たったひとつの願い   作:Jget

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これが、私の選択

「ここは…」

 

目が覚めると、天井の光が見えた。

背中にシーツの感触がある…ここは、ベッドなのか?

 

「お目覚め?」

 

目を覚ますと、ブロンドの髪の女性がこちらを見下ろしてきた。

ユーリはその女性に見覚えがあった。

 

「アリア…ここは、潜水艦の中なのか?」

「ええ」

 

という事は…助かったのか。

 

「コーラップス液を使った…クソ女…いえ、戦術人形"M4A1"というんだっけ?彼女があなたを連れてきたのよ」

「そうか…」

 

視線をずらすと点滴の管が見える。潜水艦の中の医務室か…

 

「今となっては幸運かもしれないけど…ユーリ。なんで、あの時"M4A1を見逃した"の?」

「それは…あの方の要望で」

「もっと前の話よ」

 

ベオグラードでの、事件の前…ユーリは"あの方"から、支援とそれに伴う指令を受けていた。

司令の内容は"M4A1の殺害"…あの方は遺跡に関する兵器を憎んでいるのは分かる…今回のパデルスィキもそれが絡んでいる。

M4A1…レイラが生き残るためにコーラップス液を介した爆弾を使用した、"あの方"はその事で目をつけられたのかも知れない。

 

「ベオグラードでは感染者の流入でそれどころじゃなくなった。まぁ、結果的には被害を抑えるために色々頑張ってくれたから、プラスにはなった。でも、落ち着いたときに…いえ、他にも何度か実行するチャンスはあった、なのにあなたは見逃した。…どうして見逃したの?」

 

アリアの質問からは言い訳が通じる様には思えなかった。

実際、ユーリは何度かM4と接触したのに自分から離れたり、見逃したりしていた…それは任務の放棄に等しいモノだと受け取られても文句は言えない。

 

「…今回もお得意の誤魔化し作戦でも行く?ソ連の十八番ですものね?…それで済むと思う?────ふざけるんじゃないわよ?"あの方"は結果往来と言っていたけど、私は認めない」

「っ……」

「コーラップス液という世界の癌を使って置いて、今もなお正当化してなんの罪も償おうとする女を見逃すなんて、私が許さない」

「…すまない」

 

謝ればいいという話ではない、でも他になんて言えばいいかが思いつかなかった。

時間や場所の余裕があればもっと具体的な言葉が言えたかもしれないが今はこの一言しか言えなかった。

 

「謝罪してほしいわけじゃない。どういうつもりか聞いているの。どうせ、コーラップス液の被害者の事やE.L.I.Dなんてどうでも良いと思ってるんでしょ?」

「それは違う!」

 

ユーリは即座に答えた。

 

「違う?本当にそうかしら?M4A1は、コーラップス液を使っても平然としている。他の人形達も潜水艦なんの悪びれもなしに寄生虫の様に張り付いて、私達の食料や弾丸の物資を消費している」

 

アリアは我々を助けてくれたが…助けたくて助けてくれたわけじゃなかった。

 

「アイツらを助けようなんて考えたり、行動しようとしたグリフィンも同罪に近いわ、"世界の輝きを更新する"とかの随分ご大層な社訓を掲げている様だけど、結局は世界の穢れを最更新したたげじゃない。どうせ後10年も保たないんじゃないかしら?」

 

たしかにグリフィンは生き残る為とは言え、組織としては形骸化してしまった。

そんな組織にいる人間は全て汚れてしまっていると思われていても仕方がない…

 

「君が俺を酷い仕打ちをした奴と同じだと思うのなら……俺の首を跳ね飛ばせば良い」

「なんで、あの方の命令で収容したあたしらがなんであなたの命でグリフィンの責任をとるの?」

「…俺は、グリフィンに働いていた…。俺がM4やグリフィンを庇ったのはそのよしみだ」

 

アリアの顔から表情が消える。

失望しているんだろう。

 

「前からおかしくなったと思ってたけど…まさか、ここまでグリフィンにたぶらかされたなんてね…"あの方"と話した時のアンタの決意はその程度なの?」

 

ユーリは瞳を逸らした。

…言い訳のできない、申し訳なさと帰属意識に対する裏切りでアリアと目を合わせる勇気がだんだんなくなっていたのだ。

 

「…ユーリ」

 

M4は潜水艦に乗艦した後、艦の機能で簡易的に修復を受けると船内を歩いてもいいと技師に言われたので、ユーリに会いに行こうとした。

ユーリは治療を受けていて、最初は会いに行けず、もう治療が終わったと聞かされた時にはM4は医務室に向かっていた。峠は越えたと言われたが、状態が気になったので一足先に医務室で面会をしようとした。

その時、アリアと言われた女性が自分の事でユーリを責め立てていた光景を見つけてしまった。

アリアがM4に気づいたかどうかはわからない。で

も、彼女が言ったコーラップス液の事は本当のであり、改めて私は許されない事をしたのだと自覚せざる得なかった。

10分くらい、ユーリとアリアが話した後、医務室からアリアが出てきて、M4と鉢合わせになった。

 

「なんだ、いたんだ。M4?」

「…ええ」

「その様子じゃ隠れて聞いててた?自分の話すら堂々聞けないのかしら?ロシアの戦術人形の出来は相当情けない作りをしているのね、作ったやつも指揮した奴もさぞ情けない奴なんでしょうね」

「申し訳…ありません」

 

アリアがユーリを責め立てた事については正直のところ、気に食わない。

だが、その原因は全て自分にある。それに、私に反論という選択肢は取れない。取れば私たちだけではなく、ユーリだって水の中に追い払われるかもしれない。

 

そもそも、ちゃんと確認してればあんな復讐心に支配されるなんて情けないことにならなかったはずで、こうなった原因は明らかに私の弱くて、情けないのが原因なのは明白だった。

 

「責任ついて話されていましたけど、ユーリは…どうなるんですか?」

 

アリアはM4を見つめた。

M4は見つめられただけで麻酔をしないで手術で身体を取り出された様な気分になった。

 

「口ではああ話したけど、ユーリはあの方の命令通り任務を完了、あなたも回収した。あなたが思うように酷い目に遭う事にはならないでしょう。私が彼の責任を追求したのはあくまでアイツを増長させないためよ」

「…そう、ですか」

 

その言葉を聞いて、M4はホッとした。

ユーリは大丈夫だと分かるとM4から安堵の笑みが出た。

 

「私はどうなるんですか?あの方という人は私に会いたいんでしょう?」

 

ただでさえ、私はコーラップス液を憎む集団に捕まっているのに近い状況なのだ、処刑宣告があってもおかしくない。

 

「…あなたの処分は」

 

アリアは多少、納得いかないような目つきでM4を睨みつけると一枚の司令書を見せた。

 

「この司令書の通りよ」

 

M4が司令書を受け取り、英語で書かれていた文明を読み通した。

 

「…アドミニストレーター?この人の所に連れて行かれるんですか?」

「えぇ…アドミニストレーターというのは"あの方"の呼び名よ」

 

M4が見た司令所には"アドミニストレーター"という指令から、自分の所に連れてくる様にと書かれていた。

あの方、腕試しをしていた時、突然電話を掛けてきた…あの相手。

そして、"アドミニストレーター"というのはアリアやユーリ達ヴェルークトが"あの方"に対する呼び名の事だった。

 

「分かっていると思うけど、粗相を犯さないでね」

「……わかりました」

 

一体何者なんだろう……アドミニストレーターとは……M4もわからなかった。

だが、一つだけはっきりしていた事はもし、M4はアドミニストレーターという存在に興味を持たれていたという事実だった。

 

「なんで”あの方”があなたに会いたがるのか…」

「(……私に言われても)」

「……ふん」

 

用を終えたアリアはそのまま立ち去るように艦内に戻って行った。

 

「ユーリ…」

「レイラ…大丈夫か?」

「……ええ」

 

潜水艦内の部屋の一つ、そこでユーリは横になっていた。

幸い、未だにコーラップス液の汚染による肉体的な徴候はなく、安定している。

 

「あなたこそ…大丈夫なの?」

「ああ、医者には数週間休めば戦場に戻れると言われたよ。全くあれだけ殴り合ったのに―」

「身体もそうだけど、私が知りたいのはあなたの心の事、そっちはどうなの?」

 

ユーリの表情が少し暗くなった気がしたがすぐに元の表情に戻った。

 

「それは…」

 

言うべきか言わぬべきなのか、悩む素振りを見せるが、やがて、決心がついた様子で口を開いた。

 

「聞いてるのは私だけよ。他の誰にも聞かせない、だから…本当のことを話しても大丈夫。何をしゃべってもあなたを責めないわ」

 

例え、今までの人生が無駄だった。そう、彼が弱音を吐いたとしてもM4A1は責めない。

 

「俺が、前にカーター将軍のお世話になったことは聞いてるかな?」

「…少しは」

 

反逆小隊にいた時やグリフィンに戻ってから、M4はユーリが戦争に駆り出される羽目になった事件をわざわざ公聴会を端から端まで、視聴してその時に提出された証拠からユーリがどんな人生だったのか本気で調べた。

世界大戦が終わった後、ユーリは確かにカーター将軍の所属に身を寄せていた記録があった。

 

「あなたの故郷が、戦争の間にウチの工場に変わっていて…住むことができないあなたは将軍に世話をしてもらったのよね」

 

よりにもよって、私が生まれたのはその工場だった。

私が生まれるために、彼は生きる理由。帰る場所をなくしてしまった、奪われた。

 

「ああ、あの人には本当に世話になった。食事や寝床をくれたのはそうだし……報告書の書き方を教えてくれたり、ヴェルークトが出来立ての頃もいくつか仕事を回してくれたりとか、エゴールに引き合わせて貰ったり、AK-12に裏切られた後もしばらく匿ってくれたり……本当に、本当に世話になったんだ」

「……」

 

本当に、本当にカーターはユーリにとって親みたいな人だったのだと、彼の口から思い出を語られるたびに彼のことを憎んでいたはずのM4A1は自分が愛している人にとってとても大切な人だと実感して、何も言えなくなってしまう。

 

「みんな…みんな、死んでしまった…殺してしまった…殺してしまった奴の中には…俺が教えた奴もいた…どうして、こうなってしまったんだろうか…エゴールだって…昔は一緒に戦ってたのに…決着をつけしまった…つけちゃ、いけなかったのに…!」

 

ユーリは声を震わせながら、懺悔の様に自分の思いを吐き出した。

親代わりになってくれた人の大切な部下、それをこの国の未来のためという聞こえのいいことによって……その命を奪った。

私からしたら、自分の手でユーリの部下やAR小隊を手にかける行為に等しいことだろう。

 

「俺は亡霊になるはずだった…人殺しなんだ、いつか裁かれる日からは逃れない…レイラ、俺は…アイツらにその裁きを払わせてしまったのか?」

「…ユーリ」

 

M4はユーリの側によると彼を抱きしめた。

抱きしめていると彼が震えているのが分かる、いつからこうなのか?それとも、ずっと今までずっとユーリは震えていたのだろうか?

誰のせいで…どうして、こんな事に……分からないけど今は彼に安らぎを与えたかった。

 

「ユーリ……あなたは裁かれる義務なんてないわ、あなたが死なせてしまった人達にも…勿論、エゴールにも」

 

ユーリはハッとしてM4の顔を見た。

確かにエゴールがやった事は悪だ。

それに私が怒りを抱いた事、止めなくてならないことに自分から足を踏み入れたのはあちら側からだ、どう足掻いても否定しようもない。

例え、エゴール自身にどれだけの正義があったとしても、だ。

だが…でも…それでもユーリには生きていて欲しい人達だったのだろう。

 

私はユーリの命は他の誰の命よりも思いと、迷いなくそれ以外を代償にできるとハッキリ言えるが……

ユーリにとって、私の命は彼らの夥しい命を奪ってでも生かす価値があるものなのだろうか?

ユーリは目を閉じて、数秒考えると再び目を開き、M4に言った。

 

「ありがとう、レイラ。迷惑をかけた…」

「…迷惑なんて」

 

そんなこと、これっぽっちもあるわけが無い。

むしろ、もっと頼ってくれればよかったのにと思ってしまう。

……いや、言えるわけがない。

 

「いつでも頼っていいの。あなたが周りに頼られているからと言ってあなた自身が誰かに頼っていけないなんていう理屈はないわ」

 

M4がユーリの頬に触れるとユーリが手を重ねた。

 

「私はあなたを守る。他の命が必要なら、私はその命が誰であっても構わない。でも、あなたがそうである必要はないわ」

「……」

 

M4とユーリがお互いを見つめ合う。しばらく、そのまま沈黙が続いた後。

 

────なんだとジジイ!!

────入れん!何があってもワシは入れんぞ!

 

医務室の扉越しでも分かるくらい激しい対立の怒鳴り声が聞こえた。

どうやら、グリフィンの人形がなにか不満で怒鳴っているらしい。

 

「……ちょっと、見てくる」

 

こんなことで「降りろ」なんていわれたらたまったものじゃない。

フォトンは何をやっているんだ?と思いながら、M4A1は騒ぎのあった場所を怒鳴り声を伝って足を運ぶ。

 

「何があってもワシはこの奥に入れん!」

「だったら、こっちはあのクソ狭い物置の中に缶詰になれってか!?」

 

どうやら、騒ぎは機関室で起きているらしい。

年配の潜水艦の機関室長とSL8と数人の人形が揉めているらしい。

 

「なんの騒ぎですか?」

 

私の他にも見にきた人がいたらしい、そして騒ぎを見かねたのか時間らしい人まで出張ってきた。

さすがにアメリカの士官に先に任せたらどうなるかなんて、穏便に済ませても、グリフィンは部下の制御もできないって思われて悪いことにしかならない。

M4A1は率先して、問題解決のため乗り出した。

 

「どうもこうもあるか!こいつらが銃を持って機関室にやってきて中に入れろって言ったんだ!乗っ取る気だ!」

「……どういうつもり?」

 

M4はSL8達に目を向ける。

 

「俺たちをあんな狭い中に押し込めたら息が詰まってしにそうなんだよ!」

「だから、すぐ近くの広い機関室に入りたかったんだ」

 

人形達は狭い物置に閉じ込められる事に我慢できなかったらしい。

確かに私たち人形は入れるスペースがなく、物置に突っ込まれた。狭い空間だと、仲の悪い人形とも否応なしに押し込められる。

すこしでも広い場所に行きたいのだろう。

そうこう揉めてるうちにどんどん人が集まってきている。

 

「大体!こんなジジイしか扱い方の知らない潜水艦の機関室の使えるわけないだろ!」

「失礼よ!」

 

流石にこれはこちらが失礼だ。

M4A1もこれには反応しないとならない。

 

「なんだと!?顔がいいからって、なんでも通ると思うんじゃない!」

 

ただ、機関室長が黙っていられるわけもなく……失言に反応してしまった。

次第に艦内の空気が悪くなる。

 

「……なによ?ジイさんと人形が揉めてる?喧嘩なら買うわよ」

「潜水艦の兵士たちを黙らせればいいのか?」

 

アリアもやってきた。

反逆小隊の狼達も。

 

「シールズのアンタらも手伝ってくれ!コイツら、ここを乗っ取るつもりだ!」

「我々の働き次第なら、30分で制圧できるんじゃないですか?先輩?」

「へぇ?面白いこと言うのね、AKを持つ人形って」

 

RPK-16がいらないことを言い、アリアはスリングでぶら下げていたSOLGWに手を伸ばす。

 

「バカ!なんで煽るのよ!」

「RPK-16!今冗談を言わないで!」

「だが、流石にこの扱いは納得できない」

 

AK-12とAN-94はなんとか取り下げようとするが、AK-15は戦いに乗り気だ。

全員に緊迫か走る。

 

「はぁ……」

 

私の次の発言で、いろいろ流れが決まるな。フォトンは何をしているんだろうか。

M4A1はため息を吐いて、機関室長に向き直る。

 

「失礼しました。室長、ご迷惑をおかけして申し訳ありません」

「なに!?」

 

当然、同じグリフィンだから自分たちの味方をすると思っていたらM4A1は迷惑をかけられた方に謝罪した。

当然、人形達は裏切られたように驚く。

 

「お前!周りより特別だからって────」

「……」

 

特別?誰かが言ったヤジに向かって、M4A1は睨みつける。

迫力に負けるように人形達が固まる。

M4は士官の方を向いた。

 

「ただ、我々もあのスペースでは限界があります。何卒、ご一考頂けないでしょうか?」

「……艦長に確認を取る」

 

さっきのさっきだった表情をなんとかかき消してM4A1は士官に頭を下げて、待遇の改善を要望する。

流石に無碍にはできないらしく、士官は無線で艦長に確認を取った。

 

「艦長と話が取れた。食堂を使っていいらしい」

「ありがとうございます」

 

ありがたい事に、そして申し訳ない事に相手が譲歩してくれた。

M4A1は握手の手を伸ばそうとしたが、士官からは断られ、代わりに敬礼だけされた。

……配慮が足りていなかった、アメリカには私たちのような人型の戦術人形が出回ってない。

きっと、彼らには私たちは人の皮を被った怪物のように見えていて、自分の手を握りつぶされると思ったのだろう。

 

人形達がゾロゾロとより広い、食堂に移動しようとしたところ……

 

────ズドンっ!!

鈍い音が響いた。同時に衝撃も襲った。

 

「────あぐっ!?」

 

思わずM4は尻餅をつき、痛みに顔をしかめた。

 

「どうなっているの!?観測班!報告なさい!」

 

衝撃を感じたアリアも船外の観察をしていたクルーに何が起こったか通信で説明を求めた。

 

<不明だ!!沈澱した障害物を避けるために浮上したらいきなり────>

 

再び、衝撃が潜水艦内を襲う。

 

「くあっ!!」

「きゃぁ!!」

 

クルーの何名かが先程の衝撃ですっ転び、天井の蛍光灯もグラングランと揺れる。

さらに、いきなり人形達が電池が切れたように床に倒れていく。

 

「う…なんだかわからないけど、これはまずいわね。索敵班!船外カメラで何が起きているか探りなさい!!」

<わかってる!我々も捜索して────>

「どうしたの?」

 

また潜水艦内に振動が起こる。

そして、何かの部品の落ちる音や警報のアラームがなった、クルーの誰かがアラームを鳴らしているんだろう。

 

<今、映像が届いた…こ、これは!>

 

アリアも潜水艦の外部カメラの映像が映し出された。

そこに映し出されたのは…

 

「戦術人形…M16」

 

────

───

 

「────ユーリ、ごめん。ちょっと出るわ」

 

衝撃が止み、辺りが静まり返った。

何が起きたか調べる為、M4は一度医務室に戻り、どうするか伝えた後、M16を迎え撃つために出ようとする。

 

「俺も────」

「大丈夫よ」

 

ユーリが傷ついた身体を押して、無理やり戦おうとしたのでM4はやんわりとベッドに戻した。

 

「大丈夫、貴方は私が守るから。…そして、絶対にあなたの元に戻る」

 

そう言って、彼女はユーリにキスをした。

柔らかく、温かな感触を感じ、ユーリはゆっくりと頷いた。

 

「……分かった。頼むレイラ、この船を…守ってくれ」

「ええ、任せなさい」

 

M4はコクリと力強く、ユーリに返事をしてM4は医務室を出た。

 

「……大変な事になったわね」

 

医務室を出ると、廊下にはまるで時が止まったかの様に外にいた戦術人形が直前の行動で動画の一時停止をクリックされたかの様にピタリと動かなくなり倒れている。

動かない人形の頭を触ってみる。やっぱりというべきか、反応がない…どういう事だ?

クルー達も困惑しており、無線でどうするべきか話している。

404小隊はどうだろうか?彼女達の中には電子戦のスペシャリストがいる、最後に確認した時は404はまだ整備室にいたはず、そこにいるかもしれない。

 

────3分ほど歩いて、整備室にたどり着く。

 

道中にも動いている人形に会う事が出来なかった。反逆小隊も倒れている……期待は出来るだろうか?

なんどか、クルーとすれ違うかやっぱり何があったかの確認で忙しそうにしていた。

 

「…だめか」

 

整備室のドアを開けると、404小隊の人形達もそのままの格好で動きを停止していた。

 

「これじゃあ、何が起きたか確かめようがないわね……あら?」

 

他の404の人形は気付く間もない感じで固まっていたが、UMP45は何かに気づいたらしく驚きの表情のまま固まっていた。

 

「この様子だと何かに気がついていたの?」

 

整備室の機能で何か調べられるだろうか?

機械のサーバーから非常用のキーボードを取り出して、タイピングでプログラムを介して直接武器が取り出せるというアナログな方法が必要だったが……できたのはどうにか武器を取り出すことができた、これだけだ。

自身の武器"M4A1"を触って眺めてみる…武器と繋がる感覚が走る。

幸い、烙印システムは機能しているらしい。

 

「カービン?答えて?」

 

自分の武器に宿ったカービンに話しかけても応答がない。

とりあえず、銃は持ち出せた。

次はアリア達に判断を仰ごうと思い、倉庫を出ようとしたら、扉が一人でに空いた。

 

「…う、うぅ…」

 

苦しむ声が聞こえてきたので襲撃されたと思い、M4は扉まで駆け寄り苦しむ声の主と遭遇した。

AK-12だ、確か彼女も電子戦人形だったか。

 

「AK-12…?何があったの?」

「M4…やられた…電子攻撃…」

 

AK-12が床に座り込む。

ガクガクと全身が震えている…一旦、AK-12を運ぼうとして触った瞬間────

 

「触わっちゃ────」

「熱っ────」

 

慌てて手を引っ込めるほど、AK-12が高音を発していた…まるで熱暴走だ。

 

「くっ…すごい数の電子攻撃を受けてる。脳が焼き切れそう……!」

 

なるほど、熱暴走寸前まで守りのプログラムを起動しているのか。

 

「発信源は?」

「潜水艦の……真上」

「分かった。始末してくる」

 

M4A1はすぐに潜水艦の真上に繋がる。ハッチを目指す。

 

<ルニシア、聞こえる?M16のOGASがここにいる人形たちのメンタルを焼き切ろうとしている、なんとか阻んでいるけどあっちの方のOGASの方が性能がいいみたい>

 

ダンデライオンからの通信が来た。

私はルニシアじゃなくて、M4A1かレイラよ?などと、抗議する時間はないのはダンデライオンの早口の説明を理解する。

通話を受けながら、M4はAK-12の素体を冷やすことができる冷蔵庫まで引っ張りドアを開けて冷気を浴びせる。

 

「AK-12が特定した。船の真上にいるらしい」

<浮上した時に乗っかったの?問題は私もこのままじゃ持たない…M16にグリフィンの人形共々嬲り殺しにあう…>

「分かった。なんとかする」

 

M4はアサルトライフルとエネルギー砲、そして自身の宝物であるFNX-45を持ち込んで、アリア達の所へ向かった。

 

────魚雷の圧力で引き剥がさないのか?

────ダメだ、浮上している以上意味がない!

 

船内の操舵室は取りついたM16をどうひき剥がすか協議される場になっていた。

 

「すぐに出ます。この振動はM16という鉄血人形が起こしています!」

 

アリア達の元にやってきたM4は自分が潜水艦から出て、M16をどうにかすると発言した。

 

「出ようとする為にはハッチを開く必要がある、外に出た瞬間に塹壕から頭を出した愚か者の様に蜂の巣にされ、そこから攻め込まれるわ。そうしたら、こっちの状況がさらに不利になるのよ?を危険に晒す危険な行為よ」

「ハッチは私一人です、あなた方は待ち構えればいい。死にに行くためにパデルスィキに来たわけじゃあないんでしょう?」

 

クルーがもM4の意見に顔を見合わせる、自分たちの船を自分達で守ろうとする意気込みは彼らにもある様だ。

 

「私なら確実にM16を倒せます。人形の戦いは人形同士で決着させても良いでしょう」

 

今度の発言はクルーの何人かを納得させた、そもそも鉄血はグリフィンの問題だ。鉄血の人形が取りついたということは、グリフィンがこの潜水艦に問題を持ち込んだとも受け取ることが出来る。

 

「艦長、どうします?」

 

アリアが潜水艦の指揮官である艦長に判断を仰いだ。

艦長は深く息を吸ってしかめた顔を落ち着かせた。

 

「────許可する。お前たちのケツを拭いてこい」

「ありがとうございます」

 

M4は艦長に敬礼をするとクルリと背を向けて、ハッチに向かった。

 

ハッチに向かうとすでに潜水艦のクルーたちは侵入されること警戒して、待ち伏せできるよう銃を構えていた。

 

「私が行きます。通してください」

「いや…でも、お前一人じゃ…」

 

グリフィンとは違いここのクルーは私の事を心配してくれる人もいる、そう考えることが出来、M4の表情が緩む。

 

「艦長の許可を得ています」

「そうか、キャプテンが…分かった」

 

クルーは艦長が許可した事なのならと納得すると端に寄り、道を譲ってくれた

 

「ありがとうございます」

「勝ってこいよ!」

 

梯子を登る時、さっきクルーが応援してくれた。M4はその応援に力強く頷くと勢いよくハッチを開ける。

開かれたハッチに弾丸が飛んでいく。弾丸を飛ばされたのは…

 

「M16っ!!」

 

────攻撃を受けた。

エネルギーを放てるガンケースを素早く前面に出し、即席の盾にする。

防御したお陰か、弾丸は体までは届かない。

どうにかして、体を潜水艦の外に出してゆっくりと外に出ようと試みる。しかし、そんな時間を与えてくれるほど、相手は甘くなかった。

 

「ああもう…」

 

反撃したいが、ガンケースのせいで撃とうにもすぐには手が出せない。

 

「クソッ!!」

 

被弾覚悟で、足の力だけで梯子を上り、最後の一段だと思われる場所で勢いよく飛び出した。

 

間一髪、攻撃を凌いだまま潜水艦の外に出ることが出来た、M16以外にも他の鉄血人形はいないか?確認のために前を見て銃を構えたその時─────

 

「……え?」

 

M4は思わず呆気に取られた声を上げてしまった。

 

「────!!」

 

M16が一直線で、こちらに向かってきたのだ。

M16がストックで殴り掛かり、急いで、ブレードを盾に突き立ててM16に備える。突き立てたブレードのレーザーがストックを融解させ、殴ろうとしたストックが逆に抉れた。

 

 

「…無駄よ、E.L.I.Dを殺すために作られた剣がプラスチックで押し通せるはずがない」

「ふん、あの男の武器なら何でも褒めるか?」

 

M4A1がM16と相対した。

M4A1が一瞬だけ視界を動かして、周りを見渡したが他に鉄血の人形の姿は見当たらない、やってきたのはM16一人だけだった。

 

「どうしてこんな事を!?」

「全てを終わらせるためだ。ようやく会えたな、ルニシア」

「あなたまで、その名前を使うわけ?」

 

面と向かい合った彼女はお互いに銃を向けながらジリジリと動き、様子を伺う殺伐とした状況の間にサンドイッチのハムの様に会話を挟んだ。

 

「本来の予定なら、もっと早く手を下したかったが…416に邪魔をされたよ」

「私が足止めを頼んだのよ。何も不思議はないわ」

 

そういうと、M16は苦虫をつぶしたような顔になった。相当、HK416に妨害されたのが頭に来たのが分かる。

 

「私も随分ミスを犯したものだ、だがここまで来たのならすべてを終わらなせなければならない。邪魔をするなら踏みつぶす」

 

「さっきから終わらせる終わらせると言ってるけど、何をどう終わらせたいのかしら?」

 

M4が問う。

 

「こんなことになったすべてだ、この結末は私たちが製造されたその時に決められたものだ」

「勝手に運命を決め付けられては困るのよ、みんなこれからの予定がある成し遂げたい未来だって。それは私にもあって、反乱軍の連中にもあったはず」

「だれにも、幅めないさ」

「決まっているからと言って、それを逃れるすべがないというのは早計じゃないかしら?でも…あなたはもともと頑固で、決め付けたことからなかなか離れることが出来ないところがあった。それによくよく思い出せば…言葉の節々にもマイナス思考を匂わせて────」

 

次の瞬間、激しい金属音が鳴り響く。弾丸が足元に破砕、飛び散った音だ

 

「ガキの理屈は終わりだ」

「…それでもかまわない、何かを選んで何かを捨てるだけの選択をして諦める人生を選ぶなら…私は全力ですべてを取りに行く、あなたが視線を下を向けるなら、私は…上を向くわ!」

 

M16から銃声が再び鳴って、M4はガンケースを盾にする激しくぶつかり合う。

 

「────!」

 

M4はガンケースを左手で押さえつけて盾にしながら、ライフルを構えるとガンケースの外側からM16を攻撃した。

だが、M16にそんな足掻きのような反撃は通用しない、M4の照準が向く前に攻撃を避けて、そこからM4の側面に回るとそのまま銃撃を再開する。

M4も側面に回られることは予想しており、あらかじめ自分が避けられるスペースをとっていた。

M16が側面を取ったと同時にM4は身体を捻るようにジャンプをして、あらかじめとっていたスペースに避け、そこからライフルで反撃する。

 

「無駄だ」

 

しかし、M16また銃の射線を軽々と避けてしまう。

 

「(私の挙動が読まれている?)」

 

明らかにM16はM4の行動を先読みして攻撃を避けて、こちらが嫌になる位置で攻撃を仕掛けている。

まるで自分の行動パターンを知っているかのような動きにM4は自分の胸騒ぎを感じた。

さらに、M16の攻撃は激しさを増していく、M16の狙いは完全にM4を捉えていた。

 

「(そういえば、ダンデライオンは強力な電子攻撃が来ていると言っていたわね。後、M16は頭のやつがどうだって…成る程、そういうことか)」

 

M4はこの不可解な先読みの答えに辿り着こうとしていた。

だが、その答えを確かめるには大きいリスクを負わなければならない。

────この状況下で、人形で動けるのはこの私だけだ…私が唯一、M16と戦える人形だ。

それに…負けるくらいなら、勝てるかもしれない方法に賭ける!

マガジンの弾薬が切れたのか、断続的な攻撃が一旦止む。M4はガンケースを直接、M16目掛けて投げつけた。

 

「────?」

 

M16は何故盾にガンケースを投げる必要があるのか疑問に思いつつも投げつけられたガンケースを避ける。

M4がライフルの引き金を引き、M16────に投げつけた、ガンケースを撃った。

 

ガンケースに当たった弾丸は跳弾して、M16の左脇腹を削った。

 

「────!?」

 

ダメージを負ったことにM16は驚いていた。

 

「何が起きた……?」

 

M4はニヤッとした笑みを浮かべる。

 

────成功だ。

M4が建てた仮説はM16に存在する、OGASがM4の微細な動きすらも読み取り次の行動を予想、そしてその予想を教えられたM16はOGASの言う通り安全なところに避ければ攻撃は当たらない。

人形の格闘システムも対象の動きを素早く汲み取り、それに対抗する最適解を編み出す。

それを射撃にも応用できるようにして、M16こちらの射線を切っていたんだろう。

だが、私が武器投げるという"行動"そのものは読めても、私が次何をしたいかという"思考"までは判断できなかった。

だから、私の跳弾の攻撃が当たったのだ…そして、攻撃は狙いの通り脇腹に当たっている。

 

「お得意のOGASも銃弾の物理法則までは教えてくれなかったようね。今、あなたの脇腹を抉ったわ。直接撃ち込まれたわけじゃないから効果に差異が出ると思うけど、体幹を次第に維持できなくなるわよ」

「ちっ……」

 

M16は思わず舌打ちをする。

 

「大人でも子供に舐められたら腹が立つのね。子供も同じよ、自分の目的や理想を大人に見下されたら腹が立つ」

「M4…おのれ…!」

 

M16が歯ぎしりする。

まだ、こっちに銃口が向いているが、もうさっきみたいに、いきなり殴りかかるなんていう芸当は出来ないだろう。

 

「やはり、お前は特別だな。生かしている意味もあったんだろう」

「……特別、またそれか」

 

M4A1はウンザリしたようだった。

 

「ああ、お前は特別な人形だ」

「潜水艦を襲ったのも特別だから?私がどう特別なの?教えてよ?」

「お前が知る必要はない」

「特別なんか関係ない。私はユーリを守るために姉さんを止める」

「あの男か……お前の価値もよく分かってない奴のために戦うのか?お前が命をかけるほどの価値もないのにお前は────」

「いい加減にしろ」

 

その時、M4A1の中に何かの限界を迎えて音がした。

そして、ライフルを発砲した。

 

「……?」

「私に何かやらせるときも特別、私に酷いことするときも特別、私に文句を言うときも特別、私を守るときも特別?……特別……!特別、特別……もう、うるさくてやってられないわわよ!」

 

突然、M4A1は声を荒げる。

今まで溜まっていたフラストレーションを爆発させていた。

 

ずっと、そうだ。

ペルシカが私を生み出したとき、「この子は特別」といって何が特別か教えてくれなかった。AR小隊もその特別の意味を聞いても知らず、ただ何が特別なのかわからないまま私を特別という理由の命令の元守っていた。

私たちを虐めたクメレンタとその部下もそうだ、私の何が特別なのか知らず、ただ特別という理由で私を妬み、私の大切にしていた恐竜のぬいぐるみを遊び半分でやぶき、姉妹をなぐり、あのクソ冷たい氷の池の中に放り込みもがく様子を笑っていた。

 

「でも、ユーリだけは違った。私がなんで特別なのか、そんなことを知らないのに私を鉄血から助けてくれた!私の家族を探す手伝いをしてくれた!……たくさんのお金を使って私の手助けをしてくれた!私を特別じゃなく……M4A1とただの…!M4A1として見てくれていたの!」

 

彼の背景を私は語れるほど知らない。

私はまだ彼のいいところしか見ていないのだと思う、きっとそうだろう。

それでも、彼が私を助け続けてくれた理由に私が特別や価値という理由を感じなかったことは本当だ。

私のために、そんなことをしてくれる彼が私にとって特別になる。

何度でも言う、私から彼をユーリを奪うなら、誰であろうと排除する!

 

「ガキの理屈は終わり?……ああそう!子供の理屈を掲げて何が悪い?」

 

M4がライフルの引き金を引いた。M16は回避行動を取る。

 

「消極的になって…考えを狭めるだけじゃ、何も変えられない!」

 

M16をM4の5.56ミリが執拗に追い立てる。一方的な展開になっているように見えているが、実際は違う。

 

「言うじゃないか…」

「私がユーリをどう思っていたか知っていたくせに、あんなバカなかと言えるアンタも大概よ」

 

M4の弾丸ではM16に鉄血に強化された素体に大きなダメージは与えられない。

一方、M16は素体だけではなく鉄血に強化された銃の一撃は当たりでもしたら、自分の素体を大きく壊しかねない。

M4は決定打に欠けている状況だった。

決定打になるのは────先ほど、自分が投げ付けたエネルギー砲だった。

まだ、残弾は1発だけ残っている。

 

「(なんとかして、あれを拾わないと…)」

「ガンケースを投げつけた事で私の予想を超えたのは評価してやるだが────」

 

エネルギー砲が自分の位置から離れたところに蹴飛ばされる。

 

「切り札を捨ててまで、やる事じゃなかったな」

 

流石に自分で渡した武器だ。

M4の頼りがあのエネルギー砲である事は理解しているのだろう。

 

「ガンケースが気になるか?」

 

M4が後ろを振り向くと、いつの間にか後ろに回り込んでいたM16と目が合う。

しまった────! 振り返って撃とうとしたが、遅かった。

彼女の腕が伸びてきて、M4の首を掴む。

 

「間に合って────」

 

M4がFNX-45の銃口をM16の腹に差し込み、引き金を引く。

発射された弾丸はM16の脇腹を削るが────M16はその攻撃にら臆せずそのまま投げ飛ばした。

 

「ぐぅ……」

「豆鉄砲の弾丸で何ができる?」

 

M16が倒れたM4を見下ろして言う、M4は立ち上がろうとするが、M16の蹴りが顔面に入り吹き飛ぶ。

 

「お前は思っていたよりも小さい存在だと自覚した方がいいな」

 

さらにガンケースが遠くなる。

こんな事なら、ヴェルークトからもらった装備を修理に出さないで装備し続けるべきだった。

後悔しても遅い、さて…あのガンケース、どうやって取るか。

 

「小さいから…何もするな?って言いたいの?」

 

…そうだ。いい手があった。M4はゆっくり起き上がる。

 

「冗談じゃない…!諦めて…たまるか…!」

 

正直、今の私には賭けの要素が強い作戦だが…というよりは今回の私は賭けしかしていない気がするこれで行こう。

 

「…これ以上の問答も不毛だな」

「ええ、M16姉さん。アンタはもうお呼びじゃない」

 

M16が接近する。

 

「────まだよっ!!」

 

M4が何かを取り出して、地面に放り投げた。

 

────次の瞬間、大量のスモークが焚かれてM16視界を遮った。

 

「馬鹿が」

 

スモークで何をするつもりか知らないが一旦、足を止めてサーモ機能を使用してM4の位置を割り出す。

やっぱりと言うべきか、M4は真っ直ぐにガンケースの方に走っている。

M16はM4に向かって引き金を引く。

 

「────む」

 

流石に読まれていたのか、弾丸を自身の銃で盾にして弾丸を防いだ。

ならば接近してするまでだ、スペック差もありすぐさまM4を捕まえようとした瞬間────M4が加速した。

 

「────!?出力解放か!」

「(まだ素体は修理されてない!エルダーブレインの時のようにはいかないけれど、一瞬だけなら!)」

 

M4がM16に素早く向き直り、M4A1のアンダーバレルに取り付けていた"M26 MASS"ショットガンが火を噴いた。

 

ショットガンの銃弾を受けたM16が少し後方に押し出される。

 

「これで、時間を稼ぐつもり…なんだ?」

 

M16は急速に自分の状態がおかし事に気づいた、なんとM16の身体は燃えていたのだ。

 

「ドラゴンブレスか…!」

 

────ドラゴンブレス弾。

竜の息吹の様に燃焼性の弾丸が着弾と同時に対象を燃焼させる。

 

「私は、私のやり方で、ユーリを…みんなを助けてみせる…!」

 

戦術人形に炎は危険だ、素体にかかるダメージもちろん炎による熱が内部の駆動系の動きを鈍らせる。

 

「私の相手は私で決める!」

「────おのれっ…!」

 

M16の速度が急速に落ちている、何としても排熱をするため口や鼻からありったけの熱を排出しようとする。

 

「────くそぅ!!」

 

熱を幾ら急いで排出してもガンケースを取ろうとするM4に追いつく事はできなかった。

M4がガンケースからグリップを展開、ガンケースが変形エネルギー砲に形が変わる。

 

「私の勝ちよ!!M16っ!!」

 

M4がエネルギー砲をこちらに向けて発射しようと構えた時だ。

海の向こうから強烈な光が発光した。

 

「なにっ…」

「嘘っ!?」

 

突然の出来事にM16、M4が目を見開く。

 

その光が一気に大きくなり…M16とM4を包んだ、M4も流石にこれは想定外だったらしく慌ててエネルギー砲を構える動作をやめてしまう。M4もすぐに離れようとしたが、間に合わなかった。

 

閃光に包まれる中……M4は意識が消えていく感覚がする…

光が収まったのと同時にM4は意識を取り戻した。

 

「…M16?」

 

しかし…先程までいたはずのM16の姿はない。

 

「き、きえた?…ダンデライオン、聞こえる?」

 

馬鹿な話だが、自分が他の世界に行ってしまったのではないかと心配して、ダンデライオンに通話をした。

 

<えぇ…M16の反応が消えたわ…倒したの?>

 

こんなやつでも話すことが出来たら嬉しいんだな。と思いつつ、ダンデライオンに倒したか?というと素直に倒したと言えるかは微妙な所だ。

 

「…分からない。M16は…消えたから」

<消えた?>

 

M4は正直に報告する事にした。案の定、ダンデライオンはどういう事かわからない様だった。

 

「ええ、突然…光が見えたと思ったら、M16が消えてて…その」

 

M4が口籠る。

光の中で何かの出来事があったのだろうか?

 

「────その…消えたの」

<どういう事?>

「ごめんなさい。私にも…理解が追いつかない事だから」

<そう…>

 

とダンデライオンは短く答えた。

 

「ともかく。…潜水艦に戻るわね。人形達は?」

<M16がいなくなったからか…止まっていた人形達が一斉に動き出したわ、周りは何が起きたか分かってない様で少し混乱気味よ。……ちょっと、まって。トラブルが起きたわ>

「何があったの?」

 

ダンデライオンはしばらく沈黙して、こう答えた。

 

<AK-12が鉄血の兵士と一緒に倒れているのが見つかったらしいの>

 

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