なにやら息子が鮮烈(ヴィヴィッド)しまくってる女の子を拾って「私は恋人ですから!」と叫ばれている件。お母さん、ちょっと分からないわ 作:SUN'S
ミッドチルダ首都、クラナガン近辺。
「おはようございます。リンジさん」
そうアインハルトはぐっすりと寝ていたリンジに向かって話しかける。何故、彼女がリンジの部屋にごく当たり前のように入室しているのか。
その答えは合鍵である。
決して無断で作った訳ではない。むしろアインハルトは学校に登校し、放課後の練習を終えれば直ぐにミヤザワ宅に出向き、彼の母親とともにリンジのスパーリングを手伝っているのだ。
あまりにも多忙すぎるため彼の母親がアインハルトに合鍵を与えて、ふと気が付けばマンションの真横に新しい部屋を借りているというのが真実なのだ。
「イングヴァルト。顔が近い」
「はい。チューが出来そうです」
「俺はロリコンじゃねえ…」
「どんと来いです」
ポフンッ、と胸を叩くアインハルトに溜め息を吐きつつ、リンジは彼女を部屋の外に追い出して、いそいそと普段着に着替える。胸元や袖には彼のトレードマークである『猛人注意』のロゴが入っている。
「もう大丈夫ですか?」
「ダメって言っても来るんだろ?」
「その通りです」
スパーンッ!と襖を豪快に開けた彼女は意気揚々と再び部屋に侵入し、リンジが逃げないように手を握りながらリビングに連れていく。
アインハルトは感情の出にくい顔をリンジに近づけ、じーーーっと彼の食事する瞬間を眺める。これといった面白味はないと彼自身は思っているが、アインハルトにとっては面白いもののようだ。
「そういえば予選通過したんだってな」
モグモグと卵焼きを咀嚼しながらリンジは呟く。すると彼女は「はい。それなりに楽しめる相手と戦えました。次はリンジさんも応援に来てくださいね」と言って、アインハルトは嬉しそうに笑う。
「まあ、気が向いたらな」
そうリンジは言葉を返す。
もっともリンジの意思など関係なく否が応でも応援には駆けつけるし。なんならセコンドにつかなくてはいけなくなるかもしれない事を彼は知らない。
「ところで、イングヴァルト」
「なんですか?」
「お前は食べないのか?」
「…………」
ふいっと顔を逸らすアインハルトにリンジは訝しげな視線を向けつつ、ゆっくりと自分の食べている料理を見下ろす。
ホントに食べて良いのか?と彼は警戒しながら、再び彼女を見れば小さな声で「最近、食べすぎまして」と恥ずかしそうに呟いた。
「…なんか、すまん…」
「い、いえ、節度を持てれば良かったのですが。お義母様の作るご飯が美味しくて、いつもより食事のペースが進んでしまったんです」
なるほど、おかんのせいかと即座に理解したリンジは全ての責任を母親に擦り付けた。