たったひとつの願い   作:Jget

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強行突破

「グリフィンの人形ども…やってくれたな」

 

M4A1が使用した、沿岸砲の一撃で半壊し、炎に燃える列車の後端部をエゴールは眺めていた。

 

「おい、"アレ"を出せ。我々も奴らに手加減してやるつもりがない事を教えてやるのだ」

「────はっ!!」

 

列車の中で最も大きい車両のハッチが開いた。

ハッチの中には巨大な怪物の様な機械の巨人がこれからの戦いの激しさを物語るかの様に鎮座されている。

 

────

───

 

「────ランチャーに即席で展開できるバリケードか…役には立つな」

 

フォトン達はユーリ達が予め設置していた補給用のサプライボックスにある装備を利用して襲いかかるKCCOの攻撃をどうにか耐えていた。

 

「────う…」

「指揮官、Kの意識が!」

「わかった。グローザ、おい?お目覚めか?」

 

フォトン達は反逆小隊のメンバーと名乗るRPK-16とAK-15と合流して、爆発に巻き込まれて気絶していたというKを臨時で立てていた司令部の中で解放していた。

無論、Kがどんな人間なのか予め面識があった人形達には白い目でKを睨んでいたが。

 

「どうなってる?状況を言え」

 

Kの第一声はその視線に意を介さず命令する様な言葉使いだった。

 

「状況?グリフィンの戦力は3%を下回っていて、なんとか組織的な行動が出来る状況さ。ベオグラードの地獄でも優位に戦っていたヴェルークトも半分が死んだ」

「……笑えない冗談だな」

「冗談を言いたいなら、外に出て確認しろ。そこまでの責任を持たない」

「────やめておこう、AK-15とRPK-16は?」

「反逆小隊として合流するためにアンジェリアの方に向かった…ハッ、手を貸してやってるのになんて態度だ」

 

ロクな情報がなければら2人の指揮をしていたKに文句の一つも言ってやろうと考えていたフォトンの思考は突如として緊急時に入る無線によって掻き消された。

 

「了解。指揮官!どんでもない速度の怪物がこっちに来てるとのことです!」

「グローザ、映像は出せるか?」

 

報告を受けたグローザが映し出した、ライブ映像を見る。

 

「なんだ…コイツは?」

 

確かに人形達の言う、"怪物"に相応しい見た目で軽快に走行するスポーツカーがゾウの歩みに見えるほど凄まじい速さで基地の内部に向かっていた。

 

「アレはおそらく軍の大型機動兵器だろう」

「大型機動兵器?外務省が使っていた"テイラー"みたいな奴のことか?」

 

「違う」と言って、Kは被りを振る。

 

「自立稼働する"テイラー"とは違う。アレには人が乗っている。腹回りを見て、そう察しがつく」

 

確かに腹回りが膨らんでいる、あの中に操縦者が乗っているのか?

 

「なら、あのコックピットを人形に狙わせるか?」

「無駄だ、対戦車ライフルでも奴の装甲は壊れない」

 

Kが何かを探す様に歩き出す。

 

「何を探している?」

「対戦車ライフルでも装甲は抜けない、機動兵器を使ってエゴールは後続の道を切り開くつもりだ」

 

それは、フォトンも承知している話だ。

 

「無線機はあるか?おそらくエゴールには逃げられるが後続をまとめて始末することは出来るだろう」

 

────

───

 

「M16の信号は?」

「見つけたよ、その先にたくさんのネイトがいるおまけ付きで」

「なら、そこがアンジェに近いルートよ」

「まさかとは思うけど真正面からいくつもり?そのつもりなら、退路からM4A1達と合流できるのを待ってから仕掛けるべきよ」

 

こっちは4人、あちらは大勢。

ジャミングと建物の構造上、至近距離での戦闘になるのは避けられない、その場合手数がものを言う。

この数で至近距離の戦いは"自殺"と同義だ。

 

一方、M4A1達を待ち、行動をすれば数は20人近くになるこの数で戦う方がまだ賢いと言える。

 

「そんな時間を待つつもりはない」

「どうして急いでいるのよ…」

 

UMP45はまるで、何かに突き動かされる様に焦る様に行動していた。

 

「行き止まりだけど?」

「────この扉…厄介な構造ね。ダンデライオンのマークした箇所にたどり着けるルートも見当たらない」

「この辺りを電磁波で遮断してるんだと思う」

 

電力で動く仕組みになっているが、現在はこの扉は電気自体が通っていない。

 

「何としてもここも突破するわよ…ここのダクトからなら」

「待ちなさい」

 

一刻も早くアンジェリアに合流するべく手段を選ぼうとしない行動を取ろうとするUMP45の肩をHK416が掴む。

 

「…何のつもり」

「それは、こっちのセリフよ。UMP45、何をムキになっているの?」

 

ダクトから1人づつ通るとして、外にはM16とネイトに鉢合わせする。

ダクトから一方的に殺される未来しか見えないとHK416…いや、UMP9やG11ですらそんな事は分かっていた。

 

「…M4と私は最近友達になったけど、私とアンタは友達でも仲間でもない、単なるチームメイト」

「何が言いたいの?」

 

UMP45が自分の行動に従わない、それどころか口を出してくる状況にはいつもならそれなりの理屈を並べて納得させている。

だが、今ではただ感情を露わにした睨みつけ従わせようとしている。

 

「いつものあなたはどうしたのよ?人を怒らせる発言をして、慎重になるように進めるアンタがいつになくムキになっているじゃない」

 

いつも先に感情を露わにするのはHK416だ、だが今はUMP45である。

 

「あなた、今私たちにやらせようとしているのを分かってる?仲間に無理矢理死ねと言ってるの。今までは納得できる理由があった。でも、今はどうかしら?」

 

側から見たUMP45は狂った復讐者の様にも見えるし、味方から信用されない秘密主義の上司にしか見えない。どちらにせよ信用には中々値しない。

 

「正気も合理性もない判断に私は従いたくない。少なくとも私はね」

「416!それって…!」

「UMP9。あなたがどこまでUMP45に依存しているかは知らない、でも私が404をしているのは必要に迫られたと判断したからよ。そうでしょ?」

「そ、それは……」

 

UMP9もうまく言い返せない。

今のUMP45の判断は今回はその必要に迫られたからといって渋々我慢する様な事態を超えている。

 

「"UMP40"とか"M16"だとか、どんな悲劇があったにせよ、それを他人を巻き添えにする。その行為はM4のコーラップス事件と何が違うって言うの?」

「うるさい…!アンタに何がわかるってのよ!!」

「知らないわよ、アンタは私の屈辱を理解しきれていない様にね」

 

「昔、私をハメた奴がいた。そいつに代償を支払わせるつもりだった…私はそいつに繋がる手がかりを……」

「……タリンでみつけた?」

「そうだよ……!私はね…、あのクズ野郎に仕返しがしたいのよ!犠牲を強いてきた奴らに、その後ろに隠れていた奴全部に!」

 

UMP45は声を荒げた。

こんな彼女初めてだ。

 

「私にはある友達がいた。その時にあの子は言ったわ…"どんなことをしても生きなきゃならない。例え嫌われても"…ってね、私はここで立ち止まるつもりない、くたばるつもりもない、必要ならアンタらの命も捧げてやる!いい…!?これが私の進む理由よ!!」

「ええ────よく分かったわ」

 

HK416は気圧されるでもなく、納得するでもなく、ただ一言「分かった」とだけ答える。

 

「…分かればいいのよ」

「だったら、尚更慎重になりなさい。今アンタがやろうとしたことを始めたらアンタも御陀仏よ。そういうのはひとりでやって、私は付き合わない」

 

お互いが黙りこくり、10秒ほど立った時────ズドン!と上から地響きが鳴り響く。

 

「今のは!?」

 

きっと爆発だろうとHK416は思った。そして、それは自分たちに近づいてくる。

 

「行くしかないか……」

 

HK416がUMP45を見ると、彼女は1人でダクトに入って行った。

動きにさっきのような焦りはない、頭が冷えたろうか?さっきまでの危うさはもうなかった。

あれなら、大丈夫だろう。

 

「…外に敵はなし」

 

タクトの隙間から、アンジェリアを視認してUMP45はダクトのハッチを開ける。あの後、他の人形が続こうとしたが何故かダクトの中に入らなかったらしい

 

「…これは?」

 

アンジェリアのいる場所にたどり着いたUMP45は困惑した。

そこにはもちろんアンジェリアがいたが、アンジェリアの他にも子供の姿をしたネイトの大群がアンジェリアを取り囲んでいたのだから────

 

 

そのころUMP9達は、扉の前で待機していた。

 

「416!みて!この反応」

 

UMP9が設置したセンサーの反応にあるものが紛れ込んだことに気がついて急いで画面を見せる。

 

「……ついに来たか」

 

反応は鉄血。そして、M16のものだった。

HK416はついにこの時が来たのだと、判断して武器を握り直すとそのまま反応がある方向に歩く。

 

「4、416!?どうする気なの?」

「……なんとかしてくる」

 

G11がHK416を引き込めようとする。

 

「う、うえっ!?なんとかって!?」

「なんとかは……なんとかよ。そうだ、45に伝えておきなさい。祝勝会にアンタの甘ったるいスイーツはもう勘弁って伝えておきなさい」

 

HK416はそれだけ言うと、反応がある部屋に1人で移動する。

 

「……生きて帰れたら、さっきの事は言い過ぎたって謝ってあげるわ。だから、アンタも生きて帰りなさい。UMP45」

 

HK416に彼女のいない壁越しに向かって呟くと、M16の方に向かって歩き始める。

 

────

───

 

<M4、もうあまり時間はないわ>

 

「────知ってるわよ!!」

 

ダンデライオンの言葉を怒鳴り返して、M4A1達は退路を必死に走り回り、フォトンに合流を目指していた。

 

<────あっ!!>

 

────バンッ!!

 

突然、何かに激突してしまい。弾き返された様に転んでしまう…まさか、KCCOと思いすぐさまライフルを拾い通るはずだった道に銃を向けると…

 

『…M4、すまない。ぶつかってしまった』

「いえ、こちらこそすみません」

 

転んだM4A1に手を差し伸べられ、彼女はそれを掴む。

 

「ありがとうございます…フレーヴェン大尉」

 

ぶつかった相手はユーリ達とその部下のヴェルグ3とヴェルグ5だった、彼らは私達であることに気づくと銃口を下ろした。

 

『お前達、この道を通る気か?』

 

「冗談だろ?」と言いたげな抑揚でユーリが自分たちの通ろうとしたルートを指差す。

どうやら、ユーリ達もこの道を通るつもりだったらしい

 

『俺たちはここまで回収してくれる奴らが襲撃されない様に回収地点を確保しに来てたんだ』

「────回収が来るんですか?」

 

M4達は驚きを隠せない。

何せ皆玉砕覚悟でここにきたのだ。生きて帰れるだけの希望があるなんて信じられなかった。

 

<ユーリ、我々は後2時間後にパデルスィキについて貴方達回収するわ。そっちの段取りは?>

「────あっ!!」

 

ユーリの発言を裏付けるかの様に、通信の通信端末のディスプレイが開く。

どうやら、SOPⅡやROはディスプレイから表示される女性兵士について面識があった様だ。

 

『これから、回収地点を確保する所だ。アリア、お前達は気にせず進めろ』

<それを聞いて安心したわ。…分かった、速度はこのまま変えず、回収地点も現時点では変更は無し…それでいいわね?>

 

「ああ」とユーリは答える。

通信相手はアメリカ訛りのキリル語で会話している…よくみると、彼女…アメリカ人ではないか?と"アリア"と呼ばれる女性についてなんとなく勘繰りを入れてしまう。

 

『そういう事だ、仕事を相乗りさせてもらって"死ね"とは言えんよ。残りの部下はグリフィンの救援をしている』

『だが、KCCOは運悪く回収地点に用があるらしい。フォトンさんに合流したいんだろ?だったら、回収地点を通った方がより近道だ。ちょっと危険だが、どうする?』

「行きます────行かせてください」

 

M4A1の答えは即答だった、この即答が仲間を危険に晒すものだったとしても、今度こそM4A1はユーリを守ってみせるという決意を果たせるチャンスを逃すはずがない女だからだ。

 

『他のやつは…って、聞く必要もないな。分かった、ついて来い』

 

ユーリが走る後にヴェルグ3、ヴェルグ5が続いてそのすぐ後ろをM4A1達が追走していた。

 

戦術人形の脚力は人間を大きく超える、しかし強化装備を纏った兵士の脚力はオリンピック選手の全速力に匹敵する。戦術人形達も何とか走って追いついているほどだ。

 

『敵だ!1時方向!』

 

ユーリの唸る様な声がヴェルグ5に敵の位置を気づかせて、壁抜きで潜んでいたパラデウス兵を仕留めた。

 

『────さらに一体!ドッペルゾルドナー!!』

『────足をやる、俺が足を蹴ったらおまらえが頭を潰すんだ』

『『──── 了解』』

 

スラディングをしたユーリがブースターを一瞬だけ使って加速、ソリの様な引きずる音を立て、強化装備で強化された脚力でドッペルゾルドナーの足を蹴る。

 

「────!?」

 

装甲車の装甲も"ひしゃげる"程の強化装備の蹴り────例に漏れずドッペルゾルドナーは偏向障壁を出す間も無く蹴られた右足がひしゃげて折れ曲がる。

折れ曲がった足では立ち続けることは厳しく────バランスを崩してある程度、倒れ込む。

 

『────トドメだ』

 

ユーリが指示を出した瞬間、ヴェルグ3とヴェルグ5が勢いよく駆け抜けたまま、すれ違いざまにPKPの7.62×39とSR-25の6.5グリードモア弾を頭部に全弾命中させる。

10数発の弾薬を受けたドッペルゾルドナーの頭は射撃の的になるスイカの様にズタズタに引き裂かれた。

 

その後も走り続けると開けた通路に出た、人形達が散開して扇状に広がろうとした瞬間────

 

『────ロケット弾!!』

 

ヴェルグ5の警告通り、足元にロケットランチャーの砲弾が飛んできた。

 

『────ああっ!?やべっ!!』

 

そういうヴェルグ3は慌てた口調だが、冷静にトロフィーシステムを起動し、ロケット弾を迎撃。

 

『ちょっと熱いぞ』

 

爆発で飛び散る破片がM4A1を襲う前に、ヴェルグ1がエネルギーを貯め、熱を帯びる長刀を一振り。

 

余剰分のエネルギーは高温の熱波となり、飛び散る破片や弾丸を焼き尽くす熱のバリアに変わる、それを見たM4A1は「こんな使い方もあるのか」と驚いていた。

 

『────シールド!!』

 

ヴェルグ1の指示でヴェルグチームの兵士達が素早くシールドを展開させた、次の瞬間────次々と砲弾やレーザーが降り注ぎ、M4A1達を襲う。

 

『(────KCCO達が俺たちに追いつくまで後3分!!)』

 

10秒経っただろうか?爆発による、粉塵の煙が晴れていくとそこにはシールドによって攻撃を防ぎ切ったヴェルグ1達が反撃の準備をしていた。

 

『用意はいいな?』

「いつでもっ!!」

 

倒したと思っていた、存在が生きていた事をしり、ヴェルグ1達を攻撃した存在の正体であるパラデウス達がヴェルグ1達に気づいて銃を向け直す。

 

『よし────いくぞっ!!』

 

振り向いて銃をこちらに向け直すまでがこちらのチャンスだ。

全員が一斉に走り出す。銃撃やレーザー、砲弾が飛ぶよりも前に先に攻撃しなければならない。

 

『クトゥグア使用!!』

 

ヴェルグ3がクトゥグア・ツヴァイを展開し、定めた狙いに向かって引き金を引く。

 

────バシュウイイ!!と轟音が鳴り響き、衝撃がコンクリート状の床にヒビをいれた。

 

クトゥグア・ツヴァイの砲弾が着弾した周囲のパラデウス兵を引きちぎり吹き飛ばし、爆炎を形成。

 

「────ヤアァッ!!」

『────オオオオオオオオオッッ!!!』

 

その爆炎のなかから、ヴェルグ1とM4A1が現れて、ライフルを連射。

道を阻むパラデウス兵を蹴散らしていく。

 

そして、その2人をヴェルグ3とヴェルグ5、アリージェンス小隊の傭兵人形達がカバーする。

 

「今だ、いくぞっ!馬鹿SOP!!」

「────馬鹿じゃないっ!」

 

続いてMP7とSOPⅡコンビそれに追従してX95、ACR、P22が援護に入る。

 

「行きなさいっ!」

「言われなくてもっ!!」

 

ROのチームも負けていない、隊長のROは前衛にDP-12を盾役として展開させて、防壁の隙間から側面を守る様にしてパラデウス兵を妨害する。

 

『このまま押し切るっ!!』

「援護します!」

 

グリフィンの戦力が5%にも満たないこんな状況で、非常識な事を考えていたかもしれないが……M4A1は今までから考えて、この瞬間に一番メンタルが高揚していた。

 

「ははっ……!あははっ!!」

 

M4A1は今、心の中で憧れていて、グリフィンにいた昔を思い出すかの様にユーリと共に肩を並べて、隣で戦うことができている、そして今まで追いつきたいと願っていた事が叶った。

 

「邪魔よ!」

 

そして、これが最も彼女の中で重要な要素…M4A1が最も愛し、戦うための理由の一つである"ユーリ・フレーヴェン"を自分の力で守りたい、その願いが偶然というこの状況で叶っていたのだ。

 

「今、いい気分なの!」

 

今まで傷つけた分、M4A1はユーリを守りたいと心のどこかで切望していた、その切望が叶い、この気持ちが嘘じゃない事を自覚して、肯定された感情がM4A1のメンタルを唸らせる。

 

『────む…!』

 

A-545の装弾数を使い切った事を理解した、ヴェルグ1がホルスターからハンドガン "PL-15:レヴェデフ"を引き抜き、リロードをしながら引き金を引いた。

 

「ちっ…」

 

M4も同じタイミングで装弾数を使い切っていた。

自分にはリロードができる余裕がある状況だったが、先ずはユーリのリロードを確実に行わせる事を選択した。

彼女もサイドアームである、FNX-45とRuger57をそれぞれ片手で持ち、二丁拳銃の如く近場の敵に射撃する。

 

『助かった。借りができたな』

「いえいえ」

 

M4A1の援護はユーリを狙い切り裂こうとする近接用人形を始末して、その瞬間にユーリはリロードを済ませる事ができた。

 

再びクトゥグア・ツヴァイの砲撃音がユーリとヴェルグ5から放たれた、この2つの射撃で大元の火力である兵士達が纏めて吹き飛ばされた。

 

『あと少しだ、よくやった…』

「けれど、大部分はアナタのおかげです。"ユーリ"」

 

初めて…いや、久しぶりにM4A1は"指揮官"や"大尉"と言う役割の呼称ではなく、名前で彼を呼んだ。

 

ユーリは少し、間を置いた様に面食らっていたが短く笑った様な声を小さく漏らした。

 

「ユーリ、今度は一緒に────」

「────グリフィンのお人形が!!」

 

突如、鉄血のエージェントとジャッジ、ビークが現れた。

どうやら、融合勢力になる気がない人形が何らかの理由でこちらを妨害しようとしてきたのだろう。

 

『────っ!』

 

ヴェルグ1がM4A1の前に立ち、彼女を守る様にシールドを展開。

3人の攻撃をシールドで弾くのと同時にヴェルグ1は長刀を引き抜きエネルギーを充填、そのまま振り回す。

 

『────オオオオオオオオオッッ!!』

 

充填されたエネルギーでカウンター、振り回された長刀のカウンターでビークの目を突き刺し、そこから水平に切り裂かれる。

 

そこから、M4A1が小刻みにジャンプしてユーリの右肩少し上からライフルを発射。

弾丸はビークの頭に着弾して動かなくなった。

 

『M4A1。お前は先に行け』

 

ヴェルグ1が命令する声でM4A1に先行を促す。

 

「ですが…」

『どうせ、俺たちとは後少し進んだあたりで別れるんだ。一時の別れが遅いか早いかの違いにしかならない』

 

確かに、私たちはグリフィンの人形でグリフィンの為に動く為にこのパデルスィキに訪れた。

支援をしてくれる為にきた人を助けたいと自分の望みを叶えたいが、それは返ってユーリの心配の種にしかならないのだろう。

 

「はい…みんな!ここは、ヴェルークトに任せるわよ!今のうちにフォトンと合流する!」

 

M4A1の号令で人形達は銃撃を緩め、代わりに移動に集中を切り替え、足止めしているヴェルークトの兵士達を通り過ぎる。

 

『────よし』

 

人形達が全員、一定のラインを超えたことを見計らってヴェルークト3がドアの開閉システムを起動。

これ以上パラデウスや鉄血の人形が入らない様にした。

 

「────アナタ達…!」

 

行手を阻まれた鉄血工造のエージェントは憤怒の声で、ヴェルークトの3人を見据えてスカートの下にあるレーザー銃を向ける。

ジャッジを除いて他の鉄血の人形はパラデウスの兵士と戦うので精一杯だ。

 

『さぁ…て』

 

ユーリは一度、エージェントに踏みつけられた屈辱を味わっている…いや、屈辱と言うよりは因縁を感じているだけなのだろう。

それでも、ユーリはその因縁のエージェントに注がれた汚名を器に入った利子も増やして返上してやろうと言う気持ちが僅かながらに疼いていた。

 

────さらに2人の兵士がユーリの前に躍り出る。

 

『アナタ達、隊長を踏みつけたんですって?その代償。今日払って貰おうかしら?』

 

1人はヘルメットからはみ出た髪をかき揚げ、ヴェルグ5、SR-25をジャッジに構えた。

 

『鉄血工造のガキ共、そんな戦闘に適さない格好がどれだけ不憫か俺たちが直々に教えてやるぜ』

 

もう1人はコンパクトが重量を感じる威圧的なPKPのプルパップ仕様マシンガンをヴェルグ3、彼はPKPの銃口をエージェントに向けた。

 

『お前らの因縁もここまでだ、ここで絶ってやる』

 

ユーリはA-545を仕舞うとマウントに収納していた長刀を取り出し、エージェント達に向けた。

────

───

 

「ユーリ…」

「大尉さんが負けるはずないよ」

「当然」

「だから、さっさとフォトンと合流しよう」

 

M4A1は自分の不安な感情になる瞳を抑えて、顔を少し伏せるとフォトンと合流する為の退路を進んでいく。

 

<M4>

「はい、指揮官」

 

フォトンから、通信が入る。

危険な状態だから合流を急かされたのだろうと思ってすぐに着くと伝えようとしたが…

 

<お前は今から、アンジェリアの指揮を受けろ。その間、こっちの支援の心配はしなくていい>

「…はい?」

 

どういうことだ?アンジェリアがここに来るのはM4A1も分かっていた。

だが…なぜ、私が今からアンジェリアの指示を受けないとならない?

 

「…わかりました。無線をアンジェリアさんに繋いでください」

 

だが、これを質問したところでその回答を恐らくフォトンは知らないだろう。

フォトンを助けてやりたいが…仕方ない、それ以上に必要だと思ったからアンジェリアはM4A1を利用したいのだろうとM4A1は己を納得させることにした。

 

<M4?>

「アンジェ、こっちもあまり時間がありません。要件を話してください」

 

イヤミのつもりはないが、こちらも急いでいることを予めアンジェリアには伝えておく。

 

<M4、あなたにはエルダーブレインの所に行ってもらう。そこで何としても、エルダーブレインのやる事を阻止して欲しい>

 

「エルダーブレインですか…わかりました。部下と急行します。ですが、フォトンの方も危険です、念のためA部隊とR部隊はフォトンの方へ向かわせます…宜しいですか?」

<宜しいわ、そっちの事情はある程度把握してる。あと、こっちからもバックアップの人形を付けておく>

 

少ないの一部の部下をこちらに寄越す…か、相当阻止をしたい任務なのだろう。

 

「バックアップの件は感謝します。どこに行けばいいですか?」

<あなた達が撤退するルートを道なりに進んでいけばエレベーターがあるはず、そのエレベーターで最下層に降りて。バックアップの部下はそこで合流できるわ>

 

あの、戦車や兵器を搬送するために使われそうな巨大なエレベーターの事だろう、私達も退路の目印に選んでいる。

 

「了解。アリージェンス部隊は作戦を開始します。フォトン、我々アリージェンスはアンジェリアの作戦を実行した後そちらに合流します!」

<委再了解した。どうやら、ヴェルグチームがやってくるらしい。聞くところによると脱出の手配を用意してくれるらしいな>

 

あぁ…再開した時に数が少なかったのはそういうことか。

そこまでの義理はないはずなのに…ユーリ、私達のことそこまで気を遣ってくれて…

 

<それが分かればこちらも生き残る事に集中する。俺の心配はするな、こっちはこっちでなんとか持たせるさ>

「分かりました。こっちもなるべく早くアンジェリアさんの仕事を終わらせたら合流します。お互い、武運を!」

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