なにやら息子が鮮烈(ヴィヴィッド)しまくってる女の子を拾って「私は恋人ですから!」と叫ばれている件。お母さん、ちょっと分からないわ   作:SUN'S

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またしても行き倒れの黒ジャージを拾ったら「お礼にスパー相手になったるで!」と言い出してきた。もう、お母さんはハーレムだろうと構わないわよ。

ミッドチルダ首都、クラナガン郊外。

 

リンジはまたしても行き倒れていたジークリンデ・エレミアの「スパー相手になったるで?」という言葉に溜め息を吐きそうになる。

 

彼の周りにいる女の子の九割近くは格闘技に興味を示し、あるいは格闘技者として活躍している者ばかり。その中でもジークリンデはリンジに並びうる強者なのだ。もっとも彼女が行き倒れてなければ、彼だって喜んでスパー相手を頼んでいただろう。

 

「お前は栄養失調やろが」

 

「うっ。そうやったわ」

 

「あと俺は女の子を殴るんは好きやない」

 

「好きやったらヤバいヤツやん」

 

どういう意味だよ、とそうリンジは聞き返すもジークリンデは視線を逸らして答えるつもりはないと意思表示を行いつつ、彼が諦めるのを待つ。

 

「まあ、別にええけど」

 

「ん」

 

「んじゃま、スパーするぞ」

 

「うん、任せといて!(ウチ)がリンジ君の事を絶対にボコボコにしてあげる!」

 

ジークリンデは嬉々として。

 

あまりにもとんでもない発言をするが、それなりに彼女と交流を持つようになったリンジにとって、この程度の発言など受け流せるほど当たり前のことになってしまっていた。

 

「それじゃあ、行くよォ…!」

 

アップライトに構えたジークリンデは素早い踏み込みと同時にリンジの胸部に向かって、強烈な右ストレートを振り抜く。今まで彼女の戦ってきた選手の七割強は、この一撃で吹き飛ばされ、意識を失いKO負けしている。

 

「えげつないパンチすぎるわ」

 

「あぐっ!?」

 

そう言い返すリンジはガッチリと脇腹と左腕を巧みに利用し、ジークリンデの右腕を押さえつけるように肘関節をねじり上げて固定する。

 

ビキビキッ、と靭帯の伸びる感覚とイビツに曲がり掛けている腕に冷や汗を掻くジークリンデだが、平手に揃えた左手を素早くリンジの顔面を掠するように振るい、彼の関節技を何とか抜け出す。

 

「フッ、フフッ、片手で関節を極めるって。どんだけスゴいねん、リンジ君」

 

「お前も目突きのふりして膝蹴りはすげえよ」とリンジはシャツを捲り、ジークリンデによって刻まれた赤黒い──内出血を起こしているのかと思えるほど凄惨な打撲痕を彼女にさらけ出す。

 

そう、ジークリンデは〝目突き〟を無我夢中で放った訳ではなく。リンジの視界を遮り、それと同時に彼のがら空きになった右の脇腹に目掛けて膝蹴りを打ち込み、彼の関節を解いているのだ。

 

「今度は俺の灘神影流を見せたる!」

 

ダンッ、と地面を跳ねるように駆け出す。

 

「わ、わわわっ!?」

 

確実に人体の急所を狙った打撃をギリギリで捌き続けるジークリンデだったが、いきなりリンジの振るっていた拳が見えなくなる(・・・・・・・・)という怪奇現象に驚いた瞬間、彼女は真後ろに向かって吹き飛ぶ。

 

「み、見えへん拳…魔法?」

 

ジークリンデの驚愕と困惑の混ざった声が響く。

 

「アホ。コレも歴とした武術や」

 

彼女の言葉に反論しながらリンジは語る。

 

ミッドチルダに生きている〈灘神影流〉の血族に於いて最も獰猛で危険な生物──〝怪物を超えた怪物〟と呼ばれる男、キリュウ・ミヤザワの得意とする不可視の打撃〝霞突き〟について。

 

「はえぇ…」

 

もっおもジークリンデは彼の言う人物の強さをあまり想像出来ていないのか。ぼんやりとリンジが成長して、ヤンチャしている姿を想像している始末だ。

 

「それで、まだやるか?」

 

「当たり前やろ、リンジ君」

 

そうて、二人は拳を構える。

 

 




〈キリュウ・ミヤザワ〉

怪物を超えた怪物

セイコの兄。ミッドチルダに生きる裏側の人間の最も恐れ警戒している人物。趣味で莫大な富を築き、娯楽の様に他者を踏みにじり、今もミッドチルダの裏側で生き続けている。


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