たったひとつの願い   作:Jget

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鋼鉄の戦神

 

「何よ。これ?アンジェリア?」

 

UMP45が見たのは小学生ほどの身長のネイト達に囲われているアンジェリアの姿だった。

 

「パラデウスの見張りを始末した時に出会ったのよ、敵じゃない。寧ろ、我々にとってはなくてはならない子達よ」

 

UMP45は構えようとした銃を下に下げる。

 

「どうして電子ロックがかかった訳?」

「それはこの子達を外に出せないから、パラデウスもこの子達を逃がすと不利になるという知恵は回るのね。奴ら、遠隔で私達を閉じ込めたの。さらに開けてもらおうとしたら鉄血に見つかってねここに閉じ込められたのよ」

 

成る程、理由は分かった。次の課題はどうやってこの扉を開けるかだ。

 

「あなたが来てくれるのなら助かった。電子ロックはこの子達には解除がまだ厳しいからね」

「電子ロックの方法を学んでないって事?」

 

アンジェリアがため息をつく。

 

「この子達は謂わば"幼体"よ。この段階で機械化改造と傘ウイルスの投与を行い急速成長させるわけ、改造に失敗したら当然廃棄…この子達は廃棄寸前である所を確保されたって訳よ。だから」

 

だから、このネイト達に期待できるほどの演算能力は無いって訳か…成功してもあんな無感情のやつに変えられるか残虐の塊になるのだがら尚更哀れでしかない。

廃棄もあの、タリンでみたように無情に捨てられるのだと考える尚更そう思う。

 

「分かったわ…だから、コイツらが出来るのはサポートでメインが居なかったって事か…私がロックを解除している間は子守りはお願いね、保育士さん」

「茶化さないで」

 

こうしてUMP45はアンジェリアと遭遇、幼体のネイト共に電子ロックの解除を行った、最初の内はファイヤーウォールの突破に難儀を重ねていたが幼体のネイトが能力は低いといえど侮れないタンパ性を持っていたので長期戦に切り替える事で徐々にファイアーウォールを突破、パラデウスのセキュリティを破る事に成功した。

 

「最初は焦ったけど、慎重に行けば大した事なかったわね」

「寧ろお前が先走りすぎなんだよ、マヌケ!オタンコナース!!」

「おいガキ…」

 

実際に役立った相手に正論を言われるのは自分も多少マナーが悪かったが、子供相手に舐められたUMP45は苛立つ声を上げた。

 

「…?」

 

小言を言ってやろうとしたUMP45にマインドマップの中に侵入者が現れる。

よりにもよってUMP45が警戒していた人物だった。

 

「M16…チッ、私がファイアーウォールを突破したのを待って漁夫の利を得るつもりだったのね…」

 

UMP9が探知した状況はネイトと一緒に居るというシチュエーションではなかった。

M16がチャンスを伺って、自分に面倒な仕事をやらせようと小汚い策略を巡らせ、誘いを仕掛けてきたことを理解した。

 

「これ以上は関わるな、UMP45。不幸になりたくないのならな」

「余計なお世話って知ってるかしら?おい、クソガキ。AK-12達はどうしてる?」

「もう出ていってるよ!ていうか、お前"同類"のやつが嫌いなんだな!まな板女!」

「…"同類"?」

 

自分が本来ならその言葉を言った相手の鼻をへし折る状況でUMP45は気になる言葉を聞いた。

 

「ほう、お前がその言葉を聞いたのなら生かしてはおけないな」

 

本来なら煙に巻いて目的だけ果たそうとするM16がUMP45に対し、明確な殺意を持って襲いかかる。

 

「…っ」

 

攻撃の仕方でよく分かる、M16はUMP45だけではなくこの幼体のナイトも纏めて始末する気だ。

UMP45は電脳空間から現れる無数の攻勢オブジェクトをM16に向けて、妨害を敢行する。

 

「無駄だ、やれ」

 

M16が指を鳴らすとUMP45のオブジェクトが一瞬かき消されてしまった。口を開く間ない────この一瞬で、UMP45は確信した、ここを襲う存在はM16だけではなく、それもとびきり強力な電子戦能力を持つサポーターがいるという事を

 

「マズイ…」

 

UMP45は一旦退こうという考えが出たが、ここまできて自分が欲しい情報をみすみす逃すと言う行為したくなかった、最初ファイアーウォールを突破しようとした時もその焦りからだった。

しかも、情報を得るのならネイトの幼体達を守りながら戦闘をしなければならないこのハンデを追いながらの戦いはUMP45でも、かなり状況が悪い。

 

「────っ!」

 

M16の攻勢オブジェクトがUMP45の右胸を貫いた、さらにそこから無数の攻撃がUMP45に襲いかかり、次々と襲いかかる。

 

「ク、ソ…」

「UMP45…お前は余計な事を知ったからな、ここで消えろ」

 

トドメとばかりにさらにM16は攻撃を強めた

 

「(ここで終わりなんて…)」

 

走馬灯が見えかけたUMP45に向かって続け様に襲いかかる攻撃が一瞬、止まった。

 

────M16、これ以上好きにはさせないよ

 

次の瞬間、マインドマップの電子空間が徐々に崩落していく。

強制的にマインドマップのシャットアウトが始まったのだ。

 

「…奴のOGASの仕業か?フン、ここまでか…決着はリアルでつけさせてもらう」

 

遠くから反響するようなM16の声を最後にUMP45の意識は遠のいていった。

 

「────45!起きなさい!!」

「────う…」

 

アンジェリアの怒鳴り声でUMP45は目を覚まして、マインドマップから半ば強制的に帰還した事を実感した。

 

「────私」

 

暫く、UMP45は放心した気分が抜けなかった。

せっかく、自分が見つけ出したかった真実が目の前まであったのにそれをM16に妨害された挙句強制退去させられてしまった。

 

「やられた…M16に」

「えぇ、アンナ達に聞いたわ。あいつには相当知られたくない秘密があるようね」

「アンナ…?」

 

アンジェリアが幼体のネイトを指差した。成る程、彼女達に名前をつけたのか…大方、アンジェリア達…保安局の管轄で保護するのだろうが用済みになった瞬間殺されるだろうし、なんらかの生体実験も避けられないだろう。

UMP45はこれから起きることがこれからパラデウスの仕打ちにされる事と変わらないだろうと想像して多少、哀れな気持ちになった。

 

「M16は次、何をすると思う?」

 

アンジェリアの問いかけにUMP45はアゴに手を当て思案する。

 

「私達の目的は情報を得ることで、M16はその情報を得られたくない。でも、アイツらのやり方を見るとパラデウスの情報も欲しがってるように見える」

 

「つまり?」

「つまり、鉄血達が得た情報をエルダーブレインが得ることは間違いないわ」

 

そして、鉄血達はほぼ捨て身の決戦をここで繰り広げた。捨て身の作戦をする時点で情報を得るためにエルダーブレインがいない…なんて事はありえない。

 

「情報得るためにエルダーブレインがここに来ているのなら、私達は最後の希望としてエルダーブレインを確保しに向かい、M16はそれを予想しているはず」

「で、M16はその妨害の為に動こうとしているわけね。動かせる部隊は?」

 

「M4達なら今、フォトンに合流をする為に搬送エレベーターを通るはずよ、搬送エレベーターから、エルダーブレインがいるであろう情報処理施設は直通で行ける」

 

最短でエルダーブレインにたどり着けるのは偶然にもM4A1達の沿岸砲チームだった。

 

「最後の賭けになりそうね…45、フォトンに通信を繋ぎなさい。M4を借りる許可を貰うわ。それと、AK-12にM4達の援護をしてもらわないと」

 

────

───

 

そのころ鉄血の最高幹部とヴェルークトも戦闘が繰り広げられていた。

 

「────当たれっ!当たれぇええっ!!」

 

『…おっと』

 

ジャッジが両肩に取り付けられている、砲台を連射、しかしヴェルグ5はぐるりと体を捻り、水平方向に攻撃を避ける。

 

『動かないでよ…』

 

ヴェルグ5がぐいっとSR-25を傾けて、バックアップ用の近接戦用のサイトを覗き込み反撃の銃撃を放つ。

 

「まだだっ!!」

『しぶとい…』

 

SR-25の6.5のグリードモア弾がジャッジにの武装に僅かに掠っただけでダメージはこれといって受けていない。

 

「人間風情が…我々に叶うと思うな」

 

本当ならヴェルークトが装備しているカリエスの機能を解放して、ステルス機能で自分を全く探知させずに倒したかったが、ユーリ達は長期戦をしており、ステルス機能まで使う余裕がない、ベオグラードで発揮できたのは短期決戦で勝負を決める必要があったからだ。

 

『チビめ…偉そうな上に厄介ね…』

 

エネルギーを使用しない展開式シールドを構えながらヴェルグ5は悪態を吐く。

 

「貴様…私を"チビ"だと言ったな?」

 

「チビ」という言葉に反応した、ジャッジの事をしめたと判断。そのまま、ヴェルグ5は言葉を続ける。

 

『言ったわよ?狙いにくいったらありゃしない。これは、冬場に暖房を求めてガザガサ這い回るあの黒い虫を思わせる』

「嬲り殺しにしてやる!」

 

そういうと、ジャッジは両肩の武装から発していた電磁シールドをストップさせて代わりに無数の砲撃になってヴェルグ5に襲いかかる。

 

『(攻撃は激しいが…)』

 

荒れ狂う攻撃をシールドで防ぎ、背中のガンマウントでシールドの外から遠隔からの銃撃で反撃しながらヴェルグ5はじっくりとスナイパーの本文である"決定的なチャンス"狙っていた。

 

『…!』

 

攻撃から身を守ってくれるシールドが破壊された、破壊された衝撃でヴェルグ5がよろめいた。

 

「ここで消えろ、目障りだ」

『舐めないでよ、人形』

 

マガジンに入っていた最後の2発を撃って、ジャッジの砲身の弱点を狙い撃ち両肩とも砲台が動かなくなった。

 

「────ハァアアアッ!!」

 

だが、それはジャッジが予想した事で砲台をパージして身軽になったジャッジはヴェルグ5に急降下からの蹴りを浴びせる。

 

『────!!』

 

蹴られたヴェルグ5はふわりと体を浮かせてまた地面を滑り、転がりながら着地した。

ヴェルグ5から、手放されたSR-25が転がっていき、目の前にジャッジが現れていた。

 

「私に対する侮辱を撤回するか?」

『しないわ、あなたはここで死ぬの』

 

ジャッジが生意気なヴェルグ5の口を塞ごうした瞬間────突然、ジャッジの身体が鉛のように遅くなった。

 

「────な、ん…だ!?」

 

ジャッジが何が起きたのか確認する為、違和感のあるところを見ると…

 

『付き合いありがとう…変わらず緩いわね、鉄血』

 

ヴェルグ5のガントレットから放たれたワイヤーがジャッジの腹を貫き、突き刺した腹を溶かしてSR-25を絡め取っていた。

 

「人間如きガァア!?」

 

ヴェルグ5がワイヤーを引き戻すとワイヤーから銃がジャッジなら腹を引き裂きながら彼女の手元に戻ってくる。

必死に腕を伸ばそうとするがワイヤーはジャッジの体幹を突き刺したいた。

 

 

「────おの」

 

やがて手元に戻ったSR-25の銃口を突きつけたまま、アンダーレールに取り付けてあった円状の装置からエネルギー刃が放たれ、ジャッジを突き刺した。

そこから、ヴェルグ5は加速してジャッジを突き刺したままコンテナに突進────

 

「────ギッ!?」

 

そのまま、ヴェルグ5はくし差しにしたジャッジをコンテナに叩きつけた、ぶつかった衝撃でジャッジは人工血液を吐いた。

 

『…さよなら』

 

ヴェルグ5の勝利宣言に近いその声を聞いた時にはもう遅い。

ヴェルグ5はSR-25の引き金を引いていたマガジンに詰められた弾丸の数は13発、その弾丸の内7発がジャッジの胸に命中、胸元が弾丸の衝撃で引き裂かれる。

腹元に刃が突き刺さっていたのでその衝撃呼応して腹と胸を繋ぐように、ジャッジの体が花が咲いたように引き裂かれて、ジャッジを形成した機材が次々と零れ落ちていき…ジャッジは腕を…頭をダラリと落として2度と動かなくなった。

 

 

『────くたばりやがれ』

「────チッ、人間のくせに…!」

 

ヴェルグ3がプルパップ式のPKPを連射してエージェントの展開する、シールドを削っていく。

 

『────チッ、これでも決まらないねぇ』

 

あと少しで、シールドが削りきれそうなタイミングでPKPのボックスマガジンの弾薬が尽きてしまう。

 

「(今ですわ…)」

 

ヴェルグ3が弾薬のリロードをするタイミングでエージェントが一気に隠し持っていたエネルギー銃を発射する。

 

『────はっ…!』

 

ヴェルグ3はシールドを展開するでもなく、悠々と跳躍装置で大きくジャンプした後、滑空しながらエージェントの攻撃を全て避けて見せた。

 

「おのれっ!!」

 

痺れを切らした、エージェントは当たりの階段や手摺りをヴェルグ3に向けて上から下に叩きつけてやろうとエネルギー砲をヴェルグ3より上の箇所を狙って撃ちまくる。

 

『やるなぁ…だが』

 

パラパラと落ちてくるコンクリートに気づいたヴェルグ3はエージェントの狙いを理解した。

────しかし、ヴェルグ3が「だが」と言った通り…そのエージェント判断は

 

『────俺の狙い通りだ』

「何を…っ!────!?」

 

自分が何かのレーザーに当たったと警告文を出された時にはもう遅かった、エージェントに当たったレーザーの小隊は爆弾のセンサーでエージェントはいつのまにか引っかかってしまった。

 

「ドンッ!!」と鈍い爆弾音がエージェントの足元の左右から聞こえた瞬間、エージェントの足が吹き飛ばされた。

『────ハハハ…!』

 

大容量の弾薬を運べる分、それだけリロードに時間を掛かると言うマシンガン特有の弱点をヴェルグ3が予め把握していないはずがなかった。

 

PKPを撃っている間に、ヴェルグ3は思考で遠隔操作できる爆弾を設置していたのだ、それを裏付けるように爆弾で巻き上げられた粉塵がレーザーに次々と接触して視覚で見える線を映し出していた。

 

「────おのれ」

 

レーザーが一斉にエージェントの方に向いていくのを見て、彼女は凍りつき────レーザーが接触した順に爆弾が連鎖して爆発した。

 

「そ、そんな────」

 

しかも、エージェントは先程上の階段や手摺りなどをヴェルグ3に叩きつけようと攻撃している、その結果エージェントが叩きつけようとしたものが崩落、逆に自分に襲いかかる凶器に変わり、次々とエージェントに降り注いでいく。

 

「────ああああぁ…!」

 

エージェントは崩落した物体の下敷きになり、四肢が崩落と爆発で引きちぎられていた、仰向けになったエージェントの身体をヴェルグ3が発見、すぐさま抵抗されないように踏みつける、まるでユーリを以前踏みつけた時の意趣返しのように

 

『────往生しなっ!!』

「────やめっ」

 

踏みつけられ、身動きが取れないエージェントに集中して7.62×54弾を顔面に叩き込まれ、文字通り"顔が吹き飛んだ"。

 

『…終わったか?』

 

ユーリはヴェルグ3とヴェルグ5に問い掛ける、彼はエージェントとジャッジと戦っていなかったが代わりに2人の背中を撃たんとする、30〜40の鉄血とパラデウスの集団を一人で始末していた。

 

『あぁ、ここは片付いた。最後に回収地点を確保する前に一息────』

 

突然、ドォオオオン!と壁が破壊された音が聞こえ、ユーリ達は音のする方を警戒する。

破壊された穴から、数台の巨大な戦術機動兵器と呼ばれる機械の巨人が機械的な複眼でコチラを睨みつけていた。

 

『あれはアレスか!?』

 

ユーリは一度、ロックをしていた制御装置の扉を解除した。

解除と同時に恐らく、戦闘の音や報告を聞きつけたパラデウス兵が一斉に飛び込んできた。

 

だが、"アレス"呼ばれた機械の巨人はパラデウスの兵士を発見すると目障りな障害物を破壊するかの如く備え付けのガトリンガンと榴弾砲を惜しみなく発射してパラデウス兵を蹴散らした。

 

『────全員無事か!?』

『おう。…やっぱり、ヤベェなアレスは』

『あぁ、どうしてもって状況にならない限り戦わないほうがいい』

 

パラデウスが先にアレス達の視界に入ってくれたお陰でユーリ達はアレスとパラデウスその両方に狙われることなく扉の先に逃げ込むことができた。

 

このまま、アレスがこちらを無視してくれればユーリ達は削られたパラデウス兵の分だけ楽して回収地点を確保できる。

それに…どれだけ鉄血や軍がここを確保する為に苦労しようが、彼らが欲しがっていた遺跡兵器は自分達がこの世から抹消しているので、奪われたとしても彼らは目的を達成できない。

一触即発の冷戦がこの基地が原因で起きる可能性はなくなり、我々は戦略的な時点で言えば勝利して、後はここからいなくなるだけで全て解決するのだ。

 

『────おいおい、そっちにいくなって…!』

 

だが、エゴール達が目指したのは搬入用エレベーター…フォトン達が回収地点にたどり着く為に必要な唯一の地点だ。

 

『────何を焦ってる?エゴール…?』

<隊長、待たせたな。現場に到着した>

 

本来なら、この報告は数時間後に来るはずだった。それなのにここに来たということは急がせる何かがあった筈だ。

 

「"ヴィシャス"、お前が早く来たのは褒めてやりたいが今は────」

<エゴールがリスクの高い搬送用エレベーターで遺跡兵器を回収しようとしてる…なんて所だろ?私が報告したいのもそこだ…どうやら、空軍の輩がこの基地を爆撃してる。エゴールの部下の大半がくたばった>

 

────

───

"ヴィシャス"と呼ばれる存在がユーリに報告してきた15分前…

 

<と、いう事だ。お前達が生き残ってくれれば何としても我々は貴方方を回収します。回収と救援を兼ねた部下そちらに急行しています>

 

フォトンはKに先程使用していた、無線機を手渡し、何をするべきを伺っていた。

 

「それで…無線で誰と話す?」

 

グリフィンと話すのにいちいち外部まで繋げられる無線はいらない、外部用の無線を使う必要がある相手だとしたらエゴールやアンジェリアしか思い浮かばない。

どちらと話しても良いアイディアにならないが…

 

「貴様も知らないとは思っていないが実はオレ達には見張りが付いている。そして、奴らは条件さえ満たせば取るに足らないという理由で見限る事ができなくなる」

「それをお前が持っていると?」

「いや、確保しているのはアンジェリアだ」

 

成る程、アンジェリアが確保役で報告役がKとそれぞれ役割を分けていたのか、それで確保にどうしても人員が必要になった為、RPK-16とAK-15はアンジェリアの方に向かったという事だろう。

 

「それで…奴らが無視できないのは"ウィリアム"のことか?」

「そういう事だ、ウィリアムはカーターと組んでよからぬ事を考えていた。その始まりが蝶事件であり、秩序乱流作戦の裏切り行為でもある」

 

どちらにせよ、おじゃんになったとはいえおじゃんにした方法はK達の雇い主にとって弱みに繋がった。

だからこそ下請けのグリフィンを脅したり、今回の潜水艦作戦でわざわざ最強呼ばわりされている"ヴェルークト"の投入を躊躇わなかった、厳しい状況だったのはお互い様だったわけだ。

 

「そして、どういうわけか、ウィリアムはカーターを切り捨てた。そして、後が無くなりそうなカーターはこの潜水艦基地の兵器を頂こうしたと言うわけだ」

 

状況は思っていた以上に複雑だったらしい、ホワイトノイズを何度か返されてKが「カスケード」とコードネームを何度か発言すると無線が繋がった。

 

「識別コードはDINV-RTSA-1239。これは緊急事態だ、即座に応答願いたい」

<こちらヴィンペル部隊…コバルト13。識別コードを確認した、要件を述べよ…プリオン>

 

プリオンはキリル語で無線送れの意味だ。

つまり、「話は聞いているから続けろ」と相手は話している。

 

「コバルト13、これより用件を述べる、カスケードより支援を要請。敵部隊はまもなく防衛を突破し、センサードエリアに突入する、既にこちらの任務執行を妨害している…火力支援を要請する」

<拒否する、我々はその許可を持ち合わせていない>

 

いかにも焦ったく、責任を負いたがらないお役所対応をするヴィンペル部隊の声にフォトンは苛立ちを覚えた。

 

「敵が突破した場合、任務は失敗となる可能性が高くなる。これは緊急事態である事を理解せよ」

<了解した。火力支援について打診する>

 

再び沈黙が流れた、上の人間と談判しているのだろうか?

 

<…カスケード、支援は拒否された。以前にも言ったように作戦前に火力支援を行なわないという返答だ>

「だったら、それよりも上の連中掛け合えと言っているんだ!ろくでなし!!"スター"を入手した場合は別な筈だ!我々は"スター"の入手に成功した、それでも行わないと返答した場合、ドイツ国家保安局少佐"カイン・シュヴァーヴェン"の身分を以って、ドイツ国家保安局を代表してソ連当局に本作戦の火力支援を要請しろ!」

 

Kの正体をユーリは只者ではないと察していた事をフォトンは知らされいたがそれがアンジェリアの同僚ではなく他国、しかもドイツの保安局のシュタージであることは驚きに値した。

しばらく、無線が切られたが、また繋ぎなおされた。

 

<…コバルト13、ソ連当局に要請は上申された。指定座標を言え>

 

Kは座標を伝えると、コバルト13から出来るだけ敵を引き留められと命令され通信が切られる。

 

「そういえば、ヴェルークトは救援を寄越すと言っていたな。なにで帰る気だ?」

「さあね。そもそも基地の入り口は2つとも封鎖している。どうやって出るかだが…ヴェルークトに伝えてもその心配はするなと返されたよ。空から逃がしでもしてくれるのか?」

「俺が知るか、それよりも我々は仕上げをしなければならないのをわかっているな?」

 

ヴィンペルの輩は出来るだけ敵を留めておけと言われている、それまで時間がかかるということだろう…

 

「時間稼ぎだ…たく、この為に訓練をさせやがったとしか思えねぇよ」

 

フォトンは作戦を決行する際に持ち出した、"HK433"を取り出してこんな絶望的な状況でも戦ってくれる人形達を見た。

ここまで力を尽くしてくれる存在に人間とは言えど誠意を見せなくてはならないと。

 

「グローザ、一緒に来るか?」

「指揮官のためにならどこにでも」

 

唯一そばに残っていた、Ots-14は迷いなくいままでと同じように共にいる。そう宣言した。

 

<こちら、ヴェルグ2。今からそちらに着く。銃撃はこちらで避ける、もう少し踏りなさい>

 

次の瞬間、凄まじい速度で施設内を動き回りながら軍の兵士や戦術人形を次々と倒していく、ヴェルークトの隊員達が現れた。

いいタイミングだ。フレーヴェン大尉が寄越してくれたのだろう。

 

フォトンは目を閉じて、再び目を開く。彼らが回収してくれるよりも早く、彼らにはやるべき事がある。

 

「カリーナ、ここを頼む。K、お前に時間と馬鹿を貸してやる。彼女達を失望させるな」

「わかりました。ご武運を」

「ここが正念場だぞ、フォトン」

 

フォトンはHK433を携え、Ots-14とともに潜水艦基地の震央をへと足を運んでいった。

 

────

───

 

「…そうか、つまり…空爆をする決断をしたか。なるほど、保安局も形振り構わなくなったな」

<そこまでは分からねエ…だとしたら保安局の輩はグリフィンの嬢ちゃんを無罪放免にしてやるとかナントカの口約束を反故したことにナルが…私は多分違うト思う>

「成る程、現時点では君の報告が1番の判断材料だ。君を信じる」

<お褒め二預かり光栄ってナ…だが、私の分析がセイカイってわけじゃない可能性もある、もしソウダトしたらプラン通り動かせてもラう。それに関してナニカあるか?>

「いや、ない。お前のそう判断ができる状況になったら実行を許可する」

<おうよ、ソレジャ>

 

ヴィシャスとの通信が切れた、本来の任務に戻るのだろう。

予想が正しいなら、遺跡兵器を奪いにエゴール達は搬出用のエレベーターに向かうに違いない。

 

『ヴェルグ3、5、エゴール達の足止めをするぞ。俺のクトゥグアが合図だ』

 

ヴェルグ3とヴェルグ5が極力騒音を抑える為、加速をなるべく早く控えてエゴール達の死角に移動する。

2人が移動を終えたのを確認したユーリがクトゥグア・ツヴァイを起動、背面の弱点目掛けクトゥグア・ツヴァイを発射した。

 

『ちっ…やはりヴェルークト、その装備は厄介だな!!』

『あなたほどじゃないさ…"アレス"まで持ち出して…!』

 

弱点には命中したが、機能不全になるにはまだ、火力が足りなかった。

エゴールの機体と思われる、一体がグレネードランチャーを発射する。

 

<ヴェルグ1!高度上昇!!>

『う…おっ…!!』

 

ユーリの跳躍はヴェルグ3の警告よりも早かった、グレネードランチャーはユーリの下を通り抜けて、背後の壁に着弾した。

エゴールの部下だと思われる機体が跳躍したユーリを撃ち落とすべく、重火器を発射しようとするがロックオンするまでの一瞬の猶予に間に合わせるかの如く、ヴェルグ3とヴェルグ5のクトゥグア・ツヴァイがそれぞれの機体の重火器に着弾した。

 

『他にもヴェルークト!?…武装を狙って!?』

 

どうやら、エゴール達の機体の装甲はは重火器より分厚いらしい、その証拠に重火器はクトゥグア・ツヴァイで焼け焦げ使い物にならなくなっていた。

 

『────下がれっ!』

 

重火器を破壊されなかったエゴールの機体が2つの機体の前に出て、重火器を発射する。

 

『────っ!』

 

一機だけとは言えど、大口径の攻撃は骨身に染みるといった所か、ユーリ達は何処かに姿を隠してしまう。

 

『どこに隠れた…?』

 

エゴールの僚機を務めるパイロットが握るトリガーに汗が滴り、緊張するのがわかる。

そもそも特殊部隊とは言え数百を相手取る期待が3人相手にここまで手こずるのはエゴールの部下達も予想していなかった。

高められた緊張感の中、金属が落ちる音が聞こえ、反射的にその方角にプラズマ砲を発射し、当たりが煙で覆われてしまう。

 

『────付き合ってもらう』

 

真上に現れたユーリがエゴールの機体の上部をエネルギー刄を放つ長刀を突き刺した。

ユーリが纏う強化装備"カリエス"は対人、対人形戦を見越して新設計されたステルス機だ、レーダーに映らず敵がいないと思い込んだエゴール達の心の隙を狙った作戦はユーリ達の反撃の起点になる。

 

『────ユーリ!貴様あっ!!!!』

 

エゴールが振り払おうと機体を揺らすが意味はそれほどない。ユーリは上部にはいるが機体の少し上をホバーしているだけなのでそれで重心が崩れるわけではない。

長刀の発せられる熱量約1500℃がエゴールの装甲を溶かしていく、ユーリはこのまま溶断するつもりだ。

 

『────!』

 

このまま、溶断してユーリの勝利が決まったと思われた瞬間────ユーリがエゴールから飛び去り、離れた。

 

『M16っ!?クソ…どういう理由か知らないが、今ここに来られるのは困るなっ…!』

「いられたら困るのはこちらも同じだ、失せろ。”指揮官様”」

 

エゴールから飛び去ったのは、M16の照準がユーリを狙っていたからだ。

 

『悪いな、そういう訳にはいかない!!』

 

ユーリは一度、M16から離れる。

離れるのを確認したM16と後から現れた、M16部下の軍勢が追撃で銃撃を放ち、ユーリはそれを螺旋を描くようにして上空で交わす。

 

M16とユーリが争っている内にエゴール達の機体が搬送用のエレベーターにたどり着こうとしていた。

 

『────行くなって!!』

 

ユーリが最後のクトゥグア・ツヴァイを発射して、エゴールの行く手を塞ぐ為、再度背中の装甲に命中させる。

 

『────邪魔をするな!!』

 

エゴールがプラズマ砲を発射し、ユーリが余波から身を守る為に再度上空に避難。

巻き添えになる形でM16の鉄血兵達が蜘蛛の子散らすかの如く吹き飛ばされた。

 

『────エゴールさん!』

 

突撃したユーリが長刀で再度機体に向かって斬りかかる。

溶断されるされるの防ぐ為、エゴールはシールドで長刀を受け止めた。

 

『エゴールさん!なぜこんな事をする!?なぜ、こんな事を望む!?』

『貴様こそ!始末する保安局の輩の為になる仕事をするのはなぜだ!?お前はまだロクサットを信じて裏切りのつもりか!?』

 

ユーリはエゴールに振り払われるように離れると、M16と同じように追撃された。

しかし、照準装置の視線がユーリと重なった瞬間…彼から何か落下していた。

 

『受け取れっ…!』

 

落下していたのはユーリが強化装備からパージしたクトゥグア・ツヴァイだった、そしてユーリはそのクトゥグア・ツヴァイを撃ち抜くと、クトゥグア・ツヴァイに装填された砲弾と発射装置がそれぞれ誘爆し、辺りが光で真っ白になる程の爆発が発生した。

 

『グオッ…!』

「ウゥッ…!」

 

爆発の光で味方の姿を暫く見失った内にエゴールのアレス3機はそれぞれ孤立してしまった。

一方、M16は爆発の高熱の光をアレスのような装甲もなしに浴びてしまった影響で戦術人形の弱点である高熱を発生させてしまい、動きが鈍くなってしまう。

 

『────エゴール!!』

 

その内に、ユーリがM16を振り切ると加速装置のブースターで加速して、搬送用のエレベーターの前に立ちはだかる。

 

『────ユーリ!!』

 

エゴールの怒号のような声がスピーカーで響き渡る。

 

────

───

エゴール!!

ユーリ!!

 

2人の大声は搬送用のエレベーターを目指していた、M4A1達にも聞こえた。

急いで搬送用のエレベーターにつながる通路に向かうとそこにはM16とエゴール、そしてユーリが三つ子の戦いを繰り広げている。

 

「M16…エルダーブレインの所に行かせないつもりかよ…!」

 

M4の声でM16はM4が来たことに気がつくと、M16はユーリとエゴールとの戦いを一旦止めて、M4達の元に立ち塞がるように搬送用のエレベーターの入り口に現れた。

 

「…察しがいいな、ならここから手を引け、ここから先はお前達が踏み込める世界ではない」

 

R5の言葉を裏付けるようにM16が引き金を引き、M4A1達の足元を発砲した。

 

「分かったように言われるのは心外ですね。M4、ここは私と誰か1人で足止めしてエルダーブレインを目指す絶好のチャンスですよ」

「大丈夫。もう、チェスの駒は動かしてあるわ」

 

RPK-16が殿を推奨したが、その必要などない。

突如として、M4のアンダーバレルに取り付けたショットガンが火を吹き、M16の装甲の多くをへこませる。

 

「全員でここを通るわよ!────HK416!!」

 

天井から突如として爆発が発生、天井は瓦解して同時にHK416、続いてAN-94とRPK-16が飛び降りた。

 

「いいタイミングで来たじゃない!狙ってた?」

「これでも急いだわよ。後は任せて、アイツは私の獲物よ」

「えぇ、働きを期待してるわ」

 

M4A1がHK416の肩を叩き、M16を放置して搬送用のエレベーターに走っていく。

 

「行かせるとでも────!?」

「────アンタの相手はこの私よ」

 

M4を止めようとした、M16の頭にHK416の弾丸が当たる。

 

「…416」

「悪いわね。これでもあなたの妹に雇われてるのよ」

 

本来なら頭が吹き飛びかねないのだがHK416は意図的に威力が低くなるように改造をした弾丸でM16の頭が吹き飛ばすのを塞いだ。

 

「お前は、2年前に殺しておくべきだったよ。いつまでしつこく絡めば気が済むんだ…!」

 

M16は明らかにこれが情けではなく、HK416による挑発であることを理解していた、追い払ってもしつこく絡んでくるHK416にタイミングが最悪であることも相まってM16の怒りは爆発寸前だった。

 

「昔に殺せなくて残念だったわね、M16。今回はアンタへの恨みを忘れてあげるわ、"そこまで考える余裕がないもの"」

 

M4達はもう、搬送用のエレベーターに行ってしまった。

グリフィンいた時はいないものを見るように扱っていた、HK416を今回ばかりは無視できない事をM16苛立ちながら自覚させられいた。

そして、さっき言った通りHK416にも余裕がない。

外から、小さくではあるが激しく聞こえる爆発音…あれはきっと、爆撃だ。

 

 

「久しぶり…と言うほどじゃないが、よくここまで来れたな」

 

搬送用のエレベーターの入り口でAN-94がM4達に口を開いた。

 

「えぇ、AK-12は?まさか、そこの短髪がAK-12の素体を変えたタイプとは思えないわ」

「はい、私はRPK-16と言います。今回の作戦で投入された保安局の戦術人形です」

「…えぇ、よろしく」

 

説明はできないが、不穏な気配を感じる戦術人形"RPK-16"をM4は一瞥したが…どうも不穏だ。

 

「なにか?」

「いえ、目の反射が悪い気がしたけど…きっと気のせいね」

「ええ、よく言われるんです」

 

気のせいだと思うようにして、作戦に集中した。

 

「AK-12はどうしてるの?」

「AK-12は────」

 

その頃、ユーリとエゴールは無言で正面で相対していた。

もうかける言葉は無いだろう。言い訳なんか聞きたく無いとかそう言うわけじゃなくて、なんとなく互いの譲れないものを理解したからだ。

エゴールがここを抜かられなかったら、ユーリ勝ち、抜けられたらほぼ負けだ。

 

『邪魔な奴らだ』

 

鉄血の生き残り達が、生き残ったエゴール達を殺すための銃撃で一対一の戦いに水を差す。

 

『…あぁ、やっぱり』

 

マガジンを見ると、もう弾丸が残っていなかった。

燃料は敵の戦術人形から貪れるが、弾丸は少ない補給で流石に多くを相手にする戦いを続けるのなら弾丸は底を尽きる。

悪態がつきそうになる己を抑えて、長刀だけで鉄血とエゴールを開いて取ろうとしたが…

 

『…!』

 

自分に襲い掛かろうとした、鉄血のウェスピドが仕留めれた。

 

「今よ!エゴールを!!」

『AK-12!何のつもりだ!』

 

さっきの攻撃はAK-12のものだった、鉄血が通ってきた穴をつたってこっちにやってきたのだろう。

 

「パパ、これ使って!」

 

AK-12が渡してくれたのはAK-12の採用の際、一緒に採用された5.45×39で使用できるマガジン3つだ。

 

『…ありがとう』

 

ユーリはそのマガジンを受け取って、A-545に差し込んだ、AK-12のマガジンはA-545でも使用できる。

 

「護衛に邪魔はさせない、鉄血の取り巻きは任せて!」

『分かった、頼む』

「頼まれたわ」

 

ユーリは、ちょうど自分に向かってきた鉄血兵を薙ぎ払い終わったエゴールに再度向かっていく。

 

「AK-12、何をするつもりだ?」

「アンタの頭は筋肉できてるのかしら?足止め以外に何があるのよ」

 

まさに筋肉女という表現がふさわしい"AK-15"がAK-12に先程の行為に説明を求める。

 

「エゴールとの戦いを援護しないかと聞いている。フレーヴェン大尉を援護できれば勝率も────」

「あの2人の戦いに混ざってもそんなのただの邪魔になるだけよ。私たちは2人に水を差す無粋なあの鉄クズどもにお帰り願う役目がちょうどいいわ」

 

 

AK-12はユーリを見つめた。

本当はAK-15の言うように、今にでもとび出したい気持ちだ。

でも…彼の迷惑になるのなら、それを我慢するしかないという事なまじ賢い分、理解せざるえなかった。

 

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