たったひとつの願い   作:Jget

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E.L.I.D覚醒態

────基本的にE.L.I.Dはコーラップス粒子に感染し変異した場合、体表のケイ素が鎧のように変異、耐久力が格段に飛躍、最終的に崩壊液を纏った化け物に変化する。

 

あらゆる事には例外が存在する…それはE.L.I.Dにも同じことが言えるかもしれない。通常のE.L.I.Dよりも飛躍した能力を持つ、存在が…覚醒した、E.L.I.Dが…

 

ヴァオオオオオオオオオッッンンンンン!!!!!

 

突然、全身の毛がよだつ咆哮が街を覆い、壁の反対側から気持ち悪い光が灯る。

周りが明るくなったと思ったらその壁がドロドロと溶けて、呆気なく誘拐して壁の一部分が土に溶けた。

 

そして、その溶かされた壁を乗り越えて、"ソイツ"は現れた…

 

────30分前

 

視点:M82A1

 

感染者の被害に遭った、民間人のグループがビルの中に隠れていた。

ベオグラードの兵士達が言った、建物の外に出るなという言いつけを守っているのだろう。

 

「…どうする、避難所に行くか?」

「外は感染者だらけよ?ここで待ちましょうよ」

「だが、この建物だって、ガラス張りを超えられたら奴らから、身を守る術がないんだ!ここより、防衛軍の近くで守ってもらった方が────」

「────その行為に、意味はありませんよ」

 

カツカツと音を立てて、建物のドアを開けたM82A1がゆったりとした、落ち着きのある声で話す。

 

「軍が屋内にいない人は生存者と判定していません。無論、人形も…です。といっても、屋内も危険ですが…」

 

感染の侵行が進んだB型がバリケードを壊している、光景を指差す。

あそこに隠れていたら、間違いなくここにいる民間人の命はない。

 

「じゃあ、どうすれば?」

「避難場所があります。そこまで、送ります。私も用事があるので」

 

────

 

「上手くいったんですね。じゃあ、行きましょう」

 

外にはG36とZB-26が待っていてくれた。

Ots-14は事態を重く見て、一度フォトン指揮官を連れて教会で体制を整えることにした。

私とG36が前に、ZB-26が後ろを守る…という形で、計8人で混乱している街に繰り出した、避難所の教会まで4キロある。一瞬の油断が感染者にやられる、隙となる筈だ。

 

「ヒッ…」

「静かに────」

 

感染者を見つけた少年が…私が助けた少年が声を上げかけたので、人差し指を当てるジェスチャーをした。

 

指さした先にターレットがある。

ターレットはE.L.I.Dを発見すると7.62ミリを発射してE.L.I.Dを駆除した。

次にターレットは私達にレーザーを向けたが、発砲はせず……ほかのE.L.I.Dを探した。

 

「(あのドローン……確か、ユーリ指揮官が訓練で使っているドローンと同じ?)」

 

運がいいのか、それともあらかじめ配慮してくれていたのか、どちらにしてもすぐ気づいていない…数も少ないし、通り抜けられる筈だ。

 

「…音を立てるなよ」

 

生存者の1人がそう言った、音を立てなければ感染者に気づかれる可能性は大きく減少する、見つからない様にするのが肝心…慎重に進み、E.L.I.D達から距離を取れた…一息つけそうだ、そんな瞬間…

 

「────戦闘ヘリ!!」

「きっと、本国からの増援ね」

 

成る程、いい判断だ。相手の手が届かないところから一方的に砲撃で倒すのだろう。

 

ミサイルと30mm機関砲の一斉発射があの、化け物に向かって放たれる。30mmは分からないが…対地ミサイルなら────

 

ヴァオオオオオオオオオッッンンンンン!!!!!

 

なんて、考えていたのに…そんな、考えすらE.L.I.D達には許してもらえないらしい。

あの、化け物はミサイルを見ると大きく吠えて、背中についた腕の様な物を光らせた…すると、口の中が光って────

 

光っていた物が、吐き出され…凄まじい明るさの光線になって、ミサイルは勿論、腕の範囲外に上空に飛んでいた、6機ほどの戦闘ヘリを全て消し去った。

 

次の瞬間────その光に押し潰されそうに感じる衝撃波が私達を襲った、光の余波は建造物にも当たり、当たった建造物は緑色に変色して、溶けていく…

 

「キャア!!」

「何かに…つ、捕まれ!!」

 

其処から、また拡散された光が降ってきた!すぐ近くの少年に嫌な予感がした私は大被さるように光から少年を守った…

 

「────今のは…?大丈夫ですか?」

「は、はい…平気です」

 

目立った変化もないし…大丈夫だろう…しかし、安心した束の間────

 

「アッ…ガガ…ダ…ダダダダッ…」

 

光を浴びた、生存者の1人が声にならない、悲鳴を上げていた、身体が音を立てて硬直している…感染してしまったのか…

 

「ダダダダッ…」

 

多分、"助けて"言いたいのだろう…だが、助けられる術が無いことはこの世界の誰もが知っている事だ、でも────

 

「────ぐるおオオ!!」

 

あの爆発音でE.L.I.D達が活発になっている…ここに留まるのは危険だ…

 

「────ごめんなさい」

 

せめて、一撃で殺してあげる事で、これ以上の痛みを与えずに済ませてあげられるのなら…私は、撃つしかなかった。

 

サイドアームのハンドガンP226の9×19mmパラベラム弾によって、先ほどまで感染していた、男性の頭を貫き…何も言わなくなった。

 

「大丈夫ですか?」

「…ええ」

 

G36が私を心配してくれた。殺すしか、救うことができない…なんて、口惜しいのだろうか。

 

ヴァオオオオオオオオオッッンンンンン!!!!!

 

「急ぎましょう」

 

また、この咆哮だ…まるで地獄の獣の叫び声みたいに恐ろしい。

 

────視点:M4SOPMODⅡ

 

その頃、私たちはあの怖気が走る鳴き声が壁を破壊して、現れた感染者達の進行を少しでも遅らせるべくフェンスをシールドで塞いだり近づいてくる前に撃ち殺してとにかく市民が一人でも多く逃げられる為の時間稼ぎをした。

…厳しかったが、どうにかやってくる今までやってきた感染者は全て倒せている。

 

「全員集合!」

 

私の合図で部下達が集まる。

これから指揮官達をどうにかして連れ出さないとならない。

 

「…SOPⅡ?」

「Ots-14?あ、フォトン指揮官も!」

 

フェンスの向こう側から直属部隊の人形達がやってきた。

ACRはフェンスの一部をどけて彼女たちを入れるとフォトンも一緒にいるのが分かった。

 

「そっちの様子はどう?」

「ひどいものよ。指揮官と移動する道中何人もやられた、アンタたちのターレットが無かったら今頃あの世行きよ」

 

浄化塔に近いあの位置では危険か。

ただ、Ots-14は気になることを話した。

 

「タレット?」

 

SOPⅡはそんなもの置いた覚えはない、他の人形たちも同じだ。

元の予定通り、指揮官達と決めていた教会の方に向かっていたら偶然鉢合わせか…

 

「…じゃあ、防衛軍かしら?まあいいわ。SOPⅡさっきのアレ、みた?」

「見たよ」

 

あの咆哮と共に放たれた、ビームは浄化塔の壁を溶かしてしまった、E.L.I.Dをより、重視した壁を易々と、その上、E.L.I.Dに向かって攻撃していた、上空を飛んでいた攻撃ヘリも数秒しないで、瞬殺された。

 

「もし、あれと戦う事になって…私達、勝てると思う?」

 

勝てるか?────いや、

 

「無理だよ、あっという間に殺されるね」

「だよなぁ…」

「ええ、ウチの指揮官も同じ考えよ。重装部隊があっても火力が足りないでしょうね。ジェット機が来るまで民間人を上手くE.L.I.Dから隠して大人しくすることにしたわ」

「うん、それがいいよ────」

 

ヴァオオオオオオオオオッッンンンンン!!!!!

 

「な、何だ!?」

 

また恐ろしい咆哮が街を揺らした、あのヘリを瞬殺したE.L.I.Dの背中から今度は勢いよく、赤い光が放出され、降り注いだ。

 

「────何?この光?あれ、当たった?」

「…おっ、おい…」

 

「大丈夫…何も感じ────アッ…!!あぁああアアアアア!!!!」

 

赤い光に人形の1人が触れた、1秒ほどは特に以上は感じなかったが…その次の瞬間、いきなり、赤い光に触れた人形が苦悶の表情を浮かべて、道路に倒れると必死にのたうち回る。

 

「グググッ…グルッ…苦ジッ…だ、誰ガッ…ダレガァアアアアアア!!」

 

何が起きたか、分からず人形達は混乱した。

フォトンは彼女をどうにかしようと近づいたが…

 

「何か…マズイよ…下手に触らない方が…」

 

MP7に止められた…多分、コレが感染るかもしれない…という事だろう。

 

「アッ…アッ…アアアアアアアアア!!!」

 

断末魔の絶叫を上げて、彼女は突然、糸が切れた様に倒れ込んだ。

表情には涙を流して、あちこちから液体が漏れている。

 

「…どういう事なの?バイタルは?」

「ロスト…死んだよ」

 

傘ウィルスか?いや、傘ウィルスなら死ぬんじゃなく鉄血の信号になるだけの筈…

 

「クソ…なんなんだコレは?」

「ユーリなら知っているのかもしれない。聞いてみろ」

「そのまま、報告しよう…指揮官?聞こえますか?指揮官?」

<────>

 

ダメだ、送信すら出来ない…他の人形はどうだろう?そう思ってROの方を向いたら。

 

「アー…ッ、」

 

さっき死んだやつが、ROの真後ろにいた

 

「後ろだッ!」

「アー…ッ…」

 

 

ROを狙っていた、そいつはROの首筋を喰らおうとした…ことにフォトンが気がついた。それを防ぐために、グロック19を抜いて、死んだやつの頭に撃ち込む。

 

「────…」

「────!?」

 

何も言わないまま、死んでいたはずの、人形はもう一度死んだ。後ろを見て、状況が分かった、ROは再度死んだ人形から慌てて離れた。

 

「何よ…何なのよ…死んだやつが生き返るなんて、戦術人形なのにまるで…まるでE.L.I.Dじゃ無い!!」

 

そうだ、まるでE.L.I.Dみたいに、生き返って、ROに襲いかかった。

 

「あの赤い光に触れたら…ああなるという事なんでしょうか?」

「多分そうじゃ無いかな?AUG?」

 

「まだ、確証は持てませんが…取り敢えず、赤い光に直接は触れない様にしましょう」

 

「あと、あの馬鹿でかい咆哮を聞いたら、警戒しないと────」

 

ヴァオオオオオオオオオッッンンンンン!!!!!

 

「隠れろ!!」

「物陰に!!さぁ、行って行って!!」

 

また、あの赤い光があの怪物から放たれた…そして、また…収まる

 

「全員大丈夫!?あの光に当たってない!?」

「私は大丈夫だ!!」

「私も!多分当たってないし、何にも起きてない!」

「よし…今度は誰も、光に当たらずに済んだ次からは、あの声が聞こえたら隠れよ────」

 

死体から、不気味な音が聞こえる、関節が外れたり、骨折した音…体軋んだにそっくりだ…そして、その音がだんだん近づいてきて…その正体がわかってきた。

 

「────ふざけるな…ふざけるな…!」

「────悪夢ね…」

「────あの化け物…こんな事も…できるの!?」

 

その音の主は、指揮官と通信が取れなくなる前に…30ミリ徹甲弾や爆弾、襲撃で死んだはずの戦術人形達だった。

 

「アー…ッ」

「うぉ…お…おぉ…」

「ぐぁあ…あーあぁ…」

 

私達の死んだ筈の仲間ですら…蘇って私達に無理やり、身体を動かして、痛々しい姿で私達に、私達に襲いかかってきたのだ。

 

────30分後

 

「このままじゃ、街をあの化け物に奪われるわね…」

 

感染者とあの化け物によって、暴走した人形達と戦闘をなるべく弾の無駄にならないよう避けながら、兎に角、今後の方針を決める為にも、指揮官の所に辿り着きたいところだが…侵攻の速度が早い上に、時折パラデウスが感染者をこちらに誘導してさえ来るので、前に進もうにも時間を食ってしまっていた。

 

「グレネードいくよ!!」

 

FN-ELGMで感染者の群れを強引に突破して、包囲を切り抜けた。だが、代償も大きくグレネード弾を4つも使用してしまった。

 

「弾薬を節約したいのに!!────あぁ、もう!!感染者が歩いたり、走り回るせいで全然当たんない!!」

 

ROがセミオートで2発、外した後に3発目で感染者を転ばせて、動きを止まった所で頭に数発当てて、とどめを刺した。

 

E.L.I.Dの動きが、秩序蘭流以上に不規則だ。

今いる人形達でも、当たることは出来てもくたばらせる事は、秩序蘭流を生き延びた猛者であっても至難の技だった。

 

「どうにかして、教会に続く道を切り開かないと…」

「待て、Kから通信が来たぞ」

<グリフィンの実力はこんな物か?>

 

指揮官と通信が繋がったと思ったら、Kだった。

どうやら、あの化け物の光から遠ざかるにつれて、無線が拾いやすくなったらしい。拾った声がKなのは全然嬉しい思いもしないが。

 

「コイツは文句しか言えないんですか!?」

 

いつも、丁寧で礼節がある、DP-12が口汚く罵る。

私達がKにムカついているのはいうまでも無いだろうがここで言わせてもらいたい、そもそもコイツは白い勢力を野放しにしておいて、ザブプランが無いことを考えていなかったのだろうか!?

 

「私たちも現場でできることを最大限してるよ!」

<最大だと?!なら、最大以上のことをやれ!>

 

まぁ、確かにここまでおおそれたことをされるのは、Kや保安局達には予想もつかなかったのだろう、その上まだ裏切り者の存在も掴めていない…何もかもが後手…そんなやつに偉そうに振る舞われた挙句、今度は文句と催促だ。

 

「────K、マジで死ねよ」

 

おっと、本音が漏れた。

 

<お前達の存在は取るに足らない。だが、VIPにもしものことがあれば、グリフィンそのものが消えて無くなるだろう>

「自分の不安をこっちに押し付けんな!!もし、グリフィンが本当にお前達に潰されたら、アンタの脳をかち割ってハンバーガーを作ってやる!!西側が大好きでお前達の盲信する東側の共産主義や社会主義サマが大嫌いなあのハンバーガー様だよ!!わかったか!!」

 

Kが暫く、返事をよこさなくなった…まぁ、言いたいことも言えてスッキリした。

 

「それにしても…」

「何?」

 

ハニーバジャーが火の手が上がっている浄化塔を一瞬眺めた。

 

「どうして、会合にこういう弱い街を選んだんでしょうね…」

「そりゃあ、きっと不満や拒否を起こしたくても、逆らえないほど弱いからだ。たとえ失敗しても出来るのは抗議だけ、反抗なんてするなら国ごと吹っ飛ばせばいい。会合をする奴らもKと同じ様な連中なんだろうな」

 

フォトンの発言は悲しいくらい説得力があった。

 

結果的にこの街全体が不幸になって、この街が弱いことで選んだ側にそのリスクの返しがやってきた挙句、そのリスクを私達におっかぶせると来た…確かに共産主義や社会主義にロクな考えを持つ奴は居ない。

 

「どうして、そんな話を?」

「この街の人達が…どうも、何も…可哀想で、フォトン指揮官はわかるんですか?」

「……まぁ、俺も似た様な所の生まれだったからよ」

 

そうだ、今一番大変なのはいま襲われているベオグラードの人達だ。

 

<────こちら、"ラプター"現在、一方通信で話している。VIPを連れて外に出た、これから、教会に向かう。全ての戦術人形は、議事堂ではなく…教会に行け…教会はベオグラード大教会…>

 

やっとユーリと通信が繋がった。ただ、一方通信だから折り返すことはできない。

ラプターは指揮官のTACネーム、一方通信か…避難という事はVIPも生きている可能性がある。

SOPⅡは部隊の仲間を見ると、自分の考えを見えすいた様に頷いた。

 

「フォトン指揮官達とROは先に教会に行って」

「私達A部隊で食い止める!先にベオグラード大教会行って!」

「SOPⅡ達はどうするつもりだ?」

「生存者を探す。それに、もしかしたら、前の様に突然パラデウスが出るかもしれないし、その時に備えるよ」

「わかったわ────捕まるんじゃないわよ」

「────それは、言っちゃいけないお約束!!」

 

────視点:ユーリ

 

4年前…

アメリカポートフラッグ基地

 

「君たちは既に、E.L.I.Dとの実践経験を積んだ、実力ある部隊だと報告を受けている為、D型までの説明は省略する。…だが、ひとつだけ知ってもらいたい個体がいる。…それが、E.L.I.D覚醒態だ。コイツはD型よりも強力な種類と考えられていて、強さもその一線を画す」

 

覚醒態…今までは、冗談半分にしか聞いていなかった、その眉唾物の化け物がベオグラードに絶望を振りまいている。

 

「う、うぅ…」

 

背中に背負っていた、ウルリッヒ氏が目を覚ましたらしい。

 

「────大丈夫ですか?…私の声が、聞こえますか?」

「はい…あの、ロシチン大使は?」

「────えと」

「死にました、呆気なく。30ミリで撃たれましたからね、引き裂かれた胴体があなたの頭にぶつかって気絶したんですよ」

 

カリーナがどう伝えれば良いか、分からないと思って、ユーリが代わりに事実を伝えた。

 

「そうですか…」

 

ウルリッヒ氏はやっぱり、気丈な人だった。

 

「ウルリッヒ氏、私達が貴女を守ります…見慣れないボディーガードは気がお鎮まらないでしょうが、ご容赦を」

 

真実で言うべきだと言う私の考えは正しかった。

 

「貴方のお名前は…えーっと…」

「ユーリです。ユーリ・フレーヴェン、金髪の子がカリーナ、水色の子がクルカイです」

 

まぁ確かに、あの場に幾らでもいた、新聞記者の格好した人なんて名前を覚えているわけがあるまい…というか、名前を知る機会はないだろう。

 

「ユーリですね。では、ユーリ次の一手は?」

 

もう自分がここにある状況わかっているらしい。

なるほど…確かにウルリッヒ氏は技量も確かにあるようだ。

 

「ここから、3キロ先のベオグラード大教会に避難します。有事の際の避難先の1つですしね…我々の物資集積場にもなります。食料も集積させてあるので、立て篭もるのにも問題はないかと…」

「分かりました。後、私の事は心配なさらないで、こういう状況は慣れています」

「左様ですか。承りました」

 

だとしたら初めから、犠牲となる覚悟で来たと言うことか…ますます彼女がロクサットの側に付いているのが惜しい。

 

「────RO聞こえていたら…だめか、やっぱり通じないな」

 

────ELID覚醒態がいた。いずれの戦場にも大規模な通信障害と放射性が観測されている…この"覚醒態"がいる、戦闘区域では、放射線による通信妨害もオートで行うと言う可能性がある、と言う事だ。

 

情報から逆算して、通信のだいぶ離れたが…ROの方が離れられていないのか?

 

<────し…か…、繋…け…ノ…が酷>

「繋がった…なら、もう少しか…」

 

だが、強めの受信機を前もって設置しておいたことが幸いらしい。

微弱ながら無線の電波を受け取れた。

さっきまで全く繋がらなかったが、少しずつ声が拾えてきた…どうやら、同じことを考えてくれたらしい。

 

「…このルートがKが事前に用意したもの…ですが」

 

確かに、裏路地じゃあ…感染者に容易く囲まれてしまう。

そもそも、感染者を念頭に入れたルートでは、ないだろうな。

 

「しょうがない。予備ルートと予備プランを使うか。公園とか上下で移動しやすい所を中心に移動だ」

 

────ベオグラード大公園

 

「────オオオッ!!」

「感染者…」

 

ベオグラード大公園にも、まばらに腐肉喰らいか屯している。遠回りして動いても、その事に気を取られて他の隠れていた奴に食われたり、いつのまにか端の方に動いてしまい、隠れてしまう奴を知っている。

 

「よし…前進します」

 

公園にいた数体のELIDをMCX"Rattler".300BLKを使用し近距離での射撃は、腿に当たった感染者を衝撃で殺傷するには十分な威力だった。サイレンサー前提の.300BLK弾の為、音も響かなかった。

数が疎らなら、下手に大回りするよりも弾薬を使用して数を減らしてより広い、通路の道を動いた方がサイレンサー付きの武器を持っている時点なら、生存率が上がりやすい。

 

「弾はどうだ?正直に答えてくれていい」

「正直厳しいですね」

 

正直、HK416は今回の作戦をスピード重視になると思っていたため、弾薬を少なめにしていた。

そのうえ、あの走り回る狂暴化したE.L.I.D。あれの対処に多くの弾薬を使った。だから、いつもはまだ余裕もあったが今は厳しい状態に置かれている。

 

「了解、じゃあ補給しよう」

「え?」

 

今、目の前にいる指揮官は「ちょっと飲み物買ってく?」という軽いノリで補給の話をしてきた。

 

「補給ってどこから?」

「ここからさ」

 

ユーリはすぐ近くのコインロッカーを叩いた。

そして、数枚の効果を入れて暗証番号を入力……すると、中に弾薬の詰まった大量のマガジンといくつかの武器が保管されていた。

 

「……嘘でしょ?」

「どれでも持って行け」

 

まるでランプの魔人を見ているようだ。

HK416は困惑しながらも自分の足りないと思っていた弾薬などの物資を補給した。

 

「カリーナも、何か欲しいものがあるなら今のうちだ」

「あ、はい……じゃあ、これで……」

 

カリーナも困惑しながら、ロッカーの中にあるCMMG MK47を取り出した。

 

「あとこれだ」

 

ユーリはロッカーの中に保管されているスイッチを見つけると、用を済ませたロッカーを再び同じ暗証番号でロックした。

 

「お待たせしました、行きましょう、代表」

「いえ、しかし随分と入念な方だったんですね。あまり、動じていないのがわかった気がします」

「ええ、保安局だけでは不安でしたので自前で用意させてもらいました」

 

ユーリはスイッチを押すと建物の上に載せられていたダンボールから大きめの通信機器が現れた。

 

「アップリンク確率…よし、ターレットの機動確認。通信はどうだ?まずは一方通信をしてみるか。────こちら、"ラプター"現在、一方通信で話している。VIPを連れて外に出た、これから教会に向かう。全ての戦術人形は、議事堂ではなく教会に行け、対象の教会はベオグラード大教会」

 

あらかた話すべきことを言い終えると、ユーリはうなづいた。

次の行先は教会だ。

教会に向かう道中ベオグラード大公園の駐車場で、数台の車が置き去りにされていたのを見つけた。

 

「指揮官様…あの車は?」

「ティーグルか…軍が置いていった物だろうな…使わせてもらおう」

 

ティーグルにたどり着くと、車にもたれ掛かっている人形を見つけた、ハーヴェル氏が送りつけた、人形の1人か?

 

「臨時で派遣された、人形さんですね?現在の状況とか、分かりますか?」

「…ウゥ」

 

カリーナの質問に対して…様子がおかしい、まるで腐肉喰らいみたいだ。

 

「────ゥオオオオ!!」

 

突然、感染しない筈の人形がカリーナに襲いかかった。

 

「────ヒッ!」

 

凶暴化した人形が伸ばした手は、カリーナを空振りしてその人形は地面にすっ転ぶ。

 

「ウガァ…ガァアぁああ────」

 

立ち上がろうとして、襲いかかった…その時だった。

次の瞬間、銃弾が飛んで凶暴化した、人形の肉を引き裂いた。

 

辺りを見回しても、銃弾が発射される方向を見てもそこにそれらしい人物は見当たらない…と言うわけではなく、僅かに空間が揺らいでるようにも見える、これは光学迷彩だ。

 

陽炎に見えていた、景色が先程まで誰も居なかった筈なのに目の前にA-545と数人の兵士が姿を表す。

 

「ウッ!?ガッ…ガッ」

「離れて!!」

 

兵士の1人がカリーナに離れるように言う、A-545が人形に背中を踏みつけて、動けないようにすると、

 

「悪く思わないでよ…」

「ガッ────」

 

頭を撃ち抜いた。

凶暴化した人形はもう、何もものを言わない。

 

「大丈夫?あなた、カリーナよね?怪我は?」

 

「ど…どうなっているの…、人形は…人形は感染しないはずじゃ」

「コレがあの"覚醒態"の技か?アリア?聞いてないぞ?」

「ええ…でも、マサシューセッツで見た事例と同じ…赤い光を浴びた戦術人形はいきなり、苦しみ出して…機能停止。でも、腐肉喰らいと同じように暴れ回る…いや、厳密に言うと、"覚醒態"の意思のまま…暴れ回る…というのは見たことも、聞いた事がないわ…

「E.L.I.Dも進化しているとでも?」

 

兵士の正体は、アリアだった。それにしても、見た事がない…か、あの化け物は進化しているのか!?

 

「指揮官、浄化塔は……失敗しました」

 

A-545が今回の事で謝罪してきた。

アリアからの報告だと、既にどうにもならない程爆弾が取り付けられていたらしい、寧ろ…一つで済んで奇跡に出来たと。

そもそも、あの"覚醒態"の興味を惹いてしまった時点で後にも先にも結果は同じだったろう。

 

「君が全部悪いわけじゃない。それに…君達が無事な事を今は喜ぼう、この車動かせそうか?」

「キーが挿しっぱなしよ。動かせる」

 

急いでいたのは分かっていたが…何にせよ、コレで車は動かせる事が分かった。

 

「…指揮官?」

「G36も?無事だったのか、よかった」

 

どうやら、自分達が先程までいたベオグラード公園からM82A1とG36、ZB-26…そして、生存者を連れていた。

 

「────そうか、あの赤い光にはそんな効果が…」

 

あの化け物がしたのはハッキングじゃなくて、これはリプログミングだろう、赤い光で素体を動かしているエネルギー類、全てを消滅させたとしたら、人形達が苦しみ出すと言った報告に辻褄が合う。

 

そして、エネルギーがなくなって死んだ人形を、"奴"が作り出した、エネルギーで動かしているのかもしれない。

 

「あの甲高い叫びが聞こえたら、特に用心した方がいいな」

 

ティーグルは生存者達とウルリッヒ主席とカリーナそしてアリア達を乗せて、発進の準備をしていた、後は俺たちだけだ。

 

「そろそろ行こうか」

「はい」

 

何か飛んできて、ティーグルとは別の車に激突した。

激突したのは、なんらかの大きな破片だった。空から落ちてきたのだろうか?

 

激突した衝撃で、車の盗難防止サイレンが鳴り響く…

 

「────オオオ…!!」

「────グァアワアア!!」

 

大きな音が立ち、感染者や凶暴化した戦術人形が集まり出した。しかも、感染者達はあろう事か、音を鳴らした車の近くのティーグルの方に向かっている。

 

「クッ…!」

 

周りの駐車場に駐車してあった、車を撃ち、防犯サイレンを鳴らす。

すると、感染者達はより大きな音に反応して、鳴っている車の方に集まり出した。

 

「生存者を乗せて車を出せ!!先に行くんだ!!」

「了解!」

 

最低でも救うべき存在を載せた、車が駐車場を出た。

 

「俺たちもここから徒歩で逃げるよ!G36、M82A1!!援護頼む!!」

 

「掃討完了です。……弾がもう、ありません」

「大丈夫だ、備えならある」

「またですか」

「ああ」

 

コインロッカーにコインを入れるとさっき見た時と同じ様に大量の弾丸を見つけた。

 

 

────視点:AK-12

 

何もかもが一瞬だった、一瞬で壁から都市に入ろうとする感染者を食い止めようとした、兵士たちを浄化塔の壁ごと箒ではかれるゴミのように、吹き飛ばしてあの化け物が現れた…

あの声を聞いた時、今まで感じた事ない震えが止まらなかった。

あれが悍ましいと思う感情なのだろう。

 

続いて、援護の為に出張ってきた戦闘ヘリが発射したミサイルを口から吐き出した光線で一瞬でなぎ払った。

 

<知らない…私は…あんなの知らない…!>

 

その様子を見ていた、アンジェリアは恐らく…いや、私たちの前では初めて、恐怖で震えて、絶望し…全てを諦める寸前の様に小さい声で呟いていた。

 

「……なに、よ?あれ……?」

 

あの化け物は、私達も見た事がない… 狐の胴体に狼に似た頭、鮮血の様な赤い目、そして9本の蜥蜴の尻尾を持ち、周りから歪な緑色のオーラがあふれていた。

資料のD型の感染者にもある程度、元の面影はあっだが…コイツは違う!そうかもしれない、と限りなく近い連想はできるが…そうか?と聞かれたら、違うと自信を持って答えられる…まるで、未知の生物だ。

あちこち聞こえる銃声に、距離の間隔が広すぎる。あの一撃で街の防衛能力は完全に破綻してしまった。もう、街は感染者の波に飲み込まれている。

 

「クソッ…!頼りのアンジェは恐慌状態…外は未知の化け物…逃げられる唯一の先は地獄ってところかしら?」

 

あの見たこともない、E.L.I.D…アイツだ…!アイツが何もかもメチャクチャにしやがった…!!全部何とかなるはずだったのに!!

 

「────通信も繋がらなくなった…あはは、これは好都合…だって、パパに合わせる顔がなかったもん!!」

 

這い上がってくる、E.L.I.Dの喉を唯一私が持つ西側の装備ベンチメイドのナイフで掻っ切る。

物資を輸送するドローンも、あの怪物が放った光で満足に動かない、通信も殆ど聞こえない…もうどうしろと?AR-15やAN-94が任務を成功しても、外に上がった瞬間ら轢き潰されたカエルになるのが良いところだろう。

 

「は?……な、なんで人形が?」

「ぐるぅうう……!」

「お……おお、お……」

 

その上、今度は赤い光を浴びた戦術人形は途端に動きがおかしくなり、機能した後、凶暴化…いや、暴走する。私のハッキングも受け付けない、ロストデータになっている。

 

「あーあ…最後までできる事がない…いいとこなしね。私は、もう少しM4にパパの話をしてあげたら、よかったわね…人生を振り返る、いい経験になるわ」

 

M4はあの化け物が破壊し、生き残っている、であろうポイントに向かって、1人で助けに行った…あの様子じゃ、完全に復習なんて吹っ切れているわね。

 

「…なーんで、それがクーデター騒ぎの時にできなかったのかねぇ…。どう…M4、意見は通った?」

<…みんな、理由が違えど、誰もその場所から、離れようとしなかった。あんな化け物を見たのに……>

 

生き残った兵士に会えたとしても、その兵士たちは持ち場を離れないでしょうけど…だって、ここを防衛しているという事はここに住んでいるという、何よりも証だ。

 

「見捨てた事実を背負って、助けられなかった事を後ろめたく思わない奴がどこに居るのかしら…ましてや、ここで少しでも"今度は守ってみせる"というチャンスを手放す奴は…居るわけないわ」

<先に行って、もう少しなんとか出来ないか見てくる>

 

もし、私が…グリフィンで…パパの元で働けたら…きっとあの兵士達と同じ状況で同じ選択をするに違いない。

 

<────こちら、"ラプター"現在、一方通信で話している。VIPはベオグラード大教会に到着する。現在、東通りの感染者、及び暴走人形を掃討した。コレで、東通から大教会への道は安全だろう…これから、A部隊の通信を一方通信で傍受した為、合流を試みる…もし、A部隊がこの通信を聞いた場合は────>

 

また、通信がまともになった?

それにこの声はパパ?

まだ、諦めてないの?それに、成果も上げてる…私達より絶望的な場所にいるのに?どうして?

 

────俺たちはヴェルークトだ。守るべきものの為になら、絶対に諦めない。それが俺たちの決めた事だ。

 

「あーっ…そうだった、そうだった!」

 

────お前もヴェルークトに入るのならその覚悟はあるか?

 

パパ…あなたは覚悟なんて、私が生まれた前の…とっくの前から決めてたのよね、そうだった、私は…

 

「あなたになりたかった…あなたみたいな人になりたかった…」

 

だったら…私も"この程度"で諦めちゃいけないわね。

最後まで、しっかり、ふんじばって足掻いてみせないと。

 

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