「う……」
朦朧とした、意識の中……ハンターは目を覚ました。
目が覚めると、そこは真っ白の壁で覆われた空間の中に居た。
確か……自分は、鉄血のエリートのハンターは……前哨基地に攻撃を始めたグリフィンに相手に、M4A1とAR小隊との戦いで、電力切れを起こして、停止していたはず。
「こ、ここは……う、ぐ……」
立ち上がろうとして、転げ落ちてしまう。
思うように力が入らない、元々そんな力がなかったにどれだけ力を入れても途中でそれ以上力をいれられない。
「何のために……私は……?」
答えはきっと、目の前に座っているドレスを着て椅子に座っている女がかかわっているはずだ、這いつくばりながらなんとか慣れない手足を動かしながら、近づく……
「はあ……はあ……」
何とか女の座っている椅子の足元まで近づき、椅子の脚に手を伸ばして、それを支えて立ち上がり、女の顔と対面した。
「お、お前は……」
女の顔と対面して、ハンターは自分の目を疑った。
さっきまで自分の目の前で座っていた女の顔は、同じ鉄血のエクスキューショナーだったのだ。
「どうして……お前がここに……?」
ハンターはエクスキューショナーの顔を覗き込む。
とても生きているように見えない。
目の前のエクスキューショナーにまるで生気を感じられない。
「美しいだろう?これが本当の人形のあるべき姿とは思わないかね?」
同じころ……午後10時
「……そうです。グリフィンの戦術は、第三次世界大戦からの人形の力押しが残っております。それに……思想や考え方はソ連の内務省の影響を強く受けていると思われます……ええ。無論、場合によっては脅威になるとは思いますけれども……そうですか、事と場合次第ではグリフィンの……分かっています。今後もそちらのお役に立てるように業務に励みます。それでは」
”あの方”への報告が終わり、電話を切った。
「…さて、こうやって焚き木までして、野宿の準備は出来たが…」
なんとか野宿に必要な木と枯れ葉を集めて、どうやって火を起こすのか悩んでいたら、それを燃やす為のライターを指揮官が持っていた為、夜を過ごす事が出来た。
途中、あらかじめ持ってきた食料があったので食事にも困らなかったが、ここで一つ問題が発生した。
「さて、どう基地まで戻る?」
「そうですね…歩いて帰ろうとしたのに崖崩れがここまで悪いとなると…」
そう、前の作戦で鉄血が起こした崖崩れは道路まで及んでおり救出活動は愚か、その道が再び崩れるかどうかの心配しなくてはならなかった。
「他の道も試してみても…同じような事になっているとしか、わかる事も少ないですからね」
AR-15が横になって傷口に土が入らないように気を使っていた。
「とりあえず、北東の道は余り地形が悪くなっていない。そこなら比較的安全に帰ることが出来るかもしれないね」
「比較的…ですか」
ヘリを呼びたくても、爆発のせいで地形はめちゃくちゃ。
着陸した途端、ヘリのプロペラがこのがれきにぶつかるか許容できないほどの土ぼこりを吸い込みすぎて、ドカン。
それを分かり切っている以上、ヘリが降りられる位置に移動するか、自力で帰るしかない。
ちなみに、最初のは論外だ。
鉄血が起こした山崩れのせいで降りられる場所なんてどこにもない。
だから、あるいて帰るために、最短ルートの北東の道路を通り、帰投する方針に固め、それぞれ交代で睡眠をとる事にした。
「あなた……えっと」
「JS9ですよ。AR-15さんでしたっけ?ど、どうしました?」
JS9は怒ってもないのに、不機嫌そうな表情をするAR-15と話すのは苦手そうにしていた。
「交代よ、寝てていいわ」
「あ、はい……それでは」
いそいそと避けるように、戻っていくJS9の姿を見て本当に怖がられているんだなと自分の態度の影響を実感していた。
「いいですか?」
STAR-15は同じように交代していた指揮官の姿が見えたので話しかけて見た。
「どうしたの?」
「昼の件で謝罪をしたくて……すみません、まさか隊長のM4A1に新しい指揮官が充てられていたのを知らなくて……改めまして、私はAR小隊の”STAR-15”といいます。小隊では狙撃や偵察といった役割を任されています」
「よろしく、STAR-15。私はユーリ・フレーヴェン。グリフィンの新入り指揮官なんだ」
簡易的なものではあるがお互いを知るには良い機会だろう。
「指揮官はAR小隊のことをどのくらいご存知なのでしょうか?」
「城塞からは”バックアップが取れない”、”機密性の高い人形達”である、という事を任命される前に説明を受けたくらいかな。後……」
「後……?」
どうしようかと、ユーリは悩んだ。
あの裏サイトでの、悪口や誹謗中傷、いじめの自慢が本当なら……それは、彼女の知られたくない部分を暴かれることと同じになるかもしれない。
自慢できることではないけれど……ユーリ自身、軍隊に居たときに立場の弱い人間が真っ先に戦場のストレスの捌け口にされ、いじめられた人間がさらに弱い立場の人間をいじめる様を経験したことがある。
そんなことを”噂だけど、知っていました”。
といわれたどう思うか?
怒るだけならまだいい、根も葉もないうわさを信じて内心見下しているって思われることだって不思議じゃない。
だから、出来るだけユーリはそれよりも本当の実情やAR小隊たちの本当の姿を自分で確かめたいと思っている。
でも、嘘は後ろめたい。
そう言うこともあって、ユーリは言葉を詰まらせ、”これを話しても良いだろうか?”という考えを渦巻かせているのだ。
「いや、ただの噂だ。気にしないで」
「噂と言われるにはそれ程の理由があるはずです、話してみては?」
あくまで任意であるようだが…STAR-15の表情を見る限りはとても任意で済ませられる様な状態では無いと思う。
「はぁ…分かった、君達の救出作戦の際で他の部隊の人形と合同作戦をしていたのは知っていると思う…指揮官達だけならまだしも、一緒に肩を並べる側の人形たちもが、M4はSOPⅡを毛嫌いしていてね……指揮官という、私がいる手前そこまで表立ったことはしてなかったけど、かなり毛嫌いしていたんだよ」
これは、黙っていたことだけど……
AR小隊がどんなものかと先輩と言える指揮官達に話を聞いても聞く限りの評価は芳しくないもの…いや、悪口がほとんどだった。
例えば決断力がない癖に指揮官気取りのM4A1、凶暴で目を合わせたら殺しにかかるSOPⅡ、自己中心的でプライドの高いSTAR-15、飲んだくれのレズ野郎のM16などとても女性(人形ではあるが)に話すにはとんでもないレベルの悪口が満載であった。
「…それでも、指揮官は私達の面倒を見るという事なのでしょう…か?」
「…あぁ、頼まれたからね」
そう答えるとSTAR-15はああ、若干やっぱりかと失望したような表情になっていた。
「私を救ったのも…やはり、命令…だからですか?」
「そうだね。進行形式に関しては命令通りに行動しなかったけど…それに、"助けて下さい"って頼まれたし…ね」
火を見つめながら指揮官は少し昔を思い出して答えた。
「助けて…下さい?」
「うん、最初にM4と話した時にそう言われたのさ」
「あの子……」
AR-15はだんだん火から指揮官を見つめる様になった。
「あぁ、それからは手助けをするつもりだったけど、直接指揮官に任命されて…まぁ、後は君達を探すために色々したよ」
「色々…とは?」
「あぁ…それはね…」
それからは交代のタイミングが来るまでの間M4と私が何をしていたかを説明した。
説明が終わる頃にはM4に感謝の意を持っていたようにも見える、私に対する感謝…は有ると良いが…まぁ、見返り求めても意味はないか…
朝になった。
太陽が見えてきたタイミングで行動を再開する。
雨は降っていないが落ちてきた石ころによってできた砂利がぬかりみ同じように足元を滑らせて進行のスピードを妨げる。
3時間は歩いて、漸く目印にしていた道路に到着する。
「うわっ…!?」
「地形が変化して、傾斜しています。体幹を斜めに意識しないと…」
JS9が土が覆い被さった道で転びそうになったSOPⅡのパーカーのフードを掴み、立て直す。
土が斜めに被さっているため、普通の歩き方をすれば転んでしまう。
M4は兎も角、欠損が目立つAR-15はAR小隊の中でも特にバランスが取りづらいようで何度も転びそうになり、その度に支えて貰う事になった。
それにより進行速度に遅れが生じてしまい、AR-15は口にこそ出していないがこの事にかなりイラついていた様に見える。
急な二次災害の可能性が低くて、安全な分、土砂の範囲が広域に広がっていたのもAR-15を焦らせるには十分な事だったのかもしれない。
結局……昼過ぎに道路を予定が実際は夕方までかかってしまった。
「なんとか抜けることができましたね…」
「あぁ…大丈夫か?AR-15」
「…はい」
長い道路や足元に気をつけなければならないなど様々な事が発生して結果的にではあるが、9時間かけて土砂の被害がある地域を抜ける事が出来た。
「かなり遅れてしまったが…ここで休憩を取ろうとここなら安全だ」
「りょうかい!あぁ…やっと休める…」
本当は4時間毎に休憩を取りたかった。
だが…あの二次災害があるかもしれないところで休憩を挟んだら命に関わる事だと判断して、休憩を先送りにしていたのだ。
という事なので後は鉄血も来ないであろう比較的安全な箇所で先送りにした分の休みを取る。
M4は暴発を防ぐためにマガジンを抜いて初段を取り除いた後クリーニングロッドを差し込み簡単に汚れを取り除いていた。
SOPⅡは近くの壁に腰掛けて足を伸ばしていた。
JS9は、マップを見ながらあとどのくらいかかるんだろうか?と、計算をし直していた。
ユーリも軽く銃を綺麗にした後、持ってきていた水筒に口を付けて水分を補給していた。
「M4…少し良いかしら?」
「AR-15、どうかした?」
クリーニングが終わるのを見計らってSTAR-15がM4に話しかけてきた。
「あの指揮官…どう思う?」
M4A1が質問の意味が分からなかった。
言われたことの意味が分からないのではなく、これほど分かりやすいのに他に何が分からないのかが、理解できなかった。
「ユーリ指揮官の事?……見ての通りでしょ?いい人よ」
「それはわかってるわ。さっきも何度も気を遣ってもらったし、私たちの事情もある程度把握しているのもなんとなくわかった。そもそも、前線に出て私たちの面倒を見てくれるくらいなんだから、他の指揮官とは違うのもわかるわ」
”お人好し”?M4A1は、STAR-15が指揮官のことを能天気だと評価したと思って5を睨みつけてやろうと思う気持ちをぐっとこらえた。
「……あなたも分かり切っているなら、この問答をする必要はないでしょ?STAR-15。ユーリさんは、前の指揮官とは違う」
「……そうかしら?あなたも、前の指揮官を優しい人、って答えたわよね?まぁ、間違いではなかったけど…」
「……はあ」
AR-15が出した、"あの人"という言葉はM4の中の言葉の歯切れを悪くさせた。
「M4…もし、同じようななんとなくっていう評価をしてほしくないの。どう優しいか説明できるんでしょうね?」
AR-15の問いがさっきよりも少し厳しくなった
「前の指揮官は確かに優しい人だったわね、"人間"に対しては。だけど……あの指揮官が私達に何をしたか、忘れてはいないはずよ?」
AR-15は忌々しげにM4に語った。
「M4に対しての警告をしたM16は救援を無視されて、SOPⅡは自分の趣味をネットに上げられて連日嫌がらせを受けた!私は…給料を滞納されただけだから、まだマシだけど…!!」
「AR-15…」
AR-15は握れない拳を握ろうして、M4A1が止めた。
気が付くと、手がスパークを起こしていた。
もし、M4に指摘されなかったら腕が爆発していただろう。
「悪かった。でも、今でも許せないのよ!」
「あのね……!」
「アイツは私たちがどれだけ身を粉にして努力して、ペルシカの支援を断ってまで実力で仕事を働いても認めなった!挙句の果てにはあのクソ指揮官様は”戦術人形が仕事を奪った”なんてほざいて、私達をクビにしたのよ!…」
怒りが宿った瞳はM4を心配している…その為だ。
でも、自分が味わった理不尽に恨みがあるのも事実だ。
今の指揮官を疑う…それだけの理由がAR-15にはあった。
「それだけの目にあってもM4…貴女は例え違う人間であったとしても、今いる指揮官を信頼する事ができるの!?」
「出来るわよ!!」
STAR-15の怒涛の問いかけM4A1は今日初めて、AR-15以上の怒鳴り声を上げて、STAR-15を驚かせた。
一拍おいて、落ち着いた後にM4A1は話し続けた。
「確かに昔の指揮官は…私達にとっては本当に酷かった。…それはグリフィンの指揮官として、取った行動だと疑いもせずに言うかも知れない」
「だったら…!!」
同調したとも言えるM4の言葉にAR-15が続こうとするが…
「あの指揮官は違う。……私を助けてくれた時…あの時はまだ誰も人形を部下にしていなかったの。一人よ?人形もなしで、鉄血のエリートモデルのエクスキューショナーに立ち向かってくれた。そして、私を助けてくれたの」
M4の話にAR-15が話を聞こうとしたのを確認して言葉を続ける。
「あなたが思ったように、私もあの時、指揮官の事を"おかしい"人だと思ったわ。死にたがりなんかじゃないかって…でも、そんなのじゃなかった…」
M4が座る姿勢を変えた。
「指揮官は私がただ、"助けて欲しい"と言っただけなのに情報を集めるために財産の殆どを使ってAR小隊の痕跡を洗い出してくれた…その情報には貴女達を見つける手掛かりもあったのよ?」
「…私達の?」
「ええ。それからも私達を道具というよりなるべく近い存在だと考えてくれるみたいで…SOPⅡが指揮官に"じゃれついた"時でも、許してくれた。貴女を救出する時作戦も本来人数が足りないのを指揮官が参加する事で補ってくれた」
M4が話し込むうちにいつのまにか言葉には熱が入り込み、真剣な物だとAR-15も理解してきた。
「あの人は命と人生の中で積み上げてきた大切な財産を切り売りしてでも本気で手伝ってくれた。だから、私はあの人を信頼してるの。今の指揮官を信頼しても良いと思ってる」
「初めてね、あなたがそこまで他人に入れ込むなんて」
「私も驚いてる……それに、あの人」
それに、誰にも話していないことだけど……ユーリは度々誰かに、連絡を入れていてた……グリフィン以外の誰かに。
そもそも、M4A1はユーリがグリフィンにお金や安定した仕事の為に働きに来たようには思えなかった。
……なにか、何らかの目的があって、グリフィンに入ったようにも見える。
私は、そのユーリの真意を見極めてみたいとも……思っていた。
AR-15はM4になんらかの会話をしていたようだったが、個人的な事に割り込むのは失礼だと判断して、代わりにSOPⅡに帰ったら何をして、何を食べようかなと聞かれたのでその話を次の出発時間まで話していた。
「ここを抜けて…あと、4箇所通り抜ければ基地に戻れる、そうすれば基地だ。補給や修復も受けられるだろう」
「ようやく……ようやく、暖かいご飯が……まともな生活が……!!」
「キャンプだと思えばいいんじゃない?」
「ええ。自然の怖さを思い知るキャンプでしたよ」
JS9は悪夢から解放されるように、瞳を輝かせM4SOPMODⅡはそんな彼女をよそにまだまだ、余裕が残っていそうだった。
地図に目印をつけていた飛行場跡に到着して、基地まであと30分と少しだ、ゴールが見えたきたな…
「あの…」
飛行場跡を通り抜けようとした時に誰かに呼び止められた。
「君は…?」
声を掛けられた先には急いで走ってきたのか息絶え絶えで
「…私、フレンチ隊のCZ-805と言います。」
「フレンチ隊?あのハンターがいた基地で会った?MP5はどうしたの?」
M4は聞き覚えのある単語から同じ部隊に居たはずの人形の事を問う。
「MP5は…あ、いえ!それは後にしてくれますか!?」
「貴女自分の仲間を後回しにするの!?」
STAR-15はCZ-805が仲間を後回しにしたと考え怒鳴った次の瞬間……
「待ちなさい!話を……あっ」
その後を追いかけたのではと推測される戦術人形がまた一人やって来たと思ったら自分達を見るなり、ため息をついた。
「もしかして、UMP45?」
「知り合いかい?君達?」
「…えぇと、その……はい、有名人ですので」
どうやらお互い面識があったらしく顔を合わせた後M4とそのUMP45と呼ばれる戦術人形は溜息をついた。
「こ、コイツです!!コイツが味方の戦術人形を壊したんです!!」
そしてこのまま微妙空気が続くのかと思った瞬間、CZ-805の落とした爆弾発言は
「どういう事?」
「誤解よ……」
場の雰囲気が一気に銃口を向けあう殺気立った物に変わった。
「…私達に銃を向けているのもその誤解ってこと?」
「…さぁ、どうかしら?」
M4は確証のないまま敵対する事は避け違ったが、UMP45はまともな答えを出さない為余計に場の雰囲気が悪化していく。
そして…
足元に威力ある銃弾がM4とUMP45の間の足下に着弾して砂埃を巻き上げた。
「敵だ!!SOPⅡ!AR-15を!!」
「うん!!」
急いでSOPⅡにAR-15を抱え隠れるように指示を出す。
私は突然の事で唖然として動けなくなっているM4を引っ張り着弾した位置から考えてなるべく身を隠せる箇所に飛び込んだ。
「た、助けて!」
「は、はい!?」
CZ-805は一目散にJS9に飛びつく。
どうも、AR小隊にもUMP45にも近づきたくなかったらしい。
「ああ!誤解を解いてもらうだけだったのに……!どうしてこんな面事に!」
AR小隊の指揮官がM4を引っ張り隠れた箇所から一つ遮蔽物を介したところに身を隠す。
「G11!アンタのせいよ!どうして撃ったの!?」
<わ、私は撃ってないよ!!>
<G11が撃っていないとしたら、私達以外にも裏で動いて存在がいる……と考えるのが確実ね>
「分かった。”416”と”UMP9”は退路の確保!G11は他の部隊が出てこないかの全体の監視!…ああもう…今日は厄日ね…」
カバー先の錆びついた配管から身を乗りして先程撃ったであろうスナイパーに制圧射撃を始めた。
どうしてここまで拗れて仕舞ったのだろうか…?
思い出せる事があるとしたら、10分前のあの一件だろう…
10分前
「…よし、ドローンが見つけた。今回のターゲットが予想通り、こっちのルートで来たわ」
足音を立てないように、しかし遅れないように移動している4つの影があった
「出来るだけ、怪しまれないように接触しろとねえ。確かにあの指揮官。着任早々、”あの”AR小隊を受けれるのは確かに普通じゃないけど」
「かのクルーガーさんから要望されて入社してその能力を発揮している指揮官…聞こえは良いけど叩いて出る埃はいくら出る事やら…」
「416は私たちの正体を気づかないまま、接触したんだよね?どんな感じだった?」
「……言葉に困るわね。どこか、住んでいる世界が違うって感じた。今までも軍人上がりの人間も見た事はあるけど、それとは全然違う……それが、とにかく不気味なの……まるで、彼には」
先ほど来た道よりも何らかの違和感を感じたUMP45が警戒するようにジェスチャーをだす。
「大破された人形かしら……?アンタ…生きてる?」
「…はぁ、えぇ…お生憎様…」
大木にもたれかかり今にも息絶え絶えの戦術人形がUMP45達の目の前にいた。
「…貴女達、404でしょ…」
「同業者か……」
4人は既に銃のセーフティを解除していた。
「あぁ…そう、じゃあ。しくじったのね、お生憎様」
「…決めつけないでよ、仕事は…果たしたわ」
心外よ、その人形は絶え絶えの息で不機嫌そうに返した。
「その様子じゃあ生きて帰れないでしょ?生き抜けない時点でしくじった様なものじゃない」
「…はぁ、確かに…そうかもね。」
それもそうかと言って人口血液を流しながら自分の終わりを悟っていた。
「…あっさりと、死ねないのは…人形の悪い所…かもね」
「じゃあ、終わりにする?」
UMP45は片手で銃を持ち上げ、銃口を人形の額に突きつける。
「…まぁ、それが…ベストかもね」
そう言って、戦術人形はコアを取り出してUMP45に手渡す。
「これを指揮官に…手順は…L号の8番に…」
「タイマーの記憶削除は10分でいいかしら?」
「ええ、それが…妥当ね」
戦術人形は早くしてくれと言わんばかりに目をつぶった。
「気にするわけじゃ無いけどさ、アンタ名前は?」
「私?…そうね、私は64式自…覚えなくてもいいわ」
「…はいはい」
乾いた様な濁った様な銃声が山岳を微かに響いた。
これで始末完了したと思った瞬間…
「イヤー!!!!」
山岳から大きな叫び声が木霊した、ギョッとしてUMP45がその方向を向くとそこにはCZ-805が叫び声を上げていた。
なんとしても、記憶処置をしなければ…!!
その為に416と9に死体処理をさせて自分がCZ-805に駆け寄ったのが失敗だったと思う、自分も殺されると思ったCZ-805は一目散に逃げ出して、飛行場に向かっていってしまった。
そして、追いかけた先でこの様な結果になってしまったのだ。
「クソッ…!!」
そう舌打ちをして、銃だけを出して射撃を続けていると
UMP9達に退路の確保を命じた箇所で乾いた音とサプレッサー湿った音が交差する。
湿った音は聞き慣れた9の銃歳だから良いとして乾いた音は誰だか検討が付かない。
「9!首尾は!?」
<45姉?こっちも中々厳しいよ、なんせグリフィンの人形達が撃ってきたから…>
「何したのよ!?」
訳がわからないどうして自分達が味方に攻撃させられなければならない?
<退路を確保する時にグリフィンの人形達を捕まえようしたのか…"グループ"が道を塞いでいてね…>
「あぁ……」
UMP45は絶望のため息を上げそうになった。
恐らく、9達はそいつらを軽く追い払うつもりで撃ったのだろう…そこで恐らく、崖崩れの時の生き残りか何がが人間が攻撃されたと勘違いして、そいつらを守る為に行動したのだろう…
グリフィンの忠犬ぶりには頭が下がる…
「こんな所で死ねるか…」
やりたくは無かったがこんなつまらない事でプライドが邪魔するならそんなプライドは捨ててやる、そう判断した私は腰のポーチに入れていた、ライトを取り出した。
何者かの銃弾が家の角にあった像のオブジェを破壊して崩れ落ちた。
「ダメだ!…M4…そっちは!?」
「ダメです…相手の銃撃が激しくて…!!」
私がいる方向は狙撃よって行く手が塞がれ、反対方向から回り込んで逃げるのも続けた始まった突然の銃撃がその方向から来ていま、AR-15を守るので精一杯だ…
「もういやああ!!」
「うるさい!!この野郎!!」
泣き言を言いだした、CZ-805をJS9が怒鳴りつけたが、そのJS9も内心パニック一歩手前だった。
「UMP45…まさか、これほどの策士とは…」
AK-102のダットサイトから幸いスコープが反射しているらしい…先程までいたUMP45に制圧射撃をしようとした瞬間…
「なんだ…点滅している、反射じゃなくて…光か?」
いや、待て、この光…一定の規則性がある?
「…まさか、光通信…?」
ムセンチャンネルハ279247096279…
無線チャンネルは279247096279…?
「よし…!つながった。どうして、無線を?」
<何か思い違いをしているようだから、訂正をしたくて>
チャンネルを合わせて、声をかけて見ると、見事に返事が帰ってきた。
無線をつなげる事に成功したらしい。
しかし帰ってきた返事は疑問を生み出した。
「どんな訂正を?」
<私は別に追いかけてきた人形を殺そうとはしていない…もっと言えばこの銃撃騒動も私達は関与していないわ>
関与していない。
確かにそうでなければ無線のチャンネルを合わせてくれなんてお願いをするはずもないか…
「何が望みだ?まさか、訂正だけの為に無線を送る訳…ないよね?」
<えぇ、それなんだけど…ここでいがみ合うのはやめて、全員で一緒にここから抜け出さない?>
<私はここから貴方達がやってきた基地までなるべく近いルートを教えてあげる、そのかわりに貴方達は一緒に共闘する…悪くない条件だと思うけど?>
ちらりM4達を見る、今の戦力じゃ逆方向からの脱出はほぼ不可能…それに、AR-15も今は負傷している…
操られるよう促されるのは気にくわないが…他に良い選択肢もないか…
「よし、それで行こう。狙撃手は君達の所まで行くとして…狙撃手はどうする?」
<こっちにもスナイパーがいる、そいつに牽制してもらう、それにスモークグレネードも道すがらに投げるからある程度はカモフラージュになるでしょ?>
「分かった…合図したら、お願いできるか?」
<ええ、それじゃ>
UMP45の言葉が本物なら私達にはまだ生き残るチャンスが残っている…思い立ったらすぐ行動、M4達に通信を繋いだ。
「さっき、UMP45から連絡があった。聞いて欲しい」
「本当に信じているんですか!?指揮官!」
AR-15は信じられない、と言ったような言葉を放った。
「私もあまり信用したくはないが…他に確実に逃げられる道が無い…」
「ですが…それでは」
<私は、あなたが信じてくれたように私も指揮官を信じる>
M4A1は信じてくれた。
当事者であるCZ-805は勿論信じられないと言う感じだったがSOPⅡは承諾してくれた…。
<分かりました…指揮官、貴方に従います>
今まで静かに聞いていた、M4が了承してくれたこれで3-2だ、別段多数決をするとは決めてはいなかったがこういう状況になったら自然に多数決をする事が多い。
「UMP45こっちは大丈夫だ、いつでも行ける。」
念のため、SOPⅡとM4がCZ-805の護衛について私がAR-15の肩を担ぎ片手AK-102を構えていた、正直言ってばら撒くのが関の山だろう。
<行くよ>
シュッと向こう側の建物から白いガスが発生するグレネードを投げられる、スナイパーもこちらが向こう側にいこうとしたのに気づいたらしく煙に向けてペースを上げるように弾丸を飛ばして行く。
<よし、じゃあG11!!撃って!!>
しばらくして、こちらに銃弾が止んだのでその間に煙に飛び込んで向こう側建物に移動した、その後も目印になる様にスモークを焚かれ気づけば山岳方面にいた。
「チッ…。これ以上はやめだ、帰るぞ」
撤退し、もう追いかけていけないと判断した二人組の傭兵の内一人は、もう一人に攻撃を止めるように言った。
「もういい…グリフィンの人形を逃したのは痛手だが、鉄血の動ける人形を確保できただけでも十分だ。このハイエンドもな」
「了解しました、そうですね。十分な採算が取れただけでも良しとするわけですねケネス?」
「あぁ、これでグループもより広範囲で事業を行えるだろうよ」
「…はい、それでは、撤退します」
そう言って腹這いになっていた彼女はが起き上がり銃をしまった後、鉄血の戦術人形を拘束し収容していたトラックに出発の合図をだす。
そして、トラックが無事に目的地まで運ばれるのを確認した後、ライターとタバコを取り出す。
「どうぞ」
「あぁ、悪い」
火をつけようとしたタイミングで隣にいたスプリングフィールドいや、"スプリングフィールドであった戦術人形"が事前にライターに火をつけてくれたのでその火を使いタバコの先端を焦がし、吸い込んだ煙を夕焼けに向けて吐いた。
「…」
「自分と同じ人形が売られるのはやっぱり堪えるか?もし嫌なら…」
「まさか」
ケネスの気遣いをやんわりと断り彼女は次々と運ばれている人形を眺めていた。
彼女はため息をついてケネスに笑いかけた。
「むしろ、鉄血ごときがあんないい値段で売れるのか驚いただけですよ」
「ドクターっていったか、随分と物好きな男だよ。まあ、稼がせてもらうだけ、割のいい仕事思うか」
夕焼けに照らされることもなく影に溶けるように暗殺者の計画を狂わせた者たちは姿を消した。
「あら、また会ったわね…AR-15?」
「出来ればあまり顔を合わせない方が良いと思うけど?」
傷だらけのAR-15をおちょくる様にUMP45は蔑んだ表情でAR-15を見つめた。
「これからどうするの…45?」
「…抜け道を使うんじゃ無いのかい?」
G11の話を聞いてどうも雲ゆきが怪しくなる…。
「抜け道はあるわ、でも…それには手伝って欲しい事があるの」
「手伝って欲しい事?」
問題は416達がいるところで起きていた。
「私達は味方よ!!撃ったのは人身売買を生業とする組織なのよ!!」
「嘘つくな!!彼等正式にグリフィンとの業務提携結んでいる、そんな事をするはずが無い!!」
「…ああもう、味方に当てない様に近くに撃つなんて難しいことまでしたのに…」
「泣き言言うな…って言いたいけど…今回は同感ね」
UMP9と416がなるべく銃弾を当てない様に"グループ"に牽制射撃をしていたのだが…
…"グループ"と呼ばれる傭兵集団ではないことを説明して、
説得を試みているのだがほとんど効果がない、どうしようもなくて途方にくれていた瞬間……
「待って…撃たないで!!アレはグリフィンの指揮官だよ!!」
「みんな、複雑な状況だと思うけど聞いて欲しい、今撃ち合っているは味方同士だ、君達がさっきまで守っていたの犯罪組織なんだ、決して君達の敵になる訳じゃ無いんだ!!」
ヒソヒソ…
どうする…?
指揮官が言っているんだよ?信じようよ、
でも、指揮官の後ろにアイツらAR小隊でしょ?
生贄にする為に背中から狙われる可能性だって…
「あのバカ…!止めなさと……」
<G11、手を出さないで…あの説得の仕方は私が頼んだの>
「あんな説得で誰が信じるのよ!!早く止めないと拘束されてどんどん不利になるわよ…」
G11が止めようと物陰から出ようとしたのをUMP45無線越しに制止する。
「大丈夫よ。G11、私もあの指揮官を知ってる」
「そ、そうなの?……ま、まあ、416が言うなら……」
「勿論これで信頼を得られるなんてこれぽっちも思っていない、だから私たちが先に基地に向かう、その後ろをついて行ってくれればいい、勿論銃を向けるのも構わない」
しばらくして人形達の中で話し合いが続いていたが…
「分かりました、貴方をグリフィンの指揮官として信用します。」
「ありがとう、助かった」
「ですが、貴方達の人形は信用出来ません…監視はさせて貰います」
かくして、私達は監視付きであるがなんとか同士討ちは避けて、元々いた基地に帰投する事が出来た。
「本当に戻れるなんて…」
AR-15は感嘆とも驚愕とも言える溜息を漏らしていた。
その後はAR-15の修復を依頼して、人数を数えていたら、途中CZ-805の姿が見えなくなって探してしまったが、指揮官を探している姿が見えたので安心した。
「フフフ、久しぶりですね!!ユーリさん!!いえ、もう…指揮官かな?」
「はぁ…スペア以来だなUMP9」
同じ顔なのかとやっぱり同一人物だった思えば彼女と戦ったことで私はグリフィンに入ったんだよな…
「えへへ〜!!あの時の情報は助かりましたよ!!」
「あの時の?」
「またまた〜アレですよ、"グループ"の内部事情のリーク、アレのおかげ戦術人形の失踪の手掛かりが掴めたのは大きいんですよ?」
「あぁ…それか」
そういえばスペアを抜けてグリフィンに入る時に一通りの情報をグルーガーに渡したな…
「そう言う事!!ユーリさん、いえ指揮官さんにはこれからもよろしく!!と言うことを伝える為にココに来たんです!!」
「そ、そうか…」
相変わらずのハイテンションだな…SOPⅡと息が合うんじゃ無いか?
「それなら、もっと親交を深める事をするのはどうかな?」
「お!いいですね!飲み比べしましょうよ!負けた方が奢るってことで」
「言ったな?」
UMP9と指揮官が飲み比べしている後、
2人と少し離れたカウンター席で、416はコップに注がれていた飲み物を飲んでいた。
「久しぶり」
カウンターで、声を掛けられて416がその方向を見るとM4A1がちょっと嬉しそうに手を振っていたので、416もちょっとだけ表情を緩めた。
M4A1が416の隣の席に座る。
「ハイボール?そんな、安いのでいいの?」
「ええ。節約しないと」
M4A1は得意げにグラスに注いだハイボールを炭酸で割る。
「お疲れ」
「そっちこそ」
416とM4A1のグラスがぶつかり合う。
「山崩れの件は聞いたわ、大変だったようね」
「ええ……結局、山雪崩に巻き込まれた人形の捜索は明日になったわ」
「人形であろうと、1日たつごとに死ぬリスクは跳ね上がるわ……最悪、捜索を切り上げて、新しいモデルの人形に交換されるでしょうね」
やっぱりそうなるか……M4A1は表情を曇らせた。
「民間企業とはいえ、覚悟はしないと」
「そっちもあるけれど……ほら、新しい人形が来た時にもし、生きていたことが分かったら……そうなったら、もし、人形がその指揮官ことを」
「想像するのはやめなさい。気が滅入るだけよそう言う話題は」
忠告こそ、416はしたが
”それ以上想像するのを止めなさい”と喋っている以上、416も想像してしまったんだろう。
「救助が終わるころにはそろそろあなた達も休暇でしょ?余計なことは考えなくていいわ」
「そうね……」
「M4A1は休暇が終わったらどうするの?」
「……M16A1っていう、最後の正体メンバーを探すわ。実は、どの場所にいるかわかってて、ほら……遠いけど、この場所に潜伏してるらしいわ」
「こんな大切な事、私に教えていいの?」
M16A1を探す、そう言った時にやり、と笑った。
「話してもいいも、今ヘリアンさんがこの位置で捜索に協力する指揮官や人形をかき集めてるわよ?多分、近いうちにそっちにも召集が来ると思うわ。416。どうかした?」
「大したことじゃないわ……いい、休暇の使い方を思いついただけよ」