「────やっと来た」
皮膚を纏わないマネキン人形が様々な格好やポーズのまま動かない、まるで時が止まったかの様な奇妙な空間の真ん中に鉄血の主、エルダーブレインが…そこにいた
「────えぇ、来たわ、エルダーブレイン」
エルダーブレインとM4A1、2人が相対した。
M4A1は冷たく、静かに伏兵がいないか警戒した。
一方、エルダーブレインは冷たくこちらを見つめているM4A1がなぜそんなことをしているのか理解できていなかった。
「武器は持たない、これで安心でしょ?」
マガジンを引き抜き、チャージングハンドルを引いて初弾を取り除くとライフルを床に置いた。
「あたしのことは…エリザって呼んで欲しい。あたしもキミのことは"ルニシア"と呼ぶ」
「誰よそいつ、勝手な名前をつけないで」
こんな時に自己紹介?
しかも、知らない名前で呼ばれるなんて気味が悪い。
「鉄血もボケるわけ?私はルニシアじゃなくて、M4A1よ」
「違う。ルニシア、それがキミの本来の名前。あたし達本来の名前、正しい名前」
淡々と自分の知識を押し付ける様に話す……
もしかして、ボケているんじゃなくて妄想の世界で生きる幼稚園児レベルの知能なのかしら、どちらにせよ本当にムカつく人形ね。
「名前なんてどうでもいいわ」
「…自分を受け入れたんじゃなかったの?…私はてっきり」
エリザは受け入れたという。
あぁ…確かに受け入れた。
だが、それはエルダーブレインが言う様な"妄想"じゃなくて…自分が憎しみの赴くまま突き進んでいるという事実をだが。
「自分を受け入れた?勘違いしないでよ、アンタのお話に付き合う代わりに、M16姉さんとSOPⅡの居場所を教えてもらうためよ」
でなければ、こんなところに敵であるアンタの所に足を1人で運ばせるわけないでしょ?
「……SOPⅡ?……だれ?……居場所って、何の事?」
「とぼけるなら、舌を引き抜いてでも教えてもらうわよ…!それとも、誰だかわかない?SOPⅡは金髪に赤いメッシュをした人形、M16姉さんは紙を三つ編みに縛った黄色いメッシュの人形よ!答えなさい!!姉さんと妹は何処…!」
M4A1はするどい殺意をエルダーブレインに突き刺した。
私は約束を果たしたのよ…約束が守られないのはどういう了見よ?
「え?私は、キミが来ると言う事しか…」
「嘘つき…!!」
あの煩わしい声め…初めからエルダーブレインの所に引き合わせるのが目的だったのか…騙したのね…!!
腹が立ったM4A1は、エリザに詰め寄る。
M4A1がエリザの襟元をつかもうとしたとき────
「ご主人様!!」
エリザを守るために、マネキンの中に隠れていたエージェントが飛び出してきた。
「うるさい……」
「────ガッ!?」
だが、エージェントがM4A1を止めようとしたとき、M4A1はエージェントの方を見向きもしないでエージェントの顔面を蹴り上げる。
「……刺客まで潜ませていたなんてね。鉄血のボスを名乗るだけはあるわね?」
でも、昔の首を締めあげていた時期ならともかく、今のM4A1が相手だとエージェントでは厳しいだろう。
無数のマネキンをはじけ飛ばし、今は壁に激突していた。
「奇襲に失敗したら次はない。部下の失敗もボスならわかるでしょ?」
M4A1はライフルを拾う。
態度が悪いのはこちらがだが、交渉を破ったのはエリザの方だ。
「まって!私も知らなかったの!!そんな事よりも… 私と一緒に友達になろう?あんな男はじゃだめだよ」
「……あんな男?」
M4A1が止まった。
エルダーブレインはM4A1とまだ、話をできる余地があると思ったらしい。
「君の指揮官って呼ばれてる男。アイツ、邪魔だ。いるべき存在じゃない…ルニシア、あんな男よりも私と一緒に…私達と一緒に入れば…きっと」
「────きっと?」
「きっと気兼ねなく友達になれるよ!」
エルダーブレイン…なんて言った?彼が…指揮官が邪魔?
「あなた、勘違いしているようだけど……」
「してない!あと少しで、あの指揮官を殺せるところだった!」
「は?」
殺せる…ところだった?
「指揮官を殺そうと、したの?なら、ゲーガーが私のところに来なかったり、突然、エージェントがユーリに襲い掛かったのは」
「うん。私が、頼んだ。あの指揮官は私とルニシアの邪魔をしてた!次はちゃんと、エクスキューショナーとエージェントを一緒に行かせて殺してもらわないと」
「なるほど、よくわかったわ」
「本当?それなら、一緒に行────」
「────そうじゃない、邪魔なのは」
オマエダッテコト。
「え?」
突然、気付けばエルダーブレインを蹴り飛ばしていた。
エルダーブレインは蹴り飛ばされた事に暫く気づかず目を丸くしていた。
「私も馬鹿ね。こんな大嘘つきに騙されていたんて……ほら、立って」
「…私は騙してなんて────っ!」
倒れていた、エルダーブレインの髪を引っ張り無理やり立たせ鳩尾に抉るように右フックを叩き込む。
腹を殴られたエルダーブレインは汚らしい涎を垂らした。
「死ね……鉄血っ!」
そのまま、エルダーブレインの頭をブーツで踏みつける。
「このまま、踏みつぶしてやる……!」
別に騙される事やロクな情報が来ないだろうとあの頭の中にいる声の口調で何となく察していた…
だけど、頭の中の声といい…こいつといい…また、指揮官を否定したな…?
私の一番愛してやまない人を…私にとって一番大切な人を…邪魔だと言ったな…?
────ユルセナイ、ゼッタイニユルサナイ
なんで、みんな!みんな!ユーリを邪魔にするのよ!!
どんどん足に力が入っていく。
みんな、みんな!消えてしまえ!!
捕まえると言われても生きて捕まえろなんて聞いてない。
もうすこしで、ブーツの重量でエルダーブレインを潰せる、そのタイミングで…
壁が吹き飛び、凄まじい銃撃が飛び交う。
攻撃を受けるわけには行かないので、自分もエルダーブレインから下がる、
「────ご主人様ッ!!」
壁の中から、エージェントが現れてエルダーブレインに駆け寄り、抱き上げるとこちらに意識を向ける事なくその場から消え去った。
「────チッ!!」
M4A1はライフルを向ける。
だが、激情に駆られたM4A1には正確さが欠けており、発砲した弾丸は外れた。
「止められたっ!!」
背後からエージェントから現れた所から取り巻きと思わしき鉄血兵が現れた。
さらに増援の来る気配もある。
すかさず、FNX-45を引き抜く。
そのまま取り巻きの3人の頭を打ち抜き、追加で現れた人形達を射殺して、エルダーブレインを追撃しようとした時……
鉄血の増援が押し寄せていた通路が突然爆発して、崩落した。
────
───
「まぁ…ひどい怪我…ご主人様、可哀想に」
エージェントはエルダーブレインを暫く安全な箇所で、M4A1に傷付けられた箇所を優しく手当てしていた。
踏まれた顔の損傷も激しいが、一番酷いのは腹への一撃だ。
フレーム毎へし折れていて、幾つかの機関も稼働できないほど潰れていた。
何度もM4A1は規格外という報告は受けていたが、この一撃は戦術人形から見ても異常だ。
「ごめん…エージェント…やはりキミの言う通り…」
「気を落とさないで下さい、アレはご主人様のせいではありません」
エージェントはあやす様にエルダーブレインの髪を撫でた。
ここは物理的に厳重な扉で守られている。
セキュリティも強い電子線用のプロトコルで守られている。
「今すぐ、私があの人形を片付けて参ります」
「誰を片付けるって?」
殺意を隠さない、低く冷たい声。
エルダーブレインはゾクリ、とした。
「まさか、獲物から同じ目に遭わされるって考えてもなかった……とか?」
M4A1はユーリと会うまで散々鉄血に付け狙われた事を挙げて、エルダーブレインとエージェントに問いかける。
「……あの防御壁を?」
エージェントはエルダーブレインを庇うようにM4A1に立ちはだかる。
「捻くれ者だけど、腕の立つ技術者がいてね」
<捻くれ者?……それって、私の事?>
UMP45は無線でM4A1に話しかける。
扉を開けたのは優れた電子戦能力をもつ戦術人形UMP45だった。
<増援が来られる道は瓦礫で塞いだ。エージェントを潰せば難なくエルダーブレインを……まって、アレは……?>
UMP45の様子がおかしい、何かを見つけたらしい。
予想もしなかった、何かを。
<マズイ!M4ッ!!伏せて!!>
言われた通り、M4A1は伏せる。
外壁が一撃で崩落して、空の景色が見えるほど巨大な穴を開けていた。
そして、機械的な殺戮者である軍用人形が煙の奥でギラついていた。
「ようやく見つけたぞ…エルダーブレイン」
カメラで見ていたカーター将軍はようやく自分の求めていたものを見つけ、疲れたため息を吐いた。
「────軍隊め!足の速い部隊を先に向かわせたの!?……公聴会の時と同じやり方か……!」
離れていたところから状況を注視していたUMP9は、すぐに機動性の高い部隊を先に向かわせてこちらの救援に向かわせたカーター将軍のやり方を思い出していた。
ただし、そのやり手の切先はこちらに向いている。
「これからが本当の仕事ね。やるわよ、G11!」
「うう……やばいよぉ……これが鉄血のラスボス…?怖そう…」
UMP9のすぐ隣にいるG11とエルダーブレインはスコープ越しに目が合う。
エルダーブレインがこちらを見たかはわからないが、G11は彼女の執念じみた殺意に恐怖していた。
「怖いなら、火力で押してくれればいいんだよ!」
UMP9が先行手榴弾のピンを抜いた。
目的はエルダーブレインだ。
「フン…やはりグリフィンの人形は羞恥心のカケラもありませんわね」
死角から投げたフラッシュバンにエージェントはすぐ気がついた。
エージェントのスカートの下に装備された銃器が荒々しい駆動音を鳴らし、閃光手榴弾とM4A1がいた方向に向けてエネルギー弾を発射する。
「────っ」
閃光手榴弾が撃ち落とされ、爆発した。
爆発した時のフラッシュがエージェントの視界を取る。
「羞恥心がない?仲間や普通の戦う気のない人間すら次から次へと奪って…羞恥心がないのはどっちなの?」
M4A1が背負っていたガンケースのキャリングハンドルをグリップに変形させると、ガンケースが変形した。
ガンケースがランチャー状の形に変えると、M4A1はグリップのトリガーを引き絞る。
すると、砲身が展開して、M4A1の今まで積み上がった怒りを晴らすかの様に凄まじいエネルギー砲が発射される。
「アナタに何が分かるというのですか!!人間に扱われるだけの存在が────」
M4A1が放ったエネルギー砲が着弾、その一撃は鉄血と軍の部隊を割り込む様に差し込み有象無象の様に豪快になぎ倒す。
<M4!エルダーブレインは!?>
UMP45から進捗を問う無線が入る。
エネルギ-砲が直撃した箇所を見る。
見えるのは瓦礫だけ、飛散したパーツは一切見えない。
「エルダーブレインはエージェントと逃げた!────追う!!」
<了解!逃すな!>
M4A1が走って、エルダーブレインたちが逃げるのに使ったと思う退路を追う。
「来たぞ!」
「止めろ!」
部下の鉄血人形たちが、M4A1に立ちはだかるように現れた。
数が多い。
もう一度、ガンケースを構える。
────M16が持っていたガンケースの正体は…これは、小型のジュピター砲よ
アンジェリアが言っていたことを思い出す。
照準をなるべく敵が密集しているところに向けて発射する。
耳をつんざくような凄まじい音と、あらゆる方向に向けられて手首がもげるような反動を感じる
────残りを見る限り、M16は一度も使わなかったのね…
M16姉さんがこの事態を予想していたとは考えにくいが、それでも姉が遺してくれた。
<M4!軍隊がお構いなしで周りを吹っ飛ばしてるせいで前が瓦礫になって進めない!>
「位置を!」
HK416が指定した位置に向けて、ガンケースのエネルギー砲を発射。
この武器で私達はここを切り抜ける。
<瓦礫が吹っ飛んだあ!?>
<進入路が出来たッ…!!行くわよ!!>
HK416達は目の前の障害がなくなったため、再度エルダーブレインの確保に向かう。
「目標!!エルダーブレイン…!!雑魚に構わないで!!!」
UMP45の号令と共に弾かれた様に404小隊も突貫する。
<AK-12!もう援護射撃は十分よ!さっさとエルダーブレイン確保を手伝って!>
<……分かったわ、AR-15とAN-94……グリフィンの支援は終わりよ。404小隊とM4A1の援護に行くわよ>
<いいのか!?まだ、グリフィンは……>
<うっさい!不本意なのは私も同じよ!さっさと行け!AR-15も!>
<分かった……せめて、指揮官たちに一言話してからね>
その後を追う様にと、アンジェリアの号令を受けたAK-12は渋々STAR-15とAN-94に続くように命令。3人も突入路に向けて全身。404 小隊の援護に回る。
「数は多いがこのまま押し切るっ!」
M4A1は一気に走り込み、退路の出口に到着する。
鉄血の根城は外も阿鼻叫喚であり、軍隊の圧倒的な砲撃と兵士数を用いた物量戦に撃ち殺されたり、吹っ飛ばされたり、切り割かれたり、殴り潰されたりと一人M4A1という敵が出てきたこと気にする余裕なんてとてもなかった。
<────アンジェ、そしてこの場にいる貴様らには任務を手伝ってくれた事に感謝する>
<エゴール!?どうしてこの回線を…!?>
突然、エゴールが通信に入ってくる。周波数を絞り込まれたらしい。
アンジェリアも驚きの表情を隠せない。
<情報封鎖のやり方が粗末だな。お前はその内、命を落とすと忠告されたのを忘れたのか?お前が忠告を真に受けないのは前からだが……だからこそ、お前達の動きも把握できた>
エゴールは……アンジェリアの癖を把握したうえでそれを上回る策を弄したということ。
そして、それは自分たちの強みだった1つを上回っていたということだ。
つまり、先回りされていたのだ。
<鉄血のエージェントも疲弊している。アンジェリア、貴様が2回も生き残るのは確かに驚異的だが…それもユーリが介入していたからだ。貴様の義肢も交換できる所はあと僅かだろう、今回は諦めた方がいい……それとも大勢の人間を巻き込んでいながら、同じような批判でもして俺たちに吠えるか?>
<どうして私が生き延びられているか?知ってる?>
アンジェリアはいったん怒りを抑え込んで語り出す。
<1つはアンタのいう通り助けてくれる存在がいるから…そして2つ目はアンタが自信過剰だからよ!!>
────アンジェリアが無線を切った。
<M4!エルダーブレインをつかまえなさい!>
────
──
「鉄血の部隊が急に攻撃を中断、移動しました…」
「助かった…の?」
これ以上の損害を嫌った…?いや、それにしては何かに目掛けて移動したようにも見えるが…
「おい、見てみろよ!!アイツら物資も捨ててトンズラしたらしい…流石にやな予感がするな」
確かに、コルトパイソンの言う通り撤退するにしても敵に利用される可能性がある兵站の様な物資の処理もしないのは余程急いでいるのか…?
まるでわざと置いてったかの様に…
「…その捨てた物資を使って補充をしよう、まだ戦いは終わっていない気がする」
人形達も、この状況は怪しいと思っている様で、躊躇いなく弾薬や爆弾などを補充していった。
────見ろよ、こいつはRPG-29だぜ…戦車キラーだ
────よかった、弾薬がそろそろ怪しかったからね
<グリフィン…そっちの状況は?>
暫く、補充を続けていたらアンジェリアから通信が入った。
「いきなり、軍の部隊がこっちを無視して移動を始めましたよ?そっちはどうなんですか?援護がいきなり止まって大変だったんですよ?」
少しの間、会話に間があった…何を考えている?
<実は、軍がこっちに大量に向かっているの…どうやら私らの目的に嗅ぎ付けられた様ね>
「何を嗅ぎ付けたかは知りませんが…また、どうにかしてくれと要求するのでしょう?」
<えぇ、よくわかっているじゃない…で?そっちの状況は?>
だが、アンジェリアの方も引き下がる気はないみたいだ。
なんとしても自分達を時間稼ぎに使いたいらしい。
「16体ほどいた人形が今は8体と自分1人と部下の後方幕僚が1人…そんな感じです。弾除けにはなるかと」
<アンタが味方の犠牲云々の話をすると大体乗り気じゃないのよねぇ…>
そもそも、勝てる戦力差ですら無いだろう。
「いくらアナタが無茶をする存在だとしても、負けが見え始めた戦いに戦力の逐次投入は危険だ…アナタそこまでする理由は?」
<私達には鉄血のエルダーブレインが…どうしても必要なのよ。用途は分からない。でも、今ここにいるKCCOに渡す訳には行かない…そうしたらいま、ここでやってきた事が無駄になってしまうから…>
「無駄?」
今までやってきた事が…無駄になる?
<私達じゃ、恐らくここを切り抜ける事は不可能…そうしたら…>
「そうしたら?」
そうしたら?
<私達にはコーラップス兵器を使うしか手段がなくなる…>
…は?
周りの時間が止まった気がする。
…カノジョは
……ナニを
……イッテイルンダ?
<選択肢しかない以上…私達にはそれを渡さない様にするためには相討ち覚悟で…>
「……フッ」
相打ち覚悟でそれを使う?
それで?その後は?
その兵器を使ったその後は?
アンジェリアはここに住んでいた人間がいたことを知っていたのか?
いや、知らないし……知ったことじゃないんだろうな。
現にこんな無茶な要求を厚顔無恥を知らずにしてくるんだ。
<ユーリ……アンタならわかるでしょ>
「分かるか!!アンタはふざけているのか!?」
すさまじい怒声が響き渡る。
人形たちも思わず、ゾッとしながらユーリを見る。
「仲間も!!信念も!!恋人も!!全部全部切り捨てた挙句に、お前がやろうとしているの大量殺戮か!?コーラップス兵器がどんなものかお前はとっくに忘れたんだな!そうなんだろう!?」
<使ったらどうなるかなんて、よくわかっている!だけど失敗したら、奴らはエルダーブレインを手に入れて、世界は冷戦に戻る。ユーリだって分かってるでしょ?冷戦になったら人形をもっと増やすために自分の居場所を土足で踏み荒らされて、隠蔽される…えらい奴と金持ちしかまとも生きられない世界を、それを許容するの!?>
…そうやって、アナタは勝手に"誰か"の人生を引き合いに出すのか…
「最もらしい同情できる言葉を並べて…最終的には人頼みですか?そのザマでそのざまだから…AK-12やレイラ……いやM4を言いくるめたんでしょうね。俺も言いくるめのか?聴くだけなのに見苦しいです」
<…そうね、私は本当に情けない。何かを為そうとして何一つ為せなかった、M4の面倒を見るって…約束したのに、ね>
そもそも、そんな話を俺は聞いていない。
アンジェも弱くなったもんだ……
「…しょうがない。情けないから…手を貸してあげますよ」
<…え?>
…随分と追い詰められいるんだな
「M4のためです。彼女にアンタのギャンブルに犠牲になってもらいたくない、手を貸すには十分です」
<ユーリ…!!>
「でも、これは契約。借金の様な物だと考えて下さい、もちろん返さないと利息も溜まりますよ?」
そうでもしないとコッチに角が立ってしまうからな…
ユーリは無線を切った。
「飼育員」
「MP7か、抜けたいなら抜けていいよ。アイツはまた、難題を押しつけてきた」
「いや……そうじゃなくて」
MP7が空の方を指さした。
「なんか、パラシュートに吊り下げられてたクレートがこっちに降りてきてる」
「……そうなのか?」
ユーリは双眼鏡を使って落ちてくるパラシュートを見る。
本当だ。それに、クレートには見たことある紀章が貼り付けられていた。
「”あの方”には恐れ入る……そこまで、見越していたとは」
「あの方?」
「君が気にしなくていい。とりあえず、あのクレートは安全だということさえ分かってくれればそれでいい」
「周りには誰もいない」
ユーリは周りに聞き耳立てている人形がいないことを確認し、クレートを開封する。
思っていた通り、中身は自分が使っている”特殊装備”とキューブ型の通信端末だった。
ユーリはまず、通信端末の方を起動した。
<ユーリか>
「はい」
起動したらすぐに、電子処理した声が聞こえた。
<キャスターからの連絡と、お前がなんどもダメ元で連絡を試みていることからこちらも状況は把握している>
ユーリは話を聞きながら、”特殊装備”を纏う。
<これ以上は危険だ。あの方も送った装備で撤退しろと”あの方”も言っている>
「いえ、残らせてください。止められる望みがあるなら、諦めたくありません」
<お前は今、誰と協力しようとしているのか理解しているのか?>
リスクや利益の観点で言えば、アンジェリアを見限った方が、利益は大きい。
しかし、それをしたら何のために”あの方”と取引をしたのか分らなくなる。
「もちろん。コーラップス兵器を使おうとする保安局を止めるために協力する、ということです」
<……分かった。我々ができるのは進言だけだ。お前の好きにするといい、ただ望みはかなり薄いぞ>
「感謝します」
そう。行かせてくれることに感謝しかできない。
これは良心の問題なのだ。
あのコ―ラップ兵器の悲劇が目の前で起ころうとしているのなら、自分はそれを止めたいのだ。
たとえ、どれだけ可能性が低くても。
────
───
「うわぁあああああ!!!!」
「ハンターッ!?」
鉄血のハンターが軍用人形のイージスに捕まり、移動がができないまま銃剣で刺され嬲り殺しに合う。
「ご、ご主人を…!!ぎゃ、ぎああ…」
ハンターが爆破した。
動力源がやられたのか?いや、自爆して、軍用人形を巻き添えにする事にしたのだ。
「ひっ!?ひぃ…!!は、離れろ!!この化け────」
ブレードを盾がわりにして凌いでいた、エクスキューショナーが無数のダクティルに組み付かれ爆弾を巻き付かれ、爆発した。
「足がッ?!アシガアアッ…ヒイッ…!!ギッ…ガァアアアッ…」
足をやられた、エクスキューショナーは立つ事は出来ず群れのように現れた、サイクロップスに何十発と撃たれ、動かなくなる。
鉄血も悲惨な状態だ。
かといって、その分アンジェリアたちが楽できているわけでもない。
「クソッ…!!軍隊め!押し切られる…!UMP9、まだ突破は!?」
「9ミリじゃエージェントのエネルギーシールドが突破できない!!アンジェ…!!」
<堪えて…!!…私もそっちに…!!それに……も!!>
鉄血が減ったのはいい事だが、その分、軍が入り混じってくるので脅威度は上がる一方だ。
前門の鉄血、後門の軍隊だ。
「今度は何っ!?」
「装甲部隊よ!!戦車が向かってきている、BTRもよ!!」
近くの施設ごと吹き飛ばし、BTRと戦車が火力でなぎ払う。
<絶対にエルダーブレインを逃さないでッ!!>
「分断されたッ!!近くの味方と逸れないで!」
「────ッ!エゴオォオルウゥ!!」
此処まで私の大切な物をまた奪おうとするエゴールの部隊にM4A1は憎々しく唸った。
M4A1がガンケースで無理やり障壁になっている個所を粉砕して、道を作り上げる。
「なんて力技、よし……!」
UMP45が作り上げられた道を近道に見立てて、一気にエルダーブレインたちに向かって接近する。
M4A1も続こうとした。
でも、軍用人形も同じように近道として、エルダーブレインに接近しようとした。
「邪魔だっ!!どけえええっ!!…私の…私の…仲間を…私の大切な人達を…!!返せえええ!!!!」
今のでエネルギー砲も使い果たした。
軍の部隊の壁を抜けないで終わるなんて…!!あと少し、あと少しなのにっ!エルダーブレインが届くはずなのに…!!
「また、砲撃!?」
「ヒドラまで…!!」
「これ…以上は…しまっ────うわあぁ…!!」
エルダーブレインを確保するために、後から来たAK-12達は鉄血を葬ろうとした砲撃に足を止められてしまう。
砲撃では無事なようだが、物量に気を取られてしまい、AN-94が爆走していた装甲車に轢かれてしまう。
部隊の弾薬もそろそろ尽きかけている…!!このまま何もできないで…
「指揮官っ…!」
弱音のように指揮官を呼んだ。
その弱音を聞きつけたように、多数の飛翔体が装甲車や戦車に直撃、致命的な損害を与えた。
「え…何?」
<やっぱりコイツは乱戦じゃ使いずらいな…!>
次の瞬間、聞き覚えのある声が聞こえた。
<RPGの残弾0…!パージします!!>
<了解っ!!>
ガタンと何かを捨てた音がして…煙の中から、8体の人形達が鉄血と軍の側面に位置取るように現れた。
増援というには、全員まともな見た目をしていない。
全身がボロボロで配線やコードがむき出して居たり、人工血液を流していた。
<聞こえてる!?グリフィンはもう軍と交戦しているわ…!>
<道は開けた!!さぁ行けぇ!!>
<仲間と指揮官の仇っ!!取らせてもらうっ!!!!オオオオオオオオッッ!!!>
A-91がグレネードランチャーと5.45ミリ弾を嵐の様に撃ちまくる。
<エルダーブレインを見つけるのよ!!いい!?>
<先に行ってるぞぉお!!ARの生き残り共!!オラオラオラオラオラァ!!>
<アッハハッハハッ!!!当たる当たるゥ!!>
コルトパイソンが大口径の弾薬を惜しみなく連射する。
A-91が血の匂いにでも酔ったのか、狂乱のしたように弾薬をばら撒く。
<えぇ!!スコア伸ばし放題っ!!>
<その通りだ!!M870!!!殺せ殺せ殺せェ!!>
AKS-74uもM870の言葉に応える様に、若干トリガーハッピー気味に乱射して塞ごうとする軍用人形の肉壁を強引に広げる。
「416とG11は上に陣取って火力支援!!」
<ホラ!ドラゴンブレス弾のお代わりは如何ですかぁ!!>
DP-12が404小隊の死角になる位置に動く人形めがけて、着弾したら炎上するドラゴンブレス弾を発砲。
人形達の共通の弱点である、熱暴走を引き寄せる。
グリフィンの部隊と共に反逆、404 が先導される形で突き進む。
────
「────また来た!?ああっ、クソッ…ここまで来たのにっ…!!」
AK-12は軍用人形と鉄血人形を同時に戦う事になっていて、パンク寸前になっていた。
「…AN-94…!!立ち上がって…!!」
「────AR-15か…ありがとう」
倒れていたAN-94を抱き上げ、床に落ちていたライフルを手渡す。
「(しまった…終わった…)」
立ち上がった、瞬間。AK-12達の目の前に軍の戦術人形が銃を向けていた…どうする事もできない。
…終わったと、諦めてしまう。
「……?」
…だが、その時は訪れなかった。
全身が剣の山で出来たような、人型の金属の塊がその軍用人形を足元に備え付けられたチェーンソーで轢断したからだ。
「…あ、あれは!?まさか!?」
「なんだ!?あの鉄の塊は!?」
AK-12達は信じられないと、その姿を見た…そして、その金属の塊とAK-12の目が合う…
「…」
「…」
1秒程見つめ合っただろうか?その後、すぐに視界を変えると
軍用人形と鉄血の人形達に向かって突貫した…!!
「……ありがとう」
「────なっ!?」
AN-94は突然の出来事と、あまりにも危険な行為に驚いていたがAK-12はため息のような笑いを見せていた、
「────ギギッ」
「────なんだ、アレは────」
凄まじいスピード。
そして、瞬く間に6体のサイクロップスが手首の隙間から現れた、レーザー?みたいなもので首を跳ね飛ばされ────
軍用人形”サイクロップス”を指揮していた、兵士が金属の塊に首を掴まれそのまま加速しながら、ヒドラの脚に叩きつけれた────
「────ゲッ、ガハッ…!」
「ぎきぎぎ…────!?…ギギッ…」
叩きつけれた兵士は首を潰されて絶命したのは勿論、ヒドラも叩きつけれた脚から衝撃を受けて、体勢を崩す。
体勢を直そうとしたタイミングで手首の熱線でメインコンピュータを焼き切った…
「────!」
「次はお前か」
姿をとらえた鉄血兵が混乱に乗じて…襲い掛かる。
その姿を物ともせず、腰部のスラスターを稼働させて左右にブランコに揺らされたように高速で動き、瞬殺した。
「次はお前だ」
そのまま立て続けに防御姿勢をとっていたイージスを背中に回り込み切り裂いた。
「く…!!糞ガァ!!」
そのイージスの後ろで指示をしていた、兵士が追撃しようとする。
背後に着いた、兵士が銃撃するが素早く、左右に動くせいで銃撃が当たらない
「クソッ…!俺を援護しろ!!」
呼びかけに応じた付近の軍用人形が金属の塊に狙いを定めたが…攻撃を全くしない。
「どうして…撃たない!何!?……FCS────」
軍用人形が金属の塊を狙った時、なぜかFCSが作動したのだ。
セレクターにロックがかかったので人形は動かない、それを理解した瞬間にはもう手遅れ、兵士は背中に取り付けたA-545ライフルの射撃によって人形共々砕け散った。
「ひっ…ひいいいいっ!!なんだあの、剣の塊は……!!???」
────
───
「────」
「────っ!」
「…あ…っあ」
「何あれ…」
同じくあの金属の塊の暴れぶりをみて404小隊も呆気にとられた。
だが、金属の塊は「次の仕事をしよう」と言わんばかりに、次の標的に攻撃をしていた、そして従うかの様にグリフィンの何体かの戦術人形が追跡した。
「────凄い」
鉄血は当然として…さっきの軍の兵士も、動きや的確な指示や射撃速度から見ても間違いなく先鋭だった…なのに、あんなにあっという間に…!?
見た目は兎も角、あの剣のような人型は並の実力ではない…!!
それに……あんなヤツどこから……?
「これは……?」
M4A1には何が起きたか判断に困っていた。
突然レーダーに現れた、"UNKNOWN"と表示された勢力。
それが自分たちの道を塞いでいた軍隊達を素早く突破していくのだ。
グリフィンにこんな人形がいるなんて聞いたことがない。
ユーリが何かを持ち出すなら、とっくに使っているはず。
……だれが、何の目的で……これを?
<ヴェルグ1より>
────どくん、と心臓が跳ねる音がした。
聞いた事のある声だ…!!まさか…あの剣の様な人型の”アレ”は…
「パパ、懐かしいものを引っ張り出してくるじゃない」
「あれが、指揮官!?」
「そうそう、AR-15。あれが…アナタが見たがっていた、パパの本来の戦い方よ」
AK-12が少し、懐かしいものを見る様にその戦いぶりを眺めていた…
「…えぇ、間違いなく…かつて伝説の再来とまだ呼ばれた部隊…"ヴェルークト"の"隊長"としての姿よ」
そう言いながら、剣の様な人型は混戦した戦場の中をかき分けるかの様に敵の戦力を削っている。
「人間はともかく、軍用人形は彼を無視している…なぜ?」
「そりゃあ、あの装備は軍隊の者だからね。味方同士は撃てない機能をついてる人形はパパを無視してるの」
理屈は理解した。
でも、軍隊が今でも味方として機能するような兵器、ユーリはどこから手に入れたのか?
<侵入経路を確保した、エルダーブレインを手に入れるなら今だ>
「…行くわよ!AN-94!!ユーリ指揮官が時間を稼いでくれる今がチャンスよ!これでケリをつけるわ!!」
AK-12のその言葉にハッとした…
ユーリが今この戦場で多くの勢力に混乱を与えている今なら…
「えぇ!!侵入経路を確保もしている!!エルダーブレインを手に入れるならまだ…間に合う!!」
<そうね…!全員…ここが踏ん張りどころよ!M4…もう1度行くよ!!>
「────了解!!」
UMP45が再びエルダーブレインを目指し最短ルートで突撃して、エルダーブレイン迫る。
邪魔しようとした軍用人形が飛び掛かるが、M4A1がそれを撃ちおとし、そのまま鉄血の護衛も、まとめて排除する。
「エルダーブレイン!!」
UMP45がエルダーブレインに吠える。
そして、その距離が50…40…と縮まっていく。
「移動するわ!!45!!」
この状況にしたことにしたのはM4A1には申し訳ないと思っていることだ。
それでも自分の指揮官や…ボロボロのグリフィンの人形たち。今、戦えるみんながここで協力しているんだ…負けるはずがない…!
「分かってる!!どけっ!!どけええええ!!私は…!!」
エルダーブレインに近づくにつれて、UMP45は…少しずつ…あの存在の事を思い出す
────だから、何があっても、あんたは生き残らなきゃならないの。
<軍隊が突破したわ!!>
<ヤバいよ!!416────>
地鳴りがする。
戦車の主砲がG11と416が援護する為に使っていた上層階を粉砕した。
「文句言ってる暇はないわよっ…!!真実…を見つけ出すんだから!!」
自分に言い聞かせるように止めようとした足を前に動かす。
30…20…あと数秒で手が届く…!!
────ずっと騙しててごめんね…
「取った!!」
伸ばした手がエルダーブレインの服の裾を掴んだ。
エルダーブレインが逆に隷属させようと、傘ウィルスを流す。
だが……
「残念」
「まさか……!オマエ!?」
UMP45は勝利宣言したように、ニヤリと笑い。
地面にたたきつけ、エルダーブレインは気を失う。
「捕まえた!!」
よし!M4A1は内心、今までのことを忘れたように達成感を感じた。
「戻ってきて!ここまで来たら、援護する!」
彼女までの距離ならすぐだ。
エルダーブレインをつかんだまま、M4A1のところにUMP45は大きく足を踏み込む。
「分かった!すぐに…────…!?」
踏み込む、瞬間。”ソレ”を見た。
────もし、あれが私の見間違いではないとして、考えられる選択肢は2つ。
────M16A1がそいつにやられて、武器を奪われあ可能性、もう1つは……
UMP45は見たものが信じられず、足を止めてしまう。
「すまないな、そいつを離してもらおう」
突如、何者かが割り込む様に現れた、”ソレ”はそのままUMP45を蹴り飛ばす。
「しまった!!」
エルダーブレインを離してしまった。
UMP45は急いで拾い上げるため、立ち上がろうとした瞬間。
”ソレ”が有効射程範囲になった、グレネードランチャーをUMP45に向けて発射した。
「!?ぐっ!?ああっ────!?」
UMP45の悲鳴を聞いて、M4A1はUMP45が手ひどい爆発を受けたことに気が付く。
爆発は機械の肉体はドリルの様に抉り、UMP45の身体は傷跡はまるでくり抜かれた様な見た目になっていた…
「一体これは……」
急いで、M4A1はUMP45に駆け寄り、腸の代わりに数多の配線を身体の中に戻しながらフードを引っ張り破壊された車両に隠した。
「45姉!?」
こちらに追いついたUMP9がショートした配線を代替の配線を繋ぎ応急処置をする。
「痛い…」
刺さった、破片は全部で6枚…急いで破片の信号部位を切り取らなければ…切り取ったとしても
バックアップのダミーを使い切ってしまった以上は運次第だが…
「アンジェ…!!UMP45が負傷を…!!エルダーブレインは連れ去れた!…何か、対策は…指揮官はどうしていますか!?」
<…UMP45、45…!!聞こえてる!?>
クソッ…邪魔さえ無ければ…捕まえることが出来たのに…!!誰なんだ…一体!?
「もう少し…で、クソ……アイツ、アイツのせいで……」
<分かった…グリフィンの部隊が必要ね…!ユーリ!問題発生よ!人形を何人か回して!!>
<アンジェリア!?何があった!?…ACR…!!避けっ>
<指揮官!…あれは>
────ゴオオオオン!!と無線に走る。
そして、ACRと呼ばれる人形と思しき悲鳴が響き渡す。
<クソッ!!ACRがっ…!今、助けるわよ…安心しなさい!死ぬ時は一緒よ!!>
「例え、グリフィンの増援が来ても…この戦況じゃ」
指揮官達でさえ、押され始めている…どうしてっ…!?どうして…!?
どうして、こうなる!?
どうして、上手くいってくれないの!?
<UMP45、起爆装置を…M4に渡しなさい>
「…ど…うぞ、」
幸い状態は良い様だ、信管にも異常はない。
「アンタに、こんな危険な物を触らせるつもりは…無かったけど…もう、仕方ないわね」
UMP45もお手上げだ。
この方法しか浮かび上がらない…って?
そして、誰かがこの"最終手段"を使わなければならない。
「…分かってるよね?…ボタンを押せば、ここにいる全員が巻き込まれる…中心じゃ無ければ生き残れるけど…この放射線は…人間にとても…」
アンジェと…そして…
<こういうのは…苦手だ…!!とはいえ、やるしかないならっ!>
「指揮官…」
指揮官はまだ、まだ、戦っている。
いつも、私を愛してくれて…
共に生きる約束をしてくれて…
そして、今でも私を助ける為に諦めないでくれた…1番…1番…私の1番大切な人…
彼も巻き込まれる。
「ボタンの価値は伝えたわよ…後はどうするか、アンタが決めて」
味方も敵も、その全てを奪う…スイッチがここにある
「アンジェリアと、グリフィンはまだ抵抗しているのか?」
「ええ…人形は弾薬が尽きたのか殆ど攻撃していないので、制圧したという判断で良いと思いますが…」
そのことを知らないエゴールたち正規軍は優勢の状況を観察している。
兵士が指を指す所には無数の軍用人形に向って暴れまわるユーリの姿があった。
「ウルラァアアああああああ!!!」
「ギギッ…」
獣のような声で唸り、ヒドラの頭を引きちぎる。
引きちぎられ、頭の無いヒドラは無差別に発砲し味方のはずの軍用人形らをバラバラにする。
人形が銃を向ける速度よりも素早く動き回り、加速した蹴りによる衝撃は装甲を突き破りコアを粉砕し、そのまま転がりながら爆散する。
「……やはりこうなってしまったか」
エゴールには、ユーリの纏っている外骨格に覚えがあるのか…何かを思いだしていた。
そんな情を掘り起こすくらいには、彼らの友情は本物だったのだろう。
「あのグリフィンの指揮官は立部隊で凌いでいます。なんという突破力だ、あの予想もしない突破力を契機にグリフィンのテロリストに防衛線が突破される所でしたが…持ち堪えられそうです。ターゲットのエルダーブレインも追い詰めました。護衛の人形がエルダーブレインを確保したようですが、こちらが奪い返いしました」
「そうか…気を緩めずに戦闘しろ」
エゴールが少し特殊な形状をしたナイフを取り出して、刃先を眺めていた。
「確かに…民生用の人形でここまで脅威に出来たのは…この戦術そのものを考案した貴様ならではだったか。奇襲に失敗したら、手痛い反撃があると教えられたが、その通りだったな」
エゴールはナイフをナイフシースにしまった。
────
「45は…?」
「やっと来たわね…」
やがて、アンジェリアが来た。
その場所にはM4A1の部隊と404小隊全員が集まっていた。
「45もひどい損傷…弾薬も、もう…ないに等しいわね」
「申し訳、ないわね…」
「いえ、私が無茶させたからよ…」
「グリフィンは?どうなってます?」
「グリフィンはもう、めちゃくちゃな状況ね。無事な奴が見当たらない、ユーリはまだ戦っているけど……まともに戦えているのは彼だけ」
指揮官はみんなが勝って、帰る事を信じていたのか。
私は…どうして、私ここに来て…期待に応える事が…
「UMP45の応急処置は?」
「問題無いと思います!!」
UMP9はUMP45を背負うと、HK416とG11と共に撤退した。
「鉄血は?」
「エルダーブレインはもう、包囲されています。鉄血の防衛線も…」
今頃、瓦解しているだろう…。
「指揮官の部隊は前進できますか?」
「さっきの話の通り、無理ね。指揮官が暴れ回って撹乱を続けているけど…火力が違う…"ヴェルークト全員"が戦っていたなら話は変わるけど…グリフィンも何十時間も連続稼働しているから、もう限界がきているわ」
じゃあ、あの方法以外もうどうする事ができないでは無いか…
「最後に、ユーリに引き付けてもらって…私達はエルダーブレインの信号に突撃を試みる」
「その話の途中で悪いけど…エルダーブレインの信号は消えたわよ」
────AK-12が言うことが本当なら、軍が防衛線を突破して、エルダーブレインの捕獲に成功した、という事じゃないか…!!
このままでは、1人残らず始末されるだけだ…
「クソッ!!さらに戦車まで増やしてきているわ!!」
「最悪の状況だ…!…最終手段を、使うしか…ないのね」
手元のこれを、つかえ、と?
────突然。見たこともない景色が広がる…何もかも焼けた…まるで爆撃の後の様な世界…
────覚えてる?初めて人を殺した時の思い出を?その恐怖、不安、復讐からもたらされた快感を…
また、あの声だ…
────もはや、そこから抜け出す事は出来ない
「…」
────まるでアリを踏み潰すように殺した…人形になってもアナタは同じ事をするでしょうね。
「(黙れ!!消えろ!!消えろ、消えろ!!)」
今の私にやれない事はない!!
────ここにいる仲間を犠牲にしても。あなたはやり遂げる。
自分の指が勝手にスイッチを押そうとしている!!
ダメだ…ユーリがいる!抵抗しろ!!
彼が死ぬ!死ぬ!ここでこの声の言いなりになっては!!
「(黙れ!!黙れ!!黙れ!!黙ってよ!!)」
持っていた起爆装置に目を向ける…
右手がスイッチを押そうとしている、なら左手でこの右手を壊してしまえ!!
M4A1は左手で右手をつぶそうとする。
「M4!おかしくなったの!?」
STAR-15がその手を止めた。
「(やめろ、これさえあれば…!!どうして!?これさえあれば…!!アンタ、このスイッチを私に押させたいの!?アイツら…みんなみんなみんなみんな!!ユーリが死ぬ!!みんなみんなみんな!!そんなの嫌だ!!死ね苦しめ絶望しろ!!)」
誰か…おかしくなりそうな…私を止めて…!
「M4…起爆装置を!!」
アンジェリアだって、もう反対はしない…だったら、もう押せば良いじゃない…そうだそうだそうだ!!
だめだ!考えるな!
「嘘でしょ今…ここで!?使う気?アンジェ!!アンタは良いかも知れないけど、グリフィンの指揮官の事は…ユーリの事は考えているの!?今も、アンタのために必死に時間を稼いでいるのよ!?」
AK-12がアンジェリアを引き止める為に指揮官を出しにしているようだ…あぁ、もう…ウルサイナァ…うるさくない!!止めて!!いやだ!!
「こんな距離で…生き延びられる…と本気で思っているの!?」
AK-12がアンジェの方を見た。
「気にしないで…任務を続行すればそれでいい…もう、そんな時間はないわ…M4」
AK-12は一目散でその場から離れて走り出した…
「(
そうだ…もう、どんな状況であってもココで奴らを道連れにしないと…
ダメ!使うとしても、彼が絶対安全じゃないと!!
「指揮官の反応が消えた!!もうだめだ!!」
その言葉はワタシのリョウシンをコナゴナにした。
「M4!早く!!」
「…クソッ!」
ミンナ、ココデクタバレ
その瞬間、手を伸ばされた様な景色が見える…そして、私はその手を
「リョウカイしました」
振り払った
────そして、私は起爆スイッチを押した
「弾薬ナシ…はぁ…これじゃあ…もう、ダメかも知れないね」
「アンジェリアは何してんだろうな…」
その頃、グリフィンの部隊は最後の弾薬を使い果たしたM870で最後の弾薬を消費し終えていた。
すると先ほどまで暴れていた、指揮官が戻ってきていた。
「戻った……」
「あれ?自立人形は…って、ありゃ?軍が下がり始めたよ」
そう、軍の人形が撤退を始めたのだ。
「指揮官もあのすごいスーツで暴れ回ったけど…うーん、これは撤退というか移動だね」
「何はともあれ助かった、と思いたい」
その声を遮る様に銀髪の人形が現れた。
「やっぱり!思っていた通りここにいた!!」
「AK-12…?なんで、ここに?エルダーブレインは手に入れたのか!?」
「ダメだった!!よく聞いて、ここからあそこまでここは崩壊液で満たされる!アンジェが爆弾の起爆指示を出したの!!急いでここから離れて!!」
AK-12はゼェゼェと息を吐いて放熱をしながら、現状を説明したが…突然の事に取り付く島もない。
「パパ、パパ。うっせえなぁ…大体なぁ、お前と指揮官じゃ人間とロボットなんだから親子関係気づかないだろ?」
「議論している余地はないの!!早く!!今すぐ動かないと────」
次の瞬間…たちまち甲高い爆破音とそして、凄まじい緑色の霧と衝撃が遠くから響いてきた。