数か月前……
「……囲まれたか」
そうつぶやきながら、火が付いた森の中をAR小隊のマークスマンのSTAR-15は周りを見渡す。
鉄血の人形たちが、自分たちを狙撃してくる天敵であるAR-15に犠牲を覚悟で肉薄し徐々に距離を追いつめてくる。
もうとっくに夜だっていうのに、真っ赤な炎のせいで明るくてかなわない。
「運も尽きたって?冗談じゃない!」
困難な時ほど、自分の情けないところが出るというのは本当らしい。
現にAR-15は、とっくに自分が諦められていることを分かっているのに誰かが助けてくれることを期待し、その助けが来ないことに弱音を漏らしている。
「あいつらのせいで……!」
蝶事件を皮切りに、新たなる人類の敵となった鉄血による軍勢は第三次世界大戦の後に残されたわずかな土地を奪い始め、ユーラシア情勢は日に日に悪化していた。
民間軍事会社グリフィンによる事態の好転を期待され投入された、大隊規模の戦術人形による反抗作戦は事前に計画を察知された鉄血側により、足止め戦術から逆に包囲されてしまう。
この包囲からグリフィン部隊の撤退を奇襲戦術で援護するため、AR小隊は派遣されていたが……
救援が来たことで焦ったグリフィン側の突発的行動により、奇襲が見破られてしまいこうしてAR小隊は追い詰められていた。
弾も残りわずか……終わったと思うには十分だった。
もしもの時に、渡された手榴弾を見つめる。
もちろん敵に投げるためではない、自爆をして少しでも敵を巻き添えにするためだ。
覚悟を決めて、ピンを引き抜こうとしたら……突然、周囲の鉄血が次々撃ち殺されていく。
「AR-15!大隊は逃げた!撤退するわよ!」
AR-15を助けたのは、M4A1だった。
「私がしくじったらおいていけって、言われなかった!?」
「言われてたわよ。でも、事情が変わったのよ」
思わず、AR-15は助けられた身でM4A1に突っかかってしまった。
M4A1が命令無視をしたからではない。
自分でも苦戦していた、自分と同じ状況だったはずなのに、あっさり解決してなおかつ、表情一つ変えずに助けた余裕があるM4A1に嫉妬してしまったからだ。
「……なんで、こんな時に思い出すのよ」
鉄血の牢獄の中で、息を大きく吐き出し……呆れているように、AR-15はため息を吐いていた。
「よし……」
マンホールをもとの位置に戻して、ユーリたちは遠征している鉄血の前哨基地を確認した。
幸い、こっちのことは気が付いていないらしい。
幸いなことに、鉄血には気が付かれていない。
上手くやれば狩っている立場と思っている、鉄血を驚かせてやれるだろう。
明日にはグリフィンの攻撃が始まる。
鉄血は総攻撃を仕掛ける、こちらの進路を躊躇させるスナイパー部隊展開しているだろう。
「おそらく、鉄血がいるのはこのあたりか……」
手書きした地図にスナイパーがいるかもしれない場所に”〇”を付けなるべく姿を晒さないように双眼鏡でスナイパーがいるかいないか、素早く確認する。
「スナイパーがいるのはこのあたりか……情報は他の指揮官と共有して……と、ドローンじゃ見つからない、嫌な位置に陣取っているのもいるな……こういうのはこっちで片付けるべきだな。
偶然ではあるけれど、排水施設から鉄血の基地内部に侵入出来たのは思わぬ行幸だったかもしれない。
「作戦が始まったら、M4A1達はこっちのスナイパーを倒してくれ。基地内部にいるから、そのまま仲間の救出に移れる。私は……こっちの外にいる方を倒す」
「分かりました。それと、指揮官。もしスナイパーを倒すのでしたらこれを……鉄血製の兵器ですが、出力を落としているので人間でも扱えるかと思います」
M4A1は鉄血のイエーガーが持っている、スナイパーをユーリに渡す。
「本当はあなたにこのようなリスクを背負ってほしくはないのですが……贅沢も言っていられません。願わくば、誰も倒れないで作戦が成功して欲しい……そう思っています」
そう言うと、M4A1はユーリに頭を下げて、スナイパーをできるだけ早く倒せる位置に移動し始めた。
<位置につきました。そちらはどうです?>
「ああ。こっちも準備はできてる。いつでも、撃てるようにレティクルを合わせているよ」
ユーリは伏せ撃ちの状態でスコープの狙いの位置が合うようにレティクルを距離表示を合わせながら、変身した。
<質問をしても?>
「いいよ」
<指揮官は前線で人形と戦ったことはあるのですか?……その、随分と慣れているように見えて>
「それは……」
芝居がかった声で、ケタケタと笑いながら追いかけてくる人形に追い詰められた時の記憶が蘇る。
<すみません。忘れてください>
「い、いや……いいんだ。私は、君たち”人形を憎んでいるわけじゃない”し……君の家族を助けようと思う気持ちも本物だ。だから、こうして前線に足を運ぶもの悪いこととは思ってないよ」
<……はい。AR小隊に代わって改めてお礼申し上げます。しかし、グリフィンの指揮官に…前線で出て戦う指揮官なんて……事情が事情ではありますが貴方が初めです…大体の指揮官は中央で指揮をしているので…>
「中央って……部隊の真ん中で?」
<あ、いえ……そう言う意味ではなくて、前線に居ても前線の一番後方の位置で>
「……急にグリフィンの指揮官の指揮レベルに不安が出てきたな」
…おかしいと思っていたけど、私に人形と同行させて指揮をさせた意図はそう言うことなのだろうか?
じゃあ、キャンプに着いた指揮官たちはそれ以上前進しないって、事だろうか?
部下に命じている戦場がどんなものかを実際に肌で感じないで…命令する指揮官と部下の関係は……想像したくないほど、拗れているに違いない。
「もしかして、今回の夜襲で前線の恐ろしさに気づくのが初めてになるのかもしれないのか?」
だから、あの様に逐一人形を送り出させようとできるだろうか……?
クルーガーの野郎も変わってしまったな。内務省の頃から、外様に厳しいが、アイツはアイツなりに人形に感謝していた様な野郎だったのに……
俺はクルーガーがグリフィンに呼び寄せた理由をM4や他の指揮官に軍隊ならではの戦いのコツのご教授のつもりで呼び寄せたのだろうと思っていたけれど……
ハッキリ言ってこの人形任せのグリフィンには、それ以前の命を預けるという心構えから教えていかないとならないかもしれない。
今後”あの方”に報告する内容は、厳しくなっていくだろう。
……いずれにせよ、それは今日を生き延びての話になるが。
日付が変わり、太陽が見え始めると、
ポツポツと、スナイパーを狙ったグリフィン側の狙撃が始まった。
そして、一歩も動かない司令部からの通信が届いた。
<全グリフィン部隊に告げる、これより攻撃を開始する>
「よし。こっちも動こう。M4、私が撃ったら出番だよ」
<分かりました。ユーリ指揮官のテクニック見せてもらいますよ>
言ってくれる。
だんだん、M4A1も景気のいい言葉を言えるようになったようだ。
スナイパーライフルのレティクルを合わせる。
風邪は殆ど無風…良好だ、引き金を引き絞りレーザーが私の狙ったスナイパーに飛んでいく。
「倒した!行け!!」
スコープから見える視界に人工血液を流しながら、ぐったりと倒れたイエーガーの姿が見えた。
「了解。こっちも始めます!」
ユーリのスナイパーを倒したという報告を皮切りに、M4A1はSOPMODⅡとJS9に合図を送る。
合図を見てうなずいたJS9は昇降機をロープに取り付けて、一気に基地の上に上昇していく。
「ど、どうした!?どうして、攻撃されている!?他の狙撃手は何をやっているんだ!?」
上の監視塔では、鉄血の狙撃手が本来、先に迎撃するプランを崩されてグリフィンの先制攻撃を許してしまい動揺していた。
「……なんだ?」
JS9はゆっくりとドアを開ける。
そのタイミングで、M4A1とM4SOPMODⅡがJS9の元に上昇してくる。
「そんなのより敵を……ウワ!?」
「ど、どうしてここに……!?アアッ!?」
M4A1達に気づいた時に、JS9達は射撃を始めており、次々と銃弾がスナイパーに当たりその場から崩れ落ちた。
幸いなことにまだスナイパーの兵士の距離間隔は離れているため、攻撃されている事には気づいていない、それは第2撃のチャンスをもらえるという事実に他ならない、続いて射撃を続行、1人また1人と確実に狙撃で相手をプランを崩していく、目視出来る範囲内で粗方倒し終わった事を確認して、移動を開始する。
下の辺りにいた鉄血の奴らの動きが活発になり、そろそろこちらの位置がバレたかもしれないと感じたからだ…つまりここにいるのはマズイという訳だ。
「監視塔をよし……今のうちに、AR-15を探して!」
早速椅子に座って死んでいた鉄血兵を退かしコンソールを起動、監視カメラで捜索を探し始める。
狙いはもちろん囚われたAR小隊の人形である、STAR-15である。
「あっ!!」
監視カメラで探していたJS9が反応した。
「JS9どうしたの!?AR-15を見つけたんですか!?」
「い、いえ……そうじゃなくて、鉄血のボスのハンターが……」
JS9が監視カメラでハンターを見つけてしまった時、
グリフィンの人形たちは、前哨基地に乗り込みこの前のお返しということもあり強烈な猛攻を鉄血に与えていた。
「この前のお返しだ!しっかり、受け取りな!!」
「降伏させる前に叩き潰せ!」
「あ!隠れた!!」
「喰らえ手榴弾!」
遮蔽物に隠れようものなら手榴弾で吹っ飛ばした。
「また増援だ」
「だったら、迎え撃ってやる」
「喰らえ鉄血!!」
向かって来ようものなら、アサルトライフルとサブマシンガンの人形の武器でハチの巣にしていく。
「弾はたくさん持ってきたんだ!残念だったねえ!!」
逃げようものなら、マシンガンで追撃を食らわせる。
攻勢は順調に進んでいた。
その順調な攻勢の中、中央部に入っていたグリフィンの先鋭の人形から通信が入ってくる。
<こちら、スネーク隊!!敵のハイエンドが……アアアアア!!>
<<グリフィンのゴミ溜めども…か、ハンティングに力不足だな>>
<は、はやい!!こちらの……!!>
<え、エリートの我々がこんな……!?>
<<次は誰にするべきか…>>
「クソ……!このままじゃ押し返されるわね」
M4A1は唸った。
ハンターの強さよりも、エリート人形があんなにあっさりやられた方がM4A1にとっては驚きだったらしい。
「AR-15!見つけました!位置を送ります」
「お手柄ね、JS9。あなた使えるわね」
M4A1は、JS9の肩をたたいて手柄を褒める。
見つかったのは朗報だ。
「(ハンターはどうするか……)」
しかし、ハンターという悪いニュースもある。
エリート人形でこの結果なら、ハンターの動き次第で攻撃部隊は返り討ちにされて、全滅しAR-15の救出は失敗にだろう…
「JS9、SOPⅡ」
M4A1はJS9とSOPⅡを呼び、指揮官と通信を繋いだ。
「指揮官。聞こえてますか?」
<聞こえているよ。今、予定通り君たちの退路を確保しているところだ>
「頼みがあります。指揮官、先ほどAR-15の位置を見つけたのですが……どうやら、あなたが確保しているルートの先にAR-15がいるようです。牢屋のロックはこちらで開けられそうですので、救出はあなたにお願いしたいのですが、よろしいでしょうか?」
<分かった。任せて>
「お願いします。今、ハンターが出撃してエリート人形の部隊が撃破して別の部隊を攻撃しようとしているので、こちらで対処します」
「JS9。AR-15の解放をお願い!SOPⅡ!ハンターを潰すわよ!」
「りょーかい!!やっと出番だあ!」
通信塔はJS9に任せ、M4A1とSOPⅡは通信塔を飛び出た。
「ダミーがまたやられた!」
「くだらん」
ハンターが出撃した後のグリフィンはさっきまでの勢いがまるで衰えてしまった。
すでに最初に突入した部隊は全滅。
援護で来たFAMASを隊長としたG17、TMP、SIG-510、TMPのダミーを引き連れている小隊もすでにジリ貧ほとんどのダミーが倒されてしまい、救援を必要としていた。
「アアア!!」
TMPが必死に引き金を引くがハンターは呆れた表情横に宙返りしながら攻撃を躱し、既に動かなくなった人形の死体を拾い上げ縦にすると攻撃を防ぎながら、死体から銃だけ見えるように手を出して防御し、移動しながら攻撃を加えた。
「死体が邪魔だ!!落ち着いて射撃を……ああもう!!聞いてない!あいつ!!」
「囲みなさい!死体では360度カバーできないわ!!」
「TMPの弾が残っている内に一撃喰らわせるよ!!ハンターの野郎が傷ついたらTMPも落ち着くでしょ」
素早く身を乗り出して攻撃しようとしたSIG550とG17が先にSIG510に援護させて、ハンターの右側面に移動、続いて、FAMASとIt BM-59は先にFAMASが援護して左側面に移動したが……
「かかったな、やれ」
突如として、ゲートの高所からレーザーが飛び出す。
その一撃はFAMASに命中そのまま前のめりの姿勢で転がっていき……
「死ね」
待ち構えていたハンターの拳銃のレーザーの雨がFAMASを引きちぎる。
突然の狙撃でで他の人形達も急いで身を隠す、TMPを除いて
「さあて」
「!!…っ、がっ…あっ」
弾薬が切れパニックになったタイミングでハンターが接近、そのままゲートまで蹴り飛ばして倒れたTMPの首を掴み引き摺り出す。
「TMPが!!」
「落ち着いて、G17!今動いたら狙撃される!」
「よくわかっているじゃないか。まぁ、私はその間好き放題、できるが、な!!」
その場に無造作に転がしTMPの顔面をハンターが勢いよく踏みつける
「ギャッ!!…ギッ!ガァア!!」
「クソ…」
TMPの悲鳴が響き渡るしかし今てきることがない。
「痛めつけられているのに助けないのか?薄情だなぁ?それとも、この程度でじゃ死なないと確信しているのか?成る程…賢いな、分かった。趣向を変えるよ」
ハンターが拳銃をTMPの足レーザーの出力を上げ焼き切った後に傷口に砂をかけたのだ。
「あああああ!!!痛い!!痛い!!溶ける!いやあああ、足が…足が、痛いよ…あああああ!!」
TMPの鳴き声がさらに強くなった。
「フ、これでもうこいつの寿命は少ないぞ?上司の指揮官はこいつの死をどうでも良いと思っているかもしれないが…お前達はどうなんだろうな?」
流れる人工血液を見えるように流しながらハンターがFAMAS達に聞こえるように呟く。
「そうか…援護に期待しているのか?だが…残念だなぁ…そっちの辺りには多くの部隊を流し込んである。殲滅してもかなり後になるぞ?それとも、お前達も人形の命なんてどうでもいいのかな?」
ハンターの遊びは続く、痛むところを的確に攻めて、苦しませる。それがより大きな悲鳴に繋がり相手の兵士達を焦らせる…
一方のFAMAS達も何もしない筈もなく、どこに行けば狙撃を避けられるか慎重に模索していた。…だが、仲間の悲鳴が焦りとなり焦りは慎重さを欠くことに繋がる。
一歩一歩慎重に近づこうとしたタイミングで……
「隠れんぼは終わりだ、殺せ」
ハンターが狙撃する人形に指示を出す…そう、初めから隠れる位置は分かっておりそこから的確な位置に移動することはわかりきっていた。
…あとは狙撃のレーザーがFAMAS達を貫いてハンティングは終わりのはずなのだが…ここで1つ予想外の事が起きた。
「?どうした、なぜ攻撃しない?狙撃チーム!!」
<あー、あー、現在お掛けになった番号は現在使われておりませーん!>
「貴様…!まさか…」
<えへへ!!昨日ぶりだね…ハンタァ…アンタをバラバラにして、香水の蓋にする為にやってきたんだよお>
帰ってきた返事はユーリが倒したスナイパーの無線を奪ったSOPⅡの声だった。
「チッ……そうなれば、M4A1も一緒か?なら分かっているのか?ここにはお前達の大切なAR-15がここに囚われていることを!!」
<それは、そっちが生きていればの話でしょ?コントロールは頂いている、あと残った障害はあなただけなの。分かる?>
「そのような脅しが通用するとでも?だが、仕方ない…」
ハンターがディスプレイを表示する。その画面にはAR-15が映っていた。
「お前は取引に応じなかった、それを後悔しな」
ハンターがAR-15を処刑するための装置を起動させるスイッチを押した。
だが……いくら、押しても反応がない。
「な、なんだと……まさか、本当に」
「そう、本当に残った脅威はあなただけよ」
そして、M4はそのままゲートから下の階へ飛び降りた。
距離にして、300メートル。
ハンターは直線状に降り立った、M4A1が降り立ったのを確認した。
「……AR-15を痛めつけた分はきっちりお礼してあげるわ」
「文字通りバラバラにしてやる!」
「フ、口だけは達者だな。AR小隊。フン…強がるのがわかるぞ?M4A1」
ハンターはM4がゲートを降りたのを確認してハンターはようやく狩りができると行った表情でM4を見つめた。
ハンターがもう一度指示を出す。
リッパーやウェズビドといった歩兵たちがハンターの後ろから集まってきた。
「正直、貴様らの様な正義感には飽きているだ。ここで纏めて死ね」
「あなたは?」
「戦術人形FAMAS……アサルトライフルです。まさか、あなたのような人形に助けられるなんて」
「私たちもあなた達のような人形を助けるなんて思ってなかったよ!」
フフンと得意げにM4SOPMODⅡは胸を張る。
「ハンターはこっちでやります。あなた達はハンターの部下をお願いします」
「……わかった。そうしよう」
M4A1の指示に渋々と、FAMASたちは従った。
「役者は整ったな!さあ、始めようじゃないか!!」
ハンターは自分の鉄血製の大出力ハンドガンを両手に構えて、素早く動きながら銃撃を放つ。
「散会!」
M4A1の指示でM4A1とM4SOPMODⅡは左と右に分かれるように散る。
「ハンター!!」
「人形の解体を楽しむ!下種の分際で!!」
M4SOPMODⅡがとびかかったので、ハンターは後ろに下がる。
そして、着地のタイミング銃撃を素早く連射する。
「なに……?ただのカスタム人形とは違うというのか?」
しかし、M4SOPMODⅡがそれよりも素早くとびかかり突っ込んでいく。
そして、背中を晒したタイミングM4A1がハンターに攻撃を与える。
「くっ!!」
ハンターがM4A1の銃撃よりも何とか早く動いて、上にジャンプして弾丸の回避に成功する。
「今度は私から行くわよ」
今度は反対にM4A1が先、M4SOPMODⅡが後だ。
ハンターが今度はM4A1に銃撃を放つ。
M4A1はM4SOPMODⅡほどではないにせよ、素早く小刻みに上下左右に動くので銃撃が当たらない。
「器用な奴だな!!」
ハンターが大型拳銃の隠しワイヤーフックを飛ばすが、逆にそのワイヤーフックをアサルトライフルでからめとってしまう。
「な、なに!?……ぬわっ!?」
突然、何かが飛んだと思ったら…爆発が発生して自分が隠れる所が吹き飛ばされた。
M4SOPMODⅡの持っている、アサルトライフル下部に装着したグレネードがハンターの足元に着弾したのだ。
「クソ!…グレネードランチャーか!?卑怯だぞ!!……よくも、ぐはっ!!」
巻き取ったワイヤーフックをM4A1が引っ張り上げ、ハンターを引き寄せて蹴りとばし、さらに銃撃を喰らう。
「否定しないわ。でも、これは試合じゃないのよ。それに……いえ、これはやめておきましょう」
大人しいイメージとは似つわないほどM4A1は饒舌になっていた。
本当は「へえ。じゃあ、AR-15を人質にしたのは何だっていうの?」といって、さらに追い詰めて見るのもハンターに対する意趣返しになると思ったが、
そもそも、獲物を縛り上げるのは獲物を殺した後だ。
生きている間ではない。
「体勢を整えるべきだな…」
このままではやられる。そう判断したハンターがワイヤーフックを絡めとられた拳銃をもう一つの拳銃で破壊して、後ろに下がりだした。
「待て!」
「いいのよ」
追撃しようとする、M4SOPMODⅡをM4A1が止めた。
「なんでさ!!」
「手柄は今日の功労者に譲ってあげようと思ってね。私たちはお膳立てをしましょう?」
なんとか、M4A1達を振り切ったと思えたハンターは追撃に備え、広場で待ち伏せの陣形を取る事にした。
まさか、M4A1とM4SOPMODⅡ……STAR-15とは違い、あんなに高い機動性と旋回性を持っているとは。
アレは、民生人形に銃を持たせられるように改造したのとはもっと純粋に性能を突き詰めたようなハイエンド人形だ。
油断してはならない……広場ならまだ、念の為に揃えていた兵がまだ残っているはずだから…
「…ど、どうして?どうしてお前が!!」
だが、向かった先に待っていたのは味方の鉄血兵ではなかった。
「あら?どうしたのかしら?死体でも見ている顔じゃない?」
「お前は捕まっていたはずだろ!!ST AR-15!!」
そう、そこにいたのは囚われの身になっていたSTAR-15だった。
……
話はST AR-15が解体される映像のその数分前くらい前に遡る。
<はい!これで見張りはすべて倒しました>
「よし。これで、ご対面か。M4達はどうしてる?」
<ちょっと待っててくださいね……あ、すごい!!M4さんやSOPⅡがハンターをボコボコしてます……これが、AR小隊の性能なんですね……こんなのと一緒に戦ってついていけるのかな>
どうやら、心配しなくてもいいらしい。
ユーリはSTAR-15が捕まっているはずの牢屋を覗き込んだ。
<そこがAR-15のいる牢屋ですね。中はどうなってますか?>
「中は…か」
「…鉄血のクズが…入ってこい!ここで片付けてやる!!」
ガン!!ガン!!と牢獄の視界も悪いのか自分の事を鉄血だと勘違いして牢屋にタックルしていた。
恐らく一人で閉じ込められている時間が長いのだろう…知り合い以外敵だという感情が強いのかもしれない。
「開けてくれ」
<ええ!?危険ですよ!?>
「だけど、時間もない!頼む!」
<分かりました!ああもう、開けちゃいました!!>
「この!!クズ!!私がそのふざけた皮膚を引きちぎってやる!!」
牢獄でロックを解除してAR-15を連れ出そうとしたのだが、どうも先に近くにあった武器を取り出したのが不味かったらしく、牢獄の視界も悪いのか自分の事を鉄血だと勘違いして牢屋にタックルしていた。
意を決して、牢屋が開いた。
ゆっくりと牢屋から出るAR-15に彼女の銃を持ちながら慎重に近づく…そして、暫くして私とAR-15が出会った瞬間…暫くAR-15が立ち止まって何かを観察した後
「うあああああああ!!!!」
AR-15が勢いよく飛びかかり、タックルしてきた、牢屋という相手を捕まえているという性質上必然的に通路が閉鎖的なっており、本来なら十分距離も取り、避けられるはずの直線的なタックルもかわすことができない。
「クソ!アアッ…!」
仕方なく、タックルの衝撃を備える為の姿勢をとったがそのまま突き飛ばされてしまい、そのままアクションを取りよりも早くこちらに馬乗りになり
「死ね!!死ねぇ!!」
<や、やっぱり、キチガイじゃないですかあ!!>
半狂乱になり首を掴み、凄まじい眼光でこちらを窒息させようとしてくる。
「この感触…人間…?」
首を締めて、窒息するのではないか…というところで私の首を握った感触が人間のものであるという事を理解したらしい。
鉄血は基本的に人間を徹底的に殺す。
そう教え込まれたプログラムがどういう原理かは不明だが、それならばここにいる人間は敵ではないと判断したらしい…首を絞める力が弱くなるのを感じる…
「…っ!!がほっ!!ガハッ!!」
息をするのが楽になり、新鮮な空気を吸い余った二酸化炭素とぶつかり合い、咳き込んでしまう。
…危なかった、あと数秒長かったら首の骨にまでダメージが入っていたに違いない。
「貴方は…?」
先程までの勢いが嘘の様に弱々しくなり、座り込んだのと対照的に首を締められていたのが嘘の様に立ち上がり、AR-15に手を伸ばした。
「私はユーリ・フレーヴェン。君達、AR小隊の指揮官だ、STAR-15」
「嘘…どうして、私達は捨てられたはず…」
「運が良いか…はわからないが…また、拾われた…という事だよ」
「…不思議な人」
AR-15は私の手を取り立ち上がった後、銃を手渡した。
<あ、それと私は一昨日配属されたJS9です>
……
…
「私が…この手で転がされていた…だと?」
「アンタには二人きりの時のステキな時間のお返ししようと思っていたのよ」
全てハンターAR小隊の掌で転がされていた事を知りハンターは悔しさと打つ手がない事で一杯だった。
「これで慎重を気取るなんて馬鹿らしいわね?それとも慎重すぎてチャンスを見逃したのかしら?」
「貴様ぁ!!!」
AR-15に罵倒され怒り狂ったハンターがAR-15に放った、が…
「次はアンタが苦しむのよ?」
先程ハンターがやっていた、死体を盾にする方法を活用して攻撃を防いでいた。
突然ハンターの近くで爆発が起きた。
「アンタをバラしてあげるよ、ハンター」
自分が来た所からグレネードを装填したSOPⅡがやってきた。
「邪魔…するなぁ!!」
ハンターが横一直線で射撃しながら加速、そのまま二階にジャンプして移動しながら銃撃する…狙いはもちろんAR-15だ
「ここで!!」
絶好のチャンス、SOPⅡの攻撃当たらない場所で死亡している狙撃兵の銃を拾い上げ、AR-15に照準を構える。
幸い風は無風、距離は調整しなくても良いだろう。
「お前だけでも!!」
引き金に指を掛けた途端、その腕が雷に打たれたような痛みと片腕と共に銃が弾け飛んだ。
「切羽詰まってるようじゃない?」
「M4…A1…?」
狙撃しようしたタイミングで銃が破壊されその方角をみたら、向かいの施設でこちらに武器をハンター向けているのを確認した先程までM4を狩ろうと思っていた…存在にハンターは恐怖することになった。
「(……M4?ほんとに来たの!?)」
AR-15は前の撤退作戦を思い出していた。
また、M4A1は自分より余力を残して、自分を助けに来たのだと。
「安全装置が…!!」
鉄血の武器は基本電力を使用している。
電力を切れて仕舞えば電力を補給するしかない、無視をすれば自分は電力がなくなって死ぬ。
通常、片腕に予備の電力をがM4A1に破壊されたため、その予備も奪われていた。
「おのれ…!!」
仕方なく打ち合いを切り上げ、逃げるために近くの消化器を破壊して煙幕を作った。
「狩人が逃げちゃったよ!M4お姉ちゃん!」
「獲物を見誤った結果よ」
M4の視界から消えた内に建物から建物へジャンプして脱出用の通路に逃げ込もうとしたが
「…そこか」
ジャンプしていた空中の方向転換出来ないタイミングで5.56ミリ弾がハンターの右太腿を引き裂いた。
「……!?」
弾薬が当たった衝撃でハンターの体感がズレ着地するよりも建物壁に激突そのまま転がり落ちていった。
「ガアアアア!!」
落下する痛み酷かったかもしれないがそれ以上に撃たれた右太腿のダメージに気を取られていた。
「ひどいザマね、ハンター」
「フゥッ!!フ、ウ!ウ、ウウ…ア!…わ、からん。なぜ、だ…」
近づいてきたAR-15がハンターを見下すような視線で見つめてきた。
「最後の連中が、行儀よく集まらなかった事?…どうしたかはわからないけど、私が鉄血の内部からあんたの命令を書きかえて、今回の混乱を引き起こしたのよ。」
「バ…カな、なぜ、お…前にそん、な権限が…?」
ハンターも絶え絶えの息で何故だと絶望した表情で訪ねる、恐らくあの一撃がなければなんらかの一時的な電力補給を済ませて逃げ切れたかもしれない。
「知らないうちに手に入れた能力だけど、結構使えるみたいね。私は本当に特別なのかもね。そう思わない?ハンター?」
「…まさ、か…わざと、捕まっ、たの、か?」
だが、もうハンターの電力は底をつく。
最後の力を振り絞れば腕は動かせるがそれは自分の電力を使って出来ること、便利だと思って使っていたシステムが逆に裏目に出た。
「こうなるとは予想していなかったけどね…まぁ、言ってたよね。本物のハンターは、黙って獲物を待つものだって。もちろんあんたは今から、永遠に黙ることになるけどね。」
「わ…た、しの…ま…け、か…」
ハンターの最後に絞り出した声がこれとはなんとも物悲しい気もしたがそれらしい終わり方だな、とも思ってAR-15はハンターの活動停止を確認した。
作戦完了
グリフィンの人形たちは、基地の物資や情報を漁っていた。
「見て見て!AR-15だよ!やっと戻って来たよ!」
傷だらけのAR-15を見て、SOPⅡが嬉しそうに近づいてきた
「二人とも遅すぎるわ。あてにしていたらいつ出られたことか」
嫌味の発言だったがAR-15の顔は嬉しそうであった。
「AR-15…無事で良かった」
「……そうね」
AR-15を確認したM4はやっと安心した表情を見せていた。
だが、AR-15の表情はあまり安堵したように見えない。
「M4。今回の事がなかったら、指揮官が居なかったら…本当に自分の身を引き渡すつもりだったの?」
「それは…分からない…」
SOPⅡの対応とは打って変わりAR-15は厳しめの発言を提した。
「……はぁ、どうするつもりだったかは知らないけど、M4A1。あなたは私たちのリーダーなのよ。バカな真似はしないで」
「でも、私は……」
「みんなそれぞれ責任を背負っているのよ、貴女を守るという責任をね、M4A1」
「…だからときには選択の余地がないこともある。それにM16姉さんはまだ救助を待っている」
「…それもそうね」
どうやら答えは出ないまま平行線で終わった。
「AR-15ったら、急に格好いいこと言っちゃって。そもそも、一番ハンターをボコったのはM4お姉ちゃんじゃん!同じ状況なら、捕まらなかったんじゃない?」
「…ちょっと来なさい、話があるから」
「待ってよ!事実じゃん!!」
「捏造は結構よ、今から永遠に黙らせてあげるから。」
「助けてぇ~!」
イラついた表情をしたAR-15が茶化したSOPⅡの首を掴み物陰に連れて行く、ちなみ近くにユーリはいない。
「…ふぅ残るは」
「M16姉さんだけ…かな?」
漸く戦いが終わった事を感じて、M4は安堵の声を出したその後ろにユーリは立っていた。
「し、指揮官!?」
「さっきから、いたんだが……」
多少オーバー気味に驚かれるとこちらも困ってしまう。
「……あのハンターの右足に当てた狙撃…指揮官でしたよね?」
「あぁ、そうだよ。分かったの?」
よくわかったな?とM4を褒める
「SOPⅡは弾切れ、私では狙えない位置、AR-15はそもそも銃を打てない身体…あの状況で攻撃できるとしたら指揮官くらいしか…」
「成る程…」
「でもあの、移動する相手を正確に一発で撃ち抜くタクティクス…アレは私達でも中々真似出来るものではありません」
M4はなるべく消去法で答えを出した様だ…堅実かつ合理的な考えだ。
「…指揮官、貴方は…何者なんですか?」
…なんだか犯罪推理で犯人だと推理された気分だ、こう言う気持ち…久しぶりだな
「君の指揮官さ、それ以上でも、それ以下でもない。今はそれで十分の筈だろう?」
「…はい」
それとなくかっこいい台詞で流してみたものの、はっきり言ってその場のノリで誤魔化しているだけなのであまり効果あるとは…言い難い。
……ハンター討伐作戦から、2時間後
「ねぇ、どうしてこうなったのかな?お姉ちゃん?」
「…さあ?」
「ゴタゴタ言う気持ちは分かるさ、何せ基地まで歩いて帰らなければならないなんてな」
現在、M4A1達は本来ならヘリで帰還するはずが歩いて帰る事になっている。
理由は…
1時間30分前
「負傷者はこれで最後か?」
「はい、貴方達を折り返しで乗せて回収完了です」
「わかった」
まずは、負傷した兵士からという事で司令部がヘリが自分達AR小隊より先に負傷した人形を乗せていく事になった。
ヘリの救命班が、最後の負傷者を乗せ飛び立った直後。
けたたましいサイレンが鳴り響いた。
<定期連絡の応答なしから、2時間が経過。施設が占拠されたと判断し、当施設を秘密隠匿の為に自爆処理を発生させます>
「は?自爆?占拠した時にはそんな情報1つも…」
<施設は後、3分で爆破されます、速やかに当施設を脱出してください。繰り返します…>
「議論の余地はないな、念の為に逃げるぞ!!」
「自爆!?なんだか、お決まりの展開だね!?」
「おしゃべりする余裕はないわよ、SOPⅡ!AR-15を!」
ひょいとSOPⅡがAR-15を背負うと一目散に施設よりなるべく遠くの所まで走って逃げ出した…
ドオオオオン!!!鈍い音が鳴り響く。
それは基地が破壊され、瓦礫の山に変わる…その瞬間だった。
「あの瓦礫のせいでヘリは降りれない…残るは歩いて帰るしかないか…」
確か今の時間は夕方の5時くらいだったはず…このまま、前線の基地に帰るにしてもあの山崩れのせいで地形もメチャクチャ…。
なんとか生きているている人形を救助をする時間も考慮すると時間は明日まで平気で掛かるだろう。
そうなったら、夜襲は野宿の準備もしなければならない…幸い、今は冬場では無いので寒さを感じて凍えることはないだろう。
外で寝起きするのは良いとしてAR-15の状態が心配だ、AR-15の状態を説明するのならあちこちの肉がえぐられて、物を握ることすら難しいだろう…
その頃
……お約束通り、ハンターの素体はそっちに送ったよ。
……確認した。ほお、まだコアも残っているのか?
……そう、電力がなくなっているだけ。
……素晴らしい。これなら、私の目的が一気に進むな……そうだ、AR小隊の位置は掴んでいるのかな?
……えぇ、何も問題ありません、全てドローンで撮影しています。
……よろしい、それにしても偽装の自爆装置のアナウンスと秘密裏に爆破をさせた秘匿部隊はどうなっている?
……撤収済みです。
……素晴らしい。そう言うことだ…これで、偽装は済んだ、お前達も任務がやり易くなっただろう?
……えぇ、助かりますよ?それで?今回の目標は前のようにグリフィンで人気の"AR小隊"?
……違うな。コイツの監視だ。
……成る程、この人を?
……あぁ、最近AR小隊の野良猫どもを飼う様になった指揮官だ。その様子だと、面識がある様だな?
……まぁ、個人的に、ね?
……なら良かったじゃないか?雪辱を晴らすチャンスだぞ?
……ハイハイ、ウロボロスに続いてこれとは…休ませてくれないのねぇ?わかりましたよ。
通信が切れた。
「それで?今回の雇い主は?」
「この男を見守れってさ」
「あーこの人!!」
「あら、知り合い?」
「うん、だってあの"ご主人様"とその側近の"大切な"知り合いだもん!!」
「"大切な"…そう、この人が」
「416も?」
「ええ。偶然ね」
「今回も偶然を装えそう……」
「大丈夫考えはあるわ、それよりも弾薬とサプレッサーの準備は済んだ?…OK…404小隊、作戦開始」