なにやら息子が鮮烈(ヴィヴィッド)しまくってる女の子を拾って「私は恋人ですから!」と叫ばれている件。お母さん、ちょっと分からないわ 作:SUN'S
ミッドチルダ首都、インターミドル地区予選会場。
アインハルト・ストラトスは試合に向けて、彼女は自身の
『ブルーコーナー、本大会初出場。ベルカ古流武術〝
ビリビリと肌に刺激を感じるほど濃密な殺気を放って、悠然と会場の中央に用意されたリングに三人のセコンドを引き連れて歩み寄る黒衣の女。
おそらく彼女がアインハルトの対戦相手だ。
『レッドコーナー、インターミドル五回出場、そして五回全て都市本戦出場経験者。阿修羅の異名を持つ、ヒカル・クロダ!』と高らかに、そうアナウンサーは叫ぶ。
「ヒカル・クロダだ」
「アインハルト・ストラトスです」
ふたりは短い挨拶を交わし、コーナーに戻る。
『それではインターミドル地区予選、開始!』
その言葉に盛り上がり、騒ぎ、沸き立つ観客。しかし、アインハルトとヒカル・クロダは静かにリングの上で己の信ずる心血を注ぎ、自ら鍛え上げてきた流派の構えを取る。
「(両手を高く構えている。クロダ選手はボクシングを使うのでしょうか)」
ジリジリと間合いを詰めるアインハルトに対し、ヒカル・クロダは開手のままアップライトに構えて、トッ、トッ、と小刻みにステップを踏んでいる。
「シィッ!!」
二人の間合いが重なった瞬間、即座にヒカル・クロダは左手を開手のまま、熊手や掌低に類する手の形で拳を突き出す。だが、アインハルトも瞬時に対応し、紙一重で両手を交差するように、ヒカル・クロダの突きを防御する。
「ぐっ、コレはッ!?」
ミシミシッ、と骨が軋み、悲鳴を上げる。
このまま受けるのは不味いと判断したアインハルトは、くるりと身体を翻し、回転肘打ちをヒカル・クロダの後頭部に打ち込みながら彼女の背後に回り込んだ。
「今のはリンジさん、いえ、灘神影流の…」
ズキズキと骨を砕かれたのかと錯覚するほど痛む両手の損傷をアスティオンを通してアインハルトは確かめつつ、ヒカル・クロダの攻撃の正体を口にする。
「…灘神影流?お前、ミヤザワの知り合いか?」
ピタリと動きを止めるヒカル・クロダに、アインハルトは静かに頷いて応える。暫く沈黙した後、彼女は深い溜め息を吐きながら「リンジの知り合いってわけね」と一人だけ納得し、また構える。
アスティオンは「にゃーっ!」と愛らしく雄叫びを上げ、アインハルトの両腕の損傷を回復していく。しかし、敵の治癒を待つほどヒカル・クロダは甘くない。
「しゃあらあっ!」
ボッ、ボボッ!、と風を貫く音。
ヒカル・クロダの鋭い抜き手を紙一重で躱すアインハルトだったが、次第に肩口や後ろ髪に抜き手が掠り、凛々しく可憐な彼女の顔に、だんだんと焦りの感情だ浮かび始めている。
「覇王流〝破城槌・踏鞴〟っ!!」
アインハルトは強烈無比な踏み込みでリング台を踏み砕き、円運動を用いて練り上げた震脚の衝撃を肩口・背中を砲身に準えて、凄まじい破壊力を持った体当たり──中国拳法で云う〝貼山靠〟をアインハルトは、無防備に胴体をさらけ出していたヒカル・クロダに叩きつける。
イビツな衝突音、石壁の砕ける轟音が響く。
『こ、これは凄まじい一撃!流石のクロダ選手も敗北してしまうのか!?』と実況を行うアナウンサーの声を聴きつつ、ようやく治癒の終わった両腕の感覚を確かめるアインハルト。
「クロダ選手、大して怪我していないでしょう。早くリングに上がって下さい」
くいくいっ、とアインハルトは挑発するように土煙で何も見えない観客席の真下、リングを囲うように円形の壁に向かって手招きをする。
「あら、気がついてたのね。随分と用心深い」
「えぇ、用心深くもなります。灘神影流の使い手はしぶとい。何故なら彼氏が必殺の一撃を放っても倒れないので、私は学習したんです。殺るなら全力で殺る…!」
「貴女、顔に似合わず物騒ね。あと彼氏って、あなた中等部よね?」
「乙女の成長は早いんです」
「……それもそうね」
そうヒカル・クロダが話を区切った次の瞬間、アインハルトがリングに戻ってきた彼女に駆け出し、
「しゃあっ!灘心陽流〝破心掌〟っ!!」
そう奥義の名を叫ぶヒカル・クロダは爪先より生じるエネルギーを手のひらに集束し、全体重を乗せた強烈な掌低でアインハルトの胸部に放つ。
「残念ですが、効いていません」
そう悲しそうに呟いたアインハルトはゆっくりと片手を持ち上げ、一気に手刀を振り下ろす。
それは、かつてリンジやヴィヴィオと仕合う際に用いた〈
『しょ、勝者、アインハルト・ストラトス!!』
〈ヒカル・クロダ〉
阿修羅の異名を持つ選手