魔法少女育成計画JACKERS   作:皇緋那

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まほいく12周年(+1日)、おめでとうございます!!!


15.敵地の真ん中でソロプレイを

 ◇シャドウゲール

 

「持ってきたんだ。これ」

 

 監禁部屋にいきなり現れたプリンセス・オクターヴは、シャドウゲールにとって待望の機械を持ち込んできた。ちょっと昔のゲーム機だ。シャドウゲールが魔法少女になるよりも前くらいに流行っていた代物ではなかろうか。

 

「なぜ……ゲーム機を?」

「姫様が戻ってくるまで、やることなくって。それに、せっかくだから友達になりたいな」

 

 なぜその手段がちょっと昔のゲーム機なのかはわからず終いだった。

 

 魔法の電源ユニットらしい機器とテレビを設置、色々あるケーブルを繋いで、ようやく起動。画面がついてからしばらくは、ぎこちないリモコン操作でしばし苦戦していた。見かねて代わりに初期設定をしてあげる。

 

「あっ、ありがとう!」

「いえいえ」

「これ触るの初めてで……」

 

 当時は買ってもらえなかったのだろうか。要望が通らない家は通らないだろう。魚山護にも諦めの歴史がある。

 オクターヴは続いて、何個かのゲームソフトを取り出して広げた。全部、アニメ化魔法少女のオールスター系作品だ。こういうオールスター系は色々なゲームジャンルがあるようで、リズムゲーム、格闘ゲーム、RPG、戦略シミュレーション、果てには恋愛シミュレーションまでもがある。古今東西の──実は魔法の国が関わっている──魔法少女ものが集まる夢のシリーズだ。実際にプレイはしたことがない。まずはリズムゲームが選ばれ、ディスクが入れられると画面上にタイトルロゴが出てくる。

 

『マジカルオールスターズ! みんなでダンス!』

 

 複数のアニメ版魔法少女の声が重なったタイトルコールの後、表示される画面。ちょっと昔のゲームなので、面子も当時の面子で、中央にいる当時のキューティーヒーラーもシャドウゲールには懐かしいなという印象が強い。

 

 ゲームを進行し、始まったリズムゲームは全身を使うことを推奨されていた。画面の中で踊る魔法少女たちに合わせて、自分もそれなりに踊り始める。ダンスなんて体育の授業でやらされて以来だ。女児向けの簡単な振りで助かった。魔法少女の身体能力なら、簡単についていける。

 

 ダンスは続けながらシャドウゲールは考える。どうにかしてこのゲーム機をシャドウゲールが改造する……という流れに持っていきたいのだが。それをするには、いっそのこと一度壊したふりをする、だとかそういう一芝居が必要だ。プフレなら簡単にやってみせるだろう。

 隣では、オクターヴは目を輝かせ、ひよこちゃんの主題歌に合わせて踊っている。どちらかといえばゲーム内容に集中していて、彼女には隙がある。罪悪感は考えないなら、踊りを失敗した振りをして攻撃を仕掛ける、なんてこともできるだろう。

 

 だがそれを実行に移せなかったのは、実は罪悪感よりも、少し離れたところで、じっとこちらを見守っているだけの、プリンセス・ランタンの存在だった。下手なことをすればあの光線が襲ってくるだろう。ふいに彼女の様子を窺うと、目が合った。ビクッとして振り付けを外し、画面に『Miss』の表示が出ていた。

 

「あっ」

「大丈夫! そういうこともあるよね」

 

 オクターヴの気遣いが沁みる。さすがにそれからは特に大きなミスをすることもなく、画面の中の魔法少女たちに合わせ、せめてハイスコアを目指した。さすがに魔法少女の身体能力、結果はほぼパーフェクト。オクターヴは満足そうに、次のゲームを取り出す。

 

 選ばれたのは格闘ゲームだった。こちらもオールスターズもので、多数の魔法少女を使って戦うことができる。戦わせることにはあまりテンションが上がっていないオクターヴみたいだったが、とにかくやってみる。

 

 シャドウゲールは素直に、初代キューティーヒーラーであるところのキューティーオニキスを選ぶ。クセがない、扱いやすいキャラクターだと書いてあった。初めてプレイするならその方がいいだろう。

 

 対するオクターヴが選んだのはマジカルデイジーだった。

 ──知っている顔だけに、ゲームの中で楽しそうにしているのを見ると、悲しい気持ちになる。かつて巻き込まれた『ゲーム』のことを思い返し、首を振って、振り払った。今は辛い思い出に構っている暇はない。

 

「いくよ!」

 

 互いの決定ボタンで試合が始まった。まずはお互いにリスペクトし合う、あくまでこれはトレーニングであるということを念頭に置くような掛け合いが入り、赤文字の『FIGHT』で制限時間のカウントが始まる。手探りで操作しながら、パンチやキックを繰り出す。

 魔法少女同士が殴り合ったりする光景、子供時代の護ならショッキングだったかもしれない。今となってはもう見慣れて、どころか、殴り合いに参加させられたことすらあるわけで。画面の中でデイジーが放ってくる光線をひたすらに避けながら、攻撃技のボタンを連打する。

 

「わっ! わわっ! えいっ!」

 

 オクターヴは操作の度に声を出し、揺れながらやっている。これがレースゲームだったらハンドルにつられるんだろう。その可愛らしい声も相俟って、デイジーの声がオクターヴになっているかのよう。

 

「あっ! ちょっと! きゃあっ!」

 

 オニキスの連続コンボが決まり、デイジーの体力がどんどん削られていく。加減をするつもりはない。必死に跳躍を繰り返してどうにか立て直そうとするのを好機と見て、さらに追撃を繰り返す。カチカチというコントローラーの音がひたすら響き、オクターヴからはもどかしそうな呻き声がする。

 しかしその時、体力の下に虹色に光るゲージがあったのを見ていなかった。複数のボタンを同時に押す指示が出ていたのに彼女は気がついて、思い切って全部押した。その瞬間、演出が入る。マジカルデイジーのあのOPが流れ始め、華麗なデイジーポーズ、からの掛け声。

 

『デイジー、ビィームッ!』

 

 実際に魔法少女に向けて使ったらとんでもないことになる魔法だが、これはゲームだ。消滅ではなく大ダメージで済む。いや、ただでは済んでいないのは同じことだった。シャドウゲールが操作するキューティーオニキスが吹っ飛ばされ、決着がつく。オクターヴの勝利である。

 

「やったー! 勝った! デイジーさんありがとう!」

 

 オクターヴは嬉しそうで、突如逆転されたことへの小さな不満はまあいいかと思えた。そしてそのまま何戦かして、キューティーベラドンナを使用して彼女から1勝をもぎ取り、協力モードでボスのクィーンヒュドラと対戦したり、色々と遊んでいた──その途中だった。

 

「……あれ?」

 

 協力モードの途中、ダークキューティー戦で画面内に多量の影が展開された後、動作が重くなったかと思った時には、もうゲームは止まっていた。おかしいなあと呟き、ゲーム機を軽く叩くオクターヴ。一行に動かない画面。ここまで頑張ったのだが、仕方なくリセットするしかないらしい。

 

 ──いや。これはチャンスだ。シャドウゲールは気がついた瞬間、首を傾げているオクターヴの肩を叩き、代わる。

 

「ここは任せてくれませんか。実は私の魔法、機械を直せるんですよ」

「えっ! すごい! じゃあこれも直せるの?」

 

 コスチューム付属のレンチとハサミを構え、頷いた。機構は理解していなくてもいい。ゲーム機に、せめてこの場所がわかるよう、プフレやファルに宛てた発信機能を追加する。カバーを外して工具を突き立て、オクターヴやランタンに見つめられるというばれたら終わりの状況で、改造に集中する。

 オクターヴには悪いが、この好機を逃すわけにはいかない。苦戦しているふりをして時間を稼ぎ、思いつく限りの改造を施していく。ゲーム機が希望だった。

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