たったひとつの願い   作:Jget

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深淵の中

「民間軍事の人形にしてはよくここまで持ったものだ。いや、我が軍の衰退を嘆くべきか?いずれにせよ、この程度の人形達を突破できなかったのは否定しようもない事実だ」

 

ヴィンペルの部隊の指揮官は先ほどまでの戦いを観察していた。

 

「玩具どもにここまで時間をかけるのだから笑える。これで西側と張り合うつもりとでも?」

「グリフィンはまだ諦めていないのか?少佐殿」

 

役員がヴィンペルの指揮官から渡された、双眼鏡でKCCOと戦う、グリフィンの人形達とヴェルークトの部隊を観察した。

 

「流石は我々ヴィンペルを差し置いて、"最強"を自負するだけはあるな、屈強なものじゃないか?なぁ、少佐殿」

「えぇ、我々の任務にも影響を与えるほどに」

「いずれにせよ、グリフィンは民間企業であることは変わりないし、喜ばしい事にヴェルークトもまた半壊となった。KCCOに覆没するのも時間の問題だろう」

 

ヴィンペルの指揮官が航空機と交信する、無線機を取り出して、航空支援の要請を出す。

 

「支援を行わないと聞いたが?」

「空爆の指示はモスクワからです。地表の反乱軍に爆破しろと…どうも、我々の要請した東ドイツの要因が成果を上げたようです」

 

そもそも、水面下では独立したといえセルビアのベオグラードに核攻撃を考えていたことは党内はもちろん、セルビアとの外交関係は歴史上最も激しい責任追求が行われている。

無視をしろと言うのは簡単だが、それならセルビアは事実を武器に、同情を盾として友人を新ソ連からヨーロッパの西側に迷いなく鞍替えするだろう。それは、今のある程度影響力は残さなければならない新ソ連からしたら取り返しのつかない大打撃だ。

だからこそ、爆撃は慎重になっていた。

だが、自分達の要請した国の人間を要請した通りの仕事をこなしたのに、約束を守らないとあれば……いくら社会主義の新ソ連であろうと今度は軟弱者と多くの同盟国からの弾劾は免れない。

 

「しかし…残念だ、空爆で全て燃やしてしまうのならせっかく我々がこうやって撮影している証拠も空爆の炎で消え去り、無駄になってしまうではないか」

「ですが、ヴェルークトの記録は取れています。これは、黄金よりも価値があります。人形達の逞しさに感謝するとしましょう、どうせ後半の戦いでだらけるものを見せても政敵が我々の存在理由すら疑いかねない、前半の血生臭い映像だけ取っておけば兵器そのものの信頼性を誇示することができるでしょう。それに、どさくさに紛れてヴェルークトも巻き添えにすれば我々の政治的優位は不動のものとなりますな」

 

潮時だ、ヴィンペルの役員や兵士達は帰り支度を始めていた。

爆破の後など何も残らない、これ以上見るものもないだろう。

 

「────お時間宜しいですか?」

「…貴様は?」

 

自分の荷物をまとめようとした役員の後ろから声が聞こえた。

 

「ワタクシの名前は"ヴィシャス"、外務省からのメッセンジャーですよ。役員さん、貴方に伝える事があってここに参上致しました」

「メッセンジャーだと?おい、誰かこいつを────」

 

敵に接近された、役員は"始末しろ"と命令する為、先程までいた兵士に視線を送った瞬間ヴィンペルの役員は凍りついた。

先程の兵士どころか、辺りにいたヴィンペルの兵士達が軒並み姿を消していたのだ。

 

「残念ながら誰もきませんよ、ここにいるのはワタクシとアナタだけです」

 

ヴィシャス……御し難い者と名乗る、戦術人形は身も心も凍えさせてしまいそうな、悪意に満ちた薄ら笑いを浮かべる。

 

「…何を伝えにきた?」

「2つありまス。ちょっとしたアドバイスをば、保安局と空のパイロットにお伝えください"巻き添えにするな正確に狙え、デナイトと我々がツポレフを一つ残らず焼き尽くしてやる"とカマロフ大臣が」

 

ヴィシャスがそろそろ轟音を立ててくるかと思われる航空機の方向に指さした。

 

「焼き尽くすだと?もしや…S-400か?外務省が持ってきたのか?それとも空挺師団か!?」

「残念デスが、誰が何を持ってきたのかは秘密とさせて頂キます。貴方方の上司が考慮するノハここで今、ツポレフが堕とされるか否かでは?あなた方ノ信頼できる航空団でしょう?」

 

確かに空軍は保安局の味方をしている、だが外務省の味方は海軍と航空宇宙軍だ。

東側でも強力な対空兵器"S-400"を引っ張り出す事は難しいことではない。

 

「信頼されてイル、エリートである事は無論承知しています…が」

「我々の"ナワバリ"で許可も得ないで爆撃機を飛ばす…"それは我々を舐めすぎでは?────クフフ!!」

 

そもそも、国外の仕事は外務省で一括して任されている。

そして、保安局は国外で仕事をすることが出来ないわけではないが外務者の承諾がいる、今回はその承諾抜きでヴィンペルを動かしているのだ。

 

これを新ソ連の中核である中央委員会は承知しているだが…内務省などの他にも影響ある組織はそれを知らない可能性がある。

これをバラされれば保安局やヴィンペルもKCCOと同じ目に遭うかもしれないのだ。

 

「…残りの要件は?」

 

「えぇ…それではご要望にお答えしてもう一つを…こちらのメッセンジャーは"とあるアンクルサム閣僚方"からで…"お前らの政争に関する証拠は読ませてもらった"と」

「アンクルサム!?それに、無駄…だと?」

「…確かに伝えましたよ?我々外務省とも…これからも"誠意"ある行動をよろしくお願いします────クフフ!!」

 

同様で役員が目をヴィシャスからほんの少しだけ離した、しかし…

 

「き、消えた…」

 

すぐ元の場所に視線を戻したときにはもうヴィシャスは消えていた。

 

────

───

 

「上も激しく戦っていますね」

 

RPK-16は上の階で今も戦っている、ユーリはヴェルークト、グリフィンの戦術人形達がKCCOの兵士や人形達事について呟いた。

 

「今まで楽をしてきたが…お前も本気を出してもらうぞ。RPK-16」

 

AN-94はコッキングレバーを引いて弾丸が排出するのを確認すると排出した弾丸をマガジンに入れ直した。

 

「最後の勝負よ。みんな、腹は決まった?」

 

M4A1は部下のレミントンR5、MCX、AR-57に問いただした。

 

「はいよ、隊長」

「大丈夫。エルダーブレインをぶちのめすか引きずるかは隊長に譲る」

「全てのアタッチメントに問題なし!」

 

3人は3人らしい態度で答えた。

 

そろそろ、エレベーターがエルダーブレインの所にたどり着く頃合いだろう。

 

「よし、行くわよ…!」

 

AN-94を先頭にM4達は待ち受けているであろう、襲撃に備えて銃を構えた。

 

「────!?」

 

エレベーターの扉が開いてエルダーブレインのところに辿り着いたその瞬間、いきなり中が真っ暗になった。

そして、強烈な閃光と共に銃声が鳴り響いた。

 

「敵だ!」

「鉄血兵!暗闇越しから撃ってくる!」

 

真っ暗闇から暗視装置をつけた鉄血兵が自分たちの乗っているエレベーターに向かって集中砲火。

M4達は伏せたり、盾になるボタンの後ろに隠れた。

 

「暗視装置!」

「ダメだ!スモークで見えない!」

「舐めた真似を!」

 

視界を暗視装置にしても煙をあらかじめ展開していたらしく結局見えない。

M4は上手くアンダーバレルショットガンのマガジンを握り、素早く銃だけ外に出して身を隠しながら発砲した。

 

「RPK-16!見える!?」

「……?」

 

M4はRPK-16が銃に暗視装置の機能を持つ光学照準器があらかじめ取り付けられているのを知っていた。

そして、RPK-16はAK-12と同じタイプの人形と聞いた、それならAK-12同じ透視機能がある、それで探ればまだ戦える。

だが、RPK-16は何を言われているのか分かっておらず首をかしげている。

 

「だから!視界を透視にして暗視スコープで覗けば敵の位置がわかるでしょうが!!」

「いえ、私には透視機能がありませんよ」

「何ですって!?」

 

思わず、M4はRPK-16を2回見てしまった。

同型と言っておいて、透視の機能が使えないなんてそんなのアリ!?

 

「最強の戦術人形のAK-15や徹底的に機能を追求されたAK-12には搭載されているのですが、私はなにぶん安定性重視ですので」

 

こんなことになるなら、RPK-16ではなくAK-15を連れてくればよかった。

今更ながら、M4A1は後悔を覚える。

 

「M4!」

「なに?AN-94!」

「ガンケースの砲撃で鉄血のまとめて吹き飛ばさないか!?」

「あのね!?みんなでバラバラになりたいの!?」

 

今、自分たちはエレベーターという狭い空間に釘付けになっている。

M4のガンケースの砲撃……そんなことしたら、バックブラストの熱と衝撃がエレベーターの中でピンボールの中で弾け飛びバラバラになる。

閉鎖空間での砲撃の高いリスク……この予想だにしない状況でAN-94はその常識がすっかり吹き飛んでしまった。

 

「もういい!RPK-16真正面に撃ちまくって!」

「了解」

「MCX達は手榴弾!」

「ああ!」

「私は運試しよ!────くらえっ!!」

 

RPK-16がドラムマガジンに装填された大量の弾薬をばら撒き、鉄血の兵士は煙越しにとはいえ、近くに着弾した弾丸に反応して物陰に身を隠す。

そのタイミングでMCX達傭兵は手榴弾を投げつけ、そしてM4A1はアンダーバレルのショットガンを銃声に目印に手当たり次第に撃ちまくった。

 

爆発音と悲鳴が暗闇の中でいくつか響き渡る。

どうやら、何個は有効に機能したらしい。

そして、スモークの追加がしばらく途切れたのか視界の白さが薄まっていく。

 

「今よ!アリージェンスいって!」

「分かった!」

 

M4の指示でM4とMCX達は飛び出した。

……スモークを抜けた!暗視で視界に映った数多くの鉄血兵に向かってM4は弾薬を気兼ねなくばら撒く。

 

「これでどぉよ!!」

 

STAR-15もライフルを予備の短銃身ライフルと構えて撃てるだけばら撒く。

広範囲と大量の弾薬は鉄血の意識を十分過ぎるほどSTAR-15たちに向けさせている。

 

「────!」

「抜けられた!」

 

強引に食い破るM4達に鉄血達は意識を奪われる。

 

「AN-94、敵が見え始めました」

「ああ!意識もあっちに向かってる!今のうちに!」

 

チャンスだ。

エレベーターに残っていた、AN-94とRPK-16は自分から側面を曝け出した鉄血達に十分な弾薬を叩き込む。

 

「クソ!アイツら────」

 

スモークを投げようとした鉄血兵の頭が弾け飛んだ。

 

「調子に乗れるのもさっきまでよ……!」

 

視界を確保したなら、M4A1が後手に取られることは無くなった。

決意を固めて身を出した鉄血兵を1人も見逃さず素早くモグラ叩きのようにM4A1は一体たりとも見逃さず、銃弾を叩き込んだ。

 

「…AN-94、今の見ました?」

「感心するのは後!」

「いやいや…アレを注目しないなんてあり得ませんよ」

 

RPK-16の視界を少しの間奪ってしまった。

 

「はぁ……て酷い歓迎だったね。クライアント」

「ええ……次から、エレベーターじゃなくて階段を使うことにするわ」

 

それに思いもよらない人選ミスもあった。

 

「……ふむ」

 

一方、RPK-16はM4を観察していた。

……あの射撃精度、早い判断能力。そして、重装備とは思えないほど軽やかな動き。

RPK-16はもしかして、本当の最強の人形はAK-15ではなく……いや、例え、最強なのがAK-15だとしても戦いになったら、勝つのはM4A1なのではないか?と思っていた。

 

奥を見つめた時、待っていたと思わせるかのように巨大な鉄の扉が開いた。

 

「行くわよ」

 

M4達は扉の奥の開かれた通路を進んでいく。

 

「警戒、さっきのような待ち伏せがまたあるかも」

「ああ」

 

通路が長い、その上障害物もない。

待ち伏せするにはいい機会だ。

 

「おや、分かれ道です。どうしますか」

 

さらに奥に進んでいくとRPK-16の言う通り、奥につながる通路と左に繋がる通路が見える。

レーダーは左にエルダーブレインの反応を示している。

 

「最短で行くわ。みんな、左にいって。そこにエルダーブレインがいる」

「了解……まて、奥の扉」

 

左に行くことを指示する。

全員が左の通路を曲がろうとした瞬間、行くはずのなかった奥の通路の扉がゆっくりと開かれる、そのことにAN-94が気がついた。

 

「……あれは?」

 

扉の奥から、ゆっくりと白い髪をした女が出てきた。

そして、扉の奥からドロドロと大量の人工血液が溢れ出している。

よく見ると扉の奥の部屋にはイントゥルーダーやドリーマーといった鉄血のハイエンドタイプの死骸がそこらじゅうに散らばっていた。

あの女がやったに違いない。

だとしたら、この基地を根城にしていたパラデウスのものだろうか?

 

「……!」

「────!」

 

白い女とM4A1の目があった。

そして、白い女はニィ……と口角をあげて、こちらに向かって走り出した。

 

「左の通路に!」

 

AN-94達はM4の指示で通路を左に曲がる。

だが────

 

────侵入者確認、侵入者確認。一時的に当該室をロックします。

M4以外が通路に突っ込んだ瞬間、隔壁が作動しM4A1だけ左通路に入れず取り残されてしまった。

 

「フフ!」

 

女が笑う。あの女が隔壁を起動したのか!

M4A1はもう戦うしかない、腹を決めてフルオートで発砲する。

だが、突如として背中から現れた6本の"足"がその女の前を覆い、銃撃を弾く。

 

「何!?」

「ハハハっ!!」

 

足がM4A1に飛んでくる。

もう、ライフルのマガジンの弾薬がなくなってホールドオープンしている。

M4A1はライフルを突き出し、銃剣で受け止めた。

 

「へぇ……!」

「────!?」

 

あまりの勢いに白い女は通路の反対側の壁に追いやられたM4と激突する。

白い女はそのまま、突き進み続けて通路と壁を吹き飛ばしM4事壁の後ろに訓練場らしい場所に落下した。

 

「────くらえっ!」

 

落下した衝撃で頭がおかしくなりそうだが、無理やり意識を引き戻し、ライフルの銃剣を同じように落下した白い女目掛けて振り回した。

 

「フッ」

 

白い女は軽やかに立ち上がると虫ようなしなやかさで、M4の攻撃を避けた。

 

「────くそっ……!」

「あーっ……はっはっはっ!噂通り本当に油断も隙もないですねぇ」

 

悪態をつく、M4に対して白い女は余裕綽々で面白がっている。

白い女は蜘蛛のような足をM4A1に向けた。

ハンデのつもりか、女はM4A1が立ち上がるのを待っている。

 

「……噂通り?私のことを知っているの?」

 

態度に甘えて、M4A1は警戒しながら立ち上がる。

 

「あー?知らないんですか?あなた、有名人なんですよ?」

 

M4A1が立ち上がるのを確認すると、白い女はさっきと異なりゆっくりとこちらに歩み寄る。

 

「せっかくの機会です、是非お手合わせを────!」

 

距離にして2メートル。

それだけ近づいた瞬間、前動作がわからないほど素早い速度で白い女背中の脚を伸ばしてきた。

 

「────してください!」

「────!?」

「へぇ、避けられるんですか?なるほど、確かにネイトやニモゲンが手こずるわけですね」

 

M4A1は戦慄した。

なんだ今の!?なんていう速度だ!?

何かあると思って身体を捻らなかったら、あの攻撃は喰らっていた!

しかも、すれ違った時に見えた、あの脚は近づくと同時に扇状に広がっていた!

見た目通りの直線上の攻撃と思った相手に確実に一撃与えるという意地の悪さが見える!

 

「おや?私の脚がどんなつもりで使うか分析しているんですか?いいですねぇ、始末した際に安心────」

「だったら!!」

「────安心できます」

 

咄嗟に発砲したフルオート射撃は脚一本によって阻まれた。

M4A1はゆっくり後ろに下がりながらフルオート射撃を続ける。

 

「やるわね!」

「お褒めに預かり光栄……といえば、喜んでくれますか?頭、足、腹、脚の付け根……フッ、よくもまぁ1秒の間に複数の射撃箇所を狙いますね。お次は────おっと!お腹と見せかけて頭ですか!本当に楽しませてくれますねぇ!」

 

フェイントも通用しない!これもダメか!

敵はこちらをもう分析し始めている。

M4A1はさらに後ろの角に下がる。そして、白い女それを追いかける。

 

「おや?」

 

角を曲がった瞬間、背中に違和感を覚えた。

背中の脚が通りきれずぶつかったのだ。

 

「よし!」

 

脚が攻撃したり防ぐなら、その脚を出させないようにすればいい。

M4A1は白い女がそれができない位置まで慎重な誘い込んだのだ。

チャンスを手に入れたM4A1は今度こそ白い女に銃撃した。

それで、蜂の巣……そう思うおもった、M4は信じられないことが起きた。

 

「いない!?」

 

なんと白い女が消えていたのだ。

光学迷彩?と思ったが、それならレーダーに今の銃撃は着弾しているはず……一体何が?

 

「どうも〜」

「え……」

 

上から声が聞こえる。

見上げると、なんと白い女がそこにいた。

なんと、脚が天井を突き刺し、空中に張り付いていた。

 

「グハッ!」

 

貼り付けていない脚の2つが右の脇腹と左足を切り裂く。

狭い通路に誘い込まれたら、狭くない天井に張り付けばいいということか……

 

「おや、これで大体の鉄血は死ぬんですけどね」

「くっ…この!」

 

白い女は感心して、M4A1は右腕でライフルを持ち射撃した。

だが、今度は素早く飛び降りて銃撃は外れた。

 

「はぁ……はぁ……」

 

……最悪だ。

パラデウスはこんなものをロールアウトしていたのか、私がこんな簡単に手玉に取られている。

 

「おや、まだ動く。噂通り、タフですね」

「噂、噂って、本当にどこから流れているのよ……それに対してアンタは誰?アンタみたいなヤツ初めて見た」

「名前なんてどうでも良くありません?それにいくら謙虚に振る舞おうともその類稀な強さは隠せないようですが」

 

首を跳ねるために脚がM4A1の喉元に襲いかかり、M4A1は急いでそれを避けた。

結果的に頰を切り裂いた。

 

「くそ……!マズイ……!」

<M4!今どうしてる!>

 

いいようにされて焦る、M4。

AN-94から通信も来た。

 

「さっきのパラデウスの奴に足止めを喰らってる!」

<……とにかく急いで!エルダーブレインと接敵したけど────しまっ>

 

AN-94の通信が切られた。

話からしてやられてしまったのか!?

 

「お話、終わりました?」

「悪いけど、急用ができたから通して欲しいわね」

「急用?そんなどうでもいいことより、もっと楽しみましょう!」

 

M4A1はエルダーブレインに繋がる道を見た。

エルダーブレインはひとつ上の回の通路にいる。

穴の上の通路通って、隔壁はどうにかしないとならない。

ただ、この白い女が「わかりました」なんて倒してくれるわけない。

 

「仕方ない!」

 

M4A1はアンダーバレルショットガンのマガジンを外して取っておいたあるマガジンを装填した。

そして、コッキングハンドルを引いて、薬室に放り込むとM4は白い女にショットガンの銃口を向けた。

 

「おや?その装填した銃弾は何かすごいものが入っているんですか?いいですね、もっと楽しめそうです」

「悪いけどこれまでよ。私も仕事をしないといけないからね」

「つれませんねぇ、もっと楽しんで下さっても……」

 

M4は白い女が言い終わる前に散弾を発砲。

当然、「なにかある」判断していた白い女は脚で散弾を防ぐ、が……

 

「……!?」

 

通常の12ゲージなら直立不動のまま防いでいたはずの自分が体勢をよろめかせている。

続けて、M4A1はショットガンを発砲、もう一度脚で防ぐが、さっきと同じようによろめいて後ろに下がってしまう。

この散弾、普通の散弾よりも破壊力がある!

 

「これは……爆発……!?────くっ!?」

 

脚を見ると鋼の足に付けられた弾痕は散弾ではなく爆発の跡を残していた。

 

「まさか、爆発するショットシェル……!?そんなものが……!?」

 

爆発の衝撃の正体は白い女が想定した通り、爆発する散弾FLAG-12だ。

本来は正規軍の大型兵器の関節部を爆発させることを想定して、持ち込んだものだった。

M26という比較的小型なショットガンに装填したら銃を撃った時の反動で銃身などが吹き飛ぶのではないかと想定していたので、できればエルダーブレインに使いたかったがこの状況は背に腹を変えられない。

それに……

 

「────くっ!?…あうっ!?」

 

……自分が思っていたよりこの散弾の爆発は有効らしい、呻き声をあげて防いでいる。

衝撃が伝導して自分の色々なところに響き渡っているんだろう。

M4はガンケース白い女目掛けて思い切り投げつけた。

 

「────!?」

 

ガンケーは見事に白い女の顔面に命中、当たりどころがわるいらしい白い穴は呻き声をあげて、足元をふらつかせた。

装填されたFLAG-12マガジンは空。

M4はライフルの銃口を向けた。

 

「────こ、このっ!?」

 

白い女はふらつきながらもなお、銃弾を脚で防いだ。

アイツ、私をタフだとか評価するが、アイツの方がタフだ!

だが、問題はない。このままできることがある。

M4は白い女目掛けて全力でダッシュ、そして白い女の銃撃を守るために使った鋼の脚をアスレチック代わりに掴む。

 

「あ、あなた!?」

「────吹っ飛ばす!」

 

振り子の要領で勢いをつけるとそのまま脚を伸ばして、両足で勢いのついたドロップキックをくらわせた。

 

「────ぐうっ!?」

 

白い女はその勢いに蹴り飛ばされて、地面に転がった。

そしてそれと同時に基地全体が激しい揺れが襲った。

 

「これで!」

 

いまガンケースやライフルを白い女に使ってもあの硬さの白い女にどこまで有効かわからない、だが……ここから出る絶好のタイミングは今だ!

M4A1は吊り下げられているのと積み上がっているコンテナに目をつけて、ランチャーを発射する。

 

「よし!我ながら素晴らしいコントロールね!」

 

コンテナ達は崩れ落ち、瓦礫が出来上がる……何回か飛べば穴に行ける道が出来上がった。

 

「くっ……!やってくれますよね……!」

 

白い女はもう立ちあがろうとしている。立ち直りが早すぎる。これ以上はもういられない!

M4は瓦礫をいくつかジャンプして、自分が開けた穴に飛び込んだ!

 

「待ちなさい!まだ、まだ!私は楽しみ足りな────」

「お終いよ。あなたもサッサとこんな場所から出た方がいいわよ」

 

白い女がM4A1を追いかけようとした時、基地全体が激しく揺れる。

そして、施設のあちこちが激しく点滅するように爆発し続けた。

 

「これは、新ソ連の航空爆撃……!?はい?なんです?"お父様"が早く帰れ?わかりました、長居は出来ないようですね。仕方ありません、ここはあきらめましょう……なんて、聞いてませんね」

 

帰ることを決めた白い女が見つめた先にはもう、M4A1の姿がない。

薄情な人だ。

 

「まぁ、いいでしょう。久しぶりに楽しいオモチャと会えたんです。今度会うまでにはもっと、楽しめる人になってくださいね」

 

────

───

「お呼びじゃない……はぁ…助かった」

 

ゼェゼェと息を切らしながら、アンダーバレルショットガンとライフルのマガジンをリロードする。

パラデウスにはあんな奴が……いるのか。

思ったより手こずった。舐めた態度をとっていたが、それでも恐怖を覚えるほどのかなり腕がいいやつだ。

 

「急がないと!」

 

また、激しい揺れが襲った。

その衝撃の影響か隔壁が歪んでM4が通れる隙間が出来上がった。

 

「ラッキー!……いや、そうでもないわね」

 

爆発がさらに強くなる。

はやく決着をつけないと我々はこの基地とともにペシャンコになる。

M4は急いでAN-94達が向かったと思われるエルダープレインのいる区画に向かった。

 

────

───

 

「ごめん!遅れた!様子は……」

 

区画にたどり着いた時、M4A1は衝撃を覚えて、地面に叩きつけられる。

 

「(な、何が起きたの…………?)」

 

一瞬、意識が飛んでしまったのか、視界が真っ暗になる。

 

「────え」

 

視界が戻り、見上げると信じられない光景が見えた。

RPK-16が空中に捕まって…いや、表現が正しくない、重力を失ったかのようにRPK-16は宙に浮かされているのだ。

そして、エルダーブレインはRPK-16を捕まえたまま、天井に貼り付けた触手のような、尻尾のような物体と合体して、攻撃していた。

 

「…あら?来てくれたんですね」

 

RPK-16は自分が来たことをを理解して、パニックを起こすそぶりも見せず、ただ、所持していたRPK-16をフルオートで発射した。

 

「だから無駄だよ。ああ、君も来たんだ。"ルニシア"」

 

銃弾の放たれた先……そこにエルダーブレインがいた。

 

「ルニシア?だれよ、ソイツ?RPK-16、知ってる?」

「いえ……」

「ですって」

 

いつもの通りM4A1はルニシアと呼ばれたら「そんな人知らない」と返す。

それに知らないと肯定してくれる人形が吊り下げられているので少しテンション高めでM4A1はライフルを発砲した。

だが、エルダーブレインには掠り傷一つつかない。

 

「やはり、バケモノですか?アナタは?」

 

RPK-16は化け物と言いながらもエルダーブレインに恐怖すら感じずにただ引き金を引く。

 

「しらない」

 

エルダーブレインから、鋭利な金属製と思われる刃物がRPK-16に向けられる、あれでRPK-16を引き裂く気だ。

 

「こっちよ────エルダーブレイン!!」

 

M4A1は身体を立ち上がらせると、ライフルの照準をエルダーブレインと繋がっている、触手のようなものに銃撃を与える。

だが、銃撃では威力が足りない、触手の繋ぎ目を狙って射撃をしたが引き裂けなかった。

 

「無駄だよ」

「ッ!?」

 

後ろから声をかけられて振り向くと、そこに波飛沫のようなエネルギーが下から噴き出てきた。

 

「M4、こっち!」

 

入り組んだケーブルの隙間から、STAR-15の手が手招きしている。

飛び込んでエルダーブレインを回避しながら、ケーブルの中に突っ込むと中にAN-94やMCX達もいた。

 

「はは、間一髪だったなクライアント」

「あの、白いやつはどうした?」

「なんとか撒いた、アイツは倒せなかった。そっちはなにがあったの?」

 

 

M4が到着する少し前……

 

「よし!始めるぞ!」

 

AN-94が扉を開けて、エルダーブレインのいる施設に一気に全員突入した。

 

「あれよ!エルダーブレイン!」

 

突入した、AN-94達。

AR-15はエルダーブレインを視認した。

全員がエルダーブレインに集中砲火する、だが銃撃は全て弾かれしまう。

 

「偏向障壁……!?」

「エルダーブレインはパラデウスの何かを取り込んで……おや?」

 

エルダーブレインはどこかしらか盗んだか、取り込むなりしてパラデウスの情報を得たのだろう、現時点では効果が薄い。

 

エルダーブレインはどこかしらか、パラデウスの情報を得たのだろう、本体への攻撃…これも効果が薄い。

 

RPK-16が腹に違和感を覚えて下を見ると、いつのまにか現れたケーブルがRPK-16を縛り付けていた。

そして、そのまま天井になんども叩きつけられる。

 

「RPKが!」

 

AR-57とR5が救出するためにケーブルを発砲するが同じく、弾かれてしまう。

 

「ケーブルも無敵か…かなり厄介な奴だな…」

 

AN-94は舌打ちをした。

 

「…もういいわ!全員、後退!」

 

一同は火力が足りないと判断して、M4を待つことにした。

 

「了解!」

「分かった!」

 

人形達が一斉に何かを察し、ケーブルの中に隠れたのだ。

 

「そういうこと……私のガンケースが必要なのね」

「何発ある?」

「2発」

「少ない!」

 

確かに残りは少ない。けれど、贅沢言えない状況だった。

そもそも、潜水艦基地の中に入るまでにどれだけのKCCOの兵士や兵器を切り抜けないといけなかったか……

そんなとき、突然、基地全体が激しく揺れて爆音が響き渡った。

 

「────ああもう!爆撃が!」

「早いところ決着をつけないと生き埋めになる!」

 

ソ連の航空爆撃……!急がないと、ユーリ達が用意してくれた脱出手段で逃げる前に瓦礫の下敷きになる!

 

「時間がない……出てこい!お父様の為に私はルニシアを作り上げないと!」

 

爆撃でエルダーブレインも焦っているらしい。

 

「仕方ない!短期決戦よ!」

「やるよ!傭兵が仕事をしないで金をもらわないのはちょっとね」

「私も構わない。エルダーブレインを倒せないと帰れないし、それに────ここで隠れていても下敷きになるしかない」

「私の隊長はあんたよ。M4」

 

後がないのはみんな分かっている。

私が何を判断し、命令しても従うしかないことを知っているんだろう。

 

「私がエルダーブレインを押し留める。その間にエルダーブレインと繋がっているあの機械をなんとか壊して!」

 

化け物には化け物を、エルダーブレインにはこの私、M4A1をぶつけた方が時間を稼げて成功率が上がる。

 

「隠れてないで出てこい!出てこないと────うっ!?」

 

痺れを切らしたエルダーブレインの頭に5.56ミリの横槍が突き刺さる。

 

「とっと終わらせましょう。時間がない」

「……ルニシア!」

 

エルダーブレインの意識がM4に集中した、STAR-15達もそれを確認して勘付かれないよう素早く移動する。

 

「リコリスも自分の創造物にやりたいことを託すなんて……フッ」

「何がおかしい?」

 

エルダーブレインに今、余裕がないらしい。

見え見えの挑発に簡単に引っかかる。

 

「何がおかしいんだ!」

 

M4A1はランチャーを立てて、シールド代わりにエネルギーを分散させる。

幸い、後ろにいるRPK-16は宙に浮いていたお陰で攻撃が届いていない。

 

「他人事と思えなかっただけよ」

 

M4A1がライフルを発砲する。

さっきと同じように聞いているように見えない。

いや、表情が若干変わった。攻撃が効いているように見えなくても、衝撃は通っているのか?

 

M4A1はライフルに装填されたマガジンをより強力なM855A1弾の入っているものに交換した。

 

「話の続きだけど」

「うるさい!」

 

エルダーブレインが床から光弾を飛ばす。

M4A1はその攻撃を当たりそうな直前避ける。

 

「ウチの親のペルシカも同じように危ないことをやらせるために私たちなんかを生み出したのよ」

 

M4A1はお返しに弾丸を叩き込む。

6.8ミリ程とまではいかないが、それでも5.56ミリのなかでもより強力なM855A1弾をさっき自分が当てたところと同じ場所に浴びせた。

エルダーブレインは苦悶の声を上げてよろめかせた。

 

「挙句の果てにとんでもないクズに預けて、酷い目に遭わされたことになんの謝罪もしないし?せっかく、念願の素晴らしい指揮官が引き取ってくれたら、ペルシカの奴は"あの男はやめとけー"なんていうの、酷くない?」

 

エルダーブレインはM4A1の銃弾を避けだした。

そして、STAR-15達は車体の位置についた。

 

「アンタもよエルダーブレイン」

「……なに?」

「アンタも私と話した時、ユーリのことをアレコレと貶してくだわよね?」

 

エルダーブレインとまともに話した時のことは、今でもM4A1をイラつかせている。

いつか、同じように腹をたたせてやりたいと頭の片隅に思っていたことがようやく叶った。

 

「あんなことが言わせた、親の……リコリスの教育はどうなってるのかと思ってみたら……こんな人任せなつまらない奴だったなんてね?」

 

M4A1に自分の怒りを全てぶつけようとした時、エルダーブレインに繋がっていたコードが一部と爆発した。

 

「こ、これは?」

<M4!エルダーブレインがケーブルで接続していた発電機をひとつ壊したわ!これでエネルギーが落ちるはず>

「これでずっとシールドは張れないわよ?」

 

M4A1が持参したガンケースをエルダーブレインに向かって放った。

 

「…こ、これは…ジュピターの…!?」

「効いたようね」

 

レールガンの威力は凄まじく、エルダーブレインの金属皮膜が剥がれて、命中した箇所は大きく抉られていた。

 

エルダーブレインはRPK-16に構っていられず解放し、宙から地に帰還した。

 

「…ふう、助かりました。M4、アナタは"完全な人形なんですね!」

「御託はいいから、みんな。これでやるべき事は分かったわね?」

 

RPK-16は頷く。

 

「M4A1、あんな長話しなくてもそのガンケースで砲撃し続ければ弄せず勝てたのでは?」

「次で最後の1発、気軽には使えない」

「……ああ、なるほど」

 

残念そうにRPK-16は肩をすくめる。

安定をとって、潜水艦基地に入るときに惜しみなく砲撃したが余分に使いすぎた。

M4A1はガンケースを床に置いた。

 

「なんのつもりです?」

「出力を解放して一気にケリをつける。余分な重量は減らしたいのよ。全員でアイツを始末する。あなたは間隙を埋めて」

「なるほど、私を助けた理由はそれだったのですね」

 

工作を済ませたSTAR-15達がエルダーブレインを包囲するように集まった。

それをみたRPK-16がすぐに頷き、ドラママガジンを再度装填する。

 

「こんな完全な人形と一緒に戦えるなんて、夢のようです。ぜひとも正夢にしましょう」

「白昼夢な正夢だといいわね」

 

M4はヴェルークトから提供された最後の機能を開放する。

先に元々内蔵されていた燃料をあらゆることで消費してか空にした後、アーマーの中に備蓄された特殊燃料を注ぎ込む針が彼女に突き刺さる。

そして、燃料が全身に注ぎ込まれ、針が抜かれて充填が完了した。

 

「出力、開放」

 

M4A1がエルダーブレインを標的として定める。

出力開放の際に見られる、冷却剤ごと吹き飛ばした排熱の水色の煙が噴き上がる。

AN-94達は一斉に散開、狙いを定めてトリガーを引いた。

 

「────くっ!」

 

四方から撃たれるエルダーブレインには供給用のバッテリーの数が減っている。

もうさっきのような偏向障壁をずっとは起動できない。

周りにシールドを呼び出し、銃撃を耐える。

 

「仕事をさせてもらいます」

 

RPK-16の先程のお返しと言わんばかりの反撃が、シールドを必要にフルオートで弾丸を叩き込む。

流石に面倒だと思ったエルダーブレインが再度地面から噴射するエネルギー攻撃を敢行するが、

 

「こっちよ。チビ」

 

一瞬の内に距離を詰めた、SIGMCXが.300BlackOut弾を瞳に向かって発射。

 

「────!?」

 

エルダーブレインは瞳を手で覆い、衝撃から身を守った。

 

「今だよ!」

 

R5とAN-94、AR-57がエルダーブレインに銃口を押し当て、密着させるとシールドの隙間からフルオートで弾丸を叩き込む。

 

「このっ!」

 

エルダーブレインが反撃しようとしたが……

 

「そうはいかないわ」

「────」

 

反撃をするためにシールドを少し、少しだけ動かした間に一瞬で潜り込んだM4が膝蹴りを叩き込む。

 

「────うっ!?」

 

出力を解放した膝蹴りは、M4A1の向上した圧倒的な加速力とともに放たれたため、エルダーブレインはボーリングのピンのように弾け飛びシールドから引き剥がされる。

 

「ハハ……M4A1さんの蹴りはまるで対物ライフルみたいですね」

「アイツ、なんであのスピードで蹴り飛ばしてなんで潰れないの?」

「あー……確か、ヴェルークトがくれた装備に身体をめちゃくちゃ強くする燃料がはいってたとかなんとか」

 

M4の加速による蹴りを放ったとき、その時の速度は150キロを超えていた。この速度はフェラーリやランボルギーニといったスーパーカーがウォーミングアップで出すような速度だ。

当然、そんな速度で動いて蹴るなんてしたら、M4もまとも形では済まない。

 

だが、M4A1は限界を保ち余裕そうだ。

理由は注入された特殊燃料のおかげである。

特殊燃料に含まれた成分は動かした物体の速度に応じて素体の強度を変える。

燃料がM4の加速に応じてより、頑丈な素体にしたのであの速度でエルダーブレインを蹴り飛ばしても素体は元の形を保っているのだ。

 

「しぶといわね……でも、あとどのくらい続けられるかしら?」

 

エルダーブレインの偏向障壁を支えていたバッテリーの数は減っている。

供給が消費に追い抜かれているのは確実だ。航空爆撃でバッテリの発電機だって損壊しているかもしれない。

 

「……!」

 

エルダーブレインはケーブルを引き剥がして、アルケミストが使っていたような大型レーザー銃を2門構えた。

守りを捨てて、自分から攻めるつもりらしい。

 

「さぁ、引導をくれてあげる!!」

 

レーザー銃から放たれた一筋の光が、M4に向かって突き進む。

突き進んだままM4A1は身をかかがませると、エルダーブレインのレーザーは当たらずM4の髪を攫うのみにとどまった。

そして、一瞬で加速してエルダーブレインの背後を取り、頭に銃口を向ける。

 

「死ね」

 

M4A1が頭めがけて発砲したが、エルダーブレインは武器の反動を生かして飛び上がり運よく銃弾をよける。

エルダーブレインは空中で力を振り絞り、ケーブルを投げてM4A1のライフルを掴んだ。

なるほど、つかんでしまえばどれだけ早くても行動を制限できる、か。

 

「くだらないわね」

「なっ!?」

 

けれど、それはM4がライフルを持っていたらの話だ。

M4A1はなにも惜しむことなく、ライフルを手から離した。

 

「はっ!?」

 

つかまれて、ひっぱっているのはこちら側。

手を離せばつかんでいる側にそれが飛ぶ、石やビー玉を引っ張って飛ばすパチンコみたな話だ。

つまり、どういうことかというと…M4のライフルが彼女の手元から離れて、そのままエルダーブレインの顔面にぶつかった。

 

「やれ」

「うっ!?ああっ…っく!?」

 

 

それだけでは終わらない。

M4A1は自分のライフルを烙印機能で遠隔操作して発砲、ライフルが暴れまわりながらエルダーブレインの全身を貫く。

落ちていく、エルダーブレイン。すぐ下にM4A1のこぶしがあった。

 

「前にもこうやってアンタを殴り飛ばしたかしらっ!」

 

M4は続けて、エルダーブレインの腹にこぶしを殴り込み、エルダーブレインは壁まで一気に飛ばした。

M4A1はライフルを拾い上げた。

あれだけ乱暴につかったはずのライフルはまだ余裕で動いていた。M4A1カービン、か。我ながら頑丈なものだ。

 

「アレを耐えるのか!?」

「……いいえ、AN-94。壁を見て」

 

真正面から見たら、それほどダメージが入っているように見えないが、壁にエルダーブレインの人工血液がベッタリついている。

 

「終わりよ」

 

M4A1はアンダーバレルショットガンの銃口を向けた。

まだ、FLAG-12弾は装填されている。

 

「……うっ!?かっ……ごはっ!?」

「引導を渡してあげる。エルダーブレイン…もう、あなたを慰めるメイドはいない」

 

まだ生きていたのか、頑丈なのは自分の武器だけではないらしい。M4A1はエルダーブレインが今にも泣き出しそうになる顔を見て呆れた。

 

「エージェント……怖いよ」

「アンタのお呼びじゃない暴走で死んでいった人もみんな同じ気持ちだったわよ。アナタにチャンスはないわ」

 

追い討ちと言わんばかりに、M4A1はライフルの銃口を向けた。

FLAG-12弾がエルダーブレインの全身に命中、全身がはじけ飛んだ。

 

「全部消えなさい」

 

はじけ飛んだ残骸はM4A1の5.56ミリが粉砕し徹底したトドメの一撃を叩き込んだ。

 

「やった……?」

「…あんなに粉々になってやってないはないよ、やってる…」

 

エルダーブレインはもう肉塊のような残骸だけだ。

その残骸ももう二度と結合できないよう、M4A1が丹念に破壊した。

 

「…勝った」

 

AN-94が静かに呟くと、全員の口から安堵の息が漏れた。

 

「…この後は?」

 

M4A1が出た言葉にAN-94が振り向いた。

 

「何の話?」

「エルダーブレインを倒した後、私達はお役御免で帰っていいの?」

 

AN-94はなんのことか理解して頷いた。

 

「そうか、アンジェにはまだ知らされてないのか?簡単なことだ、エルダーブレインからデータを受け取って欲しい」

「成る程ね、すぐやるわ」

 

M4A1はデータの容量が普通の戦術人形を凌駕している。

今回の戦いで戦死した人形のバックアップに必要なデータも彼女の中に入っているのだ。

 

「接続する」

 

M4A1はエルダーブレインの頭だったものを持ち上げた。

まだ、ケーブル用の接続穴は残っている。…壊れてなくてよかった。

ケーブルを接続、を握るデータを回収しようとした

 

「────!」

 

データを読み取ろうとしたとき、突然、エルダーブレインが視界に現れた。

 

「M16、は知ってる…」

 

M4A1に記憶のデータを流し込んだ。

それだけ言い残すとエルダーブレインは視界から消えた。

その様子を見守る、他の人形達。

接続が終わったのか、M4A1はゆっくりと頭を離す。

 

「どうだった?」

「まあ、上手くいったわ。…これで終わりね」

「何を見た?」

「ちょっと……困ったことよ」

「困ったこと?」

 

正直、M4A1もこのデータはもてあますものだった。

このデータはグリフィンのデータベースにすら存在しない。

エルダーブレインの膨大な記憶の中にしか存在していない、極めて重要な情報だ。

 

「時間ができたら話す。今……」

 

激しい爆音が聞こえる。

今はここを生きて出ることを考えなければ。

 

「生きて帰るわよ」

 

────

───

 

「まだいるのか」

 

フォトンはHK433を構えて、KCCOの兵士たちを観察していた。

そこにいたのはまだ若い青年だったり老人だったり、男女様々な年齢の軍人たちだ。

彼らの武装はAN-94アサルトライフルやAK-12アサルトライフルを所持して、自分たちが目標にしている潜水艦バルブに臨時の指揮所を設置していた。

 

<指揮官トラブル発生だ>

「知ってる、バルブに指揮所を置いているのを腹立たしい奴らだ」

 

ここを狙われるのが分かっているのだろう、だからこそ腹立たしい。

さてどうするバルブを通らなければ目的を達成できない。人形にやらせるべきだが、手持ちの少ないこの状況でやりたくない。

 

「指揮官、こっち」

 

Ots-14がフォトンを抱えて、パイプとパイプの隙間に隠れた。

目の前でKCCOの兵士が通り過ぎる、振り向いてくれなくてよかった。

これ以上進むのはリスクが高い。しかし今更引き返すことも出来ないし……。

そう悩んでいる間にも敵兵が近寄ってくる。そろそろ決断しなければならない。

 

「カリーナ、駐屯地に攻め込みたい。少しの間、ヴェルークトに火力支援頼めるか?」

<了解です、ヴェルークトのヴェルグ2さんにつなぎますね>

<こちら、ヴェルグ2、あなたに火力支援のお望みがあると聞いたわ>

 

すぐに返事が来た。

最初は気に入らなかったが、今の状況では味方が増えたことは非常にありがたかった。

 

「ヴェルク2、こちらフォトン、敵の注意を引いてほしい。クトゥグアで火力支援してくれ、位置は潜水艦バルブ近くの指揮所だ」

<レーダーで確認する限り、そこから10メートルも離れてないわ。本気でお願いする?>

「それしか方法はない!」

<しょうがないわね...目を焼かれないように顔を覆っておきなさい!>

 

そしてヴェルク2から放たれたのは、グレネードランチャーの榴弾とは比較にならない圧倒的な熱量を持つ炎の塊だった。それはあっという間に指揮権所に直撃して爆発させた。

正確な射撃だった、なんと指揮所のど真ん中に着弾している!!

これでしばらくは指揮系統は混乱するはずだ。

 

「今のうちに!」

 

熱波で顔が暑かったが、構わず指揮所にたどり着いた。

指揮所の兵士たちが悲鳴やうめき声をあげる、

 

「仲間がやられた!運べる奴はいないか!」

「駄目だ!そんな余裕ない!!」

「俺がやる!!」

 

フォトンとOts-14はゆっくりとKCCOの兵士に気づかれないように指揮所を進んでいく。

この程度の混乱、もう少ししたら収まる。

 

「援軍は!?大尉までもう少しの距離ですよ!」

「外の爆撃が聞こえなかったのか!?あれが民間軍事会社のなせる業だと思うかね?」

「くそ、忌々しい空軍め!!」

 

空からの空爆によって次々と破壊されていく様を見てKCCOの兵士たちは苛立ちを覚えていた。

忌々しいのはこっちだって同じだ、早く終わらせないと俺たちも下敷きになる!

 

「何としてもここを突破して────」

 

フォトンのHK433の5.56がどうしても気づかれてしまう位置にいた兵士を貫いた。

これだけの銃撃戦、サイレンサーがなくても気づかれることはない。

邪魔な兵士を片付けて、フォトンはバルブにたどり着き、爆弾を設置する。

これでバルブを破壊して、大量の海水を流し込んでやるのだ。

 

「(頼むぞ)」

 

彼は静かに祈るかのように、爆弾の電源を入れた。

 

「まったく、弾薬ごとに載せる車両を分けるなんて…あっ」

 

弾薬を取りに来た、兵士が偶然ここを通り爆弾を仕掛けているフォトンを見つけた。

 

「くそっ」

「うっ!?」

 

突然のことで慌てて、銃を構えようとした兵士に警戒していたOts-14がナイフで喉を切り裂いた。

 

「グローザ、離れるぞ!」

「ええ」

 

後はここから離れて、安全な位置で起動すれば、時間稼ぎができる。

フォトンは先ほどと同じ要領で、指揮所を離れようとする。

 

「弾薬を取りに行った奴から、報告がない!」

 

「待て!死体があるぞ!」

「刃物で喉を掻っ切られている!」

 

しまった!

死体を見つけて、残っていた兵士たちが集まってきた。

 

「いたぞッ!ネズミだ!!」

「クソッ、こうもうまくいかないか!!」

 

見つかった!Ots-14はライフルで、HK433でフォトンは応戦する。敵もAK-12やAN-94でこちらを撃ってくる。

しばらく、フルオートで撃ち敵が遮蔽物に隠れたタイミングで、自分が指揮所にたどり着くために使用した階段を駆け上がる。

 

「上か!!」

「あそこだ!!」

「手榴弾を投げろ!奴らの頭に食らわせてやれ!!」

 

階段を上り切ったところで、下の階からAK-12を持った兵士が駆けつけてきた。

 

「ヴェルークトはなにしてるの!?全然減ってないじゃない!」

「しまった!グレネード!」

 

マズイと思った瞬間だ。

 

『伏せて』

 

すぐ上の階から、掃射音がこだまされ、下から狙い撃とうした兵士たちがあっという間に引き裂かれた。

一体誰が?どこから?疑問だらけだったが、今はその答えを考えている暇はなかった。

 

「ヴェルークトか!?」

『外れよ、我々は"ファイヤー・ホーク"チーム。あなた達の回収に来たの』

「助けに来てくれたんだな」

『そういう解釈もいいと思うわ、私はね』

 

彼女の援護を受けながら、上の階にたどり着き、さっきKと話していた臨時の指揮所に戻ると先ほど助けてくれた彼女と同じ格好をした兵士がKと一緒に指揮所に集まっていた。

 

「フォトン、コイツらは?」

「K…お前もわからないのか?回収役とは言っていたが…」

「…ヴェルークトに聞くしかないな」

『何が知りたいの?』

 

さっきの女だ。よくよく見るとアサルトライフルにしてはかなり大型の武器を持っている。

 

「アリアさん!」

 

ようやく人形達も指揮所に戻ってきた、どうやらひと段落ついたようだ。

それに合流を予定したSOPMODⅡがやってきて、自分を助けてくれた女性のことを"アリア"と読んだ。

 

『久しぶり…でいいかしら?SOPⅡ、すぐに脱出しましょう。保安局はここを吹き飛ばすつもりよ』

 

どうやら彼女はアリアという名前らしく、SOPⅡ達には知り合いでもあるらしい。

 

「どうやって出るの?」

『心配ないわ、着いてきて』

 

アリア達についていき、たどり着いた場所はは潜水艦停泊所だった。

アリアが腕を上げると、水をかき分けて潜水艦がそのくらい姿が浮上した。

 

「潜水艦だと…お前達は?何者なんだ…?」

『教えてもいいけど、知った事を後悔するかもしれないわよ?どう?それでも聞く?』

 

いや…次の機会にさせてくれなんて言えやしない。

 

「知りたいさ」

『そう。それじゃ言わせてもらうけど、私達は"アメリカ海軍"よ』

 

────アメリカ…!?ソ連は内戦が起きていることを西側に知られたくなかったんじゃないのか!?

 

『フォトン君だったかしら?バルブに爆弾を取り付けたのは知ってるわ。起爆しなさい』

 

フォトンは点滅するスイッチを見た。

 

「まだ、M4達が戻ってな────」

「指揮官────!」

 

そう言いかけた所で、M4の部隊とAN-94、そしてアンジェリア達が停泊所にたどり着いた。

 

『他に爆弾をためらう程の人はいる?』

 

いや、いない────だれか、忘れた気がするが多分死んだ人、人形だろう。

 

「────起爆!」

 

フォトンとKがバルブを破壊する爆弾のスイッチを押した。

 

『あ…………』

 

フォトンが行った、爆破工作はユーリとエゴールの戦っていたところまで影響が出て、大量の水が流れ込んできた。

爆発で吹き飛ばされた水が勢いよく流れ込んでくる。

その水流に足を取られてユーリが転倒した。

 

『────しまった!うわっ!?』

 

瓦礫と一緒に押し流されそうになって、慌てて滑ったまま跳躍する

 

『(水の流れは腰にくる…!)』

 

流されるままの体制で跳躍したのだ当然、Gで腰にダメージがいく。

 

『くそっ! この程度……!』

 

エゴールもなんとか踏ん張って、アレスの巨体で流される状況から耐える。

しかし、足場の悪い状態ではそれも長く続かないだろう。

だが、長く続かないのはこちらも同じだ、跳躍装置で無限に宙を浮いていられる訳ではない、燃料という制限時間がある。時間の取れない敵同士、やることがお互いに見えてきた。

 

『『短期決戦…』』

 

お互いがお互いの弱点を知っている。だからこそ、相手の裏をかければ有利になるだろう。

それは向こうも同じこと、こちらの裏を読んでいるかもしれない。

 

『お先にどうぞ?』

『うるさいぞ、貴様こそコウモリのように逃げ回るようでは勝てんぞ』

 

お互いに相手を挑発し合う。

 

『…逃げる? それはあなたの方では? 先ほどから一歩も歩けないようですが、ベイルアウトを推奨します』

『逃げる必要はない』

 

アレスから、榴弾が複数発射された。

 

『ちぃっ!!』

 

それをかわすために、ユーリは横へ跳び、榴弾が爆発して、ユーリがいた場所が爆発した。

 

『────うっ!?』

 

爆風と共に大量の土砂が吹き荒れる。

そして、その中へとアレスが突っ込んだ。

 

『ぬおおぉぉぉ!!!』

 

そのまま、力任せに押し倒すようにユーリを押さえ込もうとした。

 

『────!』

 

なんと、ユーリの長刀がアレスの右腕を溶断したのだ。

 

『なにっ!?』

『悪いですね!!』

 

その隙を突いて、ユーリはアレスの首筋にレーザーを帯びた蹴りを叩き込む。

 

『ぐあっ!?』

 

たった一撃でアレスは意識を失ったようにモニターが一瞬、砂嵐になる

 

『────どこだ!?』

『くらえ!』

 

ユーリはアレスの後ろにいた、そこからアサルトライフル”A-545”の弾丸を叩き込む。

 

『くっ!』

 

しかし、さすがにエゴールも歴戦の戦士である、すぐに回避のため身体を振り回しを取って致命傷を避けている。

それでも、かすり傷は負ったようだ。

 

『ライフル弾で傷つくものか!!舐めるなよ!!』

 

怒りに任せたような、アレスの拳を振り下ろされた。

その攻撃を紙一重でかわして、ユーリはアレスの拳を蹴った。

拳に乗るように飛び上がり、再度上空にユーリは跳ぶ。

 

『逃がさん!!』

『がっつかない!!』

 

再び伸ばされた拳を長刀で弾く、びりびりとはじいた長刀を持つ腕と手が痺れに似た感覚を感じる

 

『ふぅん!!』

 

だが、構わずアレスはそのまま振り切った。

 

『!?』

 

ユーリが落下する。

 

『ここからっ!!』

 

そこからユーリが彫刻刀の生反りの形になり、彫刻を掘るように頭部から腹部に掛けて長刀を差し込む。

レーザーは装甲を抉るがコックピット周りで止まってしまった。

 

『……こいつ』

『コックピットの方が固い』

 

アレスはグレネードランチャーでユーリを吹き飛ばした。

 

『ぐあぁぁ!!』

 

その衝撃でユーリが投げ出される。シールドのお陰で破片で傷付かずに済んだ。

 

『貴様が俺を倒すだと?笑わせるな』

 

ユーリは起き上がったものの、まだ立ち上がれていない。

 

『ふん、立てんか?口ほどにもない奴だ』

 

アレスがゆっくりと近づいてくる。

 

『ああ、まったく…言い返す言葉もない…時間だってない!』

 

ユーリが立ち上がる。

 

『これ…なんでしょう?』

 

そう言って、ユーリが指差すのは腰部の装甲内部にあるバッテリーパックだった。

 

『貴様、まさか自爆するつもりか!?』

『その通り』

 

ユーリが笑う。

 

『ふざけるな!!』

『残念ですが、自分は付き合えません』

 

一気にユーリはベイルアウトして、強化装備をアレスの足元に飛ばした。

 

『なんだと!?きさっ────』

 

エゴールが何かを言う前に、装甲が爆発。

爆発音とともに、アレスの足が吹き飛ばされた。

水がどんどん流れてくる。

アレスがどんどん沈んでいく、エゴールは脱出しようとしたが、起動しない。

 

『まさか...ライフルを撃ったのは闇雲ではなく…』

 

ユーリが背中を撃ったのは脱出するための機能を破壊する為だったのだ。

 

『やられた…』

 

エゴールは舌打ちをする。エゴールのアレスが水没していく、ハッチを開けるためのレバーを引いても脱出装置が機能していない。

 

 

 

 

あちこちで濁った音が響いてくる。フォトンが起爆に成功したのだ。

濁った音が響いてくる、結局のところM16はHK416を突破することが出来なかった

 

「また、爆発が!?きゃっ!?」

 

航空爆撃で建物があちこち吹き飛び、二体ともここにはもういられない状況だった。

自分への依頼はM16を足止めすること。

M16を嫌って、殺そうとまでしたHK416でも心中はごめんだ。その場から立ち去ろうとする。

 

「416、次に合ったときは…」

 

M16がHK416を睨みつつ後ずさりする、M16もここにとどまる事は危険だと承知しているのだろう。

 

「”お前を殺してやる”でしょ?望むところよ」

 

二人は別れる前にお互いの姿を見た。

M16の表情には今まで感じたことがないくらい憎しみが強くこもり、HK416はそれよりも早く帰りたいという視線、それをぶつけ合うように互いにボロボロになった体で見つめ合っていた。

二人が見つめ合いながら背を向けると同時に爆発が起こり、大量の水が施設内に流れ込んだ。

水しぶきで視界が奪われ、元に戻ったころにはHK416の姿はない、先に逃げたのだろう。

この施設は海に面しており、流されたら一巻の終わりだ。すぐにでも脱出しなければいけない。

 

「OGAS、エルダーブレインは?」

 

────M4達に討伐されたわ、遺跡もパラデウスのデータも奪われている。

 

「(…くそっ!)」

 

やられた、M16は歯軋りが出そうになった。奴はあのことを知ったに違いない。

これでは今までかかわらないように準備してきたことがすべて水の泡だ。

自分たちの200メートル先にはエゴールではないパイロットが操縦する、別のアレスがエゴールが脱出できるように無謀にも機構の両腕で全馬力をもってハッチをこじ開けようとしていたのだ。

 

「人間ども…諦めることを知らんのか」

 

こんな状況だというのに彼らはまだ部下を諦める気力があるようだ。

 

────彼らの行為は完全に無駄な行為よ

 

「ああ、私もそう思うよ」

 

M16はOGASに導かれた、脱出用のルートを使用して潜水艦基地を後にする。

脱出用経路を使う場合、安全圏まで急いで行けば40分以内に辿り着けるとOGASが算出していた。

M16達は導き出された最短距離を通っていく。

 

「M4はどこだ?」

────潜水艦停泊所よ、HK416が向かった先ね、他の404小隊もたどり着いたみたい。そこにたどり着くためには泳がないとたどりつけないし泳いでもたどり着けないでしょう。

 

「何をするつもりかは知らないが…わかった、今はお預けだな」

 

潜水艦基地か…なら、私たちが目指すべきは

 

「屋上へ行く、データをよこせ」

 

────ええ

 

『こっちは一人仕留めたわ、そっちは?』

<こっちは、ひとり取り逃がした。といっても武装は全部ぶっ壊してやったがな>

 

ヴェルグ3はヴェルグ5のすべて武装を破壊した状態とはどんなものだと疑いながら、執拗に一点を撃ち貫かれコックピットを半ば強引に破壊された、KCCOのアレスを見上げていた。

 

『腐肉喰らいを殺す兵器で殺しあう…ひどい話ね』

 

KCCOのパイロットの腕は大したものだと思った、同時にこちら側に来たときの脅威度が上がったとも思った。

 

『そう思うでしょ?AK-12?』

「人形に人間の業の是非は問えないわ」

 

AK-12から守りのある回答が出た。

裏返せば、どうやら彼女もこの戦いに回答を出せないのだろう。

 

『それにしても、しぶといわね。”ショー”の玩具の出来だけは認めるわ』

「アンタの強化装備に言われてもね、パパはどこ?」

『分からない。でも、隊長だからね何とかして生きてる…そう思いなさい』

 

まだ、戻っていないのだとしたらユーリとエゴールは水中にいるかもしれないということだ。

 

「返っていないのですか?」

 

AK-15は水が轟音を立てて流れる、下の階を見下ろした。

 

「パパ」

「AK-12!?」

 

AK-15が珍しく慌てて、AK-12に呼びかけるとAK-12ははっとした表情で足を止めた、彼女は下の階に飛び込もうとしたのだ。

 

「何を考えている!?自殺のつもりか!?」

「まだ、戻ってないってことは、だって、下の階にいるかもしれないってことでしょ?そう考えたら、急に…あ、あれ?私、どうしてこんなことしようとしたのかしら…」

 

自分の行動原理がまるで理解できなかった、AK-12が思考と記憶があやふやになっている。

 

「私は、何を考えていたのかしら?」

 

AK-12は不思議そうな表情を浮かべながら、また歩き始めた。

 

「…」

『「ねえ(おい)!!」』

 

また、飛び込もうとしたのかと思い今度は柔和な雰囲気を醸し出すヴェルグ5もがAK-12に怒鳴った。

 

「…あ、えっと」

『いい加減になさい!何考えてるのよ!もし、ユーリが下にいなかったらどうする気なのよ!!』

 

AK-12はしばらく立ち止まり、やがてゆっくりとした足取りで動き出した。

 

「でも…」

『あんたが私たちを謀殺しようとしたことで苦しんで、助けることで罪を償うっていうつもり!?迷惑よ!わからないの!?』

「…じゃあ、どうしてパパは連絡をくれないんですか」

 

AK-12の口から出てしまった言葉は疑問ではなく、質問だった。

 

「隊長は生きてるヨ。反応がなイ?そりゃ、隊長が無線機ゴとエゴールに特攻をしたカらだ。」

「どういう意味ですか…あなたは?」

 

AK-12の元に美しい肉体を持つ戦術人形がユーリの肩を組み、状況をより鮮明にした。

 

「初めまして、AK-12。私は戦術人形…”ヴィシャス”だ。今後ともよロしくってな…クフフ!!」

 

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