たったひとつの願い   作:Jget

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分断

 

本来、人のいないはずのベオグラード劇場は銃弾や爆炎で焼け焦げ、M4A1とエクスキューショナー達の戦いの音が繰り広げられていた。

 

「オラァ!!」

「────!」

 

M4のガンケースとエクスキューショナーのブレードがぶつかり合い、火花を散らしていた。

 

「しらくせぇ────…っとうぉ!?」

 

しぶとく攻撃をいなすM4をじれったく感じたエクスキュショーナーは大振りの振り回し攻撃をしたが、ガンケースの裏に隠したナイフの振りによるカウンターを浴びせられて仕切り直し迫られる。

 

「くそっ!」

 

自分が以前戦っていたはずのM4A1とはまるで違う。

手堅い所は変わらないが、説明しようのないプレッシャーを感じる。

だが、理由は知らないがM4A1には所々手負いの跡が見て取れる。

あの後、倍以上のシュミレーター訓練も積んだラーニングの差はあるはず。

 

「……おかしい、攻めきれない」

 

ハンターも同じらしい。肝心の撹乱に全く乗らず、攻めたくても攻めきれない。アイツも心なしか焦っている様にも見える。

なんとしても、M4に決定打を作りたいのはアイツも同じだがお互いそれができない。

 

「このやろう!!」

「……っ!」

 

ブレードを何度も振り回して、やっとガンケースを弾かせた。

弾かれた様に両腕を広げた瞬間にエクスキューショナーが接近して来た。

 

「やったぞ!!」

「────かかったわね」

 

だが、M4A1は上手く行ったと笑う。そう、コレは罠。

予め溜めておいた動力を稼働させて、両腕を強引に戻す。

無理やりな出力解放をなんどもやる内にいつの間にかM4はこんな事ができるようになった。

 

「なっ!?」

 

慌てて、エクスキューショナーが攻撃から防御の構えに切り返す、この時を待っていた。

 

「────!!」

「────ガッ!?」

 

床に落ちていたガラスをエクスキューショナーに投げつけ、ガラスが右肩に刺さる。

 

「貰ったぁ!!」

 

そこから、銃弾を浴びせつつ、また拾ったガラス片を下から上に切り上げて右腕を狙う。

 

「────オオオ!!」

 

エクスキューショナーは今にも悲鳴を上げそうな顔をしながら、右腕を上げて、切り上げを躱した。

 

「!」

 

M4が体勢を崩した。エクスキューショナーは取り付けてあった銃を切り裂き、M4の脇腹を突き刺そうとする。

だが、数センチの差でエクスキューショナーはブレードを避けられる。

 

「……フッ」

 

何度も食らった手順故にカウンターが来ることは読めていた。

だから、カウンターが来ても問題ないようにあらかじめブレードは念頭に入れていた。

 

「────ギャアアアアアアアア!!??」

 

M4A1はライフルから手を離して、腰のコートに吊り下げていたM590ショットガンを引っ張り出すとエクスキューショナーの胸に12ゲージの算段を叩きつけた。

 

「ゴアッ……!?」

「エクスキューショナー!?」

 

カウンターにカウンターを返されてハンターも動揺している。

M590を拾って良かったと思ったのはこれで2度目だ。

 

「M4!!貴様!!」

 

ハンターがエクスキューショナーを救おうと飛び出る。

これはM4にとって好都合だった。腰に巻いたコートの結び目を解く。

 

「持ってなさい」

「ぅっ!?、なんだ……────っ!?」

 

突然、M4のコートを投げつけられたハンターはさぞ驚いただろう。

なにしろ、このコートは……

シュアファイア製60発装填可能マガジン2つ

マグプル製40発入りマガジン8つ

ベオグラードで拾ったスチールマガジン6つ

ガンケースで使うための砲弾4つ

M590のショットシェル7つ

手榴弾4

閃光手榴弾3

スモーク2

が軽く見積もるだけで20kgがぶら下がっている。自分でも思うが中々の重量である。

 

「────!っ!?」

 

その重量を与えられたハンターは遅く、解放されたM4は早くなる。

そこから、M4はFNXとUSPを抜いて45ACPと9ミリの連続射撃を叩き込んだ。

重いと鋭いの連続攻撃はハンター感覚を大きく狂わせる。

 

「チップよ」

 

M4はコートを取り戻しまた腰に巻いた。

 

「────フーッ!!フゥーッ!?…ガァアア…!この、クソ…野郎!!」

 

エクスキューショナーは2本足から4本足の人形に早変わり、悲鳴にも唸り声にも似つかない声を上げている。

ハンターも人工血液の血反吐を吐きながらこちらを睨んでいる。

 

────AK-12の視界を共有して判明したわ。劇場には隠し通路がある。そこに行けば、誰もが求める終着点に続いてる。

 

「へぇ、誰もが?場所は?」

 

────あなたの下よ、鉄血さえ遠ざけてくれれば白い奴らは私がどうにかしてあげる。

 

「その下にマーキュラスが。ケリを付けるのも近いか」

「…!」

 

攻撃が止まったのかと思ったのか、ハンターが激しい銃撃を浴びせて来た。

 

「ええ、アンタ達のケリも今つけてあげるわよ」

 

爆弾を使用して、劇場に穴を開ける。

 

「合わせろ!エクスキューショナー!」

「おう!」

 

ハンターとエクスキューショナーと連携攻撃だ。空いたスペースに次々穴飛び込む連続攻撃。

それでM4A1を一気に倒そうするのだろう?

だが、追おうとしたハンターが強い衝撃を受けて、地面に倒れ込む。

 

「…おい、エクスキューショナー!」

「精巧な工作精度で作られたエリートモデルもワイヤートラップには気が付かないか」

「こ、これは……!?」

 

足元に絡みつく劇場の糸。

どさくさに紛れて設置した罠に引っかかっていた。

 

「まずはあなたからよ」

 

遅れた連携は穴だらけだ、M4A1はハンターを上回るスピードで攻撃を避けるとそのまま腹に1発銃弾を叩き込む。

 

「────っ……がぁっ……────あ」

 

前のめりの体制のまま重心を動かされたので、ハンターはコマのように回って背中を晒す。

情けはない、M4A1は背中を向けたのでハンターの頭に更に弾丸を叩き込んだ。

 

「────あっ……」

 

ハンターは呆気なく崩れ落ちて大破した。

 

「────M4ぉっ!!」

 

エクスキューショナーはワイヤーを無理やり抜け出す。だが、無理やり過ぎたので絡まっていた左足がちぎれてしまう。

それでも、自分の獲物を当てる執念があった、悲鳴を上げながらここ1番の大ぶりでM4A1の頭をかち割ろうとした。

────が

 

「な……に?」

 

必死で全力で振ったエクスキューショナーをM4A1は容易く受け止めた。

正確に言えば、受け止めたのはブレードではなくそれを握る手を掴んで止めていた。

 

「────それっ」

 

そしてバキリ、なってはいけない音が体から鳴った。

エクスキューショナーの腕がM4A1によっていつも曲げている方とは逆の方向に曲がっていたのだ。

 

「────アッ!?がぁあああっ……!!」

 

エクスキューショナーは叫ぶ。一方のM4A1は捻れたエクスキューショナーの手から転げ落ちたブレードを拾う。

 

「返せっ!このクソアマっ……」

「分かった。ほら、返すわ」

 

顔面に叩きつけられる形でエクスキューショナーのブレードは"返された"。

もう、2度と彼女からこの剣が離れる事はないだろう。

 

「はぁ……全く、いい加減にしてよ」

 

ここが化け物だらけになった時点でさっさと撤収すればいいものを。

心底呆れたようにM4A1はハンターとエクスキューショナーにトドメの弾丸を頭に当てるとAK-12の後を追いかけた。

 

────ベルグラード地下

────視点:AN-94

 

「ゴミが何体いようが変わんねーよ!!ウスノロ!!」

 

一方ビーク達と一緒に行動していたAN-94達はまだ地下を歩いていた。

ビークは確かに威勢よく、白い敵を蹴散らしているが、鉄血兵士達は白い敵に段々と質の差が現れ出していて、次から次へと倒れていく。

 

「────ガッ!?────テンメエエエエエ!!??やりやがったなぁあ!?」

 

ビークは、白い敵に逆に誘い込まれて、四方に囲まれて銃撃を受けている。

 

 

「馬鹿だな…調子に乗って罠に嵌った。だが、コレでいい」

「この数で潰す気か!?上等だ!コラ!!」

 

罠にハマったビークが囮になってくれたおかげで白い敵はこちらに狙われている事に気づいていない、カモ撃ちで急所を狙う。

 

「オールクリア、前方を警戒」

「了解。ここは任せて」

「────なっ、あっ…アンタら!」

 

ビークが止まっていたので、それを避けて前に進む。

 

「あー…そうかい。いやぁ、知らんかったわ、マジで!グリフィンも恩を忘れないんだなぁ!!」

「どけ、邪魔だ」

 

不快な顔をして、ビークのバイクを避ける。

 

「────は?テメッ…あ、やばっ。敵じゃん」

 

ビークは挑発に乗りやすいが我を忘れるタイプでは無い様だ、矛先をパラデウスに戻している。

 

「ここを固めてるっていう事は、いよいよ近いわね。良かったわね、道が間違ってなくて?」

「あぁ?…って、言われてみりゃ確かにだ。っておい!なんで、後ろから出てくんだよ!ピンク髪!前が道だろうが!…ん、待てよ?なんでアタシはお前の前にいたんだ?後ろから追いかけたのに?」

 

やっと気づいてくれたか?まぁ、今更関係ないが。

 

「そうね…バスを降りる時だって降りますっていうボタンを押すもんじゃ無いかしら?」

「────は?」

 

AR-15がスイッチのボタンを押した、

 

突然の爆発から、飛び出した瓦礫がビークの脳天を直撃してビークは声もなく気を失った。

 

「アンタ達とはここまでよ」

 

穴が空いて、現れ出した通路をカモフラージュとして、私とAR-15は隠し通路のドアを押し開けた。

 

「────どういう意味だっ!?…って?いなくなってやがる!?」

 

次に視界を取り戻したビークに見えたのは自分のバイクとそこら中に転がっている、白い敵の死骸だった。

 

「────逃げられると思うなよ!コラ!!」

 

ビークはまんまとAR-15がカモフラージュした、上の方の通路にバイクを走らせて、見当違いの方向へ突き進んでいった。

 

「…上手い事考えたね。反逆小隊」

 

先程の一部始終を見ていた、ある人形がAN-94達が開けたはずのドアを調べる。

 

「…ロックを一方通行にしたのか」

「仕方ないね。別の隠し通路を通ろう」

 

鉄血の足音が聞こえたのでエージェントはAN-94達から、離れた通路で見つけた隠し通路に入り、扉を閉めた。

M4A1とAK-12が劇場に開けた地下から、下に降りるとそこは地下迷宮にすら感じる、迷路だった。

 

「また銃声!?」

「急ぐわよ!」

 

────視点:M4A1

 

「でも、AR-15やAN-94の銃声じゃない…迂回しましょう」

 

────慎重になったわね。

 

今はやめてくれ、私達がやられてしまってはダメなのだから。

 

────アナタは1人で戦っているわけじゃ無いのね?

 

うるさい。そんな事、あのバカでかい怪物と戦った時から分かっていたでしょう?

アナタが足を引っ張らなければそれでいいのよ。

 

────問題は鉄血じゃないわ、アナタは彼らをよく知っている。白い敵はアナタも知らないでしょ?

 

パラデウス?アンジェリアからもらったメンタルモデルのデータがある、全くじゃない。

 

────なら、厄介だと思ったでしょ?もっと簡単に倒したいと思わない?

 

弾が節約できるわね。────まって?それ本気?

 

────本気よ、全員に効果がある保証はないけど、ネイトになら…アイツらはメンタルを感じない、頭には思考用の回路すら見当たらない。

 

人間だと?そういうこと?

 

────人間を模した、生物…の方かもしれない。何故かはわからないけど、彼女達と繋がることが出来る…そんな気がするの

 

繋がることができるなら、ハッキングもできるとでも?

 

────ハッキング?私は覗き見だけじゃない。クラックもできる。彼女達の頭についているカチューシャ見たいのを狙いなさい。外部から侵入を防いでいる。

 

外からの侵入に敏感に…成る程、作りが丁寧なのね。

 

────それを知るためにも、その遮断装置を壊してもらう必要があるわ。

 

そんな芸当ができるのなら、頭をぶっ潰しているわよ。

 

────頭じゃない。それでは殺されて、生き残った奴が指揮を引き継ぐ。必要なのは繋がることよ

 

試してみるだけの価値はあるわね。

 

「銃声が近づいて…この音は?AR-15?それにAN-94も!!」

 

角を曲がった瞬間、2人の姿と銃口を捉えた。

 

「────撃つな!…M4、早かったわね」

「鉄血のボス2体と戦ったんでしょ?大丈夫だったの?」

「ええ。慣れた相手だったから、倒してきたわ」

「流石だな。たいして私は……っ、クッ……」

「AN-94、その怪我は?」

 

右の関節に被弾…よくここまで動かせていたわね。

鉄血じゃないレーザーだ。パラデウスか。

 

「AK-12…すまない」

「いいのよ、よくやったわ。バクラーダは?」

「ああ、その事なんだけど────」

 

AR-15がM4から予備のマガジンを貰いながら説明をする。

詳らかに説明はしたつもりなのだろうが、それでもかなりあべこべもいい所の説明だった。

 

「────M16が?」

「そう、そして今回の地下の襲撃もM16の指揮によるものよ」

「鉄血のバカっぷりが極まったわね。この状況でよくそんなことできるわね」

「M4の言い分はもっともだが…それよりも問題なのが、白い奴らだ。アイツらは自己繁殖している様に多い、その上2人のネイトに指揮をされている。今も抱えているだろ?この銃声は奴らが争っている音だ」

 

成る程、聴き慣れない銃声はコレか…

 

「今すぐなんとかしないと手遅れになるわね」

「奴らに恨みがあるのは知ってるけど…戦力には────」

「────指揮ができなければ白い奴は雑魚同然よ。そして、私たちはその方法が実行できる」

 

3人が一斉に静まり返った、恐らく自分にこの状況を打開出来る方法を知っていると教えられた事に驚愕しているんだろう。

 

「ハッキングでも、するつもり?」

「そうよ」

「M4、確かにエリートを倒したあなたでも出来ると思ってる訳?」

「今ならね」

「────」

 

AR-15が閉口した。

それほどまでにM4には自信があるのだ。

 

「分かった、お前が出来るというならそうなんだろう。で?どうやってそのネイトに近づく?まさか、鉄血と白い奴らの間に割り込むと?」

「────いえ、成る程。よく分かった」

 

AR-15はAN-94の肩を叩く。

 

「AN-94、AK-12に修復をさせて貰って。多分、今の私とM4ならきっと出来る」

「代わりはないわよ?」

「問題ない」

 

AK-12は頷いた。

 

「分かった。だが、白い奴らの後は鉄血もいる?どうやって抜け出す?」

「私がM16と話し合ってみる…」

 

もし無理だったら、この手で…

 

────ベルグラード地下、バグラーダノードの門前

 

「アハハッ!!鉄血がこんなに弱いなんてネェ!?お前なんて片手でも殺せるんだ!!クソクソクソクソクソクソ!!あの金髪のクソガキガアアアアア!!!!!」

 

バグラーダノードを前にして、白い敵を率いるネイトと鉄血を率いるM16が激戦を繰り広げていた、鉄血の兵士達は能力差で押されている状況だ。

 

「どうして!!どうして!!お父様から頂いた私の腕がアイツの為に引きちぎらなきゃならないのヨォ!?こんな奴以下の奴だったはずなのにぃっ!!もっとコイツらよりも少なかったのにぃ!!!」

「あぁ、疫病。飢餓。あぁ、飢饉。私こそ死!!あの緑の同類に味合わされた屈辱どうしたものか!!」

「ふん、こういう場面は初めてじゃないが意外だな。鉄血がもはや道端の石ころ変わらんな」

 

バグラーダノードへの扉を開いたのはいいものの、一歩も前に進めずにいた。

 

「死ねっ!!ドブネズミ!!私が追い詰められたのはなんかの間違いですわっ!!グリフィンもお前達鉄血も対して変わりはしない!!」

「あぁ、お姉さま。可哀想に…破滅無くして、どうして新生が語られようか!?愛洗者を冒涜せしめた鉄血よ!お父様の名の下世界を焼き尽くしてしまいなさい!!」

 

圧倒的な火力を前に、鉄血は徐々にすり潰されていく。だが、M16は表情を一つとして変えていない。

 

「…この手は使いたくないが」

 

その瞬間、M4とAR-15の同時に放たれた弾丸がマーキュラスとニモゲン2人の制御装置を破壊した。

 

「外した!?なら────」

「────いえ、コレは」

 

白い敵の攻撃が収まっていく、まるで電源が切られた人形の様に…ニモゲンが落ちた制御装置を見つめる、そして…

 

「────あぁあああぁあぁイィゃああああアああ!!!」

 

ニモゲンが苦しみ悶えて、「お父様」の名前に呼び助けを求める。

 

「だっ、誰だ!?私の中にはいるなぁ!?痛い!痛い!あぁあああぁあぁイィゃああああアああ!!!」

 

ニモゲンの凄惨な鳴き声が地下室にこだましている、あまりの意味不明な状況は鉄血の兵士たちすら顔を見合わせるもの、得体の知れない恐怖に怯えるものまでいた。

錯乱した、ニモゲンはフラフラと白い敵の群れの方に逃げていく。彼女の逃走に伴い白い敵もその後を追っていく鉄血を無視して。

 

「マーキュラスの方は動かないわね…白い敵も止まっている。でも、何が起こったの?遮断機が弱点でもこんな短期間に2人のハッキングができるなんて私には思えない、AK-12でも無理よ」

「あれから色々努力してね…」

 

だが、問題はこれからだ。M16に…そして、この…ネイト。

 

「回路がショートしたんじゃない?」

「いや、まだだと思う」

 

マーキュラスがゆっくり顔を上げてそれが事実であることを裏付ける。

 

「コイツ…!」

 

AR-15は銃を向ける。だが、そんな事お構いなし…

 

「お姉様…どこ?どこなの?お父様は任務が終えたら新しい名前をくれるって…!」

 

いや、気にしない感じでマーキュラスは何かを探していた。いや、見つけたらしいその視線の先が

 

「あ、お姉様…」

「────え」

 

私だったらしいが。

 

「私お姉様が感じられなくて、怖くて…でも、お姉さまが無事なら────」

 

マーキュラスが私に近づこうとした瞬間…その屈託のない笑顔を溢したまま、頭を撃ち抜かれ、彼女は仰向けに倒れた。

 

「────姉さん」

 

マーキュラスの後ろから、よく知っているがまるで印象が異なる"彼女"が現れた。

 

「殺す必要があったの?」

「暫く会わない内に敵を殺す判断すら鈍ったのか?」

「怖い顔────そんなに隠したいことがあった訳?」

「お前にも知らない方がいい事実がある、それだけだ」

 

M16が人差し指を頭に当てる。

 

「抱えてるんだろ?"あの声"が?」

「なるほど、これは私の精神病なくて安心した。それでいいわ。使えるやつなら使う、それだけよ。アナタの言葉よ?忘れたの?」

 

M16の顔が少し、青くなったと思ったが見直してみるとそうでもなさそうだ。

 

「────そいつがなんであろうと絶対に信じるな。お前がここまで来れたのはそいつに頼ったからだ」

「…フッ」

「何がおかしい?」

「面白い冗談を言うのねと思ったのよ。理不尽っていうのはあなたの事をいうの?ちゃんと説明しないで組織を裏切った奴の言葉より、組織に貢献した方がマシだと思うわ」

「────貴様ッ」

 

M16が鉄血製の拳銃を向けるのと同時に私のホルスターにしまっていた、ヒップホルスターからFNX-45を引き抜くと、その拳銃だけを撃ち落とした。もちろん、こんな事をするのにOGASは必要ない。

 

「どうやら、自分の意思で鉄血に入ったという話は本当の様ね」

「自分が何をしているのかは分かっているつもりだ」

 

弾かれた衝撃が伝わっているのか手首を押さえながら、M16は答える。

 

「そういうのは分かってない奴が言うお決まりの台詞なのよ」

 

私がその証明だ。

 

「因縁や個人的な感情なんて引き摺らないで、グリフィンに戻ればよかった…私もあなたも…力を合わせればよかったと思わなかったの?」

「それが奴らの目的だ。少なくとも今は戻るわけにはいかない」

「なら、その目的とやらを教えてよ。鉄血のふりをしたおかげで!どれだけグリフィンの仲間や無関係の人が死んでいったのを知ったことかとは言わせない!!」

 

レーザー点灯させて、M16の目と目の間に可視光のレーザーを当てる。

 

「私は…!取り返しのつかない事をした!!自分の手で殺したくない人を無自覚のうちに殺しかけて!私の憎しみでどれだけが巻き込まれても関係ない!と逃げて多くの憎しみを生み出した…!私はもうその人達に謝ることすら出来ない…!!」

「…私とお前に交渉する権利はない。私が重要視するのはその扉の奥にあるものだ、どけさもないと────」

「────さもないと?」

 

FNX-45を左手に持ち、右手にM4A1のグリップを握り、銃口をM16に向けた。

 

「戦いで白黒付けるだけだ」

 

M16も銃を向けた瞬間、合流したAR-15も銃をM16に向けた。場の一触即発の雰囲気漂うその瞬間。

 

「────ビーク、思ったより早かったな」

「────いイィやっはぁあアアア!!!」

 

迷路で迷っていた筈のビークが巨大なトラックを引き連れて、M16を回収していったのだ。

 

 

 

 

「────追うわよ…逃すわけにはいかない!!」

 

 

 

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