たったひとつの願い   作:Jget

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セカンドチャンス

────視点:ユーリ

 

「私の声、聞こえる?」

 

気持ち悪い光と何らかの機器の音で、目を覚ました。

 

気持ちが悪い…頭がクラクラする…確か、俺はあの白いマントを着た奴と戦うハメになって…

 

「こんにちは、グリフィンの指揮官」

 

目を覚ますと、同じ顔をした女の子がこちらを見下ろしていた…というより自分が寝かされているのだろう。

 

「あなたは9週間眠っていた」

 

いや、この9週間は嘘だ。

肉体の衰えが殆ど、感じられない。恐らく…1日、2日だろう。

 

「私は…誰?」

 

ここは適当にカマをかけて様子を見るべきだ。

 

「…」

 

この4人の沈黙で理解した、彼女達は俺と会話する気はないただ自分に話しかけているだけだな…

 

「(彼女達は自分の事をネイトだと名乗っていた…ここが彼女達の本拠地だというのならここは地獄より深いかもな…いや、本当の地獄この目で見た事ないなら…この表現そのものが不適格だ)」

 

<???目標確認>

 

それに…彼女達、何処となく…M4に似ているな。

 

「…水はあるかい?喉が渇いたんだ」

「水はある、ここにはないけど」

 

形容し難い声でネイトは喋った。

 

「グリフィンの指揮官。アナタは私達の主に囚われている。アナタが自由になるにはコーラップス液で爆発した後のことを正直に話すだけ」

 

それは拘束されている事実はベッドでされているからよく知っている、彼女達の主はコーラップス液で起きた状況を知りたいのか?

 

「私たちはあなたが発言した後の言葉に矛盾が生じたら、罰して修正させる」

 

また、悪徳警官がやりそうな事を…

 

「立って、10秒以内にこの命令を実行できなければ────」

 

「ちょっと待て」と言おうとしたらネイト達が沈黙した。

 

「ユーリさん♪」

 

喋ったネイトと目があった。しかもこの眼差しは覚えがある。

 

「…UMP45、これはコスプレ大会?」

「冗談を楽しみたいところだけど、今は私の話を聞いて。私達はコイツ達4人をハッキングしている…でも長くはもたない2分が限界。神経回路が複雑なの…まるで人間みたいに…手短に伝えるわ、私達はある部隊と組んで救出しようとしてる」

「そうかい…」

 

因縁のUMP45が助けに来てくれるとは…

 

「任務に参加しているのは誰?アンジェさんを助けるための救出部隊はどうなってる?」

「その辺りは心配しなくてもいいわ。後はアナタの身を考えるだけよ」

 

という事はあの時白いネイトが言った様な事にはなっていないらしい。

ファリカたちは仕事をこなしたんだ。

 

「取り敢えず、今わかっている事はネイトどもがアナタの脳から情報を引き出すのに失敗して、直接聞き出そうとしているという事よ」

 

随分と恐ろしい事を…

 

「私達は先に潜入して準備を整えてる、嘘でもいいから時間を稼いで頂戴。答え方は任せるわ、コイツらそういう用途で作られてるから…あなたにも協力して、必ず助けるから」

「…分かった、安心しろ。この中で俺以上に嘘が上手い奴がいるか?」

 

何故って?…それは人形は嘘がつくのがヘタクソだからさ。

 

「彼等から聞いたわ、アナタあのヴェルークトの1人だって事。今度あったらいろいろ話をしましょ?あ、そうそう。予め、小型の通信機をつけておいたから通信できるレベルの距離まで近づいたらそれが合図よ。今と同じ様に私はこの中のどれかにハッキングしてるから」

 

ネイトをハッキングしたUMP45が拳銃をぶら下げた。

 

「私が渡しておくこのハンドガンをタイミングよく使ってね♪」

 

見る限り、それはH&KのVP9…SFP9に変わっていたかな?

 

「その拳銃はあまり好みじゃないが…使い方はわかるさ…最悪、君を撃ち殺すかもしれないけど…恨まないで欲しいな?」

「それ…ネイトに言ってるよね?」

 

暫く間を開けて、ゆっくりと

 

「ああ…もちろんさ」

 

と返事をした。

 

「何…その間、まあいいわ。最後に実行するときの合図なんだけど…"不幸を届けに来た"よ、後あなたは何も言わなくていいけどくれぐれも私を撃たないように」

 

そう言って、ネイト達はまた無機質な表情へと戻った。

 

俺も覚悟を決めて、腰に力を入れて腹筋の力で体を持ち上げだ。

 

「よろしい、6秒で実行した」

 

残念、本当は126秒だ。

 

「では、尋問室に行ってもらう」

 

脅迫に近い形で、尋問室に連れていかれた。

 

尋問室に連れて行かれる途中、いろいろなものを見た、そして暫く歩いて、周りが黒い自分の執務室の半分ぐらいの広さの部屋に入れられた。

 

「いま、私達に必要なのは事実。必ず、事実を言う事」

 

さて…どうやって時間を引き伸ばそうか…

 

生き残ることができたら、これが自分にとって時間を最も長く感じた時だった事は忘れないだろう。

 

「そうだ…まずは俺の生い立ちから…生まれはプスコフという小さい街で」

 

気怠い感じで、机に置いた手がトンカチみたいな硬いもので凄まじく強く殴られる。

 

「────はぁ…間違った話はしてないぞ?」

「私達が聞きたいのはあのコーラップス液で何が起きたか」

 

どうやら、これが修正らしい。改革には痛みが伴うらしいが、彼女達の伴わせ方はこの方法のようだ。

 

「そうだなあ…あの爆発で俺はどうにか生き残って、M870とM82A1と合流した。その辺りの会話を詳かに話すと────」

 

また、手を殴られる。

 

「その会話内容は有益じゃない、私達はM4SOPMODⅡの行動を知りたい」

 

「────ご指定が多い…えぇ…とどこから話すか?…うーむ…」

 

そして、手を殴られる。

こうやって俺の手の甲が3回、勢いよく殴られたが彼女達が俺の会話で沈黙から待つ時間はおおよそ、30秒と言ったところか。

 

「早く」

 

時間が感覚が狂いそのおおよそを間違うかもしれないが取り敢えず、この時間間隔を意識しながら、"お喋り"に興じよう。

 

「"黙れ!!この裏切り者"────SOPⅡなら、鉄血嫌いなあの子はそういうと思うよ?だから、出来る限り鉄血を道連れにしてしまいには破壊されてしまったと思う。彼女を失ったのは本当に悲しいけど────」

 

────強く

 

「────でも、こうなったら殺しが先決、SOPⅡはスケアクロウを惨殺しようとして、結局返り討ち、解体好きなSOPⅡも鉄血のジャンクで────」

 

────無常に

 

「鉄血の話を信じる事は出来なかった、SOPⅡはKCCOの包囲網に見つかって、捕まった挙句、処刑────」

 

────殴られる

 

「指揮官、何度も言う、SOPⅡは、死んでない、アナタは、私を騙した。その行為は、無意味、」

 

あの、拷問で使われそうな刑具をネイトは取り付けている、UMP45の発言の裏付けは取れた。

 

とりあえず、時間は引き延ばしには成功している、後ゆっくり話すのは効果的だ。

 

コイツらは何一つ表情を変えずにUMP45のような哀れみもSOPⅡのような楽しみも一切感じない、だが…それが付け入る隙だ。イライラも感じずにただ決められた作業をこなす…それは相手が予想外の行動を取らないと言う話でもある。

……明るいニュースだ。

 

「そんなに、綺麗な形で思い出して欲しければ、俺のP226返せよ…ガッ!」

「関係ない、話をする、必要はない」

「そんな、あれ…ドイツ製のレアもので、高いんだぞ……?」

 

マズイ、調子に乗りすぎた。反省、反省。

 

「続けよう、もし、私達の知る情報と一致しないのなら、今度は、より、効果的な、手段を、とる」

「手伝ってくれるのか?それは、嬉しいね。でも、頭を使えよ?やりすぎで死なれたらお前らも困るはずだ」

 

何にせよ傷口からじわじわ流れる血液は、自分の目を覚ますための目覚ましになり、痛みは施策を巡らすための、リセットボタンだ。

 

「仲良くしようじゃないか?なぁ?」

「今度は、416について、話して。よく、話していた」

 

荒く息を整え、次の創作のシナリオを考える準備をする…よし、また…たくさん思いついた…まだまだ行けそうだ。

 

「────希望の輸送機が現れたら…ドカン!!輸送機はSAMにやられて、落ちていった、希望すら抱けずに…ね」

「理解できない。指揮官、こんな状況で、冗談を言えるとは」

「最高の話だとは思わないか────…っ!」

 

今度は足を使った…いや、足の位置にある武器で俺を殴ったらしい。

 

「今、もう一度よく考えて」

 

正直拍子抜けだった、爪でも剥がすのかと思ったら、ただそれよりも痛いだけだ、しかも腕よりも時間がかかるらしい、そのタイムラグで新しいシナリオを思いついた。

 

「それよりも、お前さっき何を食わせたんだよ…普通に────ゲッ…フフ、吐くと思ったか?」

「冷たい、笑顔」

 

何だそれ?俺の体温は下がっていると思うが笑顔がどう冷たいのかは分からない。

 

「私達は、HK416達が、どこに行ったか、知りたい、答えは事実と一致しなければならない」

 

殴ってきて、コイツは人間の肉体の限界を知っている、攻撃をしているのが分かった、かと言ってそれが情ある行為でない事は確かだけど…

 

「…そろそろ、やり直す?」

「あなたは、そうするべき」

 

数えてみるか、取り敢えず5回は耐えられる、4回以上になれば、UMP45達が助けられなかった代わりに、コイツらの時間を取れたと言う事で満足できる…それだけの話だ。

 

「HK416と、AK-74uは決裂した────」

 

顔面を殴った、冷静に見極めろ……

後、3回────

 

「HK416は気が触れてしまったんだ、だから使っちゃいけない武器を────」

 

────顎が割れるような痛み

あと…2回────

 

「416は…グリフィンを選んだ…404に飽きたんだろう。仕事もあっちの方がまだ割にあってそうだし────」

 

────あばらがつぶれる感覚。

…1回────

 

「…404に飽きたのは間違いだった…404 が好き…だったんだろうな。作戦は放棄して────」

 

もう、殴られたら死んでしまうのでは?と思っていたがどうやら、殴られなかった。

 

コイツらが人体に詳しいと言う読みは当たりだった…代わりに水を嫌と言うほど飲まされたが

 

「今のところ、私達の、情報と一致している」

 

細部に細かい違いがあるがな…そして、その細かいミスは小さい波が大きな波になるように致命的な、ミスにつながる。

 

「HK416の情報、そして、行方、アナタは、知っている、そうでしょう?」

「…他人に同意を求めるのは、悪い事だ、下手な情報に引っ張られる。それに知っていても、詳かに言うつもりは…ない」

「確かに、それを裏付ける証拠はない。そのために、相応の対処を用意してある」

 

ネイトがケースから注射器を取り出した、あの強制的に体内に入れ込む形状からして…

 

「自白剤か…」

「どうやら、拷問に対する、訓練は受けているはず。だから、これで…確実性を高める事が、出来る」

 

ネイトは自白剤を注入した。

 

「冗談だろ?」

 

自白を強要するため、拷問などの方法がある。これは「嘘をつくためには意識が判然としている必要があり、疲労状態や脳の機能が低下した状態では正常な判断が出来ず黙秘することが困難になる」との論理からである。

 

「冗談は必要ない。私達が、知りたいのは、アナタが、後悔する、表情」

 

自白剤は投与により朦朧とした状態に置いて、質問者に抗することが出来なくなる…とカラクリだ。

 

「グリフィンの指揮官、私を楽しませて」

 

だが、朦朧とした状態は妄想に囚われる事が多い、それに乗っからせてもらおう。

 

「こっちもお前と言う、人形が少し、見えてきたよ」

 

それに、この黒いやつ…人をいたぶるのが好きな一面を見せてきた。

なるほど、尋問官に向いている。

 

────さて、あれから何本自白剤を打たれたか、数えるのも馬鹿らしい。朦朧としたした、思考でどうにか嘘を貫き、通せた…それなりに似せる事もできた。

 

「以上です、お父様。グリフィンの指揮官は、全て供述しました。情報とほぼ一致しています」

 

ネイトがあらぬ方向を見て報告していると、スピーカーから電子処理していた声が帰ってきた。

 

<たかだか、PMCの雇われに時間をかけるとはつくづく無能だな>

「申し訳、ありません。お父様」

<結果なんて初めから期待してない。結果を言え、手短に>

 

こういうタイプの声質の奴は経験上、自分が万能だと疑わず、他が全部下だと思い込むタイプだ。

というか、それをいうと自分を父親呼ばわりしておいて、作ったと思われるコイツ自身が無能になるという事実をわかっていないのか?

 

……違う。最初から結果なんて期待してないんだ。

 

<指揮官>

 

この時に通信機から、声が聞こえた。

取り敢えず、間に合ったようだ。

 

<先程、椅子のロックを解除しました。気づかれないように確認を、そしてその椅子にあの時見せた、拳銃もあるので視線を二回瞬きさせて、視線を前に戻して下さい>

 

確かに拘束は解除されている、目を動かすと同時に椅子の下を撫で形を確認すると、確かにVP9の感覚をしたものがそこにあった。

 

<では、そろそろ突入します。合言葉はまだ覚えてる?>

 

もちろん、それにコイツら尋問用だ、攻撃しようとしたタイミングで、纏めて潰してやる。

 

<すべてを理解したらり左上に顔を上げてら口を右下の方に向けて大きく開きながら下を出して下さい>

 

これは嫌がらせだな、従うが。……あ、通信が切れた。

 

<それで?結局エルダーブレインと接触した奴はいないと言うことだな?>

 

…電子処理でもこの偉そうな傲慢な声は、ホワイトゾーンみたいなとても安全な所で、今頃ソファーに体を寄せながら、のんびりネイトの報告を聞いて、適当に決めた処遇を口にするとみた、検討はつく。

 

<それじゃあ、いつも通りに頭を切り落として私のところに送れ。ついでに証拠も抹消しろ。今回はもっと綺麗にやれよ?、研究に使うのでどこか破損したら困る?>

 

数は4人か、ゆっくり同時に近く。マズイなあのナイフは確かに頭を切り取れそうだ。

 

「自由にする約束はどうした?」

 

答えないか…ネイトがナイフを向けた瞬間────

 

「不幸を届けにきた」

 

よし、コイツか。

 

 

「おい」

「囚人が勝手に────」

「────今まで頭を切り落とされた奴からのメッセージだ」

 

警告をした一人の頭が9ミリパラベラムによって、撃ち抜かれた。

1人目は左端の奴だった。理由は最初から銃口を向けていた、続いて2人目そいつはナイフが黒色で死角になっていたところから、最後は3人目真正面、ここで軽く額に触ってから引き金を引いた。

 

「女に優しくするのが私のモットーだ…なんてな」

「合言葉に答える必要はないって言ったでしょ?」

 

残ったネイトがドアを開けてUMP45とHK416が入ってきた。

 

「悪いな、お返しだ」

「その答えは好きよ」

 

その答えには疑問が残るが、ハッキングしたネイトを出口まで誘導して、

 

「平然と歩けるなんて、人間じゃないと言う逸話は本当のようですね」

「HK416…久しぶり」

 

HK416がリュックサックのマウントにしまっていた、アサルトライフルを手渡した。

 

「その装備は────」

 

このアサルトライフル……AK-205?採用しているのは限られている組織。

 

「私達と組んでいる人達…もうお分かりですよね?」

「アイツら────あれきりと思っていたが…」

 

「あんな状況でネイトを1秒もしないで3人同時に瞬殺。ヴェルークトが我が国最強のスペツナズである、噂は事実…っとこれは高く売れそうね」

 

自然と涙が出る。

 

「さて、後始末っと」

 

UMP45が銃をネイトに向ける、俺はその肩を軽く叩いて前に出た。

 

「なに────」

「悪い、私にやらせてくれ────ゼヤァ!!!!」

 

ブーツで勢いよく、ずっと俺を殴り続けていたネイトを一撃で首筋から押しつぶす。

 

「痛そ…まぁいいわ。さ、行きましょ?」

「何処に────」

 

次の瞬間、凄まじい爆発音が施設を丸ごと揺らす。

 

「始まったか、416、支えてあげて。少し時間を食ったわ、後は回収地点まで急ぐわよ」

「了解」

 

UMP45達が指揮官を回収予定場所に、連れている間、外でも動きがあった。

 

────視点:M4SOPMODⅡ

 

爆発音が鳴り響くより、少し前……

M4SOPMODⅡたちは轟音の鳴り響く室内にいた。

 

「全員見てるか?発信器は旧市街地で大きな動きが止まった、そこを調べた結果、大きな規模の軍事施設に近しい施設がある」

 

私達が使っているよりも何倍も性能が高い、ホログラフ画像が浮き出る。

 

「すでに内部の情報は、ある程度把握しているし、フレーヴェン元少尉は我々が抑えている、後は我々は西側の庭から侵入して、北を目指す。回収地点に敵を生かせない事が我々の任務だ」

 

ドアが上下に開かれる。

 

「位置につけ!!」

 

隙間から入る、突風がゴオオオオッ!!と響く、多分このヘリは時速200メートルは超えている。

 

<────ステルスを解除>

 

外から、線しか見えなかった外見が無数の面が浮き出て、線が巨大なVTOL機に変貌した。

 

<────交戦規則の制限は?>

<────ない、好き放題やれ>

<────有難い!!>

 

「先行ルートを切り開くのはヴェルグ2!!」

『はい!!こっちまで来て、手加減で悪いけど、あんたが一生見られなかったもの見れるわよ!SOPⅡ!!』

 

ヴェルグ2がドアの前に立った。

 

<いくぞ!!ゲイボルグ発射!!>

<────ゲイボルグ発射>

<────ゲイボルグ発射!>

 

VTOLに取り付けられていた、"ゲイボルグ"ミサイルが一機につき60発、作戦に参加したVTOLの数は15機計900発の対地ミサイルがある程度加速した段階で、さらに20に分割されて18000になったミサイルは辺りに散らばる様に着弾する。

 

「……………ッ!!」

 

すごい…!これが実際のELID戦にも使われる…対地攻撃…!?

一発の爆発が私のグレネード弾の100倍は下らない威力だ、次元が違いすぎる。

 

「これで…手加減…?」

『救出作戦だから仕方ないわ。精密爆撃をする為にはこのくらいがギリギリ、後は地道に削るしかないのよ』

 

…正直、この一撃だけで施設が跡形もなく、バラバラになると思うけど…

 

<ヴェルグチーム、残念ながら機甲部隊はやれなかったようだ。だが、対空施設は8割ぶっ壊した、航空支援は期待できるぞ>

『分かった、ラインガンは?』

「既に取り付けは終わっています!」

 

私があらかじめ、ラインガンという突入用の装備を展開していたことにヴェルグ2と言われていた、日本人と思われる東洋系の女性は私の頭を軽く撫でた。

 

『仕事ができるのは助かるわ、どこぞの反逆と違ってね』

<後で覚えておきなさいよ、全員気を付けて。想定と誤差がある、この辺りの思わぬ遭遇もあり得そう、念頭に置いておいて>

 

…クソ、私は比較対象との大きすぎる差に圧倒されていたけど、AK-12は既に状況を冷静に把握していたのか…これじゃたかが民間人形と言われても仕方ないじゃないか…!

いや、AK-12は予備の素体にコアを入れている不安定な状態なのに、作戦に参加して大丈夫か?

 

ジップラインから発射されるワイヤーが大地を突き刺して、固定状態になった突入部隊が降下し終わった時点でワイヤーが溶けて、VTOLは航空支援に戻った。

 

「────!MP7、着いて来て。生き残りをやるよ!!」

「やれやれ…時間外労働だ」

 

対空砲火は粗方片付けたとは言え、地上部隊はまだまだ健在…私達は地上戦力の妨害だ。

 

「AN-94!状況報告を!!」

<東側面、周辺の建物を確保。100棟の建物…外務省の特殊部隊が支援してくれる!!>

『いい?AK-12、外務省の軍用人形が施設屋上に投下!そいつらが敵のスナイパーを始末する!!そのためには対空レーザーをぶっ潰すしかない!!』

<えぇ、了解した。そっちの部隊の動きに合わせる>

「了解、私達はこのまま北に向かって移動、また報告するよ!」

 

ヘリに吊り下げられていた、デュポーンが地上に降りて白い勢力の戦車(私達はウーランと呼ぶことにしている)と交戦した。

 

『"ウーラン"はデュポーンに任せよう。施設に入るわよ』

「はい!!」

 

凄い…まるで戦うのが楽だ。ヴェル―クトから供与された、20ミリレール上部に取り付ける"スキャナーサイト"という光学機器が壁越しの敵を超音波で映し出す。

こんなに簡単探し出せるなんて苦労して敵を探していた事を思うと溜息が出てしまう。

 

「MGが隠れてる!壁に貼り付け!」

『横道に逸れるな!!さっさとコイツら始末して指揮官を助け出す!』

 

先行した、"クラトス"が敵MGの陣地を容易く、破壊した。敵だと恐ろしいが、味方だとここまで心休まるとは、前まで考えてすらいなかったよ、

 

「"ドッペルゾドナー"だ!!」

『"クトゥグア"、レディ!!注意しろぶちかましてやる!!』

 

折りたたみ式で連結された、レールガンが"偏向障壁"事周辺の部隊を更地にする、8発も装填できることに驚いたが、実際のELID戦は8発あっても足りないらしい。

 

『なんだ、結局開発にはこぎつけたようね。SOP、今こそ支給されたグレネードを使うときよ』

「食らえ!!"スティッキーグレネード"!!」

 

施設に入るドアの隙間から支給された、ガントレット型のグレネード発射機を発射────飛ばされたグレネードはジェット噴射で巻き上がり、目標目掛けて飛んでいく。

 

「まだいるねぇ、階段下だ!!」

 

MP7の報告通り、右下から"ロデレロ"がゆっくり昇ってきた、レーザーを打たせる暇は与えない、

 

ヴェルグ2が素早く、ブースターで飛び上がり、案内掲示板や手すりを空中でパルクールする様に動き回り、あっさり背後を奪い、破壊した。

 

「これが、コイツらの思い描く未来だって?」

 

施設の部屋を順番に通り過ぎていくと、実験室と書かれた、部屋に入る。

そこは当たり一面、解剖された人間や…動物、そして軍、民生問わずの人形で溢れている。

 

「…」

 

私も道徳がないと散々言われているが、そんな私でも分かる。

コイツらはイカれていて、恐ろしい奴らであることを…

 

<…ごめん、見立てが甘かった。ちょっと急いで、増援がやって来た。指揮官は無事だけど人数で押し込まれたらやられそう>

 

無線越しから、UMP45が要請をして来た。

私もこんなところに長居したくない、ある意味では助かったのかもしれない。

 

「分かった!何とかするよ!」

「策でもあるのか?」

「今考えてる!!」

「敵指揮系統を一旦止めましょう。ヴェルグ7!そちらに指揮しているネイトを先に片付けて、救出部隊の負担を減らすことを提案します!」

 

流石だね!RO、緊急時の対応が早い。

通信を聞いたヴェルークトも納得して、素早く犬型の軍用人形を展開した。

 

『さぁ行け!オルトロス!』

「ガルルルル!」

 

敵に急接近した、沢山のオルトロスがシールドを展開し、動きを止めるその間に2人のヴェルークト隊員がシールドの隙間が開いた0.5秒でネイトを手早く処理した。

 

『いいわ、動きが止まった!』

「SOPⅡ!増援部隊の出所が分かったわ!この辺りの搬出フロアよ!」

「分かった!ヴェルグ2!」

 

ヴェルグ2がうなずいて、壁越しにも敵の位置が分かる、"スカルプト"を投げた。

青い赤外線の光が投げ込まれたところに充満して、敵の位置や行動が赤色で判明する。

 

『数は18人!!奇襲できる!手早くいくわよ!』

「ありがとうございます!MP7、背中は任せた!」

「隣に並べの間違いだろ?」

 

私が先に通路に躍り出てスライディング、そのスライディングをしながら、人型の"ス トレッツ"を4人倒す。そして、そのまま通路を銃を固定したMP7がさらに4人倒した。

 

「行けっ!!」

 

止めに固まった10人はFN-ELGMのグレネードランチャーでまとめて処理した。

 

<AK-12から、ヴェルグ2。屋上のスナイパーは片付いた、私達は上から増援部隊を蹴散らす、アナタたちは後ろを>

『誤射しちゃダメよ!上に仲間がいるんだから!…いや、仲間じゃないわね』

「誤射してはいけないのは分かりました。ご忠告、ありがとうございます」

 

ヴェルグ2がゆっくりドアに張り付き、ドアの外に近く…ドアからクリアリングして来た、ストレンツィの銃のハンドガードを握り、引っ張る。

 

反射で膠着した隙を見逃さず、銃を引っ張りストレンツィごと引き寄せたと、同時に銃を逆の方向に押して、殴りつけ転ばせる、最後は頭を鷲掴みにしてドアに叩きつけた。

 

『コンタクト!!チイッ!やっぱり待ち伏せが!』

<時間を稼ぐわ!!そのうちに掩体へ!>

 

上からの銃撃が聞こえる、AK-12達だ。

予備の素体というか、編成拡大のダミー人形でよく戦える。

あれが執念か。

 

『正面は押さえるから、先行って!』

「はい!!」

 

ヴェルグ2が隙間からA-545アサルトライフルで、敵を押さえつける。

 

<アサルトチーム、急いで増援を止めて!!>

「分かってます!いま、搬出施設でその増援部隊と交戦中!!」

『やむおえない!ヴェルグ3!実験装備だからって出し惜しむな!"カマイタチ"を使え!』

 

左手に取り付けられている、HUDで高周波のソニックブームで周りに衝撃を与える、"カマイタチ"は、当たった対象は嫌がりだし動きが鈍くなる。

 

『よし…ご苦労さん!!』

 

ヴェルグ2とヴェルグ3その動きが鈍くなった隙を見逃さず、障害物をブースターを方向転換の足場がわりに移動しながらあっという間に倒していく。

私も流れに続いて、FN-ELGMと半身である、 M4SOPMODⅡ を両手でありったけの数だけ撃ちまくった、他のメンバーも同じだった。

 

<よし…これで貨物エレベーターに行けそう。ありがとう、助かった>

「早く指揮官を!!」

 

あとは、このまま貨物エレベーターに乗って道なりに行けば、指揮官は合流地点で回収される。

 

<任務成功ね!私達は下に降りてポイントPで離脱する。合流する?>

「そうしましょう!いいですか?ヴェルグ2!?」

『…そうね、構わないわ』

 

ROの提案を了承した、ヴェルグ2はAK-12達と最短で会えるルートを引き直す。

 

『────パラデウスねぇ』

「なんです?」

『あいつらの総称らしいわ。ほら、ロゴが』

 

この施設の至る所に取り付けられているロゴにはそう書かれていた。コイツらが指揮官をさらった奴ら…

 

「あ、そうだ。アキさ……ヴェルグ2は今までなにを?」

『……あー、そうね。こいつらをずっと追いかけてたのよ。まさか、偶然、隊長があいつらにあんな目にあったり、ヴェルークトが復活したのを知るなんてことに行きつくなんてね』

 

副隊長失格よ、とヴェルグ2……アキは自嘲していた。

そういえば、他のヴェルークト隊員もユーリを隊長と言っていた。

ユーリとアキが軍属であることは知っていたけど、ここまで聞いたことも見たこともない謎めいた軍隊にいたなんて予想もしていない。

 

「でも、ありがとう」

『うん?』

「指揮官を助けるために、これだけの兵力を使ってくれるなんて。…私たちじゃ、絶対パラデウスから助けられなかった」

 

帰り道で通っている、シュミレート室のこの場所…まるで街みたいだ。

そこでM4SOPMODⅡは感謝した。

夜の景色を再現していて、高級自動車や高いビル…まるで、大都市を再現しているみたい…

 

「もちろん、私たちのためじゃないことは分かっているんだけど、さ。それでも、私たちの指揮官なんだ。ヴェルグ2が隊長って呼ぶようにね」

『なら、私じゃなくてこの作戦をやれっていった、うちの大将に言うことね。私らは辞めようが、続けようが軍人というものを叩き込まれている。命令を信頼し、任務達成というゴールに向かってを実行する。アンタらのことをいくら気に入るまいが関係ないのよ…そんなことより、お客さんよ』

 

ヴェルグ2が指さした先に、いきなりスモークが炊かれ、そしてその中から白い兵士がぽつぽつ現れだす。

 

「────なんて数」

「退却!後ろの電化製品売り場まで下がりなさい!」

 

見つけた、霧と思えるものから現れたのは、50〜60の敵だ。この場所はまずい!!

 

「死力を尽くした最後の抵抗だな!!なぁ、SOPⅡ!!」

「私に聞かないでよ!?」

 

どうやら、自分たちを始末しようとこちらに敵を送り込んできたらしい。

指揮官は逃がしたんだ。こっちはほぼ勝ち確定だ。後は、自分の身も心配しないと。

 

急いで私も、電化製品売り場の洗濯機に隠れた。

 

「────え」

『チイッ…!この熱量と照射濃度…対人形レーザーか…!』

 

赤いレーザーが自分目掛けて、発射されたがヴェルグ3が自分の前に立ち、シールドを展開して守ってくれた、急いでシールドの耐久力がなくなる前にFN-ELGMを発射した。

 

敵の増援かと違う、撃ったのは合流するために下に降りて来た、AK-12とAN-94…そしてヴェルークトの隊員達だった。

「みんなこっちだ!!」

「援護するよ!────最後のグレネード弾か…!」

 

AN-94が私達を入れるために閉まろうとする、ドアを押さえていた。

 

「────ドローンだ!!」

 

さっきのレーザーによる攻撃が通用しないと、判断した敵は、マシンガン(PP-19だと思う)を取り付けた空中ドローンが追加で攻撃してくる。

 

「とんずらするわよ!」

 

あまり時間はない、私達はAK-12達が開けている、ドアに向かって走りだした!!

 

「────あ」

「逃さんぞ」

 

ドアが閉まりそうだった、私は敵をグレネードの弾薬をケチっていたら…リロードした時のマガジンを残していたら…そもそも、ドアに入るときに飛び込みではなくスライディングだったら…いま自分を助けてくれた、AN-94の手は掴めなかっただろう。

 

「────全員、入ったぞ!!」

「了解!!閉鎖します」

 

ドアの後ろで轟音が聞こえる、ドアを破壊する気だ。

 

「ごめん、助かった。借りができたね」

「…そんな事────いや、すぐに返してもらうさ」

 

AN-94が出口の方を指差す。

そこには自分たちだけは逃すまいと、佇んでいたネイトがいた。

 

「お前達は、許さない」

 

────視点:AK-12

 

「────コイツも初めて見るタイプだ。新型か…」

 

服もヒラヒラしているものを着ているし、表情も前よりも豊かだ。怒っているけど…

 

「殺してやる、償わせてやる。」

 

だが、武器は持っていない?何をしてくる!?

 

ネイトが接近して腕を伸ばしてくる。

腕はヴェルグ2のほうに向かったが、彼女はひるみもせずブースターをネイトの方に向けて腕を焼きながら後退した。

 

『セイッ!!』

 

ネイトが怯んだ直後にヴェルグ3が手首のガントレットから発せられるレーザー状のブレードでネイトの偏向障壁を展開する装置を切り裂く。

 

『疲れた隊長をハイエナのように倒して、自信ついちゃった?すぐにへし折ってやるわ!一斉掃射!!』

 

ヴェルグ2の掛け声でSOPⅡとMP7とヴェルグ3、AN-94が装填されているだけの弾薬をネイトに叩き込む。

 

「────ガハッ!」

「「食らえ!!」」

 

最後は私とブースターでネイトの方に急接近したヴェルグ2がもつ、近接用の長刀は胴体を切り落として、ネイトは動かなくなった。

 

「────私も」

 

AK-12が銃を取り出して、ネイトの頭に向ける。

 

「パパを奪ったアンタ達を許さないけど?」

 

あっけない終わりだ。

この銃撃に意味はない、ただ単に私が許せないと思ったからやったことだ。

 

<こちら、"クトゥルフ"。アサルトチーム、急いでくれ。もう目標は確保している、後はお前達だけだ>

「…急ぎましょう。見てください」

 

RO635も、勝利こそしているがあまり時間がない事を察知したらしい。

さっき、閉じた扉がひしゃげて押し入ろうとする敵の手が見える。

ぐずぐずしたら、あそこから現れる敵に追いつかれてここを離れることができなくなる。

 

「────全員揃ったわね」

「これでみんな、帰れるわ!」

 

私達はすごそこの駐車場にVTOLが旋回しているのを確認した。

 

「い、急いでください!敵が!」

 

あのバカでかい扉をぶっ壊して敵がなだれ込んできた。

だが、ヴェル―クトたちは冷静さを保っていた。

 

『大丈夫だ。助っ人を連れてきた』

 

────

───

 

「あれを逃がしたら────」

 

ようやく扉を破壊し、追いつかんとするユーリたちを回収をしようとしている、VTOL機を黒いパラデウスの少女が一刻も早く撃ち落とそうと対空ランチャーを取り出す。

標的をレンズに捉えた、あとは赤外線誘導ミサイルを撃つだけだ────

 

「────あ。え?」

 

撃つだけだった。その簡単なはずの手順が────

 

「まったく……性格が悪い」

 

ランチャーをもった腕が赤く染まって……引き裂かれた。

 

「────っ!」

 

引き裂かれた腕を見つめる、そして撃たれたことを理解した。

そして、自分は邪魔されたのだと。

反撃しなければ、そう思う前に黒い少女の頭は吹き飛んでいた。

パラデウスの兵士たちが反応する、そして攻撃をした存在を認識した。

 

「こちら、M4A1。キャスター聞いてる?」

<ああ>

 

M4A1は無線をつなげて、キャスターに報告する。

 

「対空兵器の脅威はもうない。後は地上勢力だけです、どうします?」

<お前はここにいないことになっている。お前の姿を見た敵は全て仕留めろ、M4>

「分かりました」

 

無線を切る。

そのまま帰っていいと言ってくれたら、私もユーリに謝りたかった。

 

「ちっ……」

 

敵のレーザーが髪を掠める。

隙を見せたと思ったらしい、反撃で発砲して撃った相手の頭を貫通させた。

 

「せっかく、涙を飲んでまで裏方に徹しているというのに……はあ」

 

M4A1は物陰に隠れて、近い順にパラデウス兵の頭を撃ち抜く。

グリフィンが”死なない敵”と呼び、恐れていたが弱点がわかれば簡単に倒せる。

それでも、狙う場所か決まる分敵として数段厄介なのだが。

 

「40ラウンドマグが、もう……」

 

ライフルに装填していたマグプル40連マガジンが、弾切れなので。

物陰に隠れて、新しいマガジンを装填する。

リロードしているとき、チラリとVTOL機がユーリを載せたのが見えた。

 

「安心して。ユーリ、あなたは今度こそ私が守ってあげるわ」

 

まだ、パラデウスはあきらめてないらしい。

 

「何者なのよ、あなた達…!」

 

ユーリを攫って拷問までする組織、それだけでも腹立たしいが……遮蔽にも隠れず死を恐れず攻撃し続ける。

M4A1はこのパラデウスたちが常軌を逸した組織であることを理解する。

 

その自信に繋がるように、一振りの鎌が後方のパラデウスの兵士らをなぎ倒した。

リーダー格の白い少女、あの鎌……ユーリを切り裂いたのと同じもの……!

 

「お前たち、邪魔なうえに私にまで仕事をさせるとは、無能すぎる。後で自殺しなさい」

「はい、ネイト様」

 

白い少女はネイトと呼ばれているらしい。

しかし、仲間事切り裂くとは……KCCOも裏切りはしたが、雑草のように仲間を蹴散らしてはないはずだ。

 

「どきなさい、パラデウスの邪魔をするな」

「嫌よ。むしろ、あんた達が立ち退いたら?」

「我々の神聖な場所を土足で踏み入った理由を答えなさい」

「知らないわよ。大方、アンタのケツじゃない?」

 

M4A1は中指を立てて挑発する。

この距離で鎌は届かない、片手を使ってのあいさつするくらいの余裕はある。

 

「横柄で傲慢、そして下品だ。祖国を燃やされたら、敬意を学ぶでしょう」

「奪われたばかりだからそれには納得できないわね。ああ、でも気にしないで祖国に値するものはさっき返してもらったわ」

 

M4A1はVTOL機を指さす。

ネイトの表情が微妙にわかる。同じ女だから分かる、アレは怒りだ。

馬鹿にされて、プライドをズタズタにされ、敬愛の対象にいい所を見せられないことの怒りだ。

 

「────死ね」

 

ネイトが接近する。

銃も無しに正気とは思えないが、あの加速性と機動性でこちらの発砲を避けている。

よしんば当たっても、こいつもパラデウス兵士同様、頭に当たらなければ倒せないらしい。

 

「成程、これは厄介ね」

 

しかも、加速は不均一で「これだ」と思える感覚がつかめない。

その上、あのネイトの持つ鎌は伸び縮みする。

近接しかできないとタカを括ったらばらばらになる、まさに初見殺しだ。

 

そして、M4A1の首元めがけて、いままで同じように葬ったように鎌が伸びてくる。

これでM4A1の首がはじけ飛ぶと思われたが……

 

「フフ……」

 

鎌の一撃はライフルの先端に取り付けたバヨネットで弾かれる。

初見殺しの攻撃だが、M4A1にとっては初見ではない。

AK-12の提供した戦闘データが役に立っている。

だから、こうして接近戦用の装備を持っている。

 

「あなた────」

 

剣や斧ではじかれる経験はあるようだが、銃ではじかれる経験は全くなかったらしい。

M4A1はその驚きを見逃さない、髪をつかんで逃がさないようにして、銃剣を用いた刺突を4、5回に渡って繰り替えす。

 

「ごは────!?」

 

スリングにかけてないのは相当の自信家だが、手から武器を話したら落ちてしまうだろう。

 

「お前────っ!?」

 

反撃しようがとっくに取り出したFNX-45で顔面を殴り、数発の45口径を顔面に叩き込み真正面から、ネイトの顔面をへこませる。

 

「ぶっ……っ!?ぐふっ!?」

 

鼻血を流しよろめくネイト。

弾丸が頭にまで貫通してないのか、それとも頭を倒すのでは終わらないのか。

 

「い、行きなさいっ……!」

 

余裕がなくなったネイトを部下を差し向けるが、残念ながらこちらは一対一で戦う気はない。

M4A1は背中のガンケースを砲撃の形態に変形させて、連中めがけてトリガーを引き絞る。

 

「復讐のチャンス……ハッ」

 

何を言っているんだろう。

言ってて訳もわからずM4A1は笑ってしまった、こんなのただのゴミ掃除と変わらないじゃないか。

実際、ガンケースから放たれた砲撃は今の接近戦が馬鹿の小競り合いと思えるほど、木っ端微塵になっている。

ネイトもこうなってしまっては呆気ないな。

 

「……なんだ、つまらないわね」

 

M4A1は初めからこうすればよかったと、さっきまでユーリを奪われた怒りすら、萎えてしまった。

 

「これで全部よ。キャスターさん」

 

とはいえ、終わりは終わりだ。

M4A1は無線で終わった事を報告した。

 

<結構だ。すべての退却が確認できた、お前も撤退しろ。"M4A1"……いや、レイラの方がいいのか?>

 

それは自由に。"ルニシア"と呼ばなければ、どちらでも構いません。

建物の影に隠れる為、暗闇に足を踏み入れた時……ふとネイトの死骸を見下ろす。

その姿は確かにM4A1と確かに似ていた。

 

「……なるほど、ユーリが動揺する訳ね」

 

M4A1はユーリを哀れに思いながら、影の中に足を運び暗闇に溶けていった。

 

────視点:RO

 

「全ユニットの搭乗を確認!!」

「よし、離脱する!!」

 

 

作戦は成功した、私達に手を貸してくれたあのヴェルークト…噂程度に聞いていたけど、確かにあれは凄腕だ。

 

卓越した戦闘技術や兵器のベストタイミングの運用、どれをとっても戦術人形を同格…いや、それ以上ともいうべきか。

だが、それ以上に最強だと判断したのは、あの部隊全体で個を成していた様な動き…まさに最強の部隊と言われる所以に相応しい姿をこの目で見れた気がしたのは非常に幸運だった。(ダイナゲートの姿で見なければならなかったのは不幸だったけど)

 

まぁ、それはそれとして指揮官とはヘリの中で再開した。

 

AK-12と指揮官を引き合わせることはヴェルグ2は少し渋っていたが、指揮官からの要望で引き合わせることにした。

 

「────久しぶり」

「────うん」

 

あんな悲しい結果で終わってしまった、指揮官とAK-12なのに、彼と彼女の会話はそれを思わせないくらい、自然だった。

 

「────良かったですね」

「────隊長にとってはな」

 

確かに、一度この部隊を壊滅状態にした原因のAK-12が"父親"である、指揮官とがごく普通に当たり前の家族の様な、姿で話をしている姿は複雑なものだろう。

 

M4SOPMODⅡはあまり指揮官とAK-12が仲良くしているのは気に入らない様で、MP7は緊張で飴をが歯で食べていた。

 

「また、会いましょう。今度はきっと、私達はあなたを裏切らない」

 

ヴェルークトの隊員達は指揮官にまた、軍に戻って欲しいと、名残惜しまれていた。

 

しかし結局、指揮官は「この問題が終わったら」と言う返事を残す結果で終わり、翌日別れの挨拶をして指揮官と指揮官を救出に参加した私達グリフィン人形は、新しい基地に到着した。

 

「指揮官様、大丈夫ですか?」

「────歩けるから大丈夫」

 

先に別のヘリで降りて来たカリーナさんが肩を貸そうとしていた。そのヘリで乗っていた筈の404は気づいたらいなくなっていたらしい。

 

「こんな事聞いて、悪いが……クルーガーさんとヘリアンさんは?」

「その辺りはハーヴェル氏がごん存知でしょう────」

 

扉から人がやってきた。

カリーナは出迎えが早い…とユーリは思うが、出てきたのは意外な人物だった。

 

「────おぉ!グリフィンで最も信頼できる指揮官ではないか。良い朝は迎えられたかな?」

「……は?」

 

突然の登場に指揮官は少々、面食らっていた。そういえばカリーナさんは指揮官にこの基地に今日着くという連絡はしたのだろうか?

ハーヴェル氏はグリフィンに人形を提供する企業の一つ、I.O.Pのトップ。

RO635もM4SOPMODⅡも呆気に取られた。

だが、その動揺は知らずと、指揮官に話すための時間を取るために引っ張っていった。

 

「あの……指揮官はとても疲れていて……」

 

慌てて、M4SOPMODⅡがハーヴェルの動きを止めに入ろうとした。

そして、社内の上下関係は明確なのかM4SOPMODⅡが彼女らしからぬ控えめな言葉でハーヴェルを止めようとする。

指揮官は確かに喋れるし歩けるが人体上では今すぐ正規の治療をしなければならない程、危ない状況だ。

 

「君のいう通りだが、それはできない相談だ。何しろ、"あのお方"との約束だからな」

 

だが、ハーヴェル氏はM4SOPMODⅡを無視して、指揮室に連れて行かれた。

 

「"あのお方"…アンジェリアさん絡みですか?ハーヴェル氏」

「感がいいな?流石、クルーガーが目を掛けていたことはある」

 

ユーリとハーヴェル氏が何を話しているかは聞き取れなかった、しかしドア開けるよりも前に、そのドアに追いつくことに成功して中に入ることができた。

 

そこで待っていた人物は…

 

「……小熊のミーシャの差金か?ヴィクトル……」

 

あの時の指揮官の顔をMP7とM4SOPMODⅡは、忘れることが出来ないだろう。

鉄血を"攻撃してくる方の"敵だと、例えるのなら、ユーリが"ヴィクトル"と呼んだ男を見ていた時の目は、"攻撃するべき"敵という形で見ていた。

 

────私達ヴェルークトはAK-12が起こした、ことと立て続けの"不幸"が原因で滅びかけたわ。実行犯はAK-12が契機だったが…これを操っていたのは国家安全局の"小熊のミーシャ"、そしてその部下のヴィクトル・ゼリンスキー"を中核とした面々だと睨んでる。

 

彼がそのヴィクトルか…

 

「……」

 

ヴィクトルは1秒ほど、ユーリを観察した、まるで壊れた部品から何が使えるかを探す…そんな目だ。

少なくとも私は彼を好きになる事は出来ないだろう。

 

「ユーリ・フレーヴェン。我が部門の特殊要員、"アンジェリア"を知っているな?彼女の携帯からグリフィンへ大量のデータが転送されている事が分かっている。これがどういう意味がわかるか?」

 

あぁ……。とRO635は理解した。

その大量のデータがユーリ達に約束させた、あのKCCOとの戦闘で使ったコーラップス兵器の証拠なのだろう。

要は最高機密が流れて、バレたら自分達の首が飛ぶ証拠が流れてしまったから、わざわざ局長が動いたのか。

 

「さぁ?そもそもそれでアンタ達がどうなろうと興味ありませんし……私たちに後ろめたいことがあるのなら、どうでしょうね?」

 

言葉遣いは丁寧だが、内容は敵意が入っていた。

あそこまでやっておいて敵意を向かない奴はいない。

それはグリフィンも同じだ。

 

「貴様の意見などどうでもいい、重要なのは今私にはお前とAR小隊 をこの場で殺す権限あるという事だ」

「────銃を降ろせ!!」

 

銃を向けたのはM4SOPMODⅡだ。

烙印システムが繋がっていない、グロック19を抜いている。

 

「ハーヴェルさん離れて!アクティブシューター(無差別襲撃犯)です!」

「……ああ、そう来られたか」

 

M4SOPMODⅡにRO635は入れ知恵したことだ。

そもそも、誰であろうといきなりテリトリー内の職員の命が危険に晒されたら、身を守るために武装している人間を殺してもいいというルールはこっちにもある。

 

「誰だって関係ない!社内で銃を向けた男が職員を狙って危険なんです!この人はまともじゃない!」

「……そ、そうか。確かに危ないもんね……」

 

MP7もグロックを構えた。

そこに肩書きは関係ない、職員を守るために偉い人間を撃つのは正当防衛だ。

 

「まともではないだと……この人形風情が」

 

そんなことしてここにいる安全局の局長である、ゼリンスキーを殺して仕舞えば、今度こそ誇張抜きでグリフィンが終わる。

そして、この男もM4SOPMODⅡ達も引き下がる気はない。

 

「君達、怖い冗談はよしたまえ、同志ゼリンスキーよ、君はそんな事をしない筈だ。SOPⅡ、君も確かに射殺の時点で彼は武装している事には違いないだろう。だが、彼は警戒心が強いからこんな事をしないと自分が安心できないのだ」

「冗談ではないし、私は今まで同じ状況で躊躇いなく"処理"して来た、お前達が生かされているのは我々が監視しているに過ぎないからだ」

「やっぱり、まともじゃない…」

 

政治というのは見栄がなければ、潰れてしまう。

だが、それを今SOPⅡの目の前で言ってはいけなかった、そのせいでSOPⅡは銃こそ向けていないものの、引き金に指をかけていた、いつでも撃てる様に、確かにハーヴェル氏のいう通りだ。

 

「しかし、お前の勇気、知恵…強力な意思は我らが国家の為、そして何よりそれ以上に高位の事業のために奉仕すべきだ」

 

意地でもゼリンスキーは戦闘力に関して評価しないつもりらしい。

 

「誰の意思も無視して、勝手に役職を決めて使い潰す。貴方のその盲目すぎる理想主義がこの国の闇ですよ」

 

ゼリンスキーがもし本当にヴェルグ2が言った通りの黒幕なら彼の意見は最もな意見かもしれない。

国家に対する反逆スレスレの意見なのに、私は止める気持ちもしなかった。

 

最後にゼリンスキーは私達もろとも死にたくなければ、アンジェリアを探せ、自分達のいう事を聞けと脅して来た。

自分達の組織が及び腰だったせいで起きてしまった事件でガリフィンに付けられた"テロ組織"の扱いの除去もチラつかせながら…そう、これは脅しではない、宣言だ。

 

 

────視点:ユーリ

 

十数分後、私達は部屋から出た。

こうして外務省の助けでグリフィンに戻ることに成功したが、結局"ゼリンスキーに協力する"という取引の結果を招いてしまった。

 

ヴィクトル……奴に対する借りはいつか返せばいい、背後からまた刺されるかもしれないが…裏切りには慣れている。

窓の外を見つめた時、電話が鳴った。

いつも使っているものではなく、キューブ型の端末から」

 

「……」

 

ユーリはキューブ型の端末を起動させた。

差出人は"あの方"からだった。

 

「はい……ユーリです。……本当ですか?いえ、分かりました。ええ……では、アナタの言うとおりに」

 

久しぶりにあの方の声を聞いた、そして世の中がいつのまにか大きく動き出している事を知らされた。

……確かにあれだけ事が動けば、ヴィクトルは強硬手段にでざる得ない。

奴にとって大事なのは、あくまで自分とその背後にいる存在に対して特になる存在だけだ、俺にはまだその価値があると踏んだのだろう。

 

「……アイツ、まだ俺がグリフィンが最後の居場所だと思っているな」

 

奴がいつか思いがけないところで簡単に切り捨てられるのは確実だろうが、それまでの間は恐らく保安局の付き合いはまだ続くに違いない。

幸い、まだ俺はヴィクトル達に本当の自分を知られていない。

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