たったひとつの願い   作:Jget

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より広く、より深く

今もなお救出待つ人形らを迎えに来た部隊は迫りくる、白い兵を迎撃していた、

その隙に破壊用の部隊が交戦を避けながら、SAMに接近する。

白い敵が来たとき、同時にこの対空兵器が現れた。

それは我先に逃げようとする鉄血の輸送機をあっけなく火の玉に変えた。

 

「あのデカブツはまだいない!」

 

対空砲を守っていた兵士を素早く倒す。

露見も恐れず好き勝手撃っていたから存在に気が付くのは容易だった。

 

「テルミットセット!!」

「起爆を!」

「────起爆!!」

 

破壊部隊がSAM装置の発射口の中に溶接ドアブリーチングに使われるテルミットの爆弾を投げ込み起爆する。

けたたましい高熱の音が耳をつんざく。

約3000℃の高熱がSAMを内部から溶かしていく。

 

「よし……これで航空機の着陸は邪魔されない!!」

 

この時点でグリフィンが果たすべき目的はほぼ達成されたと言っても過言では無い。

 

「増援!でかい奴も!」

「指揮官!砲撃支援は!?」

<重装部隊はミサイルの再装填中だ、1分で終わると言っている>

 

デカブツのグレネードランチャーが敵味方お構いなしに発射される。

 

「撤退しないの!?」

「どいつもこいつもイかれている!!」

 

しかし、白い兵士は依然としてこちらに対する攻撃は続けている。

普通なら撤退するかここで殲滅して、帰らせないために攻撃の圧を強める筈なのに…彼らはただ、"損失をした様な反応もせず"、淡々と与えられた任務を何も考えずに行動していた。

 

「はぁ…はぁ…まだいるの!?」

 

そして、また新たな敵兵士がやって来る。

あの時…自分達を震えがらせた巨大ロボットを目視で確認した。

しかも、仲間と分散してやってきた。重装部隊でどちらかを絞るしかあるまい。

 

「指揮官!重装部隊を!」

<さっきの話を聞いてなかったのか!?あと、30秒!!>

 

激しい戦闘で、HK416ですらユーリの報告を聞き逃してしまう。

 

<仕方ないな…余りこんな事はしたく無いが…な、なに!?こ、コイツは!?悪い一回切る!…装填完了はあと20秒!>

 

「し、指揮官!?」

「416!それよりもコイツを!」

 

ロボットが複数の爆発物を発射する。

 

「…ゴホッ…ゴホッ!」

「…」

 

虫のように大きな単眼がHK416達を無機質にただ道の周りにあったゴミを清掃するかのように眺める。

 

 

「くそったれ!!」

 

すぐさま、地面に落ちていた自身の銃をフルオートで発射する。

…当然、攻撃は偏向されあらぬ方向に銃弾が跳ね回る。

弾薬を撃ち尽くしてホールドオープンする、予備のマガジンを探すが見当たらない。

 

「…!!糞ガッ!!」

 

レッグホルスターに挿しているHK45を引き抜きヤケクソ混じりに引き金を引き続ける。

だが…結果は同じ、歩みを止めないままロボットは全身し続ける。

 

「…チッ、綺麗な目をしているわね」

 

目が合った…つぶらな瞳が私の不安を煽る。

自分に打開策はない、再装填が終わった報告も聞こえない…し、例え再装填が終わって砲撃をして貰っても、砲弾がたどり着くときには残った大勢の部隊か、おそらくこのデカブツにひき潰されるのがオチだろう。

 

終わったな…そう思った時だった。

 

大地を抉り取らんとすら感じる、巨大な落下と爆発は凄まじい破壊力共に巨大ロボットに背中から直撃した。

ロボットの背中は大きく焼けシールドが多少傷ついていた。付近にいた敵部隊も全部とはいかないが編隊が崩れるくらいには倒された。

自分がデータで知る限りは、この広範囲の破壊力はBGM-71にはない…

 

「…まさか」

<…AGS-30、間に合ったようだね>

「更にもう1体の重装部隊が…?嘘でしょ…だけど」

 

これなら…これなら…!

 

「回り道はいらない、そのままコイツらを突破できる」

 

BGM-71が凄まじい防御力に対する回答なら、AGS-30はバランスの良い砲撃部隊だ。

今の厄介なシールド持ちとそれを利用するかのような随伴部隊のような編成には手数も火力も頼もしく、効果的面だろう。

 

「416、今のうちに補給しな」

「…そっちは補給を終えてから言って。何ができるって?」

 

頼りにならないとばかりに物事を決めようとするHK416を見て、AKS-74uは小さくため息を吐いて、現在のHK416を指差した。

 

「武器のないアンタよりは戦えてるし、今まで楽させてもらってる、仕事をこなせない奴だとも思われたくない…世話されたくないって思いたくないなら、私達を上手く使ったと考えればいいんじゃない?幸い…こっちには頼もしい支援があるからさ」

 

AKS-74uの発言をしばらく思案した、HK416は戦場の風景を眺める。

 

 

────障壁のシールドが壊れた!!攻撃が通る!!

────随伴の兵士の分断に成功!!

────これなら、勝てるぞ!!

 

どうやら今は私が人一倍頑張らなくても良いかもしれないようだ。

 

「……確かに弾薬の補給だけの余裕はありそうね」

「飯も食ってけよ」

 

ステタース診断をしてみると、私の電力は平気だったが、エネルギー残量のバランスが悪かった。

 

────

───

 

『追加の重装部隊が間に合ってよかった。これがKCCOとの戦いに時に投入されていれば……』

 

これが投入されていれば……もっと、大勢の命を失われることはなかっただろうに。

 

『……"たられば"だな』

 

ユーリも「そうだったら」「こうなっていれば」そう思うことは無数にあるが、後悔しても今と未来は何も変わらない。

それでも、ユーリが公開するのは……彼の人生に「これが正しかった」と思えるものが本当に少ないからだろう。

 

『ここまで転化しているのは異常だ』

 

緑色のコーラップス粒子で包まれている環境で、瓦礫の山と一緒に限界を留めていない位に切り刻まれた、大型の死骸を見ながらユーリは呟いていた。

 

『(このレベルの変異体を見る事は珍しい事じゃあ…ない、だが…このレベルに至るまでの侵食速度が早すぎる、1日すら経たずにこのレベル…?妙だ)まさか…ここで巻き散らかされたコーラップス液は…まさか』

 

だとしたら、爆弾でコーラップス液は元々キチンとした…兵器として使われる予定だったのか?

 

『だとしたら…原液を介したというのか?なら、この成長速度も納得もいく…が』

 

彼女はこれを理解して使ったのか?

あの女は自分のやり方を通すなら、地球に死ねというのか?

あいつが大義のある女であることはわかる。だからといって、コレを使っていい理由はない。

もし、これで命が生き延びる理由になったとしてもこれだけの人や生き物や自然を悲しませるのならば最悪だ。最低だ。

使わせないようにできなかった俺も!使う理由になったあのKCCOも!あの爆弾を使ったアンジェリアも!

開発したやつもそうだ。

スリルとか、人類の滅亡とかそんな破滅的な考えを持っている奴にしか作れない…。

もし、自分の想像通りの話…ならばだが、いや…想像を外れてもらわないと…困る、で済めば幸運だろう。

 

『……本当に惨い国だ。このソ連は』

 

────

───

 

 

「…銃撃が止んだ?全部倒した?」

「いや、あのボスみたいのは先に離れてったよ」

「ああそう…」

 

グリフィンの特攻隊はどうにかSAMと味方を襲っていた白い部隊を排除しながら、トンプソン達がいる、施設を目指しつつ前進を続けていた、最初こそあのデカブツを初めとする、強力な火力にどうしようも無かったが、重装部隊が支援してくれたお陰で、生き残りを増やせる活路が見えてきた。

 

「敵の殲滅は時間浪費にしか、ならないけど…」

 

最後の一体であっても、死に物狂いで襲いかかるのは脅威なので結局効率が悪くても生き残りを優先してしまう。

 

「…で?指揮官と話して…なんだって?」

「えぇ、指揮官は突破口を作ってくれたわ。後は、手早く仲間を助けるだけよ」

「それも重要だが、その話だけじゃない」

 

パイソンは焦ったそうに眉を潜めた。

 

「指揮官はお前達をどう思ってるか、と聞いたんだよ。爆弾魔のHK416」

「…アンタも陽動部隊に参加していたのね」

 

感づいていたのはAKS-74uだけじゃ無かった…

 

「…私が犯人だと言えばそっちは満足なの?」

「お前が同じ立場なら、満足するか?」

「しない」

 

面向かって、パイソンに動揺せずきっぱり答えた。

暫く、パイソンは無表情だったが…何かを察した様な表情になると、ため息をついて私の肩を叩いた。

 

「…で?これから助ける拠点の仲間の状況すら、解らないのにその仲間の下調べもできないのかしら?」

「さぁな、私も爆弾で吹っ飛んだ流れ者なんだ」

「なら、把握してるやつを呼んで」

「ああ、そこにいる」

 

コルトパイソンは積みあがった死骸の山を指さした。

つまり、死んだということか。

 

HK416はこのダラダラとした状況下に苛立っていた、しかしその責任を負わせる相手もいない事を知ったのこの時、この瞬間だった…しかし、それでも納得が行かず起きてしまった事よりも前にするはずの対抗策で怒鳴ってしまう。

 

「確かに、私達はこの状況に対する経験がたりてない。だからこそ、指揮を続けられれ今のユーリ指揮官は頼りになるし、ユーリ指揮官がお前を副官扱いにしたのはそういうところに対する経験があるからじゃないのか?」

「だったら、死に物狂いで頭を動かしなさい。でないと次死ぬのはアンタよ」

「でも、お前は部隊データ全く同期されてないぞ?」

 

Mk12が補給から戻り、私の揚げ足を取る様な発言をする

 

「私は基地から急いで出たから、同期はしてないわ」

「はは…それって、私達と同じじゃない?」

 

まぁ、確かにここに集まっている人形の多くは目まぐるしい状況でデータの照らし合わせが済んでいないのがほとんどだろう。…まるで、これでは私が彼女達を責めてるみたいではないか…

 

「軽率な行動はしないで欲しいと言ってるの、役立たずなんて言ってないわ。そして、"仲間達を救い、全員で帰る。"これが私たちのするべき事」

 

だが、彼女達にそのための能力が足りないのは明らかだった。

 

「だからこそ、こういう事に経験がある、私にも任せて欲しい…それだけよ」

 

 

 

 

 

────

 

 

「拠点の調べが済んだよ…何かあった?」

「あいつら、効率が悪すぎる」

 

愚痴を聞いた、AKS-74u「あー…」とか言いそうな勢いで頭を掻いていた。

 

「ここで頑張ったら連中は殆ど後方支援で働いてる人形達だからね。アンタ達の様に攻撃する為に働いてる訳じゃない、スープをフォークで食べろって言ってる様なものさ」

 

…例えが分かり易いのがまた、ムカつく。確かに時間を掛ければスプーンで食べる筈のスープもサラダを食べる為のフォークで食べることができる、ようは人形達にも適材適所があるわけだ。

 

「攻撃部隊の人形も殆ど、あの緑色の爆発で散り散りだし…連絡もつかないからなぁ…」

「そう…」

 

戦うだけが人形の優れた所ではない…そんな事はわかっている、だが…この"戦場"と言う空間では戦う戦術人形が必要なのだ。

 

「そういえば、ここの拠点の隊長は知ってるの?」

「9A91、って奴だよ。私がここに来る目的でもある」

 

そういえば、AKS-74uとは9A91と言う人形で揉めたな。

 

「よく聞いて、結構重要な事よ。ユーリ指揮官は、護衛の部隊と共に包囲網の突破をする予定よ。私には指揮モジュールはない、だからこそ…部隊は私の言う事を聞く必要がある、躊躇いと文句もなしよ」

 

 

 

 

────2号セーフハウスにて

 

「ここまでにしましょう」

 

書いていた日記帳を9A91が弾薬箱の中に隠した。

 

「指揮官は…きませんよね」

 

今、指揮をしている指揮官ではなく…これまで私を指揮していた指揮官の事を呟く

 

「74ちゃん、Valちゃん…私はここまでかもしれません。次、起きた時にはあなた達の記憶とこの日記が弾薬箱の中に残っています様に」

 

すると、次の瞬間扉が強引に開かれた────!!

 

「9A91!!」

「貴女は…!!」

 

果たしてその出口から現れたのはAKS-74uだった。

 

 

「急いで!!さっさと出るわよ!!」

 

後ろの爆炎を背景にHK416が撤退の先導をしていた。

 

「74ちゃん!来てくれたんだ!!」

「悪い、遅くなった!!直ぐに離れるよ!!」

 

その直後…セーフハウスを爆発物が襲った!

 

「キャッ…!」

 

9A91が爆発の衝撃で叩かれた様に、前のめりに地面に転んだ。

 

「9A91!!」

「全員!反撃準備!!」

 

 

────数十分後

 

 

「人形の性能が良くても、経験なければただの消耗品よ、貴方達は経験がないから私の命令に従わないと私達が作った連中が思う様に消耗品で終わってしまうわよ?アンタ達、それでいいの?」

 

辛くも、9A91の部隊を救援に成功したHK416は今回の事で参加した人形達を叱咤していた。

 

「これはピクニックじゃないの、また…さっきの様に運が良く生き残れる…って言う事実を刻まれたくなかったら、私の命令に従って、言い訳は聞かないわよ」

 

…HK416は話を切り上げると、AKS-74uの隣に来た。

 

「9A91はどう?」

「大丈夫じゃなかったらここにはいないでしょ?」

 

AKS-74uが指差した先には、間に合わせの修復をしていた、9A91がいた。

 

「じゃあ、私の見苦しいところも全部見ていたわけね」

「言い訳するつもりはないけど、グリフィンの仕事っていうのはね、アンタ達やARの様に戦闘を専門にする様な事は稀なんだ」

 

AKS-74uはHK416の顔も窺わず、そのまま話を続ける。

 

「後方支援やパトロール…前線に出る人形なんてそんなにいやしない、誰でも戦闘用のデータがアップロードをしてる訳ではないし、アンタはそれを見苦しい言い訳と思うかもしれないけどな、それに…アタシらは命より思い出を大切にするのさ」

「だから、自分よりも仲間を大切にするわけ?」

 

AKS-74uが少し困った様に言葉を選ぶ。

 

「それは…そいつ次第だろ。少なくともみんな逃げずに着いてきただろ?別にそれでいいでしょ?」

「私達は戦術人形、戦場での指揮官の駒。普段は何が大事でも、今は命令が大事よ。それとも、アンタはそれは私の都合とでも言うつもり?」

 

AKS-74uは何か面白いものを見つけたかの様に、立ち上がった。

 

「そう、たかが…人形の命。…って、さっき言って消耗品した人形は誰だっけ?」

「…人間がいれば、話は別よ。…そういえば、やけに色々な事に詳しいわね」

 

AKS-74uは、ため息を吐く。

 

「アタシらだって、この人生…全部が望んで生きてるわけじゃない。環境って奴がそうしたんだよ」

「アンタも苦労している事はわかったわ。…私は今まで、チームメンバーがみんな役に立つ連中だったわ、任務もこんな事よりももっと危険なもので、いつも目の前の任務をこなすだけだった」

 

HK416は戦場での爆炎で混じった、汚い水溜りを眺める。

 

「でも、今は…みんなを生きて帰らせてやりたいだけ…」

 

 

生暖かい風が流れ、沈黙が流れる。

 

「プッ…アハハハハハ!!!」

 

その沈黙をAKS-74uの笑い声が破った。

 

「何笑ってるのよ」

 

HK416の疑問にAKS-74uが返した。

 

「アンタって意外とお人好しなのかもね」

 

 

────

───

 

 

「…どうにか、たどり着けましたね、まさか…スケアクロウが言っていたことが本当だったなんて…SOPⅡ…?」

 

スケアクロウが指定した、位置に気をつけながら、セーフハウスにたどり着いた、SOPⅡが沈黙した…しばらく後

 

「あー!!!!!!!」

 

SOPⅡが突然、大声を上げた。

 

「SOPⅡ!?」

「大丈夫…なんか、緊張が解けたらどっと…ようやく一息つけるね、私…本当は」

 

不安さを語ろうしたM4SOPMODⅡに影が忍び寄る。

 

「…SOPⅡ。後ろ」

「────っ!!」

 

気づいた瞬間にはすでに後ろに銃も持った人影が現れていた。

 

「…あなた、Cx4?生きてたんですね?!」

「え、えぇ…貴方達もこの拠点に?R93?」

 

銃を突きつけたのは、同じグリフィン人形である、R93だった。

 

「敵じゃない!出てきていいですよ」

 

すると、数体の人形達が自分達では気づかないであろう、隙間やドアから現れた。

 

「AUGですわ。今は、緊急で同機種の銃を同期しています」

「DP-12です。……他にも生き残りがいたとは」

「R93です、さっきはすみません」

「あっ?あ、ああ、ううん、気にしてないよ。これで全員?」

 

一通りのメンバーを見て、M4SOPMODⅡは質問した。

 

「いえ、あと…2人程」

 

SOPⅡがR93の案内で奥の部屋に案内される。

 

「…」

「…っ!」

「誰なの?こいつは?」

 

その部屋には止血はされているものの、人工血液が垂れ流されており全身のあちこちに爆発辺や火で炙られた様に黒くにじんでいる戦術人形とそれを守っていた人形がいた。

 

「この傷は軍とやり合った時の爆弾で傷ついた傷だ。それで…この黒いのはコーラップス液で発生した熱線で焼かれたんだ。彼女、私を庇って……」

 

また被害者。本当にM4お姉ちゃんがこの出来事を?

傷の説明を聞きながら、M4SOPMODⅡは焦燥した様な気持ちになっていた。

 

「…彼女、大丈夫なの?」

 

すこし、隙間を見る様に顔を覗かせて、私は尋ねた。

 

「まぁ…今のところは、だが…喋れたりしないし、歩けるわけでもない…死んだ方が…」

「それはダメだ!!!!」

 

 

この言葉はまさに衝動的に出た言葉だった。死んでも生き返れる人形のはずなのに…突発的に出てしまった。

守っていた人形も、「分かってる」といって、落ち着く様に求めた。

 

「何か…代用できるパーツとかない?」

「軍の人形の残骸とかなら、ありますけど…」

 

R93が、集積させていた山を指さした。

M4SOPMODⅡは、暫くパーツを吟味した。

 

「電線とかは大丈夫だけど、外部パーツが合わないね。グリフィンの素体は?」

「ない、あのバカでかい緑色の爆発で全部おじゃん」

「なら、ロボット屋さん……はこの町はそもそも廃墟か」

「いえ……ここにはいくらか市民がいましたよ。避難も協力しました。まあ、ロボット屋さんはありませんが」

 

ここに人が?

 

「え?でも、私この町にはだれも住んでいないって」

「私だって、見たときはあなたと同じように驚きました。情報統制でもされていたんでしょう」

 

しかも避難もさせないで、軍やグリフィンはここで鉄血と撃ち合いをした!?

 

「けれど、病院はありました。病院なら、医療用人形がいるはずです。その人形からパーツを拝借するというのはどうです?」

「はは、敵をだますなら味方からってわけだ」

 

MP7は乾いた笑い声を出す。

場は和んだりしない。

 

「市民は無事なのかな」

「…いいえ」

 

DP-12はきっぱりと答えた。

 

「2キロ先でヒト型の怪物が沢山いました。いくらか軍隊の兵士もいましたが……そうじゃない人も大量に」

「怪物?」

「知りませんか?この世界にはE.L.I.Dという怪物が沢山いるじゃないですか?」

 

E.L.I.D…その名前はグリフィンでも聞いたことがある。

コーラップスが生き物をむしばみ、死者を肉を食らい、さまようなれの果ての姿。

 

「ここは?汚染区域……レッドゾーンとかだった?それも情報統制で?」

「いえ。あの緑色の爆発を見てからあの怪物らは現れだしました。きっと、あの光は大量のコーラップス粒子だったのでしょうね」

 

お姉ちゃん……なんてことをしたんだ……!

自分の姉、守るべき存在なのに彼女の行いにM4SOPMODⅡはぞっとしている。

 

「どうします?怪物がいますが、病院であさりでもします?」

 

M4SOPMODⅡは手元に握っているコアを見つめた。

信じられないことが沢山起きているが、今ここで怖気づいたらせっかくここまで来たことが台無しになってしまう。

 

「よし、行こう」

「分かりました。MP7に言っておきます、人手が増えたと」

「さっきの怪我した人形を見てたヤツ?アイツも病院に用があったんだ」

「ちょうど、病院で補充したいものがあるらしいですよ」

 

病院に行くために外に出ると、ちょうどMP7が待っていた。

 

「やあ、手を貸してくれるんだってね」

「MP7は何が欲しいの?」

「包帯、薬、消毒液……まあ、色々さね。SOPは?まさか、霊安室の死体ってとか言わないよね?」

 

そこまで死体にこだわっていたら、スプラッターホラーの主役になれるだろう。

M4SOPMODⅡを首を横に振って否定した。

 

「とある人形のためにパーツが必要なんだ」

「なるほど、それなら病院だ。さあ、行こうか」

 

2人は病院に向かった。

進めば進むほど、緑色の煙が濃くなっていく。

これが、コーラップス粒子……煙がひどいので、M4SOPMODⅡはライトをつける。

 

「こりゃあ、ひどい」

 

ライトの先にはズタズタに食い散らかされてた、カラスの死骸が照らされる。

 

「近くにいる、気を────」

「グオオオォォォ!!」

 

死体に気を取られていた、霧に於くから怪物が二人の目の前に現れた。

 

「嘘っ!?」

 

怪物がM4SOPMODⅡの頭につかみかかり、その牙が彼女の肩に食い込んだ。

 

「ぐぐっ!?」

 

必死に怪物を引きはがそうとするが、すさまじい力で押さえつけてくるのでまるで引きはがせない。

 

「このっ!!」

 

MP7は怪物に顔面に向ってストックで殴る。

引きはがせない、だが力が緩んだ。

 

「っぐ……!うっああああ!!」

 

力が緩んだ拍子に思いきり力を入れて、怪物を引きはがす。

ずるずると人工皮膚が破けて、激痛と人工血液が流れだす。

 

────引きはがせた。

離れた怪物がまた、襲い掛かる。

 

「し、死ね!!」

 

MP7が発報、腹元に数発命中したがよろけるだけ。

止まらず襲い掛かる。

 

「────っ!」

 

M4SOPMODⅡは必死になって腕を伸ばした。

がぶり、と怪物は伸ばした腕に嚙みつくが、それをみたM4SOPMODⅡは不敵に笑う。

 

「こっちの腕は借りものなんだ!!」

 

怪物が嚙みついた腕は鉄血の剛性が重視された腕、嚙まれても平気……だが、怪物はそれに気が付くわけもなく、噛みつき続けている。

 

「くらえ!」

 

M4SOPMODⅡはライフルを持ち上げて、怪物の頭に向ける。

銃弾が放たれて、怪物が倒れた。

 

「「はあ……はあ」」

 

M4SOPMODⅡとMP7は息を荒げながら、倒れた怪物を見つめる。

すさまじい力と痛みを感じず突き進む異常さ、なんて……恐ろしい。

 

「はあ……くっ」

「その腕……」

 

MP7は怪物に嚙みつかれた腕を指さした。

肉がえぐれて、痛々しい見た目になっている。人間だったら、痛みで泣き叫ぶだろうか?冗談じゃない、私も

動かしてみる。とりあえずは……動く。

 

「大丈夫っぽい」

「ならよかった。それと……ライトは使わない方がいいね」

 

MP7は銃のライトが怪物を引き付けたことを気が付いたらしい。

2人はライトを切り、今以上に慎重に病院向かう。

霧の中を進むたびに怖気の走る唸り声が近づきは離れて気が全く抜けなかった。

 

「ここだ」

 

前に進み続けて、病院らしい大きめの家が見えた。

ゆっくりと慎重にドアを開けて、静かに侵入。

 

「大丈夫……」

「よし…」

 

誰もいないのを確認して、2人は慎重に病院の中に入る。

中は……荒れていなかった。

病院なんて、こういう状況だと真っ先にパニックの温床になるって思ってた。けれど、ただの映画の見過ぎだったのだろうか。

 

「よし……お目当てのモン見つけたら、とっとと逃げる。そうだよね?」

「もちろんさ」

 

MP7は2階、M4SOPMODⅡは1階をそれぞれ探索していく。

扉を開けて、中を見ると……

 

「うっ……!」

 

部屋の中は数人の人間が横たわっていて、皆血だらけだった。

数人、たった数人なのにものすごい強烈なにおいがする。

 

────い……た……は、ぁ……

────ごほ……ごぽ……!

────う……かっ……!

 

……生きている人もいる。だが、虫の息だ。

1時間は持たないだろう。M4SOPMODⅡには、まだ気づいていない。

助けられないこと後ろめたく感じながら、M4SOPMODⅡは傍らに倒れた、動かない医療用ロボットのパーツを拝借した。

 

「……よし」

 

ROとあの傷ついた人形を修理できるのに必要なパーツはこれだけあれば十分だ。

 

「……っ、だ、れ……?」

 

うわ言をつぶやく重傷者の中に一人まだギリギリ意識をはっきりさせた人がいた。

M4SOPMODⅡはその人に近づく。

 

「(女の子……?)」

 

まだ、他よりましだ。

けれど、このままじゃ持たない。応急処置をするにしても輸血が出来れば……

 

「あ、なた……へい、たい、さん?」

「あの……いや」

 

この子は自分を正規軍の兵士と勘違いしてるらしい。

でも、私はその兵隊に命を奪われかけた人形だ。

 

「よ……かった……へいたい、さん……あとで、戻るって……いって、お医者さんをみんな、つれてってたから……ずっと、おい……て、かれる……とおも……って、た……でも。もどって……きた……」

「……」

 

正規軍がここに来た?医者を連れていく?

まさか、衛生兵が足りないから強引に連れて行きでもした?

 

「たすけ…に…きて、くれて……あり、がとう……」

 

M4SOPMODⅡは耐え切れず、一度部屋に出た。

別の部屋にたどり着き、頭を抱えた。自分たちは略奪者なのに救世主と思われている!

あの数のケガ人をどうしろと?どう見ても、手遅れだ!見捨てて誰が文句を言う?じゃあ、なんで自分は前にCx4を助けたんだ?メリットがあるとわかったのは後になったからじゃないか。

 

────OK…リンゲルのほかにも輸血パックをはまだ残っているのね

 

思わず、M4SOPMODⅡは慌てて身構える。

周りを見渡すと、確かにそこにいた。15,16当たりの女の子。

 

「え?だれ?」

 

彼女も自分に気が付いたようだ。

 

「あなた、なんなの?……まあ、怪物じゃなさそうだね」

「えっと……私たちは、その……ここのものに必要なものがあって、来たんだ」

「つまり泥棒!?こんな時によくそんなことする気になるわね!?」

「わ、私たちも困ってるんだ!人形の友達を直すためにパーツが足りなくて!」

 

そんな言い訳、押し入っていい理由にならない。

けれど、分かってもらいたくて必死になさけない自分の窮状を話した。

 

「あなた?人形なの?じゃあ、軍隊?」

「そうじゃない……グリフィンっていう民間軍事会社……まあ、傭兵かな。ええと、泥棒っていうけどそっちはなんなの?泥棒じゃないわけ?」

「違うわ。地元の医者の見習いよ。ま、大学なんて言ってないし、試験も受けてないけど」

 

無免許医者じゃないか!?

まあ、こんなところで医者をやるんだからそれくらいしかいないか。

彼女はさっき戸棚から取り出した、赤い血が沢山詰め込まれている。輸血パックを机においた。

 

「奥の部屋の人たちを見た?今すぐ輸血しないと死んじゃうの。だから、輸血をしないと」

「いや、でも…あれじゃ、手の施しようなんて」

「だから諦めるの?諦めて、あの人たちに死ねって?」

「そ、そこまでのつもりじゃ……」

「おーい。そっちはいいのあったかあ?」

 

2階からMP7がおりてきた。

そして、自分と同じように看護師の女の子に会い、「やらかした」ことを気が付いた。

 

「あんたも泥棒?」

「そういうアンタはここに患者が搬送されるのを待ってるの?逃げた方がいいって」

「MP7。ここにいるのあの人だけじゃない。あの奥の部屋にもいる……血だらけのけが人が」

「嘘でしょ……」

 

MP7は事の重大さが分かってきたらしい。

悪者はこっち側だ。

 

「手伝ってくれるなら、ロボットのパーツは好きに持って行って。さっき、軍隊のトラックが先生たちを無理やり連れっていったのを見るくらいよ。ここにまともな道徳なんて期待できないわ」

「……その、手伝えることなら手伝うよ。どうすればいいの?」

 

ここにきて、M4SOPMODⅡは良心が現れてしまった。

 

「やり方は教える。まず、あの部屋に行かないと────」

 

なんと、前触れもなく壁が突き破られた。

そして、その崩れた壁から巨大な腕が現れ、看護師の顔つかんだ。

 

「きゃ!?────輸血パ」

 

あっという間に看護師が引きずり込まれて、絶叫が響き渡る。

そして、連なるように肉が裂け、骨は砕ける音が響き渡る。

砕け散る音が終わったのと同時に引きちぎられた看護師の頭がこちらに飛んできた。

 

 

「「……!?」」

 

MP7とM4SOPMODⅡはあまりの出来事に何が起きたか理解できず、固まってしまった。

 

「ぐごご……!」

 

そして、身の毛のよだつ唸り声を上げながら、"そいつ"は現れた。

 

「(なんだ……!?)」

「(こいつは……!?)」

 

2人の思考が止まった。2メートル、いいや3メートル下らない巨体が目の前に現れる。

手元には、真っ赤に染まり己の起こした惨劇を主張していた。

怖い、恐ろしい、得体が知れない。

 

カタン、と物が倒れた音が鳴る。

 

「────」

 

怪物が音に気が付く。

患者が?患者が?逃げようとして、落としたのか?

なら、その患者をおとりにして逃げられる?

 

────助けて……

 

あの患者の女の子の囁きが耳に鳴り響く。

奥にいる、あの子が死ぬ!!だから何だ!?私に関係あるのか!?

ゆっくりと怪物は近づく。どうすれば……!どうしよう……!

 

「くそお!来い!化け物!!」

 

ヤケになっていたんだろう。

M4SOPMODⅡはMP7と奥の部屋から急いで離れると怪物にライフルを発砲した。

 

「ぐおおおお!!」

 

怪物は撃たれたことに反応して、M4SOPMODⅡを獲物と見定めて襲い掛かる。

彼女は全力で出口に向かって走る。怪物の拳がこちらめがけて飛んでくる。

玄関はあっけなく吹き飛んだ、……その前に彼女は外に出ていた。

 

「かっ…!?ごほ……!?」

 

直撃は避けられた。直撃してたら死んでた、その余波で全身がへし折れそうだった。

玄関を吹き飛ばして、"そいつ"は追いかけてくる。

 

「くらえっ!!」

 

M4SOPMODⅡはライフルをフルオートで発砲。

"そいつ"にすべての弾丸が命中したが、全てたやすく弾かれた。こいつの体はチタン製か何かなのだろうか!?

振り上げられる、"そいつ"の拳。M4SOPMODⅡも終わりを覚悟したが、それは彼女ではなく目の前を横切ったE.L.I.Dに振り下ろされて、スイカ割りのように一撃でE.L.I.Dは砕け散った。

 

「オオオ!!」

 

やっぱり、あんなのに殴られたら終わりだ!

M4SOPMODⅡは全力で走る。四方八方から怪物の鳴き声が聞こえる!

怪物たちが集まってる!?

 

「こんなに見づらいのにどうやって追いかけているんだ!?」

 

どしん、どしん、とこちらを追いかける足音は遠くなる気配が一向にない。

明らかにM4SOPMODⅡを捉えて追いかけている。

 

何かしなければ、そう思いながら走り続けていると……転がった軍隊の車が転がっている。

近づくと、APC装甲車だとわかった。迷わず中に入る。”そいつ”は拳で殴りつけてAPCを攻撃したがへこんで転がるだけで、攻撃を持ちこたえた。

 

「神様を信じる人の気持ちが分かってきたよ!!」

 

中を調べると、死体の兵士たちが転がっている。

苦悶の表情に満ちている、何があったか知らない。でも、きついことがあったんだろう。

その時、ちょうど手榴弾を大量に括りつけたベルトが床に落ちていた。ロケットランチャーもある!

 

「この数の手りゅう弾とロケットランチャーがあれば……!」

「ぐ、がが……」

 

M4SOPMODⅡはぞっとして隣を見た、なんと死体の兵士が起き上がって、遅いかかってきている。

慌てて、ベルトとロケットランチャーを握ったままま装甲車から飛び出す。

死体の兵士も自分めがけて、飛び出し襲い掛かる。

 

「くぅっ!?」

 

前のように噛みつかれる前に、M4SOPMODⅡは怪物兵士の顔面を蹴り飛ばし、車の中に蹴とばし、フルパワーでドアを閉めた。

ドアの激しい衝撃は怪物の首の骨をへし折った。

 

「……オオッ」

「しまった」

 

”そいつ”が私に気が付いた。

だが、今回はさっきとは違う。M4SOPMODⅡはピンを抜いて、手りゅう弾を投げつける。

ボンっ!と音を立てて、手榴弾が爆発し”そいつ”の岩のような顔面が僅かに剥げる。

 

うめき声をあげる間に全速力で走った。目的地は崩れかけの建物。

 

「はあ、はあ!」

 

”そいつ”はまた私を追いかけてきた。

ちょうどいい、目的地にはたどり着けた。私もこんな追いかけっこは終わりにしたい。

M4SOPMODⅡはありったけの手榴弾のピンを引き抜くとベルトごとを建物の横に向って投げつけた。

連続して手榴弾は爆発し、建物の柱に亀裂が入った。

 

「今だ!」

 

M4SOPMODⅡはロケットランチャーはその柱に向かって発射。

ロケットが柱をへし折り、建物が音を立てて崩れ落ち……”そいつ”は綺麗に建物の下敷きになった。

 

「あははは!!はあ……」

 

倒した!やったぞ!!

変な笑い声が出て、そして疲れて笑うのをやめた。

 

「よし……早く、戻らないと」

 

逃げながら、現在地と病院の位置はマッピングしている。

だから、ヘンゼルとグレーテルが床にまいた小石のように来た道をたどって戻ることができる。

病院にむかって足を向けた、その時だった。

 

「オオオオオ!」

「は?」

 

がれきの中から、現れた。

……生きてた?あの、何トンもある建物の下敷きになって?

”そいつ”は死んでいない?

……なんで?

 

「……ぐうううっ!!」

 

”そいつ”の原型なんて知らないけど、起こっているのは良くわかった、仕留めようと腕がこちらに伸びてくる。

終わりだ!頭が潰されて終わりだ!

 

手がM4SOPMODⅡの髪に触れたとたん、

 

「が」

 

”そいつ”の頭が消えた。

思考する、体の動きを命令する場所がなくなった腕はM4SOPMODⅡを通り抜け、そのまま倒れた。

 

「え?……た、たすかった?」

 

動揺しぱなっしだ。

誰かに助けられたのか?……いや?そうだよね?

 

「あっ……そうだ。輸血、しないと」

 

M4SOPMODⅡは脳裏にチラついた女の子のことをすぐに思い出して病院の方に向かった。

 

『あら?もっとこし抜かすと、思ったのに』

 

スコープに映った、M4SOPMODⅡを眺めながらスナイパーはコッキングハンドルを引っ張り.338ラプアマグナムの薬莢をはじき出す。

無線がなったので、スナイパーは無線に出る。

 

『なんです』

<お前のライフルの銃声がしたぞ。何があった?>

 

どうやら、彼は敵に襲われた思ったらしい。

 

『いえ。放置したら、手に負えなくなるだろうと思われる”腐肉喰らい”を始末しただけです。まあ、人助けにもなったかもしれません』

<了解。姿は見られてないか?>

『2キロも離れて、光学迷彩もつけている兵士をどうやって見つけるんです』

 

無線の相手は納得してくれたらしい。

警戒は続けろと言い残し、無線が切れた。

 

『しかし、先ほど助けたグリフィンの人形……もしかして、隊長が部下にされているというAR小隊の人形かしら?……まさかね』

 

────

───

 

「……戻ったよ」

 

病院の中にまだMP7と患者たちが残っていた。

いや、患者と呼べるのは目の前の輸血を必要としてる。女の子だけか……他はやっぱり、手遅れで息絶えていた。

 

「よ、よく帰ってこれたね?どうやった?」

「わ、わたしもよくわかんなくて……?それよりも、輸血。しようか?…、どうするの?」

「知らないの?」

 

待って。輸血のやり方をMP7は知らない?

 

「SOPⅡは知っているの?」

「知るわけないって!!」

 

どうすればいい?

針を差し込んで、血を流せば足りない血が入って助かる?

でも、どこにさせばいい!?

 

「……はあ、は……」

 

まずい、この子はもう限界だ!

なんでもいい!早く何とかしないと!

 

「MP7!とにかくそこらじゅうの布でこの子の血を抑えて!」

「あっ……そうだった」

 

MP7は言われて気づいたように床の包帯のあまりやカーテンを使って傷口を抑えた。

そして、M4SOPMODⅡは女の子の上に針を刺し、輸血を流し込んでみた。

 

けれど、この子はどんどん青い顔をしている。

これじゃあ……

 

「へいたい、さん……わたし、たすから……ない、よね?」

「そんなことない。ほら、たくさん……血が入ってる……」

 

M4SOPMODⅡは空元気で笑いながら、輸血パックを指さす。

女の子は力なく笑う。この子は私を、M4SOPMODⅡを見つめている。

痛み、苦しみながら死ぬとは思えない、感謝をしたまなざしで。

 

「わたし……たすかる……よね?」

「助かる!助かるから!!」

 

M4SOPMODⅡは手を握る。

弱弱しい、もうどうなるか分かりきっている。

 

「あの…こわい、かいぶつが……きたとき、だめって……おもったけど。へいたい、さんが……たおして、くれた……」

「そうだよ!頑張ったんだ!」

「ありが、とう……わ、たしたちを……まもっくれて」

「だから……!だから……!君、もがんばってよっ!……お願いだから……」

「SOPⅡ……もう」

 

MP7が指さした。

もう、動かなくなって……安らかな表情をして死んだ女の子を

 

「畜生!!畜生……ちくしょうっ……!」

 

M4SOPMODⅡは床に置かれていた箱を自棄になって投げつけた。

ガラスが破られ、差し込んだ光が女の子を手向けのように照らした。

 

「こんな奇跡が起きるなら……せめて、この子をみんなも助けてあげてよ。」

 

2人の足元に無数の死体が転がっていた。

これがM4SOPMODⅡのせいではない、だが彼女の無力感はそう判断させなかった。

 

「私ができることって……」

 

M4SOPMODⅡは、倦怠感を包み隠さず吐き出したため息をつき、ゆっくりと床に座り込んだ。

瞳はかつてのような輝きを失い、髪についた無数の返り血と同じように赤黒く濁っていた。

 

「私ができることって……こんなことばかりだ」

 

────

───

 

「これでいいのかな?」

「少なくとも私たちが判断できることじゃない」

 

MP7とM4SOPMODⅡは病院で亡くなった人たちをできるだけきれいに並べて、シーツをかけた。

最後にありがとうと言ってくれた女の子には輸血パックを握らせて。

 

「SOPⅡ、足りそうかな?」

「グリフィンにも合うパーツは、多そうだね。声帯も外装だけ交換すれば多分喋ると思う」

 

MP7は部品を見せた。

十分な量はある。私が鉄血の死骸の山からかき集めた時よりは上手くいくだろう。

 

「やってくれるか?」

 

「勿論だ」M16は勇気と愚かの違いは結果だけだと良くいっていたが、私はそうは思わない、"過程"だって重要だと思う、結果を出しても今までが悪ければ、着いていく人はきっと離れていってしまうから。

 

「やるよ」

 

そうだ、まだ私には救えるかもしれないのがいる。

遅れることはできない、2人は生き残りの人形たちが待っている建物に戻った。

だけど……1度だけ振り返って、彼らを見た。

 

「ごめんね……」

 

 

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