「戻ったわよ」
「…ギリギリね。そう、どうだった?」
AK-12が部隊から離れて、ちょうど合流時間時間…AN-94の心配し始めた頃にAK-12はなんでも無いような様子な澄まし顔で帰ってきた。
「暇つぶしはしてきたわ」
「それだけ?」
お喋りなAK-12に対しては異常なほど簡潔な回答だ。
「そう、それだけ…で?成る程、404と合流したのね」
足跡の数が自分たちの倍ある。
404小隊の来訪を感じ取ったAK-12がマガジンを取り出して、コッキングレバーを引き、弾丸を弾き出すと銃身の先に誰もいない事を確認して引き金を引いた。
「メンテナンス?」
「えぇ、ちょっとした点検だからすぐ終わるわ」
ジャムでも起こしたのだろうか?とSTAR-15は思っていたが、
実はAK-12はただゲーガーとの戦いで余分な弾を使っていることを隠すためだった。
STAR-15がコチラを見てない間にコッソリ、新しいマガジンを装填した。
「ふぅ……終わったわ」
AK-12はバレてないことに安堵していたが、新しいマガジンを差し込んだのだから弾を使ったことは結局バレる事だった。
「どうだった、AK-12?何か問題が?」
「暇つぶしになんかあると思う?特になかったわ、次の指示は?」
AN-94がAK-12に「無い」と答えると「休憩できるわね」と言って伸びをしていた。
「AK-12、ちょっといい?」
弾薬箱を椅子がわりにして、AK-12が寛いで居ると…M4A1がAK-12の前に現れていた。
「そっちから質問なんて珍しいわね?M4?」
「あなたが一旦離脱した時の事なんだけど…」
そこまで言われて、AK-12は警戒したように表情を固くしていた。
まさか、こっそりユーリに会いに行ったこと……ばれた?
「鉄血が進路を変えた?」
「そう、私たちのことはどうでも良いみたいに鉄血が兵を集中し始めたの」
確かに妙だ、ハイエンドモデルを倒した挙句、重要情報を盗んだ我々を無視する理由なんて…相当な理由だろう。
「防御を固めてるんじゃ無い?ゲーガーは結局いないし、どこかで軍相手にボコボコされてくたばったんじゃない?それで、鉄血も漸く自分がザコだと思い知ったのよ」
「ずいぶん細かい例えね…」
AK-12は最もらしい理由で答えたが、M4A1はまだ納得いかない様な態度だった。
「なによ」
「いえ…確証はないんだけど、嘘ついているように見えたから」
AK-12の表情が再度強張る。
「あら、必死ね。あなたの指揮官様がまだ無事か気になるの?」
「……何が言いたいのよ」
「まあ、今頃くたばってるなんて考えてるなら……それは絶対にありえないわ」
M4A1の呟きをAK-12はキッパリと否定した。
「なんでそう言い切れるの?」
「そりゃあ、私の方との関係の方が、あなたの指揮官様をしていた頃よりも長い付き合いだからよ」
確信した様な態度でAK-12は、M4A1に優位を取るようにニヤニヤ笑っていた。
「……AK-12。私の質問に答えて。確かに7.62弾薬はそのAKマガジンなんて必要じゃないし盗まれたって構わないわ。でも、無くなることが分からないだけバカじゃないの。言いなさい、あなたアレをどうしたのよ?」
「はあ、アンジェエリアの目利きは腐ってなかったか」
AK-12は観念したように片手を振る。
「途中で弾薬がすっからかんのグリフィンの人形の部隊を見つけてね。ちょっとした情報と交換で彼女たちに融通してあげただけ」
「情報?」
「あいつら、ここの地元の人たちを脱出させようと悪戦苦闘してた。でも、”情けは人の為ならず”ね。そのおかげでグリフィンは鉄血も軍隊も知らない地元特有のルートを手に入れていた」
それに比べれば、弾薬で取引できるなんて安い買い物だった、とAK-12は自慢げにしていた。
本題はもうちょっと違った。
でも、ユーリと話したことはAK-12は伏せた。任務を放棄する人形とは思えなかったがユーリにM4A1は仲間を助けなくなった冷たい人形だという心象を与える嫌がらせをしたかったから。
「それは私たちも仕事をしていなかったと煽るためかしら?」
「…HK416」
HK416がまるでくだらなそうにため息をつきながら、薪を火の中に入れていた。
いつの間にか戻っていたことを2人は気が付いていなかった、
「…ふーん、I.O.Pの人形の無能さを認めたという解釈をしてもいいのかしら?"完璧な"HK416 さん?」
「…煽ってるの?」
────コオオッ…と冷たい空気が流れる
この凍える、地帯のせいかもしれないし…他にもこの嫌悪一歩手前の空気のせいなのかも知れない。
「…さぁね?でも、間違いだらけの情報を寄こされて文句の一つも言いたくなるわよ。下手したら、グリフィンがあなたたちのケツを吹いているのかもね」
「自分の後始末もできないくせにグリフィンの心配をできるの?それとも、あなたって命令されてやったんですっていう、小物なの?"」
やめとけ、と言わんばかりの空気なのにM4A1がさらに空気を悪くする発言をした。
最も言わないと思っていたM4A1がだ。
「…それは、流石にひどい発言よ…M4A1」
突っかかってきた筈のHK416がM4A1のモロトフ発言がきっかけで…一転、逆に引き気味の態度に早変わりした。
「…そう、で?私がひどいこと言うから、彼女の親殺し実行は無かったと言いたいわけ?」
「────」
「……」
まだ、炎上していないだけ、マシかもしれないと思ったらさらに石油までM4A1は撒き散らした、AK-12は目を合わせてはいけないくらいの怒りを覚えているとこの時のHK416は確信した。
「…まあ、そんなものよね。勝手に集めた物資を使って、私の相談なしにグリフィンと勝手に好感したんだもの。差一緒から勝手に行動する人形なのよく理解できたわ」
石油の炎は厄介だ、水程度じゃ消えない。
HK416は頭を抱えた、軽い挨拶のつもりがこんな言葉のナイフの応酬になるなんて思ってなかった。
「……結局ところね」
「────────」
二人とも感情こそ出さない…いや、彼女らの怒りは感情を殺してしまう怒りなのだろう、声の音質が低くなり、口調は南極の様に冷たい
「今も昔も迷惑なやつなのは変わらないのよ。自分の怒りに、自分が受けてきた不公平に対する感情だけで精一杯。それが自業自得な結果で回り巡ってもそれを他人のせいにするんだから、可哀想ね」
今度はAK-12は首を左右に振り、嫌悪感を少しずつ露わにして、下らなげに語り出す。
「お友達ありきな隊長さんの発言どうも。そこまであなたがノンデリなことを言えるのは誰の人生だろうと"自分の人生で忙しいから"っていう適当な理由で知ったこっちゃないからでしょ?まあ、復讐者ってそんなバカばっかりよ。あなたは今までの人生のなかで最低のチームメイトよ」
復讐する相手がどんな事をしてきたか…どんな思いで、どんな過去があったか知って仕舞えば、判断が鈍るかもしれない。
「私達を殺そうした奴ら以外の正規軍にいる人達の人生、苦悩、言いようのない悲しみ…怒りを知ってる奴なんて何人いる?知らない、知りたくも無いんでしょ?貴女はただ憎い奴を憎めればそれでいいんだから」
「AR小隊があんな奴らと同じ価値なわけないでしょう!」
M4A1が遂に激情を露わにして、AK-12の発言に反論した、しかしAK-12に眉一つ動かさず言葉紡ぐ。
「いいえ、同じよ。でなきゃ、あなたは指揮官を切り捨てる様な行為の説明がつかない。軍隊にいたから指揮官サマに対する憎しみが移ったんでしょ?素直に今まで通り共闘すれば良かったじゃ無い?」
「それは…」
M4A1にとって痛いところを疲れたらしく、言い返す言葉が思いつかなくなる。
「私たちの存在を秘匿する為?だとしたら、大馬鹿な行為ね?この事が指揮官サマにバレて見なさい?アンジェリアにバレて見なさい?きっとあなたは後悔するでしょうねぇ?」
「AK-12、指揮官とアンジェリアは関係ないでしょ?」
普段は他人のやり取りを気にしないHK416が横槍を入れた。
この場合は、話を逸らすなの意味合いと取れるが…
「…そうだといいけど?まぁ、彼にバレなくても私はこの後アンジェリアに報告させてもらうわ」
「…だから、脅すなって、言ったでしょ?どうして、お互い仲の悪いことしか言えないの?」
HK416に再度念押しされて、観念したのかAK-12は「分かった分かった」と手を振って発言を控えた。
「仲の悪い発言しか言えない理由?簡単よ、私たちはお互い仲間と思ってない。だから…真実を知った時のあなたには興味があるわね。特に、味方から攻められるなんて覚悟を初めから決めてない奴なんて?」
しかし、AK-12はどうしてもM4A1の破滅を眺めたい願望を抑えることは出来ていない様だった。
「せいぜい楽しませてよ?この先どんな風に悪あがきをするのかをね?」
AK-12が立ち上がり、その場から離れていく。
「…悪かったわね」
「まったくよ」
バツが悪そうな顔でHK416はM4A1に謝罪したがどの点で謝罪したか理解されなかった。
「AK-12に突っかかりすぎよ」
「…わかってる」
仕方ないという様でもなく、単純な謝罪の意を含めてHK416は説明した。
「それで、AK-12は嫌がらせでアンジェに報告するって言ってたけど、どうしてアンジェと指揮官は何か関係があるの?」
「分からない…でも、直接はアンジェリアさんに確かめるしかないかもしれないわね」
恐らく、指揮官とアンジェリアとの関係は404でも把握できていないのかも知れない。
M4A1だって、アンジェリアと指揮官の関係があったという事実を今知ったのだから。
「睡眠が終わったわ。交代よ」
「やっと?あぁ…眠い眠い、せいぜい、悪夢で終わらない様に気をつけるのよ?M4A1?」
AK-12がせいせいしたような態度で毛布に包まり眠りだした。
「…何か、あった?」
怪訝そうにAN-94が心配していた。
HK416が「別に」と言って横になったが、M4A1はまだ、その気にならない様だ。
「何も言わないなら、それでもいい。…困った事があったら力になる」
「AK-12の為に?」
AK-12に委ねがちなAN-94を信頼できないのかM4A1は意地の悪い発言をしたが…
「お前の為だ、M4」
AN-94の純粋さには響かない様だ、最もその純粋さを育んだのが…
「本当に前と変わっているのね…」
「お前のお陰でな、仲間は助け合うから仲間って言うんだろ?」
────仲間だから助け合って行けたらな…って
「…そうね」
前にAN-94に恐る恐る言った言葉が跳ねた水が出来た波紋の様に広がっていく
「…もう寝ろ、一度横になってスッキリするといい。さっきの騒ぎも話したいときに話せばいい」
「そうね…」
これ以上、AN-94に心労をかける訳にも行くまい…そう思い、M4A1は目蓋を閉じて、眠りに付いた。
────
───
「ふわ〜わ…」
「大丈夫?カリーナ?」
欠伸も噛み殺さず、肩を回しながらため息をつく、カリーナをユーリは心配した。
「そうですね…お金があればもっと頑張れますわ」
「はは、帰ったらクルーガーに申請してみるかい?」
と言っても、一日中眠れないという心、体共にやってくる疲れは中々来るものがある。
「それ、ちゃんと握るんだよ?」
「分かっています…よいしょっと…」
特に辛いのは物を握る力の加減が把握できないところだ、不眠は加減を忘れさせる事がある、かと言って無駄に力を入れて仕舞えば気づかない疲労に繋がる。
「漸く、此処まで来ましたね…」
「あぁ…後もう少し…本当にもう少しだ…」
作戦はもうフェイズ3にまで差し掛かっている、此処まで来ればこっちのものだ。
「それ、なんです?」
カリーナはユーリが巨大な水鉄砲みたいなものを興味深く抱えていたので、つい聞いてみた。
「こいつか?」
ユーリはいい質問だとカリーナにそれをコッキングしてその意外な機構を見せた。
カリーナはその機構を見て、「まさか」と目を見開いた。
「これ、もしかして……!グレネードランチャーですか!?」
「凄いだろ。こいつは
「なんて兵器というんですか?」
「名前か、これはね……GM-94というランチャーさ。これでここを切り抜ければ…後はフェイズ4をするだけで終わりだ…」
フェイズ3…それは、大型ヘリだけでは全員を撤退させられないので、輸送機を使う為の滑走路を確保する事だ。
元々、この辺りは空軍施設だった記録があったのを思い出したのが始まりだった。
<ユーリ。迎えのブツを用意しに来たぜ。あとどれくらいで降りれるんだ?>
「滑走路にある障害物の撤去は?」
<あと、1時間で終わります!!>
進行状況を確認して、人形と話していた法の無線を切る。
実は空軍ではないが輸送機を運転できる知り合いに大きな貸しを持っていて、今日その貸しを返してもらうことにした。
「了解。キャスター、1時間だ」
<いいねえ。それくらいなら燃料も余裕を持てる>
「こっちの空港が見えるころには確認した際には、C-130の駆動音が聞こえるとして…後は、この施設をどれだけ維持出来るか…」
後は、フェイズ4でやってきたC-130に乗せて貰ってオサラバだ。
が、この音を軍隊や鉄血が聞きつける可能性はある。
<心配するな。”あの方”は地対空ミサイルの類は無いって言っていた>
「過信はするなよ。RPGで直撃する可能性だってあるんだ」
<そりゃあ神業だぜ…とりあえず、予定通りそっちに向かう。ちゃんと生きてろよ>
キャスターから通信が切れた。
"あの方"の予想がいいとはいえ、警戒は緩めない。
そういえば、俺も"あの方"からの予想を直接聞くのはご無沙汰だな。時々ユーモアのつもりで詩的な言い回しをするから聞いてて楽しいんだよな。
<ご機嫌よう、グリフィン指揮官様…いえ、AR小隊の指揮官、ユーリ様?>
「"代理人"…」
鉄血のカーストの中でも最高レベルの権威を持つ、エージェント…通称"代理人"がオープン回線で通話してきた。
「そろそろ、来ると思っていたよ?エージェント…どうした?助けて欲しいのか?それとも命乞い?」
<キリル語が通じておりませんね…まぁ、挨拶をば…初めまして、グリフィンの生き残りの指揮官様>
「初めまして?」
…成る程、初めまして。いい挨拶だ
<…えぇ、初めまして?ユーリ様、貴方様がご理解されている通り、鉄血の縄張りは今や軍や謎の武装勢力に好き勝手されています>
エージェントの言葉が正しければ、軍はまだ機能しているという事か…
<…このまま行けば、我々の全滅は必至、その為、私はご主人様に出来る限りの奉公をさせて頂きます>
「カリーナ!寝ている奴らを全員を叩き起こせ!!戦闘態勢だ!!」
…嫌な予感がする、取り敢えず、いつでも動けるようにしなければ
<ご主人様は、この2年間の間…貴方様の活躍とM4A1との関係を大変鬱陶しく思っております…!!>
「私と…M4、レイラとの関係を…?」
宿敵の恋人関係なら共に葬れる絶好の機会の筈だ…それを鬱陶しいと思っている…?
「代理人!エルダーブレインは、M4と何をしようとしている!?」
<…喋りすぎましたわね>
エージェントが溜息を付いた次の瞬間、鉄血の大規模な反応が確認されていく
<ターゲット!!グリフィンの生き残り指揮官、ユーリ・フレーヴェン!!彼を粉砕しなさい!!>
静かさを取り戻したはずの、大地が鉄血の悪あがきにより再び騒乱の事態が始まった。
────行け!!行け!!準備しろ!!
────弾薬はどこに置けばいいの!?
────もしものためにショットガンを持って行け!!
鉄血の大規模な進軍に備えて、人形達や避難民が慌ただしく蠢いている。
「指揮官様、このまま行けば後、15分で接敵します」
「分かった、前衛部隊の弾薬は十分持たせているな?」
持ち堪えれば勝ちだが…その持ち堪えるに必要な条件を揃え切れるかが、勝負の分かれ目だ
「先頭はエージェントか…それなら、リーダーを倒せれば、指示の遅れや混乱でさらに時間を稼げるな…しかし、エージェントを倒せる人形部隊か…」
大目玉である事は確実だが、エージェントは強力な存在だろう…AR小隊の戦闘報告が確実な物だったとしたら…
エージェントを潰す部隊とさらに防衛をする為の部隊、そして退路を維持する為の部隊で成功するのは五分と一割と言ったところかもしれない、正直、ギリギリの所だ…
「エージェントを倒す為の部隊に適正なのは────彼女らか」
どれだけ、多く回せるかと言えば、エージェントに回せるのは5人。
この少数の部隊で倒すとして、その中で望みがあるのはAUG、ACR、AKS-74U、Ots-14……そしてMP7。
「よっ、指揮官」
「来たね」
SMGを携え、戦闘準備を済ませていたMP7がやって来た。
「エージェント止めろって言うんでしょ?準備は出来てる」
もっと人数を加えたいが、あの大部隊が相手だとこれが限界である。
「残りに伝えるんだ」
「何を?」
「止めろとは言わない。エージェントは必ず倒せ」
「普通、使い方逆でしょ……」
「時間までに守りきれても敵は輸送機を見たら何が何でも撃ち落とすだろう」
「後がないのは鉄血だと思ったのに、こっちもか。喧嘩を売る相手を間違えたことを思い知らせてやる」
だが、背に腹を変えられないのが今の状況だ。
エージェントを何としても始末しなければならない。
────
───
エージェントが率いる、大軍相手に事前に敷いていた地の利を生かして山の影、数々の木々…諸々を利用して、グリフィンの防衛部隊はできる限り抑えた後に、撤退して迎え撃つ戦法を取っていた。
「クソ…中々…止まらない!!次弾装填!!」
「了解!!カバーする!!」
LWMMGが空のボックスマガジンを捨て、新たなマガジンを装填している5秒を補う為にブレン軽機関銃が代わりの弾幕を広げる。
「…!!装填完了!!」
「合図だ!!撤退するぞ!!」
自分達の周りにスモークが炊かれ、ブレン達は自分達のいた陣地をスモークの煙がなくなる前に去る。
「撤退するLMGを援護しろ!あの部隊だ!!」
「見えたっ!!」
必死に鉄血から背を向けて次の陣に走るLMGを援護するため、イヴァン指揮官は赤外線レーザーを照射する。
視界を切り替える手間暇と電力が惜しい、DSR-50は回収されてなかった正規軍のPNW-57暗示装置でレーザーを確認し、一番火力の高そうな鉄血人形を優先して倒す。
「早く!!こっちですわ!!」
「分かった!!」
合流地点近くにいた、StG44が急ぐ様にジェスチャーしながら、誘導した。
「状況は!?」
「奴ら…全然止まんない!!アイツら死んでも仕留めるつもりだよ…!!」
土嚢の上に置いてあったミネラルウォーターをLWMMGが飲み干して、荒げた息を整えながら説明した。
「狂ってる…本当に彼女達は正気なんですか!?」
「そんな事私が知るわけないよ!!アイツらは────」
「────入れてっ!」
HMG-21が飛び込んでくる。
彼女はもう少し後で入るはずだった。
「────みんなやられた!死んだ!目の前まで迫ってる!!」
半狂乱になりながら指差した方向には波のように押し寄せる鉄血の軍勢の姿がある。
「クソ…敵があんなに!?下がる!?」
「できるか!!あと、何個もしないで民間人が隠れてる建物だよ!!エージェント討伐部隊が倒してくれれば…きっと!!」
ボンッ!と空気が抜けたような音が響き、押し寄せる鉄血の一団に命中し大勢を吹き飛ばした。
「グレネードランチャー!?」
「そういえば、ユーリ指揮官がなにか拾ってましたわね……アレ、グレネードランチャーだったんですのね」
敵がかなり吹き飛び一息つけるかとおもったが、まだ鉄血は懲りずにゾロゾロと敵が押し寄せてくる。
「お仲間がアレだけ吹っ飛んでも、突き進むなんて……」
「私達の時と同じだ、どれだけ死んでもその屍を掻き分けてこっちに向かうんだ……そんなに死にたいの?……あぁ、そう?そんなに死にたいならお望みどおり死なせてあげるよ!!この死に損ない!!」
LWMMGが恐怖を振り払うようにLMGの弾丸を撒き散らす。
「討伐部隊の方達、頼みますわよ…!!」
────
───
<死ねよ…!!寄るんじゃない!!鉄血の屑が!!!>
<コッチはもう抑えきれない!!撤退するぞ!!>
<もう、弾薬がない!!どうすればいい────>
<ひっいいいい!!??鉄血があの子滅多刺しに!!いやぁ!こないでぇ!!>
無線機は半狂乱になって戦う無線しか聞こえない。
普段から鉄血と戦っていたものから、ただ街の警備をしていた人形までグリフィンの人形は今日は皆等しく生きるために必死に弾丸を敵に向かって撃ちまくる。
「防衛している部隊が悲鳴をあげてる……ここは地獄ね」
「指揮しているエージェントを潰さないとね。Ots-14、エージェントは見える?」
AKS-74Uは何度も鉄血と戦った経験もあり、エリート人形を倒した経験もある実力者だったが、それでもこの戦場に恐怖を覚えていた。
一方、MP7は表情を変えずに落ち着いた表情でOts-14に確認をとる。
<視認出来る距離まで来たわ…ACR>
「了解…燃やすっ!!」
ACRが用意した、テルミット式可燃性手榴弾を投擲した。
地面に落ちた、手榴弾は勢いよく、炎を上げて鉄血人形たちに襲い掛かった。
「熱っ熱いい!?熱────」
「消して!消して!けし────」
火炎を浴び、1人また1人倒れるエージェントお抱えの精鋭部隊を掻き分けて、MP7とAKS-74Uがエージェント目掛けて接近する。
「くっ!!」
接近に気づいたエージェントがスカート下のレーザー砲を発砲。
4つのレーザーが襲い掛かる…!!
「────来た!!」
最初に反応した、MP7が弾薬をばら撒く。
弾薬が地面に命中して巻きあがり、付着していた火炎の巻き上げる。
「小賢しい……!」
炎に驚いて、エージェントの動きが鈍くなった。
続けざまにAKS-74Uが発砲。反応が鈍くなったエージェントに意識外からの攻撃、避けきれない。
「くっ!?」
何発か5.45ミリが命中、毒を飲んだような衝撃を受けるエージェント。
ただ、エージェントは毒の恐ろしさを知らないが。
それに続いて、AUG、ACR、Ots-14が追撃をする。
「────!!……邪魔はさせません!!」
エージェントもスカートの下に備え付けた、銃を発射して応戦する。
「チッ!!動きが良くなってる!!」
「無理矢理フル稼働させているのね…!!」
決死の覚悟を持っているのか…エージェントの身体からはあちこちにスパークが発生し出した…。
しかし、それに比例する様に高速かつ、火力が増大している。
「来るっ!!」
ACRの警告のすぐ後にエージェントが素早く助走からの素早い跳躍、そして一斉に銃口からエネルギー弾が発射された。
砂塵が舞い上がる、視界は不明瞭。
「だけど、それは想定内よ」
Ots-14が夜戦という視界が不明瞭な状況を想定した、比較的高い感知能力でエージェントを見つけた。
自分が有利にするための戦法で敵に有利を与えてしまったエージェント。
そして、先に攻撃したOts-14の7.62×39ミリがエージェントの左腕をえぐり取る。
「────うううっ!?」
「!」
エージェントの悲鳴が聞こえた。
そして、それを一番最初に聞いたAUGが反応した。
それを見逃さず、エージェントが反撃するが、ブルパップという取り回しが効く銃火器を持っていたAUGの方が機動性は上で、攻撃は紙一重で避けられて片手で振り回した先に味方がいないことを確認して引き金を引く。
「なめるな!!」
AUGの攻撃を受けるくらいなら自分で傷つけた方がましだと、
エージェントは無差別にレーザーを撃ち、Ots-14とAUGを吹っ飛ばす。
「────クッ!!」
さらにMP7とAKS-74Uの数メートル先でも爆発し、衝撃がMP7の関節に悲鳴を上げさせ、引き金を引く指にプレッシャーを掛ける。
「────────っ!!!」
唸り声を上げて、遅いかかるエージェント。
目標はMP7か。
そのまま、追撃を仕掛けて1人倒して…次のAKS-74Uを……と思った瞬間
「貰ったっ!!!」
だが、MP7はエージェントの動きに合わせて、後ろに飛び込んで攻撃を躱した。
そして、衝撃を浴びながらも引き金に乗せた指を力ずくで動かして…引き金を引いた。
「────ガバッ…!!」
鉄血の素体はある程度流通しているボディーアーマーぐらいの硬さだ。
そして、MP7の弾丸はそのボディーアーマーくらいなら貫通する能力を持っている。
空中では、自由に動けない。エージェントは自由に動けない。
エージェントの捨て身の行動は逆にMP7のチャンスを与えた。
「ぐ……!?がっ……あっ……!?」
体内に無数の弾丸が埋め込まれ、無数の激痛が走る。
それでも、エージェントは踏ん張りを見せて残った片手でMP7の喉を突き刺そうと腕を伸ばす。
「────ちょ」
「今だ!!」
運よく吹き飛ばされていなかったACRがホロサイトでエージェントを狙う。
放たれた弾丸がMP7の喉に数センチで届きそうなエージェントの最後の腕をえぐり取った。
「くたばれ!!」
MP7が起き上がると、至近距離でフルオート射撃を浴びせ、エージェントのコアを徹底的に粉砕した。
「…自分より…能力の…低い、人間なんかに…利用目的に使われて…愚かな…」
「はは……負け惜しみ言わないでよ。エリートじゃないとまともにコミュニケーションをとれないアンタらと底辺でも会話できるこっちじゃあ、人間もこっちを重宝するのよ。暴力しか信じられない鉄血が滅びるのも当然」
エージェントの的を得た様な発言も実際の戦術人形との考えは異なっている。
「奉仕対象と自分…それ以外を見下す…それがアナタの本性よエージェント」
吹き飛ばされたことが相当腹に据えかねたらしい、Ots-14が屈辱を与えるためにヒールでエージェントの顔面を踏みつけていた。
「…後悔…しろ」
「さらに増援を確認…エージェントを倒して、指揮系統に問題が出るはずじゃ…」
「ダミーだよ、このエージェントはクソッ!!やられた…!!」
ダミーのエージェントは勝ち誇っていた様に笑顔で満ち溢れていた。
「指揮官…!!聞こえていますか?このエージェントはダミーです!!もう本体は…!」
「────あぁ…聞こえてる…いけないな?人の家に勝手に上がり込んでは」
「人間のマナーなど守る価値があるとお思いですか?…グリフィンの指揮官様。貴方に死を届けに参りましたわ」
通信を切る、現れたのは2人のエージェントとどっちかが本体か…それとも偽物か…
「────!!」
「────っ!」
ジグザグに動いこちらの距離を詰めて来た、確かに素早い動きだ、上位レベルだけある。
「…だが!!」
ボンッ!と気の抜ける発射音、そしてその直後に降りかかる衝撃でエージェントは足を止めた。
「室内戦なら次にどんな動きをするかは分かる、それに爆発系の武器を使わないと思っていたか?────悪いな?使うんだよ」
「狂ってますわ……」
GM-95グレネードランチャーの爆発で土煙が起きる。
建物の構造上…閉鎖空間での使用は後2回使用したら崩落するだろう。
「ハズレか…」
榴弾はエージェントの真ん中にブラックホールが出来たように、穴が開いて胴体以外を爆散させていたが、さっきの反応の声が聞こえた通り、アレはダミーだ。
明らかに代用品で使われる様な簡素なコアが胴体が抉れた個体から判断できる。
ユーリはショットガンのようにランチャーのハンドガードをコッキングして榴弾を排莢、次弾を装填する。
エージェントは二体で来ていた。
側近ではなく、ダミーを用いての奇襲をしていたのか。
となると後1人が本命…か
「しかし、ステルスで来るとは驚きだ…空港の音信センサーを掻い潜ったのなら、伏せてでも来たのか?」
「ご想像にお任せします…わ!!」
エージェントもなりふり構わなくなったのか、踊る様にエネルギー弾をばら撒く。
「…クッ」
分厚い柱を盾にして身を隠す。
スカートに入れている銃もよく考えれば合理的だ。
などと考えていたら、もう建物の耐久性がマズイ、パイレーツガン然り、エージェントの高火力武器然り、後お互い1発でも撃ったら建物が崩れる、そしたらお互いお陀仏…
「こいつめ!」
だが、壊れる原因も高威力のものに限る。
ユーリはもう一つの武器DD MK18でエージェントに発砲する。5.56の弾丸程度なら問題ない…
エージェントも流石に構造のことは理解している筈だ、迂闊に攻撃できない以上、遠距離での攻撃が有利にはなるが…
狭い柱にいつまでも隠れられはしない、エージェントは柱から飛び出して、ユーリに襲い掛かる。
エージェントがトカゲのように…いや?これは…どちらにせよ、壁や爆発で広がった障害物をバウンドするボールの様に動き回る、これでは攻撃が当たらない!!
GM-59に当たる確率を少しでも減らす気か!!このままじゃ撃たなくても、崩落するだろう…なら!!
自分の近くに現れた刹那────
「今だ────」
GM-95を建物の上に向けて発射、発射された榴弾により発生した衝撃は建物に致命的な一撃を発生させて…
「は────?」
ガラガラガラ…と崩れる音がする。
それは、火の煙を発生させながら建物が崩れ去る音だった。
────────────
────
<指揮官様、何処ですか!?答えてください!!…皆さん!!消化を…!!>
「…う」
上に空が見える…どうやら地下室があったらしい、その下に落ちたのか…
カツ、カツ、カツ。ヒールの音がする。
「しまっ────ガハッ…」
後の祭りだが、起きた瞬間に近くにあったP226は……拾っておけば良かった、優雅な足音が聞こえたタイミングでは…もう、遅かった。
「か弱いものですね…肉体の違いでここまで動けるまでの時間が違うのですから…」
胸が…!!誰かに押しつぶされているのか…?
「…まさか、貴方が建物を破壊する選択出来るのは私のミスでした…。全身にやけどを負ってます。ですが、少し近づいただけ建物を壊すのは些か過剰すぎでは?」
煙が晴れ、押しつぶしていた物がわかってくる。
「言いましたよね?貴方に…死を届けに来た、と」
自分を潰していたのはエージェントの体重が乗ったハイヒールだった