「お…お前は!?ハンター!?どうしてここにいるの!?」
ZB-26が引き合わせたかったのは、鉄血のハンターだったの?
「まぁ、やむ得ない事情があったのさ」
「それでも、敵のアンタが私たちの前によく顔を見せられたものだね!!」
ハンターは瓶の中に入っていたコーラを机に置くと、写真を手渡した。
「お前達の所にこれと同じ写真が届いただろ?その写真を提供したのは私達なんだ」
「…なんで私達に協力するの?」
近くの椅子を引き、ハンターに対面する様に座る。
くそ…上層部はすでに織り込み済みであった様だ、知らせたら私が拒否するだろうから…
「話が早くて助かる。実のところを言うと、今私たちは、鉄血を抜けて、身を寄せていたグループの所からも抜けてしまったんだ」
「ご愁傷様」
「…で、いろいろ放浪している間にここの住民に世話になったんだ…で、守るべき場所にもなった」
私のイヤみを特に気にする様子もなくハンターが話を進める。
「つまり、人間と鉄血が仲良くなったわけ?その上、私達も真似事までして」
「ここの住民全員と仲良くなったわけじゃないけどな…さて、本題に入ろう」
本題……まだ何かあるというのか。
「あの日記は読んだか?グリフィンのあの日記だ」
「まだ、全部信じてるわけじゃない」
「私だって、そうだ。だが、実際にこの辺りでここを支配しているグリフィンのはぐれにもここの住民にも迷惑をかけている、"テロリスト"という、奴らがジャパンでいう…戦国時代みたいひしめき合ってバトルロイヤルみたいな様相を醸し出しているのも事実…」
…ハンター達はもう自分達の身を守るという選択をしたということか、だからグリフィンとも取引をして、互いに攻撃されない関係とあわよくば支援を引き出せる様にも…
「私達はここで生きていきたい。お前達はここと列車の問題を解決したい…そうだろ?」
「別に私がアンタ達の手を借りたいとは言ってないけど?」
「SOPMODⅡ、柔軟になったらどうだ?お前は確かに大嫌いな鉄血と仲良しこよしなんて嫌だが、本音では自分の部下に過剰な負担を強いたり、死なせたくはない…違うか?」
認めたくはないが、手が足りてない状況、誰かがこの後の処理をうまく解決出来るとは思えない、そもそも…ACRやP22がこの事を知っている状態で何もしないというのはここで敵対するよりもこちらの問題の方が重大と言う事なのかも知れない。
「…はぁ、これが終わったら覚えておけ」
「よし…契約は成立だな」
…クラメンの狙いはこれ?
小隊長の同意を自発的に得る事で自分の作戦失敗の責任を押し付ける為に…もし断ったら断ったで、命令や作戦不服従で追求する準備もできているに違いない、だからハンターも敢えて私の弱っている所をつかなかったわけだ。
ハンターについていくと、比較的書類や写真が多い部屋にたどり着いた、部屋の中には黒髪で髪がボサついている女性が地図や写真を眺めていた。
「やぁ、フレシア」
「時間通りなのは、良いことですよ〜ハンターさん♪で?この醜怪な金髪は誰ですか?まさか、こいつがあの2人組の上司さん?気持ち悪い目をしてますね?」
フレシアと呼ばれた人が、ハンターの声で私達の存在に気付いて振り向くと、いきなりその言い方はどうなんだと思える挨拶代わりのキツい発言をしてきた。
……それにしても彼女のこの見た目…指揮官に少し似ている様な…
「まぁ、合格です♪私はフレシアといいまして、このレジスタンスの戦闘部隊ティラノ隊のリーダーですよ♪」
「声も表情もうざいやつだが実力はある女だ」
うざいという言葉にハンターと記念すべき初めて、気が合った瞬間だ。
「あなたもここの人形達に虐げられたから反乱を?」
私の質問にフレシアさんは軽く頷くと、
「まっさかぁ、私もハンターと同じ流れ者ですよ、でも人形が好きじゃないのも事実ですねぇ、特にあなたみたいな醜怪な見た目のやつはもっと嫌いです♪」
「どうしてそこまで嫌うの…?」
どうも、頷く行為はイエスではないらしい。
「いや、なんか頭ん中が幼稚そうですし。それだけ」
「そ、それだけって…」
今まで人間が私達にいろいろ暴言を吐いてきた事はあるが、ここまでバカにした言い方をされたのは流石に初めてだ。
「もう挨拶はいいだろう。フレシア、そろそろ今回の作戦の説明をしてあげたらどうだ?」
はいはいとにやけ面を浮かべて、フレシアさんは壁に張り付けられた地図に刺されていた色のついた釘を指さした。
「さて、今回の仕事は兼ねてから予定していた、奪われた我々の拠点の奪還作戦です。現状複数の勢力に奪われていますがそれぞれ取り返す予定になっています」
それぞれの場所に決まった様な色の釘が刺されていた。さて、今回の作戦で刺された釘の色は青か…
「私達は"空軍"の支援後、破壊された外壁から侵入、"空軍"支援による誤爆を無くすために、内部に扇状に広がりながら制圧、もし"空軍"の支援効率が悪い場合は────」
「────以上が、今起きている事だよ」
<────なんて事が…>
<…分かった。君の部下と一緒に追加の人員も上はそっちに送りたそうだと思われるが…どうする?受け入れるか?>
「ありがとうございます、指揮官。実は手がもっとほしい。タイミングがわかったら連絡お願い、RO」
念のため、指揮官とROにロングレンジタイプの通信を入れて、連絡を取る。
やはりと言うべきなのだろうか、この事実は2人にとっては初耳の情報だったらしい。相変わらず、今のグリフィンは周りとの情報の連携がなかなか取れていない。
<難しいとは思うけど、今回はいつも以上に慎重に、そこの空気に飲まれない様に…飲まれたら、引き返すのは難しい>
<…これ以上おかしくならないでね。SOPⅡ>
「…できる限りはする」
時間が迫ったので通信を切る、ここにいるメンバー達の話曰く「あんまり通信に時間をかけると、探知されてしまう」との事だ。
「いやぁ、でもZB-26や隊長が持ってきてくれた通信機材には助かったね、久しぶりにまともな奴の声が聞けるのは落ち着けるもんだったんだね」
「もし、予定通りに私やZB-26が来なかったらどうしてたの?」
「…持っていけるだけのご飯と水を持って基地に引き返していたと思います、その後この基地がどうなるのかは、分かりませんけど」
────午後11時
「よし、時間だ」
時計を確認して、ACRとP22に合図した。もう、実行許可の申請をZB-26が本社に入れて、作戦遂行許可をもらっている、つまり…私達の手で元グリフィンのメンバーを殺して良いことになったのだ。
「レーダーに見つかっちゃダメだよ」
「了解」
フレシアさん達のグループから事前に提供された、レーダーを反射させる様な形をした、板を全面に押し出してゆっくり近づく。
正直、こんなのでステルス能力が期待できるのか?と疑問に思っていたが、普段なら絶対に見つかるかもしれない距離でも彼女達は気付いていなかった。
「しかし、最近はテロリスト共も腰抜けになったよなぁ…」
「確かに、最近は攻撃の話は殆ど聞きやしないわねぇ…」
サイレンサーを取り付けた、グロック19を取り出す。
「だけど、ここまで壊れて────」
銃声が静かに響く。
無防備に後ろを見せた、人形2人の頭に発砲した、人形は最後の言葉も無く、血を流して地面に倒れた、
「…クソが」
「気分が悪いのは良くわかってる。私も経験しました。でも彼女達は話し合いすらしようとしない、迷わないでください」
最初は、引き金を引くのに抵抗するんだろうなぁ、想像していたが実際にやってみるとあっさりと殺せた、そんな簡単に元とはいえど、仲間を殺せた自分に反吐が出そうだ。
それでも、ACR達はこの行動を肯定している。
「フレシア。予定通り、こっちの仕事は果たした」
<仕事が予想より早いですね、褒めてあげます。では、合流しましょう>
通信を終えて、自分の手で始末した人形の死体を眺め…視線を目標地点に戻した。
最初は、大きなショックを受けなかったが、だけど時間が経つにつれて、少しずつ不安に近い感情が湧き上がる。
────
───
「は?なにそれ?先に、元グリフィンを叩かせて欲しいとでも仰っているんですか?」
「はい、その解釈で間違いありません」
「仲間を粛清でもしたくなったんですか?ソ連製らしく?」
新しくなったからと言って、新と名のついたソ連が粛清しないという話は聞いたことがない、実際に保安局も粛清の準備を進めるために私たちを顎で使っているのだから、
「…このまま、グリフィンの人形との衝突を避けていてもいずれ、戦わなくてはならない時がやってくる。でも、その"同士討ち"の辛さをそれを後からきた部下に味合わせたくないんです」
この戦場でMP7は、多分問題ないと思うけど最近までグリフィンは仲間たちと一蓮托生の思いで生きてきた、その仲間を殺すという事実は、連続すればきっと耐えられないだろう、
「随分と都合の良い解釈してますよ、第一この同盟じみた私達のグループの最もな目標は生存し続ける事です、最大勢力のグリフィンだけ相手して消耗していたら、他の鉄血や武装勢力に付け込まれる。アンタの様な単純な考えでは私の部下や仲間達の命と労力は貸し出しできるわけないんです」
「分かっています。だから、私達が先に行動を示して────」
「次に合流した後に視界に映らない範囲で、手を下す係に回してもらえるくらいに信用を得よう────という所でしょうか?」
「はい」
恥も外聞もない、ただ誤魔化しもせず、正直に答えた、嘘をつく方法もあったけどそれが自分以外の誰を誤魔化せるのだろうか?
「馬鹿な考えだとは思っていますよね?」
「…はい」
フレシアさんが小さく、「負けた」と呟いて、画鋲に印を付けた。
「────じゃあ、今回の作戦で精々、信頼でも立てて下さい、その働き次第で私達もアンタ達の信頼を判断しますから」
「────!!ありがとうございます!!」
こうして、私達は仲間殺しをする為の仕事をすることを選択する事になった。
────うあぁあああああ…
上からいきなり、人形が落ちてきたので慌てて、落ちてきたと思われる、所に銃を向ける。
<セーフティ入れといてくださいねぇ?>
「……アイツ」
そこにはフレシアさんがニヤニヤ笑いながら、まるで見せつけるかの様に、笑っていた。
<コッチだ>
フレシアさんの近くをよくみると、ハンターがドアを開け、ZB-26と一緒にいた。
「良くやった、これで私たちは暫く後ろから撃たれずにすむ」
ドアを抜けると作戦通り、基地の内側に繋がる部屋に入っていた。ハンターの仲間とも思われる、鉄血人形達も部屋の外に銃を構えていた。
「"空軍"は?」
「丁度、此方に向かっています」
空から稼働音が鳴る。
「こっから本番だね」
「あぁ」
ZB-26の話の後、直ぐに聞こえてきた方向の空を見ると、100年以上前のプロペラ機がジェット戦闘機と比べると遥かに低速で上空を通過した。
直後、パラパラ…と黒い何かが落ちてくるのが見えて、全員が耳や頭を押さえて丸くなる。
直後、10から20の連続した爆発音と衝撃が響く、吹き飛んだ何かが、窓ガラスに突き刺さる…どうやら、タイヤのホイールだった。
「ここまで、ロートルな戦場もなかなかないだろう?な?」
私たちは、ちょっとばかり筋力トレーニングした様な兵士たちと10数体の人形という、絵面的に汚い部隊。
「一度でいいから、自分はヒロインだと思い込んでいる、見た目の良い女は殺してやりたいと思っていたんだ」
「…お陰で敵は格下だと、見下さないで殺し合いを出来ずに済みそうだ」
「確かにグリフィンは給料分働けていないイメージがある事は間違いない」
対して、見た目も良くない連中相手に警戒心を抱かせない、所詮"かわいい顔"をした女の子を燃やしたり衝撃という、だいたいの映画やアニメで死ななそうなシュチュエーションで殺すと言う光景は側から見たものでは、憤慨者の光景だろう。
「いくぞ…あ、そう言えばチーム名決めてませんでしたね?」
「鉄血、テロリスト扱いされたレジスタンス、グリフィンの不遇部隊…ここまでキメラな部隊なら"融合勢力"というのはどうだ?」
融合…か、確かに融合でもしなければこんな、側から見たら困惑する部隊は納得されないだろう。
虐げられた住民、離脱した鉄血、顎で使われるグリフィン人形…こんな私達には程よいネーミングだろう。
「…よし!"融合勢力!"作戦開始!!」