たったひとつの願い   作:Jget

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外伝Assalt Raid:4話 追跡

「よぉ!!ハニー!!病院飯はうまかったか?」

「あはは…電力を注がれただけなのでなんとも…ようやく戻れましたよ、RO635もお久しぶりです」

 

修復がようやく終わった、ハニーバジャーが戻ってきた、メンバーが退院祝い代わりのジョークを飛ばしていた。

 

<AR小隊、緊急のブリーフィングがあるので至急────>

 

「緊急の?私がいない間、何があったの?」

「まぁ、色々だよ」

 

寛いでいたベッドから降りると、私は支度をすませて、ブリーフィングルームへ足を運んだ。

 

ブリーフィングルームには、やはりと言うべきか、クラメンがいた。

プロジェクターが開かれる、やっぱり前回のあの、列車騒ぎじゃないか…あの横転の責任を取らされて私は始末書を書かされた…しかも、クメレンタの訂正付きで…お陰で私は始末書を書いていた日は、全く眠れなかった。

 

また、小言でも言わされる?…やだやだ。

 

「旧オセチア国近隣で、前回の任務で装甲列車の任務で回収した列車に似た、装甲列車があったと言う事実を入手した、これは他にも装甲列車があったと言う事実に他ならない」

 

2台目!?中がザワつく。

しかもあの見た目は更に改良を加えたようにも見える、私達はまんまと囮に引っ掛かったと言うことか。

 

「にしても、あの辺りはグリフィンが管理している所だろ?わざわざ網にかかってくれるなんてな」

「旧オセチア領のグリフィン支部からは応答がない、この写真はその調査の際に送られた写真だ」

 

…連絡がない?事故でもあったのか?嫌な予感がする。

 

「そこで、貴様達にはその連絡も取れない状況確認もかねて旧オセチア領に調査に行って貰う────」

 

「アイツ…いつの間に私の部下を」

 

今日はそれだけ話した後、訓練をして解散になった。

 

「カルーア!ただいまー」

 

解散しては自宅に帰る。

声をかけてみたが、一緒に住んでいる子供”カルーア”から……返事がない。

 

「カルーア?いないの?」

 

時計を見る、この時間だとまだ学校でクラブ活動をしているかもしれない。

 

学校といっても、都市部の学校とは全く違う。

公共のものでも、私立のものでもない、ただ勉学の経験のある大人たちが学校に行きたくてもいろいろな理由でいけない子供たちの為に立ち上げたコミュニティみたいなものだ。

 

SOPⅡも最初はあの子に普通の学校に通わせてあげたかったが…いろいろ面倒な事情を抱えているSOPⅡたちではマトモな学校には通わせてあげられなかった。

数日分の食料を置いて、SOPⅡはため息をついた。

 

────旧オセチア領には事前に調査に向かった、貴様らの仲間を向かわせている。M4SOPMODⅡ、お前が先に旧オセチア領に先行して潜入、そこで事態を確認しつつ、現地とのコンタクトを測れ。

 

クラメンが指示したこと今の厳しい状況に於かれているSOPⅡが拒否することはできない。

けれど、あの子はまだ自分の身を守るのも難しい子供だ。

預けるのに信用できる人もいない、帰るまでにあの子が無事であることを祈るだけだ。

 

「SOP!帰ってたんだ!」

「あ、お帰り」

 

悩んでいる間に帰ってきたようだ。

 

「カルーア、ちょっと話があるんだ」

 

SOPⅡは任務のことを話した。

内容は話していない、けどしばらく家を空けることとその間食事とかは自分で何とかしてほしいということを伝えた。

 

「そっか、まあ。そうだよね、仕事だもんね」

「本当にごめんね」

「いいよ。けど…」

 

そこまで話して、カルーアはSOPⅡの服の裾を引っ張った。

 

「けど…今日は一緒にいて」

 

寂しそうに俯くカルーア、SOPⅡは本当に申し訳ないと思い目の前の子を優しく抱きしめた。

 

「……すう、すう」

 

あの後、夕ご飯を食べた後カルーアはSOPⅡに寄り添うように眠った。

安堵したように寝息を立てるこの子も少し前までは、警戒してまったく寄り付かなかった。

そのたび傷ついたものだが、明日は私が彼女から距離を置いてしまう番になってしまった。

 

「いかないで…」

 

寝息に混じったカルーアの寝言には切実な寂しさが混じっていた。

親を亡くしてそう時間も経っていないのだ、親を失う悲しみは知らないが家族を失う悲しみはSOPⅡもよく知っていた。

 

「ごめんね。けど、絶対生きて帰ってくるよ」

 

────

───

 

「それじゃあ、行ってくるね」

 

朝ご飯を2人で食べて、先に出かけるSOPⅡはカルーアの髪を優しくなでた。

 

「お土産、忘れないでね」

 

SOPⅡの頬が緩んだ。

あの時、母親を失って絶望した今より、ずっと良くなっている。

少なくとも、自分が帰ってきてくれることを信じている。

 

「うん、美味しいお菓子があったら買ってくるよ」

 

────

───

 

電車で最寄りの駅まで移動して、そして目的地までバスやタクシーという交通機関で移動するつもりだったが……あると聞いていた交通機関は軒並み廃業していたらしい。5時間以上歩き続けて、ようやく目印の砂だらけになった、荒野を歩く。

昔はここにも緑が溢れていたという、それを戦争が殺風景にしたという、至極嫌がらせ全開の前情報をROから、教えてもらいつつも、どうにか合流地点にたどり着いた。

 

「────おーい、追加の人員が来たよ…」

「あ、隊長さんね。ようやく来れたんですね?あと、もう少しで荒野で野垂れ死ぬと思われてましたよ」

 

合流していた、雨風も凌げそうにない、ボロい家でACRとP22と合流した。

この2人は上層部からの仕事をしていると噂だったけど…まさか、この仕事についていたとは…

 

「P22、賭けは私の勝ちでいいよね?」

「あーあ…せっかく、死体を探すことが出来ると思ったのに────マズイよ!!────そうじゃないって!!────3倍の負け金は嫌だああ!!」

 

自分で自分と会話するという機能をもつ、P22は…こうやってひとりで盛り上がる事がある。

というか、こいつら私が死ぬ事に金をかけていたのか…ACRが涼しい顔で水を渡してくれたけど、どうにも鳥肌が止まらない。

 

「残念だったね、私はタフだったんだ。死体を探したいなら、戦場に行かないと」

「予定通りの日程で来れれば、そういう心配もありませんでしたけどね、自分が死ぬ事を賭けの対象にされている事に不満を感じているかもしれませんけど、そもそもオンボロ思考AIな、あなたが悪い点もありますからね?」

 

なんの反論も出せない…部下にしなきゃ良かったと今更後悔しても遅い、ACRから、手渡された水を飲む…

 

「なんだか、気持ち悪い…これ、なんの水?」

 

しかも、よく見たら黄色いし…

 

「サソリやアリをすり潰した血と体液のドリングですよ」

「…う」

 

衝撃的な中身を知って、ペットボトルをACRに返した、もう怒れる気力もない、

 

「うるさい!ドジ!!ちょっと、許してやれじゃないのよ!いやいや、そうじゃなくて…あのさぁ…なぜみてるのおおおお!!!」

 

P22はまだ騒いでいる、もう仕事をして気持ちを紛らわせたい。

 

「…行こうか」

「…はい」

「…はぁ、あの馬鹿達は…って、置いてくなあああああああああああ!!!!」

 

P22が、自分を置いていかれた事に気づいたようだ、慌てて追いかけている。

 

「あぁ、そう言えばSOPⅡはこの辺りの情報をどのくらい得ているの?」

「グリフィンとの連絡が取れないとアンタらがそっち向かったことだけしか知らない」

「よし、最高だ。────うん、最高なんだったから。まず、私達が先に行くところを確認しよう」

 

P22が地図を開いた、よく見たらP22やACRの携帯端末には電源が付いていてない?

 

「ここから…10キロ歩いて、この街…みたいな所にいく」

 

「グリフィンの基地じゃないの?」

 

「現状を把握してもらうにはこの街から始めた方がいいのよ」

 

…なんだ?まるで、私を信用していないような、投げやりな言い方だ。ここで一体何が?

 

────6時間後もかけて合流場所についたのにさらに6時間歩いて…やっと着いた。

だが…なんだかグリフィンが管理しているという割には、警備の人形が怪しい様な…しかも、街に入るには地下トンネルを使うはめになったし、顔をは隠す様に布を巻かれた挙句、端末の電源は切れと言われる、もう…何がなんだか…ようやく地上に上がり、ドアから光が漏れているところまで来れた。

 

「…いいですか?何があっても、動じない事、そして離れない事…いいですね?」

「…え?わかった…」

 

ACRが念押しで、確認してドアを開ける。

 

「グハッ…!!や、やめ…」

 

いきなり、悲鳴と呻き声が聞こえたと思ったら、目の前でこの街の住民に見える人が戦術人形に撃ち殺された。

しかもあの旧式な銃から見て、明らかにグリフィンの人形じゃないか!?

 

「目を合わせないで」

 

P22が無理やり、私の視線を動かして私を引っ張った、街の中の光景は想像を絶する物だった。

ここ以外でも人形達が住民に重労働を敷いたり、暴行すら加えている。

 

「驚いた?でも、これでも今日は大人しい方よ」

「これって明らかに違法だよ。一体何が?」

 

これが大人しいなら平時は一体何が起きているの?

 

「ここはダルシスという指揮官が納めている地域だというのは知っているよね?」

「事前で、教えてもらった」

 

ダルシスはグリフィンの中でも発言力が強い指揮官だと、知っている。彼がクルーガーの後釜になるという意見も聞いたことがある程に…

 

市内の廊下を通り抜けて、水が枯れてなきゃ噴水の水が溢れている広場に出た。

 

「やめろ…彼女は怯えているんだ」

「成る程…じゃあしっかり見せてやらないと」

「アイツら、何を…」

 

1人の若い女性を庇う様に、若い男性が目を覆い隠そうとした所にグリフィンの人形が近づいた。

 

ACRがそっと耳打ちした。

 

「処刑です」

「処刑って、どうやって」

 

次の瞬間、若い男性が撃ち殺された。

 

「────な…?あ…!」

「イヤアアアアアアア!!!」

 

そして、その殺される光景をみた、女性が悲鳴を上げた。

 

「これはいつも通りだ、ノルマが達成出来なければ、殺す。お前達は我々の仕事をするための鉄や金属…そして、反乱軍の情報を提供できなかった…それどころか、そいつらに協力している、正義を下すには十分だろ?」

 

「いつもあいつ等はイカれてる、あのビッ○共」

「…気付かれるわよ。そうそう…絶対に」

 

処刑が終わって、ひと段落した様に一服した人形達を見て、ACRが冷たい眼差しでボソッと小さく呟いたのをP22が警告した。

やはりこの光景は、アイツらが間違っているということなの?

 

「お前らが我々の要求を達成できなかったからだ、これからも続けるぞ?お前達が我々の協力の為にな?」

「…これ明らかに違法だよ。どうして止めないの?」

「どうして今まで知らなかった?」

「知らせなかった、そういう事なの…」

 

こいつらはこの事実を隠す為に、連絡をしなかったのか…なんて事だ。

 

「いや…ごめん、あなたに当たるつもりはなかったんです。でもイライラして…つい」

「気にしないで、これ見たらみんなそう思うよ」

「あなたは思っていたより、まともな感性をしているんですね?」

「……ちょっと環境の変化があってね。これからは外面も意識して働く事にするよ」

「良い事を言う…いや、今から…いやいや…このままでも…それでも…うーん」

 

私達は広場を抜けて、裏路地に入った、ACR曰く「この辺りは通りたがる奴が殆ど居ないのと、近道だから」と言う理由らしい。

 

裏路地に出て2分くらい歩いて、その裏路地に誰もが入りたがらない理由がわかった。

 

「酷い!この匂い…!」

「過労や採掘の仕事中に死んだ奴はここに捨てられる…あぁ、後処刑された人達もここに」

「…こ、こんな…酷すぎる…こんな、こんな子供まで」

 

頭は潰されて分からないが体つきと歯の様子から子供だとすぐに分かった。

 

「────隊長。今、見ているこの光景で大体の構想は固まっていると思いますけど、ここにいるグリフィンの人形達はここの住民を粛清や暴力による恐怖で統治しています。ここにある集団墓地もその一つです」

 

こんなの…正気を疑う、…みんな私を「戦場で有名な人形虐待嗜好者」と言う。…グリフィンのみんなは笑って私を仲間だと言っているけど、腹の底じゃ本当はこんな事をしている奴と同じだと思っているの?

 

普段自分が気にしないでやっている事が、ふとした事で客観的な視点で見るようになると、自分がやっている事の意味を少し知った様な気がする。

 

「…なんでこんな事に?」

「さぁ…でも、ここにいる人形達は少なくとも正義を執行している側だと思っているのは確かです。彼女達なりの"テロリスト"と呼ぶ側の存在も確認できますし」

 

それでも、変だ。それなら、「助けてくれ」という通信が来るはずだ、どうでもいいことでも報告する事でダルシスは有名だから。

 

「私達が姿を隠す理由は?」

「前に接触した事があるんですけど、その時にいきなり殺されかけまして…どうにか助けてもらったんですけど…どうやら、彼女達。我々を敵視しているようです」

 

もしかして、隠したかった?この、街の事実を…?

 

「取り敢えず、背景を調べる為に色々調査しました。…一番、怪しかったのは、そうそう…これこれ」

 

ACRが何かを思い出したかの様に、グリフィンの人形のものと思われる、日記帳の布施が貼られた所を指差す。

 

○○月12日

 

────いきなり、襲われた。私達に反感を持ったテロリストだと仲間達は言う、確かにそうだけど…装備も勢力もいきなりすぎる。なにがあったの?

 

○○月19日

 

────人形が誤射をして、民間人が怒っている、戦場で誤射が起きるのはよくある事だ、だけど問題は市内で乱射した挙句、誤射という事実にしてしまった事が原因で市民が怒っているのは目に見える事実だった。

 

○○月22日

 

────反乱の勢いが止まらない。殺さない様に制圧も明日になったらできないかもしれない。どうしよう、指揮官を守らないと…こうなったら、撃ってくるのは全員敵だグリフィンの連中だろうとここの顔見知りでも!!

 

 

────指揮官達、グリフィンの人間達は基地の大広間に閉じ込めた、あそこなら食料も運びやすいし、たまった気持ちを慰める事だってできる。今すぐ、本部に助けて貰おうと反対する奴らも粛清した、これでうるさい奴らは居なくなった、連絡が来なくなった事に感づいた、グリフィンの連中がやってくるだろう。来るなら来い

 

「何…これ?」

「言うまでもない、これが事のあらましだと思う。ストレスで正気を失って書いたものだったら、話は変わるでしょうけど」

 

P22がページのある部分を指差した。

 

「この12日のこの辺り…いきなり、"テロリスト"と書かれた所…テロリストという奴らが判断できるくらいの勢力が現れた所…私達はこの辺り起きた事が怪しいと睨んでいます」

 

確かに…どんな勢力でも"いきなり"は無理だ。この辺りがターニングポイントかもしれない

 

「…長くなってしまいましたね。もう、着きましたよ」

 

市庁舎の後だろう…ここでもしっかりとした統治がされていたと思うと、複雑な気持ちになる。

この周りにはグリフィンの勢力はいるけど…あれ?このタンス…後ろに穴が?

タンスの後ろにはトンネルがつながっていて、一見しただけじゃ分かりにくい様になっている、わかってしまえば見分けも簡単だけど、初めて見たり、サッと見るだけじゃ分かりづらいかもしれない。

 

「やっと…会えましたわね。SOPⅡ?」

「…え?誰?」

 

トンネルを抜けた先のドアの前で色々豊かなら見た目をした、人形がいた。だけど私には覚えがない。

 

「…ZB-26です。クラメンさんの人形です。先にここで待っていました」

「あー…ごめん、脱落したていたのかと思った」

 

側からみれば、脱落したと思われるのは私だと思われるけど…

 

「まぁ、いいです。そんな議論よりドアの後ろに合わせたい人が居ます。さぁ…入って」

 

ZB-26に促されるまま、ドアを開ける。そこに居たのは…

 

「よく来たな。待っていたよ」

「…え?あ…アンタは!?」

 

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