たったひとつの願い   作:Jget

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赤い森

 

<聞こえますか?M4?こちら、AR-15>

「……AR-15?聞こえるわ!AR-15!?そっちは大丈夫?」

 

驚きの連続で疲れ、横になっていた体を聞き慣れた声が起こし、M4A1は送られてきた通信を返した。

 

<わたしのことは聞いてくれないの?お姉ちゃん?心配してたのに!>

 

「SOPⅡ!あなたもそこにいるの?」

 

他にも、M4A1という自分を知る声がまた聞こえた。

 

<うん!ちょっと、危ないことがあったし、おなかすいたけど、大丈夫。M16お姉ちゃんが教えてくれたM4お姉ちゃんの場所と私たちがいるところは思ってたよりも近いね!うまくやれば、すぐに合流できるよ!>

 

SOPⅡと呼ばれた人形から明るく無邪気な、子供のような声が無線から流れた……。

発言の内容から、察するにM4A1の妹なんだろう。

 

「分かった。M16姉さんはまだ遠い場所にいるし、まずあなた達から迎えにいくわAR-15、合流地点はそこでいい?」

 

<……>

 

M4A1にとっては懐かしくそしてまた聞きたいと、確認したいと思っていた家族の声だ

……M4A1が喜ぶには十分すぎる。

 

「AR-15?聞こえているの?」

 

だが、送り主のAR-15は沈黙していて喋ろうとしていない。

 

<……うん、じゃあそうしましょ。また、連絡するわ>

 

<ちょ!?ちょちょちょちょ!まだ言いたいこ……>

 

M4SOPMODⅡの抗議も聞かず、そのままSTAR-15は無線を切ってしまった……

 

 

 

STAR-15によって、切断されていた2人の潜伏先では……

 

「AR-15!なんで切るのさ!やっとお姉ちゃんと連絡がついたのに!」

 

潜伏先のボロが進んだアパートの一室で机を叩いてM4SOPMODⅡは少しだけ苛立っていた。

 

「黙って。会ってから話せばいいでしょ?それに今は……通信している場合じゃないわ。」

 

隅っこにいたST AR-15のキツイ目つきがいつも以上に鋭くなっている。

苛立っているのは彼女だけではないらしい……。

 

「え?AR-15……もしかして……」

「そうよ……盗聴されている。たぶん、鉄血に優秀な偵察がいるんでしょう。面倒な奴に目をつけられてしまった……わ!!」

 

STAR-15が、さっき殴っていたM4SOPMODⅡ顔負けの威力で壁を殴り、穴を開けた。

相当いらだっていたのか?

違う、殴られた開けられた壁の裏……そこには盗聴用のマイクに使う配線が敷かれていた。

 

「待って!AR-15、どこへ行くの?」

「ついてこないで、SOPⅡ。ここからは別行動よ」

 

窓ガラスを破り、部屋から出ようとするSTAR-15をM4 SOPMODⅡが肩を掴み止めようとする。

 

「……手を離しなさい、あなたはM4と合流して事のことを伝えて。私は……片をつけなきゃならないことがあるの。」

 

そう言って、STAR-15はM4 SOPMODⅡが掴んでいた手を引き剥がし、そのままアパートから飛び降りた。

 

午後7時。

最低限の準備で、無人ヘリに乗りM4A1とユーリはM4SOPMODⅡ達との合流場所に行く。

 

「急な確認で悪いが、M4。今、マガジン……それと弾はあと、どのくらいある?」

 

戦いで疲れた身体を無理やり持ち上げて、ヘリに乗りM4から教えられた座標向かっている間に、2人は今のコンディションを確認し始める。

M4A1もこちらも物資を可能な限り節約したとはいえ、連戦だ。

しかもマガジンが自分の分しかないのはマズイのに違いはない。

 

「マガジンは今、入っているのが13発、予備で使えるのが1つです……」

「私も同じものだ。合流して、帰るだけだからそこまで心配する必要なんてないと思うけど……もし先頭になったら、短期決戦で決めるしかないな……」

 

やはり、お互い必要であるとはいえ弾丸を使いすぎていたか。

私は予備の武器……いわゆるサイドアームがあるから一応の笑うあがきはできそうだが、前のエクスキューショナーとの戦いを鑑みてもM4A1はサイドアームを持っていないのかもしれない。

それならば……

 

「M4……もし、弾がなくなったらコレを使ってくれ」

 

私は内側のポケットにしまっていた拳銃をM4A1に渡す。

 

「指揮官?……これはハンドガンですか?」

「ああ。FNXっていう、ハンドガンだ。弾丸は45口径を使う」

 

もっとも、このハンドガンはスペアタウンで仕事の請負をしていた時に、敵が放置していたこの物好きな拳銃を拝借したものに過ぎないのだが。

45口径が気に入らなかったら、別のを買ってもらおう。

 

ヘリの中でAK-102のマガジンの弾数を数える。

今、銃に刺さっているAKのマガジンには8発と予備が2つか。

やっぱり……少々厳しいな……。

 

「それは、知っています……何故、これを私に……?」

 

そう言いながらも、M4A1は拳銃のスライドを軽く引き初弾が装填されているのを確認している。

意図自体はなんとなく、理解しているんだろう。

 

「予備だよ。本来なら予備マガジンを渡したいけと、悲しいことにこれは拾い物で……買ってなかったんだ」

「指揮官は?予備を持っているんですか?」

「ああ。私にはこいつがある」

 

そう言って私はMP443”グラッジ”を見せた。

個人的には、45口径は人間じゃない敵を相手にするためにつかおうと思っていたけど、今日の今日まで忘れていたし、譲渡するにはいい機会だろうと思うことにしよう。

 

「分かりました。大切に使います」

 

そう言いながらM4A1はFNXの安全装置を入れて腰に巻いているジャケットのポケットに突っ込んだ……。

表現は悪いが、まるで金をケチった不良みたいな仕舞い方だ、暴発しないか、怖いな……。

そう言う私は、ガンポーチに入れていたんだから、似たようなものでもあるか。

 

15分後

ヘリが目的地に到着した。

しかし、良くないことに着陸地点は邪魔な障害物だらけで、ヘリを降ろそうものならプロペラが激突し地上で墜落なんてことになってしまう。

なので、上空でヘリを待機させ、ファストロープでM4、私の順で降下を開始した。

 

もう、すっかり夜になってしまっている、奇襲や夜間パトロール用の装甲兵に注意しなければ……。

 

「壁際に……」

「了解」

 

旧市街の路地を通らなければ、集合地点には辿りつけない。

……仕方ないとは言えど、厄介だこの上ないというのも市街戦というのは倒壊した窓や入り組んだ、角道など土地柄を知らないと幾らでも、奇襲されどうしようもない程の不利を強いられる……

 

だからこそ、相手のスナイパーや待ち伏せに見つからないようになってする為に少人数の場合は建物の壁際に沿うように移動して、屋根や看板を隠れ蓑にしながら移動する必要があるのだ。

 

「行くぞ……準備は?」

「行けます」

 

合流地点である、建物に突入の準備をする。

……ここまで敵と会わなかったとはいえど、この建物の中で待ち伏せが有るとは限らない。

 

「敵もいないし、音を立てても問題なさそうだな。爆弾設置」

「後ろに回ります」

 

プラスチック製の爆弾をドアの錠前に貼り付けて、爆弾の爆発に巻き込まれない位置に移動したのを確認して、起爆装置を作動させる。

 

バギン!!と金属と爆弾が弾けた音がして、扉のロックが壊れるのを確認した。

そのまま鍵が破壊されたドアを蹴破り建物内に突入した。

 

「……これは、酷いやつだ……鉄血の仕業か?」

「……そ、そうですね。酷い鉄血もいたものですね。本当に」

 

建物内はそこら中が血だらけだった。

まるでホラーのスプラッター映画に出てくる、ホラーハウスの様な有様だ。

 

「指揮官。油断ならない状況ですが、手分けしましょう。私たちには弾薬がありません、早めに見つけて早めに帰還することを提案します……」

 

M4A1が初めて、自分から意見を出してくれた。

彼女はそのことに気が付いていないかもしれないが、ちょっとは自分を信頼してくれたのかな?

と、ユーリは実感を覚えた。

 

「一応電気が暗い部屋に行くときは報告しよう。待ち伏せされてるかもしれない」

「はい、わかりました。でしたら、無線は常につないで起きますか?」

「いい考えだ。そうしようか」

 

たしかに、無線は繋ぎっぱなしにしていた方が安心できる。

いい判断をしている。

 

「私は1階を探す、M4は2階を探してほしい」

「了解です」

 

そう言ってM4階段を慎重にクリアリングしながら登っていく、さて私も探し始めよう。

ピチャ……ピチャ……と歩くたびに心臓に悪い水音が走る。

 

「ああもう……あちこちに撒き散らされている人口血液のせいで踵から歩を進めても足音が立ってしまう……迂闊に歩いたりするのは厳しいな」

 

だが、それは相手も同じ、音を立てないとなると、何処かに隠れている可能性が高い。

ライトのスイッチをカチカチと素早く押して、最小限のフラッシュで建物内を探索する。

ライトの光というのは案外目立つもので、つけっぱなしだと敵に探知される可能性があるからだ。

 

「それにしても、この出血量……普通の人形なら中身に入る量も考えて致命的な量だ。もしもだが……もし、コレがAR小隊の人口血液だとしたら。いや、最悪のことを考えるのはだめだ……M4A1に失礼だ」

 

血がAR小隊、いやグリフィンのものでない事を祈りつつ、探索を進める

1階をある程度調べたころ……。

 

「……?なんだ?」

 

床にへばりついた血液の形が気になったユーリは思わずしゃがみ人口血液の跡を確認する。

どうやら血だまりではなく引きずられている跡だ。

そこから部屋に繋がっている……まだ、湿っている。

血が固まりきっていない。

 

「M4……血の引きずられた跡を見つけた、まだ、新しい……これから調べる」

<了解、こちらはもう少しでこの階が調べ終わります……お気をつけて。>

「分かった、よし……行くか」

 

しゃがみながらドアノブを音を出さないようにゆっくりと捻る。

鍵は……かかってない。

AK-102を抱えたまま腰だめの姿勢でドアを開く。

キィイ……と小さな音されど響きそうな音を立ててドアは開いた。

サッライトのスイッチを強く握り、部屋を照らした、その部屋の中は……

 

「……汚ないな。いや……おぞましいっていえばいいのか?」

 

そこにはバラバラに解体された鉄血の人形があちこちに転がっていた。

首がもげていたり、腕と足が無くなりダルマのような者もいた。

一番恐ろしかったのは目や口がくり抜かれて、ホラー映画の被害者の様な斬殺体がそこら中に転がってそれはもう、普通の人間が見たらショックで即座に吐いたり、叫び上がるんじゃないかな、と思う。

 

「だが……鉄血しかいないな。グリフィンの人形すらいない」

 

幸いにもグリフィンの人形はこの中に混じっていなかった。

それにしても、ほかに引きずった跡が見当たらない……。

まさか、"これ"をした奴はまだこの部屋にいるのか……?

 

「だが、どこに?」

 

ベッドの下やクローゼットの中を開いても見当たらない。

……死体以外にしか隠れる場所は無い筈だ。

そしてこの死体群は粗方どけて生きている奴はいない……どこに?

 

ポタ、ピチャ……ポタ、ピチャ……

 

ふと水滴が落ちる音がするのに気がついた。化粧台?遠すぎる、死体の山?崩している……じゃあ何処に?

ふと、何かが肩についた感じがする……サッと拭ってみるこれは……

 

「血……?」

 

肩についたのならそれは……

 

ふと、上を、天井を見上げてみる……そこには……

 

 

 

 

 

 

 

「ばあ」

 

 

 

 

 

 

 

 

「!?」

 

全身、血だらけの少女がニヤァと笑いながら天井に張り付いていた、まさかこいつがこの死体の……いやそんな事はどうでもいい、彼女はこっちに銃口を向けていて……!!

 

渇いた銃声が部屋に響き渡った。

 

「大丈夫?」

 

どうやら撃った相手は私ではなく窓の外にいた鉄血兵だったらしい……

 

「ああ。き、君のお陰で助かったよ、君は?」

 

「うーん……SOPⅡって呼んでくれる?」

 

SOPⅡ……!

彼女がM4A1と合流していたAR小隊のメンバーか!

 

「M4!アタリだ!君の探しているSOPⅡという人形を見つけた!」

<SOPⅡ!?指揮官!!その申し訳ありませんがその子と変わって頂けませんか!?>

「あぁ」

 

まるで、前にデータ見つけた時の様な声色だ……。

416がこれを見たらなんていうんだろうか。

取りあえず、SOPⅡに無線を渡した。

 

「ん?どしたの?もしもーし」

<SOPⅡ!!私よ!M4よ!>

 

ちょっと間抜けな声でSOPⅡが無線を変わるとM4が勢いよく話しかけたが、SOPⅡは驚いた様子で無線を聞いていた。

 

「あ、お姉ちゃん!?」

 

無線を耳元まで寄せて、今……お姉ちゃんと……そうか……彼女はAR小隊の家族。

その時、草木が揺れる激しいさざめき、騒がしい足音が聞こえた気がした。

建物内が騒がしくなる。

それもそうか……何も聞こえていなかった建物で銃声、加えて仲間が倒された。

そんなのを見逃す奴は無能だ。

 

「すまない2人とも鉄血に気づかれたかもしれない。急いで出よう!正面玄関で合流だ!!」

<了解!!SOPⅡ!!隣にいる人は私の指揮官!!同じ味方よ、安心して!!>

「ええ!?指揮官!?ああ……うん、分かった……お姉ちゃんも気をつけてね!」

 

無線を終えるタイミングで外から、ガラスが割れ外から銃撃を受ける。

急いでSOPⅡと私は部屋から廊下に飛び出した。

 

「クソ!!」

 

SOPⅡが唸った。

飛び出した先でも、しつこく銃撃を受けらからだ。

銃弾が危うくヘッドセットがなければSOPⅡの耳が鉄血のレーザーで引きちぎられるところだった。

とにかく脱出のためには動き続けるしかない。

2人は身をかがめて、玄関を目指す。

 

入り組んだ廊下を抜けようとしたタイミングで窓から鉄血兵が侵入しようとしたので、

ユーリがSOPⅡだけでも先に行かせるべくAK-102を発砲した。

弾丸は鉄血の胴体に1発当て銃弾の威力で仰向け倒れ込んだところ、もう3発の追撃を食らわせて、トドメを与える。

 

「……ッチ!」

 

また侵入された。

今度は後ろから2人。

ユーリは素早く後ろを向き、2発づつ弾薬を食らわせる……倒れたのは確認したがマガジンの弾がなくなった。

 

新しいマガジンをプレートキャリアから抜く。

マガジンリリースレバーを押し、新しいマガジン入れるために空のマガジンを指ではじく。

そして、マガジンが外れた後にあたらしいマガジンを差し込み、銃のコッキングレバーを引きやすいように右に傾け、銃を握ったまま左手でコッキングレバーを引いて弾丸を装填する。

 

一旦敵の追撃が落ち着いたのでそのまま、2人が玄関に奪取し先に待っていたM4A1と合流した。

 

「指揮官!!……SOPⅡ!!」

「お姉ちゃん!!よかった!ずっと心配でたまらなかったよ!」

「ふぅ……あなたも元気そうでよかったわ。」

 

玄関を確保していたM4がSOPⅡと対面した。

何処か沈んでいたM4がまるで幻を見ているような目をしていた……SOPⅡとM4A1に抱き着こうとした瞬間……

鉄血の光弾が穴が開き壁を貫通して、いるのが分かる……あれは装甲をもったタイプか!

 

「脱出しないと!!」

 

感動の再会をしたのは良かったがまずは帰ることに専念しなければならない。

と言っても装甲を持った鉄血は相当な火力を持っている。アレを突破しないと脱出は厳しいな……

 

「みんな、アレを倒すために状況を確認証。私は今入ってる30発と予備のマガジン1つ持っている」

 

とりあえず弾薬を数えてから抜け出す方法を考えよう。

 

「残り23発、最後のマガジンです……」

「私は16発、あまりは無いよ」

 

予備も無くなっているか……3人そろって状況は芳しくない。

 

「あと、これ!!もしかしての時の為にとっておいたんだ!!」

 

SOPⅡはそう言って40ミリのグレネード弾を見せた。

そういえばSOPⅡが持っている銃の下部にM203グレネードランチャーが……

 

「よし……そのグレネードがあればこれならなんとかなるかもな」

「どうするんですか?」

「そのグレネードを使う。距離もそこまで悪くなさそうだ。当たり所さえよければ、倒せない相手じゃない。私で注意を惹く、その隙にその榴弾を当ててくれ」

「任せて!!」

 

陽気に笑ったSOPⅡは挿入口に差し込んだ。

こんな状況で陽気なれる……大したメンタルじゃないか……。

助かる。

 

「よし、行くぞ!!」

 

フルオートで恐らく装甲兵にAK-102を撃ちまくる、

攻撃を喰らって、相手が撃ち返してきた!!

銃弾で地面が跳ね、こちらに襲いかかる……そのタイミングで

 

「今!」

 

SOPⅡが上向きにグレネードランチャーを向けて引き金を引くポンッ!とまるでペットボトルの容器が蹴飛ばされた様な音がして、その後……

ボンッ!!と音を立てその地点に白い煙が見える……そして、銃弾は来ない……

 

「よおし……今の内だ!逃げよう」

 

後ろから銃撃音が聞こえる、倒したのは制圧射撃をした連中だけだからな……回り込もうとした奴は倒せてない……

 

「走れ!!」

 

今度は着陸できそうな場所にヘリを誘導した。

しかし、ヘリが降りられるのは周りがまっさらな場所……ということは、鉄血から身を隠せる場所がない、という意味でもある。

一目散に3人はヘリに向けて、弾かれた様に走り出した、時々聞こえる銃声を聞いた瞬間に一番弾薬が余ってる私が殿で追ってくる連中に制圧射撃をして足止めする。

 

ヘリに乗り込めた頃には、ほとんどの弾薬が切れていた。

「よし!脱出するぞ!」

「はい!それでSOPⅡ?"AR-15"は?」

 

ヘリのドアを開けながらもう一人の家族の事についてSOPⅡに説明を求めた。

 

「あ、うん……それはね……」

 

バシュン!!と突然、静けさを切り裂く様な音が聞こえる。

 

「敵だ!!」

 

隠れていたとは言えど、大きい音が鳴るので気づかれない筈がない、物陰から鉄血兵が現れる、

 

「……コイツ!!」

 

指揮官が残りの弾薬を使い、襲いかかる鉄血を始末した。

私達にはもう、弾がない。

サイドアームのMP443を持っている指揮官だけが頼りだ。

 

ヘリは上昇し始めた。

これで……脱出が

 

「……アグッ!」

 

指揮官の脇腹にほんの少しレーザーの光弾が命中し、MP443を落としてしまった。

幸い、軽症のようだが……弾がない私はどうする事も……。

ふと、自分のポケットに違和感を感じる……ポケットから取り出してみる。

 

「あ、そうだった……」

 

指揮官に念のため予備で渡された物……そうだ、私は……

 

「私の指揮官に近寄るな!このクズが!!」

 

初めて使う武器だし、ハンドガンなんて訓練でも触った事がない、それでも必死に銃口を向けて鉄血の兵に撃った……何発、当たったか分からない……。

 

たが、私は、私は……ぶっ殺してやる!そう思いながら、その思いだけで無我夢中で引き金を引いた。

どうやら何発か当たったらしく、追撃の兵隊を倒す事が出来た。

 

しかし、我ながらこんな言葉出るなんて、驚きだ……

 

「あの、さ……」

「……あ?何?」

「そ、その、AR-15の事なんだけど……」

 

ヘリの高度が安定して、少し怯えた顔で鉄血の追撃が無くなったタイミングで苛立っているM4A1にSOPⅡが申し訳なさそうにSTAR-15のことについて話し始めた。

 

「……は?AR-15が?」

「う、うん。」

 

「実は、わたしたちの通信が鉄血ボスに盗聴されていたの。どうやったのかは知らないけど……それで相手の追跡を食い止めるため、AR-15は時間稼ぎにいってしまったの」

 

SOPⅡが申し訳なさそうに答えたのをM4が冷たく、そしてその視線は何処か遠くを見ていた様だった。

 

「時間稼ぎって……どういうこと?」

「奴らは……もう出発したんだよ。司令部に向かって……」

「え?奴らって……鉄血が?」

 

冷たい顔に似合わず動揺し、震えた声でM4は問う。

 

「そう、鉄血の部隊が駐屯しているどこかの基地を襲おうとしている、早くしないと……」

 

そのSOPⅡの言葉は必要な話ではあったが、私達の精神にプレッシャーを与えてしまった……

 

「じゃあ、叩きのめしたらAR-15が離れる理由はなくなるの?」

「そうだけど、M4とわたし2人だけじゃあんな大勢を相手にできないよ!」

 

M4A1とM4SOPMODⅡが口論する中、ユーリはヘリが基地に着くまでの間考えていた。

どうする?ヘリアンさんに応援を頼んだし、カリーナには不味くなったら逃げる様に言った。

しかし、これからくる鉄血の兵を倒すための武器はあっても人員が足りない……

 

クソ、人形をそろえることがいれば……他のやりようもあるのだが。

グリフィンは協定をややこしいと非難しているが、俺に対する行為はそのややこしい協定とどこに差があるのだろうか?

そうして、具体的な打開策を考えられないまま、ヘリが基地のヘリポートに降り立ってしまった。

 

「これは……」

「え?何々?」

「……どういう事だ?」

 

どうも基地が騒がしいと思ったら、見慣れない人員や人形達がこの基地にたむろしていた……前の時といいアポイントメントも無しに一体どういう事だ?

 

「貴様が新人か?」

「え?あ、はい。最近、配属されたユーリ・フレーヴェンと申します。」

「ヘリアン代行官からの増援だ、奴らを迎撃するぞ」

 

グリフィンの制服をしているから敵では無いと思っていたが……まさか、増援とは……

気を利かせてくれた……?

 

「指揮官、今の人たちは?」

「M4、彼らは増援らしい。急いで弾薬を補充して防衛展開だ!!私達のねぐらを守るぞ!!」

「了解です!SOPⅡ、行きましょう!」

「見れば分かるよ!」

 

一人じゃない状況が喜べるのか否か……

どちらにせよ、迫り来る敵が来ても彼女達の戦意はまだ潰えていなかった。

 

……予想外の鉄血の攻勢を退けて、任務を完了した。

 

「鉄血が撤退していったよ、やったー!」

「一人で喜ばないの、SOPⅡ。みんなで力を合わせた結果よ。そもそも、指揮官がいなかったらここに戻る前にやられていたのよ?」

 

喜び、舞い上がるSOPⅡをM4が諌めた。

 

「えー!わたしだってちゃんと貢献したもん。ねぇ、どう?私の実力は?指揮官、ほめてくれるよね!」

 

こちらにトテトテと走りはしゃぐSOPⅡがぴょんぴょん跳ねながら、ご褒美を待つ犬のようにはしゃいだ。

 

「前に出すぎな所もあったがそれを差し引いても……いやこういう時は、素直に褒めるべきか。SOPⅡ……上々だね。頼りになるよ」

 

トン、頭に手を乗せて褒めると、SOPⅡは更に私に近づいてきた。

 

「あら?もう指揮官に懐くなんて、やっぱり私の指揮に不満でもあったのかしら……?」

「あっれー?M4でも妬くんだ?少なくとも、一番、ここでの戦いで頼りがいがあるのは指揮官だとは思うよ。」

 

不満を並べるM4……か確かに人形同士とは言えど距離の近い姉妹だ、頬ましいと皮肉抜きにそう思えてしまう。

 

「そんなのは私が一番知ってる。気に入らないのは、そこに貴女がいるからで……ンン!!……そうね。じゃあ、指揮官の命令に従って、頑張るのよ」

「気にする所はそこなんだ!!あはは!!M4も少し変わったね!!うん!お利口さんにしているから!」

 

M4と私の方に向かってSOPⅡが敬礼のポーズを取ってくる。

……なんだか、M4SOPMODⅡは……子供みたいな奴だな。

 

「あの”ハンター”さえぶっ壊せるのなら、指揮官の言うことを聞くよ!」

 

何でもはやめてくれと思うがな

 

「ハンター?誰それ?」

「ハンターって、鉄血の高機動型の射撃ハイエンドモデルの事か?」

「そうだよ、指揮官。SP721"Hunter"。AR-15の調査によると、この区域の鉄血ボスなんだって。 」

 

確かある程度の実験や相互作用でエクスキューショナーとの相性が良いらしいが……。

ということは、エクスキューショナーと同レベルの人形か。

 

「……AR-15はハンターの元に行ったの?確かにAR-15は手柄や結果を欲しがる人形だったけど、そこまで見境なしじゃなかったはずでしょ?」

 

 

肩を掴みSOPⅡを揺らしながらM4が聞くと、SOPⅡは目を伏せた。

 

「AR-15はわたしを逃がすために、囮になってハンターを引きつけにいったの……指揮官。ハンターはずる賢いんだ。きっと、AR-15が囮ってことも分かってる。早く行かないとAR-15が危ないよ!」

 

ハンター……奴のやり方が変わってないなら一箇所に集めて包囲殲滅がセオリーのはずだからな……

 

……同時刻、鉄血の司令室にて。

「来たのはお前だけとはな、少しは勝算があるのかと思っていたのか?」

 

夜によって真っ暗になった鉄血の施設で、青いメッシュをしたピンク髪の戦術人形が拘束されていた。

 

「……私の不注意で、みんなを苦境に追い込んでしまった。これがせめてもの罪滅ぼしになるのなら……ッ!」

 

白髪の鉄血人形……ハンターと呼ばれている人形がAR-15にできた傷口に爪を立てた。

 

「AR小隊は、人間の指揮がなくとも単独行動が可能なグリフィンの人形小隊……そして、その理由は本来I.O.P側で持っていなかった指揮機能を部隊長のM4A1が持っているからだ」

 

「……ッ……アッ……イッ、ギッ……!」

 

爪立てた所から、更にほじくり回す様ハンターが指を捻る、傷口が開き、肉がはみ出た。

 

「お前はAR小隊の一員だし、資料でも非情なまでに理知的な評価が記載されていたが、これは間違いだな。失望したぞ……」

 

指を勢いよく離す。

そこから肉と人工血液が飛び散る。

 

「ならそのデータベースを更新した方がいいんじゃない。それと、そんな資料を作った奴の始末もね」

 

抉られてもなお嘲笑う表情を見せ、ハンターを挑発した。

 

「フッ、いずれするさ。獲物さえ手に入れば、全ての問題は解決する」

「M4A1を……そんなに欲しがるのは、一体何のため……」

「さぁな。我らがリーダーのエルダーブレインの考えることなんて、どうでもいいんだ、AR-15。重要なのは、お前をエサにすればM4が自らやって来てくれることだ。……分かるか?私は狩りを楽しみたいんだろよ」

 

パイプ椅子を置き足を組んでハンターは座る。

 

「……」

「仮を楽しむ私が気に入らないようだな?だが、今のお前の状況は下らん感情に流されたツケだ。感情を持って得があるのはヴェルークトと呼ばれた半ば伝説ような兵士たちくらいだよ。AR-15。」

「ヴェルークト?」

「情報がほとんど無いおとぎ話のような特殊部隊だ。だが、どのおとぎ話でも亡き、強力で勇敢な戦士達といわれている」

 

ハンターは椅子から立ち上がり、光を差す月を見つめていた。

 

2時間後

 

食堂にて

 

「ここもか?」

「……えぇ、ちょっと前までスカスカでしたのに不思議です」

「え?そうなの?」

 

基地に戻り、私は報告書の作成と戦闘結果の報告、M4とSOPⅡは銃器のメンテナンスと訓練をそれぞれが溜まっている事を片付ける事にして、それぞれ2時間後に合流することにした。

 

「昨日までは私と指揮官、そしてカリーナさんしかいなかったからね……」

「えー?少なくない?」

 

指揮官に失礼よ。

とM4が言いながら食堂で空いてる席を見つけて、合流したカリーナと一緒に座る。

 

「あ!この子が行方不明のAR小隊のお人形さんですか?流石指揮官様!」

「SOPⅡだよ!よろしくねー!」

 

軽い挨拶の場になった、食堂だけではなく。

基地内は見慣れないグリフィンの人や人形で溢れ、ごった返していた。

まぁ、どうしてなのかは後から聞けば良いだろう、単に寝泊まりだけなのかもしれないし……

そう言っていつもの食事を注文するパネルをタッチした。

 

「どれでも食いな?食事は栄養とかあるけど、疲れているときはおいしいものが物が一番だ」

「え?本当に?なんでも食べていいの?」

 

SOPⅡが目を輝かせて聞いきた。

「もちろんよ」と隣にいたM4が言うと、SOPⅡは喜び、肉盛りのセットを選んだ……

 

前の時の肉盛りのトラウマが蘇り、私は比較的軽めな、アヒージョとマルゲリータのピザを選んだ。

M4はハンバーガーとポテトのセットをカリーナはグリルと塩漬けの魚料理になった。

 

 

……

「先輩?で、よろしいでしょうか?……え?駄目?それじゃあ……はい、上級指揮官ですね。それで、この状況について確認したいのですが……」

 

「お疲れ様です。はるばるありがとうございます。いきなりで恐縮なのですが、物資の確認をお願いを……」

 

「……成る程、あなたの戦術人形はエリートの……はい……指揮の系統は」

 

この桁外れ肉盛りセットを案の定残した、SOPⅡの残りをやっぱりなと思いながら、私達で完食した後、ここにいる見慣れないグリフィンの人達に探りを入れてみた。

 

人形の方は最低限の事しか答えなかったので、最低限のセキュリティ意識はあるようだが、管理が甘いと言うか、自慢しやすいというか……

 

聞いてもいないのに、いろいろペラペラと自慢しだしたので、今の状況が面倒になってきたことが分かってきた。

 

ごった返している食堂で食事をとった後、

ヘリアンさんから、呼び出されたのでブリーフィングルームで通信を繋げる。

 

<さて、着任早々AR小隊の人形を2人確保したのは素晴らしいことだが……君も状況が上手く飲み込み切れていないだろうそこで……>

「指揮官。どうも……僭越ながら、AR小隊の一員として、今回までの経緯を説明いたします。」

 

そう言って、M4A1がプロジェクターのスイッチを入れた。

 

「AR小隊がとある作戦中に部隊が散り散りになっていることは記憶に新しいと思います。そして、70日たって、私をあなたに救助されて……あなたの一時的な部下になりました」

 

頭を下げてM4が頼み込んだ、今頼れるのは自分と言う"指揮官"としての存在……か、

 

「その後、M4ASOPMODⅡとの合流にも成功しました。このタイミングで、グリフィンの上層部は私をあなたの正式な部下として配属されることが決定されました」

 

人形が来ないのはこのあたりのゴタゴタが原因か。

 

「そして、ここからが今の状況についてのお話なのですが……AR小隊の人形には、私のほかに、あと2名の人形がいます。そのうち1名が今回の救助対象です」

 

スクリーンの映像が切り替わる。

ピンク色髪に青いメッシュ……それにサイドテール、ヘリで聞いたAR-15か……

 

「そして、今後の目標は、1人が合流地点に合流できなかったAR-15の回収とそれと並行して、現地にやってきた鉄血の遠征部隊を撃退することです……」

 

今後の鉄血が展開するであろう範囲が表示された。

 

「まだ、あなたの元に就いたばかりではありますが、これまでの作戦や戦闘を隣で見た限り、貴方はとても優秀な指揮官だと確信しております」

 

果たしてそれが実力かそれともただの名目か……どちらにせよ、私がやる事は決まっている。

 

「この度のご協力には感謝いたします。傷は大丈夫ですか?」

「傷も君の事情に巻き込んだことも気にしなくていいよ」

 

AK-102のチャージングハンドルを引いて初段を装填、そしてマガジンにもう1発と行きたいが満タンでマガジンをギチギチにしてしまうとジャムの原因になるのであえて、29+1で数を合わせる。

 

「相手を褒めて地獄に行かせるやり方なんて数えきれないほど味わっている」

「いえ……私はあなたに嘘なんて……そもそも、私は今日のことを後悔して……すみません、何でもないです」

 

それにしても今回の"参加条件"というのにはとても困らされた……まさか、戦闘員が"3人"以上でないとAR-15の救出作戦の参加に認められない、というものだった……

 

「ひどいルールだ。作為的とすら感じるね。君はどうだい?」

「わ、私は……」

 

SOPⅡがホロサイトに電池を差し込み、明るさを調節している。

 

「明らかに私達に対する妨害だよ。君への嫌がらせをまだ続けようとしているんだ」

 

マガジンに5.56ミリ弾を詰め込みながら、答えた。

 

「昨日の食堂で話してたよ。先輩方は私に君を切り捨てさせらしい。そのことに腹を立てているんだ。君のせいじゃない」

弾を込め終わり、プレートキャリアに差し込む、焦げ目が見えた……あの時の光弾を防いでくれた証拠だ。

 

「その後、SOPⅡも部下に加えた……彼らの予想は外れる、この作戦に参加する権利を私たちは自分の手で手に入れたんだから」

「まさか……」

「3人いるだろう?君と、SOPⅡと……私」

 

数日が経過した。

作戦を行うための人員がそろったので、今日か明日には作戦が始まるだろう。

新しく購入したヒップホルスターにFNXを差し込み、ロックを掛ける。

 

あの時、また戦場に出撃するといった指揮官の発言はM4A1を十分動揺させた。

ヘリに乗るときに撃たれたことを思い出す。

AR小隊の人形にしか、感じることがなかった身内が死ぬかもしれない恐怖。

M4A1はそれを味わい、今も後悔しているのだ。

 

自分で解決する……そう言って姿を消したSTAR-15に人生で初めて、腹が立った。

いままで、腹が立ったことはいじめられていたこともあって少なからずあったが、ぶん殴ってやりたいと思ったのは”仲間の中では”STAR-15が初めてといえなくもなかった。

彼女が独断で動かなかったら、指揮官は後方に居てまた死ぬかもしれないという恐怖を覚えなくて済むはずだった。

でも、それを数日前の件で1回、そして今回の作戦で2回も覚える羽目になった。

 

M4A1はユーリから譲渡されたFNXを見つめる。

本当なら、9ミリの拳銃の方が小さくて、撃ちやすくて多く弾丸をもてるのだろうが……新しいものに買い替える気にはどうしてもなれなかった。

 

「そろそろですね」

 

ゲートの前で、M4A1はユーリとM4SOPMODⅡに合流する。

やっぱり、指揮官が前線に出るなんて言うのはこの部隊だけだ。

 

しかも、ツェーナプロトコルという無線通信なんて、回りくどい無線通信で、ユーリにだけ聞こえないように陰口を叩いてくる始末だ。

だけど、目線だけでもこっちを悪く言っているのは、ユーリでも嫌というほど理解できた。

 

「作戦開始時間を回った。もう、行こう。ここで嫌な雰囲気に充てられるよりも君達の家族を助けにいくことに集中したほうが絶対に良い」

 

「はい。私も同意見です。出発しましょう。」

 

M4A1がユーリを見て少し微笑んだような表情になったのを見て、ユーリはM4A1を見返してみたが。

普段の自然体な表情に戻っていた。

……気のせいか?

 

4時間が立った。

S-09地区まで遠征したハンターの拠点は民間の衛星画像によると山岳地帯らしい。

それに間違いはないらしく、目的地に進めば進むほど鉄血の人形から迎撃という歓迎を受ける。

 

「M4!この調子だと敵は左翼から展開してると思う。奇襲に気をつけろ。」

「はい。でも、それなら先に進んでいる第6部隊が遭遇しているはず。一体何を……」

 

作戦は思うように進まず作戦が何度も変わり、情報の整理が上手く行かず戦場は非常に混乱している。

どうも指揮官同士の誰が仕切るかで揉めていると見た……。

 

本来ならこの基地を任されている自分が指揮を委任されるはずだったが、上層部が指揮権を乗っ取り勝手に作戦を変えてしまった。

 

「来ました!鉄血の増援です!目視で確認、攻撃しますか?」

「あぁ、撃っていい!撃たなくてもどうせ、鉢合わせだ!」

 

M4A1に交戦の許可を与えた瞬間に勢いよく銃を構えてやって来た部隊に先制で攻撃を与えた。

やってきた鉄血の部隊の1人にセミオートでヘッドショット打ち倒された1人がすっ転んだ。

動揺して、周りが足を止めた瞬間にセレクターをフルオートに親指で弾く様にチェンジし、勢いよく放たれた弾丸が残りの兵士を薙ぎ払う。

 

「右で戦闘があって……そして、こっちに来たのですから、追撃を抜けた部隊とみてよいのでしょうか?」

「目ざといねM4。君の予想通りだろう。様子見ですこし前進して、戦況次第で防衛線を押し上げられることを報告しよう」

「了解」

「防衛線を押し上げて……その後は、どうするの?」

「夜をしのげそうなテントで集まったキャンプでも作って、仮設の拠点を立ち上げる。司令室で指揮権の奪い合いが落ち着くまで待つしかない」

 

どの部隊も蛇行運転気味だった。

もともと指揮系統を分かりやすく纏めて居ればこんな面倒な事にはならないはずなんだがな……

 

「私たちの分のテント、やっと設置できましたね」

「しかも、こんなあからさま端っこ!」

「そして、一番敵に近い位置と来た」

 

「「「はあ……」」」

 

日が落ちて、チェックポイントでグリフィンの人形たちと遅れてやってきた他の指揮官たちが自分たちが先に立てたテントを強引にどかして、自分たちのテント作らせ始めた。

 

宣教師が憎けりゃあキリストまで憎いと言わんばかりに、AR小隊の人形を嫌がらせしたけりゃ、指揮官まで嫌がらせしたいらしい。

極まっているだろ。

 

「そう言えば、買えたのが廃棄寸前……賞味期限切れの戦闘糧食か……」

「指揮官。黙々と食べてるけどこれ、おいしいって思ってる?」

「SOPMODⅡ。申し訳ないけど、そんなことない。アメリカ製の方が絶対上手い」

「「はあ……」」

 

食事にすら、ため息をつかないといけない状況だった。

 

「……うう。お腹がいたい。指揮官も同じだったら、嫌だし。今度は、ちゃんとお弁当作ろう」

 

文句を言いながら、食事を食べ終わり夜間の当番をしていたころ……。

いつもなら、騒がしくてイライラさせそうな野鳥の声が聞こえないことにM4A1は気が付いた。

 

視界を暗視用のナイトビジョンに切り替える。

すると、ゆっくりと陰に隠れて前進している鉄血兵の姿見えた。

 

M4A1は大急ぎで、無線を動かす。

 

「奇襲よ!!」

 

 

鉄血に奇襲されて1時間後……

キャンプは大騒ぎになっていた。

 

銃撃は誰がどこを撃っているかわからないし、指揮は各々がバラバラに出しているせいで余計混乱する羽目になった。

 

土嚢や物資の残骸でそれなりの掩体を作って凌いでいるが、どこまで応急処置になっているかわからない。

積まれた陣地の中は弾薬を運んでいたり、テントの中には負傷している人形達の手当ても行われていた……足や手が千切れていて悲鳴や苦痛の声が蔓延していた、明らかに医療する為の人員も足りない。

 

「状況は?どっちが勝ってるの!?」

「そんなの知るか!私の部隊の人形がほとんどやられたくらいしかわかんないよ!」

 

半端じゃない損害だ。……下手したら負けが確定している。

 

「味方です!」

 

青いジャケットを着たサブマシンガンを持った味方の人形がM4A1の後ろからやってきた。

 

「伝令です!衛星によると、敵の攻撃に限界が来ているらしく次の攻撃で鉄血の攻撃が弱まるらしいです」

「……らしい?」

「わ、私は伝令ですよ!?それに、状況が変わることだって……!」

 

つまり、自分の目で確認したわけじゃない。

とはいえ、この状況で自分の目を信じられるとも思えない。

 

「……指揮権とかはなにか伺ってますか?」

「え?この場合って、上級指揮官様が取るんじゃないんですか?」

「いやそうなんだけど……」

 

こんな混乱している今、よくそんなことが……

いや、今の状況だからこんな混乱が起きたんだろうか?

今更だけど……指揮がない事で能力が十全に発揮できなかった、戦術人形のもろさをM4A1は思い知ることになった。

指揮官は……ここからが大変だ。

 

「とりあえず分かった、ありがとう」

「あ、あの……それとなんですけど、私……今日配属が決まったばかりでして、指揮官を探しているんですけど……はい、すみません。あとでにします」

 

M4A1の無言の圧力をみて、そんな暇はないと。伝令の人形は、うなだれた。

 

「指揮官。伝令が来ました、この攻撃をしのげれば以降の追撃はないようです。他の指揮官にも伝えてあげてください」

 

M4A1は、負傷者の手当てが足りないということで駆り出されたユーリに通信を入れる。

 

<そうなのか?そんな話は……いや、今連絡が来た。M4……すまないが、ある程度の部隊の指揮を頼めるかい?後衛から全体に指揮は私がやるが……指揮官の1人が撃たれて、文字通り手が離せない。だからその……今は、君の能力が頼りだ>

「いけます、でもよろしいのですか?明らかにこの後で責任を問われるかと……」

<こうなったら、賭けだ。だが、元々は君の能力自体がペルシカさんに売りに出されたというのならIOPにとっては良いケースになる、と思ってくれるだろうし、それにここで断っても指揮が取れる人形がその債務を負わなかったと言ってくるのがオチだろう……>

 

ふざけた状況だ、まだ指揮系統の整理が行き届かず人形達が正しく戦えていない。

その後もその行為は適正だ適正で無いと基地に戻った後で言い合いが続くのだろうか……?

 

<右翼が戦力が少ない、だれかバックアップを!!>

<その人形の部隊は違う指揮官の所属です、下手に増員させると命令がさらに複雑になる恐れがあり…>

 

ほかの陣地には4体ほどの人形がいたのに、あちらは2人だそこから突破されて包囲させれるのは避けたかったが、状況の複雑さがそれを許さない。

 

「右が薄い。後方にいるのは人形は何人ですか?」

<さあ、でも……前と配置が変わってないなら4人じゃない?>

「……わかりました。4人ですか。伝令さん、あの右が手薄です。放置したら囲まれて後方の指揮官たちが撃たれて我々は負けます。手伝いに行ってくれますか?」

「私、銃撃戦なんて初めてで……はい。行きます」

 

無言の圧力でまたも、伝令の人形は砦の高台に移動させ右翼の占領を整える。

 

「ご協力感謝します、わたしはストーン隊のアストラと言います!!」

「ストーン隊?あの!A地点の拠点は占拠できていますか?」

「助かりました!わたしはフレンチ隊のMP5といって……」

「あの、今回の状況を分かる範囲で教えて頂ければ……」

 

M4A1が配置を整えている間、私は周りから詳しい今の作戦自体の状況がどの様になっているかを聞いた。もしかしたら情報が有るかも……と

 

しかし……

 

 

「あ、あの……その占拠の作戦は別の指揮官の部隊にに委任させる事になっていまして……」

 

 

「残念ながら……あちこちで損害を負った部隊がここに集結しているということしか……」

 

 

どこもかしこも、情報の統制が取れていないせいで混乱の極みに達していた……

 

<あれが最後の生き残りでしょうか?数は一個中隊程>

「伝令さん。今どこに?」

「位置を変えてませんよ!ていうか動けません!攻撃すればいいんですか?」

 

そうだ。いるは私だけ、さんざん陰口を言ってくれた私だけが頼りなんだ。

 

「終わらせましょう。後、10数秒間でライフル部隊が攻撃を加えます……その時点で味方全員の射程距離になっているから、私が指示した箇所に攻撃を」

<分かりました。こうなったらやってあげますよ!>

「お願いします。やっぱり疲れる……」

「指揮官が板について来たんじゃない?M4お姉ちゃん?」

「やめてよ、お呼びでもない状況で」

 

隣で反動を抑えるために土嚢に銃を乗せているSOPⅡが私の返答を聞くといつでも来い!とばかりに気合を入れていた、私もこれくらいの図太さがあれば……すでに私はホログラフィックサイトの焦点を見ながらフォアグリップを握るグローブの中に溜まっている汗を感じる程緊張していた。

 

後方から大きな狙撃音が聞こえる……攻撃の合図だ。

結局、有力な情報が得られないまま敵を迎撃せざる得ない状況になっていた……

 

「来た!!攻勢が激しい!」

 

「本当に最期の攻撃に見えるわね……全方位に注意して!!でも、難しかったらなるべく自分の持ち場を維持する事に集中する事!!手が空いていない限り抜けるかも知れないと思う穴は無理に埋めなくていいわ!!」

 

援護部隊の銃撃も激しさを増す……どうやら、指揮官もこれが最後かも知れないというのを理解しているのかも知れない

鉄血の数が多い、無理矢理押し通ろうしているのがよくわかった

 

隠密で使うサプレッサーもフルオートで撃って仕舞えば、意味は為さない……もっとも拠点防衛をしている時点で関係ない。

 

「……ッ!!」

 

グレネードランチャーで支援してたSOPⅡの近くで爆発系の投擲物が爆発してSOPⅡを吹き飛んだ。

 

「SOPⅡ!……!?……クソ、こんな時に!!」

 

確認したいが敵の勢いがそんな状況を許さない。

さっきのAK系統サプレッサー音……恐らく指揮官が援護していなかったら、今頃、自分の頭が吹き飛んでいただろう……

 

「この!!このっ!このぉ!!」

 

恐怖に負けたくない……!!

その為にも一刻も早く潰さなければ、そう思いながら一心不乱に引き金を引く、正直こんな見えづらい場所で当たったかのどうかの確信は取れない。

 

「おい、退却していくぞ!!」

「ざまあみろ!!鉄血のクズが!!」

 

どうやら、今回はこちら側が守りきることができた様でもう襲ってこないらしい……しばらくは安全だろう……

 

「SOPⅡ……」

「はあ……た、たすかった。何とか……なったね……」

「初めて、あんなにたくさんのグリフィンの人形と共闘したけど……楽しかった?」

「全然」

 

土を勢いよくかけられたSOPⅡを引っ張り立ち上がる手伝いをする……

今回は何とかなったが、これからどうするべきなのだろうか……

 

この血で染まった赤い森の中で砦から出て佇んでいる指揮官と目が合う、これからの打開策を考えなければならない……そうお互い考えていたようだった。

 

「あのー」

「ああ、伝令さん。あなたの情報のお陰で助かったわ……何かあったの?」

 

申し訳なさそうに、さっきの伝令役の人形がM4A1の顔を覗き込んだ。

 

「あ、いえ……さっきの話の続きなんですけど、ヘリアンさんから新任の指揮官の元で働くように辞令をもらってて……指揮官の名前はユーリっていうかたらしいんですけど……責任者って、分かります?私は、JS9といいます!」

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