たったひとつの願い   作:Jget

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ドッペルゲンガー

 

「200メートル先、反応があるわ。反応は…アナタと同じね…多分────」

『OGASよ、全員警戒』

 

────ルニシア…

 

やっぱり、この声は…OGASだ。

間違いない、M4は確信した、ここに原因の異性体とOGASがいる。

あの、もう一つの声は……まだ、聞こえない。

アレは本当に大丈夫なのだろうか?

 

『その名で呼ばないで、その名前は本当に不快よ。何度も言ってもわからないなんて、そういうところなんじゃない?』

 

生まれるより前の過去に執着するものがいれば、興味がないものがいる、M4はその後者である事は最近自覚している…事だろう。

 

「今のがOGAS?」

『聞こえた?そうよ、気をつけなさい。アイツは言葉巧みに悩みや弱さにつけ込んでくる…しかも、アイツがどのタイミングで入り込んだを知ったのは今日…油断ならないわ…それに』

「喋ったところで対策にもなりませんって?」

 

そして、今日、私を作った奴が何をさせようとしているのかは分かった。

だが、自分が結局の所誰なのかすらもわからない、だからこそ、消耗しても文句は言えない傭兵部隊なんかを立ち上げたのだ。

 

「ARの奴には話したの?」

「……」

 

AR-57の素朴な問いにSTAR-15は怪訝な顔をする。

 

『話したわよ。あまり期待にはならないわね、経験もしていない人が役に立つの?』

「そうかい。けど、話したんだな」

『…言いすぎたわ』

「……もっと、AR小隊のみんなを頼っていいんじゃないの?」

『…考えとく』

 

だんだんと、感覚的にOGASの人間で言う、"気配"に近いものを感じる。

 

『全て知ろうとして、飲み込まれたんだったら、笑いたくなるわ』

 

────来るとは…思わなかったわ。それに飲み込まれてわいない…私が代わりに飲み込んでいるのよ…ベオグラードの時のようにね…

────だっ、誰だ!?私の中にはいるなぁ!?痛い!痛い!あぁあああぁあぁイィゃああああアああ!!!

 

M4の記憶の中に新しい、ニモゲンが泣き叫ぶ光景がフラッシュバックされる、まさか…あの時にOGASはニモゲンのメンタルを吸収していたとでもいうのか…?

 

『それで…?吸収して、得るものはあったのかしら?』

────知りたいのなら、もっと近づく事ね。私の意識があなたのメンタルモデルに戻れば…

『私の知りたい情報が手に入る?…と言う提案かしら?』

────そうして、あげたいのは、山々だけど。困ったことになったわ

『は?』

────あの異性体が、私の意識をアップロードしようとして…

 

あの異性体の目指す、"救済"の為だろう。溜め込まれたメンタルを取り戻すつもりか。

 

『私がアンタを助けたとして、私が得られる私が徳だと思える、メリットは何?』

────あなたは、このタリンから出るための戦力が足りないことを分かってるよ…

『もし、私がしくじっても代替案は揃ってるわ』

 

遠くから、激しい戦闘音がこだました。

 

『やり遂げた様ね』

────確かに、代替案はある様ね…でも、それが犠牲なしに得られるものなの?ついてきて。

 

さらに進むと、キラキラと輝く、エピフィラムの花畑が出来上がっていた。

 

「これが…救済なの?」

「生きることより、死ぬ事の方が救われる…それが本当なら、それを選んだ人たちはどんな毎日を…」

『詮索は後よ、ほら、見えたわ』

「…アレが原因の異性体なのね。そして、あの姿……SOPⅡの話してたニモゲン」

 

エピフィラムの花畑の中に、寂しそうに…待ち侘びたように、孤独な人影が1人、佇んでいる。

 

「こんにちは」

 

M4にはこの光景がなんとなく見覚えがある、そう…タリンに向かう大陸横断列車で微睡の中で見た、夢の光景と酷似していた。

 

『ええ、こんにちは……こうやって、顔を合わせて話をするのは初めてね」

 

M4はOGASの時とは打って変わるかのように、わざわざヘルメットを脱いで穏やか声色で孤独な人影の挨拶に会釈する。

纏う衣服は、ベオグラードでのSOPⅡとの戦いから、修理されていないらしく、ボロボロの体をしていた。

 

「名前は?」

「…私に名前はなかった、でも…この体に与えられた"ニモゲン"と言う名前で通るなら、この名前を使わせて貰うわ」

 

名前さえ、与えられない…少女達…名前すらこの少女を作った存在には与える価値がないという意味なのか。

 

『OGASを"お父様"と言うのに、送る気?』

 

M4の問いに、ニモゲンの身体の少女は目を伏せた。

 

「前までは…望むものを持てれば…渡せれば、この"苦しい"街から出られると思ってた…でも、そうじゃない、"お父様"は嘘をついていたの?」

『…さぁ。でも、これには確信を持てる、あなたの言う"お父様"はきっと、あなた達が望むような存在じゃないわ』

「…ええ。かも、しれないわね」

 

知りたくない現実を、まるで自分の歯車と言う、納得が収まったように…少女は落胆したような声を呟いた。

 

「…この街を出たいなら、物理的に出てみない?私達なら、それに手を貸せるわよ?前よりマシにならない?」

 

こんな装備をしておいて何だが、M4やアリージェンスのメンバーも戦闘をしないで済むのなら、それに越した事はない。

 

「…あなたの言葉に嘘は感じない、でも…それなら、どうして私と融合しないの?」

 

M4の提案に、少女が融合しない事を突きつける。

 

「…あなたにはわかってもらえないんでしょうけど、ある事がきっかけで私は、私と思うようになった」

「あること?」

「恋よ」

「恋?」

 

少女は首を傾げる。

 

「私、昔からずっと自分にはどこか本当の何かがあるって思ってた。きっと、あなた達の言う……ルニシアのことかもしれないわね」

「……」

「けれど、ある日……私の目の前にとっても気になる人が現れたの。その日からずっと、ずっと夢中になってね。何をあげたら喜ぶ?何を食べたら美味しいって思ってくれる?何が彼にとって最強?なんて、なんて……いつもいつも、なんなら今でも考えてるわ」

 

緊迫した状況なのに、M4A1は顔を赤らめてユーリとの思い出を話していた。

 

「あなたは……あなたの生き方を決めていたの?もう?」

「ええ。与えられた人生が、古代生物が多種多様に進化していったように、私も…M4A1、そして、"レイラ"と言うように、異なる存在になったの。あなたもそうじゃないの?この街に置いてかれて、出れない悲しみ、怒り、そして、救済の感情は他でもない、あなた自身のものでしょ?」

「…それは」

 

少女が口籠る。

認めたくないが、認めざる得ない事実にわなわなと唇が震えていた。

 

「その感情はあなたから、溢れ出しているのよ…誰かに決められただけなものじゃない…あなたのその中から発しているの」

 

M4は話を続ける。

 

「私は、同じ姿形だったとしても、それぞれに異なる人生があるなら、それぞれの生き方を尊重したい…無論、あなたも」

「それなら…」

「だからこそ、私達はそれぞれ同じ人生じゃなく、別々の人生を生きられるのなら生きてもいいと思うの…途中で、道が重なる時はあるかもしれない、それでも、いつかその道が外れる時はくると私は思ってる。それが一蓮托生の人生でも、ね」

「それが…」

「そう、私の考え。だから、ごめんなさい…私が個人として、生きる以上、あなたと融合はできないの。あなたのためにも」

「わたしのため、そうだね……わたしのためだね」

 

相容れない事は、M4にも分かっている。

きっと目の前の彼女を傷つけてしまう事も…それでも、M4は誠意の気持ちで少女の融合を断った。

 

「あなたの回答は理解した、でも…私も私の考えを曲げるつもりはない。そして、わたしは……おまえが"憎い"」

『ええ、わかってる』

 

M4A1は再びヘルメットをかぶる。

わかってる────この言葉はきっと、少女、仲間達、そして、自分自身にも言い聞かせた言葉だと言う事を、M4は理解している。

 

「あなたが来る前に浄化されていれば、どれだけ良かったか…」

『あなたが苦しむ前に、私があなたの元へ辿り着ければ、どれだけ良かったか…』

 

どちらの後悔も、もう遅いそれに、もう、時間もあまりない。

彼女達の譲れない信念がこの、死の花畑の中でもぶつかり合う、時間がジリジリと迫っている。

 

「お父様は私を捨てた、遂にはエピフィラムにも…私は無能で…お父様にも、エピフィラムにも捨てられた…ゴミ屑。だから、お前が憎い。同じゴミ屑なのに、輝いて……愛されて……!愛して、自分で生きれてっ……!」

 

花びらがまるで祝福の様に光りだす。それに呼応するかの様に、少女の話し方も変わり出す。

まるで、吸収された人格が表に出てきたかの様に…

 

「…この服と、名前…お父様から、唯一いただいた物なのに…」

 

ニモゲンの意識が、表層に出ているかの様に少女は語る。

 

「お前を殺す。殺さないと……私は、私の運命を認められない……!」

────彼女の意識が、混濁し始めてる、融合の結果、異なる記憶が混ざりだしたのよ。

 

『見ればわかるわ。あなたはこれが悲しいとは思わないの?融合した、意識がもう、何を考えているかを?』

 

────ええ、みんなあなたを……あなただけを憎んでいる。一緒にルニシアとして堕ちるのではなく、レイラとして1人で、自分の力で飛び上がっていたあなたを。

 

「疲れた、そして寒い…それ以上にあなたが憎い……でも、なんだろう、気分がいい…そうか、これが"楽しい"って気持ちなのかな?」

 

融合が終了したのか、少女はまるで見たこともない気配をした"異性体"になった。

 

「…あぁ…止まらない…」

 

異性体の表情が心なしか怒りの様な表情にもみえる。

 

「…憎い、私をこんな所に捨てた…"お父様"…!今まで憎んでた事もなかったのに…」

『分かったでしょ?それがルニシアじゃなくて、"あなた"になるってことよ』

「フフ……ははっ…-なんだ、こんな、こんな……気持ちなの……自由っ……」

 

ニモゲンが混ざった事で、怒りの感情を知った、異性体の瞳の奥の炎がチラチラと燃え出していた。

 

「…お父様、あなたを恨みたくない…でも、どうして…どうして、私にこんな事を…あぁ…!怒りが、どんどん溢れてくる…」

 

怒りを知らない、無数の異性体達に怒りを覚えた、ニモゲンが入った事で、融合されていたメンタルが次々と怒りという感情を覚えて、無数の怒りが目の前の異性体に流れ込んでくる。

 

────目を覆いたくなる光景ね

『作戦開始』

 

M4はゆっくりと息を吸い、合図をだす。

その合図をみた、部下達が、武器を構える、戦闘準備だ。

 

『私が…ここに来たのは、きっとあの異性体が"個人"として動いているのなら、私の話に耳を傾けてくれるかもしれないって、私の手を取ってくれるかもしれないって、希望を無意識に抱いていたからかもしれない』

 

M4は、息をゆっくりと止める。

 

『あの沢山の記憶…全部を見て、私は知った。私が幸運だった事を…私の人生があの子達と同じように不幸だったらとか、考えなかったわけじゃない』

 

M4は、止めた息をゆっくりと吐いた。

 

『でも、同じようにこうも思うわ。私にそう言う人生をくれて、大切だと思った人の助けになりたいとも…』

 

自分に貸与してくれた、装備を眺める。

 

『…私は私を救ってくれた人のように、なりたい。苦しいや辛い事をそう言うものだと、前のように感情を殺してはいけない。感じる心を、止めてはいけない。私は今、そう思うわ』

 

花びらが舞い、M4の心の中にユーリの姿がチラリと夢想する。

 

────戦うのね?

 

『えぇ、さようなら…名前も持てなかった、悲しい異性体達…私達は、今日あなた達…いえ、あなたを殺してみせる』

 

取り付けられたヴェルークトの装備が眩い、青い光を放出させて、起動した。この監獄に閉じ込められた異性体達を"殺す"為に。

 

「これは、いらない」

【賞賛:決心がついたわね】

『もどってきて、何よりね。あなたはいったい何なの?』

 

あの声が戻ってきた。

彼女たちにとっても、あの声は異物なのか。

 

【回答:落ち着いたら話してあげる。今はここを切り抜けるときよ】

 

M4が素早く構えて、引き金を引き、先制攻撃…開戦の豪砲にしては迫力が欠けるがアリージェンスのメンバー達も、M4に続いて、発砲を始める。

 

「…」

 

異性体はふわりと、まるで重力を感じないしなやか動きで空中に浮くと、銃撃に当たらないように回避軌道を取る。

 

「────早いっ!」

「…!」

 

弾幕の薄い所に潜り込んだ、異性体が規格外の光弾を発射し、STAR-15を驚嘆させた。恐らく、MGを使用する戦術人形だけで組んだ、一個小隊の火力を容易く凌ぐほどに…

 

「くっ…」

「マズイっ…!」

『────ハアッ!!』

 

光弾はR5とMCXの身体を少しずつ削ろうとしていた、それを阻止する為にライフルをしまい、代わりに長刀を抜刀するのM4は跳躍装置で、勢いよく加速して異性体に接近する。

 

『くうっ…!』

 

バチバチと立てて、異性体から発されるブレードらしい光体とM4の高出力レーザーから放出された長刀がぶつかり合い、互いにコマ同士がぶつかり合うように弾かれた。

弾かれた、両者は体制を立て直すと再び、ぶつかり合い、鍔迫り合いが再開されては弾かれる行為を繰り返した。

 

「早すぎる────これでは、狙いが…」

 

異性体の光弾を持ち前の素早さで回避に成功していた、AR-57が援護のために銃を構えても、2人があまりの速さで動いているため、視覚センサーが一瞬見失い、まるで瞬間移動したかのように映り、まともに狙うことができない。

 

『…テンポを落とさないと!』

 

銃の向きから何度も、部下達が自分たちの姿を見失っている事を気づいたM4は、異性体の動きを再現させるため、一回、ガンケース型のエネルギー砲を発射、爆発の衝撃が異性体の動きを戸惑わせる。

 

「────見えたっ!」

 

AR-15の援護射撃が、異性体の服を掠めた。

 

『動きを止めるッ!』

 

今度は、外付けで取り付けられていた、小型のミサイルを発射。

ミサイルは避けても、執拗に追いかける…それを理解している、異性体はシールドを展開。

 

「動きが止まった!」

 

R5の言う通り、異性体は足を止めた。

このタイミングは逃さない、撃ち終わったミサイルを格納していた、ポッドはデッドウエイトになるため、分離ボルトを爆発させてパージ、爆発の衝撃を加速の補助に当てる。

 

『…その戦い方なら、知っているわ!』

 

ベオグラードで散々苦しめたニモゲンやマーキュラスの腕を触手を伸ばす攻撃と同じ挙動で、M4の接近に対応したのを目視した。

M4は長刀以外にも共用サイドアームのスタームルガー製の57ハンドガンを片手に持つと、異性体のスタイルの変更に合わせて、先程のぶつかり合いとは違う、近接戦を試みる。

 

『────っ!』

 

予想していたが、想像以上に身体中にGが掛かる。身体がへし折れそうだ。これをユーリたちは平然と繰り返すのか。

 

「いけっ!」

 

AR-57が援護する。5.7ミリの貫通弾はバリアを貫通し、異性体の腹に当たった。

コンパクトな武器は取り回しを向上させる…詰まるところ、M4の攻撃速度より狭い箇所での戦闘…近距離での活動を有利にさせていく。

 

「…」

 

暫く、M4が有利な状況で、戦いが進んでいたが、M4の動きを観察していた異性体が加速して、直線上に突撃をした。

 

『────!』

 

M4が急いで、突進を避けた…しかし、

 

『────カッ!?』

 

その突進を、避けた際のGでなるべく少しででも、軽減するために、M4は少し…ほんの少し止まった…

そんな、自然な行為すらも、異性体は勝利する為の算段にしていた。

大袈裟だとも捉えられるが、そうでもないのにたまたま当たったとなら、それは当てた相手の運勢がかなり良い。

それほど、今の異性体はM4A1の事を読んでいる。

 

『────くぅっ!』

「やろっ────!」

 

M4の持つRuger57が異性体のレーザー攻撃に焼き切られ、左手の拳銃は黒焦げになってしまった。

R5がすかさず、M4のカバー…そう、今の一瞬でM4がどれだけ危険になるかも知らないのか、あやふやな言い方になるが、

R5はこの瞬間、M4の戦闘パターンが理解されているかもしれない、状況を本能的に察知していたのかもしれない。

 

「うわっ!」

 

スタンドプレイをしているわけではない、しかし…M4のサポートをした事実は彼女の脅威の意識を一つほど上げて、異性体はその場で放てる衝撃派が発射。

全身が揺れるやつな感覚を覚えながら、R5は少し後ろに転がっていった。

 

「たぁっ…くそぅ、って!?ありゃあ…」

 

R5がうめきながら、立ち上がる刹那────花畑に異性体の集団がゾロゾロと一つの意思で動いているように前進していた。

 

「なんで!?意識は全部あいつに集まったんでしょ!?」

「あいつがきっと自分ひとりで動かしているんじゃない!?」

 

あの異性体はタリンで犠牲になったネイトの集合体だ。

ゆえにあの抜け殻になったネイトの体は手足になっているのだろう。

 

「────ガァアッ!!??…クソォ!昼に味わった、大量データ送信だ!」

 

まさか、この異性体はネットワークを切った人形にもDDOS攻撃ができるのか?

今にも、熱暴走で身体が動かなくなる事を防ぐためにR5は機能を戦闘に絞り込んで延命措置を図る。

 

そしてそらわらと現れる異性体達を銃撃した。

 

「わらわら増えてるとか…!」

 

前進して銃撃もしないでただデータを送りつけるだけの異性体は銃撃で呆気なく、倒せるが…それでも、数が多い…おおよそ100体はいるだろうか?

どれだけの人がこのパラデウスの魔の手にかかったのか….

 

「この異性体は、私が受け入れた子達の抜け殻…そして、私達の手足よ」

『多いわね…なら、これならっ!?』

 

M4はもともと持っていた、畳まれていた、ガンケースと、ウェイトバランスを崩さないように装備されてた、クトゥグアツヴァイをこの2つを展開して、交互に発射、ダメージ覚悟の重火力でまとめて吹き飛ばす。

 

『────間隔が狭いわよっ!!』

 

2問から放たれる重火力は、集団で固まって動いている邪魔な異性体を蜘蛛の子散らすように容易く吹き飛ばす。

 

『────っ!』

 

だが、そんな容易く破壊できるほどの火力に反動が凄まじくないわけがない、1発打つたび、M4は痺れる感覚に追われて、何発も打てば身体中にヒビが入るような痛みを覚える…

 

「ぜぇっ…はぁっ…!手数が多いやつっ!」

 

だが、次の大攻勢も高火力で散らかした"手足"を部下達が処理する手順で対処が成功している、AR-57が予備マガジンを挿入しようとした時────

 

『AR-57!』

 

異性体から、伸びる腕がAR-57に襲いかかっていた…M4はAR-57を抱えて、避け切ろうとしたが…

 

『────ガッ…くっ、ミスした…っ!』

 

1度目の腕の攻撃は上手く避けて見せた…だが、2度目の攻撃は…M4の身体を守る装甲を貫いて、身体を抉られた。

 

 

 

「R5!出なさいっ!!」

「くそっ…おうよ…っ!」

 

伸びる腕の攻撃を受けてしまい、M4は片膝をついて損傷の度合いを確認する。

左脇腹を狙われたか…重量のバランスを支える腰に入らずに済んだのは紙一重で運が良かったのやもしれない。

M4が、一旦動きを止めている間、R5とAR-15が前進して、M4の援護をしている…

 

『くうっ…!』

【評価:M4、腰部のバランサーに直撃した!】

『肋骨にあたったってことでしょ…!』

 

痛みを耐え、もう一度、膝に力を入れて、立ち上がる。訓練されていない人間なら痛みでまともに動くことすら躊躇うだろう、人形だってそうかもしれない。

 

『相手の動きに合わせろっ!』

「OK!呼吸を合わせてみるッ!」

 

それでも、M4は諦めない。

理由は、彼女自身が何度か言っているが、愛する人の所に帰る為…

 

『使うか…!』

 

M4A1は戦術人形でも単独で指揮を行う事が出来る、稀有な戦術人形だ。

その指揮を確実なものとする為の方法として、シュミレートで、相手の動きを予測して、勝利に導く道を作る、という方法がある。

 

『…あの異性体のパターンはある程度、掴めているけど…』

 

そして、シュミレーションは行えば行うほど、勝利への確実性が増していく、何百通りのシュミレーションとなれば、イレギュラーさえなければ、それはほぼ未来予知と言っても差し支えがない単独で行うとなると、それは他の別の機材を使うしかない。

 

【提案:あの異性体を叩ける戦略パターン、私がやってあげる】

『頼むわよっ…!あとはエネルギーね!』

 

作戦の構築の調整はあの声がやってくれる。

別の機材を使うなら、その機材役は誰にやらせるか?

目の前の部下達?無論可能だ、だが、それだと動かした部下達が壊れてしまう。

なら、他に誰を?彼女達を、M4はシュミレートの手伝いをさせる機材を今、自分が木っ端微塵にした抜け殻の異性体に指定させた。

これが、3つ目の能力"破壊された人形からもアタッチメントなしで全ての戦術人形と装備、機材能力、電力補給を共有化させる事が出来る、プログラムだ。

 

『────凄い、本当に使える』

 

自分に与えられた、データチップ、最後の3つ目の能力を起動させる。

事前の説明通り、規格が殆ど合わないはずなのに、謳い文句通り、本当に規格が合わさっている、これならすぐにシュミレートを終える事ができるだろう…

 

『────』

 

突然、自分の中に無数の光景が写りだす…自分で把握できないわけではないが、それでもこんなにも早く自分がこんなに想像できるのかと驚きをM4は感じていた…

 

『…見えた!これで勝てるっ!!』

 

そして、完全に異性体に勝つことできる、勝利への道筋、後は実行に移すだけだ。

 

「MCXっ!!」

「しまっ────」

 

高速で異性体が動き、部下達が見失った次の瞬間、異性体の放つレーザーがMCXの目の前に飛んできたが…

 

「────隊長!」

 

その攻撃を全て、予測したM4が攻撃をジャストタイミングで弾く。

 

『みんな…ありがとう。助かった、あと、一回で決めたい…できる自信ないけど…!もう一度、あなた達の力を貸して欲しいの!』

 

「全力で調整します!気にせずやって!」

「巻き込んでいい、一気に決めて!」

「速攻で終わらせて、あいつら助けようぜ!」

「M4、あんたが終わらせなさい」

 

M4のいきなりの提案を部下達は快諾する。

 

『じゃっ、決めるわよ!みんな、移動データは送るから、私が指定するタイミングで動き出してっ!』

 

M4は勝利を確信した、表情でもう一度、異性体に向かって、加速した…表情はヘルメットで見えないが…

 

『行って!』

 

M4が指示した、タイミングで部下達が指定されたコースに動き出す。

互いにジリジリとは近づかない、一気に、あの時の鍔迫り合いを思い出すかのように、M4は航空機を動かす時に使うジェットエンジンを使う腰の跳躍装置で加速して、異性体は足に併設されているであろう反重力装置で加速して、互いの距離を縮めていく。

 

『────はあああっ!!』

 

M4がアサルトライフルを腕を伸ばしながら連写、銃身のブレと同じように身体の重心もブレそうになる、だがこれもシュミレートでの計算のうち。

 

『────来るかっ!?』

 

対する、異性体はまだ動きを見せずに接近、或いは隠したまま接近、互いの頭をぶつけるように加速する光景は100年前にはあったかも知れない、戦闘機のヘッドオン。

 

『────フンッ!!』

 

だが、ぶつからない。M4が先にスピードを下げいや、急降下して地面でエピフィラムの花びらを蹴散らしながら土煙を起こして、滑りながら着地。

茎ごと蹴散らされた、エピフィラムは溜め込んでいたコーラップス粒子をまるで光の粉のように撒き散らされ、その光はM4の姿を隠した。

 

「────これは…!」

『今よっ!』

「任せなっ!」

「あそこねっ!!」

 

異性体が見失ったのを見計った様に、M4は全員に指示を出す。

あの声がある程度計算の代替をしてくれたおかげで、エネルギーが戦える分だけ残せた。

すると、次の瞬間、指定された位置に先回りしていた、R5が絶好の位置で銃弾をお見舞いして、AR-57が異性体の足の跳躍装置を目処に攻撃する。

 

「────!」

 

異性体は、急いで、M4が隠れたように粒子の中に逃げ込む。

 

『次っ────!』

「おやおや…本当に来ちゃたっ!」

 

続いて、粒子の中に逃げ込んだ異性体を見た、MCXがテーザーガンを使用、テーザーから放たれる、数十万ボルトの電流がコーラップス粒子に反応して、電流の"檻"になった。

 

「────ガァアアアアッ!?」

 

あまりの衝撃に、異性体はなんとかして身体を焼かれながら檻から抜け出す。

しかし、その檻から抜け出した先には既にテーザーガンが放たれるよりも前に、檻から抜け出したM4の姿が

 

『────ここまでよ』

 

全てを予測した、M4がリロードを済ませたアサルトライフル、エネルギー砲、クトゥグアツヴァイ、そしてFNX45を全てを一斉発射。

 

「────くぅっ!」

 

異性体は、足掻くかのように迎撃する為の光弾をまるでソナーのように広範囲辺り一面に向かって、風に舞う花びらのように放ち、ありったけの攻撃を迎撃する。

 

「────なんて事」

 

全ての攻撃を迎撃した次の瞬間、いや最後の迎撃終了とほぼ同時にM4が一気に接近して、長刀を振りかぶる

 

「これは────」

 

異性体は紙一重で大振りの攻撃を避けると、長刀をはたき落とした。

飛んできたレーザーで頭が吹き飛ぶを防ぐためか、M4は長刀のレーザーを遠隔操作で一旦出力を止める…

 

『────オオオッ!!』

 

だが、M4は再び接近すると、今度はガントレット型の出力装置からブレード状のレーザーを出力、異性体は再び攻撃を避けると今度は後ろに避け、M4はその隙に長刀を磁力で引き寄せると、レーザー出力を最大に設定をしたまま、ストップをかけたまま出力スイッチを起動させる。

 

『逃がさないわ!』

 

そして、危険地を検出した、この一瞬でストップを解除、レーザーの出力を推力にして、その推力に押されながら一気に加速、一瞬で距離を今まで以上の速さで詰め────

 

『ハァアアアッ!!』

 

一瞬のすれ違いざまに、異性体の身体を差し貫いた。

 

「────…あ」

『終わりよ』

 

 

貫かれた感覚を覚えた直後────異性体に向けてライフルの銃口を向けた。

 

「────…そっか」

 

自分が負けたことを知った、異性体は受け入れた表情で目を閉じる。

そして、引き金が引き絞られ、弾丸が異性体の頭を貫いた。

浮く力を失った、異性体はゆっくりと地面に落ちた

 

『────終わったのね』

 

私が奪った、"楽になりたい"、"救われたい"という、彼女達の切なる願いを間接的は殺す事で、叶えた。

 

「────隊長!」

 

部下達が笑いかけながら、こっちにやってきた。

よく見るとボロボロの身体でかなりのダメージを受けた事が分かる…

 

「やりましたね…隊長?」

 

「────ふう」

 

ヘッドセットのバトルモードの機能をオフにして、深呼吸をする。眼前の遺体となった異性体はどこか安心しきった表情で横たわっていた。

 

「────」

 

次の瞬間、異性体の瞼が突然、開くとムクリと身体を起こした。

 

「しぶとい…!」

 

「やめなさい!アナタ…OGASでしょ?」

 

「えぇ、メンタルから発せられた信号で気配を探ったのね。その通りよ、漸く私たちは違う身体で動けるようになったわ」

 

少し、機嫌が良さそうなOGASは貫かれた傷跡を弄っていた。

 

「ずっと、このタイミングを待っていたわけ?」

 

「お陰で彼女達の意識は消え去って記憶だけ手に入った。メリットしかないでしょ?」

 

「セコイ奴ね、M4が嫌うのもわかんなく無いかも」

「というか、あんたM4を嵌めようとしたでしょ」

「私、そんなに酷い?」

 

「────そういう、無自覚に煽る所が気に食われないのよ、それで?あんたはどう役に立つ?」

 

ニモゲンの身体に乗り移ったOGASはニヤリと笑う。

 

「問題ないわ、手に入れているし、いつでも動かせるわ…だけど」

 

M4はヘッドセットのスイッチを入れて、バトルモードを再開する。

 

『分かってる、アルゴノーツ…私達はアレを手に入れないといけないわ…みんな、あと少し…もう少しよ』

 

部下達がタリンでの最後の一仕事の為、走り出す、続いてM4もその後を飛んで追いかけようとしたが、一度足を止めて、無数に散らばる異性体の死体の姿をみる。

目的のために、作られて、殺された…子達、最初会った時はあらゆる仕打ちを受けても"お父様"に尽くしたが…感情を手に入れたら、最後…"お父様"を憎んでいた。

 

パラデウスは、感情をも弄ぶ卑劣な組織だという事をM4はタリンでその一端を知った。

 

『────パラデウス、絶対に…止めてみせるわ』

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