たったひとつの願い   作:Jget

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それは、まるでネズミのような

3年前……

 

E.L.I.D汚染地帯にて。

 

「ヴェルークト、そろそろ出番だ」

 

足を広げて休んでいたところ、

兵士から自分の愛銃である、AEK-971を投げ渡される。

 

「よし!休憩は終わりだ!ホワイトチームは全員、要救助者を運び出す手伝いをするぞ!」

「隊長。もうホワイトチームで戦闘できるのは、私達を入れて後、6人だけです!残りは負傷が酷くて戦えそうにありません」

 

例の新型のE.L.I.Dにやられた傷は今の医療技術ではカバーしきれないのか……

そう思いながら、部下の報告を聞き今いる部下でどうやりくりするか考える。

 

「ジーロワとヤートフ!8番通路を使ってE.L.I.Dの側面から攻撃しつつ道路を確保しろ!残りはE.L.I.Dを引きつけながら、データと負傷者の搬送をするチームの援護だ!」

 

この遠征には15人の少数チームで臨み、今は6人しか残っていない。

15人しかいないのは、そもそも志願してくれる人間が少ないからだが……

 

「やっ!!」

 

パワードスーツの脚力を活かして弾かれたように塹壕を飛び出す。

AEK-971という、本国でも比較的マイナーなアサルトライフルに取り付けられたコリメーターサイトと呼ばれる光学照準器で、E.L.I.Dに狙いを定める、

 

「オオオォ……」

 

いかにも顔の顔が剥げた気持ち悪い化け物どもがそこら中溢れてやがる……

ノロマでなかったら、落ち着いて銃を構えることはできなかったろう。

 

引き金を引き絞り、発射された5.45ミリの弾薬がE.L.I.Dの頭を引き裂く。

少しずつ、少しずつ敵を近いところから倒していき……なるべく数を減らしていくものの……数がいかんせん多く、徐々に距離を詰められていく。

 

近接戦よりも、さらに近い距離での密集格闘戦をする必要が出た。

先頭のE.L.I.Dとの距離が10メートルを切った。

 

「ダアッ!!」

 

ユーリは弾かれるように飛び出し、敵の顔面を掴み地面に叩きつける。

これによって、掴まれた奴はグシャリ!と音を立て握力で潰れたリンゴの様な見るも無残な姿になった。

 

「グルル……!」

 

続いて、また化け物がこちらに向かって嚙みつこうと飛びかかった。

噛まれる前にその顎を蹴り飛ばして、転がした後AEKの銃撃でとどめを刺した。

 

<こちらは陸軍のバーンズ大尉だ。ホワイトチームの隊長と話をしたい>

 

無線から現在救援者を搬送している部隊の中隊長からの自分に向けた無線が聞こえる。

 

「ホワイトチーム隊長のユーリ・フレーヴェンです、要件は?」

 

化け物どもを片付けながら、無線を取る。

今だけは無線をしながらでも戦いはできる。

 

<化け物どもが迫っている、射撃ドローンをこちらに返してもらいたい>

「大尉。お言葉ですがドローンが無ければ後退は難しく、搬送用のルートが確保する為の戦力が足りません」

 

AEK-971のマガジンを素早く外して、新しいマガジンを刺してコッキングレバーを引く。

 

<上空でガトリングを撃たせている、ファイヤーホーク隊に支援させよう>

「分かりました。了解……今、ドローンの指揮権を返しました。」

<確認した、それではファストロープで降下させる>

 

ヘリの風切り音がしてロープが垂れてくる。

そこから8人余りの兵士が降下してくる。

 

「地上戦はロシア軍の十八番じゃないのかしら?ユーリ?」

「すまないが常に有利に戦えるわけじゃない!しかも、奴らはこの数だぞ、アリア!」

 

一番最初に降下した女兵士がこっちを揶揄う。

しかも、ヘルメットもサングラスなしで……これくらいの余裕が自分にも欲しいものだ、経験の差というものはうらやましい。

 

「OK……私達は道路の連中片付けるから、貴方達は道路の反対側にいる奴らを潰していいかしら?」

「ああ、任せろ」

 

じゃ、お願いねとウインクしてFN SCAR-Hを構えて、アリア達が先行し化け物どもを撃ち抜いていく。

 

「ファイヤーホーク!お仕事よ!」

「ヴェルークト!行動開始!」

 

 

午前6時

 

ようやく、夜襲での混乱が収まり人形や指揮官は現状の被害の確認を始めだした。

思っていたよりも、鉄血による夜襲の効果は大きかったらしく、

泣き言を言う人形もちらほらいる。

 

「あのーM4さん……これ、どうしましょうか?」

「”どうしましょう”……ってね」

 

昨日の深夜付けに銃撃戦のさなかに、ユーリたちの元に送られた戦術人形"JS9"は鉄血によって大破……生物的な表現で死体となっている人形たちを指さして訪ねてきた。

 

「急いで何かしないと腐るんじゃないですか?」

「あなたに言われなくてもわかってるわよ……とりあえず、誰が誰だかわかるように身元が分かるものがないか探しましょう、後人数分の顔を隠せるものがあるといいわね」

 

本人はいたって真面目に働いているつもりなのだろうが、初めての実戦を経験してすぐ後に、人形たちの死骸に無遠慮というか、他人事みたいに語れるのはある意味期待の新人だと、頭を抱えたくなった。

 

「うう……着任早々、こんな仕事をする羽目になるなんて」

 

JS9は涙目になりながら、死体確認を黙々と続けていた。

 

各々の努力のお陰で、ようやく被害の確認が終わった。

 

作戦に参加した

指揮官は8人中、2人が軽傷(悲惨じゃないわけではない)。

人形は60人中6体が大破、18体が負傷、内11体は戦闘可能。

 

奇襲されたとはいえ、一夜でこの結果は悲惨だとユーリは思った。

 

「どうするんです?このまま、作戦を続けたらこれの比じゃない被害になりますよ?」

 

入社して初めて、通信がつながったクルーガーと今回の被害について相談をしていた。

 

「作戦を変えた方がいいと思いますけれど」

<変更はしない。ハンターの排除を優先させる。すでに、お前に人形を一体送ってやっただろう。それと同じように増援を送る>

「倒すまで送り込んで力押し、前と変わってないですね」

<お前は戦術人形というものがどういうものか、よく覚えていないようだな>

 

ヒリついた空気にクルーガーが切り込んだ。

 

<戦術人形にはバックアップがある。このバックアップがある限り、大破し破壊されても復元できる、つまり十分な数の指揮官がいればいい>

「僭越ながら、バックアップの再現性は完全ではないと伺っておりますが……」

<ならば、お前が結果を出して人形の被害を少なくするんだな。我々、グリフィンは不本意だが、結果を出さなくてはいけない状況にある>

 

そういって、クルーガーは一方的に通信を切った。

ようやく人形を送ってもらっても、一体だけでは焼け石に水だ。

 

「どうでした?」

「グリフィンは、このまま作戦を続行するらしい」

「そうですか」

 

思っていたよりも、M4A1の反応は淡白だった。

言い方に語弊があるかもしれないが、思いやりのあるM4A1なら、”ふざけるな”とか、”くたばれ!この野郎!”と抗議すると思っていたけれど。

M4A1はこういうことになれていたのか、あまり驚いていなかった。

 

結局ユーリたちの他にもこの決定が伝わったようで、朝飯を食べてから作戦を続行することになった。

 

「まず……お姉ちゃん、また外れだよお」

「当たりってどんなメニューよ?」

「中国ですと、中華もあるらしいですよ?まあ、私はJS9という中国の銃を使っていますけど、中国に行ったことはないんですけどねー」

「へえ……。中華料理なんて、興味あるよ。噂だけど、中国は横のつながり……ご近所付き合いが大切な国民性らしいね」

 

マズいレーションを食べながらではあるが、どうにかJS9はユーリの指揮下に入ったばかりでAR小隊の人形やユーリとコミュニケーションをとろうとしていた。

 

「そう言えば、M4A1さんは何が好きなんですか?」

「私はピザ。デカくてぶっとくて、チーズの皮を使う奴」

「それはお姉ちゃんの願望でしょ?たまたま配られたピザパンの味に感動して……」

「SOP~?」

「はい、喋りすぎました」

 

ようやく、フォークが進まないレーションを食べ終わった。

この後の話の方が、良くも悪くも集中できるかもしれない。

よく見たら、他の人形たちも意気消沈しながら、ハンターの前線基地に歩きだしていた。

 

「私たちも行きます。指揮官は……そうですね、後方で指示をお願いします」

「なんか、逃げたようで後ろめたいな」

「むしろ、私たちとしては安心できますよ……」

「そういってくれると……」

 

「ユーリ指揮官!お前は部下と一緒にあたらしい前線基地の場所の確保だ!」

「すまない。そうじゃないようだ」

 

どうやら、先輩方が後から追いかけると考えると……自分たちも動かないとならないらしい。

指揮官たちは後方だが、守りを固めようとしているようにも見えない。

……これだけでも、グリフィンの連中は軍事経験がない奴らで不満だ。

もし、まだ私が軍人だったら怒鳴り散らしていた。

でも、こんな体たらくでPMCsは軍隊以上の信頼を持つ企業を名乗れるのだろうか?

 

「そういえば、昨日鉄血の人形を拷問をして情報を得た、とありますが指揮官……どう思いますか?」

「ええ!?拷問ですか!?こ、怖い……!」

「えー?JS9は嫌なの?悲鳴が上がって楽しいよ?」

「私はお断りしたいんですけど……」

「好みかどうかはおいておいて、指揮官から言わせてもらえば……拷問して得た情報はハッキリとしないものが多いからな……大体、正確なものじゃないんだよ」

 

本来拷問というのは情報を吐かせるものではなく、苦痛で虚偽の自白をさせる事にある……情報を抜き取る為にはその為の"褒美"もいるのだ。

只々苦痛を与えるなら、苦痛から逃れる為に適当な発言をして、痛みから逃れる奴もいる。

なら、苦しむことが分かり切っているのなら、苦痛のあまりワザと嘘をついて殺される事を望むなど、正直拷問は"役に立つ"とは思えない……

 

「ほらあ!」

「そんなあ」

 

映画でよくある捕まえた敵を尋問したりモルモットにして、その結果大惨事になるレベルで賭けにもならない無益な事だ、それに個人的に痛めつけるのはあまり好きではない。

 

このころ、ヘリアンから新しい情報が入ったメールが来たので開いた。

指揮官、また新しい情報だ。

S-09地区を遠征したSP721「Hunter」……通称「ハンター」、危険な鉄血人形だと判明した。

その危険性は今回の夜襲でよくわかっただろう。

すぐに捜索を開始し、あとに続く作戦のために備えなければならん。

今、グリフィンの後続部隊には、包囲の準備をさせているところだ。

 

そしてこれより、貴官に重大な任務を言い渡す。

ハンターが占拠する基地の周囲を偵察し、奴らの防御に関するデータを本部に送ってくれ。

 

作戦開始から3時間。

サブマシンガンを使う人形なので一番、人形の中で素早い戦術人形のJS9に偵察を行かせて奇襲以降まったく動きが見えない鉄血が潜んでいないか確認させたのだ。

 

「見てきましたよ」

「どんな感じでした?」

「指揮官の予想通り待ち伏せてました。でも、隠れてないので簡単に見つけられましたよ。構成はこんな感じですね」

 

JS9が送ってくれた鉄血の構成は2個小隊を程の部隊で今二手に分断されているらしい。

全然、拷問で得た情報と違う。

指揮官の言う通りだった。

 

「11時方向に来る連中は後からくるスネーク隊に任せよう。これでいいかい?」

「……問題ありません、SOPⅡは?」

「いつでもいいよ!!」

「これなら、私でもいけそうです!」

 

単純に数が増えたことで、戦いが今までスムーズに進むようになったと思う。

 

「上手く、側面に回れたな……シールドの連中はスネークのライフル隊が支援して倒してくれるから、その後ろにいる奴らを最初に潰そう」

 

そう言って木陰に身を隠しライフルの銃声を合図にこちらも攻撃を開始した。

後ろの部隊を守る為に、盾を側面部隊がいるこちら側に向けて来た……だが、それこそが狙いだ盾が側面に回ることで盾に追従して動いていた鉄血兵の動きは必然的に低下する事になる、

……それ故に

 

「……ガッア」

 

後から来た、ライフル人形による遠距離攻撃だろう。

鉄血の人形がうめき声を上げて倒れた。

この通りライフルの次の攻撃をするための時間を稼げる。

ライフルが守りを徐々に削り、我々が反撃の要を刈り取る、その為には負けないようにするには反撃用の部隊を守るしかない……

だが、それした場合、進行速度が下がるだがその度に、ライフルの時間が稼がれる……悪循環だ、彼らがどうにかするのなら先に我々が側面に移動していた事を先制で知らなければ切り抜けるのは厳しいだろう……

 

「これで最後……?」

「念のため、奴らにトドメを刺しておくぞ、再起動されるかもしれない」

 

倒れて動けない兵士の頭に1人に1発ヘッドショット、マヨネーズに針が刺さったように人工血液が撒き散らかされ返り血が腹にかかる……

 

<目標を達成する為にスネーク隊は移動を開始した、ユーリ指揮官。貴官の方針を聞こう>

「うーん。この兵力の動きからして、前衛側に回す程の戦力が整っているかと思われます……が、相手の動きがそれなりに悪いまだ、ロールアウトされたばかりで学習量が足りていないかと思われます」

 

電子マップにいくつかの座標に印を付ける。

 

「敵の学習量から移動距離を推測して、効率的に排出できるとしたら、この辺りの可能性かと」

 

<ふむ……わかった、他の部隊と連絡が取れたのち、その辺りに攻勢をかける>

 

まだ、可能性を行っただけだが……この、行動力の速さ……焦っているのか?

相当奇襲をされて、腹が立っているのかもしれない。

 

「了解。しかし不安要素も大きい、念のためその地点基地を偵察させて頂きます」

<ふん……手柄がないのが気に食わんか……いいだろう勝手にしろ、貴様のような存在こそ、貧乏くじは相応しい……>

 

手柄……ましてや責任なんて正直なところどうでもよかった、発生しても自分は追わないことは明白だし。

ただ、この辺りで我々を引っ掻き回しているハンターが偶然とはいえ、この様なミスが出来たら、修正する必要が感じたためだ。

 

「了解……さ、移動しようか」

「……はい、指揮官」

「わかった!」

「次もこの調子でいきたいですよね」

 

通信を切り、M4達を見る……不安そうな2人の表情みて、無線をある程度カットしておくべきだと痛感した。

それにしても貧乏くじ……か、確かにM4達AR小隊達をサポートしてくれる団体がばっさり支援を辞め、邪魔者のように扱うという行動を見る限り、彼らにとってAR小隊に存在価値がない、と判断している可能性はあるだろう……AR小隊が再度集まるまでは、な

 

目標の一つの位置の近くの施設に到着した。

 

「随分と杜撰な手口だな」

 

敵の姿はなかったが鉄血の兵士がいたという痕跡は無理矢理電力を得る為にコードを引っ張り出した形跡で分かる。

 

<フッ、本当に現れやがったな、M4A1。>

「この声は……」

「ハンター!鉄血のあいつだ!」

 

無線から知らないこの部隊の声ではないものが紛れ込む……この施設全ての範囲に繋げた、オープンチャンネルだな……

 

<ほう?あの小娘もいるのか?とにかく、大方予想はついているだろうが、AR-15は現在こちらの手中にある>

「このクズが!悪あがきはやめろ!」

「SOPMODⅡ!そんなこと言ったら、鉄血の沸点は低いらしいし殺されちゃいますよお!?」

「SOPⅡ、挑発だ乗らない方がいい」

「そうだぞ?犬っころ。フッ、というより、元からこういう狩りの計画だったのさ。」

 

SOPⅡの単調さ煽るような口調でハンターは楽しそうに語る。

 

「あの奇襲のザマじゃ、どの道グリフィンも当分はここを攻め落とせないだろう。睨み合っていても無意味だ」

 

成る程……先に出来る限りの戦力を減らしたのはグリフィンの士気を下げるつもりあったか……

 

「AR-15を返してほしいか?武器を捨てて投降しろ、M4A1。そうすればAR-15は返してやる……それに、他のグリフィンの人形の犠牲も出さずに済む」

「そうして、手に入れたデータで我々を潰すのだろう?狩人と言う割には随分と単調だな?」

 

ハンターの揺さぶりに対応するM4とは思えなかったがここでネタばらしをしておけば、ハンターは乗ってくるだろう。

 

「うわあ、狡猾……」

「確かに単調では飽きてくるだろうな……ふむ、そうだな。面白くしてやる為に少しばかり声を聞かせてやろう……」

 

<こいつの言うことなんか聞かないで、M4!何もかも私が……>

 

 

一瞬だけ、女の子の声が聞こえた。

M4達はこの声を知っているようだった、この声の持ち主がAR-15……か

 

「AR-15……」

<どうだ?これでこちらの要求をのむ気になったか?グリフィンの助けにも期待しないことだ。我々の司令室まで攻め込めはしないだろうからな?早いところ決断を下せ。グリフィンもそう長くは待ってくれないようだぞ>

 

マップを開くと意味が分かってきた。

 

「あぁ……クソ、後ろの奴らもう近くまで来たのか」

 

データリンクから判別されるレーダーで味方の部隊が近づいているのが分かる、恐らく大規模な討伐隊だろう……もう、始める気だ。

 

<それと、AR小隊の指揮官殿……>

「……?」

<……哀れに思うよ、本当に運がない。こんなグズども世話なんてかわいそうになぁ?>

「……お気遣いどうも」

 

どうやら、鉄血にも哀れに思われる程この状況は不味いらしい……

 

<見つけました!鉄血の生産拠点です!>

<よし、殲滅しろ!!>

 

銃撃戦がいきなり始まって、後ろのグリフィンと前からの鉄血部隊による銃撃にユーリたちは挟まれる形になる。

 

「と、とにかく出ません?」

「ああ、移動しよう、このタイミングでハンターが無線を仕掛けてきたと言うことは何かしらのアクションがこの後起きるはず、どうにかしてでも阻止するぞ!」

「わかった!」

「了解!」

 

攻め込む予定の2つ目の施設がよく見える、高所に移動した。

別経路から侵入しようとも考えていたが、網に入ってしまう事は変わらない……それならばその地点を広く見える場所にしようと思ったのだ。

 

「見えた、アレがグリフィンの部隊だな」

 

双眼鏡を使いグリフィンの部隊が鉄血の兵士と戦闘しているのを確認した。

前衛をサブマシンガンの部隊が後衛でマシンガンの部隊が圧倒的な連射力でなぎ倒していた。

 

「……今の所、優勢……ですが」

「あぁ、奴らまるで敵対してる気がしない、範囲内で近づいたところから攻撃しているように見える」

 

変だな?奴ら、まるでやる気を感じられない……まさか、この施設はそんなに重要ではなかったのだろうか?

 

<全ての人形部隊に次ぐ!!司令部の周りにある箇所から、一斉に鉄血が湧き出た!可能な戦術人形は可能な限り、基地の防衛に当たれ!>

 

……一斉攻撃の隙を突いて、こちらの部隊の進路重ならないように慎重に移動させたな……恐らく練度の低い連中を接敵しやすいように送り込んだのもその為か……

 

「グリフィンの部隊が後退してきます」

「恐らく喉元にまできた連中を狩る為だろう……なに?まだ出てくるのか?」

 

攻撃された基地からまた、アリのようにゾロゾロ鉄血の部隊が湧き出てきた、救援の妨害と挟み撃ちをするつもりだな。

 

「このまま、後退をし続けたら、確実に後ろから追撃されて、司令部の援護の数が足りなくなるな……そうはさせない、やるぞ」

 

その言葉にM4は同意したように頷き、SOPⅡは待ってましたと言わんばかりに銃を構えた。

その後の行動は早かった。

まずSOPⅡが自分の銃の銃身下部に取り付けてあったM203グレネードランチャーを発射、勢いよくボーリングのピンとまではいかないが気持ちよく吹き飛ばされた瞬間に乗じて、シールド兵よりも後方のスナイパーなどを倒す。

さらに近づこうものなら、JS9がサブマシンガンで薙ぎ払う。

 

「攻撃している部隊はすでに下がったようです!」

「よし、それならこちらも退路を確保して次の地点へ急ぐ事にしよう!」

「りょーかい!」

 

敵兵士の連携や当初のプランが崩れた事により、相手の行動に乱れが出るはず……そこをついて一目散に逃げる事が出来れば……後は用意していた、"仕掛け"を使ってこの局面を乗り切り、上手くいけば逆転する事が出来るはずだ……!

 

「よし……奴ら、守りを優先しだした!今のうちに逃げるぞ!!」

「はい、SOPⅡ……!行くわよ!!」

 

鉄血のスナイパーが4割程倒したタイミングでこちらの攻撃に気づき、シールド兵をこちらに差し向けてきた、シールド兵はスピードが遅い、今が好機だろう。

 

「ちぇっ……もっと遊びたかったのに……」

「また楽しめるさ。見せ場はしっかり用意してあるからな」

 

多少、邪魔するだけの行動に派手な戦いを期待していた分不満を持つ事になったSOPⅡだが、ちゃんとこれから先面白くなりそうな事は考えてある。

 

機械のいかにもパーツが動いているという音を立てながら鉄血の兵がグリフィンの司令部に向かっている後、1キロとまで、近づいた……と思えるこのタイミングで……ゴオオと、洗濯機のような音が鳴り響いた。

 

突如、鉄血の兵が通り過ぎた施設で凄まじい電気の衝撃が迸り、その衝撃を受けた鉄血の兵の多くが歯切れが悪くなったように動きがガチガチになりだした。

 

「……すごい範囲だな」

 

遠距離から双眼鏡を長距離に設定して被害を確認していた。

あらかじめ、用意していたEMP発生装置が鉄血の電気システムにダメージを与えたのだ、元々鉄血は電力に頼る所が多い為この一撃は相当なものだったに違いない。

 

防衛網を抜けたグリフィンの部隊にダメージがあるのか、と思ったが幸い範囲を絞っていたのとそれなりにEMP対策を取っていたらしく、動きが悪くなった鉄血兵を快調に倒していった。

 

「よくこんな、モノを持っていましたね」

<あぁ。我々もあのハンター驚かせるものを持っていたのだ。これで鉄血の反撃の芽を潰したに違いない……今こそ、本拠地を……>

 

そこまで、言いかけていきなり山の上の方から鈍い爆発音が聞こえた。

ゴオオオオン!!!!

 

<なんだ!?>

「この揺れは!?」

 

突然爆発が基地近くにあった山で発生し、その威力は遠巻きに見ていたこちらでも判別出来るほど凄まじい威力だった。

 

「ねえ、見て。山の方向……!」

 

SOPⅡが指差した先には……

 

「まずいな……」

「じょ、冗談じゃ……」

 

先程の大規模な爆発で山の一部が剥がれるように大木や岩が土に包まれて転がり強い波が砂浜に来るように押し寄せてきた。

 

……こちらスネーク!!大規模な土砂……ウワァ!!

……逃げるしかない!!

……逃げるってどこへっ!?うわあああ!!木が……!

……こっちに来い!!ここなら土砂が

 

次々と味方から悲鳴が聞こえる、あの大量の爆発は土砂崩れを意図的に起こすためのものだったのか……!!

 

「こっちだ!!早く!!」

 

自分らがいるのは旧市街地だ。マンホールの蓋があるのを見つけ出し、全員で協力して外す、急がなければ我々もあの流れに飲み込まれるのがオチだろう……

 

「やった!!」

「飛び込め!!さぁ、早く!!」

 

なんとかマンホールが外れる、深さなんか気にしている余裕はない、さっさと流れなければ、SOPⅡ、M4、そして私の順番でマンホールの下に飛び込んだ

 

……4!

M4!

 

「……アッ、うぅ……JS9?」

「無事ですか?」

 

先程まで、倒れていたM4が目を覚ました。どうにか、あの山崩れの窮地を脱する事が出来たのは良かったが……

 

「……、塞がってしまいましたね……」

「あぁ、恐らくグリフィンの連中が一定数来たら人為的に山崩れを起こす気だったに違いない……」

「く、狂ってる……」

 

先程、自分達が入った穴から大量の土砂が流れ込み、穴を埋めてしまった……この道はもう使えないだろう……

 

「……指揮官」

「……よし、あ……どうした?」

 

AK-102のグリップを握りまだライトがついている事にホッとしているとM4が話しかけてきた。

 

「あの後、部隊が山崩れに飲み込まれたとして……基地にいる人達は無事なのでしょうか?」

 

「……そうだな、山崩れを見る限り、あの土砂は基地とは反対方向に流れた……"基地"は無事だろう……だが、味方の人形は」

 

あの山崩れに飲み込まれない連中もいる可能性はあると思う。

それでもそう言う連中はごく僅かだろう。

何せ鉄血の連中も纏めて生き埋めに使用して、あの山崩れを使ったのだ……見計らったタイミングで使ったに違いない、だとすればこちらの被害を最大限に利用したものだと思って間違いない

 

「これから、どうするの?」

 

SOPⅡが不安げにこちらを見つめる……そうだ、私は彼女達の指揮官なのだ、指揮官が動揺しては部隊にもその不安が広まってしまう……

 

「とにかく……まずはこの場所を出よう。その後は、出た場所によるが基本的に味方部隊を助けるんだ。」

「うん……そうだね……」

 

とは、いえど此処は……何処だろうか……ライトがつける光る道以外は何にも見えない……よし、それなら……

 

「フレアを使う、離れて」

 

線を捻り発煙筒の中身を取り出した後、先端と外装天面をこするするとボシュウ!と音を立て赤い光が照らされる……

 

「成る程……此処は下水道での自分達の位置はここか」

 

松明がわりに使用して、周りを見渡すと案内板が見えた、他にも出口はいくつもあるようだ……

 

「SOPⅡ……先頭よ」

「うん」

 

SOPⅡがハンドガードを握り、右側のレールにつけたタクティカルライトを照らす……これで明かりが2つ……どうにか、前と後ろはてらせそうだ。

 

「M4……どうだ?」

「……!!……っ!!はぁ…。駄目です、これでは開きません」

「そうか……」

 

かれこれ、湿り気が強く凄まじい悪臭放つ、下水道を道しるべのフレアを放ちながら、進んでいるが土砂崩れの範囲が広すぎるのか、蓋を押しても重すぎで開ける事が出来ないでいた。

 

「今度は少し、遠い所からにしよう……時間はかかるが出られるかもしれない……」

 

さて、探索続行だ……下水道はこの街、全体を通っているといっても過言ではない、土砂が詰まっていない所もあるはずだ。

 

フレアの数も残りが少なくなってきたころ……

 

「……え?……なに?……これ?」

「…………」

 

明かりを見つけそこに向かい、確認してみるとそこには、巨大な柱が置いてあり、その柱には大量の骸骨が突き刺さるように並べられていた……

 

「こんなにも骸骨が……でも、一体何故?」

 

「集団墓地だ。昔……死人が多すぎで地上の墓場が満員になった時に、地下の下水道を使って、墓代わりにしたのさ……そして、誰でも墓参りができるようにオイルを燭台に垂らし続けて半永久的に明かりを保っているのさ……」

 

死人が沢山……米蘭島の二次災害、第三次世界大戦、その後の"大掃除"、思い当たる節は幾らでも存在する……。

 

「ここには、何人分の遺体が……?」

 

驚愕した表情で、M4が墓を見回すだが……真っ先に思う事は

 

「さぁ、な……だが、君達が仲間入りするのはご免かな」

「わ、私も埋葬して頂けるのでしたら太陽が見えるところで……」

「そんな話だっけ……?」

 

その為にはまずはここから、脱出しなければ、な。

カタコンベを出るまでの間、M4とSOPⅡは何度もあの柱を観察していた……

 

「……!!指揮官……ここの蓋は空きそうです!」

 

「気をつけて、開けるんだ。外に敵がいるかもしれない」

 

やっと、ドブネズミみたいな出来事とはオサラバだと、皆んなが期待しているの所に警戒するように水を差してしまったが、こればかりは仕方ない。

敵の生き残りがどこにいるのか分からないのだ、M4が自分の半身を外に向け構えて、ゆっくりとマンホールの蓋を開け、そして、クリアリングをする……

 

「クリア」

 

そう言って、M4が先に下水道から出て後から登ってきた、SOPⅡと私が出るまで警戒続けた。

 

「む?……電波が戻った。位置と周りとの状況を確認する」

 

地上に出たことにより、通信が回復したようだ、急いで自分達が何処にいるかをGPSを使用し確認する……

 

……”全ての指揮官に送られたメールがあります、再生しますか?”

 

とても重要そうだ、画面の再生ボタンをタップする

 

……こちら、グリフィン本部、今の土砂崩れは、此方の部隊の6割ほどの被害を出したが、それにより前線の鉄血の部隊は全滅、これよりこのエリア鉄血の本部に総攻撃を仕掛ける位置は

 

普通6割の時点で、作戦は失敗だ、それでも作戦を続行、しかも、総攻撃を仕掛けるのだとしたら、グリフィンという組織は本当に人形のことを軽く見ている……組織で頭が下がる

 

続いて位置情報が送られる、この位置は……

 

「それにしても、お姉ちゃん?これからどうしよっか?」

「私に聞かれても……」

「みんな聞いてくれ」

 

先ず近くの物陰にもたれかかり、途方にくれる人形たちに話しかける

 

「どうやら、ハンターの割り込んだからあの時のEMPを使ってグリフィンの本部は総攻撃を仕掛けるつもりらしい」

「一気に決めるつもりですか?でも、土砂に巻き込まれた人形達は?」

 

攻勢に出た事を告げると、人形達はどうするのか?M4が聞いてきた

 

「……多分、後回しにするだろうな……」

「そんな……」

 

M4の気持ちは十分分かる。

一応朝までは食事を食べたり、生活している連中……仲間を見捨てるという判断は堪えるものだ、私もそう思う、前に人形を使う前のグリフィンと"仕事"をした事があるが人命よりも作戦の完遂を優先する傾向が強い……その傾向は変わっていないのだろう。

 

「……話を続けよう。総攻撃をグリフィンがこのエリアの本拠地に向けて、総攻撃を仕掛けるんだが……位置は……」

 

地図をホログラフに仕立て、M4とSOPⅡに見せた。

 

「……成る程」

「……うん」

 

どうやら、状況が理解できたようだ、我々はいる所はその鉄血の基地の目と鼻の位置にいた。

 

「作戦は……?」

「……グリフィンの部隊を狙う、スナイパーから慎重に潰す、不意打ちをするのはこっち、狩られるのは奴らだ。」

 

M4が尋ねる、もうこうなってしまっては完全にどちらか全滅するまでのデッドヒートだ。

EMPを見越して、山崩れまでやる連中だ相手も総攻撃に備えて、出鼻を挫く連中を待機させている筈、助けを求めているグリフィンの連中もいる筈だ鉄血の連中をさっさと潰し、ハンターを倒し、AR-15を救出したあと、生き埋めの連中を引っ張り上げる。

 

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