たったひとつの願い   作:Jget

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レクディレクション

 

「────秩序乱流作戦の時の事です。あなたも知っているコーラップス液の爆弾のことについて」

「────大尉、私が貴方にコーラップス液を使った事件の実行犯は…この、私です」

 

────11:49

────ユーリ・フレーヴェン大尉

────ヴェルークト:ヴェルグ1

────タリン市内

 

『…それは知っている』

「ええ。そして、それを渡したのはI.O.Pの代表ハーヴェル氏です」

 

それはあの方が予想していたことだ。

知っていて、あの方の予想に従う形ではありながら、自分はハーヴェルと組んでいる。

だが、それはM4と今こうして一緒にいる時点で人のことは言えないか。

意外だな…許せないことであるはずなのに、自分の感性が淡白である事を自覚させられる。

 

「ご存じでしたか」

 

予想が確定したものに変わるだけでも、助かるものだが…M4はこの手の話題で少しでも役に立てるものを提供したいと思っており、あまり役立ててないと思っていたらしい。

 

『────いや、他の奴が聞いたらどう思うだろうな…とだけ考えていた』

「…そう、ですか」

 

グリフィンの人形たちが聞いたなら、ハーヴェルに怒りが向くか、それともコーラップス兵器も使うことも厭わないことをするかはともかく…俺の部下が聞いたら間違いなくM4の首が刹那の内に、跳ね飛ばされることなど用意に目に浮かぶが俺はどうだ?

 

『(どうして、迷う)』

 

俺たちが何度も、コーラップスの化け物と戦い、奪い奪われる…そんな、憎い感情を通り越して、今では根絶の意思すら固まっている。

けれど、M4A1になるとその手がしびれるようにうまく動かない。

誰であろうと迷わないはずの、昔の俺はどこへと誘われたのだろうか?

 

「…憎くないんですか?」

『…君は俺から、どんな返事が欲しいんだ?』

 

彼女は躊躇した様子で、顔をそむけた。

M4も本当に求めているものがなにか分からなくなっているのだろうか?

 

「────私は、全てを失ったと思っていました」

 

後ろめたい声で、M4は唇から剥ぎ出したくないものを無理矢理吐き出すように、少しずつ話し始めた。

 

「アンジェリアさんから爆弾の話を聞いた時…チャンスだと思ったんです」

 

全てを失った存在はリスクを恐れない、傾向に陥りやすい。

だからこそ道連れに使用すればと…

 

「だから、だから…私全部を失ってるから…確実にやり遂げると、決めたんです。失うものが何もないと思ったから…!」

 

しかし、"思っているではなく"M4は"思った"と発言した、その言葉は過去形だ。

だとしたら…その、思った発言に何かしらの覆す要因が生じたのかもしれない。

 

「────でも、私は…!その時、取り返しのつかない事をしたとわかったんです…!本当は何も失っていなくて、私は、自分のエゴで、勘違いで関係ない人も不幸にした事を…そして、あなたを……」

 

その場所にいたやつが悪いと言う、連中もいるだろう。

 

「────復讐は虚しいもの?…綺麗事だと思ってた…!」

 

だが、その場に頑なに動かなかった奴だけじゃない、扉の外が危険すぎてどこにも逃げることが出来ず、縮こまる人が大体だった。

 

「でも、違う…虚しいなんてものじゃない…今の私はもう、綺麗ごとすら話す資格を失っていていました」

 

あの作戦で被爆した時に送られた病院から患者が多数消える、報告があった…

恐らくは、バラデウスがその患者を助けると嘯いて連れ去ったのだろう。

 

「私が何の気もなしに傷つけた人達は…今も苦しみ続ける…明日の夢も見られない!」

 

明日の夢を見ることができない存在は、神に逃げたり、暴力で開き直ったり、現実を見たふりをして、暗闇ばかり見つめて実の所は現実逃避している奴…

様々といるが、大体の奴は立ち直れない限り、その人生は良い人生にはならない。

 

「────償えるものなら、償いたい。教えてよ?私は、わたしは…どうやって…!どう償えばいいんですか…!?」

 

M4はその現実を理解してしまったのだろう、自分が沢山の人の、もう2度と取り返しのつかないものを奪い去ってしまった現実を…

 

『君に対する素直な感想を言うと…くたばれ』

「────」

 

先程まで、助けを求めていた人物から、無情すら感じる言葉に、M4がゾッとした表情で、あるはずのない血管から血が引いていく様に、顔が少しずつ、青ざめていった。

 

『…と、昔なら言っていたのに。今じゃ、困っている…という感情だ。君に、なにを言えばいいかわからない。慰めたい気持ちすらある。ずっと、ずっと憎んでいたコーラップスの兵器を使った君に対して…どうして、何でこんな感情になるんだろうか?』

 

覚悟はしていたが、くたばれと言う発言はなかなか効いたらしい。

いや、こんなことを言っても、M4は困るだけだろう…以前のE.L.I.Dに対する怒りも実は少なくなっているんじゃないのか?

────いや、それは絶対にない。

 

『AK-12から聞いた。隔離壁を守って、街の兵士を助けようと頑張っていたって』

 

その時のAK-12は、いつもの憎たらしいと言うより、やれやれと言った口調で俺に話していた…アイツがM4の事を心配していたのは意外だった。

 

『君がもし復讐に取り憑かれていたのなら…その兵士たちとクーデター軍…立場や状況は全く違えど、姿が重なって見捨てるはずだ。だが、君は助けようとした』

「…それは」

『君に言いいたいことは────」

「────オオッッ!!」

 

俺がM4に、言葉を掛けようとした時…廃ビルや家を砕きながら10数体のE.L.I.Dが現れた。目視で確認すると同時にレーダーがE.L.I.Dの反応を示した。

 

「E.L.I.D…!?」

『どこからでも現れるな…片付けてやる、この話の続きはもう少し後にしよう』

 

装備の形が変形して全身が覆われる、姿に変身…いや、変形した。その直後…駆動音が迸る。

 

『ベオグラードの先行量産版とは時とは、段違いに強くなった、カリエス"プロジェクト2"の力…見せてやろうじゃないか…』

 

蒸されたエンジンが彼の足元の少し後ろを軽く焦す。

彼の戦闘装備が戦闘モードに移行した証拠だ。

 

「────グオオオッ!!」

 

大型のE.L.I.Dが襲いかかってくる。

あのタイプとは戦った記憶がある、その時はAK-12と2人がかりでなんとか倒した…強敵だ。

 

だが、指揮官もとい大尉は、肥大化したE.L.I.Dの拳を片手で受け止めると、彼はE.L.I.Dの拳を無理やり下げさせると…一歩ずつ、押し返し始めた。

 

『────準備運動にはちょうどいい…!』

 

あの攻撃は確か1トンはあったはず…!それを片手で受け止めるなんて…どんな馬鹿力なの…!?

 

掴んでいた拳を話すと、再び襲いかかったが、彼はE.L.I.Dの攻撃を容易く躱す。

そこから、素早く背後に回り込み…肥大化した背中に捻るように、拳を叩き込んだ。

 

「これが…!」

 

ヴェルークトのユーリの力なのか…!蹴り飛ばされた、E.L.I.Dの巨体は古びた工場の壁を突き破り、工場の中へと投げられた野球ボールのように飛んでいく。

一瞬だけ、上に登る光が見えたが…本当に一瞬で、その姿が見えなくなった。

そして、その一瞬で生じた隙から、先程の蹴り飛ばしたE.L.I.Dの周りにいた、取り巻きが10秒もしない内に、ガントレットから現れたレーザーによって、ズタズタに切り裂かれ肉塊になっていく。

 

「────ウォオオオおおっ!!」

 

取り巻きを斬り終えると、工場の中から、先程蹴り飛ばされた奴が、壊れた壁をさらに壊して現れた。

すると、大尉が背中のラックに取り付けてあった、長刀を取り出すと、刀身が変形してギザギザに変形してチェーンソーの様な見た目になる。

 

『────』

 

拳を刀で弾くが衝撃から生まれた反動で、大尉は背中を見せた… だが、弾かれた瞬間、刀身が青色に輝きだす。

 

『────チャージ完了』

 

ある程度、刀身が光輝くのを確認すると…そこから、背中に向けて拳を振り下ろそうとした、E.L.I.Dを振り向き越しにカウンターで鋭く、右肩から左腿を一振りで轢断した。

 

「────オ、オォ、オ…」

 

貫通こそしてはいないが…ぱっくりと割れた肉体が、E.L.I.Dの生命活動を停止させていく…そして、不自然なガクつきをしながら…その体は仰向けに倒れた。

 

『────ふぅ』

 

変化した装備が、元の形に戻ると関節部や隙間から勢いよく熱気が排熱されて、大尉の周囲を陽炎が包む。

 

<隊長、先程、あなたのカリエスが起動したのを確認しましたが────>

 

『問題ない、排除した。お前たちのところにも来るかもな。警戒しろ、一度合流する』

<────了解です。合流しましょう>

『別れたところで合流だ。すまない、M4。一度別れよう。君も仲間たちの所に戻るんだ』

「分かりました」

『ああ、それと…』

 

分かれる前にユーリはM4A1の方に振り向いた。

 

『君からもらった、指輪…まだつけてるから。関係のことは心配しなくていい』

「────え…!?」

 

思いもよらぬ言葉にM4A1は驚愕した。

 

『だから、その…もし、AR小隊のペルシカさんの役目が終わったら、その…一緒に暮らさないか?』

「…是非!」

 

そして、彼からの”提案”にM4A1は迷いなく頷いた。

 

────13:13

────フォトン

────グリフィン:指揮官

────タリン市郊外

 

「あれが"カリエス"か…」

 

先程の戦闘を、ヘッドカムのカメラ映像を見なおした。

あの、10体規模のE.L.I.D…しかも、そのうち4体は進行が進んだ、タイプだ…それをたった1人で瞬殺するとは、ヴェル―クト…彼らを怒らせることだけはしていけないかもしれない

 

<すみません、わざわざ時間を頂いて>

 

戦闘が終わった後、死体の処理を済ませたフレーヴェン大尉が謝礼を述べた。

 

────M4と話したい?

────ええ、フォトンさん…アナタにしか頼めないお話です。どうしても、私はあの子と話す必要があるから…

 

会話は、全て許可を得たまた聞きしていたが、M4にまつわるコーラップス液のことは真実であり、M4A1は渡した人間のことすら話すほど、その罪の意識に苦しんでいる。

自分個人としては、納得のいく選択には思えないが、フレーヴェン大尉は彼女の背中を押した…それが大尉の思い至った選択なのだろう、自分はほとんど部外者だし大尉とM4の間に割ってはいる気分にもなれなかった。

 

「タリンで部下が、通信上の不調を訴えている。そっちに不調は?」

<…いえ、今のところはそのような。確証はありませんが、2時間前から識別不明の多数の信号が絶えず、誰かに接続を試みている報告があるようです>

 

通信をできた時点でやっぱりと思っていたが、これは人形特有の現象らしい。

グローザがこっちの言っていることを何度も聞き返しているのに、カリーナは問題なく聞き取れているというので革新が得られた。

電子戦攻撃を受けているのかもしれないと仮定し、人形ファイアウォールにセキュリティサポートを要請した

 

「指揮官様、ペルシカさんから通信が」

「案外早かったな、つないでくれ、あ…隊長殿も入るか?」

<頼めるなら>

 

カリーナが、確認を入れると大尉に送った…グリフィンも気前がいいことを教えないと。

 

「接続します。3、2、1」

 

カウントダウンが0と聞こえるだろうと同じタイミングで16Labのペルシカの画面がスクリーンに映った

 

<ああ…指揮官…久しぶり>

<お久しぶりですね、ペルシカさん。フォトン指揮官とは顔なじみだったんですね?>

<いや、アンタに言ってるのよ…フレーヴェン指揮官。給料減らされたいの>

 

指揮官は大尉の言う俺で間違いないはず、なのになんでペルシカは俺ではなくユーリを指揮官と間違えた?話を聞き終えると、フレーヴェン大尉はちょっと意地悪な、からかうような笑顔を浮かべた。

 

<私はもう。グリフィンを辞めています。今の私は、ソ連外務省のユーリ・フレーヴェン大尉です>

<え!?>

 

ペルシカがクマの隅々まで見渡せる程、目を見開き、びっくりした表情を見せた。いくら、軟禁同様の扱いを受けたとはいえど流石に情報が古すぎやしないか?

 

<数か月前だよね?最後の会ったの?>

<自分は1年にも感じますよ。>

 

やはり、ユーリ大尉がこのAR小隊の前任者だったのか。

数か月前に、AR小隊の前任者がペルシカと秘密裏に遭っているという噂が流れていた、そして、今ペルシカはその数か月前にあっているユーリと話している。

16Labと外務省がつながっていたという話は全く聞いたことがないし、それ以外ペルシカが誰かと接触したという話も聞いたことがない。

 

<要件はM4のことですか?>

<え!?>

 

さっきから、ペルシカは驚いてしかいない気がするが…確かにそれ以外の理由で会話するとしたらこちらからだろう、それに…ペルシカがこちらからかけてきたという事実は大尉がその前任者である、仮説をさらに裏付けるものでもあった。

 

<何でもお見通しってわけね。なら、本題に入るわ、今まで、私は蝶事件の真相を追ってきた。今回、あなた達が向かうところにも…リコと、その事件の関係が深くつながってるの。>

 

要は、AR小隊は自分が足を運べない場所に踏み込ませるための文字通りの”特殊部隊”という訳か。

 

<でも、その軍事作戦以来、私はずっと監視下に置かれ… AR小隊とも連絡が途絶えてしまった…ベオグラードのニュースを見た。AR小隊のたちは?>

 

「AR小隊は現在任務遂行中です。よろしければM4に連絡して、接続も出来ますが?」

<それは、ちょっと…まだ…というかあなた誰!?>

 

今更、気づくのか…自分と興味を持ったやつ以外、目に映らない噂を聞いたことがあったがまさか本当なのか?

 

<フォトン指揮官ですよ…目次の次ページに乗せていますから、しっかり目を通してくださいよ…>

<ごめん、ハッキングメールかと思った>

<分かりました、今度はしっかりとあなたの研究施設に報告書を送ろうと思います。もちろん、手渡しで>

 

大尉は手渡しと言っていたが、研究施設にBTRを突っ込ませて報告書を渡しに来る光景が、そんなことあるわけがないのになぜか目に浮かんでしまった。

流石に悪いと思ったのか、次からはしっかり読むと、ペルシカは両手をぶんぶん振って断っていたが。

 

<それで?私に、直接依頼したいと思って、通信をしたという事ですよね?なら、その依頼の前に理由を教えてください>

<報酬は弾むからさ…>

<────あまり外務省を舐めないでくださいよ?こっちはあくまで国民の安全の為にタダ働きしているんです。その保障分の金額も貴女に払えるのですか?信頼の値段は時間と同じくらい高い。理由も教えてくれないのにお任せください、なんてそんな話は傭兵でもやりません>

<────う>

 

流石に、ペルシカも取引する方法を間違えたのだと自覚して、ますますうなだれる。そもそもクーデターで軍と政府の評価はだだ下がり、これ以上イメージダウンされたら、再び革命が起きかねない。

 

<私は、M4に…その…あの子にあまりにも多くのものを背負わせてしまった。M4は私にとって特別な存在。だからこそ私は、すべての力を尽くして…彼女を守るための、AR小隊を作った…M4A1っていう完璧な作品を完成するために、あの子に…沢山の物も与えた。でもそれが、あの子にとっても幸せになるんじゃないかって>

 

なるほど、AR小隊はM4以外の人形に対しても過度な程、オリジナルチューンが施されていたのはそういう理由だったのか。

 

<でも、ユーリ。あなたと、M4が誓約を果たして恋人になった時、それがただの独りよがりだと分かってしまった>

<独りよがり?>

 

大尉が一瞬不機嫌な表情を浮かべた、何が気に入らない?

 

<あなたと誓約してから、M4はみるみる上達する速度を速めていった。初めて見たわ、あんなに忙しい状況なのに幸せで嬉しそうで満たされているM4の顔を見たの、あの子に本当に必要だったのは、完璧で間違いがなく、失敗のない完成された人生じゃない、誰もが憧れている女の子としての幸せだったのよ>

<ペルシカさん、あなたの気持ちはちゃんと伝わりました>

 

さっきまで、ペルシカの話を聞いていた大尉が柔和な笑顔と優しい声で、ペルシカを語りかけた。

 

<自分の昔、ある戦術人形を自分の娘と扱って、育てていた時期がありました。そして、私自身あの子が間違ったり失敗して、時には挫折する…そんな姿は見るのも辛い…でも、鳥がいつか巣立つように子供もいつかその失敗や挫折を乗り越える時が来るんです。ペルシカさん、今私たち”親”が持つべきものは、その子供たちを黙って見守ってあげられる強さなんじゃないですか?>

<…そうかも、ね。本当なら私は、あの子たちを連れ戻してくれるように頼むつもりだったけど、私はまた間違いをするところだったかもしれない。ユーリ、フォトン君?これは、雇い主じゃなくて、M4A1の”親”をしてからのお願い、どうかあの子たちのことを信じてあげて>

<はい、ペルシカさん>

「ええ、お任せを」

 

 

 

電子機器のノイズと水滴がしたたる音で始まった。程なく遠くから鉄門が順番に開閉される音が聞こえてきて、まもなく最も近い鉄門も開かれた。

 

 

<まさかこんなところで見ることになるとは思わなかったぞ?>

<…案外遅いのね>

<勘違いして欲しくないのは、私はあなたの保護者でも、保護観察官でもないことだ。そもそも、あれだけのことをして開放などという展開があると思うかね?>

<コーラップス液を送り付けた張本人が何を言うかと期待してみれば、私を嘲笑いに来たわけ?それともアンタもアイツラの方法に同意するわけ?>

<連中の是非はともかく、何を考えてバクラーダノードを奪取しようとおもったのかね?>

<…>

<だんまりかね?なら当ててみせよう。君が子供の頃に経験したトラウマのために遺跡につながるなら、何でも嫌いなのだろう?>

<…小説でも書いたら?売れると思うわよ>

<これは”負け惜しみ”だが、ベオグラードの外には”ヴィンペル”が待機していた。ミハイルが本当に君と一介のPMCだけに頼るとでも?>

<でも、結局覚醒態が現れたせいで、その保安局お得意のヴィンペル様は何にもできず、最後はヴェル―クトや米軍、欧州連合…そうそう、グリフィンにも手柄をかっさらわれた。違う?>

<だからこそ、我々は”負け惜しみ”と最初に喋ったのだよ、確かに今の外務省は迅速な対応、手際の良さ、被害のリカバリー…まさに英雄としか言いようがあるまい。それは、確かに魅力的ではあるが、英雄は、他人が評価するのだ。だが、ミスはミスだ保安局はミスを繰り返しすぎて後ろ盾にすら剣を向けられるやもしれん…>

<まどろっこしい話はやめたら?要は私が必要なんでしょ?>

<喜びたまえ、支援もあるぞ。君が一番な苦手するKだが>

<ユーリじゃないのね…>

<私は君が彼とうまく協力することができると考えているがね。それにお望みのユーリ大尉も君を少しだけサポートしてくれるとね。まあ、保安局は今すぐ徹底した監視をしたいかもしれんが、ベオグラードどころではなく、プロトタイプの装甲列車の件もある私としては不本意だが今の中央委員会は外務省を最も信頼している状況で下手にかみつきたくはないのだろう>

<…いっそのユーリに投資でもしたら?そうしたら、アナタの仲介人も喜ぶと思うけど>

<ハハハ、随分と知っているな。仲介人も何とかしてあのクルーガーを救い出そうとしているよ>

<どうでもいい話ね、ならさっさと私を出してくれないかしら?>

<はいはい、お嬢様>

 

話が終わるのと同時に、外で何かが爆発したような轟音が聞こえた。

 

「ヴェルグ1。クトゥルフだ。出られるか?」

<ちょうど手が空いたところです>

 

タリン市内に敷設された、仮設基地で状況を確認しているユーリにCPの隊長である、クトゥルフが連絡を入れてきた。

 

「諜報部がハーヴェル氏とアンジェリアとの刑務所でのやり取りを傍受した。アイツら刑務所を釈放した」

「アンジェリアを捕まえたのが保安局なんだ。…やっぱりとしか言いようがないな」

 

報告を聞いたユーリは、その連絡に驚いた様子もなく、むしろ予想通りだといったような感じだった。

ユーリは大型のケースの中に、収納された2体の戦術人形に目を向けていた。

 

「こうなることを見越して俺に、渡したんだろ?」

 

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