なにやら息子が鮮烈(ヴィヴィッド)しまくってる女の子を拾って「私は恋人ですから!」と叫ばれている件。お母さん、ちょっと分からないわ 作:SUN'S
ミッドチルダ首都、インターミドル地区予選会場。
リンジ・ミヤザワは奢らされたポップコーンを美味しそうに頬張っているジークリンデ・エレミアの隣の座席に腰掛け、十代最強の格闘技者を目指している友人の女の子達を見守っている。
「リンジ君のオススメとか居るん?」
そう訊ねるジークリンデ。
「イングヴァルトだ」
リンジは適当にはぐらかすことなく、ごく当たり前のようにアインハルトの名前を告げる。
しかし、なぜか質問をしたはずのジークリンデは詰まらなさそうに「フーン、やっぱり覇王なんか」と呟き、独特の構えと動き、そして足技を多用する格闘技者と試合をしているアインハルトを見下ろす。
ふたりの実力は拮抗し、紙一重の攻防にも見えるけれど。実際は大人に近い体格に魔力を編成するアインハルトの〝武装形態〟と互角に渡り合えている相手の選手の方が少しばかり実力は上と言える。
「おっ、相手の選手もやるで」
鋭く疾い右の上段回し蹴りを受け、僅かに身体を傾けるアインハルトの腹部に向かって、強烈な後ろ回し蹴り、あるいはローリングソバットの様にも見えるキックを叩き込み、彼女をリング外に吹き飛ばす。
が、アインハルトは身体を翻し、着地すると同時にリングに向かって走り、そのまま相手の選手へと錐揉み回転を加えた両足の飛び蹴り──ドロップキックを放つ。
古流武術とは?と考えるのも束の間、リングを転がる選手は腹部を蹴られ、えげつない量の血を吐きながら宙に舞い上がり、アインハルトの〝覇王断空拳〟によって試合は終了する。
その強さは正しく覇王の如く。
リンジはアインハルトの成長に感心しているが、ジークリンデは自分を睨み付ける彼女に対抗するように睨み返し、互いに魔力と闘気を昂らせる。
「ジーク、何をしているんです」
「あうっ、何するんよ。ヴィクター」
ごすっ、と頭を叩かれたジークリンデは抗議するように自分の頭を叩いた金髪の美少女───ヴィクトーリア・ダールグリュンに文句を言った。しかし、すぐに「貴女が子供相手に魔力を昂らせるからですわ」と切り返す。
「初めまして、リンジ・ミヤザワ」
「……誰だ?」
「ヴィクトーリア・ダールグリュン。非公式ではありますが、貴方と試合したというエドガーの主人をしている者です」
「そうか」
ジークリンデはリンジとエドガーが試合したという事実に困惑しながらヴィクトーリアの後ろに控えている細目で何を考えているのか全く分からない凄腕の執事エドガーに視線を向けると。
彼もジークリンデの視線に気がついたのか。ゆっくりと人差し指を口許に添えて、しーっと内緒ですよ?と言う風にジェスチャーを彼女に送る。
「お久しぶりですね、ミヤザワ」
「久しぶりだな、エドガー」
ヴィクトーリアの後ろ越しに話し掛けるエドガーに片手を持ち上げ、軽く挨拶を返したリンジは「次は何時やる?」と更に言葉を続ける。
その発言に出会ってまだ数週間程度の間柄だが、ジークリンデは驚きの表情を見せる。
旧友、あるいは好敵手の関係かもしれない二人の会話に、ただ彼の家に押し掛けてスパーリング相手を務めている自分と比較してしまったのだ。
〈ヴィクトーリア・ダールグリュン〉
雷帝の血族
ジークリンデ・エレミアと親しく良きライバルとして交流を深めている。男性最強の格闘技者リンジ・ミヤザワと試合したという経験を持つ執事エドガーを連れているが、その試合は非公式であり勝敗について知っている者は一人としていない。