…そう、残念ね。いい人だったのに」
M4A1はちょっと意外だった。
正直、AR小隊と404小隊の中はあまり"理想的"とはいえない関係だった。
だから、指揮官のユーリのことを"いい人"と残念がるのは意外だった。
<M4A1がそんな表現を使うなんて珍しいわね。感情をそこまで抑えるなんて>
<…そう?アンジェリアさんはどう思っています?>
<どうって、ねえ>
アンジェリアも認めたくはないが人間嫌いな私が"信用"できる程本当に惜しい人材を無くしてしまった…と言えればもっと私は素直な性格に慣れただろうか?
<身体の方は抑えが効かない様に見えるわ>
残念ながら、無線越しに聞いているM4A1の左手の平から知らず知らずの内に血が流れていた、力を入れすぎて人工皮膚を破ってしまったのだろう、それくらい私は怒りを感じていたのだろう。
「私たちからみれば"友達"って範囲なんだけど、そこは人それぞれだよね。運命共同体ってわけじゃないから」
そもそも、みんなが想像している仲間と友達と私の仲間と友達はいささか違う気もしないでもない。
<古い友人曰く、私の考えてる友達は、いつ必ず道が交わって助け合うのが友達。仲間は命を掛けて守り合うのが仲間…>
「…その受け売りって。どーせ、ユーリ指揮官からの受け売りでしょ?」
全く…感の良い…いや、UMP45は指揮官と面識があるのならその結論たどりつく方が自然か…
「でも、生きてるんじゃない?私も遺留品を見たけど、これはわざとらしくみえる」
UMP45はプロであるほど引っ掛かりやすいトリックとよく似ていることを思い出す。
<運がいいわ>
アンジェリアがなにかを察知したらしい。
<軍隊がなにか見つけららしい、そっちを追いかけてる>
「という事は、成る程…。程よい隙間ができたって事だね、それじゃあ行くの?」
<ええ。始めるわ、もし想定したことが起きたら手はず通りに>
「ちゃんと報酬は残しておいてね?」
M4A1たちが中継基地を目指したのと同じころ…
「これでラスト!!」
「鉄血のドラグーンが!手間かけさせやがって!!」
「おーい!でてこーい!!」
ユーリとグリフィンの人形らは予定よりも多少早いスピードで中継基地の周辺にいた鉄血をを制圧し、基地に立てこもっていた人形たちに出てきてもらうため、扉をノックする。
「ふざけんな!!おい!壁のうらにいるぞ!歓迎してやる!」
「ちょっ!?」
立てこもった人形は軍隊か鉄血かと勘違いしているらしい。
なんと壁越しに銃撃して、扉をノックしていたAKS-74Uに当たるところだった。
「あのバカが!?」
「催涙グレネードを使え!!」
MP7の指示で催涙グレネードを投げ込んだ。
充満した催涙ガスに耐え切れず、人形たちがせき込みながら基地を出ていく。
それを確認したMP7は出てきた人形たちに怒りの蹴りを食らわせる。
「よくもふざけたことが出来たもんよ!ええ!?」
「いやー!!撃たないでー!!??」
「やめて、謝るから!…って、味方じゃない!?」
「だから、出て来いっていったの!」
順調とはいかないが、そのまま残存していた人形も回収に成功して、この地区から撤退する為のフェーズ2の準備に入っていた。
「やっぱり、指揮が機能できないと悲劇なのはどこでも変わらないか……だが、この中継基地の通信能力は田カス過ぎるな。ここで通信なんて暗闇の中にスポットライト照らすようなことだし……やっぱりロングレンジの通信車両か通信機器を見つける必要があるな」
「指揮官様!!」
「カリーナ?どうしたの?」
基地の中を軽く調べていたユーリのところにカリーナが息を絶え絶えにしながら、やってきた。
「緊急事態です!!敵のエリート!ゲーガーが私達の予定進路上にいます!!」
「…マズイな」
手早く広域マップに切り替える。
ここの鉄血は連絡を入れる前に倒したと思ったが、されてしまったようだ。
この戦力では、ゲーガーを排除しつつ、フェーズ2を完了させるのは難しいだろう。
「少なくとも、素性の知れている敵ではありますが…それ以外にも大規模な部隊も厄介です。どうしますか?」
「そうだな…」
進路を変えるべきか…それとも、ゲーガーを排除するか…
「ゲーガーのデータは以前AR小隊が戦闘して持ち帰ったものですよね…」
「ああ…そうなるな」
「今頃、M4さん…何をなされているのでしょうか…?」
自分もカリーナと同じような思いにふけりそうになった時に、AUGが現れた。
「…失礼いたします。信じがたいことなので聞いてほしいことがあります」
「君は確か…AUG?…だったか。信じがたいことって?」
「えぇ…覚えて頂いて恐縮ですわ。実は」
「え?それ本当ですか!?」
「信じがたいのは、私もおんなじさ。でも、本当ならこれは有益な情報だ」
結論から言ってAUGが提供してくれた有益な情報は2つあった。
「確かに、この兵站線を利用すれば弾薬の心配はしなくて済む…」
辺り一帯に軍の兵站線が敷かれていて、しかもそれが機械による自動化されていた兵站線があったのだ。
「これは、昔の職場に感謝しないと行けないな」
自動化された兵站線はかつてのE.L.I.D戦に置いて腐肉喰らいが補給部隊の連中の肉を目指して襲われるというのが…軍の特に外務省辺り悩み種になっていた。
そこで自動化さえされて仕舞えばE.L.I.Dに探知されないのでは?という考案の中で考え出された物だ。
結果は今でも正規軍が利用している時点でそれは有用な物だった…という事だ。
自動化されている兵站には基本的に随伴は与えられない、そもそもパスワード式でそこから補給できる仕組みになっているから、盗まれる心配はない…
今回の様な事を除いては
「…まさか、肩書き程度思っていたのに"元正規軍兵士"の肩書き…使ってみるか」
ただし、パスワードを俺は知っている。パスワードを変えられていない限り補給は問題ないと考えても良い。
それよりも問題はこっちだ。
「M4…やっぱり、まだ生きているのか?それとAK-12…こんなヤバい場所にきて、何をするつもりなんだ?」
AUGから与えられた2つ目の情報、それはM4A1とそのほか3人の戦術人形の小隊がゲーガーの部隊の方に向かっているらしい。
…というよりは進行の仕方から見て、そこにゲーガーの部隊がいる事に気付いていないのが正しいかも知れないが
このまま、進めば確実にM4達はゲーガーと鉢合わせになる。
そうすれば激戦は必至、こちら側に気にかける余裕もなくなるだろう。
その隙にこっちが離脱は手早く済ませて仕舞えばこれ以降の鉄血の追撃は確実に緩まるだろう。
「M4達を利用すればこちらの損害は大きく減らせますわ…悪くて脱出手前、良ければ脱出した後でも追撃をする事は難しでしょう」
AUGの発言はとても理に叶っている、余計な戦闘を避けて人形の命を優先しつつ、目的を達成できるのだから…
それなのに…
────
───
「とても、正気なやり方とは思えませーん」
「抗弁するきはない」
説明を聞いて、MP7が即苦言を入れた。
まぁ、おかしいとは思われるだろう。
なんせ"こちらから"囮になりに行ってM4A1達がゲーガーを倒すまでの土台を整えるというのを体よく言い換えただけだ。
「ゲーガーそのものを倒せば、そうすれば鉄血は守りを優先せざる終えなくなる」
どうやら攻撃をの主軸を務めているのはゲーガーとイントゥルーダーが率いるチームの様だ。
「ゲーガーの厄介な所は執念深い所だ。何度失敗してもやり方を変えてまた、襲いかかってくる。あの執念深さは厄介だ、だからこそ…相手の作戦に乗ったフリをしてその土俵を崩せばいい」
ここで奴らを躱して事なきを得るより、絶対に殺される可能性を除外できる方を優先した方が安定しているとAUGに説明した。
「そもそも、M4A1が指揮官の望み通りに動くの?通信、繋がらないのに?」
その通りだ。
別に俺とM4は何の打ち合わせもしていない。もしも期待通りに動いてくれなかったらそれは、部隊全体の命を危険に晒す事になるのだ。
リスクが高いのは自分でも理解している。
だからこそ…
M4A1らは軍の進路を避けた箇所で鉄血と戦闘していた
「手応えがない…まるでプログラミング通りに動いてるだけ?」
「軍は強力だ。代謝に忙しくて防衛戦を縮小している可能性も否定で書か無い…がっ!!」
裏側から回り込もうとした鉄血兵をAN-94が合気道の要領で転がしてそのまま首をへし折る。
「一旦停止。AK-12、怪しい信号はない?」
「いや、少なくとも信号は何も…」
突如、AK-12が立っていた位置に突然の"何か"が飛んできて、激しい爆発が私達を吹き飛ばした。
<ふふふ…ようやく射程距離に入って来た。先ほどまで私たちの信号を検出していたのは、この人形ですね?キャストのネタバレは視聴者からすればあまり褒められたものではありませんよ?>
「…AK-12。クソ…!!」
AN-94が隠れている物陰から攻撃した地点を探っている。
だが、AK-12の無事が確認はできず、舌打ちする。
<また、会えましたね?M4A1、ええっと…劇場以来でしたっけ?ともかく、乱暴な挨拶で失礼いたしました>
「お陰様で、情報さんの大切さを理解したわ。でも…もうすぐそちらエルダーブレインが軍に捕まりそうなのに油を売っていていいわけ?…それに随分記憶が曖昧ねバックアップが完全じゃないんじゃない?」
<お陰様で。でも、もしこれがエルダーブレインが私下した命令であれば?>
「だとしたら、エルダーブレインは相当チェスが下手かコマを進めるタイミングを間違えてるとしか言いようが無いわね、AN-94、AK-12のポジションを替われる?」
「すまない…私はAK-12とは用途が違う。代行は出来ない」
まぁ、そうだろう。
でなければ2人1組のペアである理由がない、さて…AN-94が替わらないならどうするべきか…
「…まぁ、死んでないんだけどね?」
煙の中からAK-12が現れた…?…いつも閉じている目蓋が開かれている?
「なんだ、目を開けるじゃない」
「危うくお気に入りのケープが台無しになる所だったじゃない…!!どうしてくれようかしら?あのクソ人形…!!」
淡々とAN-94の評価を述べる表情は私達の皮を一枚剥がしたソレだが、ケープが燃やされそうになった時のAK-12の内心は普段の態度を剥がした時のソレの様だ。
「識別信号外からの攻撃…確かに予想外よ」
<やはり、この火力では不足とは思っていましたが…まさか避けられていたとは…>
「躱してない、アンタの死にかけの部下を盾に使っただけ。恨むのなら近くに仲間ばら撒き続けたアンタの怠慢を恨むのね」
手持ちのレーダーは大量の存在を感知した。
「報告、前後から鉄血の増援を確認!!…これは、多数の反応だ!!」
「やはり、罠だったか!!」
AN-94の報告を聞かなくてもわかる、およそ100は超えるであろう反応が検知できる。
自分の備えを回していたらしい。
「予めルートを絞って伏兵を呼び込んでいたのね。オフラインされている事なんて予想していなかった…だから気づかなかった…面白いじゃない」
「…という事はまた包囲されたって事よね?」
STAR-15がやっぱり自分が正しかったと苦言を呈する。
「そういうことになるわね、ここでアイツをバラすのは問題ないとして時間をかけるとさっき言った通り軍に気づかれるそうしたら私達はここで終わるわね」
「M4A1…どうするの!?」
「離脱準備よ、ここで相手にする余裕はない。総員!!中継ステーションに向かう!ついて来られないならその場で隠れて!!」
STAR-15が隠れていた柱に弾丸が当たり、粉塵が巻き上がる。
巻き上がる粉塵が顔に掛かり、せき込んだ。
「粉塵が…げほっ!!のどに!」
もうこうなって仕舞えば火力が足りない、"殲滅"ではなく"突破"しなければ任務を達成することは…
「その決定忘れないでよ…自分で決断したんだからね」
「みんなの為よ、中継ステーションをハッキングできるのは貴女とAN-94だけ。二人の安全確保をすることが優先だから」
「急いで!!包囲のスピードが速い!!突破も出来なくなる!!」
予想されているなら行動も早いか…!!だとしたら、この戦力で突破する事ができるのだろうか?…もっと…もっと火力があれば…
────見つけた、指揮官の予想通りに展開してくれたね。
────絶好のタイミングで絶好の位置にいる…はは、指揮官の命令に従うのが正しかったみたいよ
────食い放題だ、今までひっそりと逃げるしか無かった恨みを返してやれ
────了解!!!
突如、更に強力な銃声があちこちから鳴り響く
「…待って!後方と右の鉄血の反応が消えていく…?斜めから?」
「殲滅速度が早い。まさか…」
STAR-15の言う通り、鉄血達が倒れていく。
まさか…もう軍が?
「これは…グリフィンの反応…?…この識別信号は…まさか…────」
AN-94の発言は耳を疑うものだった。
だって、その部隊をグリフィンの部隊を指揮しているのは
「ユーリ指揮官だ!!!間違いない!!グリフィンの人形達は今、彼の指揮の元で活動している!」
「視認できた!!公聴会の騒動で一緒に戦ったAKS-74Uだ、見覚えある人形もいる!!」
嬉しさと困惑で胸が張り裂ける気分だった。
「……!」
あの人が生きている?
あきらめていたはずなのに、希望なんて持っていなかったはずだったのに……ユーリは彼は生きている。
それだけじゃない、私たちが困ったときに彼らがきて今は鉄血と戦っている?
……これは偶然なの?
いや、それにしてはタイミングが良すぎる…だとしたらまさか…
「そうですか……あなたは、まだ、私を助けてくれるのね…。ユーリ、貴方は…私は……こんなザマだっていうのに」
本当は関わって欲しく無かった。
多分これは私のせいで起きたこと。
私が、STAR-15の話を採用していれば、いや……そもそも、私がここに行かなければこんなことにはならなかった。
ここにいると言うことは「また」死ぬかもしれない状況にいると言うことだから…
「余裕ができたわ。挨拶しなくていいの?…それか挟み撃ちして合流するとか」
AK-12は軽く肩をたたき、通信機を差し出す。
彼女は私の反応を今か今かと心待ちにしている、そう言えば親子がどうとも言っていた。
積もる話があるだろう。
でも残念なことに私は彼女の期待に応えてあげられない。
「…やめておくわ」
差し出されたAK-12の通信機を私は拒否した。
確かに…AK-12の話に乗って合流してこの任務を協力して乗り越える手段も選択肢としては問題ないだろう。
「この隙に、後ろを通って行きましょ。AK-12、ルート案内を」
「…」
「いいのか?それって、指揮官を利用するってという事にも……」
STAR-15が怪訝な顔をする裏側でAN-94がそれをしたら引き返せないぞ、という警告を出した。
「…それで結構よ」
「…分かった、先導する。残念だ」
これ以上は言うまいと判断したのかAN-94は先を急いだ。
「的確な判断ね、M4A1」
「皮肉ってるの?」
心なしかAK-12から溜息が聞こえる、確かに恋人を利用して自分達が楽な方を選ぶなんて、人間でも人形でも嫌われやすい行動だ。
悪女…というのにも当てはまるだろう。
「自分を皮肉ってるのよ、アンタが私になった今。何に成るべきなのかを…ってね」
今まで1度も助けてあげられなかったから、今度こそ指揮官を助けて、借りを一つ返せばそれで済んだかも知れない。
「でも…今のアンタより自分の方が好きになれるわ」
…微かに自分の口元が嗤った気がした…いつもおどおどしてナヨナヨしていた自分が嫌いだったのに…
今度は自分が1番嫌いなタイプの人形になるなんてどう予想できただろうか?
「そうね…」
自分の思い通りにいかない事なんて幾らでもある、私達ができるのは任務を達成する事…
ー人間のいう事はもう聞くべきじゃないというのを貴方は受け入れたんじゃないの?
「…っ!!」
声がまたする、自分がやっている事が矛盾していることぐらい分かっている、それでも…
「(幸運を祈ります、指揮官。また会えたら…私を)」
いや、これは…甘えだな。その時の私はきっと…貴方に相応しい身であるかが怪しいだろうから。
────
───
「やっぱり行っちゃったか…全く…奇妙な因縁もあるものだ」
出来ればこの場でM4と再開出来れば…と思っていたが、現実はそう易々と思い通りに行ってくれない。
…しかし、今まで育ててきたAK-12と最近まで隣り合っていたM4が共に行動してるなんて…奇妙な因縁と言わずして何と言う?
「こいつはクルーガーに報告するいいネタになりそうだ」
いい具合の皮肉だ。
だが、何となく本心で言っていない気持ちは理解できる。
人形達の心の奥底の代弁を言わなければならない責任はMP7にもあるのだろう。
「巻き込んだのは悪いと思ってる」
「ホント?……ああそうだ、少ないけどこれ」
MP7がMK18に使用する弾薬の5.56ミリ弾を渡してきた…10発ほど、
…本当に少ないな。
「残敵は片付きました」
AUGから待ち伏せしていた鉄血を殲滅したとの報告が入った。
思っていたよりも速い、元々待ち伏せの計画だったのでうまく術中に嵌った鉄血を倒すにも手間はかからない方…だとは思う。
「これより、作戦はフェーズ2に移行する。作戦内容は現在、こちら側に攻勢の陣形を構えているゲーガー及びイントゥルーダー達の部隊の殲滅」
<…>
人形達から好戦的な笑い声が聞こえる。
これは…震えを抑えるために笑って正気を保とうしているのか、うまいようにしてやられたのか、それとも本当にお預けを食らっていた鬱憤を晴らせる機会だと思っているのか…それは分からない。
とはいえ、これはもともと行う予定だった。
「ボーナスタイムだ、狩れる内に狩っておけ!!」
<<<了解!!!>>>
だが…今自分の周りに…隣り合ってくれる人形達がいるから諦めないで、皆で生き残ろう頑張れるのもまた事実だ。
グリフィンの援護のおかげで、M4A1立はステーションを占拠できた。
いくつか薬きょうが散らばっていたり、催涙スモークのグレネード缶が転がっているなど、ここで銃撃戦があったことを容易に想像させた。
「クリア」
敵はいない。
AK-12がステーションの通信機器を作動させて、自分の体から延びるプラグを機材に差し込む。
「AK-12」
M4A1が少し、力なくAK-12に語りかけた。
「何かしら?」なんてAK-12は集中を乱されたくないのか、少し、目障りそうに答えた。
「この中継ステーションを使えば、今の現状を把握できるはず…よね?」
「…さぁ?望み薄でしょ?ここのリンクに戦域に関する情報を軍がいちいち報告するなんて思えないわ」
「AN-94から、このステーションの用途は聞いてる。はぐらかすのはやめて」
はぁ…とAK-12は溜息を吐いて、
「AN-94」
突然、AK-12の冷たい声が自分に放たれたのでびくりとAN-94は背筋を伸ばす。
「ど、どうした?」
「ずいぶん、この隊長サマに肩入れしてくるじゃない?AR小隊の部隊に入れるのはやめておくべきだったわね」
「あのAN-94の研修の話はあんたが仕組んだの?」
そうよ、とコンソールを叩きながら、AK-12は答えた。
「真面目な子なのはいいけど、私のことしか信じないから世界を広げてもらおうと思ったのよ」
まさか、おくりこんだのは彼女だったとは…少し、意外に思う…いや、話がだんだんまた、はぐらかされてる。
「…で?本当の事を教えて?」
「はいはい、それにさたも既に分かっている答えの質問するなんてね。そんなにパパが生きてたことうれしかった?」
さっきから、AK-12はこちらを挑発するような発言をする。これは意図的にやっているのか?
…仕方ないかもしれない、自分から顔を合わせない選択をしておいてこっそり何をしているのかのぞき見しようなんて私も同じ嫌味な態度を取るだろう。
「1番大切なのはデータをアンジェに送り届ける事。任務をしっかりやり遂げる、そうじゃないの?」
「もちろんよ」
「でも、本当はあなたの指揮官サマのことの方が大切…そんなところかしら?」
「今の発言は忘れて」
少し、喋り過ぎたのかもしれない。
このままではAK-12と口論するかもしれない。
「…AK-12、マルチタスクをすると言っても見た事を話すとおんなじ様なものだと言わなかった?」
「へぇ、AR-15まで。それとも、M4の肩を持つの?昔のプログラムがそんなに恋しい?…そういえばずっと黙ってるわね?AN-94、なんか言ったら?」
そう言われると、AN-94は少し沈黙するとはっきりした口調で語り出した。
「その…現時点では気を取られるのは余り効率的では無い。任務を優先するのならAK-12の行為が正しいだろう」
「任務以上に大切な意義あるのよ、それともAN-94?貴女はAK-12のイエスマン?…いえ、イエスウーマンかしら?」
STAR-15の皮肉を聞いたAN-94はムッとした表情になった。
AK-12には気軽に盾突けないが、STAR-15の発言には言いたいことがあると容易に想像できる。
「私はあくまで客観的な視点から意見を述べただけだ。それともSTAR-15、お前達は指揮官に合流や連絡ができる選択肢があったのにそれを放棄してまで任務を優先した。だとしたら現時点では私の意見の方が正しい筈だ。もし、お前達があの時の選択に懸念事項や失敗したという判断に足るものがあるというのなら、私も意見を再考しよう。最終的な判断はAK-12の頑張り次第…という事になるが」
思っていたよりも鋭い指摘と正論はSTAR-15のこれ以上発言を詰まらせた。
だが、すごい早口で、長いセリフをトーンが安定せず話した。
あくまで現状維持を表に出しつつ、実はAK-12に頑張ってもらいたいという緊張と期待がごちゃ混ぜになっている。
「もういい、これ以上は良くないわ」
「了解」
結局、M4A1はあきらめることにした。
そうだ、コレは自分が下した決断だ。
まだどうにかなるかも知れない、という自分勝手な甘えを起こしている。
結果を受け入れられない事が自分自身が甘えている証拠だ。
「…あら?」
「どうした?」
「あらかじめ、この機材を私たち向けに動かしていた人がいたみたいね。思っていたよりも早く手に入ったわ」
AK-12がチラリと私を見て意地悪な笑顔を差し向けた。
自分たち向けに通信機材を調整してた。
そんなこと、する理由がある人なんて…1人しか知らない。
彼は初めからこうなる事を予測していたのだろうか?
「まぁ、正直?彼の事は気になっているのよね。覗き見程度ならどうにかなるでしょ?」
「それじゃーー」
ユーリたちの通信を傍受しようとしたとき、人形たち全員に激しい耳鳴りが襲い掛かった。
「うっ…!?」
「軍が最高レベルのアクティブ防御を起動したわ!!脳が焼き切られたくないならさっさと無線機やその他全ての通信を閉じなさい!!」
全員は一斉に慌てて身に着けている通信機器の電源を切った。
…しばらくして、耳鳴りが止まった。
電子攻撃が止み、AK-12がデータリンクを繋げてくれたらしい。
「…危なかった、軍がこんなものまで使うなんて」
「予想外な事が起きたんでしょうね。明らかに現時点でできる限りの事をした…っていうのがよくわかる…にしても相変わらず軍の電子戦はサーバーからも容量を摘出しているから恐ろしい威力ね、ツェーナネットワークが使えなかったわよ」
ボヤキながらもAK-12はネットワークを接続を試みようとしている。
あれだけの電子戦…グリフィンは無事なのだろうか?
「レーダーが…イかれてるわ。AR-15は?」
「だめ、レーダーどころか全部の周波数乱れてる、混線による接続も期待できないわね」
だとしたら、それは相手側も同じ指揮システムに影響が出ているはずだ。
「暫くじっとするしかない」とAK-12に言われて、M4は近場のサーバーに腰掛けていると
「後悔してるの?」
「何の事?」
たまたま近くにいた、STAR-15が隣に座り語りかけてきた。
「指揮官を助ける判断が出来なかった事…結局ステーションは占領したけど新しい命令が入ってこないかの状況に対して…とか、自分の決断を理解できてる?」
自分の決断…か
「後悔して、何とかなるのなら…迷わずするわね、私ができるのは数ある選択肢から指揮官から学んだ事も生かして、最善の選択だと思う事をするしか無い」
後は、結果を静かに受け入れる事だろうか?
だからこそ本来、権力を持つ存在の責任は大きくなる。その中で間違った選択をしない様に自分自身を磨かないとならない…私はそうやって生きてようとしてる…が中々難しいものさ
指揮官との会話を思い出す、
えぇ…分かっています。指揮官、いまこうやって悩める時間があるだけどれだけ幸せなのか…
「あら、そうなの?」
興味深そうにAK-12がこちらに寄ってきた、やる事がないのだろう。
「…でもね…あら?」
AK-12が語るよりも早く通信が回復したらしく、連絡が入る。
「予定通り、通信センターを抑えました。今から手に入れた情報をAK-12が送ります」
<えぇ、分かったわ。どうやら彼方さんも想定外の事態に陥ったようね>
「データはその前に入手しました。次の命令を」
無意識に私はアンジェリアを急がせていた。
<ま、色々。急ぎたい気持ちもわかるけど、焦らないでM4。任務なら臨時の救援任務があるからそれで我慢して。ま、簡単な仕事よ>
救出任務とアンジェリアは話した。
もしかして…と淡い期待が走る。
「救出対象は?」
内心興奮して居る気持ちが分かる。
<404小隊、どうやらしくじって鉄血のメインデータに閉じ込められて居るみたいね。動けるのが貴方達しか無い。座標はマークしたわ、以上よ>
「座標確認、友軍の救出。反逆小隊作戦行動に入ります」
通信が切る。
正直すごい落胆している。分かっていたが指揮官の救出任務を達せられる事はなかった。
即ち…それはグリフィンがもう友軍の可能性が薄くなった。
言うなればトカゲの尻尾切りに近い状態だという事になるだろう。
「M4A1は指揮官の事は随分とぞんざいに扱うのに、失踪したAR小隊のSOPⅡとかの"仲間"は随分と気にするのね?」
AK-12がSTAR-15に昔の小隊には情があるのか?と嫌味の様な発言を呟いた。
「まぁ、お仲間を探すのは勝手すればいいけどどっちを優先するにしろあんまり時間はないと思うけど」
「そう思うのはM4A1を貴女が理解できていないからよ」
「何を語ると思えば…お決まりのトークが出てきたわね」
呆れた、とぼやいた計器をAK-12はいじり出した。
「アンタだって、"今の"M4A1を理解し切れていないんじゃ無いの?」
「その内分かるわ、その内…ね」
「フッ…」
その言葉を聞くや否や、AK-12は通信センターを出るSTAR-15の背中を鼻で笑った
「相変わらず。
ユーリの人生に同情しつつ、ろくでもない女であるAK-12は計器の中から隠していた映像を取り出した。
<指揮官様!7.62×39の弾丸がもうなくなりそうですわ!>
<節約してもこれか…後方支援のありがたさが今になって身に染みる>
データにはグリフィンの状況を逐一検出するプログラムが仕込まれていた。
グリフィンは私たちの援護の為に使った弾薬の消費で苦労しているらしい。
AK-12はバッグの中をあさる。
いつか役に立つだろうと、鹵獲した軍のAK-15ライフルのマガジンがいくつか鹵獲していたのだった。
役に立つ時が来たと、AK-12は満足そうに笑う。
「M4、アンタには申し訳ないけどちょっと点数を稼がせてもらうわ」