たったひとつの願い   作:Jget

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さらば、タリン

『マズイ…ガス欠ね…』

 

加速が悪くなるのを確認して、減速すると…自身の残り燃料があまり無いと警告が鳴りひびいている事を気がついた。

 

たしかにM4のチップはあらゆる互換性を合わせるプログラムだが…生憎M4が必要としているのは燃料だ。

燃料を使う様な存在といえば、パラデウスのロデレロだが…

 

『パラデウスがいるのは壁の外…か』

 

ないものはねだれない、燃料を探したいのならガソリンスタンドに寄るしか無いが…

この峠はガソリンスタンドがあるような街中では無いだろう。

 

『急がないと…距離が少しずつ離れている』

 

加速できないで強化装備を纏うと、逆にこの装備がおもりになり、移動の速度が低下する、移動速度が遅くなれば部隊の距離感覚も離れる。

 

『困ったわね…』

 

急がないと、ユーリやフォトン指揮官に追いつけず、援護も出来ない…その場合は犠牲者も増える、それは避けなければならない。

M4は、遅れる事に対して焦りを感じ始めていた、

 

『これは…』

 

ふと、通りかかった廃棄されている工場の入り口に燃料を使う飛行ドローンが捨てられているのが見えた…他にも何個かある。

 

────エストニアはIT先進国だ。

 

M4は朝、街中での会話でユーリの言葉が話した発言を思い出した…

そうか、この工場の近くにドローンが置いてあるはずだと…

 

『神様…!』

 

この運の巡り合わせに、M4はこの世界に神がいるのか?と問われたら、信じるかもしれないと、答えるほど興奮していた。

 

────その一方…

 

『────ヴェルグ3!そのまま移動し続けろっ!ヴェルグ4!敵のEMPはっ!?』

<掘り当てましたっ!なるべく、敵を範囲内に誘き寄せられれば…>

 

"黄金のフリース作戦"…グリフィンの指揮官、フォトンが立てたその豪勢なネーミングの作戦だ。

ネーミングとは裏腹に任務の内容は単純、自分達の大陸横断列車を捨てて、正規軍の装甲列車アルゴノーツを奪うそれだけの作戦だ。

 

<アルゴノーツが止まれば、列車の奪取も叶うでしょうが…本当に止まると思いますか?>

『さぁな…』

 

ヴェルグ2はステルス機能で人形達のレーダーをくぐり抜けながら、敵のヒドラの懐に入り込むと、ブレードを突き刺す。

 

『KCCOが訓練通りに列車を動かすなら、この"一台目"は人間が乗っていない列車を寄越す筈だ』

 

ユーリ…ヴェルグ1もステルス機能で相手の視線から自分を見えない様にすると、1回の斬撃の様に見える、複数の斬撃で4、5人のサイクロップスとアイギスのチームを瞬きの間に切り裂いた。

 

戦術人形が台頭してからは、人間の生存性の増加とより正確でスムーズに戦える様に、各国の軍は人間よりも戦術人形を前に出す様になった。

 

それは、E.L.I.D戦も同様、常に試作品の開発や予算の配分の悪さで金欠に困る外務省とは違い、予算が潤沢なKCCOも戦術人形が前面に出やすくなっている。

現にそれを証明するかの様に今列車から降りて、銃撃や砲撃をする中に人間はおらず、軍用の戦術人形だけだ。

 

『フォトンの立てた作戦がうまくいけば…か』

 

EMPの影響を受けるのは人形と機械…人間はこれといって効き目は薄い方だ、理には叶う。

 

『まずは陽動と制圧がうまく行くかどうかだが…さて』

 

────融合勢力部隊

 

<融合勢力部隊は、支援砲撃を継続>

 

鉄血工造の武器は、基本電力で稼働する、レーザー兵器だ。

銃弾と比べたら、情けないほど威力に開きがあるがその分、出力の調整次第では長期戦が賄える利点もある。

 

「…お生憎様」

 

鉄血のアルケミストはいつもの大型ハンドガンではなく、スコープ付きの大型レーザー兵器で戦況を監視しながら、セミオート射撃で制圧射撃をしている融合勢力の綻びとなる、クーデター軍の人形に向けて慎重に狙う。

 

「敵の陣形に穴ができた。ブルートとタランチュラを前にするなら今だぞ」

<ドラグーンは動かさないのか?>

 

融合勢力の1人がブルートとタランチュラには及ばないが、高い機動性を持つドラグーンの部隊の展開を提案する。

 

「あれは敵の誘いさね、行かせた奴に伝えろ。先行はするけど、交代はするなって」

 

相手が人間でも無いのに、あの陣形の乱れ方はおかしいとアルケミストは判断していた。

だからこそ、先行させるのは例え待ち伏せであっても即座に交代できる、ブルートとタランチュラを活かせる様に選んでいるのだ。

 

「まぁ、1番の理由は敵部隊の妨害に出るROの部隊の動きに合わせられるスピードを持つのが、ブルートやタランチュラくらいなんだが」

 

スコープで、敵の軍用人形に見つからない様に、動いている姿を捉えている。

 

────RO635及びR(レイド)部隊

 

「待ち伏せに注意しなさい」

 

RO達の目的は、EMP装置の稼働。

先手でEMPを使用して、自分達もろともグリフィンを動かなくした後に、ゆっくり始末する為だろう…だから、部隊を数回に分けて、こちらに仕向けている。

 

「RO、敵兵です」

 

AUGがナイトビジョンで判別できる、赤外線レーザーで複数人の敵をマークした。

暫くすると、敵は別々のチームに分かれた。

 

「…ついてるわね、少ない方から行くわよ」

 

EMPで動けなくなっても後続がそれを復旧させる必要があるので賢いと言うよりは味方にも容赦がない作戦だ。

ROの合図にAUGが頷いて、攻撃を絶対に外さない位置まで前進、

確実に倒せる位置まで移動したら、赤外線レーザーで丸を描いて準備完了のサインを送る。

 

「成る程、みんなが狙うのはアレか…なら、私は────」

 

赤外線レーザーを確認した、ROは味方が狙っていない方の敵人形に照準を合わせる。

 

「逃がさないわよ」

 

ROが引き金を引き、銃弾が命中。

撃たれた、敵は膝から崩れ落ちるように倒れた。それからすぐ後に他の敵も同じ様にそのまま、崩れ落ちる。

 

「よし…」

 

確認はしたが、確実ではないかもしれない。RO達は慎重にEMP装置まで前進する…

 

「────おっと」

「ごめん」

 

20秒ほど歩くとDP-12とKordに別の入り口で再開し、危うく銃を反射的に向けるところだった。

彼女達が来たということはこの辺りは、安全だろう。

 

「EMPを起動するから、先に離れてなさい」

 

話を少し戻す事になるがグリフィンにもEMP対策を施していない人形ばかりでは無い、自分達もそれなりに対策は施している。

問題は、それが多少…としか、言いようのないレベルだ、

だとしたら人形である自分達も危険性は拭えない。

 

<お待たせ>

 

AR-15の中〜遠距離のからの援護射撃の銃声がスピーカーに入る、音も聞こえず飛んできた弾薬は的確に、仲間外れの様に少し逸れていた敵の急所に命中をさせているのだろう。

 

「AR-15の攻撃?ということは、M4が勝ったのね。……いや、今はあのミノタウロスね」

 

EMP発生装置を守る人形達が見える、大型のミノタウロスもいる。

ミノタウロスは、敵を発見してから展開するシールドと地上爆撃が脅威となる。

 

ミノタウロスの周りで補助にあたるアイギスに向かって、シールドの守備範囲からRO達の銃撃が襲いかかる。

防御力のある人形とは、いうが守備範囲外からの攻撃は厳しい…4、5発急所に当たれば、動かなくなる。

だが、ミノタウロスはその4、5発を撃たれても動ける、しぶとい奴だ攻撃を耐えるとシールドを広い角度を防ぐ、シールドを展開しようする

 

「そうはいかないわ」

 

ここで、ROの電子戦の能力が輝く。

接触接続で、RO635がミノタウロスの肩を掴み、繋がったミノタウロスにROはシールドを発生させない、命令を送る。

命令を送られた、ミノタウロスはシールドを発生させない様にしたが…もともと、シールドを出そうとする、プログラムど同時に実行されて、互いに拮抗する。

 

「Kord!」

「お任せを!」

 

ROの指示でマシンガンの中でも上位の大きさの口径の弾薬を保有するKordが至近距離でも難しいであろう精密な射撃を成功させる。

ミノタウロスの硬めの装甲も、何度も狭い範囲で何発も受けたら、受け止めきれない。

Kordの優れた短い間隔の連射で装甲は突き破られて、駆動機関を損傷したミノタウロスは動きを止めた。

 

「EMP装置、確保…起動準備。機動コード…」

 

EMP装置を守る部隊を制圧した、RO達は装置の起動に取り組む。

 

「今時、起動コードの付いていない装置は珍しいわね…でも、動かせるわよ」

 

しかし、セキュリティの突破も日々進化と工夫がなされている、電子戦の経験が豊富なROも効率よくセキュリティの突破を試みて…

 

「起動した!タイマーが動いてるわよ!!」

「聞いたでしょう!?EMPが動くまでにここから離れるのよ!」

 

目的は今自分達を苦しめている、大型の主砲ではなく、迎撃用のレーザー機銃の停止。

迎撃用のレーザー機銃が止まれば、砲撃を誘導する、SOPⅡ達にチャンスが生まれる。

 

「EMP装置が稼働する時間は決まっているわ、まだ猶予はある!」

「────そんなに余裕はないわよ!?さぁっ!行って行って!」

 

────15分後

 

「迎撃用の機銃が止まった…?RO達、やれたのかっ!?」

「そうだとも思う!」

「それじゃあ、こっちもやるべき事をしますか?」

 

列車の動きを観察した、M4SOPMODⅡが率いる部隊、A(アサルト)部隊が双眼鏡で先程まで、忙しなく働いていた迎撃用の機銃の動きが電子パルスの乱れと共に止まった事を確認する。

 

「重装部隊の生き残りは聞こえる?砲撃を頼みたい!」

<了解……ただ、この混戦じゃ通信が機能してもまともに座標を判断できない可能性がある。それにこっちはE.L.I.Dのせいで数も所属もバラバラだ。正確な位置に当てるなら目印が必要だ。……あー、つまりだ。赤外線のレーザーをくれ>

「了解、すぐに点灯する」

 

レーザーが届く距離と見える距離は違う、例えレーザーが目標に届いても目視で見える距離であるとは限らない、普通の物と同じように距離が離れれば離れるほど赤外線は見えなくなる。

 

「レーザーをくっつけたよ!見える?」

 

SOPMODⅡが列車に後1キロという距離まで近づくと、レーザーを起動。

高出力レーザーが列車をマークした。

 

<ダメだ!レーザー見えたが目標が見えない!もっと近づいてくれっ!>

 

だが重装部隊には見えていない…

 

「もっと近づく…!援護を!!」

 

ターゲット用のレーザーが重装部隊に視認されていないという事はもっと近づく必要があると言う事だ。

M4SOPMODⅡがレーザーを照射し続けながら、アルゴノーツに接近する。

 

「────!!」

 

EMPの範囲外だったのか、それともEMPを受けても運良く動けていたのか…一体の軍用人形サイクロップスがSOPMODⅡの行方を阻む様に立ち塞がる。

 

<見えてます。そのまま進んでください、隊長>

 

突如として、サイクロップスが倒れてX95の声が聞こえる。援護をしてくれたのだ。

 

「────サンキュー!私の天使ちゃん!!」

 

SOPⅡが急斜面を滑りながら降りて、大地に降りると、そのまま走り出し列車の姿が人の目でも目視できる距離まで近づくと再度レーザーを起動させる。

 

「もう一度…!見えてるっ!?」

<よく見えた!ぶちかましてやるっ!!>

 

その声のすぐ後に、ピカッと地平線にも程見える距離で、小さく光が瞬きその数秒後────

 

「────やった!!」

 

重装部隊の支援砲撃が、列車の上部に続けて着弾。

 

「────おお?!うわっ!?」

 

着弾の衝撃で、吹き飛んだと思われる列車の部品が飛んでいき危うくSOPⅡを切り裂く所だった。

何はともあれ、これで人形達を列車に乗り込ませてアルゴノーツを奪えば…と勝利を確信しそうになった瞬間、列車のドアが開き何者かが現れた。

 

「────まだだっ!まだ残ってる!」

 

列車の中から、現れたのは…巨大な軍用戦術人形だった…

 

「────これはっ!?」

 

SOPⅡ達が、砲撃に成功したというのを通信で、傍受していたアリージェンス部隊は近道をして、クーデター軍の人形をうまく避けながら列車まで近づいた。

 

本来なら、人形達が列車に乗り込んでいるはずなのだが…

 

「ひでぇな…」

 

列車の周りに転がっていたのは人形達の死体だった…いや、したいといっても作りが簡素な為、殆どがダミーの人形素体だが。

 

「…激戦があった?」

 

殆どがダミーとはいえ、100以上の死体は原型を留めていないほど損傷している。

激しい戦闘と、圧倒的な火力で攻撃されたと思われる。

死体を調べるよりも先に、爆音が轟く。

 

「────急ぐぞ!」

 

アリージェンス部隊が爆音のある先に向かうと…

 

「こ、コイツは?」

 

彼女らの視界の先には、巨大なゴリラの様な白い人形が列車に向かって巨大な電気の塊を投げつけていた。

 

「────マズイっ!」

 

白い人形がこちらに気付くと電気の塊を投げ飛ばして来た。

もし、AR-57が押し倒そうと思わなかったら後ろの死骸と共に黒焦げになっていただろう。

 

「このやろっ!!」

 

仰向けの状態で、R5がライフルの引き金を引くが、攻撃が当たる直前に銃弾の跳弾の様に起動が変わった。

AR-15の300BLKもダメだ。

 

「効かないっ!?」

「化け物かよ!?」

<ねぇ!そこで外でやり合ってる。人形達、聞こえる?>

 

通信の相手は、SOPⅡだった。

 

「え!?SOPⅡ!?生きてるの?どこにいるの?」

<列車の中!あのゴリラが外に出た瞬間、列車に入ったの!>

「籠ってんのかよ!」

<うん!列車の中には電撃しないんだ!>

「あ!けど、力任せに開けようとしてますねぇ!!」

<だから助けて!>

 

だから、あのゴリラのような人形は列車を攻撃していたのか、ヴェルークトの新兵器の故障かと思ったが、侵入者を引き摺り出そうとしていたらしい。

 

「そうしたいけど、こっちの武器の火力だとどうにもなってないんだけど!?」

<囮になって、少し耐えて!もう少しでヴェルークトの人達とRO達が来てくれるからっ!こっちは列車の開けられないところを開けられるようにしてるから!>

「それで他のやつを乗り込ませるのね!いいよぉ!あなた方は列車に隠れてて!私達は時間稼ぎだね!」

 

一連の様子を黙って見ていたOGASがゆっくり口を開く。

 

「……どうやら、列車の確保をしようとした人形も一緒に入っている様ね。私も列車の中に入れてくれない?ハッキングができるわ」

「誰が入れるかっ!くたばれっ!!この野郎!!」

「いい御身分ですことっ!!そもそも、どのドアが開いてるかわかんないし!」

 

OGASが列車の制御を奪えると提案したが、M4を取り込もうとした前科のある彼女の発言などR5達が信用するわけもない。

それにMCXの言った通り、どのドアが開けるのか、開かれようとしているかなんて知らないことだ。

寧ろ、そのことを分かってくれないOGASの図々しさが彼女達の怒りに繋がるだけだった。

 

<大変そうだな。10秒で着く、待っていろ>

 

無線から、ヴェルグ1の声が聞こえ…数秒ぐらい経った後、上空から銃声が鳴り響く。

 

「大尉…!RO…635!」

「────無事っ!?そっちの隊長は!?」

 

ゴリラの人形が動きを止めている間に、ヴェルークトの隊員の上に乗っかっていたROの部隊がR5達の元に降りてきた。

「M4はガス欠よ!燃料を補給してから来る!」

 

「────分かった、周りの人形は殆ど倒したわ。後は、このデカブツだけよ!」

「よぉしっ!やってやろうぜ!」

『チッ!ウゼェ武器使いやがる!』

『攻撃の軌道は読める、間違っても当たるなよ』

「けど、曲芸だろ!それはさ!?」

 

豪速球ではあるが、正面にしか投げないなら正面じゃない所に、移動すればいい。

それよりも厄介なのは、この新型の防御力だ、威力こそ前のタイプやり劣るが貫通力と破壊力に優れるクトゥグア・ツヴァイなら偏向障壁を貫通すると思って撃ったが、耐えられてしまった。

 

ならば、重装部隊に頼みたいがフォトン指揮官とも移動して列車に向かっている。

重装部隊の設置から準備の完了までは時間がかかる。

 

『"アレ"が来るまでの時間は持たせられるはずだ!ヴェルグ5!』

『当たり前だっ!ヴェルグ3!』

 

とはいえ、それはグリフィンが重装部隊を人形のサイズまで落とし込んだからという話でもある。

ヴェルークトの保有する大型の重装なら…

 

「しぶとい野郎!死になさい!」

「気を逸らすだけでいいんですよ!無駄に使うな!」

 

RO達はあまりの硬さに痺れを切らして、フルオートでゴリラの人形を攻撃している。

 

『クソ、リロード…!』

『カバーする!』

 

こちらもロングマガジン同士をくっつけたデュアルマガジンでリロードの短縮をしているとはいえ、弾薬には限りはあるしリロードする時は動きがリロードに集中して鈍くなる。

 

ヴェルークトの目的も時間稼ぎ。

もちろん、この偏向障壁を破る切り札が早く来て欲しいとは願うが…

 

「新手だ!」

「ゴリラが3体に増えました!?」

 

新たに2体の、ゴリラの人形が列車の格納庫から現れてそのうちの1体が列車の上に乗っかるとSOPⅡ達のいる車両の天井を壊し始める。

 

『やらせるか!────!?』

「…」

『行かせないつもりか!?』

『どけよ!このやろう…!』

 

ヴェルグ1が天井を破ろうとする、ゴリラの人形をどうにか引き剥がそうと試みるが最後の1体がヴェルグ1の行手を阻む。

 

「クソッ!破られる!」

 

列車の中もパニックになりかけていた。

天井が破られたら、あのゴリラの人形がやってくる。狭い場所であの図体の身体で暴れられたら、ひとたまりもない。

 

列車の中の人形達がいつ襲われるかわからない、そう恐怖を感じていた瞬間。

 

『────定員オーバよ』

「────!?」

 

上空で青い光が見える。

その光が大きく円を書いて、そのまま斜めに急降下して、列車の上に乗っていたゴリラの人形を蹴り飛ばす。

 

『遅れてごめん!!』

「「「M4!!」」」

 

ゴリラの人形を蹴り飛ばしたのは、補給を済ませた、M4だった。

蹴り飛ばされた、ゴリラの人形はそのまま地面に叩きつけられて、M4はそのまま列車の上に飛び乗った。

 

『────あの馬鹿っ?何やってんだ!?』

 

ヴェルグ5が怒り散らした様に怒鳴る、それはそうだろう、あんなマニュピュレーターに全く気を使わない蹴り方は整備も兼ねるヴェルグ5にとっては悲鳴が出そうな行為だろう。

 

「────お待たせ!M4、また会えたわね」

 

HK416も合流する。どうやら、404小隊と合流するために来たらしい。

ゴリラの人形が地面を殴り、立ち上がり赤いセンサー型の眼球が彼女達を脅威と認識する。

 

 

『早速で悪いけど、頭を下げてなさい』

「なんでさ?」

「いいから!あっ、もう来た────」

 

M4の発言を何を言っているんだ?首を傾げたは、HK416は「遅かった」という、後悔の表情を見せた頃には、ゴリラの人形が周囲諸共、呆気なく吹き飛んだ。

 

「────ギャアアア!!??」

 

その周囲の近くにいた、404小隊もR5達もRO達も爆発の余波で吹き飛ばされる。

全身が悶える、痛みで立ち上がると崖の上の高所にまるで、巨大な蜘蛛みたいなロボットが巨大な砲身から煙を出していた。

 

『着いたのか!"テイラー"!!』

 

ヴェルグ1にテイラーと呼ばれた、巨大なロボットはまるでサソリの威嚇の様に両碗部を上げて、咆哮のような駆動音を響かせる。

 

「アレが…ヴェルークトの重装部隊…」

『そうよ、重装型戦術歩行兵器"テイラー"よ』

 

M4達がHK416達に依頼した予備プラン……それは、巡回中に偶然見つけた、巨大な、ロボットの"テイラー"だった。

初めは、修理してもウンとスンと反応しないので完全に壊れたと思っていたが、OGASの通信が異性体に流れを変えた時、動くのではないか?と思った、M4がHK416に合流ついでに見に来て欲しいと頼んだのだ。

結果は予想どおり、過剰通信から解放されたテイラーは正しく起動して我々の切り札として稼働してくれる。

 

<君が動くかもしれないと言ってくれた時は地獄に仏を得た気分だったよ、M4!>

『こう見えても、物覚えがいいんですよ。さぁ、行きなさい!』

「いや、動かしたの私……」

 

M4が指示すると、恐らくデータリンクの要請に応じたテイラーが応急処置で治されたとは思わないほど、俊敏な動きでジャンプして飛び降りながらクトゥグアを3発発射。

発射されたクトゥグアは今まで与えられたダメージの蓄積もあり、ゴリラの人形の偏向障壁を突き破った。

そして、そのまま大地に降りるとそのままその場にいたゴリラの人形を殴り飛ばす。

 

「アリージェンス…たかが、私兵部隊とたかを括ったけど、評価を改めないといけないわね」

 

とはいえ、HK416はM4が修理したといった蜘蛛型のロボットを見て、確信していた。

見に来た時、テイラーは複雑な構造をしてこれは治っているのか?故障しているのか?それすらも分からなかった。

けど、スイッチを押したら修理されたとおりに動いた。

あんな複雑な構造をよく、あの部隊は理解したものだ。

そんなことも出来るとは、さすがM4が選抜した私兵だ。弱いわけがない。

 

『今のうちに、列車の制御を…なんて、言われなくても分かってるか』

 

M4が時間を稼ぐというよりも早く、404小隊はアルゴノーツの中に侵入していた。

 

『…なら、私のやる事はコイツを倒すだけね』

 

M4の視線はサソリの様な兵器に偏向障壁を破壊され、半壊状態になったゴリラの人形に戻っていた。

 

「案外警備はしっかりしてる!」

 

さっきは怯えてるといっていたが、アルゴノーツの内部は現在、さながら接舷した船を奪い合う海賊同士と戦いの様に列車の奪いをしている。

 

「…うっ!?結構な数いるじゃん!?」

 

狭い、車内で数少ない遮蔽物に隠れたり、あるいわ伏せ撃ちで列車の内部で銃撃戦が繰り広げられていて、互いに決め手をかけていたが突然列車を守っていた人形達の動きが止まる。

 

<こちら、UMP。列車の制御を奪ったわ。戦術人形の動きが止まっているはずよ>

 

どうやら、404小隊が自分達が撃ち合いをしている最中に、当初の予定に沿って列車のシステムをハッキングした様だ。

 

『UMP…やったのね…ふぅ』

 

404小隊が列車の制御を奪った頃、M4もユーリや数名のヴェルークト隊員と共に残りのゴリラの人形を倒す事に成功した。

 

『連結とは…フォトンさんも面白い事を考えたな』

 

確かに昔はどのくらいの企画が定められているか知らないが、原則上列車の連結する際の部品の規格は共通化されている。

大陸横断列車がアルゴノーツと連結する事は難しい事じゃない。

 

『やるじゃないですか、フォトン』

<アルゴノーツの動かし方は知ってるんだろ?ユーリ?>

『もちろん…アルゴノーツの開発は俺たちも手伝っているからな、すぐにでも────』

 

それは、ワニの様に音もなく現れて巨大な口を開いて、M4達に襲いかかる。

 

『────!』

 

いち早く気づいたユーリが他の仲間を突き飛ばし、彼自身のそれを避けた。

 

『コイツは…!』

『C型だとっ!?』

 

ユーリ達に襲いかかった者の正体────それは、M4にも覚えがあった。

あの、重装部隊を襲って私たちにも襲いかかった、あのE.L.I.DのC型だった。

 

C型がユーリ達に襲い掛かろうとしたが、生きていたとはいえ、手負いだった様で制御したアルゴノーツの自動操縦で発射される砲撃に肉を抉られて、怯んでいた。

その姿は、昼頃に見た圧倒的な恐怖を忘れさせるほど、情けない姿だった。

 

<報告する、レーダーによると軍の装甲列車の2台目が来る!>

<テイラーが障害物を除去!線路上に障害物なし!>

『ここから出ないとな、早く出せ!』

 

もうM4とユーリ以外は列車に載っている最後にコイツを倒して、ブースターで追いつけばいい。

 

『────はあぁっ!!』

 

C型が自動操縦の砲弾に膝をつくと、ユーリがC型の背中に飛び乗り長刀を2本突き刺した。

 

「────ギャアアア!!??」

 

そのまま、ユーリが突き刺した長刀で傷を広げるとC型は痛みに悶えて悲鳴をあげる。

その悲鳴と同時に突き刺した長刀を引き抜いて、ジャンプで飛び降りる。

 

『見えたわ!』

 

広げられた、傷跡の中にE.L.I.Dの急所が現れる。

ヴェルグ4がその急所にスナイパーライフルである、SR-25E2の6.5グリードモア弾を4発お見舞いするとC型は漸く息の根を止めた。

 

『KCCO…詰めが甘い!!』

『それとも、わざと中途半端に怒らせたか!』

『後者はいやだ!』

 

機械に頼り切りになると、こういう事を起こすのかもしれない、最終的なチェックを怠ったお陰でユーリ達が苦労する羽目になった…敵だが。

 

『急ごう』

『はい』

『────乗れたっ!隊長!M4!あなた達が最後です!』

 

ヴェルグ4が列車に追いつき上手に感性をなるべく働かせない様に飛び乗る、残りはユーリとM4だ。

追撃の装甲列車から逃げるために、列車の速度が上がっていく。

 

『────よし、あと少し!ユーリ!』

『────出力が…上がらないっ!?』

 

M4は順調に加速して列車までの距離を詰めていくが…ユーリはどういう訳かどんどん列車と距離が引き離されている。

急いで原因を診断プログラムにかけると原因が判明した。

 

『そうか!ウィングをやられてたのかっ…!?…くそぉっ!!』

 

あの時────C型の不意打ちから仲間達を守った時にユーリの跳躍装着に損傷を受けていたのだ。

 

<大尉!?>

『気にせずいけっ!』

『けど!』

『レイラ!』

 

M4がユーリに構いすぎて、列車に乗れないなんて事態こそ、本末転倒だ。

ユーリは銃を上に振り、"早くいけ"と急かした。M4も何が起きたのかの把握はしていなかったが、ユーリを信じるとさらに加速して、列車の上部に取りついた。

 

『────行けた!後は貴方だけです!さぁっ!早くっ!!』

 

飛び乗ったM4が手を伸ばす姿が見える、だがもうどうしようもない。

出力が上がらない以上、列車に追いつく事はできない、幸いタリンの街の制御扉はM4が開けてくれた様だし、歩いて目的地に目指すのも────

 

『────あきらめないで!』

 

なんとM4が列車から降りて、列車とユーリの間までやってきて必死に手を伸ばしていたよだ。

 

『ユーリ!!手を…手を────!!』

 

今後は絶対に切り捨てない、見捨てない。

その決死の決意で、M4はユーリに手を伸ばす。

 

『────っ!!』

『────!』

 

M4が最後のチャンスをくれた。

確信めいたものを感じた、ユーリが伸ばされた手を掴もうと、腕を…手を伸ばした。

 

『あと少し……届いてっ!』

 

そして、その手が掴まれた…!

 

『『────掴んだ!!』』 

 

M4、そのままブースターをロケットモーターを使って、一気に加速。

オレンジ色の熱気を放つ、ブースターの色が2人を列車まで運んだ。

 

『はぁ……!はぁ……!』

『……!……!』

 

お互い口で息を大きく吸って、座り込んでいる。

 

『掴んだ…ようやく…掴めた…』

 

私の手が…やっとアナタを…。

やっと、初めてM4はユーリを救うために手を伸ばし、その手は彼を助けたのだ。

 

『……あっ、レイラ』

『よかった……本当に……よかった……!』

 

どうにか、まだ残っていた生を喜び、M4A1は強く、強く、ユーリを抱きしめた。

 

『……』

 

彼女の……M4A1の腕や声からはまだ、震えが残っていた。ユーリもどういうわけか同じように震えていた。

震えを止めるために2人は列車の上で抱き合っていた。

 

────

───

 

『寝てた……』

 

そのあと、列車が止まるまでねっとりと抱き合っていたが、ふと夜明けを感じた、そのまま眠っていたらしい。

M4は何となく時計を見る。M4達がタリンについてからの時間はまだ1日も経過してなかった,

M4はおもむろにヘルメットを外して風を感じる。こんなに崩壊した光景なのに、どこかスッキリしたのか……私は落ち着いく。

後ろを見ると、小さくなるタリンの街が見える。M4はしばらく、離れていくタリンの街を眺めていた。

 

「…さらば、タリン」

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