たったひとつの願い   作:Jget

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外伝Assalt Raid:1話 レオニダス

<アクセスコードを>

「コードは”ブラックロータス”。”レイラ”への秘匿通信を頼む」

<はい、少々お待ちください>

 

しばらく時間をおいて、無線から女性の音声が聞こえる。

 

<どうも、キャスターさん>

「レイラか、お前の情報は助かった」

<こちらこそ、信じてくれてありがとう。でも、お礼を言うだけじゃあないんでしょう?>

「ああ、相談したいことがある」

 

ディスプレイにはM4SOPMODⅡの画像が現れた、隣には多数の砲身が剥き出しになっている列車が映っている。

 

「M4A1、どうしたら、お前の姉妹の赤メッシュを死なせずに済む?」

 

 

「おー!基地から追い出されたM4SOPMODⅡどの!元気にしてた?」

 

自分たちが新しく厄介になる基地に赴くと、MP7が出迎えてくれた。

M4SOPMODⅡは歴戦の戦友のように固い握手を交わし、背中をたたきあった。

 

「七転八倒あったよ」

 

戦争孤児を子供を拾ったことを誘拐犯として刑務所に叩き込まれるのにも恐怖したのは笑い話に出来るほど、本当にいろいろあった。

あの女の子と一緒の生活をしてからずっと金と格闘していた。

食費から、住宅費までは想像していたけど、教育費や近所づきあい、そして税金。

それに、信じられない数の細かい金額が自分の懐を苦しめた。

まさか、銃を持っていた人形が気の長くなるような補助金の審査や制限をクソ真面目に覚えざる得なくて、それでも生活が苦しいから日雇いの工事バイトで朝から夜まで汗水流すなんて考えもしない。

やっとグリフィンの仕事に入れた時は、幸運がやっとやってきたと思うほどだ。

 

「ハニーバジャーは?大きいケガをしたとは聞いたけどまだ復帰できないの?」

「本人はピンピンしてるけど、技師の許可が出ないそうか」

「そりゃそうか」

 

新しく創設された基地、新しく創設された部隊でM4SOPMODⅡ達はチームメイトとまだ帰ってこない仲間の話をしていた。

なんで、この新しい基地にいるかというと今回のアンジェリア救出作戦に参加した人形が件の反逆小隊や404小隊との騒動で起きたコーラップス兵器が使われた件で保安局に責任んを押し付けられるというばっちりを受けて……こうして新しい基地に一緒くたに押し込めれているのだ。

 

「お前達、いつまで喋っている!」

「誰かいるんですか?」

「1人増えても分かりづらい部屋だからね、仕方ない」

 

暗がりでよく見えないが、どうやらこのブリーフィング用の部屋に誰かが既に入っていたようだ。

指揮官と……もう1人はだれだ?よく見えない。

こんなのもグリフィンが電気代をケチったせいだ。

 

「なんだ言われたら分かる、口を閉じろ馬鹿者ども!!」

「誰だ、あの偉そうな女は?」

「聞こえたら、不味いですよ!?」

「…実際偉いんだろうね?あの人」

 

どうやら、明かりが付いたところまで移動したらしい、ようやく声の主の姿が分かってきた。

 

「この部隊1番な馬鹿のM4SOPMODⅡ、アンタに心当たりがあるなんて驚きだ!!」

「ないよ、経験上偉そうだと思っただけ」

 

M4SOPMODⅡは溜息を吐く、だがこのため息は別に隣にいるMP7がいれた茶々のせいではない。

絶対この横柄な人が混乱を起こしてくれるんだろうなと思ったからだ。

 

<繋がりました、準備OKです>

「…ふん、私はリョーシャ・クメランだ。本作戦の総指揮官となった。」

 

プロジェクターから、作戦場所を模したマップが表示される。

見る限り、あまり戦局は芳しくなさそうだ。

 

「作戦を説明する。今回の作戦はこのスペクター鉄血基地の攻略として、グリフィン部隊、および保安局の部隊を派遣し、この基地にある巨大装甲列車の鹵獲だ。この一帯で捜査員がこの基地の内部に軍用の旧型装甲列車が隠匿されている情報を得た」

「あぁ…あの辺りですか…随分と懐かしく感じますね」

「知ってるんですか?」

 

RO635は何か思い出したらしい、それにしてもちゃんと人型RO635を見たのは久しぶりな気がする。

スペクター基地の周辺に赤と青がそれぞれの箇所に現れた、恐らく赤が敵で青が味方といった所だろう。

 

「鹵獲を支持したのは国家安全局保障省だ。この作戦の鹵獲はその安全局の鹵獲隊がやる、くれぐれも死なせるなよ」

 

M4SOPMODⅡとRO635が嫌な顔をした。

絶対、ヴィクトルが絡んでいる。

 

「装甲列車は長期移動の多い外務省か特殊作戦群しか持たない装備じゃないんですか?保安局が鹵獲?話が怪しいですね」

「足がついても私達みたいなテロ組織扱いされた、民間軍事会社を中心に動かせば自分達は叩かれず済む…そういう段取りなのでは?」

「あくどい連中…」

 

しばらく前にヴィクトルがグリフィンの存続を脅しに協力を"要請"する様になった。

気に食わない奴だとは思っているけど未だに弱点らしい弱点は掴めない。

 

「この際、列車が外務省に渡るか、それか勝手に逃げてくれればこっちには万々歳ですが…」

「ま、こうして先のない生活に追いやられた私たちをよそに保安局の"ご厚意"でぶくぶく太ったグリフィンには逃したくない案件ではないと思いますが…いっそ、砲撃部隊の爆弾でも借りてぶっ壊しましょうか?」

「鹵獲、だ。舐めた発言をするなよ。作戦の行動を考えるのはお前たちの仕事じゃない」

 

恐らく、聞こえてはいないが察してはいるんだろう。

脅迫まがいの眼差しが突き刺さる。

 

「今回の部隊の動きを説明する」

 

指揮官が部隊の編成画面をだした。

ノイズが減って救われる気分だ。

 

「今回はA(アサルト)チームからM4SOPMODⅡ、MP7、R(レイド)チームから、DP-12、AUG。この4人にそれぞれダミー4体の16人編成。R93は待機」

「私お休みですか、運が外れましたね」

 

今回の編成から外された、R93は残念そうに笑っていた。

 

「指揮官は出撃しないの?」

「それが当たり前だ!貴様、いつから人間の厚意が当たり前だと思うようになった?偉くなったつもりか?え?」

「…申し訳ありません」

 

まぁ、確かにこれまで指揮官に頼り切りの私達の方が異常だったのも事実だ。

それに私達自身が結果を出して示しをつけるのも必要だ。

 

「悪い、今回は参加する部隊が多いからね。私だけじゃないROも調整に回る必要がある。代わりにサポートとして、人員を追加する事にした」

「…追加人員のM82A1です。狙撃、対物破壊でサポートに入ります」

 

確かM82A1は指揮官とあの戦場で…秩序乱流作戦に参加して指揮官を護衛した人形の1人だったけ?

 

<では、この兵器の脅威について説明します。まず、16もの砲塔。この戦車砲は動物種のE.L.I.D変異体に対抗するため、あらゆる砲弾がモジュール化されていてアレスのモジュール機能もかの装甲列車のモジュール機能を参考に開発されています。原動力は基本的に原子力ですが火力、風力、太陽光などあらゆる発電能力を有していて食料以外はほとんど賄える多機能性、及び利便性に優れています>

「それはすごい、で貴方はどこのディーラーさんですか?」

 

突然、どこにもいないところから声が聞こえたので、思わず聞いてしまった。

声からして男性だとは思うけど誰だろうか?

 

<僕はゲフゲニー・カルコフです。"キャスター"とも呼ばれていますけど、基本兵器の解読や研究の仕事をしています>

「ここにはいないようですけど?」

「……彼は自宅のインターネットで送られた情報や及び、手に入れた情報源で兵器の解読や研究をしてそれを本社に報告する仕事をしているんだ」

 

キャスターが何者かの説明をユーリがしてくれた。

 

「なるほど、リモートワークですか。40年前くらいに確かブームになった仕事方法でしたよね?」

<はは、身の安全も守れていい仕事の方法と思うんですけどね……あ、そうだ。僕はこの装甲列車をレオニダスと呼んでいます。レオニダスが就役したのは2052年に提案された対E.L.I.D戦闘戦力兵器開発の一環で開発されました。まず、基本要求を満たすため、兵装が多く積まれています。また主砲で使われる4本のレールガンは現在でも運用されている装甲列車の主砲の火力を超えています、射程はおよそ700キロ>

 

まさに、化け物だ。こんな装甲列車を使えたらどれほど気分が良いだろうか?いや、使いこなせないな。

 

<そして、この装甲列車はレールが無くても燃料の残数次第でホバー移動が可能で光学迷彩などのステルス性も保有しています。ホバー移動してレールがないところからアウトレンジ…という手法がかつて提案されましたが、費用問題と高すぎると現場から苦情出たために、エネルギー使用量からから試作だけで量産化の際は両方とも搭載を断念されました。光学迷彩は外務省のヴェルークトとで使われているとかいないとか…あと、問題は試作された装甲列車が今回のミッションの列車なのですが…>

「保安局が鹵獲したくなる理由もよく分かりますねぇ…」

「で…それを鉄血が使おうとしてるわけだ。…って、今更かよ!なんですぐに使わなかったんだ!?KCCOもあれを食らったらただじゃすまなかっただろう」

 

確かに…

 

<前回の正規軍と鉄血との戦闘が何か関係あったのかもしれません。鉄血はほぼ活動も停滞してますからね>

 

「なら、軍が空爆してぶっ壊した方がいいのでは?」

 

鹵獲なんてして、他から目をつけられるよりは、早々に壊して悩みの種を少しでも減らしたい。

 

「鹵獲だ。何度言わせる気だ」

 

クメランが睨みつけた、うわ…怒ってる怒ってる…

 

指揮官がプロジェクターを次の画面に切り替えた、今回の配置か

 

「AR小隊の任務は戦闘優勢の確保と鹵獲部隊の護衛だ。他に投入される戦術部隊には電子戦の人形も参戦している電子戦の影響下に入れれば優位に戦いを進められるだろう、作戦を開始する同時刻に参戦する予定だ」

「弱まった鉄血風情から、モスボールされた列車を奪う作戦の難易度など低い、この程度の数でも問題なかろう」

 

「なかなか、面倒な話になりそうですわね」

「だろうね、あの総司令だっけ?あの女は政府の面々に好かれることしか考えてなさそうだしね。あー…そういや、M4SOPMODⅡ?」

 

ロッカーで今回必要な装備を、揃えていたらMP7が私に話しかけてきた。

 

「あの総司令の事知ってそうだったけど、アンタの知り合いかい?」

「ないない。でも…そっくりでさ、AR小隊の最初の指揮官に。そして、AR小隊を一度クビにした人」

 

今でも思い出す。クレメンタ指揮官は怖かったし。

自分の正論だけ通して、あまつさえこっちの話はまるで意に介さない、私にはあんまりいい印象がない。

 

「それは、それは…随分と苦労されていたようですね、実は私人形の面倒を見ていた時があって────」

 

────A(アサルト)R(レイド)小隊、出撃を許可します。

 

出撃していいとのアナウンスが入る、準備は万端だ、ここに止まる大きい理由もない。

 

「────時間ですね、この話はまた今度にしましょう」

「そうだね」

 

 

「お待ちしておりました」

 

クメランとその他グリフィン一同が、今回の作戦の進捗を統括するためにやってきた保安局の人員たちを出迎える。

個々の人間ではない、保安局員らが我が物顔でグリフィンの指令室の中に入る。

 

そして、その彼らを守る保安局員らの護衛人形たちは、まるで人切り包丁みたいに殺意を見せていた。

 

「……」

 

グリフィンの人形たちにも警戒が走る、静かに保安局の護衛たちの前に立ちはだかり、けん制した。

ユーリに最近雇われたHK416も、そばにつき守るように立った。

グリフィンと保安局は、一枚岩ではない。そして保安局のそれぞれの人形たちがにらみ合っていた。

 

 

────スペクター基地────

 

グリフィンの人形たちがやってくるまでのさなか、

スペクター基地で保管された、装甲列車を1人の人形が見つめていた。

鉄血が人類の脅威となった蝶事件のそれより少し前、人形たちは仲間の鉄血人形たちと共に拷問を受けていた。

口ぶりから、保安局であることは分かっていた。

奴らはエルダーブレインを開発した、リコリスを捕まえる方法を知りたがっていた。

仲間たちは一人、また一人と死に、ゴミに用に湖に捨てられた。

 

「これは弔いだ」

 

人形はその言葉を失った戦友たちの為に捧げる。

死んだ戦友たちは今日の為に、保安局に計り知れない復讐をするために生きていたのだ。

我々は苦しみを覚えた。だからこそ、何をやっても許される。そうに違いない。

 

「準備出来次第発信せよ!!」

 

私達がスペクター基地にたどり着いたのは、昼頃だった。ダミーは他の部隊が届けてくれる手筈らしい。

 

「よし、やるよ!!」

 

列車が置かれている工場は大きくて、基地の中の工場まで見える、私の掛け声と同時に仲間達が弾薬を銃に装填した、

 

<分かった…チッ>

「指揮官?どうしたの?」

 

指揮官が珍しく舌打ちした。こういうときは何かしらの嫌な予想外な出来事があった時が多い。

 

<あなた達のダミー機を含む、グリフィンの戦術部隊と保安局の鹵獲部隊の到着が15分遅れてるの>

 

今回はオペレーターの役をしているROからの報告はまさに驚愕に値するものだった。

 

「なんですって!?」

<一旦下がって、味方部隊の到着を待つん────>

<その必要はない、その場で先行部隊と戦え、15分間も耐えられないで何がエリート人形部隊だ>

<ちょっと!いくらあなた達でも!>

「え?今から15分間4人で持ち堪えないといけないの?先行部隊だけでも70はいますよ!?」

 

「たった4機だと!?鉄血工造を甘く見やがって!!」

 

誰かがマイクを奪って、指揮官の指示を却下して、厄介な指示を出す。

もうすでに鉄血からは先行部隊が現れだしている、敵の方が早い段階で動いている。

 

「どうする!?隊長!?M4SOPMODⅡ!!」

 

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