たったひとつの願い   作:Jget

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意地と工夫

時間は朝の10時

 

軍の戦力とやりあうという無謀に近い提案に乗ってくれている人形達と、カリーナ、そして自分たちがアンジェリアの作戦を遂行する区域で十二分に戦うための準備がようやく終わりが見え始めていた。

グリフィンの残存部隊は、最前線になるであろう、周りの建物より頑丈そうな耐久力のある施設を待ち伏せするための砦代わりにしていた。

この一帯は、複雑な建物の配置になっており、若干迷路になるような土地でもある。

 

「なんで、引き受けてしまったんだ……」

 

内心、ユーリは後悔に近い感情を覚えていた。

軍が突然、グリフィンに攻撃してきたから。人形たちからしてみれば命が惜しくない限りは戦わなくてはならない相手だ。

でも、ユーリ自身は臨んだことではなかった。

作戦が始まるまでは、雑談だってしていた。

 

 

 

 

 

────そろそろ、かな?

 

────分からない、でも本当に軍と戦って…

 

 

 

 

 

 

 

自分とともに戦う…と言ってもこれまでの撤退戦の影響で皆一様にそれなりに疲弊し、傷ついている。

この混乱状況の中で、死力を尽くし、できうる手をなげうっても仲間たちが死んでいく…戦場では仲間を失うのは常、そういわれ続けいても、バックアップがあればまた生き返るという常識があったからこそ、その場での”死”は人形達に軽く受け止められていた。

だが、この騒動で作戦に参加した人形達のバックアップのデータは、軍…もしくはアンジェリアたちが敢行した大規模なハッキングでそのデータが失われてしまっている。

つまり、今まで楽観的に見ていた”死”の概念が崩れ去ってしまったのだ、この軍との戦いに参加しようと思わなかったグループの理由はそこにあるのかも知れない。

 

「カリーナ」

<はい、指揮官様>

 

カリーナも通信の設備を整える役割とまだ生き残っている人形がいたら、終結させるための役割を任せている。

 

「重ねて言うけど、もし私が危険な状況になっても…」

<今の自分の命と役割を優先しろ…承知していますわ>

 

あの時、アンジェリアに怒鳴り散らしていた時とは違い声には不思議なほど落ち着きがあった。

 

「こんな、厄介なこと手伝わせてごめん。帰ったら、好きなだけ愚痴を聞いていあげるよ」

<生き残れるも怪しいのに、終わった後の話ですか?余裕を出すのは早すぎますわ、それにAR小隊を助けると決めたのは最終的に私です、そのことで悔やむやりも…私はもっとM4さんのこと心配してあげたほうよろしいですわよ?>

 

────

 

 

 

「もし、軍と正面かやるとしても……のやり方がよい、というのは変わらない」

「どうしてわかるんですか?」

「私が教えたんだ、私は彼らを指導したことがある」

 

────

 

 

当然カリーナは唖然とした。

 

「それって…」

 

なぜ、キャスターがアンジェリアに怒鳴ったのか理解できた。

無論、先に被害を受けたのはこっちだ。

だが、自分が教えた相手にはある程度愛着をもつ。人間として、突然言われたら戸惑うのが当然だ。

 

所属が全く違うということは理解してもらったが、終わった後の追求も大変になるかもしれない

 

<いま、思えば、貴方がグリフィンに入ったりAN-94さんが一時的にAR小隊に入ったのもあなたというパイプを通していたんでしょう?>

「そういうことだ」

 

俺がかかわったのはAN-94の後継機であるAK-12だから、AN-94とは面識がなかった。でも、彼女とかかわることができたのは幸運だったかもしれない。

 

<キャスターさんから伺いましたけど、確かにあそこまでのことをされたら…AK-12やアンジェリアさんは失敗して報いを受けるべきではないかと思うのも無理ありません>

「その割には、この作戦を遂行するやる気は十分じゃないか?」

 

この話をするとこぞってアンジェリアとAK-12は最低だ、という話題になるらしい。

 

<当り前ですわ。私なら、生き残った暁にはAK-12をぶん殴ってやります、ここにいる人形たちもきっとそんな理由に代わっていますわ>

「本当かい?」

 

自分が憎み切れないのはやっぱり、義娘への情が邪魔をしているのか…

 

「よし、そろそろ始めるよ」

<ご武運を>

 

通信を切った、なんだろう思ったよりも空気が変わった気がしない…安心しているのだろうか?だとしたら楽観的過ぎるといわれるのかもしれないな。

 

────

 

 

自分がいるといった場所に志願部隊の人形たちが集まっていた、志願部隊といっても戦術人形と自分を合わせても十数人…戦術人形は空軍の編成を使っているとか使っていないのか…そこは部署ごとに違うのではっきりしないが、空軍の編成を使わせてもらうと中隊だろう。

 

しかし"作戦始める"とは言ったが、集まらなくてもよかったのでは…?などは野暮だろう。

 

「…」

 

もしかして、号令代わりの演説を期待しているのだろうか?確かにアンジェリアのスピーチに比べればうまいかもしれないが…まあいい、自分のやり方に理解を示してくれると、言ってくれたのだその期待に応えるのも指揮官の役目だろう。

 

人形達に理解を示したかのように、口を開く。その瞳は、この戦いを皆で生き残るという前提だけではなく、この作戦そのものがどのように動くのか見通しているようだった

 

「さて、ここに残っているみんなには感謝を、こんな馬鹿みたいなやり方に賛同してくれてありがとう。さっき言った通り私はこの国で軍人をしていた、そして君たちはその事情を知っても、その在りし日の武勲を必要としてくれたなら、私もそれにこたえる義務がある、今までの過去と向き合いそして、自分の積み上げてきた過去に恥じないために」

 

感謝の言葉から始まり、自らが今ここにいて、戦うための理由を語る、

 

「無論、この戦いには私も前線で戦うもうここまで来たら、あとは一蓮托生、君たちに私の命を預けたい、でも君たちは私の命を積極的に守るのではなく作戦を滞りなく動かしてほしいそれができたら、私の命は散らずに済むだが私のことを気にして、作戦の遂行を怠った場合、君たちも私も散ることになるだろう」

 

そう、ここで自分が前線に出ないという選択は、今の命に限りがあると状態になってしまった人形たちにとっては裏切りになり、この戦いを生き残れる可能性が低くなってしまうからだ。

 

「でも、もしこの戦いでみんなが自分たちの役割を十分に果たすというのなら…君たちを確実に生還させる、約束しよう!」

 

しばし、沈黙が流れる…やっぱり高圧的だったかもしれない、君たちも命を散らすことになるって正直脅迫だ、どうして自分はこういう改まったときになると相手を気遣うようなセリフが言えないのだろう。

 

誰かが拍手をした。

その拍子に連鎖的に拍手が重なりだす。

 

「そうだ!私たちには指揮官がついているんだ!!」

「裏でいい気になっている404の怠け者やくそったれの連中に文句の一つも言ってやる」

 

どうやらうまくいったのかもしれない、”裏でこそこそやっている”連中に不満があるということで意見が一致しているらしい…士気が上がるのはよいことだが、側面から支援するメンバーの中にM4がいなければいいんだが…

 

「そうだそうだ!!!」

「クソみたいな状況を押し付けてくる奴なんて、クソみたいなやつらに決まっているもの!!」

「そうだ、だからこそこんな状況さっさと終わらせてクソを見る状況からオサラバしてやろう!!」

 

グリフィンの志願部隊達は意気軒昂に戦いへの意欲を見せていた。

 

 

────

───

 

 

「戦場に出たら、私もコマの1つ…まあ、違うところは大将が死んでも戦いは続く…か」

 

ユーリは双眼鏡に映る、大規模な軍が占拠している広場をを見つめていた、

 

火炎が漂い戦場の空気は熱くなるが、それとは反対に自分が感じている空気は寒気を感じていた。

 

「さあ、始めよう」

 

 

決戦の火ぶたは切られた、後は己のできうることをやり遂げるだけだ。

 

 

────

───

 

 

軍はグリフィンの奇襲を受け、反撃していた。

 

「民間の人形達め…まだ生き残りがいたのか」

「この区域の部隊に伝えろ!!一体も逃がすな、将軍の作戦の邪魔をさせるなとな!!」

 

対するグリフィン側も戦場の号砲や圧倒的な戦力に臆することなく、まるで誘い込むように逃げていく。

 

「敵は逃げ回っている!!追撃しろ!!」

「全軍に通達!!!以降は手はず通りに指定さえれた地点にまで後退しろ!!」

 

 

軍による追撃の動向が確認されたタイミングで、グリフィン側はユーリの指示通り目的の地点に撤退した。

 

 

「────こちらノード1、目標をまた見失った、そっちはどうだ?」

<────ノード1、こっちもだ…くそ、アイツらやたらすばっしこい…>

「────後続の状態はどうなっている?」

<────ブラー隊が前回通信した位置に到達したので、もう少しで追いつくだろう>

 

ノード隊の軍兵士が通信を切り、前衛の人形にルートスキャンを指示した。

 

「急いでくれよ、追撃してからもう20分以上たっているルートスキャンは3分以内に済ませるんだ、その間に他のメンバーは全周警戒」

 

 

「了解!」

 

人形たちのルートスキャンにより地形データが端末にデータリンクで共有されていく。

 

「しかし、隊長。ここまで動きがないと、逆に不安ですね」

「最初の奇襲で10分以上攻撃しておいて、やっとこさ見つけても散発的な戦闘すらしないで逃げ切られるのも調子狂うよな、全く」

「最初の奇襲が失敗したから全力で逃げている…そう思いたいところだが、そう甘くはないだろ」

 

 

────次の瞬間、一斉に軍の部隊を取り囲むようにスモークが焚かれ、あたり一面が煙に包まれた。

 

 

「なんだ…さっきまで軍用人形が攻撃していたのに…攻撃をやめた…?」

「サーマルが反応しない…いや、センサーもだ!!この煙は一体…!!!」

 

沈黙を切り裂くかのように銃弾がかすめる音がし、徐々にそれは追撃した部隊を取り囲み始めた。

 

「敵だ!」

「出やがったな!この野郎っ!!」

 

攻撃した兵士に合わせて、サイクロップスやイージスも攻撃を加える。

サーマルが効かない中、神経を研ぎ澄ます兵たちにちらりと現れる、影を見逃すはずもなかった。

 

「馬鹿野郎!!あれは味方のブラー隊だ!!撃つな!やめろ!!」

 

部隊長の発言に慌てて兵士は攻撃をやめたが…

 

「ダメです!!人形が攻撃をやめません!!!」

「────なにぃ!?」

「この中にグリフィンの人形がいる可能性が────」

 

だが、状況を理解したかもしれない兵士を銃弾が襲った。

 

「やっぱり、敵だ!反撃しろ!」

「敵じゃない!やめろ!同士討ちだ!!同士討ち────」

「後退しろ!!後退し────」

 

 

スモークによって視界を奪われた追撃部隊は視界を遮られた挙句、なぜかちゃんと反応しないセンサーのせいでセンサーを頼りにしていた軍用人形たちの誤射と戦術人形の機械の能力を過信していた事による同士討ちが相次ぐ戦場になっていた。

 

結果、周りに誰もいなくなるまで電子機器が満足に動かないスモークの中で同士討ちが起き続ける戦場になっていた。

 

 

────

 

「指揮官の言う通り、煙が出ている間は軍の連中の周りを適当に走り回っていたけど…あれでよかったんですか?」

「ああ、作戦通りにいけば今頃軍の兵士たちも、再編や集結、状況確認でこの辺りは時間を割かれるだろう…なんせ、今まで好調だったのに大きな混乱に襲われたからね。終息には時間がかかるはずだ」

 

 

最初の15分にわたる奇襲は軍をおびき寄せるための餌だった、斥候部隊をおびき寄せた後は後続部隊ごと、レーダーやサーマル機能そのものに負荷をかけるジャミング機能を備えた、スモークで覆って極限の状態を作り上げハニーバジャーのような素早い人形で近距離でならかろうじて稼働するレーダーに引っかからせて、合流しようとした部隊に向けて、攻撃を誘発させる。

 

自慢ではないが一度同じような目にあっているので彼らにも通用すると思ったのだ。

…ここまではうまくいったが次はもう小手先の手をつかってしまったら、アンジェリアの部隊が危険にさらされてしまう、次は斥候どころではなく本隊だ、

 

その斥候すらも同士討ちで数を減らせたとは思えない、せいぜい迷わせるが精一杯のはず。勝つのではなく、生き残るためには相手よりもどれだけ素早い指示を出せるかが肝要になるだろうな…

 

────

───

 

「グリフィンの攻撃が続いているわね」

「手早く済ませれば。グリフィンへの救援もできるかもしれない」

「そんな余力があれば、ねぇ」

 

グリフィン側が軍を引き付けている間、反逆小隊は迎撃の準備を、404小隊は空中投下された補給物資を分かれて設置している。

 

「厳しいのはわかってる」

 

爆弾設置するにしても最適な位置がある、その他に必要な位置はそうそう近いものではない。

 

<M4、聞こえてる?>

 

投下物資をもって今は静かな幾田もの硝煙の後がただよう戦場を走り続けている、M4のもとにアンジェリアからの通信が入る。

 

「聞こえています」

 

スイッチを入れて、自分の声をアンジェリアの無線につなげた。

 

<わかっていると思うけど、私たちはグリフィンに手伝ってもらわなきゃいけないほど危機的な状況なの、軍を止めるには全滅させればいいってわけでもない…情報が足りないの、もっといろいろなことを知る必要がある>

「はい」

 

鉄血を倒したところで相手の目的を知らなければ、軍に何かしらの損害を与えたわけでもない…という労力に見合わない結果で終わりだ。

そう言いたいのだろう。

 

<だから、はっきりさせましょう。貴女がエルダーブレインと接触してM4SOPMODⅡやM16の情報を得ようとしていることはこっちも知ってる、交渉の席は私が用意したようなものだし…>

 

アンジェリアがエルダーブレインとの交渉の席を用意した?では、アンジェリアは見返りに何を望んだ?

 

<でも、実際の所、貴女はそんなこと全く期待していない。最終的にエルダーブレインを道連れにするつもりなんでしょ?>

 

…あの頭の中に響いてくる声は確実にエルダーブレインとの接触を望んでいる。

その時に”あの声”が本当に望んでいたことが始まる…だがエルダーブレインを道連れにできれば…と思っていたが、なるほど、ここまで当ててくるなんて

 

「私を止めたかったのなら、隊を分けたのは失敗でしたね。もう遅いかと」

<こんな言葉を知ってる?”私たちの目が監獄であり、目が届く場所が監獄の壁である”まあ、何が言いたいのかというと”自分の認識にとらわれるな、盲目の憎しみで過ちを犯すな”ってこと>

 

だから何だ?何もするなと?

 

「私が生き残りたいからそちらの誘いに乗ったとでも?だとしたら、それは思い違いですね。私が保安局や手先のAK-12と手を組んでいるのはあなたの命令だけ聞いてろってことに誰が納得すると?ふざけるな、こちらの目的を果たす前に私を使い捨てにしたいのなら、こっちで好きにさせてもらうまでよ────」

<M16とSOPⅡがいないことなんて分かり切っているのでしょう?それに、ユーリは生きている。無駄に命を捨て理由ってどこにあるのかしら>

「ここには、私が憎んているすべてがいる。そいつら全員に贖いをしてもらうわ」

 

このふざけた約束と一緒にね。

 

<で、そんなに憎々しく話すけど…誰に復讐したいの?ここにいる鉄血全員?貴女をハメたエゴール大尉も殺す?>

「全員よ。殺せばそれで終わり。昔の自分に戻りたくなんてない…」

 

あんなに弱くて、臆病な自分に…そう思ったとき、一気に感情が爆発した。

 

<戦場を知らない存在や、重要な局面で臆病な行動は褒められた行為じゃないけど、それは命取りに至らないわ。だってそれはよく言えば慎重ともとれる、逆に勇敢な行動は周りから見たら称賛に値するけど、それは下手をしたら逆に深淵に引きずり込まれる>

「腹が立つわ。誰かに、守られる人生なんてたくさん!!私のために誰かがこれ以上犠牲になって欲しくもないの!!そもそも私さえ…私さえ先にいなくなれば…こんな価値も分からない私なんかが…!」

<ペルシカは大切なところは隠す悪癖があるからね、それに関してはあなたが殴り飛ばして、問いただすなりしなさい。私の元カレの受け売りだけど、”どんな存在にも意味がないものは存在しない、今ここにあるものすべて今ここにあるだけの理由がある、意味がないと思ったり無駄と思えるものでも存在理由がある”ってね>

 

────無駄な奴なんていない、生まれてきた以上その理由…価値が存在する、そしてその価値はいつか、予想もつかないタイミングで跳ね上がる。M4、どんな時でも自分の可能性を軽く見ない。チャンスを探し続けるんだ。

 

昔、訓練で失敗を繰り返し自分に存在価値がないんじゃないか…?悩んでいた時にユーリから言われた言葉に似ている

 

<今なら、まだ選べる。例え、自分の仲間が死ぬかもしれない状況になっても切り抜けられるかもしれない、それこそエルダーブレインを道連れにしないで済む方法が>

「…エルダーブレインの道ずれなんて、あなたは望まない。アイツを捕まえてほしいんですね?」

<そういこと。あなたが復讐したいように、私がここに足を運んだ目的をかなえチャンスが目の前にあるの。あなただって望みを叶えた暁の代償は少ない方がいいでしょう?もし、この復讐をやり遂げたら…彼のところに戻ってヨリを戻したいんじゃないの?>

 

指揮官…会うことできるわけでもないし…

保安局の人間と手を組んだ時点で、彼のもとに戻る資格もないことはわかっている…

だが、もしアンジェリアが言ったようにチャンスを手に入れられる可能性があるなら…

 

「もし失敗したら?」

<だったら、最終手段として”アレ”を使う、みんな吹っ飛ばして何も残らない。どう?どちらもあなたにとって、お望みの展開よ?>

 

少しだけ、落ち着いた気がする。

そうね。私には何も変わらない。

 

 

「M4、爆弾と404の状況は?」

「…」

 

まだグリフィンの銃声の勢いが減らない…つまり誰もやられていない…。

そして私たちにも攻撃も来ない、さすが指揮官、アンジェリアとは違って、うまく戦場をコントロールしてる…

 

「M4?聞いてる?」

「…ごめんなさい、404はまだのようね。情報が同期できないの、データリンクが作用しない」

「…いったいどうしたの」

「…さあ?404に聞いたら?」

 

STAR-15がため息をついて「あんたのことよ」と付け加えた。ここまで来て緊張したと言ってきそうだ。

 

「少し待ってて。今、404の情報が来た…爆弾の準備ができたようね」

 

────

───

 

「はああ…ずっとこの調子が続いたら手足がもげちゃうよ…フリじゃないよ」

「G11もたまには鍛えないと」

「人形が鍛えても筋力は変わらないでしょ…」

 

その頃、404小隊は爆弾の設置を完了させていた。

 

「もう少し我慢したら今後任務を二度としなくてもよくなるかもだよ♪」

「あなたが言うと鳥肌が立つわね…」

 

UMP45が言ったのはこの爆弾を使うかもしれないと、意味だ。

 

「周囲の状況は?」

 

確認のためにM4A1がやってきたらしい。

報告はHK416がすることにした、端末で簡易タイプのレーダーを起動する。

 

「今のところは、異常なし。グリフィン側が軍を押さえつけている…というのは本当のようね、ユーリ指揮官にはどれだけの規模と資源が残るか心配ね」

「あの爆弾は?」

「それは今、設置が終わったわ。爆弾がキチンと爆発した時の範囲は計算中よ…それと、これは正確なモノじゃないんだけど」

 

HK416は少しため息をついて、メンバーと距離を取るため歩き出す。

自信が無いことなのだろうか?

 

「……一瞬のことだったから、確認できなかったんだけど鉄血の控えに見覚え有る銃火器を持ったヤツを見たわ」

「見覚えのあるやつ?」

「M16よ。その鉄血はレーザー兵器を一切持たないで、そのライフルっぽいのを持っていた。…何度も言うけど、私がそれを見たのは一瞬だったから、確信はない。でも、もし本当だとしたら?」

 

M4A1は無言で続きを促す。

 

「あいつはそう簡単に失踪するとは考えづらいわ」

「もし、あれが私の見間違いではないとして、考えられる選択肢は2つ。M16A1がそいつにやられて、武器を奪われあ可能性、もう一つは……」

 

「内緒話?私も入れてよ」

 

HK416が自分の推論を述べていると、UMP45が様子を見に来た。

 

「……ただの妄想よ」

「あなたがそんなごまかしをするなんて珍しいじゃない。その妄想が気になるなら、一緒に調べてみれば?あなたたちって割と仲がいいし。……お姉さんも見習って欲しいくらいにはね」

 

故人を煽るという、あからさまな失言でM4A1を怒らせるUMP45を見て、HK416はマズいと思った。

UMP45はM4A1を気に入っていないのは知っていたが、今はタイミングはダメだろう。

今のM4A1はスイッチが押される寸前のC4爆弾と変わらないというのに。

だが、M4A1の怒りは爆発しないで、代わりにあることを聴いてきた。

 

「姉さんはHK416に何をしたの?」

 

代わりの質問は……なんというか、気が抜けた。

 

「かいつまんで話すと、アイツとは、M16とはチームだった。でも、アイツはある作戦中に私を外した。で、その作戦は大失敗。そして、私はなぜかその作戦の失敗の責任を取る羽目になった」

 

おかげで今に至るまで人生は散々だ。

アイツにそんなことをさせる理由が、私をこんな目に合わせることが許容範囲になる理由が許せなかった。

 

「姉さんは私たちの面倒を見るためにそこまで?」

「信じられない?そうでしょうよ……私だって、信じられなかった。それに察しがついたのはあなた達の惨状を知ったときね」

 

グリフィンでも指折りのクズの指揮官、クメレンタのもとにAR小隊が行く羽目になったのだから、帳尻合わせはできてる気もしなくない。

私はあんな女の元に1秒もいたくない。

 

「なら、私たちのことも恨んでる?」

「あなたと会わなかったらね。アナタを直接見て、話して、一緒に戦う羽目になって……まあ、こんな女ならM16も生かそうとするだろうなとね」

 

彼女の窮状は言葉にする以上に哀れなものであり、そんな相手に憎しみをぶつけようとしていた自分がとにかく惨めに見えた。

そして、その窮状を必死に変えようとしているM4A1を少し手伝ってやろうとすら思えたのだ。

 

「あなたから見て、私はどう思う?」

「他人の意見を気にするの?正直に話せば、そうね……確かにあなたは守られるより、守っている姿の方がやたら強いのは確か。AR小隊はまだ守られてないといけないヤツと思ってるんでしょうけど」

「もし、M16をこっち側に引きずり戻せたら…あんたはまた、チームを組む?」

「あんなのと?そんなの二度とごめんよ…G11、ついてきなさい」

 

M4A1はHK416の反応を「だろうね」と頷く、どうやら冗談だったらしい。

HK416はしかめっ面になりG11を巡回に連れていく、G11は「なんであたしまで…」とボヤいていた

 

「主役はそろったわね、じゃあ爆弾と一緒に使うのを覗いてみましょ?」

 

爆弾に取り付けていたのは緑色に光る容器だった。

 

「見るからに保存容器に見えるけど…多分これ一つでもの鉄血や軍がビビる程のものなのね?」

 

UMP9にはそんなに危険なものには見えないようだ、まあ自分も言われるまではきれいな光としか思わないだろうが…

これが軍できる最大限抵抗と死なばもろとも…の兵器か。

 

「アンジェ聞こえる?空中投下されたものを設置したわ」

<…そう、予想よりも早いわね、全員いる?>

 

相変わらず単調な返事だが…どこか声にあきらめの感じがする

 

「とりあえず、この容器の中身に対してご教授してくれないかしら?」

<…断言はできないけど、密閉された環状偏光カプセルね。中身は識別可能なコーラップス液でしょうね。あのクソジジイよくもこんなものを…核弾頭の方がよっぽどましよ。容量から見て、汚染区域はあまり広がらないでしょうけど…>

「コーラップス液?以前の世界大戦の引き金になったあの?」

 

アンジェリアはUMP9に関心を寄せた反応をした。

M4A1は苛立つ表情に変わる、送られたもので何をするかの察しがついたらしい。

 

「これでダーティボムでもする気?こんなものが爆発したら、人形よりも人間に与えるダメージが大きいでしょうに」

<コーラップス液のせいで人間が立ち入れなくなった場所に入るために人形が開発された。よく考えればあなたたちの生まれた理由になるから親って言えるかもしれないわね>

 

そんな親は勘弁願いたい。

 

<私が言うのも変だけどこれをすれば一番死ぬのは私とグリフィンの指揮官かもしれない。…彼にはきっと最悪の事態ね、でも人形には死の概念が遠いものだった。ま、貴女達の人生経験が違うからそうでもないかもしれないけど>

「爆発範囲内に誘い込みやすい鉄血と司令塔が人間相手には最適な武器ね」

 

STAR-15もやってきたらしい。

いま、指揮官が死ぬかもしれない状況を話しているのに皮肉を並べる余裕があるのか?…いや、STAR-15にとって”昔の”指揮官なんてどうでもいいのだろうか。

M4A1は何も言わない。いや、言えなかった。

 

<人形はコーラップス液の放射は受けにくいけど爆発の熱戦で軍用の装甲でも軽く溶けてしまうから、できるだけ爆心地から離れること>

「撤退の条件はエルダーブレインの確保よね?」

<確保、あるいは敵をすべて排除すること、でなければこの爆弾を使ってしまう意味がないわ>

 

敵をすべて倒すなんて不可能だ、だからエルダーブレインの確保の事実上の一択だ。

 

「…というわけで、みんな、もうどうすればいいか分かったよね?」

「これからは二人一組で動いた方がよさそうね。グリフィンが軍を抑え込んでいるとはいっても無限に時間稼ぎできるわけじゃない、あらゆる手段が取れようにしておいた方がいいわ」

「賛成。さあ、お仕事の時間よ」

 

 

 

────時間は午前11時

 

アンジェリアたちがダーティボムなんてものを使おうとしていることなど、まったく知らないグリフィンの部隊はどうにか軍の人形達進行方向からずらしつつ、おびき寄せ狭い通路を利用した、戦闘を展開したが…

 

「────!!」

「アイツら、どんだけあきらめが、悪いんだ!!」

 

一般的にも殺戮マシーンと有名な軍用人形はいくら仲間や自分が犠牲になろうとも構わず、死骸を乗り越え強引に突破しようとしてきており、今はバリケードや再度戦争が起きた時に備えて設計されたシェルター用の隔壁で進路ふさぎつつ抵抗している。

 

「数が多すぎる!!────いくら戦略的優位を維持できても…A-91!!そっちの撃ち漏らしが多いどうにかして!!!」

「無理よ!!────クッソ!!軍の人形達が倒された味方を盾に迫ってる!!しかも、ロケットであちこちぶっ壊して障害物を広げているんだ!!射線が通らない!!」

 

破壊された、人形にも装甲はある。

それを盾にされて軍にじりじりとグリフィンは距離を縮められていた。

 

「デカいのはともかく地雷を撒く小さいのは、ほとんど素通しになってるな…」

「しまった!!熱線で開けられた隔壁が広げられている!!」

 

障壁が広がるということは、さらに進入路が増えるということだ。それは戦況がより不利になることを意味していた。

 

「側面からカバーしてくれる約束はどーなってるの!?全然来ないじゃない!!指揮官もあの大嘘つきに騙されて!!」

「来ないなんて初めからわかってたでしょ?こうなった約束は反故しましょう、指揮官、防衛線を再度下げます」

<許可する!!全部隊!!敵との距離は70メートルを維持しつつ、微速後退!!だが、周りとの足並みをそろえて防衛線を下げるんだ、スキを作ると付け込まれるぞ!!>

 

ここで踏みとどまっては確実に全滅する。

それはいけない、それにAUGの言う通り、約束を先に反故にされてしまった以上、こちらも提案を守る必要はないのだが…

 

 

「了解!!────っ!!前方にヒドラ!!!距離180!!」

<さらに30メートル後退!!あの砲台の射程に入るな!!敵が作った遮蔽物を利用しろ!!>

「隔壁が完全に崩壊しました!!!────来ますっ!」

 

 

グリフィンがじわじわと追い詰められている状況で、援護を行うと約束したアンジェリアの人形たちはいまだに引き金を引く動作以前に、敵を狙おうともしていない。

「まだ動くな」とアンジェリアに命令されているからだ。

M4A1とSTAR-15も歯噛み何かを待っているようにじっとしていた。

 

「STAR-15…」

「何?」

「あの時…エルダーブレインと道ずれを覚悟して、爆弾を使ったビルで…あなたは何を考えていたの?」

 

エルダーブレインの護衛部隊の隙を伺っていた私は一緒のチームである、STAR-15に前から思っていた素朴な疑問を問う。

 

「もしも、自分がやってきた事が無意味になってしまったらどうしようとか考えなかったの?」

 

自分を確かに遠ざけることには成功したが結局はエルダーブレインとの接続のきっかけを作った。

それは失敗だ。

 

「いくら私たちのことを考えていなくても、もし────」

「そうしなければ、誰もあそこから出られなかった。あんたも含めてね…そしてあの中枢命令のせいで、私はその結果を確実に回避しなければならなかった、それは、己の意思にかかわらずに……結果は失敗だった。手段を選ぶべきだったことは認める」

 

己の意思にかかわらずに────

 

「ペルシカにとって、私たちに”死ね”と命令するほどアンタがお気に入りだったのね…AR小隊、ね。元々は”あんたを守る”そのためだけに造られた。それは私たちの行動すべての前提になっている」

 

そして、幾度のバージョンアップを経て私を守るためだけの能力を身に着けるために────ROも自分が作られた目的は、私を助けるためだと、

 

「でも、私にはそれが気に食わなかった。それはあなたも気が付いていたでしょう?」

「あなたは縛られるのが嫌いだからね。だから、スナイパーを選んだ。1人でいやすくて、自由だと思えたから」

「そこまで分かっているとは光栄ね。生まれてきてから生き方が多い普通の人形と違って、私にはあなたを守るという事だけにしか存在理由はなかった」

 

そこまで分かっているのなら、そんな理由事態をM4A1が嫌いになる一面と考えているのは彼女もわかっているだろう。

 

「誰かに認めてもらいたかったと思った瞬間から、それはアンタに奪われた…そしてあんたという存在に”友情”を感じて、そんな命令に従うのも良いかもしれない、っていう自分にも嫌気がさしてきた」

 

STAR-15は言わずと決めていた本音を語りだしていく。

 

「昔、クメレンタの所で馬鹿正直に雑用でもなんでもやっていた時期があったでしょ?それは、その指揮官に認められたかったからなの」

 

クビにされる前の昔のSTAR-15を思い出す。

あの頃のSTAR-15は誰かに褒めてほしい一心でダーティジョブやデモの強制中止に参加していて、周りからは危険視されていた

 

「でも結果は、あの指揮官に嫌われて、ペルシカの任務を受けるだけのはぐれ部隊…自分が惨めだったわ。だからエージェントの際にばらばらになった時はどこかせいせいした」

 

STAR-15が私のことを嫌いだと言っていたが、あれはそういう意味も含まれていた。

それは、M4A1も知っていた。

 

「ユーリ指揮官は…初めてだった。"私が本当に褒めて欲しい所を褒めてくれた事が"、私を本当に理解してくれているようで…とてもとても、嬉しかった。不満や悩みを嗤いもせずに真剣に聞いてくれて、その解決方法も親身になって接してくれた。アンタやM16そうだとは言わないけ命令で繋がっているアンタ達には、言いたくなかった」

 

はあ、とSTAR-15がついたため息が白い煙になった。

 

「言いたくても、言えなかったのは今度は自分だけ仲間外れになりたくなかったからでしょ?」

「腹が立つくらいよくわかってるわね。なら、この後何を言いたいかわかるでしょ?私は指揮官のために戦いたかって死にたかった、本当はあんな…ろくでもないところで死にたくなかった…あなたを助けるために死ぬのはごめんだったのよ…!!」

「AR-15…」

 

STAR-15の声に段々語気が強くなってくる。

彼女はM4A1の喉をつかみ、こちらをにらみかかる。

 

「憎かった…!!ずっと指揮官に信頼されて目にかけられたあんたが…!!終いには誓約まで交わして、恋人同士になっていたアンタが…!!」

 

STAR-15の声が金切り声になっていく。

 

「いつもいつも!!私が欲しかったものを全部あんたが無自覚にかすめ取っていった…!!どうして、あんたは私が欲しいもの奪っていくの!?なんであなた、あたしが血反吐を吐いて手に入れたものを…アンタは簡単手に入れられるの!?…どうして、貴女にだけチャンスが巡ってくるの?頼りにされるの!?私はあなたの盾で終われってこと!?私はね、本当は他人に与えられるだけの人生なんてたくさんだったのよ!!」

 

言葉が出なかった。

喉をつかみつかまれているからじゃない、「きっとそうじゃないはず」「思い込みだ」と思っていたSTAR-15への懸念は本当だった。

私と指揮官の関係を祝福している裏側でこんなにもSTAR-15は強い恨みを抱えていた。

 

「なんで、表情を変えないのよ。首をつかんでるのよ!?」

 

別にどんな反応があればSTAR-15が満足するとか、そんなものはない。

それは、M4A1もよくわかっている。

 

「ペルシカさんが私を作った理由はきっと何かしらの目的があったからだと思う…でも、何度も何度もその為に…私のために今でも誰かの命を犠牲にしたくなかった、私は”利益を生む”んじゃなくて”損失を減らせる”存在になりたかった、だから消えるのは自分であってほしい、そうすれば」

「そうすれば、指揮官は私を選んでくれる、かしら?」

 

さらに、STAR-15が首を絞める力を強くする。

だが、M4A1の表情は変わらない。静かに彼女を見つめるだけだ。

 

「いい加減にして、指揮官は隣に誰かがいなくなったからと言って簡単に誰かに逃げるような存在じゃない。貴女もよく分かっているでしょ?それにあんたからおこぼれみたいに指揮官を渡されても、なんにもうれしくない、確かに人形が誰かに従っている限り選択権はないのかもしれない、それでも私は自分の意志でここに来た、どんなにみじめになってもまた這い上がるために」

 

アンジェリアはこの任務にはより多くの戦力を必要としていた、それでもを分かっていたとしても利用されることを望んでいたのだろうか?命令に忠実に見えて、上司を選ぶタイプの矛盾を抱えたSTAR-15が。

 

「あなたはそれがよい判断だと思って、アンジェに下ったのね」

 

M4A1はようやく、首を絞めているSTAR-15の手首をつかんだ。

 

「AN-94以外はね、ときどき思うもし私が歩んだ道を、アンタも進むと決めたなら────私から言うことは一つだけアンタが無事で居て欲しいと願う存在は、アンタが思っている以上に多い、アンタ自身の価値なんて関係なく…ただ、M4A1個人として生きて欲しい人がいるのよ、その最たる人がアナタは誰だかわかってんでしょ?」

「指揮官…」

 

STAR-15は頷いた。

私がいまでも一番大切だと思った人、そして…自分のせいで、何の気もなしで私が地獄に堕としてしまった、最愛の人…

 

「もし、力づくで私を止めるなら、そうする?」

 

M4A1がSTAR-15の手に向けて、力を少し入れて握る。

STAR-15は腕がへし折れてしまうのではないかと思えるほど、強い力に思わず怯んだ。

 

「そんなに、力があるならあの時のように一晩中おんぶして逃げ回る必要はなさそうね。それなら丁重にお断りするわ。確かにアンタが憎いし復讐だってしたいけど、あんたの意志は尊重する」

 

M4A1はいつも以上に口数が少ないが、彼女なりに守ってもらうほど弱くないとその実をもって理解してもらおうとした行動をしたのは分かった。

掴まれた手が離される。

 

「アンタは任務よりもSOPⅡやM16の方が気になっている、そして私は任務よりも指揮官のことを気にしていると、AK-12が言っていた」

 

────せっかく指揮官が貴女を助けたのに、アンタなぁんにもしないなんてねぇ?

 

 

あの時のセリフはでそこまで見越していたということなのだろう。

 

「私はそれでも…AR小隊の隊長よ。隊長は責任があって、その責任はチームの全員を連れ戻すこと。本当のことを言えばね、STAR-15、私にとっては復讐なんかより、ユーリやあなたたちの方がずっと大事よ」

 

それはまぎれもない決意だ。

だから私は…彼女たちを奪ったアイツらに報復したかった…

 

「エゴール達のやったことは許せない。あの時、公聴会の時もお友達のフリをして本当はいつ、私たちがくたばるんじゃないかってほくそ笑んでいるのかもしれないと思うと、腹が立つ」

「この国が裏切者だらけなんて、今に始まったことじゃ、ないでしょう」

「あいつ等の気に食わないは”自分が一番ユーリことを理解してる”っていう態度で裏切ってきたことよ!私もそれを信じてしまってた!」

「それはその時私も騙されてたわよ…はあ、一人で行動したいなら、私は止めない。あんたを探し回ったりしない。私はとやかく隊長がどうだどか話したけど、アンタはもうAR小隊の隊長なんかじゃない」

 

でも、この隊の隊長であることは変わらない…

 

「積もる話は後でゆっく話し合いましょう。そして死にたくなったSOPⅡの笑顔を思い出して、アンタを助けようとした思いきっと…彼女は命令以外な純粋なものでしょう?」

 

M4A1は少し笑った

 

「ありがとう、STAR-15」

「貸しにしとくわ、早く返してね」

 

STAR-15は背を向けて、手を振って去っていった。

 

────生きてる?生きてるわね?定時連絡の時間よ、まだ生きてる?

 

「いちいち生きてる生きてるうるさいわね、AK-12」

 

鬱陶しそうにAK-12の無線をSTAR-15が取る。

 

<ていうことは生きてるってことね?了解了解…早速悪い知らせなんだけど、軍はグリフィンを強引に振り切って、エルダーブレインを追いかけている>

「グリフィン側の状況は?」

<防衛ラインを結構下げてる。2時間たっても、私たちの支援が来なかったから生存に集中したのね>

「2時間!?」

 

STAR-15が時計を見ると、本当に2時間たっている。

よくグリフィンの指揮官や人形らはひき潰されなかったものだ。

 

<いい知らせを話すわ。ようやく、こっちの準備が整った、これでようやく側面支援に行けるわ>

「大遅刻ね。着くまでどれくらい?」

<全力疾走であなたが10分、私とAN-94が5分。404はアンジェが出さないと判断した>

 

全力支援が聞いてあきれる。

結局、我々は戦力を温存していた。

 

<M4が欠けている分、多めに弾丸を持っていきなさい>

「なんで、M4が出て行ったことを…いえ、これもアンタらの作戦?M4を囮にしたってことでいいの?」

 

<グリフィン部隊に十分な支援は 彼らの再集結し、再編成すること。それが確認出来たら支援終了、その後M4A1に向かう。30分で終わらせないと厳しくなる…なんとしても、それまでに十分な支援をやりきるわよ>

「付き合い切れないと言っても一応グリフィンも追撃をしてくれているから、多くて…30分くらいね、早くしないと囮が本当に犠牲者になるわ」

 

少ないな、と自分との距離を測りながらSTAR-15は思った

 

「…でも、ありがとう、それとアンジェの計画についてなんだけど…」

 

 

その頃のグリフィンは……

 

「ダメだ!!バリケードが壊される!!下がって!!」

 

時刻は午前12時

援護無しでグリフィンは必死に防衛を続てけてた。

集積したバリケードで時間を稼ぎつつ退路を作っている。

 

<DP-12はFNバリスタのカバーに入れって指揮官が!!>

「こちら、DP-12!!敵機が多すぎます!!」

<こらえろ!!私がカバーに入る!!>

「助かります!!」

 

スナイパーは敵の進行食い止める為の要だ撤退が遅れがちになるが、その為のフォローも欠かしてはならない。

 

「11時方向の敵は引き受けます!!その後に下がらせていただきます!!」

「…!!抜けた!バリスタ!行った!ヒドラがそっちに行った!!」

「よし、いただきよ」

 

M870の散弾では対処できないほどの防御力を誇るヒドラの装甲を.300ウィンチェスター弾が貫き、ヒドラを動力源事、破壊した。

 

「よし!!DP-12とMP7は下がりながら、後衛の部隊との合流を目指しながら追撃しろ!!」

「了解!!」

 

再前衛で抑えていたMP7は一目散に予定されていた目標位置に後退した。

ただ、後衛も安全という状況ではなかった。

 

「え!?鉄血まで!?」

 

「やるしかないでしょ!!」

 

なんと軍だけではなく退路の方向に向かって、鉄血の部隊も現れたのだ。

どうやらとても先を急いでいるらしく、後ろから同族事喰らわんとするイナゴのように自殺に近い突撃だった。

 

「とっとと失せろ!!こっちにはもう切り札のスモークもないんだ!!とっと堕ちろ!!この鉄くず!!!」

「こんな時にまで現れないでください!!!」

 

迎撃しようとしたCX4とAKS-74uに鉄血を率いているジャッジが現れた。

ジャッジが攻撃をかわして二人に急降下して飛び蹴りを入れようとした、次の瞬間。

 

鉄血にも後ろを見るほどの余裕がなかったのか、突然後ろから現れた、ユーリが2人係がかり苦戦していたジャッジを後ろから素早く、装甲のない部分をDD MK18で破壊した。

 

「二人とも大丈夫か!?」

「────指揮官!?」

「よくやったな。上手くつり出してくれたおかげだ」

「────凄い!!でも、DP-12さんのカバーに入ったんじゃ?」

 

「DP-12はもうバリスタのカバーを終えて下がっている!!お前たちは迎えをしてやれ!邪魔になるイージスを中心に排除するんだいいな?」

 

声色や発言に荒っぽさが混じっているが、

良いとこどりされてしまったが命を助けられた2人にはもう、指揮官が戦場で邪魔になる存在ではなく、頼りになる仲間だと思わせるには十分だった。

 

「まだ次が来る!!気は抜くな!!」

「は、はい…!!!」

 

どんどん混乱が大きくなる、銃撃戦。

そこに新しい、勢力が現れた。

 

<指揮官様!南西から、新しいアンノウンの人形が2体接近!>

<撃たないで!味方です!>

 

カリーナのいう通り、レーダーに人形が2体映っていた。

AKS-74uが接近する方向に銃口を向けるが、アンノウンと思われる人形から「撃つな」と連絡が来る。

 

<南西から、接近中。側面支援に入る!>

<アンジェの命令で来たわ!!待たせて悪かったわね!!>

 

連絡を入れてきたのはAN-94とAK-12だった。彼女らが止まり、銃撃を開始する。

正確に弱点のみ命中させて、グリフィンの後退に不利になる敵を矢継ぎ早に蹴散らしていく。

 

「今更来やがって……見捨てられたと思ったよ」

<言い返す言葉もないわね。だから、お詫びにもう1人、呼んでるわ!>

<……援護します。グリフィン指揮官>

 

AK-12の言ったもう一体から、無線が来る。

電子処理をされていて、誰かは分からない。

だが、ユーリたちにとって一番いやな敵を瞬時に把握、そして非常な正確な射撃で寄せくる敵を確実に仕留めて見せた。

 

<そいつはアンタ専属よ!ターゲットを指示して!>

 

STAR-15は無線を聞きながら、スコープを覗く。

視界を暗視のグリーンの視界に帰る。

ユーリが赤外線レーザーを起動し、ターゲットをマークする。

 

<あのエリート達を頼む!食い止めるだけでもいい!>

「了解」

 

電子処理した声がユーリに伝わる。

改造前では、捉え切るのが難しいであろう鉄血の動きは今では余裕をもって予測できる。

 

「今更邪魔するなんて、いい度胸するじゃない。でも……指揮官の邪魔、しないでね」

 

STAR-15がレーザーを当てられたターゲットに向けて引き金を引き絞る。

 

────

───

 

コツコツと、ブーツの足音が小さく響く。

これがエルダーブレインの居城とは何とも寂しいとM4A1は思う。

 

「────やっと来た。」

 

皮膚をまとわないマネキン人形が様々な格好やポーズのまま動かない、まるで時が止まったような奇妙な空間の真ん中に鉄血の主、エルダーブレインが…そこにいた。

 

 

「────ええ、来たわ。エルダーブレイン」

 

 

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