あの時、クレートの通信機には置きメッセージもあった。
────この後、貴方がどの様な事をするかは分かりません…ですが、その為の手助けになれる様、この物資を送らせて貰います。
あの方には驚かされる、どうやったらここまでの展開を予測できる?
────これからの貴方の助けになれる事となれば幸いです。貴方の忠実な部下より
「そうか…これを置いたのは」
メッセージを読んで理解したこんな状況でもまだ手助けしてくれる奴らがいることを思い出した。
────
───
「ガハッ…ケハッ…ぐ、ガハッ…」
自分の重しになっていた瓦礫を退かしてその位置から立ち上がる。
────損傷確認…身体ステータスチェック…
…主脚とスラスターに若干の損傷
…右肘と背中に若干の打撲
あれだけの吹き飛ばされて…これだけで済むなんて…本当に奇跡だろう。
「アイツは……?」
AK-12はどこだ?
緑色の爆風が迫った時、AK-12は俺に覆いかぶさってあの爆風の壁になって……そして
────危険!!周囲に崩壊液反応確認!!
ヘルメットが急に機密性にあるモードに変形する。
「…」
────ここは崩壊液で満たされるわ!!!
辺り一面、汚染された景色を眺める。
そうだ、あの緑色の爆風はコーラップス兵器……
『うっ……」
AK-12が警告した通り、本当にこの辺りは崩壊液で満たされたらしい…昔のトラウマが蘇りそうだ。
「…AK…12…」
爆発がした時…アイツが俺の前に庇う様に飛び出した、そこまでは覚えている。
そして、アイツは次第に爆風に押され始めて……俺の手を握ろうとしたが、しくじって……
「…!!ク…!!」
崩壊液かは知らないが…熱を帯びた様な…まるで肉が焼けついた様な痛みを感じる。
これは体の痛みじゃない、怒りだ。
「何処だ…?」
このスーツは放射線での戦闘を考慮して…なるべく崩壊液が入らない様に工夫されているが…
「ガハッ…!!ゴホッ…!!」
…咳き込んだ…!?どっちだ?衝撃か?それとも…崩壊液なのか?
「前者じゃ…ありません様に…」
そう願いながら、AK-12…そしてアンジェリア達を探すために歩き出す…
「し、指揮官…ゲホッ…!ゲホッ…」
「生きて…いたんたんですね」
瓦礫の山を転げ落ちる様に…M82A1に肩を組まれていた、M870と再会した。
緑色のコーラップス粒子を浴びて、ひどい姿だ。
『…パイソン達は?銀色の人形は?近くにいたんだ……』
「…いえ、見つけられたのはM870だけです」
「そうか…」
崩壊液が関係なくてもあの衝撃だ…他方に散らばってしまっても不思議ではない。
『M82A1…先にカリーナの所に戻るんだ。そこで補給と整備を受けて状況を把握しよう』
「はい」
そう言って、彼女は素直にM870を引きずりながらカリーナがいる補給施設の方向に向かう。
『M870は、任せるよ』
「私に"任せる"という言葉は使わないで欲しいのですが…」
M82A1…任せられる事がプレッシャーなのだろうか…それは、後で話を聞けたらいいが…
『…探さないと』
だが、正直な所、これからどうする事を考える事も出来なくなりそうだった気持ちを隠す様に歩いている気分だった。
────
───
衝撃が過ぎて
「軍の部隊が…動かなくなった?」
よく見ると、軍の戦車などを操作していた兵士が大慌てで逃げ出している。
せき込んで赤い血を吐いている兵士もいる。
「AN-94…エルダーブレインの追跡は出来る?」
「全てのチャンネルに干渉を受けてる…だが、これは相手にも同じ事を言えるかもしれない」
放射線の影響が…吉と出れば良いのだが…
<敵の…情報は分かる?>
アンジェリアの声だ!無事だったか!?
<干渉が…酷くて…スキャンが>
見渡す限り、コーラップス液のせいで爆心地から半径500メートルは焼失しても良さそうだが…
<何はともあれ…今のうちに…ゴホッ!ゴホッ!血ガッ…ゴホッ>
まさか!?吸い込んでしまったのか!?
<問題、なイ…放射線…浴ビだ…ダケ>
だとしても、それは感染したと言うことに他ならない…!!
<コッチを見て…どうす…サッサと…ウゴけ!>
「アンジェはどうするの?」
STAR-15はどうすのかと聞いた。
こうなった以上助かる道はほとんどない筈だ。
<私の…事を、心配…ばあイ!?エルダーブレインを…早ク!>
「分かりました…任務を続行します」
M4A1は、AN-94を連れてエルダーブレインを探し出した。
────
「あれは…?M4…4時方向だ。見えるか?」
AN-94に言われて、見ると列車が見える。
しかも、その上にはエルダーブレインがいる。
「あいつらか…追いかけましょう!!」
「了解!!」
私と付近にいたAN-94と共に穴から飛び出て列車に向かおうとすると…
銃弾が足元に着弾した。
「…!!迎撃部隊!?」
列車の上に人形が陣取る。
私達と同レベルで頑丈にできている軍の自立人形なら、確かに動ける個体があっても不思議ではない、
私達の存在を目視で見つけて来た……!
「まだ、あの列車に登れば…!!」
「分かった!!M4援護する!駅に走れ!!」
駅に止まるタイミングで電車に登れればっ!!
「なんだこれは!!これもコーラップス兵器の余波なのか…!?」
AN-94光学機器は、まるで現代アートのように意味の分からない光点を映していた。
照門の狂った光学照準器をサイドレールから取り外し、アイアンサイトを併用して迎撃するサイクロップを少しずつ削る。
「AN-94!!」
「AR-15か!?」
援護射撃と共に何処からともなくSTAR-15が銃撃するAN-94の肩を軽く叩き、味方である事を知らせる。
「M4を見なかった!?」
「さっきまで一緒にいた!M4はエルダーブレインを追いかける為に、駅向かっている!!」
AR-15は残っていた、コンパクトタイプの銃を持つ。
「私も駅に向かう、アンタは下がりなさい!弾薬も少ないんでしょ?」
「…っ。あぁ、わかった」
AN-94はUMP45からくすねたスモークグレネードでAR-15の進路上と自分の退路上にスモークを貼り、撤退の準備をした。
────
「…下がったとところで。そこにいるグリフィンが私達を受け入れるか…?そんなことできるわけないだろう?AR-15はそんな事が分からないだろうか?」
AK-12が逃げた時点でもう、グリフィンに自分達が崩壊液を使った犯人だという事はバレているだろう。
「…覚悟はしているが、やっぱり」
そこに"グリフィンの指揮官がいたという事を知りませんでした"なんて言い訳は通らない。
自分達が要請してそこに留まらせたのだ。
寧ろ自分達はグリフィンに対する加害者だ。
「AK-12の忠告を聞けばよかったか…」
リンチで済めばいい方だろうと思いながら、重い足取りと共にAN-94はグリフィンの施設に向かった。
『クソ……眩暈が』
ユーリは暫く、瓦礫を退かしたりして、仲間の人形やAK-12…そして、アンジェリアを探していた。
頭痛とチカチカと頭痛がする。
頭を打ったのかもしれない。
「(銃声…)」
銃声が聞こえた。
まだ、戦いは終わっていないか…ユーリは手に持っている、A-545を眺める。
「行こう…」
足腰に力を入れ直し、跳躍装置を起動させる。
────
「クソ…邪魔なのに…」
『あれは…AR-15?列車に乗る気か!?』
だが、道を阻む軍用人形に中々前進できないでいた。
『────下がれ!』
ユーリは散らばった大きめな瓦礫に重量をかけてバネの様に足を伸ばしジャンプ、そのまま体勢を跳び膝蹴りの構えに変えてブーストを起動、大幅に加速した。
「…────!?」
そして弾丸の様に一直線に軍用人形の方向に向かい、膝を押し付けながら膝に収納したチェーンソーを起動。
敵を轢断をする。
『────はぁ…はぁ……クッ、頭が……!』
「し、指揮官…?」
助けられた癖にAR-15はまるで自分を幽霊を見るような目で驚いていた。
『どうした?死人が助けに来たとでも?』
「…いえ、ですが、少し信じられなくて」
奇跡だった、少なくとも…私にとっては
『…そうかい?まぁ、君は死人扱いされているけど』
「でしょうね」
手に入れる事が出来なかった思い人が今ここに…手を伸ばせば届くような位置にいる。
「…指揮官、私…ごめんなさい!こんな形で巻き込んで…!!」
でも、それ以上にこの状況を生み出してしまった自責の念が強かった。
あの時、指揮官の反応を確認できないと言ったのは私だ。
あれを聞いてすぐにM4A1は起爆スイッチを押してしまった。
『…その事をいう為にここにいるとは思えないけど…で?これから、如何するつもりかな?』
「どうって…」
言っても良いのだろうか?
M4を追いかけて、エルダーブレインを捕まえるための手助けをする…なんて
『まあ、方角から見るに駅の方に向かおうとはしているけど…話したくないなら…それでも構わない』
「────」
昔から思っていた事だが…彼は偶に驚くべき発言を言う、此処まで酷い事をされておいて…まだ、優先するべき事に頭を働かせる事が出来るなんて…
それか、話をしたくなくなったのか。
「…AR-15、駅に行け。"コイツ"は俺が片付ける」
「指揮官、でも…」
足跡でしか分からないが…あの数は相当な筈だ、だとしたらいくら指揮官だとしても…
「問題ない…さあ、行け。"コイツ"は俺が相手をしないとならないんだ」
明確な拒絶…だが、それこそが彼の意思の強さを物語っていた、何がそう彼を物語っているのか分からない…しかし
「────ありがとうございます、いつかまたまた会えたら…」
貴方に…また仕える事ができますか?
────
「走れ…そうだ、君が行きたい所に向かって走り続けるんだ」
────なぁユーリ
────どうしたの?
昔、酒のバーでM16に口代わりに呟いていた発言を思い出す。
────お前は…M4を選んだよな?
────何が言いたい?
要領を得ないと言うか妙に遠回しな言い回しが気になっていた。
────AR-15もお前の事を好きだったのは知っていたのか?
────…やっぱりそうだったのか
実は一匹狼気質だったAR-15が何故か、自分だけには率先して協力していた
────まぁ、一見すりゃゴマすりにも見えるし…アイツは皮肉屋で冷笑する面もあるから弱みを探るようにも見えるのは理解するよ…でもそれがアイツの真面目さなんだ。
────…私は怖かったんだ
────何が?
────昔、私を追い詰めた奴が…AR-15と似たような事をしていたから…
私は無意識にAR-15をそいつに重ねてしまった
────同じ事をされるのが怖かったんだな
────あぁ…好きに嗤ってくれ
でも、お前はそうじゃなかったのかも知れないな…
「それとも、俺が追い詰めたそいつを理解してやれなかったのかも知れないのかもな」
────オオオ…
「かわいそうに」
足音の正体が現れる。
それは辛うじて人間の姿を保っている、崩壊液で造られた不気味な異形…
「…悪い、AR-15。今の君達にコイツを見せてしまったら、心が裂けてしまう…だから」
ユーリはA-545を構える、そして腕のエネルギー状のブレードも放出される。
「お前達は此処で止める… 安心しろ、なるべく早く…苦しめないで、眠らせて見せる」