たったひとつの願い   作:Jget

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蒙昧な戦場

<同行してくれた皆に、まず感謝を>

 

先に労る理由はこの中の全員が生きて帰れる保証がどこにも無いからだろう。

確かに、志願した人形の数なんて両手で数えるよりも少ないし、弾薬もお世辞にも足りているとは言い難い。

 

<さて…作戦の説明をする。救助対象、この…名前はそうだな、流通している中で一番名前の通りがいいのは恐らくアンジェリアという名前のこの国家安全局、通称保安局に所属しているエージェントとその部下の人形だ>

 

そうか…と思った、そうでもなければ404小隊の人形が残るのは不自然だったから。

 

<どうやら、KCCOの恨みを買ったらしく血眼で追いかけているらしいそこで、だ>

 

この辺りのマップを示した地図からルートが複数引かれた。

 

<この複数のルートを使って、アンジェリアをKCCOの部隊より先に見つけて救出、その後素早くその地帯から脱出する事だ、なおこの辺りには崩壊液の散布による濃度が激しく────>

 

概要はコーラップス液を使ったアンジェリアという迷惑極まりない人をペルシカの友人という理由で"わざわざ成功率の高い指揮官の救出を断念して、私達は危険を超えた作戦に臨む必要があると言う訳だ。

 

「やあ、アンタも残ってたんだ」

「もともとあの指揮官の所属だからね、そっちはいいの?片道切符かもしれないんだよ?」

 

グロック19のフィールドストリップをして、光学照準機をつけていたら、同じくグロックの9ミリパラベラム弾薬を探していたと思われる、MP7に話しかけられた。

 

「私は上昇志向が強くてね。この任務が終わったら、更なる高みを目指せるかもしれないんだ」

「…それが戦う理由?高みを目指した後は何を目指すわけ?」

 

自分だって、考えてこなかったM4A1を守る事…それだけを果たせればそれで…でも、"その後"の事なんて全く考えてやしない。

将来の事を考えていないでだらだらと過ごしている様で、無様に思えて嫌だった。

 

「興味ない」

「は?」

 

MP7はバッサリと切り捨てると、詰め終わったグロック17のマガジンをマガジン入れの袋にしまった。

 

「興味ないよ。これからの事も、はっきり言わせてもらうとアンタの姉貴がやらかした事にもな、だから、私には余計な罪の意識を抱えて、気を使う必要なんてない。それとも、アンタを嫌って周りが避けたんなら私が代わりにアンタの相方になってやるぞ」

 

MP7の言葉に私は…腹が立った、どうしてこうして私の苦労を簡単に切り捨てるのだろう、この傲慢な女は…

 

「見るところ、アンタも相方がいなさそうだけど?」

「私は"天才"でね、1人でも問題なく生きて行けて、周りの面倒も見れるんだよ」

 

結局、敬遠されている事実は変えられていないじゃないか、仕方ない奴だな…。

 

「仕方ない、じゃあ…"手を貸してあげる"から"アンタも私を手伝って"」

「あぁ…構わないさ」

 

MP7は、拒みもせず、されど少し嬉しそうに答えた…これでこそ対等な関係だ。

恥ずかしながら、生まれてこの方おそらくこう言うずけずけとお互いが気兼ねなく、好き放題言える関係と言う名の"対等な関係"今まで築けてなかった。

 

指揮官に示された、ルート沿いに移動して、10分経った。

まだ、E.L.I.Dとは接敵していない。

その間、指揮官から今までアンジェリアとの間で起きた事と、送られた資料で分かった事を教えられた。

 

「…指揮官、アンジェさんというのが、本当にそう言ったの?つまり、コーラップス液が爆発するより前に、資料を渡した…そういう事になるよね?」

『鋭いな、そういうことになるよ』

 

指揮官は細かいところをくまなく確認しながら、M4SOPMODⅡの質問に答えた。

でも…なぜそんな事?そもそも、相打ち覚悟なら味方でもない、他の勢力に情報を渡すのは指揮官が良い方向に動かしてくれたとはいえど、あまり良くはないと思うけど。

 

『資料の中には座標もあった、つまり…万が一の為に私がアンジェリアを助けに行くことができる、状況を作りたかったのかもしれないね』

 

つまり、アンジェリアは自分を犠牲にする手段を選んでいたと言うこと?保険を残して…

 

「指揮官…本当にアンジェリアさんを助けに行っていいの?」

 

もしかしたら、自分達のところに正規軍がチラホラいる危険な中におびき寄せてあの時の様に私達を今度こそ、抹殺するかもしれないのだ。

 

だとしたら、回れ右して帰った方が、私たちが生き残れる可能性は、ずっと確実だと思うけど…

 

『指揮官は言わば船長だ、全員の安全が確認できるまではここを離れるわけにはいかない。まぁ、私は暫くは問題ないだから、今は私のことを考える必要はないよ』

 

まぁ、指揮官なら誰に言われなくてもそうするか…それに大丈夫と言われたのなら、本当に大丈夫なのだろう。

……なんか、刺々しい形のアーマーも着てるし大丈夫なんだろう。

 

『見えたぞ、緑色の煙だ…アレが』

「ここまではっきり見えるほどのコーラップス液の残滓…正規軍以外にも凶暴化した感染者も脅威になりそうですね」

 

緑色の粒子状の煙が見える。これがコーラップス液の放射線か…今までとは、想像もつかないほどの環境の変わり様に一同は気を引き締めた。

 

────

───

 

『────食い止める!走れ!!』

「聞いたでしょ!走れ!!」

 

ユーリ指揮官が1番後ろでA-545ライフルを発砲して、E.L.I.Dを食い止めている。

 

「────うぉおおおっ!!!」

 

だが、バラバラで広く襲いかかるE.L.I.D相手に徐々に人形達は追いつかれ始める。

 

「────急いで!頑張って!!」

 

というのも、少し前にE.L.I.Dとの接敵でG36Cが負傷してしまい、それをG36が抱えているので、彼女を守りながら戦い全体のスピードが遅れているのだ。

 

『弾切れ!』

「代わるよ!!」

 

ユーリのライフルが弾切れして下がりながらリロードをした。

その隙を埋めるため、M4SOPMODⅡが代わりに最後尾に入り、援護に入る。

 

「ちくしょう!」

 

M4SOPMODⅡは毒づいた。

動きはあんなにノロマなのにもう、味方は3人やられている。

それもこれも、指揮官が接敵をさけるやり方を無視してたのにこっちを見つけて発砲してきた馬鹿なKCCOの兵士のせいだ!

 

「はあっ……!はあっ……!」

 

G36達が必死になりながらも、それでも逃走の妨げになっている。

負傷兵を守りながら、戦うのは難易度が高い。

 

「代わって!!」

「あ、はい!」

 

M4SOPMODⅡの代わりにMP5が最後尾に交代する。

 

「うっ……」

 

足の痛みに悶えて、G36Cが足を止めてしまう。

そのとき、G36達の上からE.L.I.Dが降りかかる。

 

「うっ────」

 

2体とも纏めてやられてしまった。

 

「G36達が!」

「いだっ!?やめっ!!いだっ、いやああっ────」

 

肉をE.L.I.Dに噛みつかれ、引き裂かれて悲鳴を上げる2人。

その叫びを聞いた、MP5がとどめを指した。

やりきれないと唇を噛んでいた……その隙が問題だった。

 

「がぅううっ!!」

「あ、え────」

 

G36の時と同じようにE.L.I.Dが上から飛びかかってきていた。

 

「今のは!?」

 

背後からMP5の悲鳴が響き渡った。

人形達が振り向くと、怪物に噛み砕かれ、引きちぎられ悲鳴をあげ助けを乞いながら手を伸ばすMP5の姿があった。

だが、周りのE.L.I.Dを撃たなければと思った時には悲鳴は止み、人形の人工脊髄が容易く引きちぎられていた。

 

「もう、3人やられた!?」

「あんなに遅いのに!?なんで!?」

 

「────うぉおおおっ!!!」

 

E.L.I.Dはこちらの動揺を気にしない。

まっすぐこちらに向かって襲い来る。

 

『足を止めるな!とにかく距離を取れ!』

 

その動揺を破ったのはユーリだった。

ライフルを撃ちまくり、襲い掛かるE.L.I.Dを近い順で削る。

 

「行くよ!」

 

動揺が足を止めていた人形は再び走り出し、E.L.I.Dから全力で逃走した。

 

「────入れ!入れ!!」

 

MP7がトンネルの中にあった、金網のドア蹴り飛ばして中に入る。

やっとの思いで生き残った人形たちもドアの中に入って、一通りの人数が入ったのを見計らって、ドアを閉めた。

 

「奴らは……」

「来てない、ようやく一息」

「────ウぉオオオっ!!!」

 

束の間、E.L.I.Dが扉に向かって突進してきた。

 

「撃て!!」

 

扉越しに人形達は発砲し、E.L.I.Dはくたばった。

幸い、扉に阻まれたおかげでこちらは助かった。

扉をロックして、安堵のため息をつく。

 

「はぁ、はぁ……こんどこそ、一息つけるわね」

「今度はトンネルだよ……そうだ。指揮官、こういう時はどうすれば…」

 

そういって、周りを見回してM4SOPMODⅡは気が付いた。

指揮官の姿が見当たらない。

 

「ねえ、指揮官はどこ?」

「どこって、あれ?いない?」

 

人形らに動揺が走る。

指揮官がどこにもいないのだ。

 

「まさか、はぐれた!?」

「探さないと!」

 

探しに戻ろうとしたとき、扉の奥から、足音が響き渡る。

人形たちはもう引き返せないと思った。

 

「見つかることを信じて探しましょう」

 

RO635の言葉に一同は頷いて、トンネルの中を進んでいく。

進めば進むほど、真っ暗になっていく。

 

「ライト」

 

HK416の指示通り、人形たちは暗闇を照らすため、ライフルに取り付けたライトを起動させる。

 

「まったく、どこまで続いてるのよ…」

 

Ots-14が悪態をついた。

進めども、まったく明るさは変わらず……ただ暗闇に包まれた石の廊下が延々と続いているだけだった。

 

「暗闇で迷子になるのと、怪物の群れのある明かりに戻る、どっちも大差無さそうだ」

「だろうね」

 

まだ、敵が出てこないから少し余裕が出たのか、MP7が皮肉めいたことを言い、M4SOPMODⅡが相槌を打つ。

 

「416、この先、行き止まりだったらどうする?」

「分かり切ったことよ。あいつ等があきらめてどこか行くまで、このトンネルで────」

「ウオオオオッ!!」

 

突然、背後からうなり声が上がり、人形たちは一斉に振り向く。

そこには、自分たちを追いかけて来た、新しいE.L.I.Dが扉を叩いていた。

 

「クソ…驚かせる能力だけ、一人前────」

「ぐごご……」

 

再び、一同が前を向いたとき”奴”が現れた。

病院の時に現れた時、同じあのデカい化け物が……

 

「ひ、引きはがせな────」

 

デカい化け物がVevtorの頭を掴む。

必死に抜け出そうとしたが、戦術人形の力をもってしてもこの怪物の力から抜け出すことは叶わなかった。

そして、Vectorの頭が脊髄ごと引き抜かれた。

人形は全員この光景に驚愕していた。

 

「扉に戻れ!」

 

Vectorの頭が潰されたころには全員、とうに助けることを諦め、あの怪物から逃げることを選んでいた。

まだ扉を叩くE.L.I.Dを壁越しに発砲し倒すと、一番最初についたDP-12が扉を押す。

 

「開かない!!」

 

それもそうだ、さっきロックをかけたのは自分達自身だ。

 

「早く!はやく!ロックを!!」

『────そこにいたか!!』

 

ゆっくりと近づく怪物から逃れようとロックに悪戦苦闘していると、なんと扉の向こうからユーリが現れた。

彼は生きていた。

 

『ここにいたか!早く出るんだ!』

「でも、扉が開かなくて!」

『なら切り裂く!下がれ!』

 

扉に何かが押し当てる音が聞こえる、そして火花とスパーク音が鳴り響く。

人形達は一斉にその場から離れると、扉のロックが切り裂かれる。

 

『出ろ!急げ!!』

 

人形達は一斉に扉から脱出する。

そして、ユーリは奥にいる怪物を暗示装置で見据えていた。

 

「────」

『お前……』

 

膨れ上がった巨漢のE.L.I.D。

あれは軍隊ではB型と呼ばれているタイプだ。

Vectorは脊髄を引き抜かれ、オモチャのように頭を引きずられている。

 

「ぐぐぐく……」

 

B型はこっちを獲物にしたらしい。

 

『来い…!』

 

ユーリの誘いに応えるようにB型はこちらに方向した。

ライフルをB型の足元に投げて、取り付けたタクティカルライトがその巨漢を照らす。

ユーリは飛んでくる拳を壁を蹴りながら走り、避けるとすれ違いざまに首を切った。

首から緑の血が流れる。

 

「がが……!」

 

痛みより、こちらを逃した事をB型は執着している。

それなら、好都合。

 

ユーリは再び襲うB型の動きに合わせて、腰部のワイヤーを飛ばして、自分をワイヤーに引き戻して、一気に接近する。

同じように攻撃を避ける。

さっきと同じ繰り返しを思わせるが、ユーリはもうコレで決める気だった。

意図的に落としたA-545を拾いE.L.I.Dの眼球目掛けてライトを照らす。

 

「────!」

 

眩いライトはE.L.I.Dの視界を奪った。

反射的に顔を手で覆うE.L.I.D、隙ができた。隙が出来ればなんでもいい。

切り傷の中にユーリは手榴弾を差し込みそのまま、ピンを抜く。

 

何かを差し込まれたB型はそれを取り出そうと腕を伸ばしたがその時に手榴弾が爆発。

さらにそのまま引き裂かれた肉体の中にブレードを差し込み、硬い肉を木の根っこを引きちぎるように腕を切りさいた。

 

「う……ごご……ぁ……」

 

そのままE.L.I.Dは体内が粉砕され、ゆっくりと地面に倒れて動かなくなった。

 

『終わったぞ』

「助かった……」

 

人形たちは今度こそ、つかの間の安らぎを得たのだ。

 

『目的の場所まで、後少しだ。そこで信号弾を上げる……踏ん張れ』

 

────

───

 

エゴール達から、隠れて10数時間後…混乱、恐怖、怨讐、様々な物が溢れる、この場所でアンジェリア達は希望の光を目にした

 

「あれは……信号弾!」

「信号弾!!アンジェ、信号弾を確認したわ!!」

 

高台で見張りをしていた、AK-12の報告に弱り切っていた足腰が、急に力を感じる。

 

「…本当に助けに来るなんて」

「イエローエリアか…なら、その身体も助かるとは思うわ」

 

AK-12がアンジェリアを背負うと、外の確認をする。

幸いにも、腐肉喰らいはいなさそうだ。

 

「だが、どうする?外にはまだ巡回の人形招待がうろついている。回避しないと」

 

そのルートを回避しないと感染症よりも先に銃弾か衝撃で死ぬ事になる。

 

「AK-12、何体かハッキングして、感染者と戦わせる事出来そう?」

「可能よ、奴らの行動パターンは味方以外の殲滅らしいわね。私達を追う事急いでる証拠よ、でもリスクが高い。逆探知されて纏めて相手しなきゃいけない可能性もある」

 

だが、どのみちここに居続けるわけにはいかない。

 

「やって頂戴」

「…分かった」

 

AK-12が瞼を開いて、電子戦能力をフル稼働させた。

 

「…OK、これで私達が認知している限りの腐肉喰らいとやりあってくれるはずよ」

「しかし…救援隊の位置は分からないまま進むのも賭けに等しいです」

 

確かに…信号弾の方角は分かったが位置となるとどこで挙げられたのかは検討が付かない。

 

「信号弾の打ち上げられた場所の近くに行って、信号スキャンしましょう」

「そうね、私達ではやり過ごせないだろうし、多少の冒険は必要だとは思う。じゃあ…行くわ────」

「待って!!」

 

突然、AN-94が発砲した、発砲した先は軍の戦術人形だった。

寸分狂わず的確な射撃で1人は破壊したが、他の兵士たちに自分たちの位置を悟らせてしまった。

迫撃砲が襲い掛かる、このままはダメだ。

AK-12らは追撃の迫撃砲を撒きながら、頑丈な建物の残骸に身を隠した。

 

「下ろすわよ…」

「────っ!はぁ…はぁ…クソ!AN-94!信号弾!」

 

探すことすらできなかったが、仕方ない。

危ない橋だが、アンジェリアの言う通り、ここで信号弾を打ち上げよう。

 

「しまった…待ち伏せされてた…!」

 

正解のアナウンスの代わりに今一番聞こえたくない声の主が、無線で喋り出した。

恐らくオープンチャンネルだ。

 

<アンジェリア…よく生き残ったな、これで貴様をこの手で殺せるという物だ>

「エゴール…見たところ、余裕がないのはお互い様って所かしら?」

 

チャンネルを繋ぎ、映像スキャンでエゴールの顔を確認する。

私ほどではないが、それでも装甲はズタボロになり、皮膚は高熱で焼け爛れている。

 

「…ざまぁ、ないわね。感染防止特価のパワードスーツを着ないせいよ」

<その指摘は最もだが、生憎気分はいいぞ?ちょうど部隊を…展開したタイミングで、お前が現れたからな。それに、お前も人の事を言えた立場とは思えん身体をしている様だ>

 

チッ…乗らないか…信号弾がレッドゾーンの近場だったら、彼らに合わずに済んだかもしれないわね

 

「アンタはゾンビになった仲間の弔いを忘れた?それとも諦めた?」

<…そうか、なら貴様は砲弾のチリにはしないでやろう…代わりに俺が仇を取ってやろう!!>

 

戦車の音が聞こえる、流石に大人気ないがすぎる!!

 

「アンジェ、本当に救援は来ると思う?」

「でなきゃ死ぬだけよ!!」

 

────反逆小隊は全力で使える物を全て使いら軍の攻撃を防いでいた。

 

「砲撃よ!!伏せ────」

 

レーザーの主砲が建物の外壁を焼き尽くし、粉砕した。

 

「アンジェ…起きられる!?AN-94、援護を!!」

「了解────!」

「…突破されたのね…AK-12…怪我が…!」

 

腹部に破片が刺さっていた。

恐らく爆発の余波で刺さったのかもしれない。

 

「とりあえず、運ぶわよ…マズイ!」

 

────その刹那凄まじい、砲火が着弾、衝撃で私は意識を失なった。

 

「やっと会えたね、反逆小隊…って、え?…AN-94…?」

「さっきの攻撃はお前達…っ、SOPⅡ…お前…生きて…」

 

言葉は、いらなかった久しぶりに会った旧友との再会した、

 

「良かった…本当に…」

「私も、もう一度会えて、良かった…」

 

お互い今まで思うところはあった。

しかし、2人はお互いが本物だと知りながらも確かめる様にハグを交わした。

 

「どうやって生き延びたんだ?お前の信号は探知できなかったんだぞ?だが、M4は……」

「電力が残り少なかったから、電力が補充されるまでは、戦闘に絞り込んだんだよ。そのせいで、信号は炙り出さなかったんじゃないのかな?」

 

AN-94が、破壊された人形から弾薬の残っている、AK-74タイプのスタンダードマガジンを回収してからのマガジンと交換してマガジンポケットの中に入れた、

 

「でさ、M4が私をどう判断してたの?」

「あ……お前たちはまだ、死んでいないと判断していた。根拠がないと思っていたんだが……M4は正しかったんだな。しかし、だ。できる事なら会いたくなかったが…今は仕方ないな」

「やっぱり、本当なの?」

 

AN-94から、プロテインバーを手渡された、M4SOPMODⅡは包み紙を切りながら説明を求めた。

 

「……すまない」

「い、いや……こっちこそ」

 

答えられる訳ないだろう。

時間を無駄にしたかもしれない。

 

「それで……アンジェリアさんは?」

 

AN-94が、クイッと首を引き上げ戦車の一撃で倒壊寸前の建物中を示した。

建物の中に入ると、そこにはAK-12に背負われて気絶したアンジェリアがそこにいた。

 

「アンジェリアは数分前に汚染液の影響で気絶したわ、幸い命に別状はない。…問題は私達で作戦をする必要があると言う所だな」

「火力は心配しなくていいよ、私達には重装部隊がいるから!」

「重装部隊?」

 

M4SOPMODⅡが、破壊された戦車を指差す。

 

「あの戦車を破壊したのは私達の重装部隊っていう、支援部隊だよ!遠距離から支援できるし、さっきの爆発で気に入ったでしょ?」

「あの爆発…お前の部隊がやったのか…」

 

てっきり、誤射とAN-94は思っていたが…

 

「成る程、という事は暫く希望が持てそうね」

 

建物から出た、AK-12がアンジェリアを下ろしてSOPⅡ達のところにやって来た。

 

「あら……パパ、久しぶりじゃない」

『……』

「ごめん、そんな資格なかったわね」

 

時間が経てば許してもらえる。

そんな、子供が親に期待するような出来事はもう起きるはずはない。

私はもう、なんど彼のタブーを犯したことか。

今回は1番のタブーを犯した。

 

『……大変だったろう。よく、頑張ったな』

 

だが、しばらくしてユーリはAK-12に語りかけた。

それも、自分の苦労が理解したような物言いで。

 

「……ありがとう」

 

だが、AK-12は不快感を感じなかった。

むしろ、少し……ほんの少しだけ、親が子に向けるような感情をまだ持ってくれたことにAK-12は救いを覚えた。

 

『食べるか?』

 

ユーリは食べ物を差し出した……乾パンだ。

AK-12とユーリが一緒の所に居た時、よく買ってくれた物と同じ味のやつだ。

 

「……貰うわ」

 

袋を破って口に押し込むとその味は昔を思い出させた。

 

「ガッカリさせるかもしれないけど、M4はここには居ないわ」

『知ってる。列車に乗ったのを見た』

「そっか……じゃあ、どうしてここに?」

『今後のため、それとお前の為だ』

「────」

 

AK-12は言葉が出なかった。

嬉しさと驚きと戸惑いと……その他たくさんの感情で……

 

「そ、そうよね。証人の確保が必要だもんね……」

『……いや、AK-12。それだけじゃない、俺とお前はちゃんと話さないと行けないって……そう思ったんだ』

 

ユーリも躊躇うように間を置きながら、AK-12に会う目的を正直に話した。

 

「(親子ね……)」

 

しばらく、個人的な話をしている2人の様子をHK416は物陰から静かに見つめていた。

私には親子なんて言う関係が具体的にどういうものか分からない。

ただ、2人は複雑な関係であることはなんとなくわかった。

 

「AN-94さん。私としては、引き続き汚染レベルの低い所への移動を推奨します。その体のアンジェリアさんでは長く持ちそうにないので」

 

その頃、アンジェリアの診断が終わったRO635が状態をAN-94に報告した。

 

「えっと…お前は?」

 

突然、SOPⅡの肩に乗っかっているダイナゲートの方を94は驚いたように見ていた。

 

「あぁ、気にしないで、私はただのアドバイスを────」

「ROだよ、身体がダメになったから代わりにコアをダイナゲートに移植するしかなかった」

「あの、少しだけ一緒だった白メッシュの?……待て、今のは何だ?」

「今の?」

「見えた!後ろのそいつだ!!」

 

AN-94がSOPⅡ達の後ろを指差して、AN-94が射撃した。

 

「軍用人形!!もう嗅ぎつけた?!」

「移動!!移動して!!」

 

HK416が号令をだして、人形達に指示を出して、撤退行動を開始した。殿はM4SOPMODⅡとエレメントを組んだばかりのMP7だ。

 

「殿は私が!!背中は任せた!」

「隣になら、好きに並びな!!」

 

MP7がSOPⅡの要求に軽快に答え、SOPⅡは信頼した表情で、肩を並べて軍用人形の進行を抑えることにした。

 

「もう少し…着いたわ!!」

 

AK-12が別の建物に避難したのを見計らってHK416が重装部隊の支援要請をした。

 

<OKOK!!位置を確認した!攻撃する!!>

 

支援要請に応じた、BGM-71が支援砲撃を開始した。

重装部隊は戦線から遠く離れた所にいる為、E.L.I.Dを心配する必要がない。

暫くして…MP7とM4SOPMODⅡは軍の攻撃を2人で凌いでいた。

 

「十分味方は離れたらしい!!」

「…了解!!これでも食らえ!!」

 

M4SOPMODⅡのFN-ELGMから発射される榴弾が脆い骸骨の様な剥き出しにされた、階段を崩して、軍用人形に上から叩きつけた。

 

<ビリッケツのお2人さん!そろそろ、そっちにでかいプレゼントを送るから逃げといたほうがいいぜ!>

 

ヒューン…と花火が上がったような2人の頭上で音がする。

 

「「…は?」」

「マズイ!!味方の砲撃支援だ!!逃げろ!!」

「撃ってから、言わないでええええ!!!」

 

笛のような音が響き渡り、自分たちのすぐ近くに向かって飛んできたことを否応なしに理解した。

 

「「ウワアアアア!!!!」」

 

重装部隊の近接支援が凄まじい爆発と衝撃が着弾範囲から逃れようとした、2人の背中に襲い掛かった。

 

「死ぬかと思った…」

「私も…」

 

切り札が自分の方にも襲い掛かると言う危険性は今後に備えて、学ばなければならないかもしれない。

 

「今ので…倒したのか?」

「多分ね、とは言え…もたもたしていると次が来るだろうね」

 

M4SOPMODⅡ達も追いついた。

急いで、HK416達が潜伏した建物の中に入っている。

 

「────指揮官。どうして、アイツらは私達を見つけたと思う?」

 

外の様子を確認し、HK416はマガジンを変えながら、ユーリに尋ねる。

 

『恐らく、待ち伏せだ。アンジェリアさんが助かるためのグリーンルートへの道は限られている。事前に網を張れば、釣れるさ。恐らくこの後もこの展開は続く』

「厳しくなりそうですね」

 

HK416の言う通り、戦場はより厳しくなる雰囲気を提していた。

 

「指揮官、HK416。この区域のコーラップス汚染の濃度が上がった。移動するべきだ」

『了解。アンジェリアの体力を考えたら、これ以上濃度が上がるのは危険か……416、人形たちに移動の連絡を』

「分かりました、全員。休憩は終わりよ、移動を始めるわ」

 

HK416の合図で人形達も武器を構え直し、なるべく外を警戒しながら1人1人建物なら外に出た。

 

「アンジェの容態は?」

『あまり良くないな。アドレナリンが有れば、症状の遅延が出来るが…』

「残念…切らしてるわ。RO、次はどこにいくべき?」

 

「指揮官から、前方約400メートル先に、使えそうな拠点が有るとのこと。そこでアンジェリアさんを一旦起こしましょう」

 

ユーリがマップを確認する。たしかにその施設は昔のテレビ局だった所だ、設備も十分だろう。

 

「早く行ったほうがいいですね、待ち伏せするならテレビ局の通信設備がありそうな所は先に取られるかも」

 

 

────旧テレビ局

 

「…クリア!」

『…テレビ局クリア、アンジェリアを中に!』

 

テレビ局の安全が確保されると、AK-12が先に施設のテーブルの上にアンジェリアを寝かせて、アンジェリアを起こした。

 

「私…生きてる?まだ?」

「ええ、全員無事とまでは行かないけど。生きてるわ」

 

私はゆっくりと身体を起こして、周りを見る。

どうやらテレビ局らしい所に避難したらしい、撮影機材の多さでわかる。

 

『しぶとい。そうでないと困るが』

「あんた……もしかして、ユーリ?」

 

フルフェイスでコーラップス粒子を一粒たりとも入れさせないようにギチギチな装備を纏っていた男から、スピーカーでユーリの声が聞こえた。

対感染者用の装備を纏っているのだろう。

 

「やあ、アンジェリアさん」

 

M4SOPMODⅡが私の近くに来た。恐らく、私を助けにはきたのだろうが口元は笑顔だが、瞳は怒っている様に見える。

 

「SOPⅡ?…なのか?」

「私のこと知ってる?いや、M4を仲間にしたんだから知らないはずないか…」

 

M4SOPMODⅡがこの状況では最もな推理を立てたが、実は私はこのM4SOPMODⅡという人形…いや、AR小隊そのものをずっと前から知っていた。

 

「…でも、色々変わってるわよ。特にその肩の…何?」

「あ、私の事は気にせず進めてください」

 

いや、気にするなと言われても気になるだろう。

そのインパクト溢れる見た目は…それに聞き覚えある声がするし…

 

「それはいいんだけど、早いうちにここから逃げたほうがいいわよ。汚染の広まりが早い。"また"感染者と出会うかもしれないわ」

「…416、あなたまで…後、何?"また"って言った?」

 

HK416が、窓の外の粒子を眺めた。

 

「アンタを探している間に1回出くわしたの…その時は10以上居た」

「…10人。そうか…」

 

人形達の数を数える。私達も含めて、今ここにいる人数は10人だ。つまり…

 

「…他の404は?」

 

犠牲になった奴がいるという事だ。

 

「UMP45の介護で撤退したわ。今、私はユーリ指揮官の指示で動いている」

「それでも、M4SOPMODⅡ含めて7人と2人の人形、そして指揮官様がいても軍相手では力不足ですね」

 

戦車いや…装甲車の時点でお手上げになってしまうだろう。

 

「その辺りは重装部隊が火力支援しているから潜り抜けるくらいは出来るわよ、後通信設備もここにはあるから」

「成る程…用意はしてきたという事かしら?」

<こちら、ハニーバジャーです。軍の人形がこちらに集まってきました。大きい建物をひとつひとつ包囲して突入していて、このテレビ局にも来ると思います!>

 

包囲を突破するには敵の増援を含めて、可能な限り殲滅する必要がある…偵察行動をとっても軍の偵察設備を考えると発見される可能性が…

 

「指揮官、アンタに相談したいわ」

『いいだろう』

 

 

────同じ頃、エゴール達は外から、建物という建物を観察していた。

 

「何処に逃げたかは分からんが、必ず汚染エリアの低いエリアへ逃げるはずだ」

 

「了解です。しかし…あの時何故、フレーヴェン少尉は我々に敵対行動を?あの動きは乱心されたとは思えるものではありません」

「…分からん、あの女が唆したのかもな」

 

生き残った、若い兵士が拳を握った。

怒りに震えているのだろう、俺自身も同じ気持ちだからな。

 

「…分かった。大尉報告します。主力部隊の到着は15分以上、遅れるとの事です」

「敵と遭遇したのか?」

 

流石に遅れすぎだ、敵に遭遇でもしたのか?

 

「感染者と遭遇して、迂回を試みるとの事で────」

「感染者は殲滅しろと伝えたはずだ!!分かっているとも!!アレは仲間だ、戦友達だ。その中では俺と共に何年も戦ってきた奴らもいる!!」

 

気づけば、歯を食いしばり、部下の襟を掴んで大声で怒鳴っていた。感染症の傷と高熱の火傷が肉体を蝕み、感情の均衡を乱しているのを感じる。

 

────そいつは仲間だぞ!!フレーヴェン少尉!!

────分かってる!!だが、こうなったらもう彼らはダメなんです!!楽にしてやるしか、方法はない!!

 

別の軍隊の状況を知るという名目で派遣された、壁外調査で嫌というほど思い知った…。

仲間が、怪物になる瞬間を味方殺しになるかもしれないという、躊躇いは生きている仲間を殺す。

あの厳しい現実より恐ろしい世界を…

 

「だが、あのイカれた女のせいで失った。俺たちの邪魔をする…それだけの理由で俺たちのエースだった、俺達の仲間だったフレーヴェン少尉はそのせいで殺されかけて、軍を追い出された!!今回はコーラップス液を使った!!アイツらそういう奴らだ!!」

 

最早、猶予はない。周りの兵士達を見渡す────

 

「お前達の気持ちも分かっている。俺も本当はあの感染者達を殺したくはない。────だが、はっきり言わせてもらう。アイツらはもうダメだ、俺たちでは救うことが出来ない!!」

 

一刻も仲間の為にも、時間をかけてる暇を作るわけには行かないのだ…そのチャンスを失う前に、仲間には本当に申し訳ないが、ここで殺すしか…ない。

 

「上等兵、主力部隊はいつ到着する?」

「────大尉、予定通りに到着するとの事です」

 

 

無線機の向こうから、爆音の音が伝わる。

時間が短縮されたのに、あまり嬉しいという気持ちも達成感も湧かない、これは作戦を完遂する使命感ではなく個人的な復讐だ。

 

「彼らの魂は今日安らかになるだろう。…そして、俺たちはその罪を犯した奴に復讐を果たす!!」

 

濁った瞳は、唯一残っていて、そこにアンジェリアがいると思われるテレビ局を眺めていた。

 

「…成る程、分かった。そうね、ここに固まるのもゆっくりすり潰されるのと変わらないわね」

『ああ』

 

ユーリとアンジェが談義した結果、こっそりこのテレビ局から出て、別の拠点に隠れることにした。

 

…だが、

 

「────しまった、発見された!!」

 

救援隊の行動は発見されてしまい、兵士や軍用人形が集まってきた。

どうやらKCCOは砲撃で、動きを遅滞させその隙にルートを封鎖する気らしい。

 

<貴様らは包囲された!投降するか、この砲弾で消炭になるか選べ!!>

「94、もう一度、私とMP7で軍を少しの間、押さえる。その間にアンジェリアを!!」

「了解!!アンジェ、移動しま────っ、アンジェが気絶した!」

『あのクソが!』

 

状況が悪くなり、ユーリは思わず悪態をついた。

まだ、話し終わってない内容があったのかもしれない。

 

崩壊液の影響でアンジェが気絶してしまった。

早い所安全なエリアに運ぶ必要があるのは勿論、あの砲撃に当たらない方法も考えなければ!

 

『ハッタリだな』

 

ユーリはエゴールの宣言をハッタリと確信した。

 

「え?どうしてです?」

 

『単純な推理だ。四方から撃たれていない、四面楚歌だって全方位で歌を歌う。だが、今の銃撃と砲撃は北と東だけだ。RO、南や西を確認してくれ』

「…見えた。エゴールはハッタリをかけてる、その証拠にエリアを包囲できてない、前方にある突破口を目指して!」

「全員、ROの誘導に従って!!物陰を盾にしながら移動するのよ!!────」

 

 

…10分後

 

どうにか、軍の追撃を振り切り、廃棄されたビルにたどり着く、ここなら汚染の影響も軽減されるはずだ。

…しかし、ここに立て篭もるだけでは今度こそ包囲されるか、砲弾の餌食になるかだろう…

 

「指揮官、私と416なら鉄血の信号を偽装できる。信号が重なって探知されやすくなるなら、囮にはなれるけど…」

『二手に分かれて、あなた達で軍を引きつけ、その間にAK-12とAN-94でアンジェを治療する…』

「そうそ」

 

危険な行為ではあるが、アンジェのバイタルが弱まっているのなら探知されづらくなるし、どちらにせよアンジェの治療はやらなくてはならない事だ。

 

『分かった。けれど、気をつけるんだ。軍に見つからなかったとしてもE.L.I.Dに見つかるかもしれない。

 

ユーリの許可を得て、M4SOPMODⅡとHK416が信号を偽装して、ビルから出て、軍の医療現場に向かった、アドレナリンを取りに行くのと囮になる為だ。

 

「……っ」

 

少しだけ、アンジェリアの意識が戻ったらしい。

 

『欲しいものはあるか?』

「地図…それと、水を」

 

AN-94が水筒の蓋を開けて、水をアンジェの口に流し込んだ。

 

「まさか、直々くるなんてね」

『崩壊液の影響を受けた、動物の下敷きになってもいましたよ。タフですね、アナタも』

「それも…もう終わりそうかも…取り敢えず今は────」

 

ユーリとアンジェがここから如何やって生き残れるか談義を重ねた、談義はそう時間もかからず、結論が出た。

 

「指揮官と話した、取り敢えず安全な撤退ルートの確保するのが一番だと決まったわ、ルートは引いてあるんだけどその先の施設は指揮官や416達がやってくれる事になるわ」

 

だが、それをするよりもまずは今この建物を包囲した軍の偵察部隊をどうにかしなければならない事だ。

 

「指揮官…いえ、パパ。外の事は任せたわよ、アンジェは私達が守る」

『ああ、そうだな。お前の仕事を果たせ』

「今度、再開出来たらゆっくり話し合いましょう?積もる話もあるし」

 

────その一方、その頃M4SOPMODⅡ達は

 

「戦車は?」

「通りすぎた……よし、今なら行けそう」

 

M4SOPMODⅡ達は静かに速やかに軍の拠点まで進んでいった。

 

「スキャンには、何個か生きてる人間の信号が残ってる、確認するわよ」

「いや…この乱れ用は感染者でしょ?生きていたとしても、感染者がここにいる時点で逃げ出さない方が変だよ」

「…最後まで逃げちゃいけない所もあるでしょ?」

 

案内板に書かれた救急室と書かれた電子版を指差す。

 

「信号はこのドアの後ろよ」

「コイツ、使えそうだよ」

「確かに人がいるわね…でもこの立ち位置は…」

 

M4SOPMODⅡがブリーチング用のハンマーを拾い上げ、唸り声が聞こえる、明らかにやな予感がする…突入の姿勢を取り、ドアの鍵を叩き潰した。

 

ガムを食べている様な音が聞こえる、這いつくばるような音もだ。

M4SOPMODⅡが、ドアをハンマー殴ったのと同時にドアを一気に蹴り飛ばした。

 

「ぐぅあああアアアァァァァ!!」

「感染者────」

 

素早く、M4SOPMODⅡが飛び出した2体の感染者の胴体を打って体勢を崩した瞬間にサイドアームのグロック19でヘッドショット。

それでも微かに動こうとした感染者にトドメのヘッドショットをお見舞いした。

 

「まぁ、こういうことよね」

「…416、部屋の隅…」

 

部屋の隅に目を向けると、そこには何人かの生き残りが体を丸くして縮こませていた。

 

「お医者さん?」

 

恐らく、彼らは暫く前は正気を持っていたのだろうが、症状が悪化して院内は混乱状態、結果この有様…だろうか?

 

「症状は軽そうだけど…」

 

M4SOPMODⅡが生き残りの目にライトを当て、症状を確認していた。

 

「…あいつらを…助けようと…ゲホッ」

 

死体のことを話しているんだろうか。

こんな状態になって、彼らを助ける方法なんてもう無い。

人形の自分の体に感謝する時が今日どれほどあったことか…

 

「…あった。アドレナリン!!」

 

HK416は物色した箱の中から、アドレナリンがあったのを見つけた。

 

「待ってくれ……それを持っていったら、病院の皆が……」

「病院……?」

 

まさか。

M4SOPMODⅡは医者と思しき2人にしゃがみ込んだ。

 

「ねえ、その病院って研修生が残ってない?」

「ど、どうしてそれを」

 

M4SOPMODⅡは確信した。

彼らは軍に連れ去られたあの病院の医師たちである事を。

 

「その人にあったよ」

 

医師の目が変わる。

 

「彼女はどうしてる!?あの子は物覚えがいいが、まだ経験が浅くて……」

 

医師の心配はまるで、慣れない仕事を我が子を心配しているようだった。

 

「彼女は……」

 

戦術人形に嘘はつけない。

M4SOPMODⅡは全て正直に話した。

研修生があの化け物に酷い殺され方をしたこと、

病院には他の施しようのない人たちが横たわっていたこと、

自分が輸血に失敗して……死なせてしまったあの、女の子を事を。

 

「お前は!!」

 

医師は嗚咽を漏らしながら、M4SOPMODⅡに掴みかかる。

いつもなら振り払うが、今のM4SOPMODⅡにそんなことはできない。

 

「────お前のっ……せいでっ……」

「……本当に、ごめん」

 

M4SOPMODⅡは悔しさで唇を噛みながら、目の前の医師たちに謝り、涙を流していた。

 

「私の、せいなんだっ……!」

 

これは、私の責任だ。

私が人を救うための能力を軽く見ていたから、起きたことだ。

────私は殺人をしたんだ。子供をあんなに小さい子を助けられなかった。

M4A1なら、きっと出来ていた。彼女は人形、人間、両方の医療ライセンスを持っている。

 

HK416も何も言えず、ただ目を逸らすように外の景色を見つめていた。

 

「指揮官…偵察拠点を攻略した途中でアドレナリンを見つけました、これで…」

<416、良いニュースをしてくれたところ、申し訳ない。こちらは良くない状況だ。軍の偵察部隊の動きが変わった、見つかった可能性もある。恐らく、アンジェリアが君達と一緒にいる姿を確認できていないからだろう>

 

「な…アンジェが見つかったかも!?」

 

だが、探す側からしてみれば、アンジェの姿を確認する事は、確かに重要だろう。そこで、姿が見つからないとなればこちらのフェイクだとバレる可能性も否定はできない。

 

「塗料缶か…」

<それだ……>

 

指揮官が何か思いついたらしい、また私達には思いつかない人間なりの方法でも思いついたの?

 

────その頃…アンジェリア達は

 

「悪い…ユーリ、色々考えたけど…いい考えは出なかったわ」

『ああ、こっちもあまり良い考えがない』

 

その頃、アンジェリアはユーリとも連絡を取っていた。

 

「エゴールの目的は、私よ…」

『ああ、カーターさんのお邪魔虫な上にこのコーラップス液の地獄を作ったからな』

「ビルから離れればきっと…彼らの注意を引けるわ、流石に今回はお手上げね、私1人なら思いつくけど…全員を生き残らせる方法は分からないわ」

『そうか。反逆小隊を諦めるんですか?私は貴女を助ける為に来たんです、此方の任務を失敗させないで欲しい』

 

アンジェが自分やれる事が尽きたように残った水筒の水を飲み干した。

 

「失敗は誰もが経験することでしょ?…アンタは悪くない、今日…この日に起きた出来事に関しては…ね」

『当事者じゃ無いからこの事から諦めろ、と?ならば、俺にAK-12やAN-94…そして、M4達はどうするさせるつもりです?』

 

指揮官は、納得いかない様子で食い下がる。

確かに…私達の事は兎も角、M4の事は諦められないだろう。

 

「前の件はここで謝らせてもらうわ…ごめんなさい、あんなことになるなんて、思いもしなかったの。釈明はしないわ……でも、悪い事をしたという気持ちがあった事は知っていて欲しいの」

『言い訳は顔を合わせた時にしてもらいましょうか?また、自分の記録を消して死人にでもなるおつもりですか?行っておきますけど、AK-12の面倒見たくありませんからね?』

 

マジかよとAK-12はわざとらしいボケをする。

 

きっと、M4SOPMODⅡの記憶の行き違いもアンジェがAR小隊の記憶を消したのが原因だという事を指揮官は感づいているのかもしれない。だから、予め断る旨を示したのだろう、これ以上"嘘"にはさせない。

 

『良い方法はありませんが、私はこの状況をどうにかできるかもしれない方法を思いついてますしね』

「え…いま…何て?方法が…ある?」

 

そういえば、指揮官の考えを聞いていなかった。

まさか本当に打開できるかもしれない策を思いついたのなら、藁にも縋れるだろうか!?

 

 

 

 

 

────数分後

 

「────大尉、アンジェリアだと思われる人影を見つけました!」

「何だと?」

 

その報告を聞いた、エゴール大尉は食い気味にやってきた。

 

「大まかな姿ですが…髪や体型は合致します」

「もっと明白な画像はないのか?」

「遠距離信号スキャンで追った時に撮ったものなので…ですが、確かに昏倒状態のまま別々に行動している様です」

 

「そうか…」と言って、大尉は部隊をビル付近に残す様に指示して、アンジェリアだと思われる、人形を追うように命令した。

 

ビルの監視も引き続き行うらしい。

人手が足りないとは言え、偵察を怠ったら挟撃されかねないからだとか。

 

 

 

────

 

件のアンジェリアを見つけ、袋のネズミにして、潰そうと部隊を展開させた瞬間。

 

<私は味方よ!殺さないで!!…ゲホッ…ゲホッ…気付いたらここに…助けて>

 

通信機から、けたたましい声が聞こえてきた。

どうやら突入した味方兵士からの無線から聞こえた声だった。

 

<大尉、こちらはアンジェリアだと思われる目標を確保しましたが…確認した所、どうも我々のが徴用した医療スタッフのメンバーに塗料をかけて仮装された様です>

 

────

 

「ここでいいわ」

「……本当に?」

 

背中に抱えた医師がそこで降ろせと指示する。

M4SOPMODⅡは怪訝な表情を浮かべながら、医師を降ろした。

 

「……」

「なによ、傭兵らしくない顔」

 

医師はこっちを睨む。

その表情にM4SOPMODⅡは気圧されてしまった。

 

「どうして、協力してくれたんですか?」

 

塗料缶を見つけた時、それをアンジェリアに偽装しようとした考えを出した時、M4SOPMODⅡは真っ先に反対した。

「患者も新人も奪われた人から、もっと奪うのか」と、内情を知ったユーリはその計画を取りやめにしようとした。

けれど、続けさせるように言ったのはその医者だった。

 

「……一生怨んでやるって、そう決めたから」

「怨むって……」

 

嘘だ。

M4SOPMODⅡでも、それは嘘だと見破れた。

 

「アンタ達がどんな事の為に戦うなんて知らない。けど、私はアンタたちの本性を知ってる。その本性を知った私は怨み続けるの、どんなに褒められても恨むやつがいるって知らしめる為に……」

 

それは言い訳だ。

本当は、本当は、無理だと分かっていてもその子供を助けようとした礼をしたかった。

けど、それは言えない。

すでに、この人形やその部下であるがこんな凄惨な場所を作った。

 

「……生きて」

 

どこまで医師達の本音を理解できたか、M4SOPMODⅡ自身も不安であった。

けれど、理由ははっきりしないまま生きていて欲しいと思った。

 

「…」

 

目当ての人間ではない事を知り、悔しそうに歯軋りさせたエゴール大尉は「治療してやれ…」と短く呟いて、こめかみを強く押した。

 

「アイツは時間を稼いでいたのか…クソッタレが────奴はビルの中にいる!!」

 

そして、思い切り戦車の装甲を当たる様に殴り、ビルの方へと向かった。

あの時の大尉の顔は随分と恐ろしいものだった、今度こそアンジェリアに会ったら、原型も残らないほど殺すに違いないだろう。

 

 

…10分後、アンジェリア達が隠れ場所に使っていたビルがKCCOに包囲されていた。

 

一方、M4SOPMODⅡとHK416はその軍が包囲するよりも先にビルに戻り、取ってきたアドレナリンを注射していた。

 

「…助かったわ、これで頭も少しは回りそうね」

 

グリフィンの救助部隊とAK-12達はビルの中で最終防衛線を張っている。

 

「本当にやるの?正直自信がないんだけど…」

『出なきゃ死ぬだけ、ここにいる全員がそれを承知している、そして死なせない様にするには貴女の能力が試されている、そう言う事です』

 

簡単には言う。でもユーリ自身相当迷って出た結論なのだろう。

これが成功した試しも失敗した試しも知っているであろう彼だからこそ。

 

「でも…SOPⅡや416は、そして…あなたもここで倒れるわけには行かないのよ」

「……でも指揮官からの命令なんだ。いくらアンジェリアさんに言われても、予め作戦を聞いて、やろうと決めた作戦の命令に逆らうわけには行かないでしょ?」

 

…思わず聞いてしまった、「どうして、私をそこまでして助けようとするのか?」と

 

『認めたくありませんが、こんな、先の見えない状況です。まずは目先の事をどうにかする、後のことはその時に考えるしかない、それに…これ以上に危険な任務は何度も経験しています、これもその1つですよ』

 

前の狙撃以降、ファリカ達から連絡も支援もない。

KCCOとはやり合いたくないんだろう。外務省のお偉いが今もあの爺さんなら、他の決定的なチェックメイトを待っているんだろう。

 

「流石、我が国最強の特殊部隊"ヴェルークト"の隊長さんね…信頼性があり過ぎるわ。でも、あなたはその強さを個ではなく全で考えている、だから仲間一人一人が重要だとは思っている癖に、自分の重要さには気づかない」

『前に別れる前に言われた事と逆ですね』

 

恐らく、いや確実にその時の私はあなたの本質に気づかなかったのかもしれなかったわね。

 

『さて…そろそろ、予想が正しければエゴールさんが乗り込んで来るだろう…一流役者並の演技をよろしくお願いしますよ?』

 

 

ユーリが姿を消すのと同時に下の階から足音が伝わってきて、漸くその男と対面できた。

やって来たのは…

 

「アンジェリア」

 

当然。

 

「エゴール大尉、久しぶりね」

 

視線があったその時────エゴールのサイドアームであるMP443と、アンジェリアのサイドアームである、グラッジ1が同時に抜き出された。

 

 

 

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