たったひとつの願い   作:Jget

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地獄のトビラ

 

MP7が警告するのと同時に爆発音が会場に響き渡る。

 

「…クソッ!何があった!?」

 

通信装置にノイズが…お得意の情報規制か?

確かにこの状況を全世界に移されたら国連も新ソ連もセルビアも纏めて世界の鼻つまみ者だ。

 

「癪に触るがKのネットワークを使うぞ、専用の回線なら繋がる可能性がある」

「各小隊の通信、回復しました!各小隊に告ぐ!議事堂周辺で異常事態発生!恐らく人間爆弾!!」

<こちら、P22!ACRが潜在脅威の信号を検出!高速で議事堂に向かっています!>

<多方面から車両が集結して、現在判明する数だけでも9両!予想到達時間は3分!>

 

やはり、そう易々とは行かせてくれない様だ。

むしろ、予想通りだ。俺でもわかる。

 

<指揮官>

「奴らの相手をして欲しんでしょう?準備はできています、殲滅しますか?」

<議事堂裏の3ブロックがお前達の管轄だ。それ以外は保安局の管轄になる>

「了解。やはり、手柄が欲しいと欲張るのは保安局のよくある事で…流石"共産主義"なんでもプライド」

<仕事をしろ>

「はいはい、連絡員様」

 

仕事をしながら軽口を叩くユーリに対して、冷たい態度を取るKだった。

 

────

 

「遂に始まったわね」

「今は仕事をするだけですわ。援護を」

 

AUGが手持ちの銃のコッキングレバーを叩いて、弾丸を装填した。

 

「例え…どれだけ敵が強くても…」

 

外に出て、AUG以外にもROの元に部下のハニーバジャー、MG36、DP-12が集まり、ROを中心とした陣形を組んだ。

 

「切り抜けるしかないわね。R部隊!!戦闘開始!!」

 

────

 

「緊張するかい?」

「まさか」

 

拠点の外にいたMP7がマガジンを差し込み、ボルトストップ人差し指で解除した。

SOPⅡが集合の合図を出すとMP7以外の部下であるR93、P22、ACRも集まってきて、鋭角な陣形を取る。

 

「何を企んでいようと、片っ端から叩き潰してやる!」

「流石、馬鹿SOPⅡの考えだけは単純明快だ!」

「今日も隊長は考えなしの猪馬鹿ですね!」

「記憶に染みつく命令です。馬鹿なのが欠点ですけど」

「この部隊は、馬鹿が隊長をしなきゃ楽しくないもんね!」

 

「ハイハイ、馬鹿でいいよ。全く……この怒り、全部パラデウスにぶつけてやる!!」

「「「「(だから、馬鹿なんだよ)」」」」

 

部下一同はほぼ同時に隊長であるSOPⅡにそう、思ったらしい。

 

────

 

「指揮官様!憲兵がバリケードを立て直して…あっ!!」

 

ユーリも外に飛び出し、隠し持っていたMCXを発砲。

中に飛び込もうとしたテロリストを倒した。

 

「まあ、こんなものか。……うん?まだ、撃っているのか?」

 

ユーリたちの位置はどう見積もっても、敵はある程度時間をかける必要がある場所だった。それなのにまだ銃撃の音が激しく鳴っている。

 

「(まさかとは、思うが……)」

 

そして、外を見た時には遅かった。

憲兵がバリケードを立て直して、固定されたマシンガンに弾丸を装填した。

そこまではよかった、悪かったのは……

 

「だれか、救急車を……がっ!?」

「こちら!ベオグラード議事堂前です!激しい爆音が……」

 

悪かったのはその後で、憲兵のマシンガンはテロに巻き込まれた市民や騒ぎを報道する報道陣すら纏めて銃撃しているのだった。

 

「……!むごいっ……!」

「し、指揮官さま?……こ、これ……」

 

隠し持っていた、SIG MCX ラトラーを取り出し外に出る。

よく見ると、その中に保安局のエージェントも混じっていた。

 

「和平会議を虐殺で始める気か!?」

 

この光景を監視カメラで見ていたフォトンも激しい怒りを隠せない。

この国を守る憲兵の手で殺すとは、正気の沙汰ではない。

 

<カリーナ!下がるんだ!>

<あのバカ!?くそっ!!>

 

憲兵はユーリを敵と勘違いして発砲した。

ユーリはすぐさまカリーナを先に室内に戻してユーリも室内に飛びこんだ。

 

<いってえ……!>

 

ユーリが呻いた。

 

<指揮官様!お、お腹が……!?ああっ……>

「おい!大丈夫なのか!」

<ええ……何とか、弾かれた岩が腹に当たっただけですから……ああ、痛え……>

 

カリーナは自分の不注意が招いたと思ってパニックになりかけたらしいが、ユーリは腹を抑えながら立ちがった。

 

<敵だ!入られた!撃て!>

<なんだこれは。はあ、全く……>

 

今度は保安局のエージェントも撃ってきた。

また秩序乱流作戦のようなことが起きている。

今、彼が感じているのは怒りではなく、杜撰な保安局や憲兵に対する失望だった。

ユーリはため息をひとつ吐き、無線を弄った。

 

<おい、こっちは味方です。何をしているんだ>

 

だが、銃弾は止まらない。

 

<カリーナ下がって>

「あ、はい……」

 

無差別にアサルトライフルを撃っていたエージェントは室内に入ろうとする、だがユーリは素早くそいつの手を掴んで室内に投げ飛ばし、武器を叩き落とした後にMCXを向けた。

 

<何のつもりだ!>

<それはこっちのセリフですから!>

 

問答でようやくエージェントは今、味方を撃っていることに気が付いたのだ。

 

<ちっ!まぎらわしい!>

<まて!そっちは……おい!Kさん!!>

 

エージェントは腹を立てながら、謝罪もなく部屋を出ていこうとする。

だが、そこはマシンガンの射手が銃口を向けたところで……

 

<どうした?>

<あー……もういいです。手遅れでした、パニックの憲兵がエージェントを肉塊にしたところです>

<そうか>

<そうです>

 

あまりにもKの淡白なやり取りにユーリはさらに失望を強めていった。

あの後、また幾つかの阿鼻叫喚を繰り返し、ようやく議事堂は静かになった。

 

「これ、本当に隠蔽できるんですか?」

 

肉と血で真っ赤になった玄関を避けながら、ユーリはエージェントの1人に質問してみた。

 

「あんまり勝手なことをしない方がいいんじゃないですか?」

「あのクズどもが攻撃してきたんだぞ!?殺した何が悪い!?」

「ほお、ではあなた達はどこを撃っている?よく見てください、我々を攻撃していたのはあっちからです。で、あなた側はそっち。もしかして、あなた方は敵じゃなくて、動く奴を撃てと教えられたのでしょうか?」

 

コイツらは彼等が撃っているのはそもそも、見当違いで信号を見ても視覚的に見ても、パラデウスとは全然違う、ただ集まってきた、デモ隊や民衆を撃っていたのだ。

しかも、まだ撃っている敵は警備達に発砲している。

やってきたときはままごと見ている気分で、あきれるほかなかった。放っておくと取り返しのつかないことになるのでユーリはMCXで敵を倒した。

 

RO635も死体を片付けていた。

布を巻くことすらしないで、テントの中に投げ込まれる死体、RO635はいくら邪魔くさいと思わせるデモ隊であったとはいえ、これはあんまりだと思った。

 

「次はどうします?フォトン指揮官?」

 

ROの指示を待つ声が聞こえる。

 

<次同じことがあったら、お前らはKの指示した地点を素早く封鎖して、パラデウスを片付けろ…保安局に教えてやれ、デモ隊は敵じゃない。部下に厳命しろ、絶対に傷つけるな、命令無視をしたら…>

「分かっています、取り掛かります」

 

「状況終了…案外手間がかかったわね。車を止めるのは結構大変よ」

 

車を止めるために、MG36に掃射を指示したがそれだけでは止まらず、結局DP-12のドラゴンブレス弾でエンジンを強引に加熱させて、車の動きを止めた。

 

「そぉ?爆弾使ったら止まったし、そんな気はしなかったけどなぁ」

 

私達は爆弾を持っていないけど。

重装部隊が居たら、どれだけ楽か…なんて、居ないやつの事を考えても仕方ないか。

 

「私の榴弾撃てる、グレネードランチャー貸してあげようか?」

 

誰があんな使いにくさ全開のグレネードランチャーなぞ使うか、MGLでも寄越して欲しい。

 

「で、まぁ…騒ぎが抑えられたという事は…保安局のエージェントが役に立たないってわけじゃなさそうね」

「これが?隊長はそう思うんですか?」

「…戦力的な意味でよ」

 

私達の管轄外のブラックではそのエリアに逃げ込んだであろう、住民の死体が片付けられている、弾痕が明らかに拳銃弾やライフル弾だ、恐らくエージェント達が無差別に撃ち殺したのだろう。

 

「あっという間に終わったのは良かったけど…これで終わり?これで片付いたの?指揮官?」

<はぁ…聞こえている、お疲れ様>

 

無線越しに、呆れてため息をつくユーリ指揮官の声がした。

何が起きているのは予想が付かないが…元々民衆がいなかったブロックでこの数の死体だ、ここよりも更に近い議事堂は…

 

「あの…指揮官。あまり」

<気にやむな?それとも指揮官のせいじゃありません?>

 

フォトンも割り込んできた、しかも荒んだ言い方で。

 

「い、いえ、そんなつもりは…」

<怒ってない。ただ……いや、すまない。取り乱した俺が悪い…>

「ユーリ、フォトン指揮官…荒れてる?」

<かなりね>

 

労りの言葉は、時に相手を怒らせる事を忘れていた…咄嗟に出てきた言葉を口に出してしまった事を後悔した。

 

<SOPⅡ私も見ていましたが…アレで済むだけ。まだ、彼は自制心が強い方だと思います>

「…どうして言えるの?」

 

X95は確か比較的指揮官の近くに居たはず、何かわかるかもしれない。

 

<終わった後に、まだ生きていた…民衆の方が…その、既にお亡くなりになっていた息子さんを抱き抱えて…「この子を助けて…」と言って、それが最後のお言葉に…>

「…」

「…ごめん、空気が読めなくて」

 

久々に憂さ晴らしして、すっきりとしたSOPⅡの顔が落ち込んでいた表情に変わる。

…やっぱり、私の発言は適切なものでは無かった。

離れた場所にて…黒服の少女が一連の騒動の様子を眺めていた。

 

「こういう野蛮なやり方は意味がないって言ったのにねえ…本当にバカな人達、まだまだ物足りなそうねぇ?…心配しなくてもいいわ、本番はここからよ」

 

────視点ユーリ

 

「もしかして、君は、そうだ!ユーリじゃないか!間違いない!!」

 

議事堂に汎ヨーロッパ連合代表の到着があるまで待機していたユーリたちの元に、誰が話しかけてきたかと思いきや新ソ連側のロシチン代表が話しかけて来た。

 

「公聴会以来じゃないか!会いたかったよ!」

「……、覚えてくださったんですね。ありがとうございます」

 

さっきのあきれ果てていたのとは打って変わり、ユーリは好印象を与える声色で差し出され手を取って握手する。

 

「実際どうです?和平会議の自信のほどは」

「もちろんあるとも」

 

ユーリはロシチン代表にそれとなく探りを入れて見た。

ロシチン代表はとても自信をもって答えた。

 

「はは!ユーリ、君も人が悪い!兵士の中でも抜きん出て優秀な君から直々護衛術の手ほどきをもらったのだ。どんなことが起きるのか君も分かっているんじゃないか?」

「……」

 

ユーリは笑顔で会釈だけ返した。

つまり、あの方の予想はまた正解なのだろう……ロシチン、残念だ。

 

「それと、君に無礼を働いた人員が少なくないと聞いたが」

「いえいえ、誰にでもあることですから。ほかの方に同じことをしないように気を付けてほしいとだけ、お伝えくだされば十分です」

 

まあ、彼ともこれ以上会うことはないだろう。

だから、出来るだけ彼にストレスのかからない言い方をして話を終わらせた。

 

「全く、君はどんな時でも謙虚な男だ。尊敬するよ」

「すみません。ロシチン代表、ヨーロッパの代表がお越しなられたと」

「おお。そうか、ではユーリこの和平会議が終わった後には、飲み明かそうじゃないか!祝いも兼ねてな!」

「……ええ(生きていればね)」

 

彼の運命を知りながら、ユーリは見送った。

絞首台に上る罪人見るかのような憐れみをもった視線で。

 

────

───

 

「過去の傷跡は私たちの過ちを思い起こさせます、これまでの苦痛に感謝を捧げるわけにはいきませんですが、それを否定することもできないのです」

 

ヨーロッパの代表団がやってきてスピーチが始まった。

記者達のカメラのシャッターが鳴り響き、彼女の演説は全世界にカメラを通して放映されている。

血みどろを歩いたスニーカーの靴裏を赤いカーペットで拭き取る事は…しなくて良かった。ハンス・ウルリッヒ…彼女の瞳とその言葉は沢山の経験を積んだ…何処かまっすぐな…そんな雰囲気を感じさせる。

 

「指揮官」

「クルカイ、お疲れ」

 

HK416が合流してきた。

彼女も指定された記者の格好でやってきたらしい。

 

「指示のあった通り、索敵と移動方法を確保しました。重装部隊も配置完了です」

「うん、よくやった」

「……ウルリッヒ代表。彼女が件の代表ですか?どう思います?」

「何となく…彼女は本物…感じがするな」

 

テレビの方は汎ヨーロッパ債券互助委員会代表のウルリッヒ出席と新ソ連代表ロシチン大使代表との連合会談が、予定通り始まった事を告げている。

 

「本物?ああ、数ヶ月前、本来はウルリッヒ主席じゃなくて別の人がやる発表でしたね」

「破壊活動や暗殺行為を防ぐために代表が入れ替わるのは珍しい事じゃない」

 

多分前の代表がウルリッヒの代わりだったんだろう。

で、安全が確認できたから本物のウルリッヒが代表として来たのだろう。

そして、懸念通り暗殺や破壊活動が行われる事も、珍しいことではない。

ロシチンも入れ替わったらよかったのに。

 

「所で、さっきの動乱については一切触れられていませんね。外と中では世界が違う感じがしますよ…」

「動乱?」

 

HK416は知らないらしく、聞き返した。

 

「さっき爆弾テロがあって……たくさん人が死にました」

「そうでしたか……」

「カリーナ、こういう大きい場で"暗殺活動がありました。会議を続けます"って、クルーガーが言ったら君はどう思う?」

「そりゃあ…そんな会議今すぐ延期して、…あ」

「そういう事だろう。上は中止や延期されるくらいなら隠してでも会議を始めたいんだろう…たとえそこに血を流そうとも、な」

 

上にとってもこれで会議が問題なく、終わればそれで良し。

そんな所だろう、何処かに潜んでいるエージェントも余計な事は考えない様にしているかも知れない。

 

「世界は待つ事が、本当に苦手ですね」

「(本当の苦労はこれからだろうけどな)」

 

たしかに外に出た敵はどうにかなった。隔離壁もアリア達と反逆小隊に何らかのトラブルがなければじき掃討される。

あの方の予想の内容はアレで本当に終わりなのだろうか?この規模なら、"我々"があそこまで入念に準備を進ませるほどの事態に繋がっていると思えない。

……パラデウス。彼らも全く行動しない。

秩序蘭流作戦での計画的な行動と比べるとまだ何かあると思えて仕方ない。

備えておかなかれば、あの方の悪い方の予想が当たってしまうかもしれない。

 

「嵐がなければ蒼天の美しさは計り知り得ない────」

「スピーチは普通…」

<指揮官様、手短に伝えます。こちらを聞いてください>

 

────外の奴らがやられた、計画は失敗だ!

────ふざけるな!仲間の犠牲を無駄するな!続けるんだ!俺たちだけでも!

 

「まずい…!」

 

まさか、もう中に入られてる!?

 

「位置はできる限り、絞り込むんだ。それと、念のために、潜入小隊は準備を────!」

 

迂闊だった!

今まで警備員の数が少なかったから増えていた事を定数になったと勘違いしてしまった。

セキュリティー検査エリアで警備員か何かを話していた、瞬間、警備員が突然ホールの中の扉を閉めた。

それに合わせて先程話していた警備員がぞろぞろと集まり出した。

 

「クルカイ」

「はい」

 

「ロクサットはかつてこう告げました、人の運命は決して孤独では無いと、団体の運命は人間一人一人の運命によって紡がれるものであると。しかし、不要な猜疑と対立によって、私達の団結は引き裂かれ、四散し、さらには戦争になり、我々の国家までもが廃墟となってしまった────」

 

「悪い、通してくれ…」

「多すぎ…なかなか追いつかない…!」

 

人混みをかき分け、カメラの邪魔にならない様に警備員達に近づこうとするが、なかなか近づけない…!

 

「これまで、人々は国家のために命を捧げてきました。しかし、こんな無意味な犠牲は今すぐにでも止めるべきです────」

 

舞台下から、雷鳴の様な拍手が鳴り響く。ウルリッヒ主席はお辞儀をして、次のロシチン代表に会釈すると、舞台袖の階段に足をかけようとした。

 

「あと少し…!」

 

あと少しで、俺の手が不審な動きをした警備員に届くと…次の瞬間────

 

「ウルリッヒ主席。その場を動かないで下さい」

 

ホール内に鋭い銃声が鳴り響いた。

 

「(間に合わなかった…!)」

 

HK416は歯噛みする。

この場にいる全員に向けて、銃口が警備員達によって向けられていたのだ。

 

────視点:AN-94

 

「敵の数が多い!!」

 

パラデウスの勢力がさらに強まっている。パラデウスが私達に徐々に確実に距離を詰めてきている。

 

「データを算出中…」

 

勝率は1%以下ほぼゼロだ、AR-15は0じゃ無いならまだやれると言いそうだが…

 

「先に行って、私が時間を稼ぐから」

 

AR-15はバックアップがない、私にはある。時間を稼いで生き残れる確率を上げるのなら私の方が適任だ。

 

「私達はパートナー、行くなら2人で…」

 

「相手の電子戦能力は高い!同時に動けば2人とも攻撃される!だが、お前は運良くツェナーがない!だから、感知されないお前が行く必要があるんだ!!」

 

「援護なんていいから、2人で逃げるわよ!」

 

そもそも、アンジェやAK-12からも私は縦になってでも守れと言われているし、私自身もこれが最善だと思う。

 

「それって、AK-12の命令?」

「煩い!!お前の我儘を通したらどう足掻いてもここで共倒れなんだ!!私を救いたいなら、そのくだらない妄想を切り捨ててとっととここから出て、アンジェに報告しろ!」

 

気づけば私は、AR-15にキレながら怒鳴り散らし、尻を火が出そうな勢いで蹴飛ばし、出口に吹っ飛ばしていた。

 

「チッ…必ず戻るわ。死ぬんじゃないわよ、AN-94!!」

 

 

言い合えるや否や、AR-15は小道の一つに入り込んだ。

 

「そうやって仲間を捨てますの?反逆小隊?」

「アイツだけだ」

「冷たい相方をお持ちですね?」

 

マーキュラスはそう言ってまた冗長な言い回しの説明をしているのも、今ではありがたい少しでも時間を稼げれば、まだまだチャンスはある。

 

「対するお前は喋りすぎだ」

「私が貴女みたいな、低級に説教される筋合いはありませんわ」

「私は一応特注品だぞ」

「アハハハハ!!たかが特注品の限定生産が何をおっしゃいますの!?私はその特注品の中から、さらに選ばれた聡い娘なのです!お父様から期待された、最高位のネェ!!」

 

成る程…どうやら、ネイトは蠱毒をして選別されたものが新たなハイエンドとなる…そういう事か、鉄血構造のウロボロスの様な選別だろうか?

 

「それに────」

「…ッ」

「私を喋らせて時間を稼ぐのはお見通し、そろそろ片付けてしまいましょう?さぁ、残酷に殺しなさい!」

「最後まで他人任せか!」

 

マーキュラスがまた、部下の兵士達に命令を出して、攻撃させる。意地でも自分の手で始末する気はないと見た。

閉鎖空間でもお構いなしにドッペルゾルドナーがグレネードランチャーで遮蔽物に発射する。グレネードの爆発による衝撃が身体中に響いてくる。

 

「────クッ。…ハアッ!…ハァ…」

 

「機体の加熱による余剰分の熱放出を呼吸で済ますなんてなんとまぁ…その気概には目を見張りますわ」

 

動き回り、オーバーロードを防ぐために、呼吸を吐いているが、加熱の理由はそれだけではない、あの何処にも配慮しない攻撃…それが閉鎖空間で起きている事で、空間内の熱が逃げないのだ。

 

「ガラクタの様に砕け散れば良いのに」

「…」

 

前動作を省略して、できるだけ悟られない様に発射したが、容易く避けられてしまう。

 

「あぁ…なんて危ない…危うく殺されるところでしたわ」

「(絶好のチャンスだったのにこれでもダメか…)」

 

隙だらけに見えて、いざ狙おうとすると全く通用しない…苦手なタイプだ

 

「…ク!?ハァ…ハァ…」

 

マズイ…素早く攻撃するために、稼働速度を上げ過ぎた反動が…熱暴走がさらに加速している…!

 

「だが…この体が動く限り、決してあきらめない」

 

AR-15は戻ってくると言っているのだ、私が倒れてしまってはどうする。

 

「そんなことおっしゃいますの?あぁ…不憫ですわ…支えているのは人間みたいな心?…違いますわ、あなたが持っているのはただの心を模した入れ物です」

「お前も…そうだろ…!」

「…フフフ、だから人形は低俗なのです」

「何だと…?」

 

人形であることをこいつは笑っている…こいつらが人形でないとしたら…一体、こいつらは何なんだ?

 

検証するにしても…ここを突破するほかない…だが、どう突破する?ジャンプで逃げるか?あの屈強な敵兵の中を…蜂の巣で終わりだ…そもそも、機体がオーバヒート寸前だ…あの攻撃をしたのは失敗だった…機体を冷やさないと…

 

「────あら?」

 

突然、爆音が鳴り響き天井が張り裂け穴が空く。

 

「ば、爆発…!?」

 

さらに爆発が鳴り響く。

いや、この信号は…!

 

「AN-94!聞こえる!?」

「AR-15…」

 

穴の空いた、天井にはAR-15が手招きしていた。

何があるか分からなかったが…これはチャンスだ…

 

「逃してはなりませんわ…!」

「────よぉし、ここならバレない。不本意だけど、手助けあげるわ!!感謝しなさい!反逆小隊!!」

 

すると、何処からともなく、自分が上がり終えると先程いた所にエネルギー弾が着弾し追いかけてきたパラデウスの兵士が倒れる。

 

「な、なんだ…!?」

 

どうやら、私が動くたびに放たれるらしい。

という事は、援護射撃か!?私にエネルギー弾は当たらないと見ていいだろう、AR-15…にしては、弾丸が繊細かつ正確な着弾だ。

 

「誰なんだ…?何が目的なんだ…?」

 

とはいえ助かっているのは事実。

助からないという選択肢を取らなくていいのならこの銃弾の力も借りよう。

 

「お仲間がいましたか。ですが、無駄無駄。貴女もその仲間達も粉々に土に巻いてあげましょう────」

 

パラデウスの兵士たちが謎のエネルギー弾が飛んだ方向へと目標を切り替えたお陰で、私は助かった。

 

「────ここに通じる道があったなんてね…ノードに使う爆弾は全部つぎ込んでやったわ」

 

だが、これでは任務が達成できない。

 

「爆弾をまた取りに行けばいい。私たちが生きて帰ることができればまたにももう一度やり直すことができるわ」

「信じられない、私はこんなことを考えたことすらなかった。さっきのエネルギー弾はお前が?」

「…?エネルギー弾?なんのこと言ってるの?これは、単に運が良かっただけ」

 

おそらく、私が任務達成のために思考をしていたから、その考えを思いつかなかったわけだろう…だが、それでも彼女がやった事は…

 

「昔のお前は、そんな事を言うタイプではなかったと思ったが…そうではなかったらしい」

「それだけ、追い詰められたのよ。それとも、馬鹿にしている?」

「お前は私をそう思ったんだな?」

「さぁね、取り敢えず出口はこっちよ」

 

薄暗いトンネルの先に光が見えた。

 

────視点:M4

 

M4とAK-12はあの金髪の戦術人形の言葉を不審に思いながらも、指示された経路を利用して防衛戦を素早く突破することができた。

 

────クリア

────急げ!A-545。外壁出口は?

 

「あの金髪は…!」

 

隔離壁の制御室前にたどり着く前に下のほうの通路と言うには少し広すぎる広間のような場所で先ほど出会った、金髪の戦術人形と数名の未知の装備をした兵士たちが反乱軍を蹴散らしていた。

 

────この階段下です

────よし!いくぞ!!

 

「お仲間がいたの…何が目的かしら、彼ら武装は恐らく、SIG MCXの亜種タイプ?初めて見る迷彩してるわね」

 

「迷彩なんて気にしちゃダメ。今は任務に集中して」

 

アンジェの予想が正しかったら、この街の住民が危険にさらされることになる

 

────これさえ、あれば!!

 

「────…っ!」

 

あの時のことを思い出すあれは私が選んだ選択だっただが…あれが誰の指示で動いたものではなく、私が短慮故に選んだ行為でもある。

 

「いよいよ、ご対面よ。準備はいい?」

 

AK-12は最後まであの爆弾に否定的だった、私は彼女に信頼されているんだろうか?…わからないきっと…憎いのかもしれない。

 

「もう!ロックされてる」

「どいて、私がこじ開けるわ」

 

彼女の行動に全く迷いがない。

ただ迅速に素早く終わらせて、確実に完了させると言う強い意志を感じる。おそらくその原動力は指揮官と一緒に暮らしていた時間、体験、そして後悔…

 

「構えて」

 

電子ロックが解除されて、扉が開く。

そこには制御システムを操作する、1人の軍人の姿があった。

 

「そこの人。手を止めて、何をしているか説明して」

 

軍人はM4の警告を無視して、システムを弄り回す。

私は軍人に銃口を向けて、さらに強く警告した。

 

「死にたくなかったら────」

 

突然、銃声が鳴った。撃ったのは、AK-12だった。

彼を殺すのに全く迷いが無く、警告も伝え終わるよりも早く、呆気なく彼女はこの軍人に発砲した。

まだ、何をしているか全く私たちは知らなというのに。

AK-12は倒れた軍人に近づき頭に2発撃ち込んでトドメを刺した。

 

「……」

「アンタ────」

 

彼女の表情は限りなく、無表情な人形のそれでは無く、怒り狂っている眼差しだった。

眼差しと言うのも彼女は瞼を開き、光をぎらつかせ睨んでいた。

睨んでいた、対象には私も含まれている感じもした。

 

「何やってるのよ!?」

 

もし、彼がE.L.I.Dを止めるためにゲートを閉めていたら私達は急いでその尻拭いをしないとならない。

M4が急いでコンソールを確認するとどうやらこの男は全部のゲートを開こうとしていたらしい。

 

「────何か言いたいことは?」

 

AK-12は質問はしてきたが有無を言わさないと言う雰囲気だ。

私がどんな発言をしても彼女は否定する、そんな気がした。

 

────躊躇ったわね、M4

 

またこの声だ。

私の思考を読んでいるなら、頭の中の女は明確に私を煽っている。

 

────あなたのせいでこの街が壊滅するところだった。まぁ、あなたには人が死ぬ事なんて慣れっこで慎重に動きたいだけだったんだろうけど。

 

「(だからって、確認もなしに動けっての!?他に方法がなかったの?どうして、誰もからもが死なないといけないの!?)」

 

────甘いのね、何事もそう簡単に結果を得られるわけではないの。遅いやつ、無能なのは切り捨てなさい。生き残れのは勝者だけ、あなたがAK-12だったら同じように撃った。……そうでしょう?

 

お前は私の中で引きこもって気楽に指示を出して、結果が出ない事を非難しているだけでしょ?

自分で手を下さない、奴が他人を否定するのは気持ちいいわよね?だって自分の手は汚れはしない、それでいてその様を映像で見ている様批評家の様にあーだ、こーだを語れるのはさぞ気持ちがいいでしょう?

 

────あなたは正しい行いをしなければならない。そうしないとゴールには辿り着けない、

 

私の望むゴールではない事を忘れていないかしら?

その時、M4の肩をAK-12が叩いた。

 

「まさか、また自分の人格とお喋り?さっきまでの緊張感はどこに行ったのやら?」

 

AK-12が無線を渡してきた、無線から声が聞こえてくる。

 

────制御室の方は失敗だ。

────マズイぞ!見た事もない奴らが外に出て感染者を殺しまくってる!!…まて、あれは時限爆弾を解除しているのか!?

────最後の手段を使うぞ。あいつらが止めるよりも早く

 

「やっぱりね」

 

AK-12は制御室を出ていた。

 

<二手に別れましょう、私は近い方。あなたは遠い方、座標を送ったわ、回線もね>

 

「分かった」

 

私も制御室を飛び出して、壁が見下ろせる外に出た。

 

<制御室を止めたやつ、誰でもいいが、お前たちの努力は徒労に終わった!!>

<失敗に終わったのはそっちよ。投降しなさい、今なら苦しまずに殺してやるわ>

 

AK-12が無線の男と会話していた。

 

<失敗?はははははは!!!だから、お前達は本当に間抜けなんだよ!!壁を高くする事にしか頭がいかない奴らいつも目の前の問題が取り敢えずの方法で解決したら安堵しやがる!!────特別に教えてやる!お前らがアホやっている間に壁の柱全てにそれが倒壊するほどの爆弾をつけてやったのよ!!あとは俺様が持つ爆弾を起爆スイッチで押せばクソの山はぶっ倒れるのさ!!>

<どうしてこんな事を…!!あなた達の家でしょ!?住んでいたところでしょう!?守るべきと思ったから軍人になったんでしょ?!>

<ああ!その通りだ!そして街はもっと広かった!!だが、壁が壊された時の内部は民間人を助けようとしないでそれよりも裕福な奴らを選んだ!!あいつらは平等や自由なんて自分たちの命と比べたら軽いと思ってやがる!そいつらが民間人ダァ!?くくく…あいつら民間人じゃねぇ!!犠牲になった事を平然と忘れて、幸せそうな顔でのうのうと生きている奴らじゃねぇか!?ふざけんな!!外にいる奴らが!!血と汗と上に喘いでいる奴らこそが俺たちの守るべき民間人だろうがぁ!!どうして、俺達がその民間人を守れないで中にいるウジ虫ども守らなきゃならないんだ!?あ!?犠牲になった連中も精々してるだろうよ!!>

<────ふざけるな…>

<あ?>

<ふざけるなって、言ったのよ!!じゃあ、ここで必死に守っている人はみんなクソだと言いたいの!?ふざけないでよ!!みんなおんなじ気持ちよ!!本当は忘れちゃいけない、忘れたくないとは思っているけど、その責任を負える力がないからみんな現状に逃げるしかない、それでも未来ができるかもしれないとここで守っている人はそう思っているの!!犠牲になった人が清々する?馬鹿な事をいうな!!アンタ達こそ現状に絶望して…狂って!!死んだ人間と今苦しんでいる人間の状況を盾にして、鬱憤を晴らそうとしているクソ野郎よ!!イカれ外道!!>

 

AK-12の言葉にハッとした、この男と私、何が違うのだろう?

私は私の突発的な行動で地獄を作った、彼らも彼らの突発的な、死なば諸共な感情で地獄を作り出そうとしている、彼と私は何が違う?

私は彼を否定する資格なんてあるのか?と私は思ったが、彼女はもう決めたのだ。何が何でも戦えない人を守るために戦うと。

 

<そうやって手前らがクソの山奥から目を背けたのがこれだ!!お前らの様に首輪をつけられた奴らに言われる筋合いなんてどこにある!?俺たちの命を賭ける覚悟をわかってたまるかああああ!!!!俺たちの咆哮をここで焼き付けろおおおおおおおお!!!>

 

巨大な、爆発音が次々に鳴り響く中、浄化塔が崩れ落ちていく。

ベオグラードを護る巨大な壁は徐々にその地に横たえた。

 

<最悪だ…私はまた…繰り返した>

「そんな…!!」

 

浄化塔を守る壁が、戦略級の爆弾によって流れる様に崩されていく。

地獄の扉が開いてしまう。

 

────終わりね。

「────いや……まだだ!!」

 

M4A1は頭の中の声を迷いなく否定した。

既にあることを閃いており、手に持っていたガンケースを構えていた。

 

一方その頃────

 

「爆弾解除!残り1つ!!」

 

A-545が爆弾を解除した…と同時に激しい爆発がこだました。

近くの浄化塔の壁が崩れ落ちてゆく、崩れ落ち壁の合間から感染者達がぞろぞろとながれだす。

 

「そんな…そんな!やっとここまで来れたのに!!そんな!!」

 

A-545が崩れた壁に走り出そうとしたのを見て、アリアがその肩を掴んだ。

 

『ここは…撤退するしかない』

「でも!!感染者が!!」

『だめよ』

 

アリアはヘルメットのクリア状のバイザー越しを展開していた。

感染が広がることをすでに予想していた。

毅然とした態度で被りを振る。だが、声は今彼女自身が持っている感情を押し殺している様なトーンだった。

 

『ほらあれ!』

 

アリアが指さした先に何発かの巨大なエネルギーが

浄化塔の上に積み上げられていた無数の資材に着弾、次々と転がり落ちていく。

転がり落ちる資材は今にも崩れ落ちそうな浄化塔の下に次々と雪崩れ込み、崩れ落ちていく浄化塔の支えて……その崩落をゆっくりとしたものに変えた。

 

「やった!!嘘!?」

『誰だが知らんけど、優秀な奴がベオグラードにいたらしいわね』

 

アリアは軽口を叩いていたが、内心では予想にはない展開多少困惑していた。

今まで、あの方の予想が全て当たったわけではないが、それでもその予想通りにならない展開にしたのは予想の中身を知ってそれに全力に抗った者たちだ。

今回、その予想を聞かされた者の中にあそこから砲撃する様な奴はいなかったはず。

 

『……長丁場になるわ。ファイアーホーク隊は一度、退却して聖堂のある教会まで撤退します』

 

そこは我々の物資集積場所であり、生存者をそこに集めて臨時の避難場所としても運用できるようにされている。

 

『次の目標は各員がエレメントを組みながら生存者を回収しつつ教会へ目指します!』

 

アリア率いる部隊は、予定通り退路にE.L.I.Dを倒しつつ、確保された退路を駆使して、浄化塔に戻りそこから、脱出を図るのだった。

 

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