たったひとつの願い   作:Jget

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準備万端

<アンジェリア>

「面倒ごとなら、切るわよ?」

<なら切らないで、面倒ごとだから。120km離れた地点で動きがあった>

「映像がなければ、感想もないわよ?」

<熱源の大きさが通常ではないことから、推測するに武装した装甲列車ね。グリフィンの武装では、相手にならない>

「グリフィンと協力したことがあるなら、連中が自前の武器以外に頼ると思わないはずだけど?」

<もちろん、だが…この列車がパデルスィキに向かうついでに、タリンに足を運んでいる…これは>

「…なるほど、証拠隠滅か。それにはしても、パデルスィキ…か」

<過去、新ソ連海軍はそこを「パルディスキ機密区」と呼んだ。対外的には"原子力潜水艦"を固定、維持する基地だった。機密文書には"OKB-167"という名前でも記録されている…>

「アンタは相変わらず、情報を伝える場合にのみ、マトモに見えるわ…遺跡技術はそんなに影響力を持つの?」

<遺跡の力もあるが、1番の懸念は大規模な崩壊感染の恐怖のだろう。猿が電気を恐れているようにな、しかし…人間とサルの唯一の違いであれば、人間は、電気の有用さを知ることだろう。利益を得ることができた時、人はその恐怖すら、気にしなくなるのさ>

 

────19:46

────ユーリ・フレーヴェン大尉

────ヴェルークト:ヴェルグ1

────タリン市内:臨時セーフハウス

 

「…C型が出た。あの化け物がね」

 

震える声で、MCXが声を絞り出した…

 

「異性体が誘導したんだよ。一体一体が目に付くように現れて、ここまで来た。最初に砲撃陣地から争う音が聞こえて…それで…砲撃がきこえなくなって」

「そんな、あの凄腕達が…?」

 

確かに人の名前を聞くだけで損耗率が高そうな部隊である事は想定していたが…まさか本当に死んでしまったのだろう…いや死んでいるのだろうM4は考えてしまう。

 

『カリンカとの連絡が取れないのか…なら、ヴェルグは何している?』

「それが…」

『とりあえず…巻いたわよ。…あぁ、隊長。ご無事で』

 

ヴェルグ2が空いた穴の中から、軽快な動きで侵入して戻ってきた。

 

『どうにか…帰ってみたらいなくなったからどうなっていたと思ったよ』

『…はは、勝手に持ち場を離れたのは謝ります。でも、理由があったんですよ』

『C型のデカブツか?』

『ええ、それも問題の一つですけどね…今はそれよりも大きい問題が差し迫っている状況です』

『アルゴノーツだな?』

『ええ、困ったことになりました』

 

────15分後

 

ヘルメットのズーム機能で見えたのはタリンの駅の線路に乗り掛かり、我が物顔でタリンの街を闊歩するのは、ユーリの予想通り、装甲列車"アルゴノーツ"だった。

 

『随分と大部隊で来たな…』

 

────装甲列車アルゴノーツ… 圧倒的火力を誇る装甲列車「アルゴ」を中心数台の役割を分担させた車両で構成されている、連結型戦闘車両だ。

見た目は少し前に騒動になった、プロトタイプの"レオニダス"とほとんど同じ見た目だった。

最大の変更点は2つ、火器とネットワークだ。

武装は試作機に搭載されたミサイル発射機構や、ガトリング、レーザー砲台だが、これにレールガンや無数の航空機型ドローン、バリアドローンも追加され、アルゴノーツとは比べ物にならない。

そして、ネットワークは戦術人形同様のツェーナネットワークが搭載されている、このせいで自動操縦の範囲でもすさまじい殺傷性を手に入れた。

 

『(アルゴノーツが奪われているんじゃ、きっと"アレス"も奪われてるだろうな)』

 

あの時…衝撃を感じながらも、その衝撃が訓練や戦闘で味わってきた砲弾の衝撃具合で察することができた。

 

『あれじゃあ、D型に目覚める前にC型は終わりだな…』

『代わりにやってくれたのは、嬉しいんですけどね…』

 

ズームを縮小して、視点を広げるとほぼ一方的にC型のE.L.I.Dかビーム砲の的になっており、その巨大から考えられないほど、なぶり殺しにあっている。

 

『本来の使い方をされているのは嬉しいが…』

 

ユーリの言う通り、あの装甲列車アルゴノーツは対人戦よりも対E.L.I.D戦を主眼として作られている。

対人戦で装甲列車は移動するための、進行上のレールを人間の知恵の観点で破壊される観点から見ても、あまり有効な兵器とは言い難い。

"あくまで'装甲列車は力任せに襲いかかるE.L.I.Dを広域でカバーする為に開発されたのである。

 

『とはいえ、レールを壊したら…』

『最終的に困るのは私達…』

 

さっき言った通り、装甲列車を倒したたり巻いたりする方法、それはレールを壊してそれ以上進めなくすればいい。

だが、その行為はグリフィンの移動手段を奪う事にも直結する。

グリフィンが移動に使用しているのは、大陸横断鉄道…要は列車、

列車である以上は、移動のために敷設されている鉄道用のレールで移動しないとならない、移動手段が奪われて、なおかつ逃げようとして、隔壁を仮に開放することに成功していたとしても、進行方向を塞がれると同時に移動手段を封じる人質…いや、この場合は物質になるのだ。

 

<こちらカリンカチームのリーダーだ。ヴェルグ1、戻ったらしいな>

 

どうするべきか、困っているところ、無線機から、カリンカチームリーダーの通信を受け取る、生きていたか…

 

『そっちは大丈夫なのか?』

<あぁ…部下が2人やられちまった。1人はC型がやってきた時にクローで引き裂かれて、もう1人が…アルゴノーツの主砲に巻き込まれて、跡形もなく逝っちまいやがった…>

『…ちくしょう』

 

悔しそうにつぶやくユーリだが、これが彼の本音を聞いたM4A1にはどこまで悲しんでるのか彼女によくわからない。

それが、彼を嫌う理由にはもうならないし、今考えるべきはアルゴノーツをどうするのかだ。

アルゴノーツの火力とC型の強襲という二重の悪夢で、犠牲者が2人で済んだのは運が良かったとは内心思う。

 

『狙いはグリフィンか…それとも、証拠の隠滅か…』

<あるいはそのどちらも…いずれにせよ、たまった事じゃない>

 

ユーリも自分の事を少しずつ自分の感情が少なくなって来ていること感じながらも、これからどうするべきかを優先して、カリンカチームのリーダーからの報告を聞く。

どうやら、アルゴノーツは街を破壊しているらしい。

あれ程の戦力で、それなりの数を逃してしまったからこそ、今度は腰を上げて殲滅しようって魂胆だと思いたいが…

 

<それと…俺達が砲撃陣地から離れた間、グリフィン人形を回収した、部隊名は404とAR-15ってやつが率いる"融合勢力だ>

 

────20:10

────RO635

────グリフィン:AR小隊

────タリン:臨時セーフハウス近辺

 

そのころ、RO達はM4が接続を試みようとした、建物が目視で見える距離まで来ていた。

 

「────すごい、死体の山ね…」

「祭りで似たような光景を見たことありますよ」

 

積み上げられたと言うより、パニック状態になって、人同士がぶつかって、それを乗り上げようとした見た目の山だ。

 

「────オオッ…」

 

こちらを食い殺しに来た感染者だと、AUGが警戒して銃を向けると、それは体が欠損して、まともな動きもままならない感染者の姿だった。

 

「────」

 

AUGが数発撃ち込むと動かなくなった。

たしかに、今すぐ脅威になりそうだとはAUGにも思えなかったが…もし、気を抜いたり…慌てているときに引っかかってしまったら、

それは、地雷のように恐ろしい存在になると、AUGはこれから起きるかもしれないことを入念に考えて、敢えてとどめを刺したのだ。

 

「────来ない、ですよね?」

 

HS2000が周りを見渡す。

辺りが、慌ただしくならない…近くに生きている、もしくはしぶとく穿ている感染者はいない…という事だろう。

 

「大丈夫よ」

 

ROが安全と頷くとまわりは一安心して、一息つこうとした彼女らの元にケンタウロスがやってきた…いや、色が赤い…ということは味方の外務省の軍用人形か。

 

「外務省の人形!」

「…グリフィン人形確認…合流地点ニ誘導シマス…」

「あ、ちょ…待って!」

 

ROが誘導しようとした、ケンタウロスを引き止める。

 

「私達、フォトン指揮官に言われて、回収と退路の確保に来たの、404小隊の人形とか見てない?」

「回答ノ可否ヲ確認…少々オ待チクダサイ…」

「許可、いるんだ…」

「というか、喋るんだ…」

「いつみても、後ろ足の折りたたみ機能を排除した姿には違和感あるわね」

 

1秒ほど、ケンタウロスの瞳が点灯…そして、点灯が終わった。

 

「可否ヲ確認シマシタ…404小隊ノ人形ハ現在、カリンカチーム、カリンカワントAR-15ノ部隊ト行動シテイマス…連絡ヲ入レマスカ?」

「そうね。お願い、連絡は相手は…AR-15を」

「了解…接続シマシタ」

 

ケンタウロスがさっきまで、話していたスピーカーとは別のスピーカーからAR-15の声が聞こえた。

 

「AR-15…?無事ですか?ROです」

<あぁ…RO。こちらは無事よ、AR-57と落下先に決めた合流場所で落ちあってた。…今は融合勢力も404はいないわ>

 

AR-15が気を遣ってくれたのだろう。

なら404に聞きたいこともAR-15が知っていると判断していいかもしれない。

 

「こっちは市庁舎を調べている時に偶然見つけたこの街に置かれていた研究資料を確保したわ。まさか、こんな時代にCD-ROMを使うなんて想像もしてなかったけど。そうだ、SOPⅡの様子はどうだった?M4に何かしようとしてない?」

<SOPⅡが?ないわよ?>

「よかった、起きるのが遅いと痺れを切らして私の頭をガンガン叩いたことがあったから」

<あー……私にも経験あるわ、それ。そうだ、ネイト…いや、あれはそのなり損ない…というところかしら?指揮官の指示で死体のサンプルを入手したわ、分析の結果も出てる>

 

ということは、答えに一歩近づいている…とROは確信を感じていた。

 

<分析結果は指揮官の予想通りだったわ。全員、同一の指紋をしてた…けど、DNA情報が細かい所で異なっていたわ>

 

DNAの違いはそのまま個体差に直結する照明に近い。

 

<かなり小さい範囲だったけど、何体かから抽出が叶ったわ…見つけるまでに結構な死体の山を漁ったけど、その結果あの連鎖接続を妨害できたのは…幸運だわ>

 

AR-15に苦労があったのだろう。御託がいつもより、多い。

 

「…で?抽出した、固有のDNAから何か分かったの?」

<ええ。片っ端から登録されている照合した結果、その結果…何人かが誘拐されて、捜索願いも出されている少女のDNAと一致したのよ>

「そう…そうよね」

 

ROはKの言葉を思い出した、パラデウスはE.L.I.Dの治療という名目で信者を集め、彼らを言葉巧みに誘導し兵器改造していた…それは、ネイトも例外じゃ無かったという事だ…

 

「パラデウス…恐ろしい組織ね。報告ありがとう、AR-15。私達は、退路を確保するから────指揮官…?」

 

フォトン指揮官からの通信だ、どうやら新しい、臨時の作戦が決まったらしい。

 

<RO…?>

「指揮官から通信が入ったわ。これから、新しい作戦よ」

 

────20:13

────ユーリ・フレーヴェン大尉

────ヴェルークト:ヴェルグ1

────タリン市内:臨時セーフハウス

 

『さて…あのアルゴノーツはどうしたものかな』

 

ユーリ達は一旦感染者の群れを切り抜け、次の問題に対して議論する。

取り敢えず、この場所から脱出する事は満場一致として、問題はこのタリンからどうやって出るか。

列車を動かす算段はあるが、その線路上にアルゴノーツがある以上、別の壁が聳え立つのと同じだ。

 

「弱点とかないんですか?」

『レールの破壊や物理的な力押しされる以外の弱点はないわね』

「それは弱点とは言わないんじゃないか?あるはずだろ?」

『それが、アルゴノーツの駄目なところを潰したのが俺たちだからな』

「嘘でしょ…」

 

M4達から、落胆の溜息が吐き出された。

アルゴノーツのネガを潰したのが、外務省のヴェルークト達だった。

自分で作ったものが自分に向かって襲いかかる事なんて、普通は想像しないし、弱点が見つかろうものなら対策するのは世の常だ。

問題はその世の常が、自分たちの首を絞めかねない状況だが……

 

『でもまぁ、アルゴノーツがタリンに入ってくれたのなら、助かります。街での運用の方法なら大体の装甲列車はパターン化されるので』

 

確かに進路通りにしか進めなければ、やり方も限られるだろうが…そこまでパターン化されるのだろうか?

 

『砲撃のタイムラグがランダムすぎる…列車の使い方にまた慣れてない…なら、やりようはあるってことだ』

 

ユーリは地図を広げると、特定の地点にマークをつけた。

 

『クーデター軍はこの位置に列車から大部隊を展開する…絶対にな』

「根拠は?」

『この辺りが、レールの強度が構造上脆いから、と点検もするだろうから…だな』

 

確かにユーリがつけた印は、常に移動切り替えなどで、メンテナンスが要るだろう。

 

『さっきも言ったが、装甲列車は移動するためのレールが頼りだ。それに、あっちはグリフィンが鉄道を動かしてきたことを把握していない。…把握していてたら、確実に壁の外から列車に向けて、手動で砲撃をしていただろうから』

「なら、その印の位置が主な的な活動拠点ということですね?」

『そういうこと…後は、その位置を避けて歩いてパデルスィキに向かうか…』

『或いは、タリンを塞いでるゲートをこじ開けるか…』

 

M4A1とOGASが、ゲートを開ける手筈だったが…肝心のOGASがM4を取り込む気だった為、それはできまい…だとしたら、ほかにゲートを開ける方法を探す必要がある…

 

「強行突破しなくてもゲートはもう動くんだろ?」

「ええ。作戦どおりとは少し違いますが」

 

M4は端末を確認して頷いた、ゲートはもう動かせるようになっている。

 

「じゃあ、残るは線路をふさいでいるあの障害物だよ。大尉さんよ、アイツももう動くんで?」

『ヴェルグ5、"テイラー"は今どうなってる?』

 

ユーリはヴェルグ5に確認させる。

しばらくして、ヴェルグ5が首を振った。

 

『…だめだ。通信は繋がってるが、操作が反応してない』

『ジャミング?』

『いや、スタックしてるんだろう。どっかに引っかかったのかもしれん』

 

はあ、と残念そうにユーリは溜息を吐いた。

 

「ゲートを閉めていたのは確か、あの異性体だったわよね?」

 

なら、答えは単純。そして、その異性体がどこにいるかの察しもおおよそ付いている。

 

「大尉、行きたいところがあります」

『ええ、お願い。…いや、待って、どういうこと?』

『…いきなりどうした?』

 

ユーリだけではなく、ヴェルグ2…いや、この場にいた全員が、突拍子もないことを言って困惑した、

 

「あの時、接続を試みたときに、ゲートを開けることは叶いませんでした…」

『なら、なんで今は開けられるのよ』

「さっきまでゲートを止めていたパラデウスの実験体がこっちに意識を集中したからです」

『え?じゃあ、繋がりにくかっただけってこと?パニックで911コールが繋がらない時みたいに』

「ええ。そして、今回の接続でその意識の大本がどこにいるか、それを突き止めたんです」

 

M4A1はホロマップでその本体の位置をマークする。

 

『お手柄!じゃあ、さっそく砲撃で…C型にやられちゃったのね』

 

ヴェルグ2の意見はもっともだが、今はM4の情報が重要だ。

 

「それで、その元凶の位置と私の提案ですけど────」

 

M4が指さした、位置はなんと、ユーリ達が先程囲んだ危険地域に囲まれた場所を指差していた。

 

────20:30

────"フォトン"

────グリフィン:指揮官

────タリン駅:作戦司令部

 

「成る程、装甲列車か…」

 

その頃、大陸横断鉄道で装甲列車が現れた報告を聞いていた、フォトンはその装甲列車を見て、とある考え計画していた。

 

「404の状態は?」

「さっき、UMP45が覚醒したらしいです。繋ぎますか?」

「やってくれ」

 

フォトンの指示で、UMP45との通信が繋がった。

 

「酷い顔だ、まるで死人みたいだ。いや、もう死んでいるようなものか」

<死ぬほど、辛い思いしたのは間違い無いわ…>

 

よほど大変な思いをしたのは、フォトンでも、理解できた。

 

「M4に関する情報は掴めたか?」

<微妙ってところ、傘ウイルスをばら撒いた理由がパラデウスにあると言う、あなたの予想は的中していたわ。あぁ…それと、OGASね…>

 

UMP45が、一旦溜息を吐いた。

 

<あの、OGASやM4A1に執着してて、他は実力行使するくらいには排他的な性格をしてる…アイツがここ最近イライラしてる表情にも説明がつくわね…>

「分かるように言ってくれないか?」

<M4のメンタルには傘ウィルスの影響で育ったもう一つの人格があって、その人格がなんらかの目的のために私たちに攻撃的になってる」

「目的ってなんだ?」

<OGASはこの事態を利用して調べ物しようとしている。ただ、OGASはその調べ物に吸い込まれたのよ、ミイラ取りがミイラになる現象よ>

 

やはり、OGASは最終的にはペルシカの言っていたウィリアムの思惑通りに動く為のプログラムであるのか…?

 

「報告に関しては理解した。敵の装甲列車の方はどうだ?」

<威力に関しては、そこにあなたどれだけ工夫しても確実に消し飛ばせるだけの実力があると思うよ?>

「すごいじゃないか」

<でしょうね?で?あの列車から、どう逃げるつもり?>

 

逃げる?いや、逃げるという選択肢は彼には無かった。

 

「逃げはしない、今、動ける人形をありったけ働かせている…分かるよな?"黄金フリース"作戦を実行するんだ」

<…え、え?う、嘘でしょ…>

「本気に決まってるだろ?」

<アンタ前任者とは、別の方向性でイかれてるわ…>

 

嘘をつける戦術人形UMP45の顔にこそ出さなかったが、内心、彼女は全身から冷や汗をかきそうになっていた。

 

 

 

「…指揮官。本当にいいわけ?」

「選択肢は多い方がいい」

 

Ots-14はフォトンに作戦の実行を確認した。

黄金フリース作戦…名前こそ、豪華だがその作戦の実態は、日本で悪名を轟かせたインパール作戦と内容の趣旨は変わらない。

要は、自分達の移動手段を喪失したら相手の移動手段で何としても、パデルスィキにたどり着く…という、危険極まりない作戦だ。

 

「はぁ、タリンではもう少しまともな数の選択肢があると思ったわ」

「多すぎると優柔不断になる」

「まさかアルゴノーツを奪うなんてね!正気を疑うわよ?」

 

────20:30

────M4A1

────グリフィン

────タリン:商店街跡

 

「着いたわ」

「こっちよ!」

 

M4が呼びかけると瓦礫に隠れていたHK416とG11が現れた。

2人はパラシュートを2人1組で使用したため、かなり離れた位置に流されていた。

 

「新装備の調子はどう?」

「さすが、ヴェルークトの選んだパーツね。使い方に慣れたら、一気に調子が良くなった」

 

M4とHK416が拳を合わせる。

HK416はベオグラードの事件前から自分の素体や装備をアップグレードするいわゆる"MOD化"を検討しており、今後の戦いを見据えた強化パーツを提案してもらっていた。

ただ、テストは重ねている時にベオグラードの事件が始まってしまったので戦場での投入は今日が初めてである。

 

「指揮官から、作戦を預かってるわね?」

「まぁね……まさか、軍用列車を奪うなんて特攻任務を言い渡されるなんて」

 

「どうしようか?」とHK416に、肩をすくませた。

「いいものがある」といい、M4A1はホロマップを展開した。

 

「ちょうど、あなた達が隠れていた場所の近くで外務省の大型兵器がスタックしている。それがあれば火力が足りるらしいわ」

「了解。M4、あなたもそれに?」

「いえ、私は別行動。ここで人形がみんなおかしくなる事態になったでしょ?その元凶を始末する」

「放置すればいいじゃないわ

「私だってそうしたいけれど、もし正規軍がその元凶を自分たちの手駒にする方法があったらどうする?っていう話になったの」

 

人間の戦力の方が正規軍の方が多い。

クレーンなりでこっちに投げつけられたりしたら、ただでさえ不利なこちらがさらに不利になる。……という、建前だ。

本音はもう少し違うのだが……

 

「あなたもあなたで、苦労するわね。単独で敵の防衛網を強引に潜り抜けて、このタリンを閉じ込めた黒幕の排除なんて。だれも、考えつかないわよ」

 

<M4、話せる?>

 

ユーリが地図の確認をしていた、M4にコンテナを吊り下げたドローンが来た。

ドローンがM4の前に来ると一つのメモリーチップを手渡した。

見た限り、互換性はありそうだが…このチップの中身は?

 

「これは?」

<"知り合い"に無理言って作ってもらった強化チップだ。お前の強引な改造の帳尻合わせと戦闘力を上げてくれる>

 

多分キャスターだな。

M4は、疑いもなく機械も通さず直挿しで、メモリーチップを差し込んだ。

 

「…うわ」

 

I.O.P製でもないのに、テストも危険性も確認せずに、迷いなくメモリーチップを差し出した行為にHK416は引き気味の表情を浮かべた。

 

「────!…これは」

 

突然、M4の視界が緑色のオーロラで覆われたと思うと、一瞬で視界に映り込んだオーロラの姿は消え去り、

それと同時に全身がまるでマッサージを受けたかのようにスッキリし、改造してから感じていた、鉛のようなものにのし掛かられていた感覚が消えて、さっぱりした感覚が余韻のように感じられた。

 

<君のために用意した、そのチップはまず反逆小隊に加入する前に受けた、改造で発生した、"阻害"を取り除き、かつ、君の身体を最大レベルに引き出せるように、戦闘OSをリプログラミングしてある…それが、このチップに搭載してある、1つ目の能力…>

「ひ、一つ目…」

 

今説明された、だけでも相当な技術力の恩恵を得ているのに、さらにあと2つも恩恵が得られる事にM4な嬉しいのか、技術格差に呆然とするのか、複雑な気持ちを覚える。

 

<次に2つ目だ。予備パーツを貸す>

 

HK416が目的の場所に行った後、コンテナが開く。

中にはいくつもの装備が格納されていた、

 

「いいんですか?確かにあのチップに、同期機能がありますけど、勝手に軍の官給品を…」

<かまわない。どうせ残しても、廃棄だって言われるんだし>

 

もうすこしコンテナをみてみると箱の中には、ヴェルークトの隊員が今まで使っていたような、跳躍装置やヘルメットとバイザー合体したようなセンサー、そしてレーザーの形を変えられる、長刀が格納されていた。

 

────

───

 

『────換装完了。ユーリ、ありがとうございます』

 

15分かけて、箱の中には格納された、跳躍装置、ヘルメットとバイザーが合体した"ハイパーセンサー"をヘッドセットに変更した"ラウンドセンサー"、強力な砲撃"兵器クトゥグア・ツヴァイ"のビームタイプ、そして、ガントレット型の近接格闘装備と、近接レーザーブレード…この基本的なもの装備だけを外付けで装着した。

 

『フフ』

<どうした?>

『いえ、ちょっとお揃いだなって』

 

M4の全体的な、シルエットとしてはユーリは、近接格闘戦を意識した、もっと鋭利な形状しているが遠目から見たシルエットとしてはなんとなくヴェルゼを意識させるような姿形だ。

 

『見れば見るほど、上半身の製でバランスが不安定に感じるわね…けど、チップの2つ目の能力のおかげで、全然バランス悪く感じないわ』

 

どうやら、ヴェルークトの強化装備は重心を上に集め倒立性を高め、不安定な重量比ををコンピュータによって、能動的に介入させる事で、バランスの補正することで高い初速から、体感を安定させることが出来るとのこと、そのコンピュータの機能を内蔵させているのも、2つ目の能力というわけだ。

 

『それにこの3つめの能力……』

 

さっきまで、チップに驚かされてばっかりだったけど…3つの機能が1番驚いたわ…でも、これなら元凶も倒せそうな気がする。

 

<コンテナに乗ってくれ>

『乗るって……あ、変形した!?』

 

コンテナが変形して、地対空ミサイルのようなカタパルトに装備の接続を済ませた、M4が乗っていた。

その他の、グリフィン人形やヴェルークトの兵士たちは、フォトンが提案した、"ふざけた作戦"を実行に移す為に準備を進めていた。

 

『…外務省の皆さん!グリフィンのみんな!そして、ユーリ大尉!今まで本当にありがとう!!行ってきます!』

<決着をつけてこい!────"レイラ"!!>

『M4A1…行きますっ!!』

 

電磁式の素早い加速が、M4をまるで砲弾のように押し飛ばすと、一気に高高度まで、突き上げられる…この高さなら、高射砲に晒される心配はないらしい。

加速スピードが、体の動きくらいは自分自身でも制御できるくらいの速度まで来た事を確認すると、アイドリング状態だった、跳躍装置のエンジンを点火…目的の場所へ向かって、飛んでいった。

 

『その列車は元々は俺たちが使っていたんだ!返してもらいますよ』

 

…15分後

 

「おーい!!」

『(あそこか…)』

 

目的地だと思われる、場所に予めつけておくように指示していた、ストロボライトが見えたので、その地点にゆっくりと高度を落として、光のある場所に降り立つ。

 

「やっぱ、カタパルトすげぇんだな!クライアント!流れ星のようだったぞ!」

『それだと私は死んでるんだけど…』

 

彼女からしてみれば、安全運転だったが…それでも、側から見た人形にとっては凄まじいスピードなのだろう。

なんせ、300キロだ…スーパーカーと同じくらい早い車だ。

ヘリや戦闘機ほどではないがそれでも十分早い。

 

『…いまさらアレだけど、今なら引き返せるわよ?』

 

ストロボを光らせて、待っていたのは、自分の部下達…要は、アリージェンスのメンバー達だ。

十分自分が払った分の仕事はしてもらっている、これ以上の危険な時間外労働をしてもらう必要はない、とM4は今でも一人で決着をつけようとしていた。

 

「確かに…私たちはアンタに雇われている、所謂"傭兵"でしかない」

 

傭兵、と口にしたのはAR-57だ。いつのまに合流したらしい。

なんて、考えながらM4A1はSTAR-15の方を向く。

 

『もう引き返せないわよ?』

「引き返す道はいらない」

『アンタ達も?』

 

M4A1は傭兵達の方を向いた。

 

「確かに私たちはこの時の為に呼び出された、仲間でもあるのよ」

「除け者でフェードアウトなんて言う、影の薄さは勘弁願いたいしな」

「まぁ、みんな言い訳揃えてますけど、結局の所、まだチームで過ごしていたい…そういうことですよ」

 

私が人気になるところなんてあるのか?

 

「ああ。カオスで狂ってるヤツについて行けるなんて、最高だぜ」

「そもそも、お金で従わせてるとはいえ、こんなヤバいところに足突っ込むのがまともなわけないじゃん」

 

AR-57とR5がMCXに「お前は狂ってから気に入った」なんていわれのを契機にM4はついに…

 

『────ふっ…!ふふっ!ホント…負けたわ。そういうの好きよ』

 

堪えきれず、笑い出してしまった。

 

「おお!なら!」

『でも、積極的には助けないわよ?本当に大変な時は自分で何とかしなさい』

「ふっ、言ってくれるわ」

「「「「あっはっはっ!!!」」」」

 

STAR-15はまだ、ノリについていけてなさそうだったが、こんな馬鹿らしい、会話なのに不思議と落ち着く…たとえ、短い関係性だったとしても絆はあるのだ、そこに至る為のエピソードがあろうとなかろうと…

 

『行くわよ、私達でケリをつけましょう』

 

 

────

───

──

<今、どうしている?アンジェリア?>

「ようやく、目的地が目視できるくらいのところ…よく、黙っていたわね?クソジジイ」

<ほう?何を黙っていたのかな?>

「あの、パラデウスとかいう奴らのことよ。今まで、散々邪魔されてきたのになんで今まで教えなかったのかしら?」

<聞かれなかったからな>

「そういう言い方を繰り返しているから、潜在的に嫌われるのよ」

<…私がパラデウスと最初の接触したのは南欧に派遣された時だ。当時は単純な疑似宗教団体に分類してたからな、調査した結果、政治的な目的を持ったテロ集団だと言うことを理解してしまったがね>

「肉体を利用するテロ集団…よくそんな危険な組織に騙される…」

<数日生きる為に、手を汚す難民達に君達は一度でも同情を覚えたことがあったかね?まぁ、ないだろう、ユーリみたいな"お人好し"でもない限りね>

「確かにユーリのお人好しには心配が絶えないけど、皮肉の対象として彼を選んだとしたら…その発言は限りなく不適切よ」

<…おや、怒らせてしまったかな?失礼…どうも、私は彼が好きではなくてなぁ。何処かで、悪口を言わないとやっていけんよ。それに、君があの男にまだ未練があるとは驚いたよ…おや、話が逸れた。難民の話だったな、そう…そういうを"迫害"の対象に居場所を与えたのが…>

「パラデウス…勧誘の仕方は麻薬組織やギャングのやり口ね…だけど、その難民達で実験させて、戦わせる理由は何?」

<それを調べるために君はここに来たのさ>

 

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