たったひとつの願い   作:Jget

42 / 92
信頼

「クソッ…弾幕っ!」

 

突如現れたライノを思わせる白い巨大なロボットが現れ、HK416たちは応戦していた。

 

「一度戦った、相手とはいえ…」

 

強敵で自分の力で倒せたものだったとは言い難い結果だった。

 

一度あのデカブツによく似た、ロボットと戦った時は指揮官とAK-12がいた、あの軍用装備の熱線がデカブツに弱点を晒し出させたのだが…そんな武装を私は今、保有していない。

 

「ミサイル!来るよ!!416!!」

「────チッ!」

 

そのミサイルを撃つ砲身が自分に向けられたのを見て、急いで遮蔽物で固定していたライフルを回収して、その場から全力で逃げ出した。

 

数秒後、自分が隠れていた遮蔽物は更地に置き換わっていた。

 

「くそっ……!このっ!」

 

私も反撃でフルオート射撃で白いデカブツに反撃を試みるも…

 

「攻撃が効かない?────だったら!」

 

まるで、攻撃が通用しないと嘲笑うかの様に前進をやめない。

あの白い兵士ですら撃たれたらちゃんと倒れたというのに!!

 

「くたばれ!!」

 

デカブツに向けて、アンダーレールに取り付けたM203の装填したグレネードランチャーの榴弾が気の抜ける発射音と共に発射された。

ドン!と爆発を鳴り響かせてグレネードは足元に命中、爆発して弾け飛んだ破片がデカブツに巻き上がる。

 

「ダメか…!!」

 

直撃だった、筈だが当てたと思われたところには傷一つ付いていない。

それどころか意味不明なところに爆発痕が発生している、

 

「こんな時に…!!」

 

通信も来た。

発信してきたのは、UMP9らしい。

何かしら報告することでもあるのか?

 

「何よ!!」

<遠隔通信で45姉の診断をしてくれたシーア達によると、今すぐここから連れ出さないと行けないみたい!>

 

それはダメだ

。私達はこのデカブツのせいで何度も後退を余儀なくされて飛行場が残っている基地まで敵に追い込まれている状況だ。

 

「それに、さっきSAMをみたのよ!」

<SAM!?なんで地対空兵器を!?>

「知らないわよ!こんな時に飛ばしたら打ち落とされて落下死が関の山ね────!」

 

敵兵の銃撃が遮蔽物の車を貫通して、しばらく後、額の右側から人工血液が流れてくる感触が伝わってくる。

 

<それまずいじゃん!!>

「…今は、指揮官が問題のデカブツを対処する為の援軍を送ってくれるらしいけど…いつになるかは…とりあえず、貴女達は45を守る事に集中して」

 

マガジンポーチから抜いたマガジンは空だった。

そのマガジンを置き、弾薬が入っているマガジンを改めて探す。

 

<分かった、でも416…>

 

「何よ!これでも忙しいの!」

<45姉が作った借りってもう返したって…>

 

その通りだ、恐らくアイツもそう言っていた筈だ。

 

<という事は…もう、さよならする時間なの?>

「…」

 

私が欲しいのは、自分の存在価値だ。

その証明をする事が私の目的だ。

 

「まだよ。まずここで生きて帰れなければ意味が無い」

 

ねぼすけな奴、頭の先から爪先まで家族、いつもムカつく事を言ってくる隊長殿、みんな面倒が見きれないほど憎たらしいが、今は彼女達が必要である事には変わりがない。

 

「それに…ユーリ指揮官もいるし、グリフィンのみんなもいる。死なない様に気を付ければまた会えるわよ」

 

指揮官は頼りになるのは当然として、最初は頼りないと感じていたグリフィンのメンバーも生き残っていて……まあ、その今回も助けられた。正直こんな孤立無援な状況でよく粘っている。

 

「あんた等はUMP45のことでも気にしてなさい、私はキチンと仕事をしてグリフィンの輸送船のチケット代を稼ぐから」

 

ブチっと通信を切った。もっと困惑する顔を見たかったがそこまで話す事は出来ない様だ。

 

「それに…どうせ来ても役に立たないわよ」

 

再び近づいてきた白いデカブツがこちらに気づいた。

 

「(クソッ!なんだあのめちゃくちゃな弾道は!?どうやったら、弾丸をまっすぐに飛ばしてあの装甲を撃ち抜ける!?)」

 

先程から、攻撃して気づいた事だが…このロボットは攻撃をしても、攻撃が変な方向に飛びにダメージそのものが入らないのだ。

 

つまり、コイツは殺せないのではなく、殺すための方法が妨害されているのだ。

 

「無駄弾をつかうのはやめな。あのシールドのせいで攻撃が変な方向に行っちゃう、アンタのグレネードでも質量が足りないよ。まぁ、でもそのグレネードは脅威だと思われてるらしいね、アイツの注意がアンタに向けられているお陰で、反撃はできてるが」

「それは、どういたしまして」

 

HK416に向かってきた雑兵を自分の力で対処する。

こいつの倒し方はだんだんわかってきた。こいつは頭に銃弾を撃つのではなく、腹部に4、5発撃てばいい。

理屈は知らないが、それで何とかなる。

しかし、周りの取り巻きはそのシールドを持っていないので倒す事ができる、もし集団でこんなシールドを持つ奴らが大量に現れたらそれこそ、地獄だ。

 

「416…さっきの話なんだけどさ、怒鳴って悪かった。…アンタは本当に強いよ」

「戦場では、命令を聞くものよ。聞かなきゃいけない……」

 

正統な評価を聞いたのはいつぶりだろうか?こんな絶望的な状況でなければもう少し、違う態度を取っていただろう。

 

「……どんなに嫌な、命令でもね。それに、命令だからって許されるわけじゃない。アンタも指揮官に言われたやるべき事をすればいい」

「…で、416その指揮官からの命令は覚えてる?」

「敵が基地内に入ってしまった以上、引きつけて撤退のポイントを探られない様にする」

 

そうだ、ここで撤退ポイントを守らなければ全員が確実に死ぬ。

 

「でも、それは指揮官の"支援"がそれだけこの基地を巻き込んででも価値があるって事、だから別にここだけを死守する必要は────」

「その支援はいつ来るかわからない。ただでさえ、私たちの為に何とか削りを入れている指揮官の方がここよりマズい状況なんでしょ?だとしたらあまり期待しない方がいいと思うわよ」

 

それに…このシールドがある以上、アテにできるかどうか?

その信憑性は低い。

 

「でも、少なくとも私達じゃ…あのデカブツ絶対に勝てない。そうでしょう?」

「あのねぇ…さっきは突っ込んで仲間を助けに行こうとしたクセに今はまた縮こまるなんてどういう了見よ!アンタ、本当にまともな戦術人形なの!?」

 

AKS-74uがHK416を狙っていた、兵士を倒した。

 

「アドバイスしただけなのに、どうしてカッカするかね…まぁ、アンタがそれでいいなら付き合うけどさ…でも、もう少しは指揮官の事信用したら?指揮モジュールがない以上は効率悪いだけだし」

 

その時、通信が入った。

指揮官からだ。

 

「よぉし、来たな」

 

ガッツポーズをするAKS-74uに呆れながら、通話ボタンを押す。

 

「指揮官、このままずっと立て篭て籠るわけにはいかないのよ!今、阻止しているけど、いつ突破されてもおかしくないわ!」

 

ここを突破されてしまえば、飛行場の位置もバレてしまう着陸できない状況にされてしまったら一貫の終わりなのだ。

 

<そうか、HK416。だが、よくやった。このまま持たせればなんとかなる。"支援"が到着すれば、その障壁も破れる筈だ!>

「だったら、その支援を早くしてください!!」

 

バリケードが吹き飛ばされた。

目の前にあの白いデカブツがこちらを見つめている。

 

────────

────

 

ギィイン!とけたたましい駆動音が鳴る。

足に絡み付いてきた、ELIDを下腿部前縁の装甲に取り付けられたチェーンソーで轢断した音だ。

 

<ですが、指揮官。その"支援"は本当にあのデカブツをどうにかできるの!?>

 

勿論、実は自分の所にもそのデカブツが現れたから、そいつで試してみたから言える、アレは効果的面だと。

 

<…あ、いや、その…すみません。信じていいかすら分かんなくて>

『ああ、そうかい』

 

状況が状況だ。

誰が味方すらも、誰にも分かるわけがない。

ユーリだって、このHK416が口封じの為にアンジェリアが用意した刺客かも知れないという、プランまで脳内に立ててしまっている。

 

『もしも…この"支援"で、あのデカブツをどうにか出来たら…私の事を信用して欲しいな。私は君の能力を買って手伝う事を約束する事にした。416、君はどうかな?』

<…任務に集中します>

 

恐らく彼女は今、半信半疑だろう。

 

『俺もそう思ってたよ』

 

大きく流線を描いて、HK416達が防衛している基地に向かって、火の玉が飛んでいきその火の玉が地上にぶつかると…ドカン!!と耳が千切れそうな爆発音が響きわたる。

 

『うおっ…!』

 

ELIDの首を端折り、そのまま後頭部にP226の弾薬を撃ち込んでいたタイミングで、神の雷が堕ちた思える爆発の衝撃を装甲越しから感じ取る。

 

<重装部隊!到着しました!!>

 

何にせよ、間に合ってよかった…。

しかし、低体温症でアーキテクトが打った対空砲を遥かに超える砲撃音…

 

「この破壊力と音量。恐らくはTOWミサイルだろうな」

 

アメリカ製の対戦車ミサイル砲BGM-71の懐かしい破壊音で察しがついた。

先ほどもそのTOWの破壊力のおかげで巨大ロボットのシールドを衝撃だけでヒビを入れやがった。

 

『今頃、HK416はビビってるだろうな。しかし、ペルシカさんめ…なんてもの作ってくれたんだ』

 

こんなものをグリフィンが正式に持てるようになったら、民間軍事会社としてのパワーバランスがめちゃくちゃになるだろう。

あの公聴会の事件で書記長を暗殺するクメレンタが持ち出した迫撃砲部隊…あれをクルーガーがとやかく言わなかったのは自分たちもこれを持っていたからか?

 

『だが、今はこの様な力にすら縋らなければならない状況…』

 

でなければ、我々に待つのは死あるのみだろう。

その事態な指揮官である自分が絶対に避けなければならない話だ。

 

俺は軍事顧問で雇われる筈だった。

そうだったらどれだけ、この爆発を喜んでいられたか?むずかしい。

これでクルーガーを牢屋にぶち込めると思ったんだが、それで嬉しいわけでもないか。

 

『ぬぅ…』

 

どこに向けているかすらわからない、釈然とした思いを感じながらもHK416に通信を入れる。

 

『カリーナ、M82A1がパイソンを見つけた。彼女に支援を……数で攻め込まれて危険らしい』

<分かりました!!指揮官様!どんどん吹き飛ばしちゃいますよ!>

 

この地を更地にしなければそれが一番ぼろ儲けだろう…いや、こんな事言ったら多分引かれるな。

…面白いとは思うが

 

<指揮官、416さんと救出部隊がパイソンの部隊に合流しました。どうやら、敵のボスらしき姿があると…報告を受けました。画像を送ります>

『これは…まさか』

 

パイソンの部隊と合流した、HK416の画像を見て…正直かなり驚いている。

 

『…よく似ているな、M4A1(レイラ)に』

 

瓜二つ…とまではいかないが、髪の色や瞳、フェイスラインがM4A1に似ている、こんな偶然があり得るのか?

 

『考えるのは後にしよう』

────そんな事ばかりやってるからいつもお前は話の蚊帳の外に放り出されるんだよ!

『何だ?急に』

 

よく聞き覚えある声が聞こえた、しかしその声の主はもう死んでいる。

 

『放っておくなとでも言いたいのか?この問題を?』

 

まぁ、確かに戦闘は戦闘で他の事には余り考えを入れていないせいで、よく仲間達との会話がちぐはぐになった、苦い思い出はあるが…

 

『HK416か…』

 

だが、その雑念を切り払えと言わんばかりに繋がったHK416の通信と送られた。

彼女はM16A1と因縁があるらしいが、M4A1と比較的仲良くやってくれている。

M4A1……レイラの魅力は尽きないが、その魅力のどれに彼女は仲良くしようと思わせたのか。

 

『雑念、増えたな』

<何か?>

『いいや、なんでも』

<拠点に対する攻撃が続いています>

 

しかも、更に多くの敵を投入してきたらしい。HK416の報告によると全く動いていないらしいが、どう見てもいかつい武器を所持している以上、警戒する必要があるだろう。

 

<先程の重装部隊…?でしたっけ?その支援が必要です、問題ないでしょうか?>

 

さっきまでのHK416の疑いまじりの声から次を急かすように、直線で射るような声に切り替わっていた。

 

『…フッ』

<今、笑ったでしょ!?>

 

いや、何だか副官の様に振るまい、やる気を出しているHK416の態度が何だかんだ面白くなってしまったのだ。

 

『悪い悪い、いい感じに副官らしくなったと思ってね。ある知り合いを思い出したよ。HK416』

<それが誰かは聞かないでおきましょう…すぐに、私が必要不可欠な存在だと思い知りますよ>

 

どうも、前の部下のヴァレリアに似ている。

トーンを抑え気味でHK416が返答した、怒っているのか…それとも照れて…いや、無いな。

何故から、それは無い…と全力で肯定出来る感覚が自分の中にあった。

 

<どこで重装部隊を手に入れたか、知りませんが…今後の戦闘でもこれは必要不可欠な存在となるでしょう。適切に利用して、敵を全滅してください>

『…あいつら、自分の立場を覚えているのだろうか?』

 

あのコーラップ兵器を使った人形がそこまで要求できるのはあきれるのを通り越して尊敬を覚えた。

それとも、グリフィンに入ってからの自分は今も昔も、こう…軽く見られる素養がでもあるのだろうか?

 

すさまじい咆哮と足音が近づきユーリはそちらに意識を向ける。

 

『だけど、それを考えるのは少し後になりそうだな…』

 

化け物と勘違いする唸り声が大地を少し撫でる。それと同時に緑色の霧をかき分ける様に鋭い、突風が大きい旋風を巻き起こした。

 

────

───

 

<グリフィンのM4SOPMODⅡ、今なんて言いました?>

「予備電源だよ…それを返して欲しいの」

 

鉄血のエリート、スケアクロウはM4SOPMODⅡの交渉条件の内容を聞き返してきた。

私は物資を"融通してやる"、ことの条件に部品の1つとこれから互いに干渉しない事を条件を提案した。

 

「予備電源は私1人で取りに行く…それに、武器は持っていかない。分かるでしょ?私がいないと彼女は行動が大きく制限される事を」

<成る程…それでは、私がその隙にあの小娘を八つ裂きにしたらどうするつもりですか?>

 

それからこのCX4を守れる手段なんて、私は持っていない!

笑えない冗談は見た目だけにしろよ!

 

「そうしたら、素手でアンタを殺す。その汚いマスクごとね!!」

 

一般の人形より戦闘能力が低いビット頼りのスケアクロウの力なんてたかが知れている。

それに私は"実際に"素手でスケアクロウを殺したこともあるし。

 

<…本当にバッテリーが欲しいのなら、あなたの会得した地形データをこちらに引き渡しなさい。時間はないから急ぎなさい軍に見つかる前にね>

 

とりあえず脅したのは上手くいったかもしれない。

彼女から、捨て台詞の様な通信の切り方をされた

 

 

────

 

「じゃあ、交換しに行ってくるね」

「え!?本当に行くんですか!?」

 

私はスケアクロウから予備電源を受け取る旨の話をした、案の定その話を聞いたCx4は驚いていた。

 

「寧ろ、今がチャンスなんだよ。鉄血にも私達にも、多分…みんなコーラップス液のせいでまだ混乱してるはず、鉄血にもこれ以上トラブルを増やしたく無いと言う思いが強そうだし…今なら交渉をより有利に進められるんだよ!」

 

正直、M4SOPMODⅡは馬鹿だ、馬鹿だと周りに散々言われた事が悔しかった。だから、いろいろ聞きかじったり本を読んでいた。

うろ覚えの知識がなんだかんだ役に立ったのは努力が無駄になった事がなくて嬉しかった。

 

「だけど、鉄血も…私達の様に仲間の為に何かするの?」

「多分するよ、私達とはちょっと違うアプローチだけど」

 

恐らく、その違いがお互いが「仲間の事で」見下している理由のひとつかもしれないと思ったのはもう少し後だった。

 

「あはは…鉄血をいたぶっていた時に…分かっていたり…とか?あはは…ごめんなさい、私…元々は戦いのために作られた訳じゃないので、危機感足りてませんよね?ダメだなぁ…ほんと私」

 

多分、今日の出来事が無いとCX4の言いたいことはまるで理解できなかったろう。

 

「本当にそうかな…?私は…戦いや戦場しか知らなかったら、今でこそこうやって活躍できてるかも知れないけど、いざこの戦い方が終わったら…私なんかよりCx4の方が凄いかも知れないよ?」

 

そこまで言って、私はハッと目を見開いていた…どうして私は今、こんなことを…?

 

「ご、ごめん…今は鉄血と交渉しにいかないとね!ちょっと待ってて…!」

 

そそくさと私はスケアクロウがいると思った地点に向かった。

 

 

────20分後

 

M4SOPMODⅡは動きづらい身体をどうにかして稼働させ、戦場を駆け抜けた。

 

 

「スケアクロウ!!いる!?」

 

私がスケアクロウの名前を呼ぶと、どこからともなくダイナゲートを連れたスケアクロウが現れた。

 

「おや、お仲間はどうしたのかしら?まさか、馬鹿正直に約束を守ったと?」

「そうだよ、ここにいるのは私とアンタの2人だけ」

 

多分、2人しかいないのはスケアクロウも承知のはずだ、だとしたらCx4を巻き込んで行動はできない、

 

 

「武器は?」

「持ってると思う?」

 

どちらでも恐らく変わらないだろう。

そう思って武器はワザと持っていかなかった、正直な方が相手は安心して交渉にやる気を持ってくれると思ったから。

 

「イかれてるわね、M4SOPMODⅡ」

 

言ってろ言ってろ!

それに私の本当にイかれている所をコイツに見せるつもりはないし!

 

「これが、私が移動したときにマッピングした地形データだよ」

「……」

 

スケアクロウはデータを確認した後に、何も言わずに手を振った。

 

「ダイナゲート?」

 

すると、後ろにいたダイナゲートがケースを取り出した。

 

「……どうぞ、お望みの予備電源です」

「何に使うとか聞かないの?…私はアンタの仇の妹だよ」

 

いや、私こそ…何を聞いている?

仇の妹は言わないつもりだったのに、自然に…ポロリと零れ落ちた。

しかし、そんなことどうでもいいかの様にスケアクロウは振り向いて去っていった。そんな私の事は、どうでもいいのだろうか?

 

「これで終わりなの?」

 

スケアクロウの姿は消えている。

M4SOPMODⅡはダイナゲートを捕まえて、ケースの中身を確認した。

 

「よかった。あった…」

 

中に入っているのは確かに予備電源だった。

私だって本当はこんな事したくなかったが…背に腹は変えられない、今はただ約束が履行されて前段階が整った事を良かったと思うしかないだろう。

 

<M4SOPMODⅡ!鉄血が引いていきます!交渉は成功したんですか!?>

 

Cx4の報告を聞いて、必要なものが手に入ったと答えた。

 

<急いで!軍が包囲を始めています!私たちの場所がばれたの!?と、とにかく!M4SOPMODⅡ!!安全なルートを探して、鉄血部隊の防衛拠点を避けて!>

「今、戻るよ…プランは私が考える」

 

釈然としない気持ちのまま、私は急いで帰路に着いた。

 

「ここまで来て…もう、誰にも死なせるわけには行かない!!」

 

だが、やる事は決まっている…私は、私の大切なみんなを守ってみせる!!

 

「(もう一度、地図を見ろ!M4SOPMODⅡ!!M4と指揮官の指揮を思い出して!!)」

 

今から、私は何をすればいい!?

それを考え、理解する事が出来なければ、仲間の命を預かる資格は…ない。

 

「…これは?この軍隊の動きって……」

 

確証はない、思い至ることがあるだけだ。

正直、イチかバチかだ。

M4SOPMODⅡは地面に転がっている軍用人形の残骸と接続する。

 

<この無線が聞こえたのなら、直ちに指定した場所に合流しろ……繰り返す、この無線が聞こえたなら>

 

運がいい!

軍隊の将校が兵士を集める無線を流している!私がそれを聞いてるのにもまだ気が付かれてない!

つまりこれは、私たちが見つかったんじゃなくて単に再集結しているだけか!!

 

「希望が見えてきた!」

 

────10分後

 

「ようやく、戻ってきた!!M4SOPMODⅡ!」

 

「ごめんね。遅くなった!私はM4お姉ちゃんじゃないから、効率的な指揮はできないけど、やることは考えてきた。そんな複雑なことじゃないから誰でも出来るよ。必要なのは"もし"と"なら"のキーワードで────」

 

しかし、一番大切なのはこの作戦をCx4が受け入れてくれるかどうか…

 

「…うんうん────って、ええー!?M4SOPMODⅡ!!頭の中も大丈夫ですか!?」

「……うぐ」

 

そう言う反応すると思ったし、私も指揮官に言われた時、そんな思いをした。

でも、実際やらないといけない立場になると、指揮官の苦労も少しはわかってくる。

 

「それは……うん、私は見た目からして正常じゃないかも知れないけど、でもこれは聞き間違いじゃないよ」

 

私はちょっと昔の過去ログを開いた。

 

「これは、ユーリ指揮官のある提案なら活用する作戦なんだけど…」

 

この作戦はまず、ユーリ指揮官はあの時、自分の方に引き寄せる理由は

 

1.第三勢力に元々の敵に仲間だと思わせる、そうする事で相手を混乱させる

2.そもそもの敵に、それが仲間だと思わせる事でその敵からの攻撃を防ぐ

 

そして、ここからが私のM4SOPMODⅡのアレンジだ

 

「私は鉄血の信号を半分以上持ってる、軍の目標が鉄血だから私の方に向きやすい。そしたら、軍を引きつけられる。その間にCx4は…」

 

地図を指して、

 

「この拠点にむかって……安全を確保」

 

まず、一番重要なのはCx4の安全だ。

 

「私は良いですけど、M4SOPMODⅡ…鉄血の管轄エリアに入って鉄血にも狙われたりしないの?」

「多分、それよりも鉄血にとっては軍が脅威だからその損を請け負ってくれるのなら、目標を私には絞らないでしょ。たとえ、私の事が個人的に憎くても、ね」

 

まぁ、Cx4をうまくいって納得させたがこれは分の悪い都合のいい様に味方を変えた賭けという話だ。

 

「スケアクロウ…私達を殺そうとした奴の為に命を尽くすの?」

「少しだけね、今はあいつらに生きててもらった方がいいんだよ。いざって時に弾除けになる……スケアクロウも同じような理由で私に予備電源を渡したんだよ」

 

別に恩義を感じてほしくて、鉄血の為に働くわけじゃないし、あいつら鉄血も同じ事を考えているだけだろう。

 

「M4SOPMODⅡは解体するのは憎いからじゃないの?」

 

そういわれると、確かに。

自分はなんでそんなことをしていて楽しかったのか?

とはいえ、理由なんてないかもしれない・

 

「いや…うーん…どうだろう、もう憎い奴は殺しちゃったし…多分、バラバラにするのが好きなんじゃないかな?」

 

疑問形の回答…M4SOPMODⅡがどうして、この解体という行為が好きなのか、恐らく初めて疑問に思った瞬間だった。

 

「じゃあ…鉄血を殺すのが好きなんだ、どうして?」

「好きなものは好きだし…Cx4は私がこんな事をするのはやっぱり嫌い?」

「私は…」

 

人形である事で、うまく嘘をつけない以上をCx4は少し、緊張しながら正直に感想を述べる

 

「正直、M4SOPMODⅡがやる事を…間近で見たくは無いし、生きる為以外に…好き勝手に殺すのはやっぱり怖い事だと思う」

「…そうなんだ」

 

私は…Cx4がどうして怖い事だと思うのかがわからなかった。

 

「だって────それって、命の大切さが分かっていないと変わらないみたいなもので、気持ち悪いんですよ。M4SOPMODⅡさんは子供が銃を持って人殺しをしている瞬間を見た事がありますか?」

「知らないよ、別に…私はそんな奴らと…違うに、決まってるし」

 

私がバラバラにするのと子供が人殺しをするのになんの関係があるなんて…そんなに重要だろうか?

 

「…怖いですよ。まるで公園で砂遊びをするかの様に何にも悪いことしていない人をカエルで実験する様に遊んで殺すんです。最近だって、グリフィン同士でいざこざで殺し合いしたって噂もあるくらいなのに、私は…そんな奴にそんな風に殺されたくない」

「それは……」

 

M4SOPMODⅡは公聴会の件を思い出す。あの時、こっちを撃ってきた人形は誰かに同情されるよう連中じゃない。

けど、もしCx4のような人形が命令で駆り出されたらどうだ?指揮官に人形は従うものだ。

殺しが好きなわけでも戦いに自信があるわけじゃないから、街中で警備する仕事を選んでいる。

 

そんな人形が私のような人形相手に怯えるのは……多分、そうなんだろう。

バラした鉄血で遊ぶ…その光景をSTAR-15は下らないと言いたげな目で見ていた。

 

「それって、やっぱりいけない事?」

 

Cx4の目を覗き込む。

彼女はM4SOPMODⅡを見ないようにしていたが、その瞳には怯えが混じっていた。

 

「そっか…」

 

楽しんでいたのは…私だけだったのか…グリフィンのみんなはいい子で私がいっぱい敵を殺して助ければ、私を好きになってくれるはずだ。

私はCx4を助けた時に違いないと思っていた。

 

「ごめん、変なこと聞いちゃって」

 

だけど、それは自分思い違いだったらしい。…事実誰にも納得してもらえず、自分だけが納得していただけ。

 

「────よし、じゃあCx4。そっちは任せたよ。私は話した通り軍を引き付けてからそっちに行く」

 

本当はみんなに手を振ってもらって、大丈夫な様にとお祈りされる筈だと思っていた…だけど私は…そんな後ろを振り向く事すら怖くなっている。

 

「…大丈夫、大丈夫────指揮官なら」

 

震える手足が温もりを求める様にこの後の私が受けいれて貰えるかどうかの、不安を拭う様に縋るように自分を唯一受け入れてくれた人の事を考えていた。

暫く、わざと見つかる様に軍の自立人形の前を動き周り、こっちに近づいてきた。

 

「……っ」

 

 

急いでM4SOPMODⅡは折り重なっている鉄血の残骸の下に隠れて、死骸を装う。

軍用人形は注意深く調べもせず通り過ぎていく。

自分に心臓があったら恐怖で押しつぶれてたかもしれない。でも、これで…ある程度時間を稼げると確信した。

その数分後────その時、通信機が通知音を鳴らす。

 

「通信…?」

 

誰か生き残りの人形が、救援を求めてきたのかと思いきや、鉄血だった。

 

「通信なんて……何のつもり?スケアクロウ?」

<それはこちらの要件です。なぜ、私達の囮になっているのですか?>

 

再取引の話ではないらしい。

お礼でも伝える気か?こんな事で恩を感じてもらっても嬉しくない。

 

「ここぞって時に生きててほしいからだよ。何か文句あるの?」

<そう…地図を開きなさい>

 

言われた通り、マップを開くと、レーザーで数カ所の円を描いた。

 

<このまま帰っても、無様に死ぬだけよ。この辺りは警戒区域、ですから…余計な衝突を防擬態なら、印をつけた範囲に長く止まらない事ね>

 

こんな事して、鉄血は一体何の得が…

 

「次はないって言ったのはアンタでしょ?」

<…君が私達の都合のいい様に動かして自分達も長生きしようとしているのと同じようにこっちもあなた達が生きてた方が肝心な時に弾除けになるって言っているだけよ>

「お気遣いどうも案山子女」

<この後…いつか、でも絶対に決着は付けさせてもらう、君もそうしたいならせいぜい無様に生き延びる事ね>

 

通信が切られた。

 

<M4SOPMODⅡ!聞こえますか!?スケアクロウから送られた地図なんですけど!>

「…え?ああ、聞こえている。聞こえてるよ」

 

地図を改めて確認する、このルートを避けて進む事がスケアクロウの情報通りに行けば…その先は司令室だ。

そこでの物資を使えば、RO635の復活もできるかも知れない、体勢を整える事だって…

 

<結構な好条件だと、思うけど…信じていいのかな?>

「…私がスケアクロウでも、多分同じ事をする…だから、私はこの情報を信じてみようと思う、もし罠だったら、そいつらをバラ…いや、タダでは済ませないようにするよ」

 

いつも言っている言葉、どうにか飲み込んで言葉を選んでCx4に話した。

 

<わかりました…M4SOPMODⅡ、信じるよ>

「────うん、そうだね」

 

本当は一つ一つ決断する事はとっても難しくて、疲れる…でも、そう言って…「信じる」そう言われた言葉をくれただけで…私は救われた気分になった。

軍用人形の足音が遠くなる。うまく巻いたらしい。

この先を進めば、Cx4と合流できる。

 

「よし────行こう」

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。