なにやら息子が鮮烈(ヴィヴィッド)しまくってる女の子を拾って「私は恋人ですから!」と叫ばれている件。お母さん、ちょっと分からないわ 作:SUN'S
リンジ・ミヤザワの継承する古流武術〈灘神影流〉三種の剛脚が存在する。
リンジの母親──セイコ・ミヤザワは大地を震わせながら野を駆ける虎の如き力強さを誇るという〝
リンジの脚質に限り無く近いけれど。別物の縦横無尽に天を往く龍の如きしなやかさを誇るという〝
リンジの剛脚に類ずるが、これも龍腿と同じく似て非なる風を切る様に空を飛ぶ隼の如き疾さと軽やかさを誇るという〝
そして〈灘神影流〉と始祖を同じくする〈幽玄灘影流〉の非常に稀有ながらも〈灘神影流〉の三種の剛脚の「しなやかさ」「軽やかさ」「力強さ」の全ての性質を兼ね備える〝
しかし、リンジ・ミヤザワの剛脚は、この四種のどれにも該当しない。謂わば第五の秘脚、敢えて名付けるならば四神の中央に座する最強の幻獣『麒麟』の名を持つ〝
「私の子供なのは間違いないのに。どうして、虎腿じゃないのかしら?」と、そうセイコは考える。ただ、その独り言を聞いていたリンジとしては自分の出生が物凄く気になってしまう。
「しゃあっ!」
びゅおっ、と風切り音が室内に反響する。
リンジはなんとなく上段蹴りを放つ。だが、彼自身もハッキリと分かるほど彼の剛脚の破壊力は凄まじく、軽く脚を振るうだけで襖は吹き飛び、障子は骨組み諸とも粉々に裂ける、
「アホなことすな!」
「あでっ」
ごつんっ、と頭を叩かれる。
「あと〝鷹鎌脚〟なんて、どこで覚えたの?」
「ひ、秘伝書をね、あはっ」
「秘伝書を勝手に読むな、バカ!!」
そうセイコは怒鳴り付けるとリンジはマンションの窓を突き破って逃げ出す。パイプ管を掴み、ベランダの手摺を蹴り、軽やかな身のこなしで地面に着地し、リンジはゆっくりと母親の自宅を見上げる。
それは、見事な踵落とし───。
「こんのバカタレがっ!!」
べぎゃっ、と鈍い音がしたかと思った瞬間、リンジの頭部は地面にぶつかる寸前だった。ほんの一瞬、僅か0コンマ数秒間、タフさを売りにしている筈のリンジは間違いなく失神していた。
「なにすんねん、クソババァ!」
「だれがクソババァやってぇ!!」
「あがぁっ」
突然の攻撃に怒りを顕にするリンジだったが、クソババァ呼ばわりされたセイコの強烈なミドルキックを脇腹に受け、真横に吹き飛ぶ。
「な、なんで、こんなことすんねっ」
「お前はさっき襖と障子壊したやろ?」
「ウスッ」
それなら仕方ないとリンジは納得した。
壊したら弁償するのは当たり前の事である。
〈セイコ・ミヤザワ〉
穏やかなる虎
リンジ・ミヤザワの母親。銀行員。基本的にリンジのやりたいことは肯定し、誤っていれば諭すという方針だが、悪いことをすればキツいお仕置きを加える。最近は息子の活躍で公に成りつつある〈灘神影流〉の代わりに、一般向けに調整した安心安全を心掛けた〈灘心陽流〉を子供達に教えている。