たったひとつの願い   作:Jget

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オレンジ色の空

ベオグラードの街道で、鉄血を見限った"融合勢力"と

 

『…』

「────このっ…」

 

ユーリとHK416相手にジャッジを1番の階級として、激戦が繰り広げられて居た。

 

『…ふん』

「────消えたっ!?」

 

ステルス機である、"ヴェルゼ"は鉄血人形の武装蜂起を一応の"背景"とし、これから起きるであろう、同型のパワードスーツを装着した兵士同士の対人戦を見越して開発された機体である。

 

『よく見ろ、俺はここにいるぞ』

「────グアッ!?」

 

当のジャッジは必死に探しているが、別に光学迷彩は使用してない。

からくりの説明の前にまず、レーダーの探知の仕組みの話をするとしよう

 

⓵レーダーが電波を飛ばす

⓶その電波が物体に当たり、誘導電流が発生する

⓷誘導電流から電波が発生することで反射波となる

④レーダーがその反射波を拾う

⑤発信と受信の時間差から物体との距離が、アンテナの放射特性から大体の方向が判る

 

…というのがレーダーの仕組みだ。

だが、そのレーダーに見つからない様にするに何をしたのか?

 

『帰ってくる波長が同じなら、異変が起きてないと…同じか!』

 

やった事はその返ってくるレーダーの形を埋める様に同じレーダー派を返す…というのがこのステルス機の仕組みである。

 

「────なら、何故!?」

『何故目視が出来ない…?…ふっ!』

 

この同じ波長で返す方法が"ヴェルゼ"の特異的なステルス機の特徴だ。

さらに恐ろしいのは同じようにレーダーを返すための方法がマスクされたデータを相手に送る瞬間ウィルスを流し込み、データリンクそのものを支配、書き換えてしまう。

 

『…ほら、どうした?目の前だぞ?』

「舐める────ゴハッ!?」

「(私も見えなくできるのか)」

 

人形特有の痛みや感覚を司る機能がある限り…その機能も探査した時点でハックされてしまい…

こうして、視覚情報からHK416を奪われて仕舞えば彼女の姿も見えない。

 

『触れ込み通り本当に人形相手じゃ一方的だな』

 

"虫歯"という意味を与えられた"カリエス"。

この装備の能力相手では戦術人形は視界すら蝕まれその目で見ることすら許されない。

せめて…本当の目がある"人間"なら対抗できたかも知れないが…

 

「────何故だっ!?なぜ、お前の姿が見えないっ!?声は聞こえるのに!?」

 

"戦術人形"が"戦術人形であり続ける"限り…"絶対"に"ヴェルゼ"を見つける事は…出来ないのである。

 

『…ソフト面もだいぶ感覚が掴めてきた────さようなら』

「────声も…声も聞こえない、…何処だ?…何処にいる!?何処だぁ!?」

 

もう、ジャッジには声も聞こえないだろう。

ただ、声は聞こえる様にしてやっただけだしな。

 

「がっ────!!は…」

 

HK416が正面から銃撃を放つ。

ズタズタにされて、ふらつきながら何一つ攻撃らしい事が出来ずにジャッジはコアを背中から長刀で刺し貫かられた…即死だ。

 

「えげつない装備ね……」

 

カリエス。これを持つ敵と対峙したら、一方的にやられるのは人形の方だ、便乗した身であるが無情さを感じずにはいられなかった。

痛みも感触も感じない様に設定した貫きはまさに"死んだことすら気づかない"だろう。

 

『凄いな』

 

融合勢力やエージェント達にはステルス機の効果でハックしていないので間違って誤射する事は無いが…

 

<────あーはっはっ!!本当見えてないのぉ!?そこかしこに逃げ回ってマジウケル!!>

 

味方の信号すら欺瞞できる能略は、今起きている対人戦では、圧倒的に優位な方向でこちらに働いている。

 

<そろそろ、終わりにしよう>

<えぇ、楽勝よ>

 

レーダー派を探知して返ってくるまでの時間は数秒、その間までに解析して、同じ様に返す…というのは政府の技術を掻き集めても難しいものだった、

 

故に開発は、遅れて…アメリカ合衆国に優位をとっていた崩壊液のアドバンテージが水泡に帰すレベルでの対E.L.I.D戦略に遅れをとる事になった。

 

『────有難みを受けると、要らないとは言えなくなるものか』

 

だが、出来上がった事に対するリターンは期待できる物だった、今でも十分役に立っているし、腐肉喰らいとの戦闘能力も向上している…今の時点では全く不満と言える明確な物もない。

 

「指揮官、もう周囲に鉄血はいません。安全です」

『────ああ、追いかけよう』

「またこの格好……」

 

一方的な勝利を得、敵もいなくなった。

ジェット噴射が巻き上がり、また背中にHK416を乗せてユーリは突き上げられた様に上空に飛び上がるとM4A1達を追いかけたのだった。

 

────視点:M4A1

 

「────追いついた!」

「────M16!今止まらないと死ぬほど後悔するわよ!!」

「────あぁ!クソ!もう来やがったぁ!?あのダチしつこすぎるだろ!!お前本当にクソの役にも立たねえなぁ!?」

「────黙れ、どんな武器でも使え。ここで捕まるわけにはいかん」

「────待ってましたぁ!!」

 

喧騒の中、ビークとそのバイクに乗っているM16を追いかけ追いついた。

 

「(指揮官達がジャッジを食い止めてくれなかったら…と思うと本当に危なかった)」

 

指揮官は今どうしているだろうか?……いや、しっかりしろ!M4!!そんな事は指揮官が大丈夫と言ったら大丈夫なんだ、それならば一刻も早くM16を…止めなくては…!!

 

「これでもクライナッ!!」

「────地雷だ!避けろ!」

 

AN-94が素早く、避ける方向を指示して、爆発を回避する。

 

「────ああっ?!舐めんなよ!オイ!」

 

今度はミサイルが発射される

 

「────撃ち落とす…!」

 

AR-15が半分違わぬ射撃スキルと物量でほぼ全ての爆弾を誘爆させる。

 

「────隙ができたわ!」

「────射撃するっ…ダメだ!バリアがっ!!」

 

4人の一斉攻撃の銃弾がバリアによって防がれる。

 

「────テメェ!?調子乗るんじゃねぇ!!」

 

痺れを切らしたのか、ビークは数体の随伴ビットを稼働させて、高出力のレーザーで凪払おうとしたが…

 

「────パパッ!力を借りるわよ!」

 

────ハイハイ…ってこれ!?

 

あの時、指揮官に肩を叩かれた瞬間、AK-12はテニスボールと同じくらいの大きさのシールド装置を手渡されていた。

 

「────でも、これで逆転の目が見えた!!M4!最後の一発を!」

 

分かってる、残っていたケースの最後の1発…今こそが使い時ッ!!

 

「ええ────当たれぇ!

 

残りわずかの砲弾を搭載したガンケースから放たれた砲弾はシールドを突き破り、その余波が嵐の様に周辺のガラスを粉々した。

 

「アノ…クソアマぁあああああああ!!!!────取って置きを使っちまったじゃねぇかああああ!?」

「────シールドが崩れた!このまま一気に!」

 

最悪、ノードはM16諸共壊してもいい…だから、ここでケリを────

 

「────もう許さねええええええええ!!!死ねぇやあああああああ!!!」

 

ビークの大量のミサイルが一斉にM4目掛けて発射される!メンバー総出で撃ち落とそうとするが…そのうちの1発が私の目の前にやってきた。

 

「────!!」

「────M4!?」

 

次々とM4のバイクに着弾した、これでM4A1はバイク共々粉々にされたに違いない。

 

「────ギャハハハッ!ザマァみやが…────オイ!?何で死んでねぇんだ!?直撃しただろ!?」

『…間に合ったな』

 

ミサイルが来た刹那…突然現れた光の粒子が指揮官を包んだ。

まるで、それはジャッジから助けてくれた…あのAK-12と同じシールドを使って壁になってくれた。

 

『────悪い、遅くなった』

「────指揮官!!」

 

目を開けるとブースターで滑空しながら、指揮官が併走していた…もう、ジャッジを倒したの!?

 

「────アアア!?誰だよっ!?このクソッタレがぁ!!出てきやがれぇ!!」

 

────ビークやM16は指揮官が見えてないのか?

 

「ビーク、前を見────」

「黙っテロ!!この、酔っ払い!アンタが見逃したから今ボカすか撃たれてんだよ!!」

 

<ごめん、M4…エンジンがやられた…>

<こっちもダメだな。────徒歩で追いかける!>

<パパッ!M4を守ってあげて!!>

 

────刹那、再び現れた光の粒子がまた指揮官を包んだ。すると、ビークが放ったミサイルは撃ち落とされる。

 

「M16ぅゔゔゔ」

 

背中におんぶされていたHK416が撃ち落としていた。

しかし、彼女の声は風邪のせいでなんかHK416が扇風機に声を当てたようになっていた。

 

『────M4!走れっ!』

「あっ、はいっ!────M16!!」

 

指揮官が攻撃をどういう方法で防いでくれるのか、分からないが…今なら!追いつける!!

 

「撒いたか!?…って、またダメじゃねぇか!?何が起きてんだよ!?攻撃が全然効いてねぇぞ!?あの、青い光のせいかっ!?どんなカラクリしてんだよ!!」

「グダグダ言うのなら前を見ろ!!」

「────だったら、テメェがあの緑女を止めろや!カス!!何であの距離で当たらねえんだよ!?」

 

M16やビークには恐怖体験だろう…M4にミサイルや光弾が当たる瞬間…稼働したレーザー発生装置がアーマーの全身に行き渡り…触れた瞬間、あまりの出力にミサイルや光弾が弾かれたり、溶かされたりするのがその仕組みだが…

 

「────当たってないんじゃないか!?象にも当たらないぞ!?そんな、いい加減さなら!」

「────何だトォ!?」

 

そのカラクリをしているのがM4の上を飛んでいる指揮官なのだが、それが見えなければ怪奇現象でしかない。

 

「────あぁ?!また、グリフィンじゃなねぇか!!」

「────なっ?!」

 

────ベオグラード高速道路前

────視点:SOPⅡ

 

<こちら、A-545。先行した鉄血部隊は全て倒しました>

「了解、さすがだね」

 

A-545からの報告を受け取る、SOPⅡ。

報告を受けた時は30以上の鉄血がやってきたというがそれを1人で片付けているのだ。

最初1人だけだと聞いて、どうしたものかと不安だったけどそんなこと最初からしなくてよかったらしい。

 

「隊長、バリケードの設置完了しました」

「ありがと、X95」

 

高速で飛ばし、高速に乗ろうとした2人の道なりの先にはKからの情報を得た、SOPⅡとRO…そして、その部下達が築いていたバリケードが出来上がっていた。

 

「よぉ、随分気を回してるんだな。あの新入りに…惚れてんの?」

「────違う。…彼女は私によく似てるからね」

 

SOPⅡは自分の話をニヤついて聞いているMP7に信じてないな?という直感を感じた。

 

「まぁ、いいや。────それと、話が変わるが…お前、撃てんの?M16の事?」

「────なんだ、なんの話かと思ったら…その話?心配しなくていいよ、もし私達に牙を剥くなら…」

 

「…剥くなら?」

「────死んでもらうしかないね」

 

MP7は私の目をしばらく見つめて…やがて私が話した言葉が本気である事を理解してくれた。

 

「そうだよ… M16が何かを捨ててるなら私は────その捨てた判断した物を取りに行く」

<────HS2000です!M16が接近中!>

 

やっぱり来たか、ベオグラードを地続きで逃げるための近道はここだからね。

 

「────止まりなさい!M16!」

 

ROがM16達に警告をした。

案の定というべきか、指示に従う様には見えない。

 

「────戦闘準備」

 

部下達が銃をバリケードに立てかけて、照準を合わせる。

 

「こっちは本気だ!でないとそこのツインテールごと死んでもらう!」

 

至近距離で最後の衝撃弾がM16達を襲う、バイクは揺さぶられる。

 

「────アイツ!止まらないぞ!」

「────SOPⅡ!!」

 

それでも、強引に突破しようする。

 

「────分かってるACR!攻撃しろ!迷うな!」

「了解!!」

 

SOPⅡの部隊もバリケードを突き破るM16達に銃を連射する。迷うな…か、誰に言った言葉だろうか?

 

「あぁっ!?ちくしょ────」

「────行けッ!アップル爆弾!!」

 

FN-ELGMから発射された爆発力を高めたグレネードが今度はある程度、動きを制限されたビークのバイクに直撃、大破してビークとM16はバイクから転がり落ちた。

 

「────ゴホッ!ゴホッ!!SOPⅡの奴…躊躇なくやりやがって…」

 

転がり落ちたビークとM16は高速道路から転落している、先を走っていたはずのトレーラーもROの部隊が襲っている。

 

────お困りの様ね?

「────おまえか」

 

────もうすぐしたら、M4A1達がやってくる、そうなったらあなたが最も望まない結果になるでしょうね。

「────なら、どうすると?」

 

────分かってるでしょ?

「────ノードか…」

────やっぱり分かってるんじゃない

 

M16の回収に来たのか、高速道路から落ちた地点にトレーラーを護送していた鉄血の兵士達が群がりだしていて、確認しに来たRO達と交戦する事になった。

 

「なんか…やたらと強くなってるわね?DP-12?」

「そう思いますか?MG36が負傷でかけてからだと思っていましたよ?ハニーバジャー」

 

トレーラーを護送しているのはSWAPタイプ鉄血の人形の改良型、そう簡単にはやられはしない。

 

「動きが鈍った!やれ!AUG!」

「────了解ですわ。RO」

 

しかし、それでも秩序乱流で生き残った猛者達組まれた、AR(アサルトレイド)と戦うには役が重かったかもしれない。

 

「シールドも、こうやって…ドラゴンブレスで燃やせば…」

「────ギャアアア!?燃えるっ!?熱い…!痛い!!」

「────ガルルルル!!」

「なんだ?この電子ペット…!は、離れろっ!?」

「ナイス、ペト!」

 

数的有利も武装の豊富さでも彼女達の力量を上回れていない。

 

「M16がトレーラーに入った?」

<ドローンの映像を見る限りそう見えます>

「どうします?RO?」

「決まってるでしょ?AUG、トレーラーの壁越しに撃て」

「了解」

 

AUGが左右に薙ぎ払う様にトレーラーの荷台に発射する。

 

「────ガハッ…マジで容赦がないな」

────あら?大丈夫?

「…っ、お前に心配されたくない。それよりも、これを使えばいいのか?」

 

流れる人工血液を見ながら、傷口を抑えてM16は質問した。

どうやら、AUGの銃弾がトレーラーの壁を貫通してその内の一つが当たったらしい。

 

────ええ。そろそろ、M4が来るわ。

「────そうか。それよりも、"コレ"を私に直接繋いで使えばいいのか?」

────後はあなた次第よ。

「私次第?なら、答えは決まっている…!」

 

M16が手に持っていたノードをコアに直接、接続した…次の瞬間

電流の砂嵐のようなものが周囲に弾け飛んだ。

 

『こ、これは…!じゃ、────グ』

「指揮官!?…!?ば、バイクの出力が────」

 

いきなり、バイクの出力がダウンして止まってしまう。

 

「これは…」

 

────とんでもない数のジャミングよ!!M4!早くM16を!私はこのジャミングを防ぐだけで精一杯で

「OGASが手こずるほどの…!?」

「クルカイ!しっかり……!M4!?…君は無事なのか?」

 

クルカイは糸が途切れたように動かなくなっていた。

ユーリからは拡声ボイスの音量すら感じない。ジャミングかっ!?

 

「はっ…はい!でも、指揮官!」

 

それでもここは出口近く流れ込む崩壊粒子が来ている、いくらスーツに崩壊液耐性があるとはいえ、下がらないと────

 

「…心配するな。俺には崩壊液に多少耐性がある、だが…それよりも早く追いかけよう、逃げられる」

「────え、えぇ!!」

 

不安を感じながらも、私は指揮官と共にM16が転がり落ちた所まで走って向かった。

 

「ここか…」

「えぇ」

 

ビークが振り落とされる瞬間に煙幕を撒いたか…これじゃ何も見えない。

 

「M4?サーマルは?」

「…ジャミングで使えませんね」

「…こっちもだ、警戒しろ。突然動き出す可能性もある」

 

ジャミングで停止した、人形達がまるで時が止まったというより、石になったかの如く微動だにしていない。

 

「────見つけた、トレーラーだ」

「流石!目も良い様ですね」

「ああ。探しものは昔から得意なんだ」

 

指揮官がトレーラーを指さす、普段レーダーや索敵機能に頼りきりだと、いざ無い状況に置かれた時は人間の方が頼りになるかもしれない。

 

「────はぁ…はぁ」

「動くな…!」

 

誰かがトレーラーから出てきて、私より先に指揮官が出てきた相手にA-545を向けた。

 

「M16。ようやく見つけたわよ、ノードを渡しなさい」

「────アレが?…M16なのか?」

 

サイトから目を離してユーリはM16を見た。

変わり果てた姿にユーリはは驚きを隠せなかった。

 

「────指揮官か、くたばってなかったか。残念だよ」

「…軽口のつもりなら今すぐ訂正しなさい。それと、手に持っているそれを渡しなさい」

「悪口は気にしてないし、今なら引き返せるぞ」

 

M16は指揮官の忠告を聞く気はない、銃口を向けた。

 

「────甘いな」

「────!」

 

指揮官に銃を向けて引き金を引く、その瞬間より0.1秒前に指揮官は身体を左に動かした…

銃弾はヘルメットの右顎部分を軽く、擦りヘルメットを軽く抉った。

 

────視点:M4SOPMODⅡ

 

…一体、何が?視界の様子が変わって…何が何だか分からない、突然視界が────いや、まて…この反応は?

 

「────お前は」

 

白い敵の独特の信号…忘れる筈がない…この反応は…!

 

「────痛い…痛いのよ…カラダヲ、カエテモカエテモ…!!ドウルイ…?ドウルイ!!ドウルイの身体ぁ…!!欲しい、ホシィ…寄越せ…ヨコセェ!!そのカラダァ!!」

 

R93を殺した憎いネイトの反応だ…!

 

「────ニィイイモオォゲェエンン!!」

「────ギイィイイイ!!」

 

また、この触手かっ!?

とにかくライフルに手を伸ばして発砲した。

 

「────当たらない…!」

「ィイイヒビィヒイイィ…!!」

 

外れた。

さっきよりまるで反則たかというより…めちゃくちゃな軌道だ!まるで、コイツの心の中を表した様に。

 

「────う…SOPⅡ!」

 

意識を取り戻した、X95が襲いかかる手の余る触手を撃ち落とす。

 

「────三流人形ガァア!!」

 

ニモゲンが怒りの矛先をX95に向けると彼女を蹴り飛ばした。

 

「────かッ!?」

 

蹴り飛ばされた、X95がバリケードに頭から激突して、動かなくなった…頭からは血を流している

 

「────X95ォ!?」

「────ギャハハハッアアア!!」

「────お前ェエ!!」

 

まるで、コイツは昔、私が敵をいたぶる時の様にあげた狂った笑い声を上げている。

 

「────う…」

 

人形でもあの体制でぶつかるのは危険だ、早くX95の状態を見なければならないけど…!

 

「────死ねっ!!死ねっ!!クタバレっ!!」

「────グッ…う…!!」

 

まるで生存本能に突き動かされて様に、ニモゲンが撃たれても止まらず私に襲いかかる…!

 

「────っ!この野郎!」

 

今度はP22が意識を取り戻して、ニモゲンを止めようとする。

 

「────ザコガワラワラと…!!」

 

今度はP22に襲い掛かろうとした。

 

「お前の相手は私だ!」

「────ハナセェ!!」

 

次はやらさせない、ニモゲンを羽交い締めにして、動きを止める。

 

「コッチに…!来い!!」

 

部下をこれ以上コイツに傷つけさせるわけには行かない、私はニモゲンを引っ張り、そのまま高速道路から飛び降りた。

 

「────ギャアアアアアアっ!?」

「────」

 

回転しながら身体が落ちていく、

 

「(今だ!)」

 

力を振り絞り自分が上にニモゲンが下にしてクッションにできる体制で落下することに成功した。

────

───

ニモゲンをクッションにしたとはいえ、約15メートルの高さから落ちる時に発生する衝撃は相当なものだ。

 

<突然、電源が落ちて……!SOPⅡの近くにネイトの反応を見つけました!今、彼女の方に行きます!>

「────ゴホッ…ゴホッ!ゴホッ!!」

 

A-545の声が聞こえ、目が覚めた咳き込みながら起き上がる。

チカチカする、視界で起き上がる…腹と背中が痛い、仰向けに落ちたのは覚えてる…衝撃が背中まで来たのか。

 

「────グ…ぎ、ギギ…!」

「しつこいなぁ…」

 

糸に引っ張られる様に動きでニモゲンが起き上がり、思わず悪態をつく。

 

「…しまった」

 

落下の衝撃で自身の銃M4SOPMODⅡのダニエルディフェンスハンドガードが割れている、撃ったら逆に危険だ。

 

「…」

 

グレネード弾入れを見るがやっぱり残りがない。グレネード弾はアレで最後だった時点で間違いを期待したが間違いなんか起きてない。

 

「────コイツで」

 

サイドアームのグロック19を引き抜く、これも予備マガジンを使い切ってるから残りは10発も無い。

 

「────やっぱりダメかっ!」

「────シニゾコナイ!!」

 

全ての弾薬を叩き込んだが、ニモゲンの身体を抉ることも叶わない。

 

「────ふ、フフ…フフフ!!」

「────グァアッ!!」

 

触手が身体を切り裂く、流れる血液と零れ落ちるパーツ…これは、かなり痛い…

 

「────あっ!ぐぅっ!?」

 

だが…弱音を吐いてもいられない。私を守ってくれたR93はこれ以上の痛みだったはずだ。

 

「こんな所で…諦められる訳…ないよ!」

「マダ…イキテ?…ナンテ、ナンテ、テマノカカルクソニンギョウ…!」

 

どうする?拳で殴るか?あの触手に絡めとられるのが関の山だ、他に武器があれば。

 

「あの…ピンクのクズ女が…ワタシをテコズラセテ…オマエノカラダヲツカナワケレバナラナクナッタ!!ドウセツメイスレバイイノ!?オトウサマニ!!」

「────全部、お前がやった事のせいだろ!お前達がこんな事をしなければ、この街のみんなもあんな怖い思いをしなくて済んだんだ!私だって、あの子のところにお土産買って、謝って帰れたんだ……!」

「────アンナゴミ共の感情なんてシッタコトカァ!?オマエヲ始末シタラ、ソノ娘ヲ皮ヲヒンムイテやルゥ!」

 

コイツをここで殺さないとあの子が死ぬ!

今すぐ!今すぐ!殺さないと!!

 

「SOPⅡ────!!!」

 

上から声が聞こえた、その声の主はA-545だった、手に何か持っている。

 

「これ使って!それでニモゲンを!!」

 

何かを投げ下ろした。

 

「────サセルガアア!!」

 

触手で妨害しようとした、ニモゲンの攻撃をMP7が止めた。その間に、落ちてきた何かを受け取る。

 

「────これは」

「R93のライフルだ!!お前持ってただろ!初めて賭けに勝った時に!」

 

MP7の言葉にハッとして、胸ポケットにしまっていた弾薬を取り出す。

 

.338ラプアマグナム…私が初めてR93に賭けで勝った時に貰った弾薬。

 

「どうやら────幸運の女神は私にあるみたいだね」

 

ACRの攻撃を捌き切り、ニモゲンはSOPⅡに体当たりする。

 

「────ウオオオオッ!!」

「────ッ!」

 

タックルで私は吹き飛ばされ、仰向けに倒れる。

 

「────ヨォオオコォオオ…セェエエエ!!」

 

ニモゲンが身体を乗っ取ろうと覆い被さろうとした瞬間、突然ニモゲンは下から何か突き上げられる感触がした。

 

「────エ?」

「アンタに私の子供には触らせない……この化け物」ありがとう、R93」

 

弾丸をボルトを後ろへ引いて、エジェクションポートから.338ラプアマグナムを装填、そしてボルトを前に戻して下に倒した。

 

「(ありがとう、R93)」

「────ギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!オトオサマァア!!お父様アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!」

 

.338ラプアマグナムはニモゲンの胴体を引き裂き、あの叫び声を上げたネイトはようやくその命の灯火を枯らしたのだ。

 

 

────

 

「────SOPⅡ!!」

「RO…」

 

暫く、放心して生き絶えたニモゲンを眺めていたが、下にいたRO達がやって来て我に帰った。

 

「やったわね…」

「うん…」

 

こんな事しても、慰めにはならないだろうけど、仇は取ったよ…R93

 

「…もし.338ラプアマグナムが無かったら、きっと私はアイツに」

「────えぇ、きっとR93が助けてくれたのよ」

「うん、でも…今頃、絶対下手な射撃とか馬鹿にして────」

 

────ナイスショットでしたよ!

 

「────」

 

さあっ…と風が吹く。

 

「…でも、それでもきっと褒めてくれたんだよね?R93?…ありがとう」

 

静まり返った、空の中で雲の中から差し込んだ青色の空と光が心を晴らす様に私を照らしていた。

 

 

 

────視点:M4A1

 

ヘルメットを上がった直後、指揮官のパワードスーツがジャミングから立て直して、凄まじい速さでM16の銃を奪い取り、遠くに投げた。

 

「なんだと────!?」

『…いくぞ』

 

そのまま格闘戦に以降…人間は戦術人形には勝てないと言う俗説があるが…

 

「────グッ!ゴハアッ!?」

『不思議そうだな』

 

俗説は俗説に過ぎない。確かに戦術人形は人間よりも身体面で有利なところがあるが。欠点もある。

 

「(どうなってる…私が僅かに押されてるだと…)」

 

代表的な例として、"強くなれない"と言う所だろう。人間はトレーニングなどで己の肉体を高めていくことができるが、

 

「────チッ!」

『…ハッ!』

 

M16が凄まじい速度でローキックを当てようとしたが、ユーリがローキックよりも早い速度で顔面にストレート食らわせて、カウンターを受けたM16は膝をつく。

 

「────グッ」

 

戦術人形はあらかじめ素材で強さが予め決まっている、だから…同じ出力で殴り合う場合はどうしても成長の差が出てしまうのだ。

 

「何で…ここまで」

『俺もお前が生まれる前から特殊部隊やってきたんだ…あんまりなめるなよ?』

 

純粋な力勝負をする以外に人形と対等に殴り合える方法なんて探せば沢山見つかる。

こうやって相手より早い判断で相手より先に動き行動を止める…というのも数ある方法の一つに過ぎない

 

『人形と殴り合うなんて、第三次世界大戦の頃からやってるさ…』

 

どう攻撃してくるのか?どうすればいいか?それを熟知して、対策を練る時間も経験もユーリにはあったのだ。

 

「────まさか…こんな奴がずっと身近に居たなんて、な」

『コレが世界の広さって奴だ』

 

ユーリがそれほど乱れていない息遣いに対してM16は荒い息を上げている、M4A1はM16を圧倒する姿を見て、驚きを隠せない。

 

『最後のチャンスだ…見逃してやる。だから、M4達の所に────』

「そうか…」

 

M16が持っていた、ノードを見せる。

 

「────お前達とはここまでだ…」

「────ドケヤァアアア!!」

 

荒れ狂った速度で、ビークがM16を素早く回収すると指揮官にショットガンの引き金を引くが、サッと躱されて返しのMCXの銃弾を喰らってしまう。

 

『────チィッ!!』

 

すぐさま引き返そうとしたのをM4が追撃を試みる。

 

「────待ちなさい!!」

『────待て!M4!』

『…代理人』

 

M4がM16を追いかけようとしたあの瞬間、凄まじい数の銃撃が襲いかかった。

それを仕掛けたのは鉄血の代理人メイドのエージェント。M4を急いで下げなかったらスカートの砲撃に吹き飛ばされていた。

 

「グリフィンの指揮官…こんなところに。どうしました?ビーク。すぐに撤退しなさい」

「そうしてぇがバイクの燃料がやばい。このままじゃ帰る途中で止まっちまう」

 

今は燃料を補給しているがそれまでの間持ち堪えられなければM16とビークはベオグラードから逃げられない。

 

『…大丈夫か?』

「えぇ、指揮官。私────」

「指揮官!現状は……まさか、M16?」

「ちっ、416まで目覚めたか」

 

EMPから解放されたHK416はユーリ達を見つけて合流したが、その時に彼女は変わり果てた姿のM16を見てしまった。

 

「おい、増援来たぞ!」

「…どうもこうもない、ビークの燃料が貯まるまで耐えるしかない」

「ええ、それが最善かと」

「リョーカイ、けどよぉ。ぶっ殺しちまってもいいよなぁ!?」

 

ビークがバイクからショットガンを引き抜いた。

 

「ああ、好きにしろ」

 

M16はため息を吐きながら、ライフルにマガジンを装填した。

 

「M16達は防衛体制です。なんのつもり?」

「ビーク達が動かないのは燃料を補給しているんでしょうね。ずっと前から走らせっぱなしと聞くわ」

『なら、バイクを壊すか短期決戦だな』

 

ユーリはMCXのレーザーを点灯する。

 

『俺がエージェントを倒す』

「私はM16ですね」

「416。あのビークはM16ときっと連携するわ。たぶん、私とあなたでピークとM16にしたほうがいいと思う」

 

M16に個人的な因縁があるのは知っているが、M4だってビークとM16は怒鳴り合いながらも相性がいいことをしっていた。

 

「……分かった。2対2でやる」

『私が先に出る。2人はその後』

「了解です」

「合図を下さい」

 

ユーリがエージェントの砲撃を避けて近接戦を試みる。それを避けた事で、エージェントとM16達の距離は大きく離れた。

そして、合図が飛び出る。

 

「合図!いくわよ!」

「ええ!」

 

M4とHK416が合図を確認して、M16達に向かって発砲しながら接近。

 

「お前達がまとめて私にかかってくるとはな」

「ハブるな!」

 

仲間外れにされたビークがショットガンを発砲。障害物にしていた壁が弾けた。

この威力は実弾だ。

 

「実弾も装填できるのか!」

 

レーザーしか装填できないわけではないらしい。

ビークは想定以上に技が多いらしい。けれど、何もできないわけでもない。

……問題はM16だ。M16はHK416とM4とチームメイトの経験がある。

ならば、こちらの戦術は知られている。

 

「ねぇ、416。それを貸してよ。ほら!これあげるから!」

「いいけど、何に使うの?」

「それはね……」

 

ならば、新しい戦術を用意するまで。

M4はHK416に自分が考えた新しい戦術を伝える。

 

「なるほど、それは面白い考えね。持っていきなさい」

 

短い時間で考えた作戦だが、HK416も興味を持ち、自分のライフルと素体を繋げていたスリングを外してM4に渡した。

M4はその交換として手榴弾と予備マガジンを渡す。

 

「……何かするつもりだ」

「おもしれぇ」

 

有利な位置を取ると、HK416はライフルを構える。

M16も気配を消したM4達をじっくり待ち構える。

 

「……いい位置に着いた」

「これも限界ね。始めるわよ」

 

突然襲いかかる銃撃、M16とビークはそれを避けてすぐ近くの路地に隠れた。

 

「どこから撃ってる!」

「あの家の中からだ!」

 

壁に穴を開けてそこから撃ってるらしい。

M16は昔のことを思い出す。昔、HK416が騒ぎながら自分を殺しに来た時と同じだと。

学ばないのか、M16は窓や壁を爆弾や銃撃で粉砕しながら前と同じように逃げる。

銃撃が追い立てる。これも前と同じだ。

 

「久しぶり」

「M4!?」

 

逃げた先にM4が待ち構えていた。

ハンドガンFNX-45でこちらを狙う。

 

「クソが!」

 

45ACPを受け止めたのビークだ、唸りながらショットガンで反撃する。

しかし、そのショットガンの散弾を撃った頃には別の位置に移動しており弾丸は明後日の方向に飛んでいた。

前と同じ攻撃をされたが状況は同じでない。M4A1がいてビークがいる。

 

「ちっ!」

 

さらに壁越しから銃撃が飛ぶ。

M4A1と組んだ回数が少なくないとはいえ、HK416と息の合う連携を繰り広げており次第にM16を追いつめだした。

 

「416にも気を付けろよ。アイツ、忍び寄るぞ」

「おい!いたぞ!3つ先の角だ!」

 

M16も目視した。

あの水色の髪は間違いないHK416だ、ビークが運よく気が付かないと後ろに回り込まれるところだった。

M16は閃光手榴弾を取り出す。

 

「クソ!また壁越しに撃ちやがった!!」

 

反対側の商店からの銃撃だ。

HK416は路地にいるからそこにいないのはビークとM16も知っている。

 

「代わる代わるやってるようだな」

 

M16はM4とHK416が交互に攻撃しているのに気が付いた。

壁越しに撃たせてかく乱している間に、もう一人が忍び寄る。

前とは同じだが、より洗練されている。

だが、これには前と同じ欠点がある。

 

「ビーク乗せられてやれ、私が突破口を切り開く」

「ちっ!仕方ねえ」

 

いい策がない以上、M16に乗っかるしかない。

自分たちはバイクの充電を済ませつつ、ノードをもって援軍が来るまでに撤収するというちょうどいい時間さえ稼げればいい。

 

「あれだ!!」

「くたばれ!」

 

壁越しに銃撃した位置を突き止めて、発砲する。

 

「おい逃げられてないか!?」

 

ビークは失敗したと騒ぐが、これも予定通りだ。

前戦った時もすでにその場所を離れていたから。

 

「あなたの負けよ、M16」

 

HK416が後ろに回り込んでいた。前と同じように。

 

「はいはい。お前には敵わないな」

 

だが、前と同じようにピンを抜いた閃光手榴弾を落とす。

激しい閃光がHK416の視界を奪う。

 

「────!」

 

HK416はフルオートでライフルを発砲。

自分を守るガンケースは確かにない。だが、代用はできる。

 

「(対弾シールド!?)」

 

HK416達と戦う前にM16はベオグラード警察のシールドを拾っていた。

弾丸は5.56ミリを防げる。あとは前と同じように投げつけるだけ。

また壁越しから、銃撃で援護をしてきた。しかし、援護で止められたのはビークだけ。

 

「ふん!」

 

M16は止められなかった。

十分接近された、M16から盾を使った突進を受けて、HK416は弾かれる。

そして、そのまま馬乗りになって引き抜いたナイフをHK416の顔面に突き刺そうとする。

 

「────っ!!」

 

HK416もM16の手首を握って必死に食い止める。

だが、鉄血に改造されたM16相手には腕力が足りない、少しずつ喉にナイフが近づいていく。

 

「援護はさせねえ!」

 

ビークがM4に制圧射撃をした。

お陰で銃撃は来ない。

 

「M4を下がらせろ、バックアップのないお前なら命は惜しいだろ?」

「死ね……!」

「甘いな。選手を変えたら勝てると思ったか?」

「もちろん……っ、思ってないわよ……」

 

なんだ?M16は違和感を感じた。確かにHK416は必死にナイフを止めようとしているが、どこか上手くいってるように落ち着いていた。

 

「M4!今よ!」

 

HK416が大声で合図を叫んだ。

何をする気だ。

 

「ええ。ありがとう416」

 

横からM4の声が聞こえた。

まて、横から?M4の声が!?M4はあの壁の後ろに隠れているのではないのか?

 

「うがっ!?」

 

乾いた銃声が鳴る。

 

「────喰らえっ!」

「なっ!?おまっ!」

 

背後から9ミリパラベラムがビークの背中を貫いた。

ビークは反撃できないままあっけなく前のめりに倒れる。

そのまま、USPハンドガンの銃口をM16の頭部に向けてM4が背後から現れた。

 

「甘いわね、M16。同じ手を使われたから勝てるとおもった?」

「……!?」

 

やられた!

さっきまでの再現はM16達をここまでの行動をさせるためのブラフだった。

 

「ナイフを捨てて、彼女から離れなさい。さもないとすぐ隣の素敵な洋服店がパーツと人工血液で汚くなるわよ」

 

M16は悔し気にナイフを喉元から離して、ゆっくりと離れる。

 

「HK416、大丈夫?」

「ええ……上手くいったわね」

 

HK416もゆっくりと離れて落としたライフルを拾う。

あの家の中にはそもそも誰もいなかった!

M4が自分の銃を立てかけただけで!烙印機能で遠隔発砲していただけ!

そして、移動してたのではなくスリングをロープみたいに引っ張って銃を動かしていた!

M4A1は初めからそこにいなかった!ずっとここにいてHK416は前の戦いを再現したフリをしてこっちに誘き寄せていただけ!

 

「やられたよ。だが、相変わらず運が悪いようだ」

「なに……?」

「隙あり!」

 

さっきまで動揺したM16はレーダーを見ながらニヤリと笑った。

不審に思ったその時、上から砲身を振り下ろしてゲーガーが襲い掛かってきた。

 

「M4!」

「どこを見ている?」

 

HK416も援護をしたかったが、M16がライフルを拾って撃ってきた。

近くの瓦礫に隠れざるえない。

 

「M4、テメエ!よくも!!」

 

ビークが怒鳴りながら散弾を発砲した音が聞こえる。不味い!アイツも仕留め切れてなかった!

HK416は転がり込んでライフルで発砲。

 

「いない!」

 

すでにM16の姿はない。

 

「こっちだ」

「ぐふっ!?」

 

いつの間にか接近していたM16がストックで顔面を殴られる。

鼻血を流して、HK416はまたライフルを落としてしまった。

 

「手こずらせやがって……!あの指揮官も、お前も……!」

 

撃たれず殴られたのは弾切れだったかららしい。

M16は落としたライフルからマガジンを抜いて自分のライフルに装填した。

 

「……やっぱり、始末しておくべきだったのはアイツからだったか。お前を始末したら次は────」

「次?」

「何だ?……!?」

 

がん、と後頭部に何かを投げつけられた。

まさか、手榴弾か?そう思って、M16が投げ付けられたものを見て、M16は凍り付いた。

 

「えっ」

 

HK416も凍り付いていた。

なぜなら、投げつけられていたものそれは……

 

「嘘だろ、ゲーガー……?」

 

首から上を引きちぎられた、ゲーガーの頭だったからだ。

 

「教えてよ。ねえ、いま……なんて、言ったの?」

 

そして、投げつけたのはほかでもない、さっき彼女から不意を打たれたM4A1だった。

 

「M16……に、にげろ…こ、い……つは、や…ば、い」

 

M4A1は血みどろになったビークを引きずりながら、青い煙のようなものを漂わせてこちらを見つめていた。

M4A1はまるで火を吐こうとしたドラゴン……怪物のようだった。

 

「……」

 

M4はスリングを引っ張り、遠隔操作していたライフルを引き寄せる。

ライフルにぶつかった壁や看板が次々弾け飛び土煙になった。

 

「ふう……」

 

そして、弾切れになったガンケース、大量の装備を取り付けたコートは言わずもがな。手足のプロテクターを外した。ドン、ドンと重みがある落下音を鳴らす。

 

「どこだ……!」

 

視界が土煙に覆われる。

M16は神経を切り詰め、気配を探る。そして、M4A1の姿を捉えた。

 

「そこだ!」

 

M16の判断は正しい。

確かにM16が銃を向けた先にM4はいた。

だが、M4はもうその場所にはいない。

 

「ビーク……」

 

銃撃は外れた。

煙の影は立てかけられていた囮のビークだった。

 

「小細工を……っ」

 

M4の声、そして鈍い衝撃がM16に襲い掛かる。

 

「ああ、勢い余ってぶつかったか……」

「クソ……なんだ?冷たい?」

 

ぶつかったときにM16は確かに冷たい感触を……そして、ぶつかったところを拭ってみると水色の粉がついていた。

これは戦術人形の冷却材だ。

 

「(冷却剤が漏れているのか?いや、見えるほど激しい熱量になっているのか)」

 

M16は驚きながら考察していたが、M4A1はこの現象がなぜ発生していたのか知っていた。

戦術人形の出力解放を限界以上に解放するとそうなる。

熱暴走を防ぐために外部の空気を取り込んだら逆に、投入されていた冷却剤が外に漏れるっていう仕組みだ。

 

「限界以上に出力を開放するといつもこうなるわ。また入れなおさないと」

「また?……何度もやっているのか?」

 

冷徹に徹していたM16も驚きで目を見開く。

素体を限界以上に動かせば普通、素体が耐えられず内部からはじけ飛ぶ。

1回でも耐えられたら奇跡だ。でも、M4A1は何回も経験があるようにしゃべっていた。

 

「そんな話はどうでもいいんじゃない?大事なのは、M16。アンタがユーリを排除しようとしたことを言ったことなんだから」

 

怯えそうになるほどの殺意がM4の瞳から浴びせられる。

M4、いつの間にかこんな人形になっていた。いや、もともとこういう人形だったのに私は気づけなかったのか?

 

「ユーリを、私のユーリを、排除しようっていうんでしょ?なら、ぶち殺すよ。M16」

 

殺意も容赦ないが、このスピードは何だ?

前からサブマシンガン並みに早い人形だったが、余計なものを外して身軽になっただけでハンドガン人形並みにスピードを手に入れている。

M4め!どれだけの重さを纏っていた!?

 

「警告?ああ、バッテリー残量ね」

────残り5%

 

頭の中の声も焦ったように警告する。

M4は視界内に表示される情報も声もあまり気にもせず、連撃を再開した。

 

────M16。M4の残りは5%、贅沢はできないわ

「もうお前は5%しかない。今回は終わりだ。諦めろ」

「どうして?まだ、5%も残っているのに?」

 

M4A1は殺意の視線を外さない。

5%といういつ電力切れで動かなくなっておかしくない状態で、まだ十分残っているM4A1にはM16でも凍り付くものを覚える。

 

確かに5%あるなら、今のM4に戦って勝てない。

かといって、逃げ切れるとも思えない。

 

────一方、その頃。ユーリ達は。

 

「はあっ……はぁっ……」

『なかなかしぶとい!』

 

ユーリは必死に自分を妨害する、エージェントがそろそろ厄介だと思い始めていた。

だが、それはエージェントも同じこと。

目の前の人間を、しかも前と同じように仕留め損なった男が装備1つでここまで厄介な敵になるとは彼女は全く想定していない。

 

「……」

 

ビークのバイクは充填が終わっている。

あとは彼女達がベオグラードから離れればいい、それで今日はご主人様、エルダーブレインの望みは叶う。

大切なのは私達の決着ではない、ご主人様の目的が達成されることなのだ。

 

「今のうちに!」

『なんだ?なんで、逃げ出した?』

 

エージェントは勢いをつけて、飛び上がった。

 

『……なんのつもりだ?』

 

砲撃か?ユーリは身構える。

 

「M4!こっちをみなさい!」

 

エージェントは声を張り上げ、砲身をユーリに向けた。

その瞬間、M4はエージェントの声を聞いて意識を向けてしまった。

 

『アイツ!!』

 

ユーリは一瞬でエージェントの考えを理解した。

アイツはM16がHK416とM4に勝てないと判断して、意識を逸らすつもりだ、と。

 

「こちらを向かなければ、あなたの指揮官を────」

『お前っ!』

 

エージェントは一瞬、何が起きたかわからなかった。

 

「は……?」

 

視界にユーリがいるのはわかった。だが、腹の様子がおかしい、体が動かない。視線だけ、動かすとユーリのブレードがエージェントの腹に深々と突き刺さっていた。

 

「こんなに早く────」

 

1秒後、刀身が振り上げられ、エージェントは腹から上が真っ二つに割れた。

 

『M16は……しまった!!』

 

やられた。M16は一瞬のチャンスを逃さなかった。

気がついた時には、M16はビークと共に充填されたバイクを走らせていた。

 

「くそ……!」

 

M4も悔しそうに追いつけないビーク達をみて拳を握りしめていた。

 

『すまない。M4、突然逃げられて』

「指揮官のせいではありません。そんなことよりもあなたが無事でよかった」

 

M4はM16がユーリの命を奪いかねない人形に変わっているだと改めて理解した。

ユーリを助けるためには彼女は……殺さなくてはならない。

 

「クルカイ、レイラに電力を貸してやれ」

「はい。あの、レイラ?」

「私のことよ……」

「ああ、M4の他にレイラなんて名前を持っているのね。じゃあ、レイラ……そっちの残りが少ないから手早くやるわよ。手伝って」

「了解」

 

HK416はコネクタによる直接接続によって、自分の分の電力を渡した。

 

「(冗談?アレだけ、暴れていたM4A1の関節疲労がこの程度?)」

 

HK416は電力補給のついでにどれほど素体に疲労が溜まっているのか、盗み見ていたがその結果はHK416の予想とは全く違うものだった。

彼女はもうとっくにM4の素体は使い物にならないほどだと思っていた。

 

「(なのに疲労度合いがそこまで変わらないですって?彼女、どれだけ負荷をかけないで移動するのに長けているの?)」

 

だが、蓋を開けてみればその結果は素体は疲労こそしていたが、自分達と変わらないほどの余裕だった。

 

「もう、大丈夫そう。ありがと」

「え、ええ…そうね」

「M4!」

 

充電を終えた頃に、AR-15達がM4達に追いついて来た。

あれだけの距離が徒歩なら仕方ないだろう。

 

「ノードは?」

『────ここにある。コピーだが』

 

AN-94がノードについて問いただした時、ユーリが手に持っていたノードを見せた。

 

『欲しそうだな。…欲しいか?』

「…えぇ」

 

M4がため息をついて、欲しいと返す。下手したら一触即発だ。どうすればいい?

 

────データコピー完了

と、メッセージが来た。

 

『コレが君の目的…か。いいだろう、無くすなよ』

 

ユーリは暫くオリジナルの方のノードを見つめていたが…それをM4に手渡した。

 

「…え?いいんですか?」

『餞別としてはちょっと足りないけど…な』

 

────え?餞別?

 

「指揮官!すみません!M16に逃げられて────M4」

「────SOPⅡ」

 

SOPⅡ…姿形が少し変わっている…それに…私と同じように新しい仲間を連れている…でも、一目で分かったこの子は間違いなくSOPⅡだ。

 

「…」

 

驚きで立ち止まる、SOPⅡ、笑顔でSOPⅡを眺めるRO、部下だと思う赤い髪の人形、クリームカラーの人形、指揮官と最初に出会った時に使っていた銃と同じ物を持っている金髪の人形、青い服を着た人形たちも笑ってSOPⅡの背中を押した。

 

「────SOPⅡ!」

「────お姉ちゃん!」

 

私とSOPⅡ…お互いの歩みが小走りになって距離を縮めていく。

そして、SOPⅡを私は抱きしめた。

 

「…ほんとなの!?お姉ちゃん!?…本当に?」

「えぇ…!本当よ。M4よ、私だよ」

 

人形の体はぬくもりを感じないというが…今、私たちは抱きしめあってぬくもりを感じている気持ちになる。

ユーリとの再会ほどではないが、それでもM4A1は安堵を覚えた。

 

「…よかったな、SOPⅡ」

「…あなた達がSOPⅡを守ってくれたの?…えっと」

「MP7だ。まぁ、コイツにはイヤというほど手を焼かされたけどな」

 

赤い髪の人形…MP7がSOPⅡをやれやれと言いたげな表情でそう言った。

 

────

───

 

『…俺はお邪魔かな?』

「多分ね」

 

少し離れているところでユーリとAK-12は2人の抱き締めあってある光景を眺めていた。

 

『そっか、残念だ』

「あなたも話せばいいじゃ無い?…あ、後でゆっくり出来たら話すつもりね?」

 

AK-12が茶化した発言をユーリは瞳を一瞬だけ、どこかに向けると…悲しそうな笑顔で微笑んだ。

 

「────パパ、あなたまさか?」

『"最後になるかもしれない"と思ってな…なら、最後の相手はお前にしよう。そう、思ったのさ』

 

その発言を聞いて、AK-12は何かを察した表情を浮かべた。

 

『綺麗だな…』

「えぇ…そうね」

 

混乱の収まった事を知らせるようにベオグラードに夕焼けが差し込み、2人を照らした。

 

「…グリフィン、辞めるの?」

『…あぁ。Kと取引する時に身分の偽装を解いてしまって……みんなも俺はグリフィンの指揮官ではないことを知るだろう』

 

実はもう2月前にグリフィンの退職を済ませて、外務省の人間に戻っていた。

せめてもの頼みでヘリアンさんきってのお願いでベオグラードの仕事をしたのだ。

ベオグラードにはもう、鉄血もパラデウスの脅威もさり、感染者も大物は殆ど倒された為、セルビア軍だけでも対処できるだろう。

 

「…辛いわね。あなたもM4も」

 

AK-12はこれから起きる事を知らず、抱き合うM4達をみてつぶやいた。

 

「納得してるの?」

『…必要な事だ。俺にとっても悪い話じゃない』

「それは納得っていわない」

 

その発言をAK-12は嘘だと、すぐに見抜いた。

選択肢が無かったとは言うがそれでも名残惜しくない筈がない。

 

『言うようになったな。思えば、俺もお前も…随分立場が変わったな』

「そうね、でも…あの時、私とパパで過ごした時間は今でもハッキリと思い出せる」

 

懐かしい思い出を2人は語った。

決別した後の事も。少しずつ相槌を挟み、その時の気持ちを交えながら。

 

『…珍しくキリがいいな』

「行くのね」

『あぁ、迎えが来た』

「さよならは言わないわ。絶対また会える気がするの」

『そうかい、俺もそう思ってるよ』

「はいはい……って、ホントに!?」

 

話せる話を全て果たしたタイミングで測ったように、嵐が去った夕焼けの先から凄まじい速さで数体の"ヴェルゼ"がやって来た。

 

『あの隊長。────そろそろ』

『あぁ…悪い。待たせたな』

「指揮官!ごめんなさい!ちょっとSOPⅡと────コレは?」

 

轟音を聞きつけたのか、それともユーリの事を思い出したのか、M4達がユーリの前にやってきた。

 

────視点:M4A1

 

『お別れの時間って事だよ』

「どうして!?……いや、あっ……そうか」

 

何が起きているのか分からず、少し混乱したが……ベオグラードに入る前、キャスターと話したことを思い出す。

ベオグラードが片付いたら軍に戻るって。

 

「もうすこし、ゆっくりできませんか?ほら、お茶を飲む時間だけでいいんです!」

『できないだろう。この外務省の最新装備を晒してしまった』

 

覚醒態が出てきたからやむを得ないとはいえ、最新装備が表に出てしまった。

ここに残れば誰かがその秘密を探るため卑しい奴がやってくるだろう。

────分かっていた。こうなってしまうことは。

でも、止めたかった。少しでも、2人だけで……グリフィンで過ごした時のように2人の時間を過ごしたかった。

 

『グリフィンじゃない以上、俺も元鞘に戻る時なんだ』

「────」

 

せっかく、あなたに会えたのに!やっと少しづつ元通りになるって信じてた。

 

「……それは、私のせいなの?」

『確かに君の為とも言えなくない』

「……だったら、謝る。なんでもする」

 

なんなら、あなたの近くにいる為ならどんなことだってする。

見せしめが欲しいなら、反逆小隊をAR-15ごと八つ裂きにもできる。

 

『M4────』

「────わかってる。やるべきことは、本当に望んでいるのはそういうことじゃないってことは…でも……諦め、つかないのよ」

 

ヘルメットを外して、指揮官の懐かしい顔が現れた。

穏やかな表情…グローブを外すと、指揮官が私の頭を今までよりもずっと…優しく感じる感触で撫でた。

 

「指輪…つけていて、くれたんだ」

「……もう、2度と手放す気はありません」

「ありがとう。ここまで思ってくれたなんて。いつか、また…会えるといいな」

 

跳躍装置で指揮官が少しずつ空に浮いていく。それには応じて、ヴェルークトの兵士達もそれに応じるように浮き上がる。

止めたかった、殺してでも止めたかった。

 

「────さよなら…』

 

でも、それは正しくなくて、納得できることじゃないけど、ユーリのためにはならなくて……だから、見送ることしかできなかった。

 

「行ってらっしゃい」

 

ええ、あなたらしいといえばあなたらしいお別れなのでしょうね。

 

「…誰が止めても同じ結果になったわよ」

 

AK-12が慰める様に私の肩を叩いた。

 

「分かってる。けど、言ってくれたら私は────」

「────何にも出来なかったわよ、あなたがどれだけ食い下がってもパパは行く」

 

AK-12は分かりきった表情で少し、感傷に浸った声で空を見つめた。

伐採するようにキッパリしたような気もしたが、いい気分とか解放されたとかではなく、M4感じたのはほんの小さい喪失感だ。

 

「彼が本気で求めた仕事はグリフィンじゃ出来ない、それだけよ」

「ユーリはどこに行って、何をするのかしらね」

「それこそ、夢でしょ?」

「夢?」

「あなたが自分の目的のためにグリフィン抜けたのと同じように、パパもグリフィンを辞めた。違いは復讐と夢ってところかしらね」

 

M4は空を見つめる。

空は嵐が過ぎ、オレンジ色で彩られていた。

 

「知りたいわね、ユーリの夢」

「ええ、どんな世の中を望んでいるのかしら」

 

2人はどんな夢を馳せて、どこに向かっていくのか……ちょっとした想像を働かせながら、空を見つめていた。

 

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