たったひとつの願い   作:Jget

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分岐点

「散々、ぶっ壊してくれて…今度はなにも言えないの?」

 

M4SOPMODⅡは横たわっている黒い敵を見下ろしていた。

 

「(今まで散々仲間達を傷つけた奴だ……今までずっとこんな無表情で攻撃してたって?)」

 

黒い敵は何一つ表情を変えない様がM4SOPMODⅡの神経を逆撫でする。

 

「…もうどうでもいいか、どんな身体をしているかぐらいは…見せてもらうけどね」

「M4SOPMODⅡ…怒りに任せて、あまりやり過ぎないでよ?」

 

見ると、ペンチが握り過ぎてひしゃげている。

 

「中身が分かればいいんでしょ?なら…」

 

そうして、解体に取り掛かろうとしたM4SOPMODⅡが触れた瞬間…

M4SOPMODⅡの腕を黒い敵が握った。

 

「貴女達は…何一つ…得られない」

「…っ!離せっ!!」

 

突然、黒い敵はM4SOPMODⅡの焦げている方の腕を掴んで離そうとしない。

 

「自壊シークエンス、開始」

 

その言葉にM4SOPMODⅡは肝が冷える思いをした…迂闊だったのだ。

満身創痍だった…今まで動かなかったからこれからも動かないと、そう判断してしまったのだ。

 

「SOP…!!なんとかして────」

 

地雷が爆発した様に、黒い敵を形成していたと思われる部品が爆発と同時に散らばった。

 

「ゲホッ…ゲホッ…何が自壊シークエンスだ…!!ただの人間爆弾じゃないか…!!」

 

巻き上がった土砂からM4SOPMODⅡが立ち上がった。

 

「全く…腕が切り落とされなかったら、死んでた…」

 

だが、M4SOPMODⅡは運が良かったらしい。

掴まれた腕が外れたお陰で爆発から逃れることができた。

 

「…が…かはっ…!」

「…え?」

 

腕を取り外してくれて、爆発から守ってくれる、存在がいなかったら…巻き込まれていたのはM4SOPMODⅡだったのだから…

 

「…ど、どうして…」

 

M4SOPMODⅡがどかしたのは土砂だけではなかった…そこにいたのは…背中に大火傷と黒い敵のものと思われるパーツが突き刺さっていた、AUGもいたのだ。

 

「…アァ…ゲボッ…ゲホッ!!」

 

のどを喉を掻き毟り、苦しそうに咳をする、AUGの口から"何か"が吐き出され、M4SOPMODⅡの顔面に掛かる。

 

「…あ?…え?」

 

掛けられた所を指で拭うと…それは、吐血して出た、人工血液だった。以前彼女は苦しそうに踠いている。

 

「(…私のせいなの?)」

 

…せっかく、ここまでうまくいったのに?…どうして、油断してしまった?

M4SOPMODⅡは混乱しながら自問自答をしていた…自分の詰めの甘さと私情を優先した結果がこの結果だと判断してしまい混乱していた。

 

「何してるの!?さっさと手当てしないと…!!」

「…あ、そっ、そうだ…手当て…手当てしないと」

 

RO635の発言で漸く自分のやるべき事を理解して、手持ちの包帯で出血している箇所を抑えようとするが…

 

「あ…あ、あぁ…」

「何してるの!?早く、拾いなさいよ!?」

 

動揺したM4SOPMODⅡでは、応急処置すら至難の技だった。

そもそも、女の子の輸血一つできない人形が止血なんてできるのか?

 

「手当ができないなら連絡よ、早く誰か呼ばないと…!」

「…あ…あ、ああ!!」

 

難易度の問題じゃない。

自分が失敗してしまった、救えなかったという事実は成功の積み上げの反対、失敗の積み上げを呼ぶ。

 

<M4SOPMODⅡ…こっちは終わったわ。…?どうしたの?>

「416!?…あ!助かった!AUGがやられたの!!人間爆弾よ!!」

 

状況報告をしに通信をしてきたHK416にRO635は代わりに助けを呼んでもらうことにした。

 

<分かった!人を呼ぶわ。クソッ!!…そっちもやられたか…!>

「そっちも?」

 

HK416の言葉にRO635はまさかと思い、問いかける。

 

<こっちも生き残りが居たから捕まえて…捕虜にしようとから殺そうとかで揉めていたら、ドンッ!…やられたわ。SOPⅡはどうしているの?どうして貴女が対応しているのかしら?>

「…」

 

ROはチラリと茫然しているM4SOPMODⅡを見た。

 

「最後の最後で転ばされたのが効いているみたい、ショックを受けているわ」

<…そう。取り敢えず、寄越した人が来るまでほかの人形にやらせて待機してなさい。敵は全部、倒したんだから……あとは帰るわよ>

 

HK416は誰かを責めるわけでもなく、まるで"そうだろうな"とみたいな同情を隠して、RO635に帰るように指示を出した。

 

────

 

 

「で…彼女は生き残れそう?」

 

HK416がM4SOPMODⅡにどこの民家から取り寄せた分からない、ドリンク手渡してAUGの容態を尋ねた。

 

「…ありがとう。もう少し遅かったら。コアからやり直しだと言われたよ」

 

幸いにも、命に関わるような怪我ではなかったのはM4SOPMODⅡの中で生まれた救いの一つだろう。

 

「また、パニックになられたら困るのはこっちなのよ。それと…M4SOPMODⅡ、あの黒い奴の事なんだけど…」

「…?」

 

HK416が誰かが取り付けていたカメラ映像を再生した。

 

「…ほら、ココ。敵の部隊が止まった、この時間は貴女が黒い奴を倒した時と同じ時間なの、どうやら黒い奴が動かなくなったら敵も動かなくなったの」

「…成る程、その情報は白い奴らの指揮系統を把握する手掛かりになりそうですね」

 

RO635は興味深そうに見つめているけれど、M4SOPMODⅡはうまく考えがまだまとまって内容であまり集中力の無い様子で見つめている。

 

「ここまで出来るなんて…奇跡みたいだよね」

「えぇ、少なくとも。ここにいる奴らの誰かは確実に脱落すると思っていたわ。特にあなたのグループは本当に」

「あはは…全く持ってその通りだよ」

 

HK416がジョークを言うと、SOPⅡは少し自嘲した様に作り笑いを浮かべた。

 

「けど、珍しいね。416がジョーク?」

「……何かが変わり始めている証拠かしらね」

「…でさ、416はやっぱり殿?責任感強いね…」

「…いや、私は」

 

HK416は少し、間を置いて…

 

「別に一緒に行く訳じゃないのよ」

 

HK416と少し話して、暫くのち…RO635が少したまらないながらも言葉を切り出した。

 

「ねぇ、SOPⅡ…一応、言っておくべき事があるから言っておくわ。爆発から飛び出たものを見る限り、どうもアイツらは人形じゃないみたい…」

「…?何言ってるの?」

 

M4SOPMODⅡはRO635に自分の動揺した事を責められるのではないか予想していたが、自分の予想を覆す発言でた事に驚きの声を上げる。

 

「それじゃあ、人形じゃなくて、私は人間を殺してるって言うわけ!?」

「そこまで言ってない!…でも、私達を襲った奴ら…私たちの知らない何かなのかもしれない…SOPⅡ?」

 

確かにM4SOPMODⅡは必要に迫られたら人間であっても殺害を選択するかもしれない…

 

「うん、…みんなには言わないでおこう」

 

しかし、M4SOPMODⅡ以外の人形はそうはいかない。

この極限状態、この事実を知って仕舞えばパニックになる人形は必ずでてくるはずだ。

爆音を立てながら、頭上に現れた巨大な飛行機が滑走路に降りてきた。

 

「迎えね。そろそろ撤退よ」

 

HK416は飲んでいたエナジードリンクを投げ捨てると輸送機が降りた方向に向かって歩き出した。

よく見てみると、水やレーションなど遠征をするかの様な、荷物をバッグの中に詰め込んでいた。

 

────

───

 

『────取った!!』

 

そのころ、ちょうどユーリによる周辺のE.L.I.D処理が終了するところだった。

侵行が進んだ、E.L.I.Dの装甲に変異した皮膚を剥がして、攻撃が通る様になった事を確認して、手首に嵌められていた装甲の上部から刃状のレーザーが発生、そのままE.L.I.Dと化してしまった兵士の首を跳ね飛ばす。

 

首が外れた、E.L.I.Dはそのまま後ろから倒れ込んだ。

 

『…これで。ここにいる腐肉喰らいは最後だな』

 

…防衛拠点にて、ユーリ指揮官は苦戦しながらもE.L.I.Dを殲滅して突破口を開けた。

 

「ふぃ〜…これであのキモい奴が居なくなってスッキリしたわね」

<はい、お陰で撤退するまでにE.L.I.Dは明後日までは来ないでしょう。お疲れ様ですね。M870、指揮官様>

『…あぁ。2人ともいい腕だ』

「当然です」

 

ユーリが先ほど、E.L.I.Dを強化カーボンで切り裂いたグローブの爪に付いて、乾いた血を眺める。

 

「指揮官は気に病んでる訳?」

『私に?今の感情がどんなものか…分からないよ』

「わかんないアンジェリアの奴がぶっ放した崩壊液でアンタはあれ程怒っていたじゃない?」

 

その怒りを忘れたのか?いいや、そう言うわけではない。

…だが、これからアンジェリアを助けるとして…その部下であるAK-12とAN-94を止められなかったことを自分が責めるのであろうか?…そんな疑問が湧き上がる。

 

「アンタが何を考えるにしてもさ、ここにいる人形達はアンタを信頼してるわよ。もう、輸送機も来るんだし、あとは好きにしたら?私はこれから好き放題するんだけどね!」

 

そう言うだけ言った、M870はユーリを嘲笑う様な嫌味な笑顔を浮かべて、倉庫の方に何かを取りに行く。

 

『好きにしろ…か』

 

────

 

アンジェリアの通信をしたあの時…激情も感じず、ただ冷めた様な気分になっていた時に聞いていた…アンジェリアの言葉…それはきっと

 

『助かりたい…理由が、諦められない理由が…きっとあの人にはあったんだろう…それなら、俺は…』

 

M870が好きにしろと言った。

確かに、アンジェリアがあそこまで好きにするっていうならこっちも好きにさせてもらう。

 

『そこまでして、彼らの道を阻もうとする理由を…俺は問わないとならない。あんな事をするには、きっとそうであるにふさわしい理由がある筈だ』

 

いや、そうでないとならない。

 

『アンジェリアさん…普通ならエゴールを助ける所だが…今回は助けてあげますよ。そして、M4…』

 

もし、助ける過程で…彼女にもう一度会えるのなら…無線機を起動させて、HK416に繋げる。

 

『HK416…この後の話をしよう』

 

俺が君に誓約した時に本当に言いたかった事を…その時に言おう。

 

────

 

グリフィンの人形達は列に並んで輸送機に搭乗して、帰宅と仲間達との再会を期待していた。

 

「はい…HK416です。…はい、こちらの準備はもう、完了しています。了解しました…それでは予定通りに、いえいえ……こちらこそ他のメンバーの輸送までありがとうございます」

「────まだ、輸送機に乗らないのか?416?」

 

無線を終わるのを待っていたのか。

「ようやくか」と言う様子でAKS-74uが話しかけてきた。

 

「えぇ、まだ救援任務が残っているの」

「まだグリフィンの生き残りが?」

 

もちろん違う。

グリフィンのではない、もちろん前々から要請されていた、アンジェリア達の救援任務だ。

 

「残業したいのなら歓迎するわ」

「まさか、だけど危険な任務なんでしょ?グリフィンの仲間じゃないのになんで行くの?」

 

AKS-74uの答えに若干、期待通りだと言う感情を交えながら、HK416はなぜ行く必要があるのか────それを問われると軽い動揺を覚えた。

 

「…離れる奴もいたら、残る奴もいる。私は残る側だった。それだけ…アンタは離れる側よ」

「そうだよ。正直アンタらのために残ったことを後悔したくらいだ。私はここに1秒もいたくない。それは私達のチームも同じ、あぁ…そういえば、私のチームの1人がアンタを探している奴らがいるって聞いた。アンタのお友達じゃない?」

 

アイツら正直な所、お友達というより同僚だろう。

どうやらこちらの輸送機も来るだけの度胸を持ち合わせたパイロットと一緒にここにきた訳だ。

 

「どうするんだ?内緒なんでしょ?そいつらに了承得ないで、それをすることにしたって?だとしたら…こっそり、隠れて」

 

404小隊のアイツら…探さなくていいって言ったのに…

 

「受けるとは言った、確かにアンタの言う通り…このまま帰っていいとも言われた。けど、この件で一番責任をとれるのは私しかいない」

 

 

AK-74uの自分を探している、その報告が私のやろうとした決意を歪ませた。

 

「何にせよ、輸送機に乗りたいのなら早くしたほうがいいぞ。もう、これで輸送機は最後なんだからな」

 

最後…そうか、最後…か。

 

「74u…」

 

そうか、それならこちらにも未練はない、ようやく話が通じた奴だ。それなら、自分の"中"を話してやっても良いかもしれない。

 

「私も…昔は、グリフィンの一員だったわ。エリート人形だった。隊の副官だって、しばらく務めていた」

「そうか…」

 

AKS-74uは文句もなく、話を聞いていた。

 

「アンタの噂は、聞いた事があった。でも、全部本当だったんだな」

「そうよ。でも、色々あった…そして、私は404に入るしか…なくなった」

 

本当は"色々"…という一言で済ませたくは無かった。

なんなら、これから生きて帰れないという前提とした以上、自分の不運、理不尽を今、この場で話を聞いてくれているAKS-74uに全て話し、語り明かしたい気持ちでもある。

 

「404小隊の特権は人形であろうと、人間であろうと…命令さえ、あれば…全部殺せる」

「…」

「けれど、それを与えた人間はこんなことに使うと思ってなかったでしょう。私も思ってないし、その人間と同じように後悔してる」

 

でも、それは私の都合だ。

私だけの都合に…誰が共感させてはならないのだ、私が決めた人生なのだから。

巻き込むべきではない…それなのに

 

「それに、特権だけどそういう命令、本当は好きじゃないの…でも、どうしようもなかった」

 

スラスラと溢れ出る様に意識しないでも言葉が流れていく、堰き止めていたダムを放水する様に

 

「その上、私のチームメイトは…」

「でも、そいつらの事…好きなんでしょ?少なくとも酒飲んで大惨事を起こす様な奴じゃないとは思うけど」

 

そこまで話し時に、AK-74uの言った言葉突き刺さる。アイツらの何処が良いのかは、全く分からない…でも、その通りかもしれない

 

「かもね、それ以外の癖は酷いもんだけど」

「アタシにも友達が居るんだよ。仲が良くてね…でも、友達になった理由は良いところあった…そういう訳じゃない、たまたま一緒になった…たぶん、それだけが理由でなったんだよ。偶然にもね」

 

偶然か…たぶん私にも幸運があるとしたら、その偶然が悪い様に重ならないでアイツらと生きていけたからなのかもしれない。

 

「アンタは決めてはいるけどまだ、それに悩んでいる。だとしたら、そいつらはアンタにそれを思いとどめるほど良くしてくれたからじゃないのか?」

 

 

彼女は引き留めるつもりがあるのだろうか?それとも…私の背中でも押すつもりか?もう一度見ると、AK-74uは笑っていた。

 

「何にせよ。想像もつかない戦いから生き残れた、一緒に戦えて嬉しかったぜ」

 

AKS-74uは私を少し、小突いた。本来なら怒るはずなのだが、その時の私は少し笑っていた。

 

「私のしてきた事を思えば…そうは思わなくなるでしょうけど」

「いや、もっと嬉しくなる可能性もあるかもな」

 

AK-74uを引き留める様に、意地悪を言ってしまった。つまり、私にはAK-74uを少しだけでは、あるが引き留めたいもの思う程の未練があったのかもしれない。

 

「何処へ、行けば、いいのか…」

 

────想像をした

 

本来の生活に戻ることにして…

404小隊を離れて…グリフィンに戻る生活…敵、白い兵士達が諦めるなくても…元とは違うグリフィンだったとしても、新しい生活をする…

きっと、きっと…いつもより楽しい生活ができるだろう…他の3人との思い出も一緒に捨てて…楽して、生きやすい生活…そんな想像だ…

 

────想像をした

 

今、請負った任務を放棄して、404小隊に戻る事を…約束だけでは決められない事があるのだ。このまま任務を果たしても、404小隊に戻れる保証は何処にもない。

きっと、指揮官は怨まないだろう…だが、その選択は自分以外の人形達が自分以外の誰かを助けようと頑張る人形がいるのに…目の前の平和と束の間の幸せの為に、彼らを残してしまう…そんな想像だ。

 

想像して…考えを続けて…ようやく決心がついた。

 

…結果的にHK416は手を振って、AKS-74uを見送った、そして輸送機で待っていたUMP9の前に来た。

 

「9、私はここに残ってしばらく指揮官の副官になる。その間、404小隊は任せるわ」

「416、何言ってるかわかってるの?」

 

勿論だ。

それが分かる奴しかそんなこと言わない。

 

「ええ」

 

確かに、グリフィンの生活に戻る選択、404に戻る選択…どちらも未練がない訳では、ない。

 

「でも、私はやりたい事をやる。知ってるでしょ、アイツらは誰を助けるのかを」

 

だが、私はその前提よりも前に、HK416なのだ、何事にも完璧にこなす。

そのための戦術人形として、生まれた。

 

「…でも、そこまでするのは任務の内に入ってないよ?」

 

生き方を決められのは確かに気に食わない時もある、だが…これこそが私なのだ。だからこそ…気に食わないが…

 

「だから行くのよ。私のやりたい事の為に」

 

私はこの生まれた理由を放棄する事は決してない。

 

「416…」

 

「他人の期待に応えるためにひたすら戦うのも悪くないけど、もう…十分なのよ。アンタらにしろ、グリフィンにしろ誰かの後ろに一生ついていくわけにはいかないから」

 

HK416は404のエンブレムを見つめて、踵を返す。

 

「…任務に参加するのは、私だけじゃない。指揮官だって参加する。公聴会のゴタゴタの時もただ者じゃないって思ってけど、E.L.I.D相手に無敵のあの指揮官よ。他にも、AR小隊の残ったメンバーとそいつらが連れてきた人形の何人かも志願するらしいわ」

 

わたしは404で手に入れられなかった物を手に入れる。未来の為にも、

 

「じゃあ、416…帰ってきてくれる?」

「任務とやること全部が終わったらね」

 

いつもの様に甘えた意見だが、不快感は感じなかった。

私にとってはG11はそんなに大切だったんだろう。

 

「じゃあね」

 

振り向く事なく、歩き出す…私の目的の為に…

 

「本当にいいの?416?仲間と離れて…グリフィンに戻らなくて…?」

 

集合地点では、残った人形達と妖精達が予備電池や食料、救急道具、弾丸を揃えて最後の準備を整えていた。その中にはAR小隊のM4SOPMODⅡもいた。

 

輸送機が来る前に、私はM4SOPMODⅡが知らない事実を私の知る限り白状した。

 

「…そっか。みんなが言っていた事は本当だったんだね」

 

だが、状況を知れば知るほど…M4SOPMODⅡは納得した様な表情に切り替わっていった。

 

「416…私もその救援任務に参加させてくれないかな?」

「……どういう意味か解ってる?そいつはアンタの指揮官を殺しかけた奴よ?私もそう、そいつらを憎しみ全部かなぐり捨てて助ける覚悟は出来ているの?」

「…出来てる出来てないじゃない」

 

ほら見ろ、と内心HK416はそう思った。命をましてや大切な人の命を奪おうとした奴なんて、簡単に許せるわけがない。そんな私の意見は意外な発言で驚かされた。

 

「でも、私は…"やらなきゃいけないんだよ"」

「アンタ…」

「その、アンジェリアって人が何を考えて、何がしたいのかなんて、まだ分からない。でも、そのアンジェリアって人を助ける為に何人ものグリフィンの仲間が傷ついて、死んだ…私もなんども、グリフィンの人形達に守ってもらって、ここまで生きてこれた…だったら私も決めないと私は守られていながら好きに生きちゃいけない、私も任務以外で誰かを守って、生きていかないと」

 

そうか…このM4SOPMODⅡはもう、この命が自分だけのものではない…そう、思って…いや、気付いてしまったのだろう。

だったら私が言うべき言葉もあまりない。

 

「そうね。そこまでしっかりしてるなら、後は好きにしなさい」

「前より口数が増えたね。いいことあった?」

「そのうち分かるわよ」

「はははっ…アンタって、本当は強い奴だと思ってたよ」

 

HK416のわざとっぽい発言にM4SOPMODⅡは笑った。

 

「最近知ったわ、そういうアンタは意外と賢いのね」

「かも知れないね、最近知ったよ」

 

また、お互いで笑いが出る、案外HK416とM4SOPMODⅡは相性がいいのかも知れない。

 

「いろいろな因縁や、しがらみ…そして、絆を知った。私はそれを認めて乗り越えなければ強くなれない」

「そうだね。人間も人も…様々な関係で生きている。つながらない人生なんて…」

 

誰かとか変わらないで生きていく…それは、もうできない事なのかも知れない。

 

「乗り越える方法は分かっているの?」

「えぇ、ちゃんと楽しんで見せるわ」

 

雪が降る、大粒の雪が…雪を運ぶ、その風がだんだんと強くなってきた…

 

「こっちは準備できたよ。そっちの準備は?」

「アンタを待ってた」

「じゃあ、行こうか?」

「えぇ」

 

雪がつもり、2人の足跡形造る。そして、最後の任務へと繋がっていく。

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