「ここよ…入りなさい」
反逆小隊は通信ステーションを見つけて、アンジェリアをおぶっていたAK-12に施設に入る様に命じた。
しかし、そこの放射線濃度は高いままでアンジェリアの症状を悪化させる為、AK-12は拒否しようとしたが…
「命令よ…!早く!」
だが、有無を言わせない強引な態度に渋々、通信ステーションの中に入る事にした。
「こんな場所じゃ、いつ"腐肉喰らい"がやってくるか分かんないわ、しかもここは軍のステーションだし…とにかく手短に済ませないと」
AK-12はアンジェリアに言われた通り、通信設備の電源を信号をスキャンした。
「よし、ファイアウォールを突破したわ。AN-94はデータ収集しているか…で?誰を探すの?」
「グリフィンの指揮官…そう、ユーリを探すのよ」
AK-12は頷いて、広範囲にスキャンを実行した。
「…悪い知らせです、付近で軍の信号が既に動いています」
「…だったら、尚更急がないとね。AK-12、生きてここから出たいのならこれが唯一のチャンスよ」
地図情報を見ても、感染者のスピードではないし…統率も取れている。
生き残った部隊を再集結していると考えるのが妥当だろう。
その場合、自分達が使ったステーションで連絡したら確実にバレてしまい掃討部隊がやって来るだろう。
「まだ混乱の途中かもしれないから…迅速に動けば、気づかれる前に離脱できるかもしれない…」
しかし、それは余りに都合が良すぎるのではないか?とここにいる全員がそう思っていた。
「…ペルシカ、聞こえる?」
衛生電話のバッテリーが残っているうちに、アンジェリアはペルシカに通信を試みた。
<ノイズが酷いけど…聞こえてる。状況はどう?>
「バッテリーが少ないから手短に言うけど、今はAN-94とAK-12に出会って、通信ステーションで指揮官に連絡かけてる所」
「見つけた、申請を送ったわ…繋がるといいけど」
しかし、繋がった通信からは雑音しか聞こえなかった。
「そう、そうよね…」
<アンジェ…>
待っても返事は来ない、恐らく愛想を尽かして撤退したか…恐らく死亡したか、どちらをとっても"終わり"だ。そう、確信した瞬間。
<拾いましたよ、アンジェリア>
「待って、返事が来たわ!!」
その瞬間、スピーカーに「受信した」という、声がしたのをAK-12は聞き逃さなかった。
<指揮官だわ!!聞こえる!!私はペルシカよ!!>
<えぇ…まぁ。さっき通信機を落としてしまったので、拾うのに時間が掛かかりました>
…通信機を落とした?それにしては時間がかかりすぎる様な…
<…何それ?ドンだけグズなのよ。給料を減らされたいの?…まぁ、それよりもアンジェから話があるわ>
<…アンジェ……はぁ、アンジェ……ですか>
私の名前をペルシカが出した途端。なんだか、ユーリの声がうんざりして冷たい声に切り替わった気がする…一体何故?いや、それよりも話だ。
「久しぶりね、ユーリ…さっきも話したけど、私は今、保安局の仕事で貴方に用があるの、とりあえず…今は、仲間だと思ってくれても構わないわ」
<仲間…?ちょうど良い、どうして通信に遅れたか説明しますよ>
しかし、時間が掛かったその答えは、私達を更なる絶望に引き落とした。
<さっき、現れたELIDを倒していました。貴女が使ったコーラップス液の被害者をね?>
コーラップス液の爆弾はそんなところにまで広がっていたのか?私の予想ではその辺りは軽微で済んだ筈だったのだが…
「被曝したの?」
<"装備"があったので自然治癒できる範囲ですよ。しかし…あなたは>
<────関係ない民間人まであの爆弾で巻き込むとは…名実ともにこれで、テロリストですね>
「────え、」
<────嘘…>
ペルシカは完全に放心していた。
恐らく現実を理解するまでにいろいろ考えているのだろう…私も同じ気持ちなのだから…
<貴女達、保安局が無理難題吹っかけて押し込んだこの土地に爆弾を使ったら、当然巻き込まれるのは当たり前ですよね?どうせ、目にも映らない貧乏人には構う暇がないのでしょう…>
怒りを押し殺す彼の声が反復して聞こえる。
確かに私は人類の敵になる覚悟であの爆弾を使う事を決めた。
<子供がコーラップス液の放射線を浴びると、どうなるか知ってますよね?>
「────知ってる…」
だが、私は思い返してみれば見積もりが甘いという事実を彼から突きつけられた。
<身体が崩壊に耐えきれなくなって、臓器が少しずつ無くなって…それがない事によって発生した…生命維持が出来なくなる苦しみで少しづつ苦しんでもがきながら、死んでいくんですよ?>
彼は…いや、彼こそがこのコーラップス液の恐ろしさを身をもって知っている筈だ。
<…あそこまでやって何か良い事はありましたか?エルダープレインは手に入ったんですか?>
私を責めることは筋違いだと、言う人も今後現れるかも知れない…だが、この惨状を私より近くで今見ている彼に実行役の私が堂々と言えるだろうか?
「────話を続けるわ。エルダーブレインは確保できたか分からない」
<分からない?>
この一言は、ユーリを完全に失望させてしまっただろう。
だが、私に残された時間は少ない、例え…ここで命が潰えてしまったとしても。
「────ペルシカは、今…強力な重装部隊を援軍で派遣したわ。支援要請を出せば、戦車とも渡り合える…それと、アンタの所にまだ"キャスターが往復で輸送機を送ってくれている事は知ってる…撤退ポイントさえ、確保出来れば」
<────アンジェ…貴様…その行いには、代償を払って…貰>
通信に割り込んだエゴールをAK-12が無理やり遮断した。
<エゴール…>
「そういえば…ユーリとエゴールはあなたの友人だったわね…ただ…今、彼と話す時間は私には無い…お互い最悪の状況を考えて行動しましょう。戦場じゃ、全てを救う事は出来ない…まずはグリフィンの救出を最優先、出来る事なら私達の救助も…例え、私を救いたく無いとしても…AK-12は……貴方がまた、後悔しない為にも」
今、音声だけしか伺えない彼の表情は伺うことすら出来ない…だが、なんとなく…私は彼が…少し────悲しんでいる様にも見えた。
<────ユーリ指揮官、こちらで出来る事は…出来る限りする、だから…お互いの最善の為に頑張りましょ…?それにアンジェは信頼できるから!性格が悪くても>
<────知っていた、つもりでしたよ。付き合いは長い方でしたから>
ユーリが何かしら感情的になった様な雰囲気すら感じていなかったが…きっと彼は必死で激情に駆られる自分を制御して見せたのだろう。だからこそ、強制的に通信を切断した。
本当は、最後に「私達の未来を壊す存在を倒してくれ、」と頼みたがったが…それは後になって頼む事になるかもしれない。
「────例え、それを聞き入れてくれなかったとしても」
助けは夜明けまで待つ事にしよう…私が言えた義理ではないかもしれないが…もし、私達を見捨てても、恨む事はしない…もう、何度も助けてくれた手がもう伸ばされなかったとしても…それは、私達が今までしてきた行動の結果に他ならないのだから。
その頃……
「でも、どうしようか……」
けたたましい爆音や銃声が止み、多少静かになった戦場でM4SOPMODⅡはこれからどうするべきか一人で唸っていた。
ROのコアはポケットの中に入っている。
鉄血と化したM16A1と決別したのは良いとして、いやよくはないけど。
これからは一人で行動しないといけない。
あれから探し回ったが、見当たるのは死骸ばっかりで生きている人形に誰も会えない。
「私、どこにいるんだろ……」
位置情報で自分の場所を探してみても検出できてない。
ならば、見たことある場所を見つけてそれを頼りに帰ろうとも思ったけどここがどこかわからないほど景色は様変わりしていた。
「あれは…倉庫かな?」
しばらく、身体を引きずった先に見えたのはグリフィンの倉庫だった。
「ということは、ここはグリフィンの人形がいたところだよね……」
自分の向かっている方向はとりあえず正解だと安堵しながら、倉庫の中に入る。
運が良ければ、予備の電源や素体が手に入るかもしれない。
それで、ROを復活させられるかもしれない。
「空だ……何にもない、ひどい、ひどすぎる」
倉庫の中は……空だった。求めよ、さらば与えられんではないのか。
予備電源どころか、弾薬の一発、燃料の一滴も残っていない本当に略奪されつくした後だった。
ガシャン、と駆動音が聞こえた。
「────っ」
M4SOPMODⅡは息を殺した。
この音は知っている。鉄血の行進する音だ。
なんていうことだ、ここはもう鉄血に奪い取られている。物資を奪ったのも鉄血だったのだろう。
こんな状態で動くかもわからない自分のライフルを握って、鉄血が接近するのを待つ。
「クソ……!クソ……!」
足音は少なくとも一個小隊はある。
こんな状態で勝てるのか?負けそうになる不安を感じる。
足音が近づく…近づく…そして……
「あれ?」
そして、近づいてきた足音がM4SOPMODⅡを通り過ぎて離れていく。
通り過ぎたらしい。
「た、たすかった……?ふう……」
どうやら、やり過ごせたらしい。
安堵して、ホッとした瞬間……バンっ!と銃声が鳴った。
「嘘!?」
ばれたのか?急いでM4SOPMODⅡはライフルを握りしめる。
だが、自分のところにはやってくる気配はない。
代わりに鉄血もなにやら急ぎ足で動いている。
さらに銃声、そして足音の一つが倒れた音がした。これは……鉄血が撃たれている?
「サーチ機能が復活?」
何の因果か自分のレーダー復活したらしい。
サーチで敵の人形がどこにいるか大まかであるが理解できる。
「グリフィンの人形?」
その中に鉄血だけではなく、グリフィンの人形がいた。
つまり、グリフィンの人形が鉄血に向って撃った?
まだ、仲間はここにいる?
M4SOPMODⅡはそっと倉庫から出る。
「!」
目と鼻の先に鉄血兵が見えて息を飲む。幸い、鉄血はこっちに気が付かないで背中を向けている。
撃ったと思われるグリフィンの人形は……砲弾でクレーターになった地面に隠れていた。
あれでは長く持たないだろう。
何をするべきかは分かっている。
数が不利なのだ。しかも、こちらは悲惨なほど機能が落ちている。
だから、あの人形は放っておいて頃合いを見て、あの人形から見て奥の方に行けば生き残りの人形と合流できる。
「(けど……)」
けど、これは”後悔しない”だろうか?
鉄血が嫌いなのは言うまでもないことだ。
けれど、グリフィンの人形みんなを好きであると言えば、それは違う。
彼女らに助けてもらったこともあれば、殺されかけたことだってある。恩も恨みある。
「(ROだったらどうする?)」
ポケットの中にあるRO635のコアを握りしめる。
彼女ならこう言うか、「同じ戦場に居るなら、助けなければならない」って。
昔はちょっと危ないやつだと思ってたのにな……変わるもんだ。
私はどう変わるんだろうか?
「(チャンスは1回、タイミングを見極めないと)」
AR小隊の人形はバックアップが無い。
撃たれて、動かくなったらそれで終わりだ。グリフィンの人形と違ってセカンドチャンスなんてない。
まだ、鉄血は気づいていない。
「(1…2…8…12。全部で12)」
敵の数は12。
いつもなら余裕の雑魚たち。今は運次第。
だが、ユーリ指揮官に会う前のAR小隊の戦いは運任せばっかり。
昔を思い出すいい機会だ。
「(行くぞ!!)」
その身を乗り出して、M4SOPMODⅡはライフルを構える。
そして、すぐ目の前の鉄血を撃つ。
「!?」
後ろからの銃声に気が付いた鉄血。
M4SOPMODは先に固まっていた3体に発報、続けて蹴散らした。
「撃て!」
鉄血が攻撃したが、先にM4SOPMODⅡが動いていたので銃撃は当たらず。
カウンターで撃ち返し、さらに2体倒れて…敵の残りは6。
敵はグリフィンの人形からM4SOPMODⅡに敵を切り替える。
「っ!」
制圧射撃のレーザーがM4SOPMODⅡの左肩を焼く。
今すぐ反撃しないと終わりだ、と直感が告げる。
「今度こそ運任せ!」
M4SOPMODⅡは覚悟を決めて、一瞬だけ身を乗り出し、ライフルの下に取り付けているM203グレネードランチャーを発射。
これで全員倒せたら、ラッキー。ダメだったら…?ヤバい。
ドン!!と激しい爆発音がした。
M4SOPMODⅡが慎重に状況を確認する……見えたのは6体の死骸。
「は……あははは、はは……はあ……」
M4SOPMODⅡは2度目のため息を吐いた。どうやら、ラッキーだったらしい。
「おーい、終わったよ」
クレーターに隠れているグリフィンの人形に向かって呼びかけてみた。
「ほ、ほんとですか?」
「今だけかも……今度は増援を」
「い、今行きます!」
慌てて、人形がはい出てくる。
流石に何度も死ぬ思いは勘弁したいらしい。
「助けてくれてありがとうござ……キャャあああー!?化け物!!」
「化け物!?」
這い出てきた人形はM4SOPMODⅡを見るや、いきなり金切り声を上げた。
────
───
「あー……えーっと…ごめんね?」
どうにか、Cx4に落ち着いてもらい…今はスケアクロウから見つかり辛いと所の廃墟に隠れている。
「…アナタ、本当にグリフィンですよ…ね?鉄血の信号してますよ?いえ、グリフィンも交じってるんですけど」
「何度も言ったじゃん…多分、グリフィンだよ」
まさか、信号パターン内に鉄血の信号が混在していると言われた時は自分の存在を疑った。
多分、自分が鉄血からグリフィンの人形である…Cx4を助けたんだから…多分間違って居ないだろう。
「私はM4SOPMODⅡ、AR小隊のメンバーだよ…と言っても、小隊と行動しているのは…私1人だけなんだけど…」
「わ、私は…Cx4ストーム。お、主な任務は後方支援をしていました…」
後方支援専門の人形がこの激戦区に?
「グリフィンが…向かわせられる全戦力をこの地域に送り出したので…はい、結果的にここに居ます、はい。でも、せっかくこの恐ろしい場所から逃げられる機会をその場の勢いで残っちゃって……しかも、結果あの緑色のよくわかんない爆弾に吹き飛ばされて……あー、なんで私こんなことしてるんだろ……」
「……そんな無茶苦茶な。主力は?」
「主力……はぁ。そんなもの、どこにもいませんよ……逃げたか死にました。今の私たちは搾りカスです」
一応、馬鹿な私でも分かるけど…そもそも軍がバックにいるのにそこまで気合いを入れて戦術人形を投入するメリットなんてあるだろうか?
「うん!まぁ、よかったよ!グリフィンの人形に会えて!!」
「ま、まぁ…私も味方?に合流出来て良かったと思います…えぇ、はい」
何だろう?少し、引っかかる物言いだ。
「でも、ごめん!話はもう少し後で!!」
私は急いで、チャンネルを開いて接続した。
自分と交戦した時、鉄血はスケアクロウに報告を入れようとしていた。
「運がなかったね、スケアクロウ!たかが追撃にこんなにたくさんの雑魚を使うんだ?」
<そうかしら?…ですが、私の最後の獲物に君を狩れるのなら、それは本望よ>
「じゃあ、その頭を木製に付け直しな!!案山子は木製だからこそ、効果があるんだよ!」
────
「えーっと、SOPⅡ…どうして、あなたはここに?」
長いから、呼び名はSOPⅡにしてもらった。
「うんまぁ…言葉にしたら、情けないって言われそうなんだけど…見捨てられなかったから…?でも、今は、みんな守ってみせる。それは保証するよ、やっぱり信じられない?」
上手い言葉が見当たらない…そのせいでどうでもいいことまでべらべら喋ってる…知らない人形と話すの…やっぱり苦手だな。
指揮官は何でもない様に話してたけど…どうやったらあんなに上手く話せるんだろ?
「あ、いえ。疑う事になるので…そこまでは、」
「そ、そう…あの、さっき助けたところで悪いんだけど。私、実は指揮の経験はほとんど無いんだ…多分、私の指示はアテにならないかも…」
戦略を立てて、効果的に指示をするなんて、やってみようと考えるだけでも面倒くさい。勿論、投げ出す訳にもいかないが…
「あ…そうですか、い、いえでも別に助けてくれるだけでも嬉しいですよ!?」
上手な会話も弾まず、指揮官に連絡をしようとしても、ジャミングが酷くて繋がらないらしい…
「とりあえず、M4お姉ちゃんがやってきた作戦プランや、指揮官が昔、話していた戦略を中心に思い出して作戦を立ててみる…」
「はい、期待してます!」
そんな事言われると余計困る、今から記憶を重箱の隅までほじくるかの如くメモリーを整理すると言う重労働が始まると言うのに、Cx4の期待に応えられる様な動きも求められるのだから。
「あっそ?でも、アンタが最後の獲物に私を選ぶんなら…最大の狩りの恐怖を教えてあげるよ!!」
<…別に、私は強い弱いで君を獲物にできた事を嬉しく思ったわけではありません>
<仲間達を殺し、わが主人エルダーブレインを攫おうとし、挙句にコーラップス爆弾で汚らしく汚してくれたM4A1…!!その妹を殺せる機会が私に回った事に喜んでいるんですよ…!>
「……コーラップス?何言ってんの?鉄血はお笑い芸人も専攻しているの?」
何言っているかは要領を得ないが即興のジョークにしてはそれなりに良くできていると思う、そもそもそんな事をする理由がM4お姉ちゃんにはあるまい。
「いえ、でも…その情報は間違いありません」
「…は?」
しかし、その内心嘲笑っていた嘲笑はすぐさま自分にオウム返しされてしまった。
「…どうして、鉄血の話に乗るのよ?…どうして!!」
気づけば、私はCx4の胸ぐらを掴んでいた。
「…コーラップス液を使ったグループの中にAR小隊の人形がいるって、味方だと言っていた人から教えられたんです。…それで、それをさせないために協力したんですけど、結局その爆弾が使われて……!さっき吹き飛ばされた緑の爆発はその、コーラップス爆弾でその、そのせいで…今に至るんです」
「え、M4が……?そんな…」
私はCx4を掴んでいる為の力を思わず離してしまい地べたに座り込んでしまった。
あのスケアクロウが言った言葉を虚言なのではなく、実際に被害に遭ったCx4がそれを肯定してしまい…それが事実と同等の価値を示してしまった。
────暫くして
「…おはよう。まぁ、何時か気にしないけど」
<別に、業務での挨拶もおはようでも構わないので>
こうやって鉄血と煽り抜きで、普通に話せるなんて…普段の私には想像もつかなかった。
「交渉しよう。今、私達に必要なのは…」
<今…君と手を組む価値がないでしょう?…特に君とは>
喜ばしい言葉ではないが…予想通りの返答だ。
さて、ここからが自分の立てた見立てが上手く相手に響くか、だが…
「…今はそうだろうね。でも、正直軍と戦って後にアンタ達が私達とも連戦して生き残れる体力がないから、私たちの物資をくすねた…でしょ?」
<……>
スケアクロウが目くじらを立てた、よし…鉄血がどのくらいかは分からないが少なくとも大幅に消耗しているのは間違いではなさそうだ。
「まぁ、そんなに欲しいものもないんだけど…でも、どうしても返して欲しいものがあるんだ。それを返してくれればこっちも干渉しないし、物資を好きに使ってくれても構わない」
<────成る程、で?君は何を返して欲しいのですか?>
よしっ!!と内心私は心の中でガッツポーズを決めた、M4お姉ちゃんの事はショックだったけど、あれほど私を目の敵にしていたスケアクロウから交渉を結ぶ事ができた事は素直に喜ぶ事ができた。
「グリフィンの予備電源…それを返して欲しいの」
M4SOPMODⅡが鉄血と交渉を始めていたころ、404小隊はなるべくグリフィンの人形を装いながら後方に備えたグリフィンの野戦基地にたどり着いていた。
野戦基地と言っても…テントの中に何が使えるかもわからない物資が雑に積み上げられ、負傷しうめき声をあげながら野ざらしにされた人形のたちが並べられているだけ。
それでも、404小隊は彼女たちに賭けるしかなかった。
「負傷者です!!」
「あなたたち!?404小隊ですか!?」
アテが外れた、野戦基地にはカリーナがいた。
自分たちを知っている、カリーナに会った。
「……お願いします。彼女を助けて、ください」
ごまかしはきかない。
HK416が自分から、帽子を脱いで頭を下げた。
「彼女……ですか?」
HK416がG11とUMP9に抱えられた人形に視線を移した。
「……っ、くっ……」
「45姉……」
「彼女が……UMP45さん、なんですか?」
うめき声をあげる人形は損壊が激しく、カリーナは何度か目にしたUMP45とは言われるまで気づけなかった。
「助けて欲しいのは、UMP45さんですか?」
「はい。無理を話しているのは、わかっています。ですが……」
「分かりました。指揮官でしたら、あなた達を見捨てないでしょう……けど、何分この状態ですので」
カリーナがこの状態というのは、床で寝転がり、並べられているけが人のことをことを指している。
誰もかれもがひどい状況だ。
彼女らを放って、UMP45を優先できないということだろう。
「それと……実は」
「それと?」
「カリーナ!まずいことになった!」
「AKS-74Uさん?どうしました!?」
カリーナが言いかけたころ、AKS-74Uが血相を変えた様子でここにやってきた。
遊撃部隊が戦闘終了して、HK416は倒した兵士の死体をみて少し眉間に皺を寄せた。
「あの死なない敵がこっちに来た!」
「なっ!?救援行動は一時中止させます!守りを固めないと!」
カリーナは血相を変える。
そして、戦力の集中を判断させる。
「ああもう!9A91が待っているっていうのに!!」
だが、AKS-74uも文句を言いながら土嚢を運んで、守りの準備を固めた。
まだ、鉄血がここに?それとも軍隊なのか!?
「申し訳ありません!404小隊の皆さんもこの守りに協力してください!」
「了解」
「UMP45さんはこっちで何とかしてみます!」
UMP45をカリーナに任せて、HK416達はその”死なない敵”を倒しに向かった。
<コンタ────クト!白い────出た────!>
<まって────これ感────も────一緒に?>
前に進むにつれて機能しなかった無線から声が聞こえる。
まるで、放射線の電磁波みたいな不具合だ。
<離せ!いやだっ!せっかくここまで────あああっ!?こいつっ!噛みやがった!手を!?いやだ!いやだああっ!!>
<銃弾がっ!?だめだ!やっぱり効かないなんて!>
<逃げろ!撤退だ!!>
<戻って!置いてかないで!?ぎゃあああああ!!>
<ゴおおおおっ!!>
近づくにつれて、無線から鮮明にそして、阿鼻叫喚の叫び声が聞こえてきた。
しかも、怖気の走る叫び声。
これが、死なない敵!?奴らに何をされている!?
「アイツだ!」
「(こいつが……)」
AKS-74uが”死なない敵”を指さした。
目の前に現れた真っ白な敵。
見たことない装備、見たことない重火器、見たことない信号を発する敵が、あの”死なない敵”か。
「来たっ!」
ライフルに取り付けたホロサイトの映す赤い照準に敵が入り込んだ瞬間、HK416は思い切ってトリガーを引き絞った。
何発もの弾丸が、白い敵の顔面に命中し、地面に倒れた。
「死んだ……いや、これは!?」
だが、地面に倒れた敵が再び起き上がる。
死なない敵というのは、こういうことか!?
もう一度、HK416は銃撃を食らわせ、たたき伏せる。
だが、白い敵はまた立ち上がる。
「どうなってるの!?」
「ゾンビ!?ゾンビ!?ホントにいたんだよ!?」
UMP9も信じがたい光景に、戦慄を覚えた。
G11なんて、映画のゾンビに重ねている。
「この野郎!」
HK416はやむを得ず銃身下のグレネードランチャーを発射。
発射されたグレネードランチャーは胴体を爆散させて、ようやく動かなくなった。
「さすがに胴体が無くなれば黙るか……」
HK416は死体を調べる。
「…(こいつら、今まで見た戦術人形とは作りが全然違う)」
配線があるから、多分人形だと思う。
ただ、配線の作り込みは全く意味不明な技術で繋がっているし、流いている人工血液だと思われる血液や肉の質はまるで本物同然だ。こんな加工技術……全く心当たりがない。
「どう?やっぱりアンタでも何がなんだか分からないって感じ?」
「えぇ…これじゃ探りようもないわ」
作りが分からないと言う事は効果的な攻撃をできる機関が分からないと言う事にも繋がる。
私も敵の色々な箇所を攻撃して試してみたが…どれが弱点に見えると言う反応すらも得られないかった。
「はは、随分な意見じゃない。でも、さっきから見てたけど…アレを倒すなんて、アンタは中々使えそうで安心したよ」
「…そう、なら…私を信用する?」
まぁ、確かに撃たれてもなんの反応のないまま、立ち上がってくるなんて"死なない"と判断するには十分かもしれない。
「確かにアンタはエリート人形だ。顔もお子様っぽかったからね。まぁ、油断したタイミングを狙って背中を撃つデザインとしては言うことなし」
「……随分な物言いね」
「爆弾でアタシら巻き添えにしたアンタらにはなかなかお似合いだと思うけど?」
知っていたのか。
いや、知らないはずはないか。
「今回は絶対に背中から撃たない。約束するわ」
「……約束ねえ。嘘をつける隊長を持っておいて、信用しろって?それとも、そのカワイイ顔でみんな騙せたから、今日も騙せると思ってたり?」
顔が子供じみた人形は確かに鑑賞用人形の特徴だ。
人が何かしら見た目でどのタイプか判断する様に人形も見た目で何かを判断した…と考えられても不思議ではないだろう。
この敵意はAKS-74uだけが向けてくるものではないということだろう。
「……アンタに申し開きするスキルで言えば……正直、お飾り人形の方が楽だったかもしれないわね。でも、結局は自分でやらなければならない時は必ずやってくる。それは置いといて、この部隊…主力部隊にしては…」
耐久力は驚異の一言だが、戦闘力は大して強くはない。
確かに普通の倒れ方をしないから、心理的恐怖を煽るのは理解するがそれでも倒れ方が理解出来る。
この寄せ集め部隊でも倒せるくらいには苦労しない。
「これで死なない敵なんて、宣うならここには腰抜けばかりね」
「いや、コイツらは下っ端だね。本当にヤバい奴はこの後に控えているんだ、そいがはどうやっても殺せないし…しかも、無茶苦茶強い。私が色々やってみての感想だけど」
「…なにそれ、殺せない?」
何をやっても殺せない?戦力不足だから、そもそも取れる手段の少なさか…それとも、本当に?
「じゃあなんでこんな雑魚を残す必要が?その倒せない奴だけで十分じゃないの?」
「さぁね、私がそいつと戦ったところは汚染があって、よりヤバい所だったからね」
「汚染って?」
「そりゃあ、E.L.I.Dよ。あんたもさっきの、叫び声を無線で聞いたでしょ?連中も怪物に手間取っているじゃない?…でも、それって大事な事?」
私が不自然だと言いたい理由はそんな強すぎる奴を生産出来るのなら、ここにいる様な雑魚を使う理由が全く分からないからだ。
AK-74uは強い上に倒せないとまで断言した。
その時点でこの雑魚を作るよりもその強い奴を優先して開発した方が費用対効果があるはず…なぜ、開発側はそのタイプを作る必要が?
「私達が知らない、未知のテクノロジーを持ってる奴よ?こんな意味の無いことする必要がある?もう少し、ここで調査をした方が────」
「今それを考える必要があるか!あのね、9A91は今でも、私達を待っている!アンタらの爆弾が吹き飛ばして!散り散りになった仲間もみんな!!」
だからといってこの場を離れる方が危険すぎる。
各個撃破されない様にしない為には敵の本番に常に備える必要があるはずだ。
「今は何をしても危険だ!ここで待っていても結局あのヤバい奴が来た時点でぶっ殺されて、それで終わりなんだよ!グズグズしている暇はない!だから、私達には時間が必要なんだよ!仲間を救う時間がね!!」
「こんな所で意地張らないでよ!アンタは戦術人形なんだから冷静に動いて、指示に従いなさい!!」
「そうかい!アンタに常識を期待したこっちがバカだった!やってみなよ!?指揮官に命令させて見せろ!そうすれば私は指揮には従うよ!!」
「────ああいえばこう言う!!」
仲間の事になったら直ぐにそうやって!!今のグリフィンにはこんなやつばかりなのか!?
「ハン!!どうせアタシはアンタじゃないから、仲間を切り捨てて生き残ろうなんて思わないよ!!」
「アンタ、今なんて言った!!」
UMP9がAK-74uに詰め寄り怒鳴っていた。
みんな冷静になれば、こんなことで揉めることはなかった。
だが、この絶望的で限界の状況で、冷静になれるわけがなく怒鳴りあっている。
けど、今は冷静ではない。なぜ自分の言う事を聞かないのか?効率よく動く事を考えられないのか?それがストレスに繋がって怒鳴ってしまった
「どうせ、アンタは仲間じゃないんでしょ?404小隊!」
「…だから、何よ?アンタに何がわかる!グリフィンの役立たず!」
機密事項保持とかそんな事を考える余裕はなく、AKS-74uの襟を掴んでいた。
「あぁそうかい!!そんな態度だからコーラップス液で弱い奴や仲間をゴミの様に扱えるんだな!!よく分かった、結局お前はプロだとイキっていてもその程度なんだよ!!人殺し!!」
「────アンタッ!!!!!」
やっぱり、カリーナが言っていた言葉が嘘じゃなかった。
やっぱり、私は取り返しのつかない事してしまった、パニックに陥りたくなくてそれを抑えるには怒鳴り、力に身を任せるしかないと私は考えてしまっていた。
気づけば、私はAK-74uを引っ叩き、泥の大地に押し倒して襟でなくて首を両手で掴んで締めていた。
もといた2人の所に銃声が響き渡る。
「────ここまでだね、416!!」
「────分かってるわよ!!」
私は乱暴にAK-74uに転がされて、立ち上がると銃を手にとり撃ってきた敵兵士に妖精を攻撃させない為に制圧射撃をする。
「────あ、アイツだ!!敵の主力!!」
「────まさか!!こ、コイツは!!」
そいつは1度ユーリ指揮官が護送任務をする際に謎の敵集団が使用してきたロボットにそっくり…
「ら、ライノ!?」
いや、つけているアタッチメントが違うだけで同じ存在だった。
「こいつらの行動を阻止するだけでいい!!動ける人形を回しなさい!!」
確かにコイツは…強すぎる敵だった記憶がある。
「くそっ…グリフィンはいつでも足を引っ張るのね…記憶も身体も…!!それに私だって、冷血な奴は大嫌いよ!!」