たったひとつの願い   作:Jget

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外伝Assalt Raid:10話 決別

<ヴェルグ1、起きているか?>

「はい」

 

ユーリはクトゥルフの呼びかけに即座に反応した。

他の隊員はまだ寝ているとみて、間違いない。これから、大まかな概要を聞かされるのだろう。

そして、それを自分が部下たち…いや、正しくはかつて部下だった兵士らに伝える。

 

<空母アドミラル・クズネツォフが艦載機で届く距離にまで接近した。装甲列車を乗せた船はこちらの行動を感知した様で、既に迎撃の準備を取りつつも前進している。まだ、射程圏外なのかもしれない。オセチアの方面からも同様のミサイルが稼働しているとの報告が襲撃部隊から、連絡が入っている。>

 

<作戦の概要を伝える。対空能力がある装甲列車を載せた船を沈没させる為、Su-33による対艦ミサイルを発艦させるが、対空能力をもつ装甲列車がそれを落とす可能性がある。その為、先んじてヴェルークトのヴェルグ隊が船を襲撃、対空能力を削ぐ。>

 

<だが、余り悠長な時間も取れない為、30%以上の対空能力を削いだ時点で、Su-33を発艦させる。損耗率も高い事が予想される、そのためヴェルグ隊の行動は更に被害観点から見ても重要度が高くなる、留意しなくてもいいが事実として伝えておく。>

 

<最悪、展開したファイヤーホーク隊を始めとする部隊が迎撃に出る予定だ。空母の方はアメリカ空軍のF-15EXが限定的に支援できると言う話も引き出している。だが、これをした場合核による自然汚染による甚大な被害が出る。あくまで最終手段と考えてくれ>

「了解です」

<空母発艦を阻止するために、空母の滑走路を破壊する可能性もあるだろう、その為船上での戦いもあると思われる。この作戦はどの配置にいても、必ず危険な任務だ。だが、やり遂げよう。我々は我々の手で自分の明日を掴まなければならないのだから。各員の奮闘に期待する。以上!>

 

 

────20時13分。

 

<ヴェルグ1、カタパルト接続完了>

<ヴェルグX、カタパルト接続完了>

 

そろそろ、作戦が開始する。

ユーリを含めるヴェルグ隊はカタパルトに艦載発艦用の強化レッグを乗せて出撃の準備をしている。

目覚めたときにかつての体調である自分がいたからか、それはもう驚かれた。

それこそ、「いままで何してた」とか、「ずっと探していたぞ」とかまあ、聞かれて、言われて当然のことを応対しているうちにいつの間にか作戦が始まりそうになっていた。

アドミラル・クズネツォフの船長が作戦に参加する全員に向けて、放送を始めた。

 

<おはよう、諸君。今日、この大事な日に君たちに伝えたい事がある。今から君達は、このソ連海軍が出来てから最も誰にも知られる事なく、そして最も重要な作戦に参加する事となる。第三次世界大戦の怨念、そして我々の大切な仲間達の"ヴェルークト"君達が出来上がった、その所以にケリをつける作戦だ。我々は所属、生きる理由、戦う信念、人種も異なるが、死んだ者も多い。だが、それでも我々は共に戦いそして生き残っていった。そして、それにもうじきそれに決別する時が来る…今日、我々は彼らの生きてきた意味の最後の戦いに集結した。そして、新しい生きる意味を探して、そして見つけるのだろう。我々の罪を解放し、人に友人に大切な家族にまた、明日を与えるために────>

 

<この勝利は原罪と共に過ごしてきた、我々が手に入れるものである!取り戻そう、本当の明日を!!勝ち取ろう!人々の繋がりを!>

 

突き上げる、蒸気が身体を燃やす感覚を覚えさせる。

 

『ヴェルグ1より、オールクルー!行きます!』

<クトゥルフ了解!お前達は最高の兵士だ!お前達ならやれる!>

<頼むぞ!ヴェルークト!絶対に生きて帰れよ!>

 

兵士や管制員そして、艦長に激励する形でヴェルークトは出撃する。

 

『あぁ…任せろ』

<グッドラック!ヴェルグ隊!発艦せよ!>

 

 

ゴオオオオオッ!!と激しい衝撃が足と胸に襲い掛かる、吐いた息がまた、喉に帰ってきてしまいそうな感じがする。そして、我々は船から射出され、青空と大海を目指して飛んでいく。

 

<水面に手が届きそうだ>

<ヴェルグX!高度がまだ高い!レーダーに見つかりたいのか!>

<うっ…はい……>

 

A-545はヴェルグ2にどやされて、恐る恐る高度を下げる。

 

『やるじゃないか』

<上手です>

<前に訓練したところではこんな低空飛んだことないですよ!>

 

それもそのはずレーダーに移らないために、高度2メートル以下で滑空している。ちょっとミスしただけで海面に引っ掛かりドロップアウトだ。

予め跳躍し続ける装置に取り付けた、燃料の増槽の中身は無くなってしまい、取り外してしまっている。無理した立て直しは自殺行為に繋がる。

とはいえ、ちゃんと訓練しただけはある。動きはまだまだ固いがそれでも指示通り高度を下げている。

 

<おいおい、このくらいの低空は前に何度も飛んでるだろう>

<今はやってませんよ!隊長!>

 

ヴェルグ6は相も変わらず減らず口で隊長と呼んでいる。

そして、それを内心ユーリも懐かしく思っていた。

 

<査問会の終わりが待ち遠しいですね>

<ああ>

 

公聴会が大きいプラスと化したのは予想外だったが、保安局に掛けられたヴェル―クトへの嫌疑は査問会のやり直しで次々と晴れて原隊復帰も始まっていた。

残る順番待ちはユーリ一人になっており、彼の名誉回復も時間の問題だった。

 

<ヴェル―クトが復活したら、どこに飛ばされると思いますか?>

『大方、ハンガリーかセルビアだろうな。あそこは今、人手が足りてないって話だし、それにだ────』

 

そこまで言いかけてたところで向こうから、何かが近づいてくる。そして、横切った。

 

<今の見たか?>

<ああ、敵の攻撃ヘリだ>

『クトゥルフ、敵のヘリが空母に向かっている。注意しろ』

<クトゥルフ了解した。お前達でも視認できたと言う事は、ヘリの方もお前達を捉えているだろう。対空攻撃に気を付けろ>

『ヴェルグ隊。速度を上げるぞ、最大速度だ』

 

加速による、ソニックブームが大きくなり、銃の発射音と風船の破裂音が混じった様な音がした。

 

<ヴェルグ隊、そちらから船が見えたか?>

『あぁ…見えてきた。でかいな…電力が稼働している。この稼働はKCCOのアルゴノーツに似ている。発射準備に入ってのかもしれない』

<了解、直ちに対空施設、および武器を破壊せよ!>

 

大きさは、我々の空母より一回り大きい。

しかも、船の上に砲台が付いている列車が置かれている。周りには30は超える対空火器も見える。

 

「対空砲を潰すぞ!空母をやらせるな、いくぞ!作戦開始!!」

 

俺の合図で、超低空を飛行していた部隊は一斉に急上昇して散開、船に甲板に乗り込む。

 

『コンタクト!12時方向!』

 

船の奥の方から、増援が現れる。

案の定、鉄血の人形兵士たちだった。

 

「気を付けろよ、もう跳躍装置の燃料はカラカラなんだ、持って2回くらいしか飛ばないだろう」

<対空砲を見つけた。破壊する!>

 

クトゥグアの発射音が鳴り響く。

 

<よし、一つ壊した。残りもやるぞ>

『負けられないなっ…!』

 

A-545を撃ち、迎撃に来た鉄血兵を射殺し、そのまま前進すると対空施設が見えた。

 

『食らいな!どうだ、ヴェルグ7。纏めて、ふたつ壊してやったぞ』

 

 

俺も右肩にマウントされたクトゥグアを発射して車線に対空装置が重なる様に照準を合わせて、発射した。

 

『さあ来い…!さあ…!』

 

ヴェルグXのTacネームを与えられたA-545が、遮蔽物に身を隠しながら、スキャナーサイトとスコープで透過して敵を確認しつつ、遮蔽物から出てくるまで静かに待つ。

 

『今だ!』

 

移動するために飛び出た兵士に5.45が命中。敵は何が起きたかわからないまま

 

核弾頭を発射する以外のレールガンがヴェルグ6の方に向いて発射された。

 

<ぐああ…っ!!!>

<ヴェルグ6…ノーイがやられた!!>

<ちくしょう!殺しやがってぇ!!>

 

短い断末魔を上げながら、対空施設を破壊しながら鉄血兵と近接戦をヴェルグ6…ノーイはレールガンで狙撃されて文字通り引き裂かれた。

エレメントを組んでいた、ヴェルグ7と8が怒りを露わにする

ちくしょう!損耗率の高さは分かっていたが、どうして守れなかった!そんな思いが駆け巡る。

 

「このっ!!!野郎!!」

 

ノーイの方向に向いたままのレールガンに素早く突貫、そのままスライディングしながら死角に回り込む。

 

「食らえっ!!!!」

 

こちらに向けようとする隙を作って、レールガンから離れてクトゥグアを発射、その衝撃でさらに後ろに吹き飛ばされる。

 

「やれ!!」

 

外殻が大きく破損して、稼働装置が剥き出しになった。

 

<最大速度チャージ…冷却完了!発射!!>

 

A-545のEML弾が稼働装置を砲塔から力づくで引き剥がした。まだ、コードが繋がっている。

 

「────切り裂く。レールガン、破壊」

 

そのコードを手首のガントレットから現れたレーザーのブレードの熱で轢断した。

 

────ヴェルグ1、クトゥグア発射!対空施設を破壊!

────ヴェルグ2、クトゥグア発射!対空施設を破壊!

────ヴェルグ3、クトゥグア発射!対空施設を破壊!

────ヴェルグ4、クトゥグア発射!対空施設を破壊!

────ヴェルグ5、クトゥグア発射!対空施設を破壊!

────ヴェルグ7、クトゥグア発射!対空施設を破壊!

────ヴェルグ8、クトゥグア発射!対空施設を破壊!

 

────ヴェルグX、EML弾発射!対空施設を破壊!

 

レールガンの牙を割り、対空施設は目標の30%を超えて破壊した。

 

「こちら、ヴェルグ1。目標数の対空目標を破壊した」

 

<了解!Su-33を発艦させる…待て、アドミラル・クズネツォフ!!よけろ!!巡航ミサイルが来る!!>

 

 

 

────視点:M4SOPMODⅡ

 

────襲撃部隊はお前たち地上班と海軍の2つだ、二か所はほぼ同時に叩く。地上班の任務は、ミサイルを発射するステーションに侵入して、砲弾を確保する事だ。

SOPⅡ 、お前たちの部隊はセイグリット隊に編入される。セイグリット隊の目的は管制塔を奪って発射できなくする事だ。

管制塔の中に入るまでの移動は投下された戦車で移動する、敵も必死に守るはずだ最も厳しい戦いを覚悟しろ。

 

クメレンタから与えられた指示を確認する、自分が今乗せてもらっている戦車はT-14"アルマータ"無人砲塔を取り付けてある戦車だ。

揺れが大きくなった、降下が始まるらしい。

<攻撃の激しいところに降下する。投下まで、0.5キロ!>

 

「ビビるなよ?馬鹿SOP」

「そっちこそ、ビビってもらさないでよ」

「ACRなら、漏らしそうですね?」

「どうして私が…?」

<こちら、クラメン。そろそろ、始まるぞその騒がしい雑談を止めろ早くしないと、その雑談は地獄でやる事になるぞ>

「おっと…始まりますね。全システム…よし、以上なし」

 

外部カメラを覗く、輸送機の中の様子が見える。

今自分たちの乗っている装甲車に武装は全て積み終わった様だ。

そう自分たちは今、装甲車に乗っている。

 

<ふ、負傷した…!だが、こいつらだけは確実に地上に降ろしてやる。衝撃に備えろ…>

 

後ろ向きに重力を感じる。投下するつもり…いや、された。

1秒ほど浮いた感じをしたまま、ドシンした感覚を覚えて、戦車が空挺投下された、周りには他の戦車、戦闘車両も投下されている。

自分達を投下してくれた、飛行機から黒い煙が吐いているのが見える。

いや…他にも吐いているのはたくさん見えるが、私たちを降ろした輸送機を私はずっと眺めていたのだ。

 

 

「降下成功!指示を待つ!」

<カリンカチームが足止めされている>

<こちらカリンカ!凄まじい数の敵だ!グリフィンのはぐれだけじゃない!他の武装勢力もここに集まっていると見た!!>

<こらえろ!カリンカ。セイグリットチームが向かっている>

 

すぐにクメレンタの指示を聞き、カリンカチームの車両の元にアクセルを走らせた。

 

「カリンカ!近くまで来ました!」

<了解!黄色のスモークを上げる!>

「見えたぞ…なんて数だ」

 

旧式では、あるがそれでも30から40台の戦車、装甲車がカリンカチームの戦車部隊を攻撃していた。

 

<陣形を保ったまま、攻撃開始!!>

「味方との距離感覚に注意。確認しました、カリンカ!」

<コッチも見えたぞ!パーティーにようこそ!>

 

「敵戦車を片付けろ!!」

 

戦車の性能差が出てはいるが、砲弾がスレスレに当たるたびこちらはヒヤッとくる、それでも70キロの猛スピードで移動しながらの砲撃を当てて、戦車隊を倒していく。

 

<P小隊、敵のヘリが向かっている!>

<サーモバリック弾だ!!────…>

<一台やられた!!>

「そんな!」

 

目の前で、自分たちより強力な戦車T-14が呆気なく黒煙を上げて、スクラップになった。

 

「誘導弾に切り替えろ!P22!装填しろ!」

「装填よし!」

「発射!!」

「発射!」

 

戦闘車両の砲身に取り付けられた、カメラで砲弾の起動を修正して、敵のハインドに命中させる。

誘導弾は4発も撃った、誘導弾は3機を撃墜した。

 

<こちら、カリンカ!仲間が随分敵に殺されたが…援護に感謝する…!お前達は予定通り、通信施設を奪え!こちらの仕事はもう、こちらでできる>

 

前進した、カリンカチームを横切り、戦車は検問に体当たりする検問はいとも簡単に戦車に潰されて、後退する敵や装甲車もまとめて押し潰す。

 

「ひゅー!!派手に吹っ飛んだ!!」

「アイツらには散々不満が溜まってたんだ!」

 

R93とMP7が歓喜の声を上げる。不謹慎ではないかと、ACRが言うけど、沈んでもらうよりは全然いいだろう。

しかし、あの基地が旧兵器をレストアしている話は聞いていたけれど、よくもこんな数を用意できたものだ。

 

<止まるな!!>

<フルスロットル!!>

「よし、検問を突破した!司令基地はこの先だ止まるな!!」

 

壁を突き破り、車載砲のKord12.7ミリマシンガンを豪快にぶっ放す。

敵は強力すぎる銃弾に遮蔽物ごと吹っ飛ばされた。

 

「見えたぞ!通信装置だ!主砲発射!!」

 

125ミリ滑空砲が2A82-1Mを発射する。

防御力の無い、4つある内の通信施設は一撃で木っ端微塵になった。

残りの3つは他のチームが壊す事になっている。

すでに1つは壊していると言う報告が入っているので残りは2つだ。

 

「司令室に突入する!スモークを!!」

 

司令室に通じる、塔が見えた。

あれが敵が一番大切にしている施設だ、第三次世界大戦で多くの施設、兵器が放逐されており、ここはその最たる場所だが、よくもまあこんな短時間で整備したものだ。

スモークを展開する、スモークで身を隠しながら前進するが…

 

「RPG!!」

 

激しい爆発が響く。

RPGが側面に直撃した。被害状況を調べると作動液が漏れていた。

 

「作動液が漏れてる!あんまり早い軌道をしないでそれをしたら────」

「また、ミサイルだ!────」

 

また、激しい爆発。車内にいるはずなのに爆撃を直接受けたように感じる。

状況を確認すると今度は、照準装置とサーマルが…!!

 

「クソッタレ!!車載銃を使う。監視をかわれ!!」

 

ACRがカメラに移り、私は上部ハッチを上げて、Kordを撃つ。

 

「この…鬱陶しいんだよ!!」

 

どうやら、適当に相手もRPGを撃っているらしいだが、その数は大量だ。

数撃てば当たると言う理論だろうか…大丈夫だろうなんて、思ってはいけなかった。

 

また、激しい爆音、そして今度は衝撃と炎が襲い掛かった。あまりの、激しさにSOPⅡは意識を失った。

またもやRPGは車両に直撃したのだ。戦車がもう耐えきれず、止まってしまった。

 

<────セイグリット6!応答しろ!>

────あっ……はい

 

────下車しろ!その戦車は危ない!

────ハッチが開かなくて

────待ってろ!!

 

激しい金属音が響き渡り、朦朧とする、意識になりながら意識を取り戻し、誰かに呼びかけられて魔を覚ます。

 

「繰り返す、セイグリット6の戦車も戦闘不能!!」

<下車して!下車!!>

 

誰かが、手招きをする…無理やり意識を立て直して、起き上がる。

 

「クルーが生きているのを確認した!このまま、彼女達も引き連れて通信塔を制圧する!」

 

背中を掴まれながらロケットやグレネード、銃弾が飛び交う道路を走っていく。

 

「スモークを持ってくればよかった!!」

 

まさか、このRPGの雨から走ってきたのか?

あり得ない、仲間も叩き起こして戦車から出ると、ハンターの後に続いて通信塔に侵入する。

 

「……はぁ、はぁ…よし、ここまで来れば……しばらく大丈夫かしらね。随分な目にあったね、SOPⅡ」

 

ようやく意識をはっきりさせて、こっちに喋りかける人形を見てSOPⅡは今助けてくれた人形は誰かがわかった。

 

「AK-12?」

「久しぶりね。なによ、忘れた?」

 

AK-12は親しそうにサッと手を挙げて、SOPⅡに挨拶した。

 

「どうしてここに?あ、いや…AK-12は保安局のアンジェリアの人形だっけ」

「まあ、そういうこと。意外だった?」

「てっきり、あのエラソーな奴が来ると思って」

「エラソーって……絶対、先輩方ね。あいつ等、暴力的なんでしょ?こっちにも同じことしてきてるから迷惑してるわ。ま、彼女らに代わって謝っておくわ」

 

AK-12も「そういえばいたな」と苦々しい表情を浮かべていた。

保安局の人形のガラの悪さはグリフィン相手だけじゃないようだ。

 

「保安局って人形もみんなあんな感じなの?」

 

きっと前の書記長の時代で好き勝手やらせてた奴だろう。

過去の栄光とか好き勝手権力を振り翳せた時の感覚を抜けられないらしい。

いつの時代も権力の甘い汁を吸う奴にロクなやつはいない。

 

「私が特別っていう意味?何されたの?」

「そりゃあ、局長がいきなり指揮官に銃を向けて脅してきたくらいなんだから。前の作戦だって、司令室に来た奴もおんなじことしてたかな」

「……は?」

 

AK-12はSOPⅡに凄むように詰め寄ってきた。

脅すように見えるが、これはAK-12ですら初耳の話題だった。

 

「アンジェがデータを送ったっていう理由でこっちにやってきた挙句、銃を向けたんだよ」

 

確かにデータはユーリたちグリフィンに送信した。

それは間違いない、私がアンジェの命令でデータ送ったから。

そして、それと同時に局長がユーリに反逆罪で殺そうとしてきた、グリフィンたちからの視点で見ればワザとデータを送らせて、その口実に後始末した、と見えるだろう。

 

「つまり、私たちがあんた等を嵌めたって言いたいわけ?……まさか。なんなら、撃てばよかったのに」

「そんな無責任な!」

「冗談よ。本気にしないで」

 

ただ、SOPⅡには撃てばよかったというAK-12の発言はでまかせでもなんでもなく、保安局局長が殺されることをまさに望んでいるように聞こえた。

 

「私の提案が気に食わないであれ、私達はあんた達を手伝うためにきた。それは本当よ、これからどうするの?」

「……そうだね。ちょうどここは鉄血のボスの指揮施設だし、ここを制圧しよう」

「了解。確かに、施設を押さえれば前みたいに逃げられても作戦は止められる」

 

次やることを決めた人形達は施設を制圧することにした。

ブリーフィングだと、この施設は前はグリフィンの指揮施設で改造されてミサイルを撃つための制御基地になってしまった。

 

<今はA4ブロックを制圧中。AK-12、そっちの調子は?>

「C1ブロックで交戦している。このまま、制圧して制御室を目指すわ」

 

こちらの調子を伺う通信がやってきた。

あっちもあっちで無線から銃撃の音が聞こえる。交戦しているんだろう。

 

<了解。こっちは予定通り進行して目標を破壊する。合流は作戦終了後ね>

「了解した。目標は任せた。妹は任せなさいな…あ、それとね」

<なに?>

「いえ、終わったら話すわ。長くなりそうだから」

 

施設内を進み、中でも抵抗を受け苦戦しつつ、弾丸や手榴弾を飛び交わしながら、敵を倒していくと、

鉄血のハンターのチームとも合流した。

 

<AK-12>

「どうした?」

<思っていたよりも、早く目標に会えた。……意外な人よ>

 

意外な人。

M4の使う表現としては珍しいかもしれない。本当に意外なのだろう。

興味はある、ただ今は気にするべきではない。

 

「了解。そっちは任せるわ。後で誰か教えてよ」

<了解。”M4A1”アウト>

 

無線を切る。

そして、いま自分が見つけた女の方にM4A1は向き直った。

M4A1の眼前に居るのは、オセチアでSOPⅡが以前世話になった”フレシア”その人だった。

 

「あなた、フレシア?」

「へぇー、知ってるんですね。私のことを?」

「保安局の警戒リストに入っているテロリスト……有名人でしょ?」

 

フレシアいったら、新ソ連では有名人だ。

もちろん悪い意味で有名だ。

彼女は殺し屋、そしてテロリストだ。

公共の面前で政治家の射殺、大勢の人間の個人情報の流布、高級病院をクラッキングして設備を停止、空港ごと爆破

罪状なんて、有名なものを挙げるだけでキリがない。

 

「ところで、”その靴、どのくらい走れるの?”」

「……”空を飛べるくらいには”」

 

M4A1は拳銃を下に下げた。

今のは合言葉、自分の聞いた言葉に対応する言葉をフレシアは話したからだ。

 

「なるほど、保安局はあなたのようなお人形をよこしたんですね」

「人形嫌いなあなたに寄こされたのが人じゃなくて悪かったわね。でも、他に信頼できる代わりはもういないのよ?”ヘルメス”?」

 

ヘルメス、M4A1は間違いなくこの名前を口にした。

そう、ヘルメス。鉄血に物資を流して今の取返しがつくかどうか瀬戸際の事件を起こす原因の一つになった保安局の運び屋ヘルメス、それは新ソ連でも有名なテロリストでもあったのだ。

 

「まさか、要望通り荷物を運び終わったら雲隠れするつもりだったのに、ここに送り込まれるなんて思ってもみませんでしたよ」

「これだけの事態になっておいて?アンタ、ケツをもちなさいよ」

「知ったこっちゃありません。私はただ、お偉方に命じられるまま今回の騒動が起こせるのと、それをギリギリ止められる量の物資を運んだだけです。ああ、それともあの腐敗したグリフィンに物資を寄越したことをお話されているんですか?そこにお友達もいるとか?だとしたら、ご愁傷様です」

 

M4A1はこのあっけらかんとした態度に怒りを通り越して辟易した。

彼女の挑発はあからさま、こういう人間に期待なんかしてはいけない。

私の目的はヘルメスのサポート……その先にある。

 

「あなたに人間性を期待した私が愚かだった。さあ、仕事を終わらせましょう」

「ええ。期待してますよ、M4さん」

 

M4A1はフレシアについていく形で、基地になった工場を進んでいく。

勿論、敵はこちらを進ませまいと鉄血製のマシンガン、ランチャー、グレネードで激しく粘ってきた。

フレシア1人だったらあっけなく、床のシミになっていただろう。

強化されたM4A1ですら、数と火力暴力に押しつぶされそうになりながら突破したのだ。

 

────いいわ、どんどん目的地に近付いていく。

 

頭の中になぞる様に響く、あの薄気味悪い清らかな声。

 

────あの男のために動くと聞いて困ったけれど、結局あなたは過去と真実を求めている。

 

「(アンタはお呼びじゃないの。いい加減黙って)」

 

勝手に邪推された挙句、自分の運命を決められるなんてたまったものじゃない……そもそも、彼女(?)の頭の中の声をまず信じてない。

 

「クリア」

「ふぅ、ご苦労様です。楽させてもらいましたよ」

 

M4A1は「そうですか」と事務的に返答した。

見ると、フレシア扉を開けるものと思われるキーカードを握っていた。

……どこで手に入れたのやら。いや、初めから持っていたのかもしれない。

 

────その奥よ、私達が必要とするべきものがその奥にある。

 

またか。懲りて欲しい。

絶対、この声が何かを欲しがる時は絶対ロクな事にならない。

 

「入る前に聞きますけど、中に入る際の注意事項は?」

「さぁ、出たとこ勝負じゃないですか?」

 

フレシアはM4A1からの質問を適当に流した。

不安だ……そう思いながら、認証されたキーカードが開く鉄のドアの奥を警戒しながら確認する。

 

「来たな」

 

血の気の引いた青白い肌、そして黒曜石のような真っ黒なロングヘアー。

武器や格好は鉄血の人形であることを確信させたが……この人形、エリートの人形以上に異質な雰囲気を感じさせた。

 

「…来たな」

 

ずいぶん、ぼんやりしているとM4A1はあの鉄血人形を見てそう思う。

軍刀のようなロングソードをM4A1たちに向け、敵はそう言う。

友好的ではなさそうだ。

M4A1もライフルを構える、

 

「私はテラーだ。この作戦の成功をさせるため、ソ連政府の命令で開発された」

「私はM4。M4A1よ、この作戦を止めるためにやってきた」

「止める?」

 

テラーは聞き返してきた。

説得できるのかもしれないのか?

 

「この作戦に意味はないわ。誤報よ、あなた達の命令をするためのタイミングはとっくに過ぎてるのよ」

「誤報か」

 

M4A1はチャンスだと判断して、今の状況を説明した。

 

「そうか」

「わかってくれました?だったら、遅くないのでさっさと中止を」

「だからどうした?」

 

なんですって?

だからどうした?

 

「命令がある以上、実行するだけだ。タイミングが過ぎていようとも与えられた実行する、それが戦術人形だ」

 

……エルダーブレインが解放しない理由が分かった。

この人形はどれだけ理屈を説明しても納得せずただ、与えられた目標のみに向かって仕事する人形なのだろう。

テラーは鉄血の中で最も異質で、最も鉄血らしい人形なのだ。

服装からも、この鉄血人形、第一次世界大戦の高級将校に酷似した軍服を身に着けていて異質さを引き立たせたのを理解した。

 

「もういいですって、殺しちゃいましょうよ。人形に話を期待するのがダメみたいなもんなんですから」

 

フレシアがライフルを向ける。

その時、テラーからフレシアの顔が見えた。そして、なにか心当たりがあるかのように、ゆっくりと口を開いた。

 

「……フレシア・フレーヴェンか」

「フレーヴェン?」

 

M4A1は驚いた。フレーヴェン……この苗字は忘れたくても忘れたくない苗字なのだから。

 

「おや、ご存じだったんですか?」

 

そういいながら手榴弾を投げつける。

ライフルはフラフか、というかこっちに破片が飛ぶ方向に投げてきた。

本当に人形は嫌なのだろう。

 

「…」

「おや、ダメですか」

 

M4A1は直前にケースを盾にしてしのいだ、テラーは爆風をものともせず、堂々と立っていた。

 

「これなら!」

 

M4A1は盾にしたガンケースを振り上げ、肩に担ぐとランチャーに変形させて、テラーに向けた。

 

「行け!!」

 

今度は電力のみを使用した、レーザー砲だ。

最大火力とはいかないが、消費も少ないしそもそも、当たれば黒こげだ。

あと、ファリカに大した爆風にならないようにも位置を調整した。

 

「これでもダメ?」

 

M4A1は自分の見立ての甘さを恥じた。

さっき、レーザーの直撃は直前で振り上げたテラーのソードが受けてめていたのが見えた。

理論上、土嚢の掩体も貫通する威力だが、それを防ぐのはテラーという彼女の力量とあのソード硬度ゆえだろう。

切れ味はあのエクスキューショナーよりも鋭くないが、あのソードの硬度はそれ以上だった。

 

「(まさか、ガンケースの一撃を止められるなんて)」

「…その兵器をどこで手に入れた」

 

爆風が収まったとき、テラーはいきなりそんなことを言い出した。

テラーはこのガンケースに心当たりがあるらしい、あいにく私はテラーに心当たりなんてない。

しいて言えば、もともとの持ち主M16A1がこいつに使ったという説だが…けれどもM16からテラーなんて人形の話、聞いたことない。

私にM16A1がテラーのことを伏せていたのなら話は別だが。

 

「……」

 

テラーはソードを振り上げ、M4A1はライフルを構えた。

2人は激しく交差しあうようにぶつかり合う。

 

その様子をフレシアはじっと見つめていた。

あの2人には現状割って入る余地はなさそうだ、普通の戦術人形同士ならあらかじめ援護する範囲を決めてサポートするがあの2人は”普通”ではなかった。

 

「……」

 

正面から遅いかかるテラー。

あれらの猛攻を受けても毅然とし、襲い掛かる様は相対するものからの視点はさぞ恐怖だろう。

その恐怖の名前を持つ人形の攻撃を正面から受け流すのはAR小隊の元隊長、M4A1。

振り上げるソードをM4A1はライフルを使って斜めに受け流す。

受けながし、背後を奪ったそのすきにM4A1は5.56ミリをフルオートで叩き込む。

 

「……ぬう」

 

テラーが苦しそうにうめき、M4A1を振りむいて睨んだ。

 

「なるほど」

 

M4A1は背中を奪って銃撃したとき、わざと反動を抑えず10数発の射撃をばらまいてあちこちに命中させた。

するとどうだ?背中はまるで効いてないが、手足や肩、腰は人工血液を流していた。

これでM4A1は確信した、テラーは特定の方向のみ攻撃を軽減できるのだと、そしてそれが他の近接戦人形に採用されない理由だと。

 

「…っ!」

 

テラーが切っ先を向ける。

ソードの柄には銃口が見えた。

 

「!!」

 

M4A1はいち早く銃口に気が付いて、銃口の向きから逸れるように飛び込む。

続いて発砲音、レーザーがM4A1らのいたところに着弾し、小さく爆発した。

爆風で死ぬというわけではないが、直撃は避けたい。いやらしい、ギミックだ。

……だが、あれはたぶん隠し腕の部類だ。

しかし、このタイミングで秘密兵器を使ったということはテラーに余裕がないことを意味していて、実際M4A1もすこしずつ、テラーを倒せる方法のピースを頭の中ではめていた。

 

「ふう……」

 

どうやって勝つか、そしてそれが現実的になるにつれてM4A1は心に余裕が生まれて、こうして一呼吸している。

対するテラーは息が上がっていき、余裕がなくなっている。

再度、ぶつかり合う2人。

打って出ては離れ、そしてまた引き合う。

まるで波の満ち引きの様だ、しかしテラーには次々傷が増えていき、M4A1はテラーに有効な攻撃を増やしていった。

 

だが、M4A1は深追いはしない。

一撃与えたら、絶対に距離を保つ。

 

「初見は驚かせてもらったけど、ずいぶんとやるわね…」

 

こいつはシンプルに殺人人形として優れていた。

もし、鉄血が何らかの気変わりを起こして、この人形をエリア防衛で配置したらかなり厄介な相手だったはずだ。

 

「────、────っ」

 

苦しそうにテラーが呻く。

確かに精神的余裕はM4A1にある。けれども、戦闘しての有利はまだテラーが握っている。

M4A1は勝てると思える展開でも、油断せず冷静に判断していた。

有利だと思ったらすかさず攻め立てる従来の人形とは違う。

 

眺めるフレシアは報告以上の人形であるM4A1に評価を改めていく。

それに…M4A1はまだ、なにか隠し持っているように思える。

この人形は危険だと。

 

「────っ!!!」

 

テラーがこれまでにない、獣のような唸り声をあげた。

そして、ソードを振り舞わす。

次の瞬間、ソードが一気に分割されて、バラバラに襲い掛かった。

そして、その唸り声に応えるようにソードが変形して鞭とソードが一体化したような見た目に変形した。

 

「なに!」

 

M4A1もさすがに予想していなかった。

驚いたM4A1は、テラーの鞭となったソードに斬られて膝をつく。

フレシアの目からはM4A1はもう終わりのように見えた。

けれども……

 

「驚いた。ずいぶんやってくれるじゃない」

 

だが、M4A1はまるで「まっていました」というように口元から流れる血をぬぐった。

 

「ネタは全部分かったわ。もう、終わりにしましょう」

 

M4A1は素体の出力を最大まで引き上げた、一気に引き上げられたせいで逐次投入された冷却材が漏れ出て、排気と混ざり合い白い煙となって漏れ出している。

 

「行くわよ」

 

その後のM4A1は別物の様だった、

さっきよりも、倍以上の速度接近したかと思うと一瞬でテラーの側面に旋回し、転倒しそうなほどきつい姿勢で体を倒しながら5.56ミリを命中。

 

すぐ、テラーがM4A1の正面を向こうとしていたが、その時には次の側面を奪い弾丸を当てていく。

M4A1の猛攻はテラーの足を止めてしまう。

 

「いまだ」

 

止まった今がチャンスだ、フレシアはベリルライフルを発砲。

正面は聞かないのは知っている、けど頭に当たればさすがにぐらついた。

 

「どうも」

 

頭を揺らされ、平衡感覚をすこし奪われたその一瞬を活用し、M4A1はソードを奪う。

 

「貴様!」

「ほら、返すわ」

 

M4A1はソードを投げつけて、ソードの脇腹を貫通して突き刺した。

突き刺さったソードにテラーは引っ張られていく。

 

「…!!」

「これで!終わりよ!!」

 

側面からのガンケースによる砲撃、今度こそテラーの身体は穴が開き、そのまま爆散した。

 

「あのハイエンド、手間がかかりましたね」

 

フレシアはせいせいした様子で、テラーの死骸をどけると目的のサーバーに近づいた。

 

「テラーでしたっけ?ずいぶん、しぶといものでしたけど…どんな脊髄使ってるんですかね?私が付けたら頑丈になれますかね?」

「知りませんよ。あなたにあんな脊髄必要ですか?」

「それこそ、あんたに献上しますよ」

「お呼びじゃないわ…」

 

あんな脊髄は絶対私のフレームと合わない。

 

「そういえば、テラーはあなたのケースをご存じの様でしたね」

 

サーバーからお目当てのデータを抜き取っている間、M4A1は周囲を警戒しながら端末にコネクタを差し込んで手持ちの抜き取り用のデバイスにデータをコピーする。

コピーしている間、雑談のようにフレシアはこっちにそれとなく疑いを吹っ掛ける。

 

「知りませんよ。これ、姉からのおさがりなんです。詳しい話は姉に聞いてください」

「その姉はどちらに?」

「鉄血。寝返ったんです」

「あらまあ、犯罪者の娘の人生は悲惨ですよお?」

 

他人事のようにフレシアはこっちを馬鹿にした笑みで見つめてきた。

なるほど、確かに知ったことではないだろう。

まあいい、こっちにも知りたいことというか、聞きたいことがある。

 

「そういうあなたは珍しい苗字を持っているのね。フレーヴェンって全然聞ききませんよ?」

「…まあ、そうですね」

 

場の空気が変わる、こちらの言い分次第では即殺しにかかりそうなほどの緊迫感が無言で広がっていく。

 

「もしかしてのつもりで話すのですけれど、ユーリって人知ってます?ユーリ・フレーヴェン」

「……」

 

フレシアはユーリの名前を出した途端、そっぽを向いてタバコに火をつけた。

 

「そんなに吸いたいんですか?タバコ?」

 

タバコを吸うということは口を開くつもりはないという意思表示にも使われる。

そっぽを向かれるとなおさらだ。

挑発されたと思ったM4A1はすこしだけ、語気を強めになった。

 

「……ふう、あなたはそのユーリという方とどのようなご関係ですか?」

 

フレシアがタバコを口元から外して、

今まで聞いたことないフレシアの優しい声色で聞き返した。それは嵐の前の静けさを予感させる。

 

「信じられないかもしれないけど、私の指揮官だったの」

「それはどちらの?」

 

なおも丁寧に聞くフレシア、タバコを吸ってないがまだそっぽを向いているのでどんな表情をしているか分からない。

 

「グリフィンよ、それだけじゃない。私の恋人だった」

 

フレシアの動きが止まる。

まるで、いままで意図しない答えが返ってきたようで、緊迫した空気がさらに張りつめだした。

 

「……分かりました。では、お答えしましょう…ええ。知ってます、なんせ私の兄ですから」

 

やはりと思った。

どこかで似ていると思っていた、それがユーリであったことに気が付かなったのは残念だったが。

 

「ユーリから頼まれごとをされていて、これを渡すように言われたんです。あの事件以降、ずっと探し回ってようやく見つけたので渡したいと。

「このペンダント…」

 

このペンダントはM4A1がオセチアで再開した時に頼まれた物だ。

その時、私はフレシアと一緒に仕事をするなんて全く知らなかった、けれどユーリはそれを予想していた。

M4A1から渡されたペンダントを受け取ったフレシアは忌々しげにそれを見つめた。

 

「どうされました?」

「……このペンダント、あの日の物か。よく、見つけだしたものね……ねぇ、M4さん?このペンダント私と兄がプスコフでどんな思いをしていたか知ってます?」

 

知ってはいる。

その公聴会に出席する人間を守るために、身内争いをしたのだ。

ただ、公聴会の内容はだれの名誉が回復したかしか知らされず、誰が罰せられたとか、どんな事を審議されたのか聞かされていない。

 

「最近の公聴会で話題になった事件のことですか?確か、敗走した兵士を治療したのが原因で暴行を受けたと」

「……事件?暴行?」

 

フレシアは吐き捨てるようにM4A1の言葉を繰り返した。

まるで、こちらの無知を恨むように。

 

「あれは暴行や事件で済んで良い話じゃ無い。どんな言葉でも言い表せることが出来ないほど酷い出来事だった。墓を掘らせて掘った人を遊び半分にバットや鉄パイプで殴り殺す、スナック代が足りなくなったら民家から"税金"という理由で強盗する。酒を飲めないから、女子供を引き摺り出してそいつらをレイプする。それが事件や暴行の一言で終わるんですか?」

 

フレシアの口からさらに語られる、プスコフの真実は凄惨を極めるものだった。

多すぎる情報と感情に頭が追いつかず、ハッキリしていることは第三次世界大戦が世界を崩壊させたと言われていたが、もっと前にここは、この国は壊れていた。

 

「そんな奴らに私たちが住んでたプスコフの街は好き勝手された。しかも、頭の緩いクズどもで若さ故の冒険とか、武勇伝で処理されて今も建国の英雄気取りで好き勝手やってる。私たちをヨーロッパの泥水と煙だらけの戦場に無理やり飛ばしておいてね」

 

その崩壊の痛みをユーリやその妹のであるフレシア、そして他の同じような目にあった人らは味わうことになる。

反対に壊した連中は今を謳歌している。

 

「では、なぜあなたは……あなた達はこの国を支えるような仕事をしているんですか?」

「そりゃあもちろん生きていくため。兄さんは知らないけど」

 

生きていくため。

あれほど憎いとしか思えない相手に傅く理由はあっけないほど単純な理由だった。

ユーリも……そうなのだろうか?

 

「あ、終わったみたい」

 

気がつくとアップロードが終わっていた。

フレシアはUSBメモリを取り出した。

M4A1は気が付かれないようにメモリを回収する。

 

「M4、あなたもこのデータが欲しかったんですか?」

 

ぞくり、とM4A1に悪寒が走る。

気づかれていた。

 

「誰に渡すんです?もしかして、アンジェリア?」

 

正解を言われた。

ただ、それは正解のひとつだ。

 

「確かにアンジェリアには頼まれました。ただ、あと2人渡す相手がいます」

「それを教えら代わりにを持っていくのは許して欲しいと?良いですよ?誰に渡すんですか?」

 

驚いた。この状況になったらキャスターは正直に言うことで乗り越えられると話していた。

彼とフレシアは話をつけていたのか?

 

「一つ目は404小隊という人形のUMP45。そして、もう1人があなたのお兄さん。ユーリです」

「そう。拍子抜けね」

 

勢いを急に失速させたフレシアはやがて、乾いた笑い声をあげた。

 

「コピーは持っていきなさい」

 

アリシアにコピーを持っていくことを許された。

どうもと、笑うM4A1は踵を返す。そこは出口と真反対だった。

 

「どこへ?」

「家族のお手伝いですよ」

 

 

視点:M4SOPMODⅡ

 

「全く…やっぱりお前達が来たか。AR小隊で一番の愚者のSOPⅡ 。裏切りに裏切りを重ねた、ハンター…そして、この計画の用済みにされた、安全局員…フレシア・フレーヴェン。巡り合わせにしては上出来だな」

 

一方、SOPⅡ達は旧世代の鉄血人形で形成された防衛ラインを四苦八苦しながら突破して、司令室にたどり着いていた。

 

「お前は大馬鹿やろうだ」

「独断行動しかしない、お前に言われてもな。プレデター 」

「兄貴…ユーリ・フレーヴェンにに会えなく残念でしたか?」

 

司令室にいる人形はプレデターと呼ばれていた。

鉄血がまだ人間の手で開発されていた頃の最後に開発されたのがこのプレデターだ。

彼女は三者三様の意見を剣を撫でながら、うんうんと頷いていた。

 

「船にいると思ったわ。まぁ、船酔いしそうな外見には見えませんけど」

「ああ。私は、遠いところから眺めているのが好きでね。現場は好みじゃない…あぁ、だが幼稚なのは頂けない。SOPⅡ …君は幼稚というより、単純だから許容範囲だが…エルダーブレイン、そしてドリーマー、彼女達はダメだ。知能があるのに使いこなせない、グズの極みだな」

 

プレデターは自分より後に開発された鉄血人形達を蔑んでいた。

後輩には敬意がない先輩らしい。

 

「どうでもいい、世界は破壊させない。私達はこの世界で生きる必要があるんだから」

 

SOPⅡ発言に彼女は目を見開いて、ゆっくりと音を立てて拍手した。

 

「ほう…素晴らしい。流石、私の後輩やあの模造品の列車を壊しただけある。だから、私は君を待っていたよ。まさかRPGを当てた戦車から出てきてここまで来るとは思ってなかったがね」

 

剣が変形して、ショットガンに変化した。

 

「AK-12、あのプレデターってどんな人形?」

「設計書でわかる範囲だけど、アイツは対象のラーニングしてなんの訓練もなしに短期間だけ、真似出来る様にする能力をもつ人形を開発されたらしいわ」

「もし、設計書通りに開発されたら……私達の動きも…」

「そうだとも…イッツショウタイム」

 

────アドミラル・クズネツォフ甲板

 

近づくヘリをAUGが見つけて、トリガーを引く。

 

「来ました!!」

「くそっ…やっぱり発艦を邪魔しに来たわね!」

<全クルーに告げる、敵部隊が領空に侵入、警戒レベル5だ>

 

────敵のヘリをレーダーで捕捉した、SAM発射!!

 

<総員に告げる、敵がデッキに侵入!繰り返す!敵が侵入中!!>

「奴らが射程内に入ったらおしまいよ!あらゆるところが灰になる!!」

 

────全員、戦闘配置!戦闘配置!

 

「奴らを食い止めて、艦載機が飛ばせる様にするわよ!」

「搬入口に敵!!」

 

やってきたヘリコプターがこちらに降りて、兵士達が攻撃してきた。

 

<Ka-31が離陸!Ka-31が離陸した!>

<駆逐艦がやられた!!…これは、沈みます!>

<救命ボートを急げ!>

 

発射された、巡航ミサイルに駆逐艦が盾になり、沈んでいく。

まさか、鉄血がこの規模の兵力を持っていると誰が予想したか?

誰もしていない、だからみんな動揺しながら戦っている。

 

「もう始まってる!鉄血はデッキから叩き出してあげるわ!」

 

甲板の上で銃撃戦が起きている、人形はもちろん、クルーもAK-74M3を持って、私たちと共に戦っている。

取り敢えず、第一波を防ぎ、第二波が来る前に照準装置を持った戦術人形に話しかける。

 

「ターゲットシステムでボートの奴らを排除したい。Ka-52"カトレン"は飛ばせますか!?」

「ですが、ターレットに繋げられるKa-52飛ばすには20分以上は────」

 

「とにかく急いでください!HK416、どこにいるの!?」

<北の手すりに!ボートにフックをかけて乗り込もうとしている!>

「なんですって?まずい!乗り込まれる!!」

 

手すりも銃撃戦が始まっていた。

さらにフックを船に突き刺しそのフックを渡って鉄血兵達がボートに乗り込もうてしている。

 

「調子に乗るな!」

 

HK416が乗り込もうとする鉄血が渡るロープをナイフで切り落とす。

悲鳴をあげず落ちていく鉄血達が旧式故だろうがそれでも気味が悪い。

 

<準備完了。Ka-52が離陸可能>

<警告、20台以上のボートが船に取り付いている。>

 

「俺もナイフで切ってやる!!」

 

ナイフでこちらの手すりに引っ掛けてあったロープを切り裂こうとする、だが風と衝撃でロープが揺れてうまく切れず、丁度ロープで登ろうとした兵士がいたがそのまま海の中に落とされた。

 

「ゴハッ…!!」

「一人やられた、デッキに上げるな!」

 

海軍のクルーが下からの銃撃で死亡した。下を見ると、虫の様に群がり登ろうとする。

 

「キリがない!」

 

他でも救援要請はひっきりなしに鳴り響いていた。

今すぐ他の手助けに行きたいのに邪魔をされてHK416も腹が立ってくる。

 

<こちら、アメリカ空軍のブラキオ2だ。こちらの火器システムをお前達の戦略端末に統合した、そっちの端末でコントロールできるぞ>

 

「ありがたい!」

 

空を見るとAC130が対空砲火に晒されながら空を飛んでいる。

このために照準器を拝借したのだ。ROは端末のスイッチをオンにして照準とリンクする。

 

<早くねらって!対空砲火に落とされる!>

「すぐやります!」

 

ガンカメラに映像が切り替わり照準マークが見える。武装は…よし、これに決めた。

 

<40mm発射…ボートを壊したな。いいぞ、グッドキル>

 

虫の様に群がるなら、一掃するまで。

…味方に当てないように。次はヘリを撃ち落としてやる。

 

<ガドリング砲を発射…よし、あのヘリはおしまいだ>

<総員に通達、武装ヘリとガンボートが来るぞ!>

<これ以上来られるともたないわ!>

 

HK416がいう通り船には20台以上のボートが群がっている。

ぞろぞろこないでよ…くたばれ。

 

<105mm確認、いいぞ。纏めて始末した。>

「いいぞ!!」

 

AC130破壊音がこちらまで響いてくる。

やはり「空飛ぶトーチカ」の名前は伊達ではない。

 

<Ka-52は離陸した。海上部隊の掃討にあたる>

<…本当か?総員武装ヘリが東から接近中だ!さらに、巡航ミサイル!!>

 

流線状の光が私達の空を通過した。

 

<フレアを使え!!>

<ダメだ!間に合わな────>

 

「ああっ!AC130が!?」

 

まずい、AC130がやられた。

それに今飛んだKa-52も…!いや、Ka-52で良かったかもしれない、Su-33が破壊されたら進路を塞がれる。

 

「ランチャーでヘリを迎撃するわよ!急いで!」

 

分かってる!…絶対に持たせる!彼らが飛ぶまでは絶対に…!!

ランチャーを管理していた、場所に辿り着く、ランチャーを一人で操作していた兵士は無数の銃弾を浴びて息絶えていた。

 

「一人でよく頑張りましたね…今までありがとう」

 

ゆっくりと兵士をどかして、誘導装置をオンラインにする。

 

「武装ヘリを狙います。あなた達は敵を抑えてください!」

「任せなさい」

<戦闘機がやられたらお終いだ!どうにかしてくれ!>

「ランチャーを使って、迎撃します!」

 

ガンカメラから、近い順に武装ヘリを落としていく。

 

「…っ!」

「このまま、排除します!」

 

どこからとも無く侵入した、兵士が銃を向ける。

 

「ガルルっ!」

 

ハニーバジャーのキュートな相棒その存在にいち早く気づいて、噛み付いた。噛みつかれた兵士が挙げた叫び声に気付いたハニーバジャーがその兵士を倒す、

 

「すべての武装ヘリを排除しました。耐え切った…!」

「レイドチームからクトゥルフ!空母は無事!繰り返す空母は無事!」

「こちら、ヴェルグ1目標数を破壊した」

 

<了解!今度こそ、Su-33を発艦させる>

<了解した。ライオット4!発艦を許可する!!>

<了解!行ってくる!>

 

<ライオット4!グッドラック!!総員、Su-33が発艦する。滑走路から離れろ!>

「轢かれるぞ!!お前ら離れろ!!」

 

空母の艦載機である。Su-33が滑走してスキージャンプでジャンプする様にふんわりと飛び、そのままジェットエンジンで空に、一機、また一機と飛んでいく

 

────視点:M4SOPMODⅡ

 

「「はぁ…はぁ…」」

「お手上げかな?」

 

ラーニングしている、プレデターは私達の攻撃を完全に理解しているせいなのか、全く攻撃が当たらず、むしろ一方的に攻撃されている。

認めざる得ない、コイツは強い。

 

「おや、戦闘機が飛ぶようだな…なら、必要数が揃う前に今度こそ沈めるか」

 

プレデターが空母に向けて、照準を合わせようとした…ハンターは静かに目配せをした、交わした言葉多くないけど、何をしたいのかはわかった。フレシアさんも頷いている、

 

「おい!!」

 

AK-12がライフルを向けた、プレデターは銃に変形させた武器で攻撃。

 

その隙をついて私がグロック19を発射しようとする瞬間を読み。

撃った瞬間と同時に剣に変形させ力場を投げつける、グレネードランチャーの榴弾がぶつかり爆発する。

その爆発に乗っかる形でハンターの右肩は切られる。

 

「無駄だよ」

「うん?」

 

今度は私が左手でFN-ELGMを構えて、ハンターが左手で隠し持っていたグレネードランチャーの弾丸を装填して発射状態にする。

その状態を確認した段階で、私は引き金を引く。

 

「きさまっ…!」

 

榴弾はプレデターに直撃した、近接信管のせいで爆発しないが鳩尾にあたり、彼女は苦しんでいた。

 

「いくよ!」

「ああ」

「はいはい」

 

最後に3人で接近して、レーザーハンドガン、AK-12、M4SOPMODⅡの至近距離の連射を喰らわせてとどめを刺した

 

「私の知らない攻撃だと…?!」

「当たり前だ!」

「即興で作ったんだから!!」

 

「初めては予想外でしょ?これもね!!」

 

AK-12は閉じた瞼を開いて、電子戦攻撃を始めた。

プレデターの視界や思考に無数いらないデータが叩き込まれ、それは人形の脳とも言える部位に激痛を与える。

 

「なっ、んだ……これはっ?」

 

処理できないほどのデータを無数に送り込む。

そして、処理できない量は膨大な熱となってプレデターを燃やしていく。

 

「はっ…驚いた。熱いな……」

 

プレデターは不気味な笑みを残し息絶えた。

 

「やった!」

 

「こちら、セイグリットチーム!!アサルトチーム!!通信塔を占拠した!通信塔を占拠したぞ!!」

 

視点:ユーリ

 

「結局、全部壊してしまったな。作戦が安全ならそれでいい」

 

ヘリの対空砲の残骸から死んだ仲間を引き摺り出した後、回収のヘリがやってきた。

千切れてしまったが、回収したノーイの遺体を運び入れた。

 

「ノーイ…うるさいやつだった君が消えるのは寂しいよ」

 

ヘリに乗り込もうとすると、画面が揺れ出した。

 

「これは…表示が不安定だ…妨害電波か?」

「そんなものまで、用意しているのか?」

 

他の装置でも起きているらしい、念のための最終手段か…!

 

「あの長い塔に近づくと、干渉が酷くなるな…接近して、目視でこのクトゥグアを使う。」

「危険だ!ヴェルグ1!ユーリ!」

「すぐ戻る…」

 

仲間達の静止を振り切り、砲塔が直線に飛ぶところまで移動した。

 

もう、飛べる燃料もない。

勝利はするが…ここを止められなければ、負けるかもしれない。そんなのはいけない…いや、嫌だ。それなら生き残れるかどうかの賭けをする方が自分にとってはずっといい。

少なくとも、この戦いには勝利できる。

 

「往生しな!」

 

クトゥグアを発射する。妨害電波がみるみる消えていく。

そして、Su-33が発射したミサイルが船に次々に当たっていく。船内が、傾いていく…そして、衝撃で投げ飛ばされた。

 

<船が傾いていく…>

<隊長はまだ見つからないのか!?>

<信じるんだ…>

 

目を覚ますと、船内にいた。

 

ゴゴゴ…と鈍い音がそこら中から鳴り響く。

船内?クソッ!?ここは沈む計画じゃないか!!

 

次に着弾、これはミサイルが命中したらしい。

さらにミサイルが着弾し、船に穴が空いた!!

 

「もたもたするな!!はぁっ…はぁっ……移動しろ!」

 

自分に脱出の言葉を言い聞かせて、落とされた船内の構造がわからないまま、走ってだって上へ上へあがる。

 

「うおおっ!?…立て!移動しろ!!」

 

排水バルブが吹っ飛んで水が溢れ出る!!押し出される衝撃と傾く重力に踏ん張りながら廊下を抜ける!

上から、崩れていくパネルを避けながら走り続ける!

 

「沈ま!沈む!」

<隊長!聞こえていたら返事をして!!>

「────ファリカ!船に入っちまった!」

 

通信越しから歓声が聞こえる。

 

「船に入った事を喜ぶな!」

 

怒鳴ってすぐ生きている事を喜んでいるのだと気がついた。

 

「待ってろ!すぐに脱出する!船にいるが…なに…どうにかする!」

 

階段が流れる水でかなり登りにくい…!!負けて…たまるか!

最後の階段を上り、外に出る。

 

<見えたぞ!飛び乗れ!>

「目がいいな!?助かったけど!」

 

タラップが降りる、全速力で走る…!傾いた傾斜を利用して…ジャンプ…

 

「…ウワアアアア!!…はぁ…危なかった」

<回収した!!いいぞ!引き上げるぞ!!>

 

そのままタラップから引っ張り出されて、ヘリに乗さられた。

 

「…ヘルメットのボイスが機能しなくなってるな。まぁ、俺たちが勝ったからいいか……」

「ようやく、新しい人生が始まりますね」

「誰も、何も起きてない体を取るだろうがな…」

 

朝日が登っていく…隊員達は次々とヘルメットを取る。

今日の戦いが終わる。

 

「また、グリフィンに戻らないとな…」

 

やるべき事がこれから待っているだろう。

 

 

 

 

────グリフィンの新設基地にて

 

「それで?私達は3ヶ月何もしなかったという記録にしろと?」

「らしいよ」

「ハハッ!馬鹿SOPから、引きこもりSOPだな!」

「なんだとこの野郎!!」

「あぁ…もう、怒らないでくださいよ。無能なんですか?」

「アハハッ!ここ結構楽しいかも!!」

 

「そのうち疲れますよ〜?」

 

SOPⅡ達が揃った仲間達と騒がしくしている…漸く、チームが出来たな…

 

「指揮官。こちら、あなたの友人と呼ばれる方からのスケジュールです」

 

次はベオグラードだな…"友人"から、ベオグラードでのある組織のスケジュールを手に入れた。

スケジュールが入っていた封筒の裏を確認するとUSBメモリが入っていた。

 

恐らく、あの悪戯好きの老人はセルビアと縁とゆかりのある組織と組んでいるだろう。

そして、ベオグラードに行かせるだろう。

HK416も連れて行くか。

 

頭の中で大雑把な計画を立てた時、よく見るとスケジュールの他にメモリには新しく添付されたメモ帳が入っている。

ユーリは念の為USBをコピーしたあと、ウィルスチェックをしてメモを開いた。

 

「なんだ」

 

ユーリは緊張が解きほぐれたように頬を緩ませた。

メモはM4A1が書いた、ユーリ宛のメッセージだった。

 

指揮官へ

 

メッセージを送るのはこれが初めてですね。

こちらは元気にやっています……と言いましても、貴方といる生活の方が恋しいですね。

最近、あなたの妹さんと会いました。

ペンダントを渡したときに、貴方と妹さんがあの時何をされたのかを聞きました。

……正直、どう言葉をかければいいわかりません。

なのに手紙は送るなんて……

これだけは、伝えさせてください。

今までが辛くても、これからの貴方の人生に良い風と暖かい灯火が未来を照らしてくれますように。

 

M4A1より

 

良い風と暖かい灯火か……きっと、M4A1は良いことが起こりますようにと言いたかったんだろう。

詩的な言い回しはいらないと思うけど、きっと素直に伝えられない事情があるのかもしれない。

 

溜め込んでいた用事もそろそろ方がついた。

保安局が表向き自粛してくれたお陰で、"あの方"の要請した準備も出来ている。後手に回るのはここまでだ。

 

そろそろM4の言ってくれた通り、良い風に背中を押されて、灯火を追いかけ、こっちから傍観者達に仕掛けてあげよう。

 

「待っていろ。パラデウス…そして、ロクサットの亡霊ども。きっとびっくりするからな」

 

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