たったひとつの願い   作:Jget

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忘却

「それにしても彼も災難よね?」

「…何の事?」

 

道なりに敵との接触を避けながら進んでいた時にM4A1はAK-12にふと声をかけられる。

 

「せっかく指揮官がアナタを助けたのに、なぁんにもしないなんてねぇ?」

「…任務は任務よ。他に優先することなんてない。それは全員で決めたことでしょう?」

 

そうだ、私は今…倒さなければならない存在がいるのだ、少しの間指揮官に会えなくなったって…

 

「あ、言い忘れていたけど…」

 

思い出したかなようにAK-12は先ほど、指揮官がいた場所の方を見ながら…

 

「今回の任務が終わったら次は私達以外のこの出来事を知っている奴を消す任務を実行する可能性もあるって…アンジェリアが言っていたわね」

「…何を言っているの?」

 

あまりのプレッシャーが自分に陽炎のような感覚を馴染ませて、足元と視界がふわりとした様な気持ちに陥る。

 

「あんた黙ってたわけ!?」

「…そ、そんな話は聞いていない。AK-12、どういう意味だ?」

 

STAR-15に詰められて、寝耳に水だったAN-94はAK-12にたらい回しにした。

 

「あくまで"もしも"のお話だからね、実行される可能性は薄いから言わなかったのよ」

「…そんなことして見なさい…もしやろうとしたら」

 

AK-12の発言に怒りに満ちたSTAR-15がAK-12を先程よりも強く、睨み付ける。

 

「…ハッ」

「…何がおかしい?エゴール達がやった事と同じ事をしようとしているのよ!?アンタはその自覚があるの!?」

「自覚はあるわ。でも、言わせてもらうけどね、まさか自分から見捨てる決断しといて今度は"殺す"決断が出来ないなんて…本当にお笑いじゃない?」

 

STAR-15の怒りを鼻で笑い今度はAK-12がSTAR-15に言葉で責め立てていく。

 

「やりたくない事はやろうとしないで、いざ自分が不味くなったらその厄介事を誰かに押し付ければ良いなんて本当に────」

「もういい、十分よ」

 

互いの怒りが爆発寸前、一触即発だ。

AK-12はトリガーに指をかけ、STAR-15はサイドアームに手を伸ばしていた。

思い、話を切り上げようとした次の瞬間

 

「────っ!」

 

頭の中に透き通るような忌々しい声が響いてくる

 

「頭がっ……!」

「どうした!?M4!」

 

AN-94が突然頭を抑えて、片膝をつくM4A1の姿を見て急いで駆け寄った。

 

────M4A1、よくやったわ。漸く、本当のアナタに近づいてきている。

後もう少しで…故郷にたどり着ける。

 

「(また纏わりついてくるとは思っていたけど、相変わらず正体を明かさないのね?)」

「STAR-15!AK-12!M4が!!」

 

それ以前に空気を読めない奴だと、言ってやりたいが

 

────答えは自分で見つけだすことに意味があるのよ、見つけたいと思うのなら自分で見つけ出さないと。

 

それにしてもこのあやすように諭す声は非常に耳障りだ。

 

────「彼女」と言う存在と接触する事に本当の意味があるの邪魔者の指揮官とは違ってね。

 

「(アナタは…私に言うことを聞いて欲しいんじゃないの?違う?)」

 

どうして指揮官…いや、私の彼を誰もが邪魔者だと扱って、否定する?

私には彼が今まで必要で、彼にも私が必要だったはずなのだ、あの日…救われた日からずっと…

 

────アナタは真実を知らない…だからそんな事が言えるの、それに私はアナタを傷つけたりしないわ…

 

優しそうな声で語りかけてくるわりには指揮官の事を否定されて傷ついた私の心は無視か…

それほど語りかけているコイツには真実とやらが重要なのだろう。

 

「(傷つけない?それなら、証明して。SOPⅡやROが今無事なのか…それを教えてくれるのなら…いえ、エルダーブレインの接続を考えてもいいわ)」

 

暫くの間、沈黙が続いた。

本当は指揮官の事を1番聞きたかったが、正直、頭の中に響いてくる声が彼の事を露骨に嫌っている以上、指揮官の話を持ち出したら、逆に交渉に難色を示すに決まっている。

 

────この座標に向かって。アナタから交渉を持ち出してくるなんて意外だわ、仲間を取り戻したかったら急ぐ事ね。

 

「(急げ?鉄血が死に体の今、アナタに余裕なんてあるのかしら?それとも、焦ってるの?)」

 

偉そうな事を言う割には自分の立場が悪くなっている事に気付いていない時点で交渉面での弱さはハッキリした。

 

A1…M4A1!!

 

「(今のアナタにロクな交渉材料なんてあるのかしら?私はいつまで待てるけど…アナタはどうなのよ?)」

 

M4A1!!

 

近くからの声に思わずハッとする。

そこには心配そうに自分を見つめていた、AN-94が自分に声をかけていた。

 

「…っ、ごめんなさい、どこまで話してたかしら?」

「お前の事だ。いきなり、屈んで……どうしたんだ?」

「ああ、それは……っ!」

 

頭の中の声について話そうとした途端、凄まじい頭痛に見舞われる。

 

────今は私達の話をするべきじゃないわ。

 

「これって、私のトークセンスがなかったせい?…STAR-15、アナタから教えてあげて」

 

AK-12に指示されたSTAR-15が、端末のマップデータの地点につけられた印を光らせた。

 

「あなたも覚えていると思うけど、鉄血のエルダーブレインがどこにいるか偵察しに行った404小隊はこの辺りにいるわ、まぁ…鉄血の本体と目と鼻の先と言ったところね。でも、近づきすぎたのか…逆に包囲されたわ」

 

話し終えると、ざまぁみろと言わんばかりの黒い表情をSTAR-15は隠し切れていなかった。

 

「それで…自分たちのデータ回収を終えた私らが今からコイツらを助けに行かないといけないわけで…どう、相手をするか?という相談をしていたんだけど、まず外側から突破口を開いて404小隊の負担を減らすところから…始めようと思っているわ」

「ええ。そうね、囲まれているんだから外から崩さないとね…」

 

気が気づくとAK-12が自分をマジマジと動物園の動物を見るように観察していた。

 

「404小隊の隊長…そして、"元"AR小隊の隊長…合わせてみたらどうなるか期待しているだけよ」

「そう?でも、どう外を削るかの話をするしかしないと思うわよ」

 

「…そう、なら彼女を助けないとね」

 

無線の電源を入れて、あらかじめ渡されていた404小隊につながる周波数に合わせる。

 

<は〜い>

「…404小隊?」

 

この取り繕ったような優しい声は間違いなくUMP45だ。

正直、彼女は一度、指揮官の命を狙ったりしたので良い印象はない。

 

<あらあら♪ようやくきてくれたのね♪>

 

最初のうちはかわいい声かもしれないが、本性を知るにつれてうざったい気分になるのはどう言う事だろうか?

 

<AR小隊の隊長さんね♪それとも指揮官を切り捨てた、冷酷無比な"元"隊長M4A1さんって呼んだ方がいいかしら?>

「…呼び方は自由よ」

 

指揮官を捨てた、冷酷無比か…返す言葉もない。

しかも、可能性として指揮官を排除する可能性だってある…

この先、この感情のまま復讐を遂げたとしても私が今まで求めていた物はどうなってしまうのだろうか?

 

<…で?その様子じゃSTAR-15もいるんでしょ?どう外に出る気分はどう?引きこもりちゃん♪>

 

STAR-15がおもむろに顔を歪ませるのを他所にAK-12は今にも吹き出しそうになっていていて AN-94はため息を吐いていた。

AK-12が笑うのはともかくして、正常な思考をしているならこの居心地の悪さ空気に溜息も出るだろう。

事実、AN-94は胃が痛そうな表情をしている。

確かに、自分とAN-94は少し似ているかもしれない。

 

「アナタがヘマをやらかしたせいでどうでも良い仕事を回されるこっちの身にもなれないのかしら?」

<あぁ…それはそれは失礼、アナタ方エリートの足元にも及ばない、我々なので>

 

AK-12の嫌味にUMP45も嫌味を返す。

まずい、AK-12もUMP45に喧嘩を売り始めた。

 

「任務の話をしましょう。UMP45そっちはエルダーブレイン見つけたの?」

<でなきゃ申し訳なさで通信にも出れないわよ。状況はまぁ…私たち以上に鉄血の状況は悪いっぽいけど、外に出れるくらいの余裕はあるわ>

 

無線越しに何度も迫撃砲の砲弾が着弾する音が聞こえる。

つまり、404小隊の状況もあまり良くはないと言う事でいいだろう。

 

<なんたって、エルダーブレインを見に行くために鉄血の中に潜り込んだら、砲撃にビビった鉄血がラインを狭めてくれちゃって、出られなくなったもの>

「なるほど。404小隊はまだ見つかっていないわけね」

<そういうことよ>

 

とはいえ、多分今隠れているところから出たらすぐばれるとみていいだろう。

こっちが動くことには変わらない。

 

「状況は把握したわ、じゃあ仲間を集めて。5分後に指示したポイントで合流しましょう」

<撤退するのは楽だけど、M4A1。今すぐ、どうにかしなければならない問題もあるわよ?長期的な面を見据えてね>

 

なんのつもりだ?

口車に乗って余計なことには関わるのは御免だ。

 

<…鉄血のエリート、ゲーガー。こいつが厄介ごとを呼び出しそうよ>

 

その頃、

ユーリは無線機を取り出して、ある人形に連絡を入れていた。

 

『応答ナシ』

「応答なし、か…なら、まだ大丈夫か?」

 

SOPⅡ達と通信が途絶してから、何度か通信を試みて分かっだ事がある。

あれからずっと、通信アプローチに対する反応は返ってこないが、送信する事はできていた。

電話を例に挙げれば分かりやすいだろう。

電話をかけても、留守番電話として記録は残る。

もし、携帯が壊れたり電池がなくなっていたら「電話が繋がらないか、電源が入っていない」と回答が来る。

そして、「応答なし」は前者。

これはメッセージを受け取る側の主機が生きている…M4SOPMODⅡの希望がある。

残念なことはROはその後者の回答が来てしまったことだ。

 

────私は指揮官を信じています、だからこそ…指揮官も私達を信じて頂けますか?

 

豪雪の中から救出作戦を実行した時にROから言われた事だ。

そして、クルーガーに退職を予告した日の事でもある。

あの雪山の作戦は大変だった。

砲台の火力は恐ろしい、敵エリートの情報は伏せられる、それでいてほとんど人形もいないし、よこさない。

それで、よくいけしゃあしゃあと敵の砲台を破壊して来いなんて言えたことだろうか?

その上、連絡も寄越しやしない、クルーガーの奴め…今は何をしているんだ?

カーター将軍か、それとも治安局と共謀なんてしてたら、全く持って腹立たしい。

 

「まずは目先の問題からだ」

 

ユーリはそ独り言をボヤきながらフェーズ2を実行する為のプランのある箇所に印を付けていた。

M4A1を援護した際、人形の1人が「ゲーガーを見た」と報告していた。

ゲーガーは強力な前面突破を行う、エリート人形だ。

進路上にゲーガーがいるとして、どうにかするにはまず鉄血以外を妨害しているイントゥルーダーを排除しつつ、ゲーガーを倒すか、攻めるのをためらわせる方法が必要となるはず…

 

「カリーナ。これって、なんの装備だ?」

「ああ…これ、少し古い暴徒鎮圧装備ですね。捕まえるつもりだったんでしょうか?」

 

ユーリはカリーナに気になった装備を見せた。

先程はM4A1達に包囲し殲滅の行動をして来た…が、それにしては火力や兵員の数が少し多すぎる気もする。

ゲーガーの人形を勝手に動かしたか?…まるで、拘束任務で使用する様な配分だ。

鉄血にはM4A1を捕らえたい程の理由がある様に、鉄血全体が動いている様にも見える。

 

「鉄血はM4を狙っている」

「STAR-15さんの件から、執拗に狙われてますね。モテモテなんですかね、M4さん」

「そうらしい…だが、鉄血になんか渡さないさ」

「おや、嫉妬ですか?指揮官様」

 

カリーナの発言はずばり、その通りだった。

…せっかく恋人同士の生活が上手くいってきた時にエルダーブレインにメンタルアウトされた挙句、再会しようとしたときにお預けを食らうなんてなかなか望んで、我慢したい事ではない。

そんなにM4A1のケツを追っかける余裕ある、鉄血に嫉妬もしたくなる。

 

「ああ。それに、あれは目先の事態だ」

 

そう言って、ユーリは今まで使っているグレネードとは多少見た目が違うグレネードを収納ボックスから取り出した。

 

「…これは訓練用のものなんだがな、そんな物が使える日が来るなんてな」

「アハハ…ですが、使えるものは使わないとどんな物も役に立つときはあるんですね」

 

────

 

<イントゥルーダー。グリフィンの戦術人形を確認しました。攻撃します。>

「えぇ、演奏を始めて頂戴」

 

イントゥルーダーはグリフィンがこちらを優先で狙いに来たことを把握する。

そしてグリフィンには長距離や砲撃に対する、打開策が現状接近しての排除以外ないことを推察する。

これはイントゥルーダーにとって予想通りである。

 

<敵はスモークを焚いてる>

<視界から消えた、狙えない>

 

予想外のことが起きた。

グリフィンの人形らはスモークを焚いて、鉄血側から隠れた後、スモークを中から撃ってきた。

 

<サーマルに切り替えろ、熱源で炙り出す>

 

銃弾がスモークの中から正確に鉄血に命中する。

察するにスモークで視界の壁を作り、サーマル越しで狙っている様だ。

普段ならこのまま、有利な状況を取られていただろう。だが、今は普通ではなくサーマルサイトはこっちにもある。

今度こそ、純粋な戦闘力で決まる。そのはずだった。

 

<おい!見えないぞ?奴ら、退却したのか?>

<ちっ…歯応えのな…>

 

サーマルサイトで見たところ敵は見当たらない。

様子見のつもりか?と思っただろう、だが再び飛んでいく弾丸はその思いを裏切る。

 

<何人か、やられた!!>

<何処だ!!>

 

冷静だったはずの鉄血の人形たちは動揺を覚える。

 

<見えない…奴ら見えないぞ!飛んでいる弾丸しか…>

<撤退!!撤退し────>

 

撤退は許さない。

執拗な追撃は、必死にしのいでいた鉄血の一部隊を叩きのめした。

 

1チームがやられたことは人形同士の銃撃戦ではよくあることだ。

だが、中隊規模の部隊がこうもあっさりやられたという事実が彼女の警戒心を刺激した。

ここからエルダーブレインに繋がる道の1つだから突破されない様にそれなりの人員を割いたのに…このままではそう遠くない時間で詰められてしまう。

 

「"エージェント"…聞こえていますか?」

<良好ですわ、用件は>

 

通信が繋がっている…つまり、エージェントに繋がる道はまだ、突破されていない。

その事実には安心した。

次の行動も決まった。

 

「私の部隊の一部が突破されました。進撃速度は予想を超えています。私はこれから突破したグリフィン部隊の妨害試みます」

<そうですか…御武運を…>

 

通信が切れた、確かに私たち鉄血は本拠地を奪われてもあまり痛い物ではないが、

私達の長に何かあるのは一大事だ…なんとしても阻止する必要がある。

 

「よーし…予定通り、イントゥルーダーが守りを優先したよ…その間に抜けた穴を使って突破してここを離脱する」

「了解…援護します。全身して下さい」

 

MP7の号令で人形たちは、煙から出た戦術人形が山を降りていく、それこそ足を踏み外さない様にゆっくりと

 

「今のなに!?」

「多分、地雷よ。ここより先は鉄血の縄張りだし…自分のに引っかかったんじゃない?」

 

途中、花火のような乾いた爆発音は地面から響いたので、全員足を止める。

鉄血が自分の地雷を踏んでしまったようだ、自分らではないらしい。

倒れて動けなくなった人形に一応トドメのヘッドショットする。

 

「…あった、これ使えそう」

 

人形らは死亡した鉄血兵からまだ使えそうな外骨格や携帯電力を拝借した。

 

<前進したいけど、前は大丈夫?>

「今確認してる、ちゃんと見てあげるから。…ちょっと待って。アレは…」

 

スナイパーのFNバリスタがふと、視界に映った何物かを確認する為にスコープを覗いた所、そこには…

 

 

「────は?そ、それは本当ですか!?…はい…はい…それでは指揮官にお伝えするので少し、時間を」

 

なんだ?カリーナが報告を受けた瞬間、血相を返って焦っていた。

 

「どうしたの?」

「し、指揮官様!?」

 

いや、そこまで驚かれても…カリーナは私を見て決心した様に呟き出す、

 

「そ、それが…その、先行した部隊から別の部隊と思わしき指揮官とお付きの人形を見つけたと」

「生存者か!」

「ですが、それだけではなく民間人を見つけたと…報告が入って…」

「…武装は?しているのか?」

 

クルーガーからの話では民間人は既に事前にグリフィンが立ち退かせたとか言っていたぞ?

 

「…武装は?…え?武器すら持てないくらい痩せ衰えてる?」

「…わかった。状況を理解したから、そこで待つように伝えてくれ」

 

…つまり立ち退きに粗があったか、もしくは"民間人ではない"と区分したかどっちかの可能性が高い。

 

「カリーナ、先行した部隊と合流する。後方部隊のペースは変えなくていい」

「そ、そうですか?あ、あの…」

「…あ」

 

どうやら自分が無自覚にキレていたいた事をカリーナにバレていたのだろう、少し怯えていた。

 

「すまない、柄にもない事をしたね」

 

くしゃっ、とカリーナの髪を撫でた。

こうするといつも怒るのだが今回はそうでは無いらしい。

 

「あ、いえ……指揮官様が怒るのは無理ないですよ。私も同じ気分です」

「とにかく…状況をちゃんと確認しよう、合流できたら後方の部隊の合流を待つ。いいね?」

「…はい」

 

カリーナと私はグリフィンに対しての一抹の不安を感じつつも駆け足で先行部隊が待っている箇所に向けて走り出した。

 

 

────

───

 

「イヴァンだ。まさか、俺とDSR以外に生き残りがいたとはな」

「渡りに舟ね。みんな死んだかと思ったわ」

「私もそう思っていましたよ」

 

その民間人が居るという場所でユーリはその報告に指揮官”イヴァン”は合流した。

件のイヴァン指揮官にはDSR-50という大柄なスナイパーライフルをもった人形が傍らに控えていた。

 

「それで、彼らなんだが」

「…ええ。確かに、彼らは間違いなく民間のようですね」

「"民間人だね"……じゃ、ないでしょ!?どうするのよ!?」

 

MP7は「他人事みたいに言うな」とユーリを非難した。

確かに民間人だ、数は30から40人程。

こんな話はグリフィンからも軍隊からも何も聞かされていなかった。

銃などの武装も見当たらない…だが、確かに分かり易い共通点見つかった。

 

「すみません」

「……あ、ええと、確か…グリフィンのお方ですよね?どうされました?」

 

リーダーらしい、男性がこちらの話しかけに応じてくれた。

 

「…この様な事を聞いて大変申し訳なく思うのですが、ひとつ質問を…この地域は最近グリフィンが主導で避難をさせている場のはず、なのですがこの地域に止まっている理由をお聞かせして貰っても宜しいでしょうか?」

 

すると、子供を抱えていた女性がゆっくりと話し出した。

 

「何も聞かされてません。ただ、何度か銃を持った妹と同じくらいの女の子達がやってきて"ここから出るな"と私達を見張っていました」

「今はいないけどねぇ……何があったのかしら?」

「電話も繋がらなくて困ってるんだ。他の村も心配なんだ、何が起きたか俺たちに教えてくれ」

「…それで不安になって、いつも軍の方がいるゲートにこっそり向かってみたのですがですが、ゲート付近で…」

 

────

───

 

「あの……何が起きているんですか?」

「え……?あの、あなた達はどこから?」

「いえ……中からですけど」

「な……?えぇ……?す、すみません。待っててください」

 

怪訝な表情に変わった軍人が奥に入り、誰かと相談して戻ってきた。

 

「すみません…村の方に戻っていただけますか?必ず迎えに行きますので?」

「え?迎えに行くって……?」

 

兵士が銃口を向けた。

 

「……戻ってください。必ず迎えに行きます」

 

「────まさか、そんなことが」

「俺もこれを聞いた時はびっくりした。だが、どうすりゃあいいかもわからんから立ち往生してたら、アンタ等が来たのさ」

「こんな扱い…おかしいですよ。私達もここに前から住んでいる住民なんです」

「それで、軍やグリフィンがなんらかの行動ををしていたので終わるまでは隠れていよう…というグループと出来るだけそこから離れようとするグループで別れて…」

 

それで、離れようとしたグループは私達と出会ってしまったというわけか。

聞いてないぞ、クルーガー…それか、カーター将軍…

 

「…分かりました。今回は此方に落ち度があります、それに…人類を救うのもグリフィンの職務の一つです。皆さんを安全な場所に行けるまで、我々が護衛をします」

 

寝耳に水だ。

でも、彼らに嘘つくメリットはない。

それに、ここに留まらせても民間人が無事でやり過ごせるわけがない。だから、住民もこの脱出のメンバーに加えることにした。

…それを聞くと、その住民達は…安堵する人、不安に思う人、怪しむ人…とそれぞれの反応をする。

どれもその通りだろうと感じながら、部隊に新入りが増えたことを伝える。

 

人形らの反応も様々だ。

その行動は正しいと頷く人形、面倒くさがる人形、守り切れるのか?と不安がる人形と本当に様々だ。

 

「指揮官」

 

MP7が訪ねてきた。

また、なにか小言を言うのだろうか。

 

「…人形たちはバラバラな反応だけど、私はいい判断だと思う。別の指揮官だって拾えたわけだし?」

「驚いた。グリフィンの方針に逆らっている可能性があるって忠告するかと思ったのに」

 

グリフィンだって、何も大きい企業だからクリーンなイメージを保つ必要があるだけで決してお綺麗な企業ではない。

それは公聴会の件で知っている。

 

「指揮官はどいつもこいつもここの住民を出さないのはあわよくば巻き込まれて死ぬことを期待してるって思ったことない?」

「そう、は…思いたくない」

「つまり、そうするかもしれないとは思ってるわけだ」

 

ユーリはMP7の発言を否定できなかった。

あれだけ、非難されて「反省する」と公言をしたのに、また同じことをしていると思いたくなったというのもある。だが、この新ソ連ではまだ少数民族や立場の弱い人間に対する差別が続いている事実は知っている。

あそこにいる住民の全員が"被支配民族"という扱い受けている人達であることは見た目ど一目瞭然だ。

"被支配民族"という人たちがどうやって出来たと思う?

 

答えはこうだ、ロシアという国が米蘭島の出来事を機に第三次世界大戦が起きるより少し前に新ソ連に改めた後に

第三次世界大戦という名の植民地競争で植民地にされた国や地域に住んでいる人やその民族に属する人たちを纏めて"被支配民族"にしたのだ。

その扱いは消耗品の立場であるはずの人形が、まだ恵まれている立場にあることを思い知るほどに。

 

「突き詰めれば…こんな事になったものも弱い者いじめに何の疑問を持たないことのせいなのに、な」

 

それは、誰に向けた独り言ではなく……どこでもない誰かと自分に言っていた。

 

「こっちです。この岩の裏側に洞窟あって、通れるんです」

「はえ……全然分からなかった、驚いたちゃった」

 

避難民を自分たちのグループで受け入れることにして、移動を再開した。

最初はグループのハンデになると思われていた避難民だったが、彼らには土地勘があり、

移動に困難な地形の半分は世話にならずに移動することができた。

 

「あ、目印!」

 

1時間移動して、

一番先頭にいた人形のが目印にしていた、旗のところに到着したことに気が付いた。

 

「へへ、順調じゃん」

「やっぱり、地元の人間を連れて行くのは正しかったわね」

「アナタは連れて行くのを面倒くさがったじゃない……」

 

一番先頭の部隊は後方の部隊を待つことにした。

そして、待つこと30分……

 

「そろそろ到着してもいいはずなんだが…」

 

後方部隊とはまだ合流できていない。

距離もそこまで離してはいないし、交戦したとしても、その先頭に気が付くのに長い時間はかからないはず…

 

「し、指揮官様!!」

 

先頭部隊で待っていたユーリのもとに後方の部隊と連絡を取っていたカリーナから報告が入る。

カリーナが慌ててこっちにやってきた。

 

「何か分かったのか?」

「はい!それが、先程まで待機していたゲーガーとその部隊が後方に回り込み後方にいる部隊に追撃をして来ました!!」

「来たのか…!!」

 

このタイミングで来られたのは意外だったが、追撃自体は想定はしていた。

その対処としてイントゥルーダーを先に排除して、イントゥルーダーを待ち伏せできる陣形におきたかったが…!!

 

「分かった!!カリーナ先行部隊を分ける!1つは民間人の護衛部隊」

 

だが、それだけ余裕はない…

 

「もう1つはイントゥルーダーを討伐する部隊。イントゥルーダーを倒せれば砲撃か大幅に減少して、前が空く。正面突破だ」

 

MK18をつけていたスリングを引っ張り、体と銃の距離を近づける。

 

1時間半後

 

<位置についたわ。そっちで、敵のボスは見えてる?>

「こっちも見つけた!イントゥルーダーだ!」

「鉄血の思い通りにはさせない!」

 

イントゥルーダーを排除しに向かった部隊はその姿を捉える。

 

「おや、どこから?」

 

イントゥルーダーは自分の予想もつかないタイミングやってきた敵の出現に少し、驚く。

砲撃した距離から大体の位置は分かっていた。

だから、その位置にむかう効率的なルートを避難民から聞いた。

 

射程内に入った人形から銃撃が飛んでくる。

 

「あらあら、激しい演目がお好きな様で…」

 

イントゥルーダーの携帯しているガドリングがこちらが撃ってきた方向に向け、モーター回転させた。

 

「来たぞ!!」

 

モーターから発せられた声を聞き、部隊は一斉に耐久性のある障害物に飛び込んで身を隠した次の瞬間、

 

随伴部隊ともに放たれた、荒れ狂う、嵐の様にエネルギー弾が際限なく発射される。

爆発が連続したような、射撃音は当たらなくてもすさまじいプレッシャーを押し付ける。

現に障害物越しでも分かる衝撃が自分達の身体を襲っている。

 

「移動して!移動!!」

 

隠れて様子をうかがっていたハニーバジャーが、イントゥルーダーが砲身の向きを変えたときに、

彼女に見えるように移動。

 

「おや」

 

イントゥルーダーが現れた、ハニーバジャーの方に向かって砲身を向けなおす。

レーザーで薙ぎ払おうとした瞬間、まだチャンスを待って隠れていた人形が銃口を向ける。

 

「よお!!」

 

イントゥルーダーから見て背後の方向から、コルト・パイソンが.357マグナムの大口径を放つ銃口向ける。

 

「────ッ!!!」

 

背中に一発あたる。

人工皮膚と、内部フレームのおかげで何とかコアへの直撃は逸れた。

2発目は、とっさにイントゥルーダーは後ろにある砲身も稼働させて迎撃する…が、

 

「おいおい、鉄血の屑は弾薬をばら撒くだけか?当たりもしない、ガトリングをばらまくなんて腕前は素人かよ!」

「…クッ!」

 

別の脅威にイントゥルーダーは気を取られてしまう。

一度、移動していたハニーバジャーそして、コルト・パイソンに集中していた…次の瞬間。

 

吹き飛んだように積もっていた雪が弾け…その後ろにいる影がコチラに向かって来た。

 

「ふふふ…あのリボルバー持ちが気を晒している内に奇襲を掛けたつもりだろうけど…」

 

イントゥルーダーが微笑みながら引き金を引くと…

 

「その攻撃は読んでいましたよ!!!」

 

予め、モーターを回していたガドリングガンが影の見える方向にエネルギー弾が嵐の様にその影が近づく。

レーザーは影に向かって飛んでいく。

 

「…ふふ、残念ながら。サプライズは────────っ!?」

 

しかし、その影は消えていなかった。

それどころか、徐々に近づいて来る。

 

「どんな手品か知りません────ッ!?…ガハッ!!」

「よそ見はダメだろ」

 

陰に向かい攻撃をしようとしたタイミングで、コルトパイソンの弾薬がイントゥルーダーの背中を砕いた。

 

「────オノレェ!!」

 

こうなればもイントゥルーダー必死だ。

必死になってガドリングのエネルギー弾を撒き散らす、もはや彼女に味方撃ちを気にして上がる余裕はない、一刻も早くこの状況を打開しなくてはならないからだ。

コルト・パイソンが見えなくなったタイミングで距離を取る為、反対側の威力の高い砲身に変更した瞬間影の正体がわかって来た。

 

「この2人が…!!私を…!!」

 

果たして近づいて来た影の正体はMP7とP90、そしてハニーバジャーだった。

いつの間にか、MP7とP90もハニーバジャーの後に移動していたらしい。

そして、MP7は傍目から見るとわかりづらい幻影を展開していた。

 

「(そういえば…風の噂で、分身する事ができる戦術人形がいたと言う事…まさか、彼女が…!?だとしたら、今まで見えていた影はあの人形作り出した偽りの的だという事?)」

「目的の距離まであと少しよ!!」

「分かってるよ!!…あと少し、あと少しだけ…!!」

 

次の瞬間、MP7がシールドを持ったP90の背中を押し、2人がシールドから銃とそれを握る手だけを出して、イントゥルーダーに牽制射撃を開始し、随伴部隊を削っていく。

 

「…チャージ完了。運は私に味方した様ですね…!!それでは終幕を弾いて差し上げます…!!」

 

噴火を知らない人なら、それが起きたと勘違いするような爆音が響く。

イントゥルーダーのフルチャージに掃射が始まったのだ。

 

「…来た!!ここで!!」

 

最大まで充填された巨大な粒子のエネルギー弾が発射され、3人を襲いエネルギー弾が衝突した瞬間…大規模な爆発が発生した。

 

「後は、あのならず者を…!?」

 

3人を倒したし、後はコルト・パイソンだけだと思い勝利したと思ったイントゥルーダーに信じられない光景が映る…

 

「行くわよ」

 

「…馬鹿な?…あッ…!?…アアアアアアアアアア!!!!!」

 

イントゥルーダーに映ったのは先程倒した思われる戦術人形の3人組の1人であるハニーバジャーだった。

彼女は最初に胴体を中心にフルオートで300BLK弾を発射。

5.56ミリより、弾頭が思い弾丸はイントゥルーダーの身体を抉る様に、切り裂き貫いていく。

イントゥルーダーの武器の長さによる取り回しの悪さが原因で小型の武器を振りまわすハニーバジャーの動きについて来れない、

弾薬が切れたタイミングでハニーバジャーは銃を顔面に投げつけ、ひるませた表紙にタックルを喰らわせる、

 

タックルを受け、重心を崩したイントゥルーダーに携帯していたダガーと暴徒化した人形用の特殊警棒をそれぞれ片手にもち、追撃の素早い連続攻撃を繰り出す。

 

「────!!!────!!!」

「いい加減…大人しく、しなさい!!!」

 

中世のヨーロッパの騎士はプレートアーマーで徹底的に装甲された敵兵に致命傷を与える場合にはツーハンデッドソードやパイクという武器を使うよりも、相手を地面に倒し、装甲の隙間からダガーを突き刺す方が効率的だったため広く用いられたらしい。

 

それは皮膚の下にコアを守る為に機械の装甲で覆われている戦術人形にも言える事かもしれない。

 

「…はっ…ッ!…はっ…!!」

「…まだよ…まだ…!!」

 

舐める様にダガー切り裂かれ、切り裂かれた合間に解剖を刺し貫かれる。それを何度もやらされたらある程度痛覚をカットできる戦術人形でも恐ろしいほどの痛みになるだろう。

 

次第にイントゥルーダーの力が弱まったタイミング、ハニーバジャーはイントゥルーダーに馬乗り、抉るペースあげようとした…その瞬間

 

「────っッ!!!」

 

最後の力を振り絞りイントゥルーダーがハニーバジャーを引き剥がし、勢いよく立ち上がると…

 

「美しいとは言えませんが…ここでアナタごと…!!」

 

コアに連動した即席の爆弾で道連れにしようとし…

 

「動きを止めた。撃て」

「ええ、これで終わりよ」

「────あ」

 

突如、イントゥルーダーの起動する為に必要な装置を引き裂かれ、その0.1秒程であろう時間が経過したタイミング鋭い射撃音が発生した。

上と下の感覚が別々になる、そして凄まじい威力身体両方の体引っ張り、宙に浮く。

手足を動かしても、”手も足も出ない”イントゥルーダーにできることはなく、立ち上がるも気力はなく…そのまま、上の身体はクレパスに近づいていく。

 

「…ハッ!?」

 

そして、彼女の身体は両方とも奈落に落ちていった。

 

「命中」

 

雪に体を埋め、戦術人形のイヴァン指揮官はスコープで相棒の狙撃した弾丸が、命中を冷淡に告げる。

報告を聞いた、DSR-50はコッキングレバーを引いて次の弾丸を装填する。

 

「今の見たか?」

「ええ、キレイに食い込んだわね」

 

イヴァン指揮官はユーリに無線を入れる。

 

「DSRの弾丸を食らわせた。作戦終了…イントゥルーダーを倒した」

<わかった、こっちもゲーガーを片付けた。合流しよう>

「ゲーガーを?さすが、AR小隊の指揮官様ですね」

 

まさか、追いかけてきた人形を倒すなんて誰も思っていなかった。

せいぜい煙に巻いて、離脱すると思っていたから。

 

「こっちだって、エリートを倒したぞ?」

「あら?嫉妬?」

 

愚痴気味に匍匐の姿勢から立ち上がろうとしたイヴァン指揮官の背中に柔らかい感触と甘い吐息がかかる。

 

「フフ、これは帰ったら”慰めて”あげないといけないわね」

「生きて帰れたらな」

「ええ。生きて帰るわよ……私達だけでもね」

 

合流の連絡が入ったタイミングで雪の中埋もれていたMP7とP90が這い出てきた。

 

「ああ…一生分の運を使ったと思う…」

「私の分身で誤魔化しながら、相手の協力な一撃をMP5をフォースシールド再現して、防ぐなんて…少し無茶だったよ〜」

「そのうえ、あいつは死体だったし……まあ、無理がとおって、通りが引っ込んだけど」

 

撤退中に見つけたMP5の残骸から、フォースシールドの発生器を発射して電力を注入、なんとか再現したフォースシールドなんて1回が限度だ。適切なタイミングまで接近し、それまではP90の幻影で稼ぐ。そして、ピークが過ぎたイントゥルーダーをハニーバジャーがトドメを刺す…作戦は成功した。

 

どどめを刺したのはずっとこっちを見守っていたDSR-50だったが…

 

<さぁ、行こう。次のフェーズを過ぎれば終わりは目前だ>

 

────────

 

ユーリたちの後方部隊が動き出した時を見計らったようにゲーガーも移動し、追いかけてきた。

 

「ゲーガーの部隊が撃ってきます!」

「移動することを伝えます!」

 

見ると、自分の無線も圏外になっていた。

 

<────アーキテクトはまだ捕まったままだろ?居場所を教えろ>

 

「何故あのタイミングで交渉を…?」

 

後方から襲い掛かった、ゲーガーがいきなりこちらに要求を伝えてきた。

さらに、自分たちが障害物にしようとした林が吹き飛ばされた。

 

<さもなくば、お前たちの守っている人間たちを吹き飛ばしてやる>

「ジュピター砲を!?」

 

こういう兵器は正規軍に使っていると思っていた。脅迫なんかで使うなよ!!

鉄血はよほど、アーキテクトが必要なのか!?まさか、避難民を餌に使ってくるとは……手段を選ぶ余裕もないらしい。

ユーリはなるべく固まらないことを命令しようと無線を触ったとき、奇妙な音がしてそれが

 

「……?しまった!?」

 

昔、訓練で聞いたことのあるトラウマになった音をだと思い出した。

 

「無線を切れ!!アクティブ防御だ!」

 

人形たちは急いで、手持ちと人形間の意思疎通間の通信を急いで切る。

そして、奇妙な音が一気に大きくなる。

 

無線を切るのが間に合わなかった人形、そして無線を切らなかった人形の頭か手持ちの無線、それか両方が一斉に爆発した。

 

「いっ!?いやああああっ!!??」

 

相棒の人形の頭がはじけ飛び、Cx4がパニックの悲鳴を上げる。

 

「な、なかまが!?」

「ば、爆弾!?」

 

鉄血の人形たちも何体か爆発したらしい、鉄血の方からもパニックの悲鳴が上がる。

 

「グリフィン!!アーキテクトはどこだ!!」

 

ゲーガーはパニックに目もくれず、無線がだめならばと、大声で聞いてきた。

あのタイミング鉄血に生き残れる可能性は無いはずだ、それなのにアーキテクトの居場所を問う?

 

「あ……、ああ……」

「ひ、頭が……私は死にたくないっ……」

 

何人かの民間人たちも今のショックで放心している。

人形だってパニックになったのだ、だれが責められる?

 

「ゲーガー!来ます!」

 

SuperSASSがゲーガーの接近に気が付く。

だが、弾丸はゲーガーのスピードの前に外れた。

 

「へたくそ!私がやる!!」

 

今度が隣のG28による狙撃。

こんどは命中したが、武器にあたっており有効打ではない。

 

「そっちも大概じゃん!」

「当てた分だけマシよ!無線はまだ駄目そう!?これって敵前逃亡か、置いてきぼりの二択だったりする?」

「どっちもやだよ!?」

 

だが、どちらもあり得る話だ。

連絡が取れないのでは、どのタイミングで下がればいいのか分からない。

己の判断を信じるべきか、それとも待つか。

 

────突破口は北西315です!!以下の部隊の方は…

 

大声で響く声が雪原に響き渡る。

 

「あれってカリーナさん!?」

「拡声器なんて、そんなオンボロまだ持ってたんだ……」

 

それでも助かった。

カリーナから無線の代わりに大声の拡声器による伝達で人形たちは何をしていいか判断できるようになったのだから。

 

「人形たちが動いているな、あの時、事前にメガホンを拝借してなければ…なんて考えたくない」

 

だが、カリーナの無線は鉄血にも聞こえている。

敵は武器を持ち、グリフィンの動きを妨害しようとしていた。

しかも、ゲーガーは速度を上げてこっちに狙いを定めた。

 

「やっぱり来たか!」

 

口頭の伝達は口を塞げば止まる。

だから、拡声器の音を頼りに突っ込んできた。

そして、自分はそのカリーナと一緒にいる。

 

「カリーナ!先に逃げろ!ゲーガーはお前を殺す気だ!!」

「ええっ!?」

 

突然のことにカリーナは驚いたが、すぐにカリーナを守る人形と避難民を先に行かせて、自分たちは足止めを試みる。

 

「見つけたぞ!!」

 

ゲーガーがこちらを機械の肉眼でとらえた。

ジュピターの砲撃は…来ない。

通信ができないのあっちも同じか!!

 

「鉄血も連携が取れない今がチャンスだ。ここで食い止める!」

 

────

───

 

「次から次へと…!!」

 

迫りくる鉄血兵の眉間を打ち抜き、破壊して、後ろと進み、 M4A1らは鉄血の包囲網を突破しようと試みていた。

包囲の奥には、アルケミストがいる。

 

「どうやら、軍に捻り潰されるまで引き下がるつもりはないようね」

「軍を脅威と感じて居るのはお前達だけだ。それに"今の"私の役割はM4A1、貴様を連れて帰る事だ」

 

銃のリロードを使用とすると、さらに複数のスカウト型の鉄血の機械が立ちはだかる。

UMP45の嘘つき!いるのはゲーガーじゃなくて、アルケミストじゃない!!

 

「何も言わないならそれも構わない。手足をもぎ取れば動くのは口だけだ」

「────!!!」

 

咄嗟に銃のグリップを握りながら、腰のホルスターに収納していた、FNX-45を左腕を伸ばし、強引に引き抜く。

自分の手足を狙おうとした、スカウトを全て急所に命中させた。

 

「(まだよ…まだ、指定のポイントに辿り着いていない…!!)」

「逃さん」

 

幽霊のような動きで、アルケミストが自分を追いかけて追いつくまでのタイミングで、マガジンキャッチボタンを押して、マガジンが自由落下して落ちるタイミング次のマガジンを挿入、

念のため挿入したマガジンの底を軽く叩き、FNX-45を握りながら、ボルトリリースをマグウェルを包む様に掴むように押した。

そして、左手にFNX-45、右手に自身のM4A1を持ち両手射撃しながら火力を増強させて、強引に道を切り開いた。

 

たどり着いたのは、だだっ広い荒野…いや雪原だった、

 

「漸く決着がつけられるわね。最後まで付き合ってくれてありがとう?ゲーガー」

 

目的地に着いたM4A1はニヤリと笑って追いかけてきたアルケミストを目視した

 

<ハーイ。M4との追いかけっこは楽しかった?ゲーガー?邪魔しちゃ悪いから他の全部も消しちゃいましょ?>

 

次の瞬間、アルケミストの部下で砲撃支援をしていた人形の信号が消えていた。

 

「────味方の信号が消えた!?それにイントゥルーダーの反応も…!まさか、とっくに────!!」

 

まさか、たった4人の部隊にここまでしてやられるというより、自分たちがとっくに仕込みを済まされていたといういう事実はアルケミストも予想していなかったらしく動揺していた。

 

「余裕ぶっても、アナタもちっぽけよ…こんな戦場じゃあ」

 

物思いふける様に今まで見下された分、アルケミストを見下し返す様にM4は空虚な瞳で雪原に立っていた、

「調子に乗るなよ…!!ここに居るのはお前と私だけだ…今ここでお前を…!!」

 

時間さえ稼げれば、後からくるハンターが来る。2対1ならM4A1を無力化できる。

 

<そうやって、いつまでも諦めないで何かをやり遂げようとする所は相変わらず立派ね。でも、これで終わり>

 

突如、今まで自分たちが感染させていた傘ウイルスに侵されて廃棄されていた軍の人形が起動し始める。

 

「な、なんだと…!!」

 

自身に数え切れないほどロックオンをされてアルケミストが避けられない、と思った時にはM4A1はいなかった。

 

<下等な人形相手がお嫌いなら、最高品質のお友達をくれてあげるわ…さぁ、やっちゃって>

「M4!!貴様!!」

 

永遠とも思われるくらい長い射撃大地そのものを抉るように爆発して、雪原は焼け野原と化して燃え上がった。

 

「終わった」

<お疲れ様~>

「何が”お疲れ様”よ。エリートはゲーガーじゃなくて、アルケミストじゃない。敵の情報すら正確につかめないわけ?」

<悪いと思ってるわよ、でもプラン通り倒せたからいいじゃない>

「それは結果論でしょうが」

 

焼け野原とかした戦場でM4A1が雑踏を歩くように何事にも興味を示す事もなく、アルケミストに近づいて来た…

M4A1はアルケミストを見下ろす。

声が出ないらしい、声帯モジュールが潰れたのだろう、だが…ここで逃してはならないと残っていた右腕を伸ばして、M4A1の脚を掴む

 

「…チッ」

 

イラついたようにM4A1は脚を振り払うと引き金を引き、アルケミストの頭を貫いた。

アルケミストが生意気だからではない、あることを思い出したからだ。

 

────貴方は、第三次世界対戦を経験したんですよね?

 

私達、戦術人形にとってはこの第三次世界対戦の戦いはとてもデータ上興味を唆られるものだった。

 

誓約して、しばらくした時に思い出したように、M4A1は第三次世界大戦の経験を聞いたことがある。

でも、その話を持ち出されると、いつも指揮官は少し悲しそうな顔をした。

だから、知的欲求を耐えて、私はこの話を避けていた。

 

────だったら教えて下さい!!初めて敵を倒した時お話を…

 

私は我慢できたが、他はできなかったらしい。

彼の事情なんて知るかと、講師に質問するように沢山の人、人形がその事を知るとこぞって聞いていたのだ。

中には、卑しく足をつかんでくるやつもいた。

M4A1はさっきのアルケミストに足をつかまれたとき、その件を思い出したのだ。

 

満足もなければ享楽もない、ただただ誰かの命を奪ったという感覚しかない。

任務を完了してくれれば褒めてくれて優しくしてくれる指揮官はもう…私の手の届くところには居ない。

 

────アナタは自分を傷つけた存在に代償を払って欲しいだけ、その後周りの不幸なんて知った事ではない、何をするでも自分本意…復讐を終えた後のアナタはきっと、他人の幸せすら憎んでいくのでしょうね。

 

また、頭の中に声が。

 

「うるさい、黙れ。しつこいわよ」

 

────ほら、そうやって本当のことを言われると勢いだけで誤魔化そうとする、自分自身の事と向き合えていないから、大切な彼氏とやらも見捨てる事ができる。

 

こちらの感情の起伏でも読み取ったらしい。

しつこく、腹が立つ口調でM4A1をまくしたてる。

 

「そんなの、そんなのは……ありえない……私は、私は────!」

 

その姿をAK-12はなにかを伺うように、遠巻きに見ていた。

 

「まあた、ぶつくさ言ってるわよ。あの隊長。本当に頭大丈夫なの?」

「作戦は成功したでしょうが……」

 

AK-12はだんだん、M4A1としての個人に疑問を覚えているらしい。

STAR-15も反論こそしているが、実際は本当に大丈夫なのかと不安に感じていた。

 

「AR-15、404小隊とは合流するまでどのくらいかかるの?」

 

不意にAK-12がそんなことを聞いてくる。

STAR-15はM4A1の不安定さに辟易したのだろうかと推察した。

 

「2時間後」

「2時間後ね、了解」

「どこ行くつもりよ」

 

暇つぶしなのは分かり切っていたが、念のため聞くことにした。

 

「暇つぶしよ、なにかいいことできないか行ってみる」

「行ってみる?まあ、いいわ。時間に遅れないなら好きになさい」

 

なにか、引っかかるが何かの言い間違いだと思うことにしてSTAR-15は放っておくことにした。

AK-12は「分かった」と言ってフッと笑うと、一度部隊を離脱した。

 

しばらく離れたところで、AK-12は持っていた端末でコードを入力する。

 

────ゲーガーめ!しつこい!!

────指揮官!取り巻きもけしかけてます!

 

これは通信基地で手に入れた、グリフィンのリアルタイム映像だ。

運よく近くにいれば、弾薬を分けてあげられると思ったので何の気なしにのぞき見していたのだが、事態は非常に悪く、404小隊の勘違いかと思われていたゲーガーはグリフィンと戦っていたらしい。

作戦中に何らかの不手際があったのか?

 

「位置は……走れば間に合う!」

 

目と鼻の先では全然ないけれど、それでも十分間に合う距離に自分はいた。

AK-12に迷いはなく、彼らのもとに駆け出した。

 

────

───

 

「リロード!!」

 

猛追してくるゲーガーを押しとどめるために、ユーリと人形たちは弾幕で対抗していた。

イントゥルーダーは計画的に倒せるとして、ありったけの弾幕をまき散らしてほんの少し足を止めている間にリロードが間に合うかは微妙だ。

 

「弾がなくなった!」

 

PM-9がマガジンをリロードする。

 

「カバーしろ!」

 

すかさず、残りがカバーに入る。

 

「弾切れ!!」

 

今度はMk46が弾切れになる。

 

「弾切れ!予備弾薬も尽きた!」

 

そして、今度はOts-14もだ。

しかも今度はすべての弾丸を使い切ってしまったらしい。

仕方ないだろう、Ots-14の7.62×39はなかなか見つけることが出来なかったのだ。

 

「今度はこっちが……!」

 

最悪だ。

ユーリも弾薬切れを起こしていた。

発射レートが違う銃で連携を組むと、こうなることを忘れていた。

 

「はあああっ!!」

 

一斉に弾がなくなったことをゲーガーは見逃さない。

武器を押し出すように構え、一直線で襲い掛かる。

 

「…やっぱり、此処にいたのね」

 

突然現れた、銀色の影がゲーガーとグリフィンの間を割り込むように飛び込み、ゲーガーに向かってタックルを食らわせる。

 

「なに!?お前は!?」

 

ゲーガーは驚いた。

ジュピター砲を当てて粉々になっているはずの人形AK-12が開かれた瞼の奥から輝く、ピンク色の瞳をギラつかせ自分を睨んでいたから。

 

「AK-12……」

「404小隊のバカ共、敵がどこに行くかすらわかんないの?」

 

ゲーガーを睨みつけるAK-12は雰囲気からして獰猛な獣のそれになっていた。

そして、突然現れた彼女の姿をグリフィンの人形たちは若干動揺気味で見つめていた。

 

「今のうちに弾を装填しろ」

「あ……はい!」

 

人形たちはゲーガーとAK-12が対峙しているうちに弾丸を装填した。

 

「貴様、死んでなかったのか」

「お友達を盾にしたのよ」

 

相変わらず、そういうことには知恵が回るなとユーリは昔を思い出す。

 

「そして、私に死ぬ予定は……ないの。やり残したことがあるし」

 

AK-12はユーリの方をちらりと見る。

 

「手を貸すわ。もともとはこっちの手違いだし」

 

AK-12はこっちにバッグを投げつける。

バッグの中にはいくつかのマガジンが詰め込まれていた。

中にはOts-14が欲しがっていた、7.62×39のAKマガジンも入っている。

 

「邪魔をするなら殺す…!」

「邪魔をしなくても殺す癖に」

 

AK-12の全身から駆動音が鳴り響く。

出力を急激に上げている証拠だ。

さらに、彼女の四肢の隙間から白い煙が噴き出す。これは運用想定以上のサイクルで出力を無理やり上げたことで漏れ出すほどの冷却剤を投入していることで発生する現象だ。

 

「────深度演算モード、戦闘態勢」

 

火薬で放たれた弾丸のようにAK-12はゲーガーに向かって突っ込んでいった。

 

「むっ……!!」

 

AK-12の5.45×39ミリを武器で受け流し、ゲーガーは刃型のレーザーは振り上げる。

しかし、AK-12がそれを紙一重で躱して蹴りを叩き込む。

 

「ああ、やっぱり基本は変わんないか」

「は?」

「ああ、気にしないでこっちの話だから」

 

AK-12はまるで、ゲーガーの動きを読み切っているようにも見えた。

思えば、あの指揮官もそうだ。

弾がなくなるまでは近づきたくても近づけなかった。

 

「まだまだ行くわよ」

 

ドンっ!と足元の雪を吹き飛ばし、AK-12が再度接近する。

今度はゲーガーの予想以上の速度で、懐に飛び込んでいた。

 

「しまった……!」

 

この距離では逆にこの大きすぎる近接用兵器は不利だ。

焦ったゲーガーは貫手でAK-12に接近したことに対応しようとした……

 

「読み通りよ」

 

だが、AK-12はゲーガーを跳び越すようにジャンプして攻撃を飛び越していた、そしてゲーガーの背中に弾丸を叩き込んだ。

 

「ぐうっ!?」

 

肩を抑えるゲーガー。

流石に距離が近すぎた、自分の素体の強度を貫通して肩をドリルでえぐられたような傷を負っていた。

 

「それで本気?」

「おまえっ……!」

 

AK-12はせせら笑う。

ゲーガーはAK-12に隠せない怒りを燃え上がらせる。

 

「まだ撃つな」

 

そして、ユーリたちは銃火器のリロードも終了した。

しかし、ユーリたちは人形たちに待機させている。

 

「民間人の移動を気づかせるな」

 

AK-12に消耗を強いたいからではない。

まだ、民間人を安全な所に下がらせてないからだ。

 

「死ね!!」

 

激高したゲーガーが今まで最も素早い突きを繰り出した。

だが、AK-12は自分自身の演算能力を極限まで敵の行動パターン分析に回ししてたため、その突きを蹴り上げ、さらに襲い掛かる横薙ぎを屈んで避け、不安定な姿勢から引き金を引いて、弾丸を叩き込む。

 

「……っ」

 

2度目は命とりだと、ゲーガーは判断したのか素早く武器を盾にして銃撃を守る。

だが、防御しきれていない部位を即座に弾丸が飛び血肉を切り割く。

通常の人形ではこの高いスペックではあり得ない判断速度だ。

だが、AK-12にはそれが可能だ。ありとあらゆる能力を瞬時に切り替える。

これが深度演算モードの一面だ。

 

「民間人の退避完了です、目視の範囲ではですが」

 

Ots-14が民間人が安全なラインまで移動で来たことを報告する。

 

「よし。なら、攻撃に移ろう」

「あっちの準備も万全のようね」

 

AK-12はニヤリと笑って、一気に後ろに向かってジャンプした。

 

「逃がさん!」

 

ゲーガーがAK-12を後ろに飛んだのを逃げたと判断した。

そして、武器を構えて突撃で一気に追い込元うとする。

 

「逃げてないって」

 

AK-12は勝ったことを確信した。

ゲーガーが見えていないらしいが、グリフィン人形たちの照準が彼女を捉えていた。

 

「────!!??」

 

大量の弾丸はゲーガーに嫌というほど命中し全身を容赦なくえぐり取っていく。

 

「が……はッ……!」

 

血の涙を流して、ゲーガーは膝をつく。

さらに、ユーリが一歩ずつ近づきながらショットガンM590を構えて接近する。

正気か?とゲーガーは彼の行動は慢心と判断し、せめて相打ちと武器を握る。

 

「か……!?あっ!!??」

「私を忘れちゃった?」

 

最後の抵抗として、とびかかろうとした時、背中から激しい痛みが襲い掛かる。

正体は自分に背を向けたゲーガーを呆れたように苦笑いを浮かべていたAK-12だった。

そして、ジャキンとギロチンの刃が罪人を切り落とす位置に着いた時と同じような音がゲーガーの耳元で鳴り響く

 

「あっ……」

「死ね」

 

対弾性能仕様の鉄血エリートのゲーガーでも顔面に無数のショットシェルを叩き込まれて無事なわけがなかった。

ゲーガーの顔面をショットシェルがハチの巣に変え、視覚を失い倒れこんだ瞬間、ユーリが銃口でコアのある胸元を地面に押しつけ、またジャキンとコッキング音が鳴る。

 

「────!!!」

 

それだけはマズいと思った、ゲーガーが身体をバタつかせて、必死に抵抗しようとしたが。

ズドンと太鼓のような音が雪原に響りゲーガーのコアは木端微塵に砕け散った。

 

「はあ……」

 

イレギュラーな強敵を倒し額の汗をぬぐった時、通信が来た。

イヴァン指揮官からだ。

 

<DSRの弾丸を食らわせた。作戦終了…イントゥルーダーを倒した>

「わかった、こっちもゲーガーを片付けた。合流しよう」

 

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