魔法少女育成計画JACKERS   作:皇緋那

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5.残された者たち

 ◇プリンセス・デリュージ

 

 傷ついた体を引きずって、事件現場で見かけた見知らぬ魔法少女を追って、辿り着いたのはピュアエレメンツの研究所と似たような施設だった。隙を見てセキュリティの機械を凍らせて壊し、忍び込んだらひたすらに走る。哨戒しているシャッフリンに見つかりそうになり、ダクトの中に飛び込み、アニメの世界のように隠れて動く。

 

 あの時。魔王パムとグリムハートの戦闘によって研究所が破壊された直後、デリュージは目撃した。気を失いボロボロになったテンペスト、インフェルノ、クェイク、皆がシャッフリンに連れ去られていく光景を、だ。デリュージは瓦礫の中から手を伸ばして、届くはずもなく、動けるようになり、そして追跡できる相手が来る時を待った。

 魔法の端末は余波で壊れて使い物にならなかった。チェリーはあの場にはいなかった。彼女は魔王パムが守っていたはず。無事は信じるしかない。今デリュージにできること、すべきことは、仲間を救うこと。だから何よりも、追跡と奪還を優先する。

 

 ダクトの中を滑り降り、その途中で辿り着いたのは廃棄処分場のような部屋だった。金属片やよくわからない廃棄物で埋め尽くされた空間だ。異臭もあって長居はしたくない。どうにかしてここから、仲間達が囚われているだろう場所を見つけださなければ。外壁を見回し、とにかくまた別の部屋に移動しようとして、呼ぶ声がした。

 

「そこの魔法少女! 待つぽん!」

 

 振り向いて、音のする方に移動する。誰かいるのか。人を呼ばれる前にどうにかするか、思考を回して出処を探す。すると多数の空き瓶や空き缶の中に、魔法の端末が放られていた。ここからに違いないと拾い上げると、立体映像で白と黒の、金魚みたいなものが映し出される。

 

「わっ、何、これ」

「その様子、オスク派の魔法少女じゃなさそうぽん。追われる身なら拾ってほしいぽん」

 

 一瞬驚いたが、敵ではないらしい。彼(?)は電子妖精ファルと名乗った。魔法の端末の機能をフルに使い、魔法少女を手助けする、というような存在だという。魔法少女にマスコットキャラクターは付き物だ。ピュアエレメンツにもチェリーにもついてはいなかったが、本当にいるらしい。

 

「どうして棄てられてるの?」

「ファルのマスターが……」

 

 彼の持ち主である魔法少女スノーホワイトが、この研究所で捕まり、連中による何かの魔法的処置を施された。ファルは抵抗するも電子妖精では手も足も出ず──実際手も足もない──端末ごとここに放り込まれた。スノーホワイトを取り戻すため協力してほしい……という。

 

「わかった」

 

 即答する。ピュアエレメンツの他にも捕まっている者がいる。目的は同じ、囚われの大事な人を助けることだ。今となってはデリュージも外部への連絡手段を持たない孤立無援状態。ファルを連れていかない選択肢はない。

 

「助かるぽん。そうと決まったらまずはこのゴミ箱から出るぽん」

「見つからないようにしなきゃ」

「任せるぽん」

 

 ファルはスノーホワイトの前のマスターによって、一般的な電子妖精よりも高性能……らしい。索敵機能を用いて周囲の部屋を分析し、魔法少女の反応が最も少ない部屋を目指す。デリュージは懐に魔法の端末を入れ、ここまで来たのとは別のダクトに飛び込んだ。そして狭い中を這い続け、ファルの案内を受けながら目標地点に到達。タイミングを見計らい、出口につけられた蓋をそっと外し、室内にいたシャッフリンを襲撃する。スートはダイヤ、数字は4。戦闘能力で言えば不意打ちならどうにかなる。

 悲鳴を上げさせる間もなく組み付き押さえつけ、槍を突き刺した。氷の力がシャッフリンを凍てつかせ、氷像に変えた。研究所で殺されかけた記憶がフラッシュバックしたおかげで、躊躇はなかった。

 部屋の中にはモニターがいくつも並んでいる。監視カメラをはじめとしたセキュリティの制御室といったところか。ここを破壊してしまえば、館内の行動はかなり楽になる、がその前に破壊行為が見つかるリスクも大きい。

 

「ファルに任せて貰えないかぽん」

 

 そう言われて、魔法の端末を機器に近づけた。浮かび上がった映像のファルはその尻尾部分を振ってキラキラした何かを散らしている。何をしているのだろう。しばらく見守っていると、新しくIDが登録され、モニターの表示がちょっと変わった。これはつまり、ハッキングしたということなのか。

 

「パスワード破り成功ぽん。デリュージのことを管理者リストに入れておいたぽん」

「凄い。これでこの一帯は監視カメラとかも気にしなくていいってこと?」

「そうなるぽん」

 

 自分で特別製というだけはある。彼に出会えたのは幸運だ。試しにデリュージがこのモニターの前に座り、かつて研究所で操作していたのと同じようにやってみると、ちゃんと操作を受け付けている。警告も何も起きないまま、モニターの切り替えも自在にできた。館内には、まだ侵入者を警戒するシャッフリンが複数名いるようだが、近くのエリアにはいない。

 

「……!」

 

 各部に配置されたモニターを見ていると、目に止まったのは複数名の魔法少女。しかもよく見れば、髪色や衣装は大きく異なるものの、なんとなく面影のある知っている顔だ。

 

「インフェルノ、無事だったんだ……」

 

 あの鎧と大剣を追加したような格好は何なのだろう。パーツが追加されても大事な部分は全然鎧ではない。ガーターベルトのせいで漂う下着感は変わらないままだ。

 

「プリンセス・ナイトがどうかしたぽん?」

「……ナイト? 誰?」

「あの魔法少女ぽん。自分でそう言っていたぽん」

「でも……インフェルノだよ。間違いない」

 

 仲間の顔を見間違えるはずはない。確かに騎士っぽい、が。

 

「……とにかく。もう少しこの部屋で……」

 

 少なくともインフェルノが無事だったとわかったおかげか、これまでの疲れがどっと来て、椅子の上で力が抜けた。いくら魔法少女といえども、限界はある。

 

「休める時に休むべきぽん」

 

 インフェルノがモニターの中で知らない魔法少女たちと歩いているのを見て、それが囚われの身だという雰囲気にないことを訝しく思いながらも、疲れきったデリュージの口には出なかった。

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