『────次っ!!』
────視点:ユーリ
ベオグラードの街中では、ユーリ達がE.L.I.Dの掃討を始めていた。
『────邪魔だっ!!』
道を塞ぐ、感染者を寸分違わず打ち抜く。
前進する理由は通信のつながらないグリフィン部隊との合流だが、それがこの街からE.L.I.Dを蹴散らさない理由にならない。
『────隊長、残弾が残り少ない』
ヴェルグ4の言う通り、燃料の残りが心細くなった。
初めから、使い切るつもりの決死作戦だ。慎重に戦えば生き残れる可能性が高い方に転がせただけでも奇跡なのだ。
『燃料がなくなったら、補給場所まで走るしかない。そうなったら歩兵と変わらないぞ、無駄遣いをやめて連携重視だいいな』
ブーストとレーダーを切り外骨格の作用で内部の隔離壁まで猛ダッシュで走るが、腐肉喰らいとパラデウスだけに飽き足らず、鉄血まで街に現れている。
『隊長、今日は生き残れたが、明日はどうなる?また、絶望か?』
『────たとえ、この先が絶望だとしても、構わないさ』
ユーリの場合は最後の瞬間まで、生きる人のため戦い続ける。
……それが自分のできる数少ない贖罪だ。
『こちらヴェルグ6です。中継機の1つを見つけましたが、壊れてません』
『いよいよ、グリフィンはまずいのかしら?』
未だアリアやカリーナから市民がベオグラードの内部に避難できた報告が来ていない…無線が悪いだけだといいが…!
『急がなくていいさ、ヴェルグ2。彼女達はあのくらいじゃやられないよ』
ユーリはニヤリと笑って、すれ違いざまにB型の首を長刀で跳ね飛ばす。
『そら来たぞ』
また、群れのE.L.I.Dがやってくる。
あの覚醒態の呼びかけに出遅れたやつだろう。
『────チッ!!』
素早く、ブースターを起動させてジャンプではなく、強引に左に慣性を働かせて、ビルに隠れる。
『スナイパー!』
『倒した!』
ヴェルグ6がSR-25のカウンタースナイプで狙撃手を倒す。
危なかった。パラデウスほど高威力じゃないから、先に隠れることができた。
つまり、鉄血か?たしか、潜伏としていたと聞いた。まさか、今頃現れるとは。
よくないな。全員、さっきので燃料を多く使ってしまった…
『ウッ!?』
『今度は砲撃かよぉ!?』
大口径の砲弾が地面を吹き飛ばし障害物を抉る…!飛び散る破片が視界を塞ぐ…
『鉄血が来たぞ!』
『背後からも!?』
鉄血のブルートかっ…!マズイ…!視界を塞いだ隙に目の前に!!
<そこから動かないでッ!!>
援護…か?いや、間違いない!これは援護だ…しかも、この声は聞き覚えが…!
<────1人で戦って…まだ、神に召されないとはしぶといもんだ>
<────よく、頑張りましたね!!お待たせしました!!>
『お前達は……!?なぜ、ここに』
────視点:M4SOPMODⅡ
「やっと追いついた…!カリーナさん!!」
散々感染者やパラデウスに邪魔されながらもようやく目的地であるベオグラードのたどり着くことができた。
なぜ、防空壕の中にいなかったのかというと。
当初、グリフィンは予定通り、防空壕の中にいた。そして、指揮官が一方通信で覚醒態を追い払ったと聞いたときは全員が歓声を上げたものだ。
これでもう、安全だと思った直後────突然通信が繋がらなくなった。
そして、いきなり町中に鉄血の兵士達が現れて火炎放射器で蒸し焼きにしようとしてきたのだ。
大急ぎでHK416やROは火炎放射器を放った鉄血を倒して、必死にトラックを走らせてベオグラードから出ようとしてるのだ。
「状況は?」
トラックは玄関についている。
本来ならもうとっくにベオグラードの中に入れてもらえるはずだ。
「セルビア政府が壁を開けてくれないの!!さっきまで、感染者もパラデウスの奴らも全然いなかったのに!!鉄血の攻撃で壁を閉じてしまって今、Kが守衛と揉めてます!」
だが実際には護送部隊は目の前の隔離壁で立ち往生していて、フォトン指揮官のグローザ部隊が看板でも椅子でも石ころでも引っ張り出して防衛陣地を築き、銃撃戦の真っ只中。
「指揮官!どうすればいいですか!?」
「Kが説得をしている!グローザ達と一緒にアイツらを出来るだけ長く食い止めろ!」
「AR(アサルトレイド)!!防衛戦開始!!」
「気をつけろ、敵は鉄血だ。パラデウスとはクセが違うぞ!」
「了解!!」
────15分後
「────グアッ!!」
「────しまった!平気!?」
「なんとか…空マガジンのおかげで」
パラデウスの銃撃でMG36が被弾して、DP-12が引っ張って障害物側に寄せる。
「クソッ…ふざけるな…!!」
どうにかMG36は座り込む体型で起き上がり、銃撃を再開。
「諦めるな!撃ち続けろ!!」
グローザもライフルのリロードの手間を惜しんで拳銃を引っ張り出すほど敵の攻撃は激しい。どんどん状況が厳しくなる…どうして、セルビア政府は扉を開けない!?自分達の市民でしょ!?
「カリーナさん!!K!セルビア政府はどうして開けないんですか!?」
<…ああもう!!>
通信越しでもわかる、苛立ちの声…どうした!?
<扉の後ろにいるのは人形達が…指示通り、何があっても扉を開けるつもりはないみたい…────>
人間に逆らえない機能がここに来て足を引っ張っているのか!?
「SOPⅡ?そろそろ…腹、決めるか?」
「…やっと殺される側の気持ちが分かってきたって気分?」
此処がやられたら次はどうなる?とか、此処をこんな事をしたパラデウスが許せないとか色々な気持ちが浮かんでは消え…
そして、結局最後に残るのはやっぱり…
「でも、私…みんなを死なせたくない」
「そうかい」
MP7がブラインドファイヤで中途半端に残った弾薬を少しでも効率的に消費した。
「…アンタは死にたくないって、思わないの?」
「お前のせいで死にたくはないな」
MP7は素早くリロードを済ませて、ボルトストップを解除させた。
「…大体!お前はいちいちうるさいんだよ!ピーチクパーチクよぉ!?」
<────弾切れっ!>
「────いくよ!X95!これ使って!!…なんだよ!私のどこがうるさいの!?」
<────SOP!ロケットランチャー!!>
HK416が叫んで警告。
私とMP7が隠れている、バリケードの数メートル前にロケットが着弾して爆風が襲う。
「あぁもう!全部だよ!!報告書が出来ないって毎回私に泣きつくし!部屋は汚いし!もう!サイアク!!部屋が私と相部屋だってこと弁えてる!?」
「…うぐ」
まさかそのことを根に持っていたとは今さら後悔してもしきれない。
「私の最後がお前みたいなバカと一緒とか絶対お断りだからなっ!!」
「MP7!酷いよっ!?」
<またロケット!!>
────ドオオオオオン!!と地鳴りと衝撃。また、ロケットが着弾する。
<すごい音がしたわ!どこ!?どこに当たったの!?>
<重装部隊が吹き飛んだ!みんな火だるまで叫んでるっ!?>
<叫ぶなグローザ!くそ……サーモバリック弾か……!>
「それよりもあれ、何とかしないとやばいぞ!!」
ロケットランチャーが厄介だ。
さっきHK416が"サーモバリック弾"と言っていた。あれはよく燃焼するロケットだ。あれが護送車にでも着弾したら、その中にいる人たちは…蒸し焼きだ。
「じゃあどうする!?」
<わぁ、酷い状況!手を貸すわ!提案が有るんだけど?>
アリアさんが来た!?空いた?という事は私達を特定して追いついたの!?なんて速さだ…!
<ねえ、この中で一番強いのは私達って事はアイツらも分かっている。そうでしょう?>
…その通りだ、今この勢力図で1番幅をきかせているのはパラデウスでも、鉄血でもグリフィンでもない。
感染者だ、それらをこんなに短期間で倒すアリアさん達は明らかに敵勢力の中で、最も警戒される対象だ。
<ファイヤーホーク3より、ファイヤーホーク1。接敵まで140秒!>
<第一撃がキモね…一気に主導権を取れれば…ねぇ、SOP?鉄血やパラデウスって、一応意識…まあ、感情とかって下っ端でも持ってるんでしょ?>
「え?えぇ…恐らく」
感情が今更どうした?
<相手にも感情がある…なら、私たちみたいな"エース"が敵の見えるような場所で光学迷彩も使わないで挑発したらバカにされたと思って腹が立たない?>
「…!」
確かに…目の前で現れて、最大勢力の倒すチャンスが出たのにそれを逃す奴は無能だ。
「そうは言いますが…」
だが、見つけた瞬間、何が何でも倒そうと集中するに違いない。
「大丈夫なんですか?」
<人形が私達を心配するの?まぁ、心配しくれるだけの理由もある…か>
別に今後の利益とか、責任とかそんなものではなく、単純に心配しただけなのだが…アリアさん達にも人形を信用出来ないだけの理由を抱えているだろう。
<確認するわよ。まず私たちが囮になって敵を誘導する…敵がハマったらそこから一気に最大火力で叩く…いいわね?>
なら、追っての鉄血はキルゾーンはパラデウスにぶつけやすいところにするか…市街地で障害物だらけなら…乱戦も容易い。
<数で劣るなら、質を使って強引に局地的有利にもっていく…いい?>
「…了解!」
正直、ファイアホーク隊が心配だが…彼女たちが問題ないと言うのなら本当に問題ないんだろう。
────30分後
「────感染者!!」
「あぁ!見えてるっ!」
予定通り、ロケットランチャーを倒した後、私達は追撃してきた鉄血の兵士達をパラデウス達のキルゾーンの所まで、追い立てていく。
「────ウオオオッ!!」
「────ハッ!?」
だが、追い詰めたと思った瞬間、壁を突き破って、感染者が襲いかかる…
後ろから、噛みつかれて手が届かな────
「────じっとして!」
ROが遅いかかった感染者の頭をHK416が撃ち抜いて、助けられた。
「ごめん!クルカイ!助かった!!」
「どういたしまして…って言いたい所だけど…中々引っかからないわね。それどころか、感染者を使った罠まで…」
生き残りの鉄血も相当手練れ…か
「この交戦距離じゃ…戦術人形の質の御利益も…薄い?」
「弾薬が無くなったなら殴り合いも現実的な距離になってきてるわよ」
嵐でバラけたデータリンクでも50機以上で連結すれば、この場の不自由もない…
鉄血もここまで生き残っただけ…冷静、グリフィン人形の動きを計算して、キッチリと距離を測られてる。
「SOPⅡ、いい兆候じゃありませんわ…」
「えぇ」
「そうだね」
AUGの懸念通り、至近距離での殴り合いは、I.O.P製のあんまり得意じゃない…
「────止まらないで対人もしてるのよ!?」
ROが私を狙っている鉄血兵を潰した。
「────まだ、ふざけてる感覚が抜けないの!?コッチも一杯一杯なのよ…!自分の持ち場ぐらいしっかりしてよ!!」
「────ああ、そっちもね!」
ROが始末した筈の感染者を撃ち殺す。
「…さっきまで殺した筈なのにっ!!」
「────アイツらのしぶとさを舐めるな…知ってるでしょ」
クルカイはさらにもう1発トドメを指す。
鉄血は敵じゃないとばかり、あまり重要視して無さそうだけど、それは初期の方しか相手をしてないからだろう。
<────楽しそうな声が聞こえるわね>
側から見て、これが楽しそうとでも?それにしても、アリアさん達…本当に凄いな。
何の目的でここにきたのか知らないけど…本当に頼りになる。
<しまった!!感染者が抜けた!────行ったぞ!>
<───はぁ!?何やってるのよ!?>
────ハニーバジャーの防衛から抜けてきた、感染者がこっちに遅いかかるクソッ!私達じゃ持たないって言うの!?後ろの直属部隊も手一杯なのに!
「────っ!?」
感染者の攻撃を避けた瞬間…路地でこちらに銃口を向けている、パラデウスのドッペルゾルドナーが見えた…
「(ダメだっ!打つ手が────)」
諦めかけていた次の瞬間、私を狙っていたドッペルゾルドナーが吹き飛んだ…一体どこから?
「射撃位置は、レーダーに…ブリップなし…!?」
まさか…ステルス機っ!?
<待たせたな!SOPⅡ…あ、ごめん。結構近かったか?>
「え!?指揮官!?」
<だから言ったじゃないですかぁ?隊長?もう少し早く撃っても良かったって!>
────ユーリと部下の兵士達が空からやってきた。
<グリフィンへ、こちらヴェルグ4。感染者とパラデウスはこちらで抑えます、あなた達は指定座標へ急行してください>
ユーリ達も来たか!でも、ここを離れたら市民は
「だっ、だけど…セルビア政府の命令で隔離壁は────」
<大丈夫!!ソ連外務省が交渉で一時的に民間人だけ隔離壁内部に入れることについさっき説得しました!もう少しすれば…>
<カリーナです!!隔離壁が開きました!今のうちに民間人を中に入れます!>
本当だ!あの歓声じみた声の様子から私たちが助けた人たちが壁の中に避難している!
<これで、悩みの種は消えましたね?なら、急いで!!>
「で、でも…指揮官…!」
「街はまかせろ、SOPⅡ!RO!Kが君達に座標を送っている、そこに向かうんだ!ここは俺たちが支える行けっ!此処は俺たちだけでもう"大丈夫"なんだ!」
<数の事なら心配しないで!もう、1個大隊相当の部隊が動いてる!>
一個大隊!?中立国にそんな数…配備させる訳…!?
「────ですが…」
「また、Kですか!?あんな奴に従う義理なんてもう、ありませんよ!!」
<Kも私たちに不利な情報や出し惜しみはできない筈だからな…まだ、間に合うかもしれないんだ!君が本当に後悔する前に…!早く!>
本当に有用な情報…まさか。
「────分かりました。此処を任せます!全員!ついてこい!」
────視点:ユーリ
やっと、SOPⅡやRO達が部下を連れて、指定ポイントまで向かっている、
<いい感じじゃないですか?隊長?>
『ああ、見せてやろうぜ。ベオグラード防衛軍や鉄血、パラデウス…そして、グリフィンの連中に…俺たちやり場数を踏んでいる奴が居ないって、いう事実をな!!』
『ユーリ!!私のブレードはどうした!』
マズイ…バレた。
いま、あれが最新型の"カリエス"を装備して装備を身に付けてないからな…そりゃあ、カンカンか
『悪い…壊れた』
『…データは盗んでないでしょうね?』
『やりたくても無理だろ…』
あのファイアーウォールは電子戦特化の戦術人形が100体必要になる。
『いいわ…信じてあげる。でも、今度はちゃんと"持参"して返してね?あと、分かってるわよね?』
『もちろんさ、"配慮"は忘れない』
…今回の事件でお前達が手に入れた物を俺たちが政府にも言わず、記録にも書かないで一切、黙っていればいいんだろ?
『賢い奴は嫌いじゃないわ…さて』
『あぁ…邪魔者は全部平らげてやる』
SOPⅡとROの部隊達が座標に向かって走り出すのがデータリンクでも確認できた、まだ廃棄していない長刀を取り出して、戦闘の準備をする。
「指揮官」
『どうした、クルカイ?』
「こちらを」
HK416がマガジンを手渡した。
MCXにも使えるマガジンだ。ちゃんと300BLKが装填されている。
『助かった。でも、どこから?』
「防空壕の中で見つけたのであらかじめ取り出しておきました。……会えると信じておりましたので」
そういう、HK416はユーリから見たら嬉しそうにホッとしたと見えるがそれは言わぬが花か。
『流石だよ。君を雇ってよかった』
「当たり前です、私は完璧な人形ですので」
『あ、そうだ。隊長、念の為にこれを。あなたは"E.L.I.Dを倒したこの後"も戦わなきゃならない筈です。それとも本当にほっとくつもりなんですか?』
全く…全部見抜いてやがる。第三次世界大戦のころからの部下だからな…まぁ、付き合いも長いし、分かってる…か。
『分かった、使わせてもらう…』
予備マガジンと一緒にヴェルグ2からもらった"これ"を受け取る。
『────いざとなったら切り捨てますからね?自分の運命くらいは自分で切り開いてくださいな?』
『────あぁ、お前もそれはならない機体の筈だ。無茶するなよ!!』
『やっぱり…変わりましたね。隊長』
どうした?突然と、ユーリは聞き返した。
『いいえ?なんでもない。さぁ、アイツらを挽肉にしてやりましょう?』
ヴェルグ2、アキはユーリのことを変わったと感じた。
自分の知るユーリはもっと感情の薄いドライなところがあった。でも、それを差し引いても魅力的な強さが彼にはあった。
今の彼はまるで大切なものを取り戻したように、少し暖かくなっている。魅力的な強さはそのままで。誰のおかげかは知らないが、今のユーリの方がアキは気に入っていた。
「────ヴェルグ1から、トロイカ1。戦術マップで私のマーカーが示した地点に、パラデウスのロデレロとストレンツィの一個分隊が待ち伏せ中、西方向から火力で押し切って、誘導を」
<────了解です。トロイカ2、3、5!俺に続け!!>
さらに増援で派遣された部隊と合わせたデータリンクで戦術情報は大体分かるくらいになった。
まさか、核攻撃かもしれない状況で残ってくれるとは。借りを返す相手はアリア達の他にもまだまだいそうだな。
けれも、彼らのお陰で戦況は完全にこちらの有利になったので悪い気はしていない。
『────北側にいるファイヤーホーク隊は北側を押さえながら十字砲火(クロスファイア)に気を付けつつ、トロイカ4、6と一緒に敵を囲む様に攻撃を────ホーク1、準備は?』
<────問題ないわ!それにしても即席のCPとは考えたわね!確かにこれだけデータリンクが繋がって居たら余裕ね!でも────クソッ!今の危なかったわ!>
<────あと少しだ!>
質で圧倒的に優っているとは言え、数には限りがある…満タン近くに補給しているコッチも凄まじい勢いで減り続けている。
『────クソッ!!潰しても潰してもキリがない!!』
『だからといって、此処から逃げられるじゃない筈だ!来るぞっ!』
襲いかかったB型のE.L.I.Dに蹴りを喰らわせる。
「────ゴオォっ!?」
『────セイッ!!』
車すら容易く蹴り飛ばせる出力でB型の顎を砕き……
「今だ!!」
HK416が貫通性能を高めた5.56ミリをフルオートで撃ちまくり、肉の鎧を削っていく。
『────ハァッ!!』
そして、新型装備"カリエス"の踵から放出された備え付けブレードが削れた肉の鎧に突き刺さり、そのまま築き上げて首を抉り取る。
<隊長!今ので余裕ができました!>
『よし!一気に巻き返すぞ!』
<<了解!!>>
うおおおお!と士気を取り戻した兵士と人形が巻き返していく。
波に飲まれるように群雄割拠だった戦線が一つの有利な元、次々と片付けられていった。
────10分後
<最後の敵を排除!>
<鉄血の動きが止まった!?いや、アイツら逃げ出してるぞ?>
<ざまぁみやがれっ!>
<俺たちに喧嘩を売るからこうなるんだよ!>
<パラデウスは……なんだ?動かなくなってる>
勝った…E.L.I.D、鉄血、パラデウス…コイツら纏めて殴り合ったり、押し付けたりするごちゃ混ぜの戦闘で最後に生き残ったのは俺だったらしい。
グリフィンが送り届けた民間人もこれで安全だ。
此処で陣地を築けば、後は少しずつ引き寄せるだけ容易に勝てる。もう、俺の指揮は必要じゃないはずだ。
『あとは俺たちで支える!隊長行け!』
『了解!そっちは任せる。クルカイ、君は?』
「問題ありません。ついていきます」
次の目的地はSOPⅡたちを先に向かわせた場所だ。
念の為、ついていくかHK416に確認してみたが問題ないと、頷いた。
『…アリアもここは頼む』
『仕方あるまい。もう機体の推進剤が2割を切ってる…半分残ってるあなたと違ってね。追いかける事はできないし…後始末くらいなら、どうにもなるわよ』
ここから先は鉄血との勝負か。
『ちょっと失礼』
「────えっ!?はいっ!?」
突然、ユーリはHK416を背負った。
HK416はカリエスのように長距離ジャンプや滑空できる装備を今持っていない。
なので、俺が彼女を運搬する。
『走るより、こっちの方が早いな……援護頼むぞ!』
「全く……分かりました!振り落とさないでくださいね!」
HK416も仕方ないとしがみつきながら了承した。
ユーリはHK416を背負いながら再び跳躍を開始して、目的の場所へ向かう。
────視点:M4A1
「M4!今の爆発は?」
爆発音を聞きつけたであろうAK-12がやってきた。
「"ノード"を盗まれたM16がもっていった!!」
「追うわよ!」
開けられた穴から外に出ると、外は死骸で溢れかえるベオグラードの街道だった。
「何よ!?コレ!!」
「数時間で何が起きた!?」
大幅に変わった、街なみにAR-15もAN-94も驚きと困惑を隠せない。
「ベオグラードに感染者が溢れ出したのよ!────以上!!」
「それは、簡単な説明で済ませるべきじゃ────」
「────生きてたか!!」
こちらを補足したデストロイヤーの大型モデルガイアが私達の所までやって来た。
敵だと思って一同構えたが、敵味方識別はグリーン。味方らしい。
「よく此処まで来たね!もう、あんた達の後ろは誰も通さない!!」
「私達の事を知ってるの!?」
「────ずっと後ろから観察してたからね!!」
監視してた?彼女達が?何の為に?
「そろそろ"足"も…よし!間に合った!!」
突然、4台のバイクが自分たちの目の前までやってきて停止した。
「コイツでM16を追いかけるのよ!」
<敵だ!!恐らくM16の護衛だろう>
「もう気がついた!?詳しい自己紹介は後!来るわよ!!」
四方八方から、鉄血の兵士達が現れる、どうやら話し合う時間は無さそうだ。
「反逆小隊!M16を追跡するわよ!!」
エンジンを稼働させて、稼働させたエンジンがタイヤを勢いよく回転させバイクは一気に走り出す。
「鉄血の裏切り者め!たった1人で足止めだと!?」
「────そんなことしないわよ」
「おい!味方を撃つ────」
「まさかお前────」
突如、群れの中にいた鉄血兵達が次々味方を撃ち始めた。
そして、お互いを撃ち合い大勢が倒れた。
「誰か…立てるやつは?生き残りは私だけか!?」
「…まて、私も────」
静まり返った町並みで、唯一の生き残りだと思っていた鉄血兵士が立ち上がろうとした瞬間…他にも立ち上がっていた十数名の鉄血人形に集中放火されて殺される。
「片付いたわ、IFFが最低限な状況での"融合勢力"はやっぱり効果があったわね。私もバイクで……あ、無くなってる。……走るか」
────
───
「────追いついた!」
M16を乗せたビークが悠々とノードを持ち帰る途中────背後から声が聞こえる
「…いつのまにそんな足を」
すでに街の内部に避難して居たと思っていた、M16の表情が戦慄した。
足止めの鉄血もばら撒いて自分の最高の手を打ったはずなのにそれをことごとく反逆小隊は乗り越えられたのだ、
「まちさない…!M16!!ノードを返してもらうわよ!!」
「────うへぇ…マジかよ」
ビークも落胆した声を隠せない、M16は銃口を向ける。
「アンタがどうしたとかなんて、もうどうでもいい。でも、私たちにはもう、後がないの!力強くでもそのノードは渡してもらうわよ!」
「随分とつまらん事に拘るな、私が従うと?」
「小隊の隊長は私よ!!アンタの指図は受けない!」
「指図じゃない、これは警告だ」
その言葉を聞いて、私は落胆した。
「…はぁ、傘ウィルスはそんなに人格を歪ませるのね。…困って居たのなら助けてあげようと思ったけど。気が変わったわ、命令よM16、ノードを渡して。…でなきゃ殺す」
私の挑発にM16は舌打ちをした。
「お前が見逃してやったのは私の甘さだな。今までいろいろ免じてやったが…気が変わった。警告してやる、私に立ち塞がるならお前を殺してやる」
よく分かった。なら、もうアンタは私の大切な姉じゃない。
「「────死ね」」
私とM16が銃の引き金を引く直前────弾丸が、その間を掠めた。
「再開を邪魔してすまんな」
「────ジャッジ!!」
クソ…ジャッジまできたのか!コイツは厄介な人形だった覚えがある。
「イイトコロに来たじゃん、チビ助」
「おい、後で覚悟しろよ。ここは私が引き受ける」
ジャッジが現れて、追おうにもその行手を阻んでくる。
「強引に突破するわよ!」
「ふん、そう簡単にいくと思うなよ!」
高速のレーザー弾が激しく、襲いかかる。
「────クッ」
足を止めた瞬間、
「貰った!!」
「────!!」
ジャッジの鋭い蹴りが、私を蹴り飛ばした。
「お前は主が会う事を望んでいる。だから…お前は一緒に来てもらおうか!」
「……邪魔よ」
ジャッジがM4A1に銃口を向ける。
仕方ない、出力解放をしてさっさと倒してしまおう。そう思った。その時だった。
<データリンクを更新……味方ステルス機カリエスが接近中>
「────は?」
「……は?」
『口説き文句で出るところまでは認めてやる────だが、人の女を渡してやるほどこちらも優しくない』
銃声が鳴り響きジャッジの腕が吹き飛ばされる。
「命中!ジャッジの左腕にダメージ!」
ジェット音と報告が聞こえる。
銃声の方角を見るとカリエスを装備したユーリとその後ろでおんぶされているHK416の姿が見える。
腕を吹き飛ばしたのはHK416だったらしい。
『久しぶり……でもないか。M4』
「し、指揮官…?……と、なんです?その格好?」
「────私の格好を聞くな!!」
HK416が白目を剥いて、抗議してユーリの背中で騒いでいる。
どうやら、不本意だが必要に迫られておんぶされていたらしい。……恥ずかしいんだろう。
「────貴様ぁああああ!!」
腕を切り落とされたジャッジが両肩の砲塔で指揮官に向けて、高出力ビームを放つ。
『────チッ』
突然、指揮官を一瞬で光の粒子が覆い、展開されたバリアがビームを容易く弾く。
「パパ…」
AK-12は動揺しながらユーリを見ていた。いや、AR-15もAN-94も動揺していた。
……そうか、私以外彼には合っていないから、驚いて当然か。
『頑張ってるじゃないか?褒めてやる。────急げ、このバイクなら追いつける。M16を追うんだろう?』
「はいはい…ってコレ?!」
あまりの対応の違い、かと思ったらAK-12は何かを受け取りそれに驚いていた。
『という訳だ、ここは引き受ける。M16を追え!心配するなコイツを殺したら追いかける!!』
「ありがとうございます。M4。…あの時の様にまた指揮官を信じよう」
「────そうね、分かった。指揮官、此処をお任せします」
転倒して転んだ時に倒れたバイクを立て直し再び、私たちはM16を追いかけた。
「逃すか!」
「行かせるかっ!」
「聞いたことがある声だと思ったら、貴様かっ!!一度私を殺した、男!ユーリ・フレーヴェン!────M4は後回しだ!!殺すッ!!殺してやるッ!!」
「随分恨まれてますよ?何したんです?」
『俺に気が付かないで後方の人形に奇襲しようとしたから、ケツに銃弾ぶち込まれて……そのまま死んだ。背中じゃなくて本当にケツに当たったからな?』
「……ぶっ!」
あまりにも間抜けすぎる死に方を聞いて、HK416は吹き出して笑ってしまった。
「笑うなっ!人形!!」
「ごっ……ごめんっ、ふふ、いや……ないわけじゃないけど、でも鉄血のエリートが────」
ジャッジはもう怒り心頭だ。
ユーリ達をジャッジが攻撃しようとした瞬間、ジャッジの武装の一部がレーザーではない実弾の爆弾で破壊された。
「また邪魔が────なっ、おまえらっ!?なぜ裏切る!?」
破壊されたジャッジの武装を眺めて、笑っているデストロイヤー・ガイヤにジャッジは裏切ったM16を見るM4の様な目で激昂した。
「何で…?当たり前でしょうが!?────アンタが私を切り捨てて生贄にしたからに決まっているでしょう!?」
デストロイヤーが叫んで、爆弾を発射する。
通常のデストロイヤーとは比較にならない火力がジャッジを襲う。
「それに…グリフィンの方が、いろいろとまぁ…"楽できる"って知ったからねぇ?」
「────でも、報酬通りの仕事はするよな?」
「まぁ、そうね。働かざるもの食うべからずってね」
他にもやって来た10数体の鉄血人形もやってきた、それらが鉄血には未来がないと組織を見限って、新しい雇い主にグリフィンを選んで鞍替えした人形達だった。
『随分好き勝手してくれたな?…この中で誰が1番怖いか教えてやるよ』