ユーリやM4SOPMODⅡが民間人を救うための激戦を繰り広げている、その一方で…
────視点:AR-15
前方の人形達が銃声を聞いて、一斉に立ち止まり、M16が指示をすると前方で戦闘を開始した。
「オイオイ、ドンドン駒が消費されてるぞ」
「相変わらず、バカな突撃ばかり…変わらないわね」
恐らく、私の信号を白い奴らが嗅ぎつけたと言ったところだろうか?でも、これは良いチャンスだ。
「せっかく、再開したのよ?記念に私達がどれだけ上手くなったか見てみない?」
「ほぉ、面白い」
「オイオイ!アンタ何言ってるんだよ!?M16!?アンタ味方が誰か忘れたのか?」
ビークが激昂して、M16に問いかける。
「こいつらは前の方から来た。それはつまり、帰り道を知っていると言うこと。前にいる限りは私たちの盾にもなる。もし不審な行動をとっても背中から打てる理に叶っているだろう?」
「そりゃあそうだけどさぁ」
渋々納得したビークから、武器を取り戻した。
「よし…武器を取り戻したわね。AN-94、準備は?」
「勿論だ。もし、早すぎて置いていってしまっても構わないんだろ?」
「そういう事よ」
よし、始めるわよ!
「全人形に伝える、AN-94とAR-15が前に出る。今死なれるのは面倒だ、味方扱いで攻撃はするなよ。ビーク、監視を忘れるなよ」
「ハイハイ、全く…アッタマくる!!」
まぁ、見ようによってはまるで鉄血の下っ端みたいだ。嬉しい状況じゃないが、何も出来ていないで死にたくもない。
激しい銃撃戦が始まった。前方にはおびただしいほどの白い勢力がひしめいている。鉄血の人たちは私たちについていくような形で追従していた。
飛び交う弾丸、交差する火線、陰湿な戦場が徐々に熱を帯び始める。
「援護を!!」
「了解!!」
鉄血の矛先のような私たちが交互に立ち止まり、そして前を走る。この繰り返しが流れるように敵を伏せていた。
「援護を!!」
「良いわよ!!…くっ!?」
放たれた、エネルギー弾が立て掛けていた障害物を抉り、破片が目に当たる…クソっ!ギリギリ近かった…!!
「AR-15!」
「気にしないで!!もっと早く!」
だが、これで距離も…その矢先に突然、轟音と共に大型のバイクが白い敵を引き潰していく。
「アンタらが最新鋭人形!?本気で言ってるのか?こんな雑魚に手間掛かるなんて、がっかりも良いところだぜ」
コイツ…一体何者なんだ…!?
「聞こえたんだけど!?」
ビークはショットガンを取り出すと白い敵を一方的に散弾で倒していく。
「ギャハハッ!!来いよ、クズども!!今私はなぁ!!とんでもなくムシャクシャしてんだヨォ!!」
圧倒的なパワーで白い敵を叩き潰していくビークの姿にAN-94諸共もあっけにとられていた。
「AR-15…」
「えぇ、作戦は変更ね。良い抜け道とか知ってたりする」
「丁度、その話をしようと思っていた。良い場所がある」
同じ相談をしなくて済んだ。
「アンタ、本当に鉄血製人形なの?グリフィンのデータベースでも聞いたことがない!?」
「なんで私が、グリフィンのポンコツにいちいち疑われなきゃならないんだよ!?身分を弁えろ!カース!!!」
そう言って、さらに強い勢いでビークは白い敵を蹴散らしていく。
「ブラックボックスを解析したやつではなさそうだな…なら新規製造だろ、どのくらい手駒をエルダーブレインは隠し持っているのやら…」
「カマかけたって、無駄だ!アホ!まぁ、1人目じゃないし、ドンジリでもないけどナ!!まあ、切り札の数ならお前らみたいな人間の肥溜めよりは全然上だけどな」
大した自信だな、是非とも正規軍の戦闘機と戦って、一方的に蹂躙されてくれ
「さっさと行けよ!カスども死なれたらぶっ殺すからな!」
「未だに解析されていないのは、外務省の要請で開発された試験型戦術人形"アーチャー"、保安局の要請で開発された試験型戦術人形"プレデター"、内務省の要請で開発される筈だった試験型戦術人形"ストーカー"、企画段階だが、運用構想とモデルそのものは残っている"ウルサス"…この辺りだろう」
「コイツなら仲良くできそうだな」
「意外ね…」
そして、その笑顔はこの状況の打開もできる算段がついたと言う笑みだということを鉄血達は気づいていない。
────ベオグラード市内:視点:M4A1
雨が降り、嵐はまだ終わらないベオグラードでM4A1は合流予定のAK-12を待っていた。「置いてかれたか?」と思った矢先、AK-12がその街角にやってきた。
「遅刻よ」
「仕方ないでしょ?感染者の群れと戦ったり、行く先々の民間人を助けてたら、こんな時間よ」
「……なら仕方ないわね」
かくいうM4A1も自分の私情。
ユーリを助けるために遅れてしまった身だ、AK-12を責める資格はない。
「待ちぼうけしてた割には随分ホッとしてるじゃない」
「ええ。いい事があったのよ」
────覚醒態が尻尾を巻いて逃げたぞ!
────俺たちの勝ちだ!
落雷に撃たれた覚醒態は叫び声をあげた。
そして、これ以上はここにいられないと獣の本能で理解したのか、即座にベオグラードの外に逃げ出した。
『本当ですか?……そうですか、ええ……良かった』
無線でユーリは朗報を聴いていたらしい、声がすこしホッとしている。
『司令が連絡をよこした。核の件は取りやめになったらしい、書記長命令で爆撃機は撤退したとさ』
……この街がもう核攻撃をされる心配もないのなら、寄り道の価値は十分あった。
『グリフィン、こちらラプター。応答を…だめだな、中継器は機能しているはずなんだが』
『嵐の影響で外れたり、電波状況が悪くなっているのかもしれません』
ユーリはもう、防空壕に行かなくていいことを伝えようとしたが、通信が繋がってない。
ヴェルグ4は通信が繋がらない理由を分析していた。
『仕方ない。こっちから出向いて伝えに行くか』
『ああ、どうせE,L.I.Dのお掃除の命令も出されるだろうしな。片付けついてに会いに行ってやろうぜ!』
ユーリのため息交じりの決定にヴェルグ3は快活気味に同意する。
『で、M4。君はこれからどうする?』
『どうするもこうも、元の任務に戻るんじゃないの?』
「元の任務?…あ!」
ユーリの質問と、アリアの「分かり切ったことだろ」という割り込みでM4A1はアンジェリアにあてがわれた任務があったことを思い出した。
そうして、ユーリたちに頭を下げた後…急いで、M4は合流場所に向っていたのだった。
つまり、M4はうまくごまかせたことをホッとしていた。
「AR-15たちが最後に確認できた座標に最短でたどり着けるのはベオグラード劇場よ」
「了解、じゃあ行くわよ」
感染者の襲撃で人気がなくなった街中で2人の戦術人形が互いに背中を合わせ、前後を守る様に前進する。
「待って」
前の方を向いていた、AK-12が止まった。
数体の感染者が死体を貪っていた、その姿まさに"ヴェルークト"が呼ぶ、"腐肉喰らい"の名前に相応しい。
まだこんなところにはいるのか、M4はユーリへの手伝いにはなるなと口角を上げた。
「避けては通れなさそうね…」
肉を喰らう感染者の姿が多い。
避けようと歩いても、足がぶつかって気づかれるかもしれない。
「ここはコイツの出番ね」
AK-12が何処に隠していたのやら、新しく持ち出した、長刀を取り出すと雷の降る音に合わせて、肉を喰らうのに夢中の感染者一体、また一体と首を刎ねた。
M4もFNX-45にサプレッサーを取り付けて静かに敵の頭を45ACPで粉砕する。
「行きましょう」
全ての感染者を倒したのを確認した、AK-12はまた前進を再開する様に促す。
「その技…やっぱり指揮官から?」
「そうよ、パパから教わったわ」
やっぱりか、M4は多少不機嫌な表情に変わった。
「何が不満でも?」
「…別に」
「そんなに指揮官に技を教えてもらえなかった事が嫌なの?でも、パパに得なんじゃない?その技術がまだパパに牙を向けられていないんだし?」
AK-12が露骨にM4の神経を逆撫でする発言をした。
M4内心いらだつ、お前はさっきの怪物と戦ってもいないくせに自分の優位性を示す、と。
「私が望んで指揮官を傷つけた…とでも言いたいの?」
「さぁね、でも…やりたくないと思っていても、やらなきゃいけない時はある」
「やらなきゃいけないこと?それが、指揮官とその戦友を傷つけたこと?」
お返しと言わんばかりに今度はM4がAK-12の神経を逆撫でした。
「…好きなだけ言えばいい、アンタがやった事が変えられない様に私もパパにやってしまった事はどれだけ望んでも変える事はできない」
「初めて、アンタが人間らしい所を見た気がするわ」
「…私はパパを傷つけて…殺そうとした時点でもう人間らしい物を持っちゃいけないのよ」
「AK-12…?」
「手を下す時まで、どんな物も私のメンタル…心は操る事は出来ないと思っていたわ」
暗がりの路地を抜けて、広い街道にでる。
「でも、幻想だった。私は人間の様に自分の意思で自分を止めることができなかった、舐めていたのよ…私は、私自身を…一介のロボット風情でしかなかったことを」
暫く、AK-12は唾を飲み込むと話を続けた。
「だから、M4…あなたが指揮官を愛すると聞いた時は…言いにくいけど、希望を持っていた。そうね、パパがあなたに託したFNXを見せてもらった時よ」
「あの時…そんな事を…」
だとしたら、私はAK-12の期待を酷い形で裏切っているわね。だから、墓地で私を責め立てていたのか…
「さて…迂回するか、近道か…白い勢力、鉄血どちらが勝っても、迎え撃つ準備はしているはず。付近から、探るのも悪くないわね」
確かにAK-12の提案は至極真っ当な物だ。
路地を切り抜けて、劇場の距離を進める。
「…AN-94は心配じゃないの?」
「少しはね、でもあなたのパパやAR-15を心配するほどじゃないわね」
「あのねえ」
なんだ?指揮官を心配しているのはアンタもでしょ?
「自分に自信を持てないから死にたがる、あなたやムキになってヤケを起こすAR-15とは違って、AN-94は自分の立ち位置を理解している…いや、理解しすぎている。その辺りはあなたもよくご存知でしょう?」
「それはどうもご贔屓に」
確かにAN-94は感情を持つがまず自分を戦術人形である事を前提で動いている。
「そして、パパはこんな事でくたばるほど弱くない」
弱くない…?それはその通りだ。
とはいえ、だから、問題ない?放っておくって言いたいの?
「要は、あなたがパパを助ける事で贖罪に駆られているのはよく分かった、でも今は介入しようが単なる邪魔になるから、必要な事に集中しましょうって訳」
「だから、そう落ち着いていられるのね…」
「グリフィンにいた時のパパはどんな風に映っていたのよ?」
グリフィンにいた時の指揮官…
「軍にいた時の指揮官は結構自分にストイックな所があった、そして人形と使命があるとかいう奴をあまり信用していなかった。まぁ…当然と言われたら当然なんだけど」
「当然…?指揮官は人形でも分け隔てなく対応してくれて、そしてどんな発言にも理解を示す柔軟な人よ。あんな人は私は初めてだった」
「当然の辺りは追々話してあげる。でも、まさか"グリフィン"だったとは意外だったけど」
どうして、グリフィンに入る事が意外なの?
「パパはアイツ…クルーガーとは仲が悪いでしょ?」
「なんでかは知らないけどね」
「金食い虫の外務省と何にもやらない内務省じゃまぁ、お察しね」
「…じゃあ何でグリフィンに?」
金か?それとも…?
「恐らくは…そうね、勝手な持論だけどクルーガーの"相方"を探してるんじゃないかしら?随分外務省の上層部命令で私も捜索したことがあるわ。結局に何も出なかった訳だけど…気が滅入るわね。明るい話題に切り替えない?」
暗い話題を振って置いて、今度はそれ?
「人類人形観察同好会の会員にならない?今なら、会員番号2番よ」
「どうせ1番が指揮官で0番はアンタでしょ?」
「正解」
意味がわからない、冗談なのか?それとも本気?
「それにしても、これだけ近づいたのに誰の信号が確認できないわ…」
「何でもいいわ、拾えるのはある?」
拾えるものって…
「拾えるのは、緊急放送よ…?どうも、あの壁を壊した化け物相手に囮になって、脱出の時間を稼ぐみたい、その間に往復して街内部の隔離壁に市民を送り届けるみたい。避難所に入る市民も誘ってる」
「────パパね。しかも、多分囮役よ」
AK-12はキッパリとはっきり、確信した声で告げた。
SOPⅡたちを探しに行くと言っていた。念のため、無線でもよびかけているのか。
「誓っても良いわ。この放送は前から発されてる…放送が中断されないで発信され続けているという事は、囮がまだ機能している、そしてそれだけの戦闘継続できるのは…我が国1番の対E.L.I.D戦闘が豊富な。────パパだけよ。フッ、Kが見たら発狂するわね。流石、パパ。グリフィンの堅物とは大違いよ」
「────確かに指揮官は助けが必要な人を見捨てない。それにもう、あの怪物を倒しちゃったりして」
「いいことを言う。あの、D型E.L.I.Dを4体も討伐した、化け物も恐れるナイトメアよ。でも、状況が読めたわ。ここには敵がいる、通信が拾えるこの状況でここだけがバッタリ切断されているのが肝よ」
ジャミング…よっぽど聞かれたくないものを隠しているんだろう。AK-12が不敵に笑う、どうやら私が準備できた事に気付いたらしい。
────
劇場のドアを開けると、薄暗い舞台が眼前に現れた。観客席の端からでも匂う煙の匂い、あちこちに空いた弾痕…ここで大規模な銃撃戦が現れたのは確かのようだ。
「誰もいないわね」
AK-12達は到着し、劇場を調べていた。
すると、いきなり何かが襲いかかってきたので、素早く身を下げ攻撃を躱す。
「見えた!鉄血のエクスキューショナー!」
暗がりから攻撃してきたものの正体…それはエクスキューショナーだった。
「よう、久しぶりだな。俺に会えなくて、寂しかったか?」
「今更!」
もう一度、長刀を振り回してエクスキューショナーが襲いかかる。
今度はガンケースで弾き銃を向けるがエクスキューショナーが銃撃を弾く構えをしたので、引き金を引かなかった。
「────!!」
「────!?」
そして、すぐ後ろからAK-12が長刀を振り回すとエクスキューショナーの頭目掛けて振りかぶった…が、AK-12の攻撃はエクスキューショナーが縦にブレードを構え直して塞がれる。
だが、AK-12は一切同様を見せず体重をさらに前に乗せて長刀に取り付けられているトリガーを引き絞る…すると
「────なっ!?何っ!?」
AK-12の長刀がオレンジ色に光り出すと光の色が濃くなるたびにどんどん長刀が熱量を上げて、先程まで鍔迫り合いしていたエクスキューショナーのブレードが融解していく。
「エクスキューショナー!!下がれ!!」
「────ッ!!」
エクスキューショナーが無理やり剣を下向きに持っていくと、融解して溶け出し、蓄積するブレードに対するダメージを無視して、強引に引き剥がし、離れた。
すると、数発のエネルギー弾がAK-12に襲いかかる…
「ハンター!!」
だが、その攻撃はM4A1が放った5.56ミリ弾で打ち消された。
「エクスキューショナーのブレードが容易く溶かせる剣…ふん、中々面白そうな獲物だな」
どうやら、銃撃してきたのはハンターだったようだ。
M4は足元の劇場の足場を動かすと、劇場の下に繋がる会談が現れた。
「AK-12。先に行ってAN-94と合流して」
「でもエリートはどうするの?」
「すぐに片づけて合流する」
M4が鉄血のエリートたちに発砲し、敵は即座に回避行動をとる。
「今!」
「了解!」
「ああ、それとAR-15にあったら私の代わりに謝っておいて!」
その間にAK-12を下に追いやり、AN-94らを探させる。
マガジンの弾薬を撃ちきり、新しいマガジンを装填したとき、また黒と白の鉄血エリートがM4に相対した。
「片付けるだ?」
「随分とナメた口を利くじゃないか?」
「そう?確かに私はちょっと疲れてるけど…あんた等を始末するならそうむずかしいことでもないわね」
2対1、そしてどちらもM4A1を前に苦しめたことのあるエリートたちだ。
そのエリートたちに対してM4は自身に満ちた態度で挑発する。
「だが、手土産が増えるのは良い事だ。失点を取り戻せる」
「失点…?へえ、何の話?」
ハンターは失笑した。
「私が悪いわけじゃあ、ないんだがな。…だが、確実に言い逃れは出来ない行為さ」
エクスキューショナーが不満げな表情でブレードを構え直す。
「そして、私は得点が欲しい…やるぞ、相棒」
「…ああ」