なにやら息子が鮮烈(ヴィヴィッド)しまくってる女の子を拾って「私は恋人ですから!」と叫ばれている件。お母さん、ちょっと分からないわ   作:SUN'S

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OTON外伝パロです。


灘を継ぐ者 外伝 OKAN

ミッドチルダ首都、クラナガン廃材置場。

 

セイコ・ミヤザワは『今晩午前0時、クラナガン廃材置場にて貴殿を待つ』という使い古しの時代錯誤とさえ思える果たし状の差出人を静かに座禅を組み、心穏やかに待っていた。

 

「すまない。遅れたか」

 

そうセイコに訊ねる人影が一つ。

 

今のセイコと同じくスーツを着た鮮やかなピンク色の長髪を一房に束ね、凛々しい風貌と刀剣を彷彿とさせる鋭い眼光の特徴的な女性──シグナムに向かって歩く。

 

「どの様なご用件で?」

 

「少し変わった噂を聞いたので確かめるためにな」

 

そう問い掛けるセイコに対し、シグナムは誤魔化すように言葉を区切り、獰猛な笑みを浮かべながら腰に佩いていた片刃の剣を抜刀───。もはや聞く耳を持たないと云わんばかりにシグナムは殺気を発し、セイコを睨む。

 

「ヴォルケンリッター、シグナムだ」

 

「灘神影流当主、セイコ・ミヤザワです」

 

二人が一言だけ挨拶を交わした瞬間、シグナムのセイコよりも鋭く疾く振るった筈の剣の腹を、セイコは剣よりも疾く殴り付けていた。

 

ぎいぃんっ、と金属の音が真夜中のクラナガンに響き、「やはり弾くか、私の剣を!」とシグナムは笑い、剣を振り下ろし、刀身を翻し、即座に斬り上げを放つ。

 

僅かに半身を退いて斬撃を躱し、セイコはシグナムの腹部に向かって正拳を打つ。どごぉっ、と内臓を押し潰す様な強烈無比な一撃がシグナムの身体を廃材置場の壁際まで追いやる。

 

「シグナムさん、教えて下さい。どうして、私に果たし状を送ってきたんです」

 

「ハッ。そんなもの決まっているだろう?ミッドチルダの猛者の誰もが『最強』と認める貴女と、セイコ・ミヤザワと戦うためだ!」

 

そうシグナムは吼える。

 

「シイィッ!!」

 

「ぐっ、ちぇりゃあっ!!」

 

ひゅおっ、と空気を切り裂く斬撃を紙一重で避け、否、僅かに頬肉を斬られながら、セイコは上段蹴りを打ち放つ。が、剣の柄を盾代わりに受け止められ、捨て身の突進にすら思える体当たりでシグナムの間合いの外へと弾かれる。

 

「ハッ、ハハッ、ハハハハハッ!良いな、やはり強者との戦いは心が躍る!!」

 

ゆっくりと剣を正眼に構えるシグナムに対し、セイコは頬を伝う血をスーツの袖で拭い取り、襟と首元を締め付けていたネクタイを解く。

 

「灘神影流の妙技、特とお見せします」

 

ビシィッ、とネクタイの両端を掴み、構える。

 

「おおっ!」

 

燃え盛る炎に如く雄叫びを上げ、シグナムはセイコに向かって駆け抜け、彼女の剣の間合いに入った次の瞬間、シグナムの顔面に激しい痛みが迸る。

 

「があっ、な、なんだっ」

 

「灘神影流〝蛇鞭〟。私の振るう、このネクタイは貴女の剣に匹敵する!」

 

ひゅんっ、ひゅんっ、と音を立てて蛇の如くセイコのネクタイが空を舞う。セイコの操る〈灘神影流〉を以てすれば身近な物すら凶器と化す───。

 

「しゃあっ!!」

 

「くっ、ううっ」

 

セイコの振るい巧みに操られるネクタイは変幻自在の軌道を描き、剣の間合いなら絶対的な優位を確立していたシグナムを翻弄していく。なにより街灯があるとはいえ黒色のネクタイを目視できるほどシグナムは夜目に長けている訳ではない。

 

「セヤァッ!!」

 

「あぐっ」

 

そう夜目に長けている訳ではない、それはセイコもまた同様である。

 

ほんの一瞬、シグナムの振るった剣に街灯の光が反射し、目眩ましの様にセイコの視界を遮ってしまった一瞬の出来事、瞬きにすら等しい一瞬に、シグナムの剣がセイコの脇腹を斬った。

 

「…ッ、今のは無効だ。すまない」

 

偶然の一撃にシグナムは不満と謝罪を告げる。

 

「問題ないですよ、シグナムさんッ」

 

そう返しながらセイコはスーツの片袖を裂き、ネクタイと合わせて腹部を一周するように締め付け、ギュウゥッ、と傷口を圧迫し、これ以上の出血を抑える。

 

「どうぞ」

 

「ミヤザワ殿、感謝する!」

 

シグナムは深く頭を下げると直ぐに剣を構え直し、セイコへと切っ先を差し出すように刺突つきを放つ。その刃が鳩尾、水月を突き貫こうとした瞬間───。

 

「(なにっ、剣の軌道が変わるだと!?バカなッ、こんな事が出来るはずがっ!)」

 

セイコの胴体を刀身が滑り抜け、シグナムの顔面を柔らかな女人の手とは思えぬ無骨に鍛え上げられた拳がめり込み、シグナムの身体が海老反りになり、真後ろに向かって、一回、二回、と地面を跳ねるようにバウンドを繰り返す。

 

「今のが噂に名高き灘神影流の〝弾丸すべり〟か」

 

「よく御存知ですね。シグナムさん」

 

「仕事柄、そういう話を聞くことが多くてな」

 

シグナムは称賛するようにセイコに語り掛けつつ、彼女の強打でひしゃげた鼻の骨を無理やり矯正し、片方の鼻を抑えて鼻孔に溜まっていた鼻血を噴き出す。

 

「ちゃあっ!!」

 

ビリビリと肌を貫く様な裂帛の咆哮を上げ、セイコはシグナムの間合いに踏み込む。びゅおっ、ぶおぉんっ、と尋常ならざる風切り音を発する拳打をシグナムは紙一重で防ぐ。だが、セイコの放った右の上段正拳突きによって彼女の頭部は激しく後ろに跳ね上がる。

 

否、少し大袈裟にシグナムはセイコの拳に突き抜ける方向に顔を背け───首ひねりスリッピング・アウェーの要領でセイコの防御不能とすら思える剛打を回避したのだ。

 

「ハハッ、避けてこれか!」

 

「くっ」

 

ビキビキと筋肉の断裂した痛みを訴える頚に片手を当てつつ、シグナムは切っ先を突き付けて、己の間合いに踏み込もうとするセイコに牽制を与え続ける。

 

「ミヤザワ殿。今度は私の剣技を見せよう…!」

 

そう宣言したシグナムは剣を上段に掲げ、ジリジリと歩幅を拡げるように腰を落とし、荒々しい剣気を静めて優美に構える。

 

「受けるが良い。我が〝紫電一閃〟をっ!!」

 

タンッ、と地面を蹴り弾むように正面へと跳ねながらシグナムはセイコの間合いに容易く踏み込んだ瞬間、セイコの身体が真っ二つに両断される。

 

「はうっ!?」

 

だが、それはセイコの見た幻覚───。

 

いや、このままシグナムの言う〝紫電一閃〟を受けてしまえば、セイコの肉体は幻覚と同様に切り裂かれ、瑞々しい赤黒い臓物を撒き散らすことになるだろう。

 

「イヤァッ!!〝紫電一閃〟っ!!」

 

シグナムが雄叫びを発し、飛び込むと同時にセイコも走り出す。しかし、僅かにシグナムの振り下ろした剣の方が速くセイコに直撃すると。そう彼女は「勝った!」と確信した次の瞬間、セイコは更に一歩深く踏み込んだ。

 

「ちゅりゃあぁっ!!!」

 

セイコが挟み込む様に放った左右の掌低はシグナムの剣の刀身を意図も容易く砕き、セイコは交差した腕を引き戻す動作で、ガコンッ、と顎を揺らした。

 

「あっ、あう、あがっ」

 

どしゃり、とシグナムは倒れ伏す。

 

「(脳震盪っ。まずい、反撃を、間に合わないッ)」

 

「勝負ありです」

 

そう言ってセイコは脳震盪を起こし、グラグラと身体を揺さぶり続けているシグナムの身体を抱き締め、未だ戦おうとする彼女を制止する。

 

「つぎ、は、まけっ、ないっっ」

 

「はい。楽しみにしています」

 

シグナムの言葉に頷き、セイコはその場を去る。

 

 

 

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