たったひとつの願い   作:Jget

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悪と戦え

エゴールのサイドアームであるMP443と、アンジェリアのサイドアームである、グラッジ1が同時に抜き出された。

 

「随分と無駄のない動きだ。敵じゃなければ惚れていたところだよ…だが、私にはコレがある」

 

アンジェリアは起爆装置を掲げる。

 

「不思議だと思わなかったの?そもそも、なぜ私達がこのビルをどうして選んだと思う?」

 

エゴールの無線に報告が来た、

 

<大尉、ビルにIEDが設置されています!!>

 

エゴールは冷や汗をかいた、現在こそ見つかった数は少ないだろうが、恐らくかなりの数が設置されているに決まっている。

 

「どうやらようやく、お気付きかしら?そうよ、私はお前達に籠城する様に見せかけて、敵を集めさせた。わざわざ囮まで使ってね。後は準備が完了次第お前達が来るのを待つだけ…私の目的はお前達に裏切りの罪を償わせる事だ!!」

 

「────裏切りだと?!貴様も同じ事を言えるのか!!この狂人が!!」

 

歯を震わせて、怒りの表情のエゴールにアンジェリアはヘラヘラと笑う。

 

「あぁ…悪かった悪かった、だからといって起爆装置を押す前に殺す…なんて、場当たりなそんな手段はお勧めしないわよ?上にいる人形達にも予備の起爆装置を持たせる。結局お前とその部下が死ぬ事には変わりがないから」

 

焦っている。

エゴールは気づかなかった、濁った瞳は消えそうになりかけている事を、その額から流れる焦燥の汗を。

 

「それで脅しているつもりか────!」

 

「もちろん。それと、1人で来れたご褒美だ、もう1ついい事を教えてあげるわ。このビルに付けられた爆弾はコーラップス液が保存しているカプセルも一緒に取り付けられている、爆発したらどうなる?────米蘭島の再現が起きるのさ!!」

 

ケタケタ…乾いた笑い声が反響せず響く、エゴールの今、まさに疑心暗鬼かもしれない表情を楽しんでいる様に、

 

「ほざけ!貴様にそんなことができるはずがない!!貴様は嘘をついている、使い切ったはずに違いあるまい!!」

「そうかしら?普通、使うときは念のためにもう1つ取っておくべきじゃないかしら?」

 

エゴールはゆっくりと拳銃を片手で保持したまま、もう片手で通信機を起動させた。

 

「このビルに高濃度コーラップス液の反応は確認できるか?」

<もうやっています、しかし周辺のコーラップス汚染が酷くて、計測が…>

 

エゴールが拳銃を構え直す、アンジェリアはその動きを見逃さない。

 

「フフフ…どうやら私の話が現実味を帯びてきたのが分かってきたようね?」

「なら、そのスイッチを押せばいい。それで貴様の目的は達成される」

 

エゴールの前提を聞いた、タイミングでアンジェリアが本題に入る

 

「…確かに償わせたい。そしてお前が憎々しい表情を浮かべながら死ぬ姿を見るのも悪くない…そう思ったけど、アンタがここまで食い下がる姿に恐れ入った。…だから、ここで交渉してあげる」

 

偉そうに指示を出す、悪いイメージの上司の様にアンジェリアはパイプ椅子に踏ん反り変える。

 

「私と、私の人形達を見逃せ。そうしたら、お前と部下の命は見逃してあげる。あまりつけ上がらないでよ?コレは貴方にとっても千載一遇の家族のところに帰れるチャンスよ?短絡的な思考で得を捨てるわけにはいかないでしょ?」

 

「軍人が損得の問題をしないのは貴様も分かってるはずだ!!アンジェリア!!」

 

エゴールが一歩踏みより、此方に近づく。

 

「えぇ…でも、私は軍人以前に貴方という男を良く知っているわけ、部下が可愛いのはよー…く、存じているわ。アンタは予算不足で喘いでいて、軍用人形でも繊細に扱わなきゃいけない、外務省のスペツナズ連中と違って、本心ではそいつらに死ねとはアンタは決して言えない、ましてや復讐なんて言う、小さいもののためにね」

 

「俺の部下は犠牲を恐れん!!」

 

「かもしれないわね。だけど、それが賢い選択だとでも?残されたアイツらの家族の事を考えてみなさい?私がこのスイッチを押せばここにいる部下以外の人間も不幸になるのよ!」

 

ようやく、エゴールの表情に動揺が走った、流石に家族の発言は効いたらしい…エゴール自身が家族を持っているからこそ聞く発言だ。

 

「…腹は決まった?お互い苦しみながら生きるか?それとも大事な誰かを悲しませるか…どっちかその選択肢はアンタのものよ!」

 

アンジェリアの獰猛な笑みを見た、エゴールは…ゆっくりと銃を下ろした。

 

「……貴様の勝ちだ、アンジェリア。どこかで野垂れ死ね」

 

エゴールは知っていた、ここまで来たらもう選択肢は無くなっている事を

 

「全員に通達、コーラップス液の爆弾が仕掛けられている可能性がある、直ちに半径3キロ外の安全地帯まで撤退しろ。これは命令だ」

 

軍が撤退を始めたのを確認して、アンジェリアはエゴールの方を見た。

 

「アンタは軍人として…いい上官だよ。ユーリがアンタを自分の後釜に推すのも頷ける。残念なのはついていく相手を間違えた、それだけよ」

 

AK-12とAN-94が上から飛び入り、アンジェリアをAK-12が回収し、AN-94が銃を向ける。

 

「何のつもりだ?」

「牽制よ。アンタを今ここで殺しても何の意味もない、奪い合いの対象もいない現在ではお互い殺し合う理由もない。なら顔を合わせないで済ませればいい。そう思わない?」

 

AK-12が窓まで近づいた。

 

「コイツは上げるわ。今日の事はお互い忘れられそうにないわね」

 

その後、AN-94とAK-12は窓から勢いよく飛び降りた。

 

 

 

「────なかなかの役者だったわね。アンジェ」

「えぇ、途中で何回か冷や汗かいたけどね…」

 

アンジェリアは、ビルの中でユーリに提案された時の事を思い出す。

 

「────で?ユーリ、その方法は?」

『重装部隊だ、アンジェリアさんもう一度、悪人なる気はありません?』

 

「重装部隊?主力とでは対抗できないんじゃ?」

『重装部隊ができるのは攻撃だけじゃ、ありません。残りの材料で、爆弾を作る事だって可能です』

 

「しかし、その爆弾程度で戦車を殲滅するのは不可能です」

 

「────いや、違う。まず、作った爆弾はこのビルに設置する、それを単独でやってきたエゴールとの交渉材料にするつもりよ」

 

そもそも、爆弾程度で驚く以前にエゴールは自ら来てくれるのか?

 

────いや、間違いなく来る。アイツは面白味のない男だが、仲間の為には自らをかけられる男だ…だとしたら、衝動的になる対象として私が居るこのビルに向かって直接手を下しにやってくるに違いあるまい。

 

それには重装部隊の移動…爆弾の生成、及び設置など諸々の理由で時間がかかる。

 

だからこそ、"偽物の私"を作り、気を引く必要があったのだ。

 

「で…その場合、この後はどうやって助かるのかしら?」

『…その心配は必要ない。貴女は貴女が助かる事だけに集中してください』

 

────嘘ね。こういう時に限って、彼は自分は"既に手を打っている"という嘘を平然とつく

 

「そう言って今までアンタはどれほど自分だけ面倒を背負ったか…もう、いない!?…ああ…クソ!あの馬鹿!」

「────さて、勝算は?」

「10%…良くても」

「あら、ポジティブな数字ですこと」

「成功したら、最速でここから離れなさい、バレたらマズイ」

「分かった、命令を待ってる」

 

AK-12に下された、残骸で座り、アンジェリアはグラッジ1を見つめた

 

「弾薬…残しとけば良かった、アイツには悪いけど、もしもの際に殺せるかもしれなかったからね」

「────また…やる気だったんですか?」

「アレはブラフよ…予備があればよかったんだけどね…」

「もし?本当にあったら?指揮官は貴方から数キロも離れていないところにいた。指揮官も道連れにする気だったのなら…!」

「SOPⅡ…!」

「だとしても、私は使ったでしょうね」

「お前────」

 

M4SOPMODⅡは見たこともないほど、強い眼差しで睨みつけ、アンジェリアの服の襟を掴んだ。

そうとも、あんなに関わり合いのない人間が踏み台になった。

 

「やめろ、SOPⅡ。こうして何も起きなかったのが、アンジェリアの行動を証明している、彼女も本心では使いたくなかったんだよ。多分、飼育員のためにもね」

 

M4SOPMODⅡは、MP7の発言で暫く考えたが暫くすると溜息を吐いて、アンジェリアの服の襟を離した。

 

「…使われなくて、本当によかったよ。使ってたらアンタを敵だと思ってエゴールの奴より先に殺してた」

「…そうかい」

 

気に食わない…彼女の何処に指揮官は惹かれたんだ…?と考えていた

 

「後はここから歩いて離脱できれば任務完了よ、SOPⅡ」

「…うん、そうだね」

 

この先にいるのは軍の追撃もない。いるのは感染者とあの白い敵か。

多いし。

でも、M4SOPMODⅡもROの発言で少しだけ笑顔を見せていた。

 

「指揮官、これからどうする?」

『……そうだな、友人に頼ってみるか』

 

ユーリは無線機をダメ元でとある周波数に合わせてみた。

 

『ファリカ、出られるか?』

<おや、周波数は折り返しが出来ないようにしていたのですが>

『なんというか、君が何かを変更するときは癖があるから』

 

────ザー…というノイズがかかり、遅れてユーリかけた無線機から返信が帰ってきた。

声は前に連絡してきたファリカからの声だ。

 

『ダメ元で聞くが、俺たちはここから出たい。手伝いはできるか?』

<援護射撃が必要ということですね?……少々お待ちください>

 

無線が置かれた音と、何か話し声が聞こえた。

 

<いいですよ。ああ、位置の方は把握しております。こちらで比較的安全なルート指定しつつ、我々の援護と……あなた方の能力で汚染地域から脱出して……あ、ちょっと!困ります>

 

また、何か話し声が聞こえる。

すこし、もめているらしい。

 

<ずいぶん、好きにやってくれたようだな>

『カーター大佐……』

 

一同に緊張感が漂った。

けれど、ユーリは深呼吸をして続けて無線に話しかける。

 

『誰もが自分の考えた悪と戦え。そう教えてくれたのは、あなたです』

<教えを忠実に守っているつもりということか?……フン>

 

奥から、さらに揉めているような話し声が聞こえた。

ファリカは外務省でカーターは特殊作戦群だ。

ファリカより階級が遥か上のカーターとはいえ、現場での越権行為は易々と認められない。

 

<なら、お前はそれでいい>

『……え?』

<言ったお前が驚いてどうする。だが、あの生きることに関心が失せていたガキがよくここまで考えたものだ。お前は好きにすればいい、だがもう加減はしない。……私はこれで失礼する>

 

無線からまた、何かのやり取りのよう音声が聞こえて……

 

<あー……すみません。ちょっと、無線がとられてしまいまして>

 

話し相手が元のファリカに戻った。

 

<先ほども話した通り、こちらであなた方の援護をします。援護は私と……そうですね、一緒に来ていたグレゴリーもしてくれるので、あなたの想像よりは快適に撤退できるでしょう>

『グレゴリー?なら、LMGを?』

<はい。PKPで援護させます。準備が出来次第、こちらから連絡致しますので……そこでしばらくお待ちください。グレゴリー、来てください>

 

暫くして、また何やら話し声した。

保留中、ユーリは片膝をついて呻き声を隠す。

……まずいな、だんだん身体が思うように動いてくれない。

 

「……あの」

 

弱ったユーリの声は何かに耐えているようで、怪我をしたのか?と一同の不安を煽る。

 

「指揮官…大丈夫?」

 

大丈夫って?HK416がそんなことを聞くなんてな。

ああ。きっと、ひどい顔をしているんだろう。

 

<隊長、今グレゴリーに支援に向かわせました。予定ルートを送ってください>

『こんな感じだ』

<はい、確認しました。なるほど、比較的に安全なルートという事ですか、了解しました。では、私もより有利な位置に移動します>

 

立ち上がる音が聞こえる。移動する気らしい。

ユーリは誰も見てない事を確認して、興奮剤を注射する。

これに身体を回復する機能はない、疲労を誤魔化すだけだ、それに過剰摂取はオーバードーズを引き起こし、肉体の破壊と依存症を引き起こす。

これで3本…これ以上は廃人コースか……

 

『質問いいか?』

<なんでもは無理ですよ?>

 

大丈夫だろう、"あの方"の事までは聞かない。

 

『グレゴリーが来ているなら、"ノーイ"達も来ているのか?』

<もちろんです。けれど、彼らはエゴール大尉達の撤退の為にE.L.I.D駆除をしている所です>

 

ああ、だからカーター将軍はファリカの近くにいたのか。

 

<あ、そうだ。隊長、アキな事は知ってますか?私達はまだ、連絡取れず困ってまして……今日、アナタと連絡が取れたからもしかしてと思い>

 

アキ……アイツ、公聴会の時から突然現れたが……

そういうことか、彼女は今は軍隊にまだ戻ってないのか。

 

『ああ、前にあった。ほら、あのニュースになった公聴会でアイツが関わっていた』

<……あの方の策に?>

『そうだ。多分、アイツは"あの方"の命令を実行している最中なんだろう』

<そういうことだったのですね……分かりました、まずはアナタ達をここから脱出させましょう、詳しい話は聞けたらで>

『ああ、頼りにしている』

 

無線の会話が終わった。

ユーリはとりあえず、ここから近くの車で逃げる事を伝え、その支援はもらえる事を説明した。

 

暫く待って────

 

<隊長、こちらは準備が終わってます。コールサインはヴェルグ4でお願いします>

<よぉ、ユーリ!お前も災難だな。まぁ、俺たちに災難以外の居場所もなさそうだが。コードはヴェルグ3打知ってるだろうがな>

『ああ、大丈夫だ。なんとしても、ここを脱出してすこし…休もう』

 

しばらく、待って……無線から2人の支援者の連絡が来た。

 

『災難にしか居場所がないのはその通りだな、だがまたお前達と戦えるのは不思議なことに心が躍る』

<フフ、そうですね。私もそう思います>

<いいねぇ、ユーリ隊長はいつも通りってわけだ>

 

ユーリとファリカはお互いのことを予想済みかのように親しげに語る。

HK416もM4SOPMODⅡもこんなユーリは初めて見る。

 

<まずはまっすぐ進んで。曲がるべき場所が見えたら、無線で言います>

 

ファリカの指示に従い、一同はまっすぐ進む。

 

<止まって。次の角を左です>

 

指示通り、左を曲がる。

しかし、曲がった先には……

 

「あの化け物……」

 

M4SOPMODⅡが病院内で出くわし、トンネルではVectorの首を引きちぎったあの大きな怪物のようなE.L.I.Dがいた。

 

<気にせず進んで。それは私の獲物です>

 

無線からファリカの声と、B型のE.L.I.Dの頭が吹き飛んだ。

そして、遅れて鳴り響く銃声。

わからないけれど、とても遠い距離から発砲されている。

 

「あれは…!」

 

M4SOPMODⅡは思い出した。病院で襲われた際、誰かに助けられたことを。

自分を助けたのはファリカだったのだ。

 

「後ろからも!」

 

反対側から、10ほどのE.L.I.Dが押し寄せてくる。

 

<それは俺がやる>

 

無数の銃声が群れを成したE.L.I.Dを蹴散らす。

この連射力は、グレゴリーは普通のPKPではなく、ブルパップのPKPを持ち出したなとユーリは推察する。

 

<寄るなよ、カスども>

『グレゴリー、お前は援護無しで大丈夫か?』

<お前が思ってるように近いところにはいるが、お前よりは大丈夫だ。それよりもグロヴやヴァレリアの小言を聞く方が心配だな>

<あの2人は隊長の事がお好きでしたからね>

 

アイツらか。

グロヴとヴァレリアは部隊のなかで一番の後輩で、ユーリのことをよく慕っていた。

 

<しかし、こういうシチュエーションだとお決まりの3人だな>

『ああ、意図したわけじゃあないんだけどな』

<運命ってやつですね>

 

意図したことではない。

だが、重要な時は最後の締めくくりはこの三人でやっていた。

 

『いい事を言う』

 

また前方から現れるE.L.I.Dをユーリが素早く蹴散らす。

 

「壁の中から!?」

「ウウっ……!」

 

壁の隙間や窓からもE.L.I.Dが現れる。

なんなら、脆くなった壁を突き破ってもやってくる。

その細かいのはAK-12やHK416が対処する。

 

「信じられないところから現れるわね……」

「あいつらの思考パターンは鉄血以上に予想不可能よ」

 

その通り、E.L.I.Dとの戦いで恐ろしいのはこういう不意打ちだ。

 

『だが、あいつらとおんなじにはなりたくないだろう?アンジェリアさん?』

「痛いこと言うわね……」

<グロヴやヴァレリアの小言とどっちがマシかねえ>

『まさに、経験者は語る。だな』

 

────その一方、ユーリらの雑談に出てくるグロヴとヴァレリアは…

 

戦場を後にする兵士達、

突然、軍の車両や人形がさっきまで自分達を襲っていた…E.L.I.Dに奇襲を受けたのだ。

 

「反撃しろ!!」

「くそ!アイツらは!?」

「────ガッ!」

「────1人やられた!やられたぞ!!」

 

兵士の分隊長も手を額に当てて、悩む。どうすればいい?このままじゃ彼らは死ぬ!!

でも、E.L.I.Dの四方から来た攻撃は前に進む俺はもう…グリフィンのメンバーだ!彼らじゃなくて人形を助けないと…だが…だが…

 

「しまった、やられ────」

 

陣形を崩され、孤立気味なった兵士にとどめを刺そうとする敵に四肢を引きちぎる程の銃弾をぶち込んだ。

 

『────こっちだボケなす!!』

「…」

 

いま、助けた兵士と俺の顔がバイザー越しで鏡合わせように相対した。

 

『どうやら、間に合ったようだな。お前、まだ戦えるか?』

「ハッ────はい!!…っ!!あ、貴方はっ?」

 

まさか、昨日殺し合っていた関係には見えないほど、助けられた彼はバイザー越しでも分かるくらいに感嘆と驚愕が入り混じった声で返事をした。

 

『────よし、なら…陣形位置に戻れよ。早く撤退しろ』

「…で、ですが…」

「アンドレイッ!!無事か!!」

 

今度はエゴールがこっちに来た。

いや、部隊指揮官ならこの位置にいる方が自然か…

 

「────ヴェルークト?」

『ほお、あんたがエゴールか。確かに隊長が言うだけの男ではあるな。こんなザマでまだまともに部隊機能を果たしてるなんてよ』

 

バイザーの男は生意気な口調でエゴールを評する。

 

『ヴェルグ7、大尉に失礼ですよ』

 

もう一人の兵士がこっちに降り立った。

体系からして、女性のようだ。

 

「お前たちは解散されたと聞いたが……」

『公聴会の件で再審議が行われ、その後に再編されました。そして我々はカーター将軍の要請で来ました。エゴール大尉、露払いは受け持ちます、撤退を急がせてください』

「…感謝する。フレーヴェン中尉にもよろしく言ってくれ」

 

エゴールはそのまま、部下を連れて通り過ぎる様に前進の指示を出して、行動のペースを上げた。

 

「────大尉、まさか…まさかっ…今のはッ…」

「あぁ、犬鷲のヴェルクートが俺たちの為に、助けてに来てくれたんだ…!!」

 

撤退しているにも関わらず、彼らの指揮が上がったらしく、砲撃や攻撃のキレが良くなっている。

 

『あのおっさん…お人好しな所があるな』

 

既に軍用人形は既に俺の指揮で動くようにプログラムされていた。

 

『大尉です。いい加減、規律を守ってください。ヴェルグ5、KCCOが自立人形の運用権を譲渡してくれました。そちらで、操作を』

<了解。軍用人形に通達────命令内容:自立部隊は撤退部隊の支援をする。敵は出来る限り攻撃できないほど痛めつけるように>

「「「了解」」」

 

機械的な返事をして、軍用人形がE.L.I.Dに向けて、正確に攻撃をした…その攻撃は戦車やあの白い怪物の様なロボットを重点的に破壊して、追撃できるが少なくなった。

 

『ファリカ、KCCOと合流した。このまま、安全な後方圏まで離脱させる』

<了解です。こっちも、目標の援護中です>

 

無線越しから狙撃音が響き渡る。

あっちの誘導は忙しいらしい。

 

『ファリカ。こっちはボウズだったぞ。ホントに隊長がいる可能性があったのかよ?』

 

……が、そんなこと構わず。

ヴェルグ7は目論見を外したことに対して愚痴をこぼす。

 

<ええ。当たりはこっちでしたから。今、隊長とそのグリフィン部隊の援護をしてますよ。ヴェルグ3と一緒に>

『ファリカ!嵌めやがったな!』

<違いますよ。最初に言ったではないですか、2択ですから好きに選んでくださいって。残り物には福があったんですよ>

 

ヴェルグ7は舌打ちして、目の前にバタバタと降ってくるE.L.I.Dをsaiga-12で薙ぎ払いながら悪態を吐く。

そして、ヴェルグ4は面倒くさそうに事前に話したことをもう一度話す。

 

『ヴェルグ4はグリフィンの指揮官の撤退支援だったはず。つまり、隊長はグリフィンの指揮官だったのですね』

<ええ。ちょっと驚きました>

 

『グリフィンはクルーガーの会社だったはず、あれほど毛嫌いユーリを部下にさせたとはクルーガーめ…どれほど、卑怯な手を……』

<……>

 

無線では言わないが、やっぱりヴェルグ8も面倒なところがあるなとヴェルグ4は感じていた。

 

<はいはい。文句は隊長が聞いてくれますよ……クソ、厄介な奴が現れたわね……!>

 

『レーダーに感あり……早いぞ!────クソッ!』

「……」

 

レーザーが足元をかすめた。

あの白い敵のお出ましだ!

 

「やっぱりアンジェを狙っている!」

『アンジェリアさんの脱出を優先させる!俺はここで足止めする。ヴェルグ3!アンジェリアを安全地帯まで守れ!』

 

「ユーリ、私なんかのためにあんたが…」

『お前に死なれるのが困るだけだ!言う通りにしろ!!』

 

ユーリは大声を張り上げた。

流石にワガママを通されるとこちらも我慢しきれなくなる。

 

『戦術人形もアンジェリアを守れ。────行け!こいつは全員の面倒見れるような相手じゃない!』

 

人形たちも気圧されるように、アンジェリア達を安全な場所まで向かわせる。

 

『……AK-12、お前も行くんだ』

「私は残る」

 

AK-12は残っていた。

ユーリは離脱を促したが、AK-12は首を縦に振ろうとしない。

 

「一人で?”アレ”から生き残るって?」

 

AK-12もあの白い敵の白い髪をした鎌の敵はとんでもない強敵であることは分かっている。

だが、ユーリ1人で生きて帰れる敵ではないことは分かっている。

 

「それと随分興奮剤を使ったでしょ?もう使わないで、何日食べてないの?」

 

AK-12は気づいていた。

 

『この作戦が始まって……もう、60時間か。なら、2日だな……水は昨日一口飲んだきりか』

「トイレには」

『行ってない、垂れ流しもする余裕なかった』

「嘘でしょ……」

 

AK-12は事の深刻さが想像以上である事を把握して、自分の思ってた以上に楽観視していた事を恥じた。

 

「とにかく、体は大切にして。アンタは人形じゃないし私は足はなるべく引っ張んないわよ。昔ながらのやり方でやってやりましょう」

『お前な…クソ、手遅れか』

「どうも、グリフィンの指揮官」

 

時間切れだ。AK-12は逃げられない。

2人の前に白いマントを着た。

白い…M4に酷似した人形が、降り立ってきた。

 

「グリフィンの指揮官。抵抗を、諦めなさい。そして、アンジェリアを差し出せ。さもなくば、貴方の部下は、1人残らず、殲滅される」

「そうか…そうなるのは怖いな。だが、わざわざそんな事を言う為に来たのか?出来ない事を言う為に?」

「全裸になって土下座したら考えてあげなくもないわね」

 

息が合うようにAK-12とユーリはその勧告を鼻で笑う。

 

『それに、そちらの自慢の防壁は完全に向きを変えられるわけじゃないんだろう?』

「……」

 

空気がヒりつく。図星をらしい。

あまり、此方を馬鹿にしないで貰いたい。あの時のM4SOPMODⅡ達の戦闘で君を倒せば敵は動かなくなる事はある程度見当がついている。

 

「そう、私達は、あなたの反応を見たい。だが、その言葉に恐怖は感じられない。もしかして、その発言はデータベースにある人格データと照合する…結果、絶望の表情確認できず。任務達成後、もう一度確認を行う」

 

白マントが持っていた、鎌を構えた。

 

「来るわ」

『鎌の刀身に気をつけろ。伸びるかもしれない』

 

此方も、所持していたライフルを持ち替えた。

白い敵が号令を出した。

すると白い敵の兵隊たちがじりじりと押し寄せてきた。

 

「来た!」

『あの兵隊には頭を狙え!』

 

AK-12がライフルを発砲。

白い敵の歩兵はあの障壁を持っていない。言う通り、頭に向けて命中した兵士は倒れて動かなくなったが首元や鼻元に当たった敵は緩慢な動作で立ち上がる。

 

「鉄血とは格が違うわね」

「攻撃…」

 

さらに白い敵が寄ってくる。

そのうえ、司令塔のような白マントが鎌を振りかぶって襲い掛かった。

 

『────っ』

「ほお…」

 

鎌をユーリのブレードが受け止め、刀身同士の激突による火花を散らしたぶつかり合いが起こる。

 

『……お前の相手は俺だ』

「そう、私はあなたの反応がみたい」

 

互いの力が拮抗する。

そして、互いの虚無のような瞳が合う。

 

『────クズが!面倒かけやがって!』

 

やっとの思いで包囲を引きちぎる事に成功して安全地帯に到達した。

ヴェルグ3は悪態を吐いて、アンジェリアを地面に放った。

安全地帯には幾重にも積み重なったバリケードが建てられており、ここで起きたことがどれだけの人間を慌てさせたのかを物語る。

 

「これでアンジェの御守りは終わり!急いで引き換えすわよ。流石の指揮官もこれはまずいわ!」

「なに…あの"白い部隊"って…」

 

アンジェリアは心当たりは無さそうだが…HK416達は、どうやらことの重大さを知っているらしく、急いで戻ろうとしていた。

皆がこれが最後の決戦と理解している。

 

<新しい敵のこと。あなた方は把握されているようですね>

「さっきまでは見えないし、必要なかったからよ!!」

 

ファリカらも知らなかったらしい。

いや、自分たちも気が付けばどこかに行ったか分からなくなった敵だ、巧妙に暗躍していたんだろう。

 

<彼らの姿は?外見で判断できるかも…>

「ボスぽっいアイツは…M4…お姉ちゃんに似てたよ、しかも私を同類って」

<…同類?>

 

たまたまだと思っていたが、あの白い敵もM4A1に似ていた。

どうしてM4A1に似ているのだろう。

彼らのシルエットが分かるたびに余計に訳が分からなくなる。

 

「ヴェルグ4!指揮官はまだ持ちそう?」

<暫くは大丈夫そうです。軍用人形が指揮官を守る為に戦っているので、戦力差は互角に保っています。しかし、あまり楽観視はしない様に増援が来ていますから戦力差が崩される可能性がある事には変わりありません>

 

どういう手品をつかったのよ!?だけど、それならそれで有難い、だが此方はさっきの爆弾作成で重装部隊の弾薬か残り少ない、短期決戦で挑む必要がある。

 

「これが最後の決戦よ…指揮官そっちは大丈夫?」

<……決していい状況とは言えない。いざとなったら、AK-12を盾にするさ>

<その前にアンタを盾にしてやるわ!>

 

どうやら、まだ大丈夫そうだ。

 

「けど、必ず指揮官のところに戻るからね!」

<戻るなら、感謝する。終わったら、何かご褒美をあげないとな>

「そりゃくるよ!私達の指揮官だからね!!」

 

さっきまで精神的に余裕が少なかったM4SOPMODⅡは久しぶりに嬉々とした声で答えた、それほど彼に安心感を求めているのかも知れない。

 

「指揮官には何回も助けられてるし、私は指揮官の事が大好きなんだもん!!いつも助けられてる代わりに今度は私達が指揮官を助けるよ!…新しい、アイボーと一緒に!」

「え!?私、相棒!?」

 

素っ頓狂な声でMP7はM4SOPMODⅡの相棒宣言に戸惑っていた、多分本気で驚いているんだと思う、因みにROは割愛だ。だが、彼の為に出来る限り頑張るつもりらしい。

 

「私も手伝おう。ケジメを付けるときだ」

 

一方、AN-94はケジメをつける為に助けると言った。

 

<さて、みなさん。全員じゃないけど、ユーリ指揮官の今と昔の部下がこの場に揃ってます。恐らく、奴らの目的はユーリ指揮官の捕獲…もしくは殺害…>

 

殺害に一票。

多分、アイツらはこっちにズタボロにやられてるし衝動的な奴等が多くなっているかも。

 

<当然、それは避けなければなりません。我々もできうる限り協力します。包囲網に風穴を開けて、助け出さないといけません>

 

だが、送られてきた戦闘データを見る限り、今まで以上に厳しい戦いになるだろうとは思う。

事実、黒い敵が一体増えただけでグリフィンがめちゃくちゃな損害を受けた。

白いとなればそれ以上の損害も覚悟する必要があるだろう。

 

「今度は指揮官が私達を必要としている、私たちは必要とされている以上、勝たなければならないわ!」

 

────

───

 

『(…500…400…300…今だ!!)』

 

そこから、近づこうとする白マントに向かって、A-545の弾丸を放つが、攻撃は偏向された。

 

『ダメか…』

 

そのまま、白マントは突進して、襲いかかってきた。

仕方なく銃での攻撃は一旦諦めて、A-545を背部のマウントに仕舞い、長刀を両手で持つ。

グリフィンの人形達や軍用人形が白い部隊と戦っている間、此方もブレードと大鎌との剣劇が繰り広げられていた。

 

一旦、素早くブースターを吹かして、入り組んだ路地に誘い込む。

 

「アンタらの相手はこっち!」

 

AK-12はユーリを追撃しようとした歩兵を妨害する。

クラックした軍用人形も数を減らしつつ、数の暴力に抗う。

ユーリとあの白い奴、一対一なら、もしかして……!

 

『食らえ────!』

 

そして、場所に逃げこんでそのまま行き止まりの壁を切り反転、そのまま白マントを反転した容量で遠心力をつけて力一杯に切り付けた。

 

「ッ…!」

『どうだ?痛いだろ?』

 

斬りつけれた白マントは、流れる血を見て驚いていた。

どうやら、近いと偏向はほとんど機能しない様だ、一応近接戦で攻撃は通用するらしい。

 

「…グリフィンの指揮官、私は貴方の事を過小評価していた」

 

白マントは武器を持ち替えて、仕切り直しをする。

 

大型の武器に頼る時の欠点が動きに現れている。

一撃の威力は高いが武器自体に振り回されている…いや、武器を使って、振り回して動きに付加させているのだが、微妙な操作が苦手がっているのかもしれない。

 

「お父様の為に、私は…貴方を絶望させる」

『口では何とも言える、やってみろ』

 

この戦いは普通の近接戦よりも1テンポ…いや、2テンポ早いと見た。

しかも硬度や精度から考えても完全に対人装備だ。

 

「疾い────!!」

 

敵は驚く。だが、先ほどの動き以上の攻撃スピードをしてきた、カウンターの構えをしたのが失策だった、防戦が精一杯だ!!

 

そのせいで肩の装甲が肩の肉事、切り裂かれてしまった。すぐさまスモーク焚いて逃げる。

 

「強い────」

 

まず人間が人形(?)と戦いながらいう台詞では無いが…動きは凄まじいものだ、鉄血の近距離人形…いや、軍用人形の近接人形すら凌駕していると見ていい

 

こうやって余裕かましてはいるが正直部品の摩耗の激しさや燃料切れ間近、はっきり言ってジリ貧だ。

 

『そろそろ…決めないと…!』

 

今度はこちらから接近する、スモークから勢いよく出て、残り少ない燃料を節約しながら、左右にジグザグに動いてホバーではなくジャンプ移動、

 

残り数メートルの長刀では一見届かないと思われるところで、横なぎに振るう────が。

 

『(────フェイント!?)』

 

直線で来ると思わせて、白マントはいきなり後ろに滑り込み、攻撃を誘い込み躱してみせた。

…読みですらない、反射で見た瞬間には遅いレベルでの距離の斬撃を奴は躱してみせた。

 

『しまっ────ッアア…!!』

 

早期決着の為に大振りしたのが失敗だった。

腕の位置が戻るよりも早く鎌で胸元を胸部装甲ごと切り裂かれしまった、この装備をしていなかったら多分胴体から上が真っ二つだった。

 

『────はあ……っ、はあっ……!』

「…グリフィンの指揮官様。強がりはそろそろやめた方がいいですよ?体力も限界、そのブースターの装備も燃料が残り少ないのはとっくに把握している」

 

しかも、こちら話の現状すら当てられている。

ぶつかり会えるのは後、数回もないだろう。

 

装甲から漏れ出す、流血が多い…そして、かなり痛い…この状況で身体に入る、コーラップスの汚染を心配しているのは正しい見解か、それとも失敗か、

 

A-545の弾薬は残り7発…これは重量の観点から見て捨てた方がいいな、右腰部に損傷あるが、起動に問題なし…

 

ゆっくりと物陰から出て、その先で待っていた白マントと相対する、厄介なヤツだ…見た目から想像もつかない機動性、どこまで格闘戦に特化しているのやら…だが強い。

 

「パパ!!」

 

まずい!さっきまで互角だったのにもう、疲れてきている!!誤魔化しの興奮剤が体力の低下を補えてない!!

 

「────っ……」

 

AK-12は視界の中に現れた、"疲労警告"を目にする。

1日1回は休んでるAK-12でもこれが来た、それがユーリは?3日戦い続け、眠らず、飲まず食わず、排泄行為を行えないなら体力は絶対に3割は落ちる!!

ジリジリと時間をかければ絶対こっちが負ける。

AK-12も向かおうとしたが、新手に阻まれる。

 

「これは!?」

 

レーザーを吐く、白い敵。

まったくもって、意識の外から現れた。

歩兵に集中しすぎた、違う、私が余計な事を考えたせいだ。

それに父親の露払いをしていた行動は自分を孤立無援にさせていた。

 

「まずい────」

 

まずい!?このレーザー、腹を守る手のプロテクターを突き破る!?

このレーザー、5.8ミリの弾薬すら耐える防護プロテクターすら貫通するのか!?

 

「────っあ……!?」

 

腕、そして腹が突き破られ、己の重心がえぐり取られる。

AK-12は燃えるような痛みを覚えながら、片膝をついた。

 

一方、不利になり始めたユーリをさらに追い込もうと白マントの方から攻撃してきた。

もう動け無いと判断したのだろう、大振りで鎌を振りかざした。

 

『────舐めるな!』

 

居合────刀を鞘に収めた状態で帯刀し、鞘から抜き放つ動作で一撃を加えるか相手の攻撃を受け流し、二の太刀で相手にとどめを刺す形、技術を中心に構成された武術である。

 

自分がしたのは後者、刀はソリッド状の長刀、ニの刀は────

 

『とっておきだ!!』

 

手首に収納した、ブレードだ。

長刀は鎌に当り、大鎌を弾いた、ブレードは白マントの顔間近だ。

 

『…取った!!』

 

斬れる────そう思った瞬間。

 

「────あ」

 

背部から凄まじい衝撃を受けて、吹き飛ばされた。

 

「言ったでしょ?ワタシは貴方を絶望させると」

 

気を失う直前、白マントはほくそ笑んでいた。

 

『AK-12……やられたのか。……すまない』

「どうも、グリフィンの指揮官」

 

────

───

 

たどり着いたHK416達が見た光景は最悪の状況を想起させた。

 

「そんな…裏口が破られてる!!」

 

裏口は破壊されて、至る所に血痕の跡や激しい戦闘をしたような、建物の損傷の仕方をしていた。

 

「AK-12……!」

 

戦闘のせいか、AK-12は全身がズタボロにされ、まともに人の形が残っているのは頭くらいだった。

 

「……おや」

 

そして鎌を持った白マントの敵が現れた。後ろには殴られた痕がある、見覚えがあった黒い敵まで随伴していた。

 

「その長刀は────」

「いかなる抵抗も、無駄。誘引して誤認させようとも、軍用の人形を当てがおうとも…私達、ネイトは止まらない」

 

白マントの敵は血で染まっていたユーリを引きずっていた。

此方を確認した直後白マントはソリッド状の長刀をこちらに投げ捨てた。

 

『見たこともないマークに見た事ない武器だと?』

「一体どの誰だか知らないけど指揮官は返してもらうわよ」

 

人形達は銃口を白マントに向ける。

 

「……お姉様を守る」

 

黒い敵が、前に出て武器を構えた。

瞬間、突然白マントが黒い方を殴って壁が抉れるほど吹き飛ばした。

 

「これは、私の前を歩いた罰。その上はお前はグリフィンの民生用の人形相手に4倍長い時間と、5倍の資源を費やした」

「それは────私では」

 

その言葉を聞かず、失敗作を見下しているかの様に、白マントは暴行を加えた。こちらには目もくれず…

 

「今日の功績は全て私のもの…あの人間は私の獲物」

「異議は…ありません」

 

白マントは鼻を鳴らすと、掴んでいたユーリを黒い方に渡す。

 

「この人間を────」

「おい、待て…」

 

白い敵は足元に違和感を感じる。

 

「パパを…返せ……」

 

それはAK-12だった、欠けた指で白い敵のマントを掴み、逃がすまいとしていた。

 

「……まだ抵抗が出来るとは」

「────今よ!」

 

人形達が一斉に隙を突く銃撃を始めたが。

 

「フッ……」

 

白い敵はそれを鼻で笑い、鎌を振り回して銃撃を全て弾いた。

 

「────なっ」

「邪魔ですね」

 

そして、その鎌を人形達に向かって振り回した。

 

「────!」

「────!?」

「────っ!?」

「────ぁっ!?」

 

Ots-14、DP-12、AUG、ハニーバジャー……せっかくここまで生き残っていた人形達が一瞬でバラバラになった。

HK416は判断ができたおかげで、利き腕と愛銃を失うだけで済んだ。

 

『……あのデカい武器で素早い!』

 

グレゴリーは兵装が良かったのだろう。

間一髪、反応して避けられた。

 

「この人間を"お父様"の所へ」

「はい…」

 

しかし、攻撃は通らず白マントがその攻撃を抑えると黒い方は先に裏口から出て行ってしまった。

 

「────416!今のは!?……こ、これは……?」

 

聞きつけた、AN-94がやって来たが目の前の光景に唖然とした。

 

「AK-12!!」

「ああ、コレ。AK-12というの。お前の方こそ、不自然だ。あの人間の娘になろうとするコレこそ理解ができない」

「────お前!殺してやる!」

 

AN-94がまるで熱を帯びて白い敵に襲いかかる。

 

「1人で突っ込むなんて、何やってるのよ…これじゃ、照準が…」

 

鍔迫り合いに負けて、AN-94が押し返される。

 

「グリフィン人形。あなた達に行動に、意味はない。何をしても、無駄。私のカマには届かない」

『────いいや…まだ手はある!』

 

グレゴリーが行動を真面目だ。

今度の攻撃はシールドを狙う。

 

「無駄────っ、!?」

 

鎌で防ごうしたが、さらにAN-94は最初の2発の弾丸を1800レートという、短間隔で発射する機能を特徴としているライフル指切りで攻撃する。

 

「あの時の斬り合いのせいで────」

 

指切りで発射された弾丸は、鎌を突き破り、一髪が左頬に命中した。

さらにグレゴリーのPKPが襲いかかる、弾丸が胸元に命中し衝撃でよろける。

 

「────取った」

 

それを見逃さなかった、HK416がホルスターのサイドアームを力技で引き抜き、45口径を追撃する。

 

「────私が、こんな結果を」

 

目の色は変わらないが声はワナワナと震え、白マントはセーフハウスから逃げ、まだ数がいる部隊の方へと飛び出した。

 

「逃げられた!!」

『心配するな、AN-94。そっちには…』

「────グゥアアアアアアアアア!!!」

 

おぞましい、呻き声を上げてELID感染者が白マントが向かう方へと走り出していた。

 

「────愛洗者」

 

もちろん、白マントの方にも向かう。

 

<みんな!化け物を白い奴らに引きつけたよ!へへ!まさか、ROのメガホンにこんな機能があったなんてね>

<はぁ…はぁ…もうやらないぞ。あんな馬鹿な真似…>

 

M4SOPMODⅡ達は、先にアンジェリアの指示で感染者を白い奴らにぶつける計画を立てていたのだ。

 

MP7は息を荒げて、半泣きしていた。

 

「馬鹿SOPⅡ!!多すぎる!!」

<周辺にいるの全部持ってきたら、こんな数になったんだよ!作戦通りだよ>

「ケースバイケースを知らないのか!!」

 

なんと、数が多すぎるせいで感染者の一部がAN-94達に向かってきていたのだ。

 

『任せな、コイツらは俺がやるよ』

「────あんなにあっさりと」

 

グレゴリーのPKPが感染者を的確な順番で始末し、今までの苦労がなんなのかとさら思えてしまう。

 

…そして大部分の感染者は白い部隊に襲い掛かった。

 

<何してるの?アイツら…>

<く、狂ってやがる…!自ら望んで食われる気!?>

 

普通なら感染者を対処しなければならないこの状況、しかし白い部隊は全く反撃せず、まるで祈りを捧げる様に、蹲る。

 

「知るか……!ヴェルグ4。座標は送ったわよ。あの白女を」

<えぇ、確認しています。あと、3倍遠くても大丈夫です>

 

弾丸が通り過ぎる弾丸の速さは凄まじく、ヒューウン…という通過音は、白マントの頭をスイカの様に割れ裂き、着弾した後に聞こえた。

 

『後は隊長を探すだけ…』

「……もう、遅い」

 

黒い敵がゆったりと現れた。

 

「指揮官はどこ?」

 

黒い敵はすでに空を飛んでいた、輸送機を指差した。

HK416はショックで崩れ込み、その輸送機を見つめた。

 

「何が目的よ…」

 

黒い敵は、その絶望した表情を見て、ニヤリと笑い、ゆっくりと唇を動かした。

 

「あなた達は、"私達を"知らない、その、偉大さも…あなた達に出来ることはもうない」

「"私達"…?」

 

黒い敵は両腕を空に掲げた。

 

「私がここにいるのは、これを伝える為、"新世界の輝きとなるべく"────」

 

黒い敵がその言葉を言った瞬間、HK416が躊躇いなく黒い敵の頭を撃って破壊した。

 

「────小賢しい」

 

倒れた黒い敵の手元には起爆装置が隠されていた。

 

「時間だ────」

「チクショウ!!」

 

一方、合流したSOPⅡも唸り声を上げていた、余程悔しいのだろう、もっと自分にやれる事ができていればと、救える筈だったのに…と

 

『────遅かったか!!クトゥルフ、"ハクトウワシ"を取り逃がした!予備プランを使用する!』

 

突如として、重武装した兵士達がやってきた格好はヴェルグ3の装備とよく似ている。

 

『ヴェルグ7とヴェルグ8か……』

『ヴェルグ3、まだ希望はあります。諦めないで』

 

ヴェルグ8と呼ばれた兵士が何かのマップを取り出しました。

 

『今度はコチラからご挨拶に行きましょう』

 

彼女達の任務はまだ、終わらない────

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