なにやら息子が鮮烈(ヴィヴィッド)しまくってる女の子を拾って「私は恋人ですから!」と叫ばれている件。お母さん、ちょっと分からないわ 作:SUN'S
リンジ・ミヤザワ氏───。
今まで御教授して頂いた高名な格闘技者の全ての人が彼の名前を必ず発し、私と戦ってくれた格闘技者の誰もが「覇王イングヴァルト、お前は絶対にミヤザワには勝てないっ!!」と言う。
しかし、その言葉はウソではなかった。
彼のジョギングルートを知っている人に聞き、彼と戦って私は彼にダメージを与えることすら出来ず、まともに打ち合ってすら貰えずに敗北した。けれど、悔しかったというより、どこか清々しい気持ちに、人は彼処まで強くなれるのかと私は歓喜してしまった。
「アインハルトさん、よろしくお願いします!」
ふと私の名前を呼ぶ声に意識が戻る。
「はい。こちらこそ」
ああ、そうです、そうでした。
今はノーヴェさんの「退屈はさせないよ」という言葉を信じて、彼女の教え子さんと練習試合を行うですよね。最近は本当にリンジさんのことばかり、ずっと考えてしまいます。
「行きます!」
そう高町ヴィヴィオさんは宣言し、軽やかなステップを踏み、私の懐に潜り込んでくるなり。びゅおっ、と鋭い風切り音と共に、前髪の毛先が僅かに切れる。
「(…鋭い一撃、随分と鍛えている!)」
きゅっ、きゅっ、とステップを踏み、軽快なフットワークで間合いを詰め、あるいは詰めるフリを織り混ぜるヴィヴィオさんの動き。その上で、あの刃物の如く鋭いパンチを放ってくる。
「ああ、面白いです、ヴィヴィオさん!」
「はあっ!」
捻りを加えた右ストレート。
わざと顔で受ける様に頬を差し出し、ゆっくりと顔を後ろに回転させ、そのまま身体を独楽のように回しながら裏拳を打ち返す。ごんっ、と鈍い音と一緒にヴィヴィオさんの頭が真横に吹き飛ぶ。
「覇王流───断空掌(仮)っ!」
呻き声を漏らすヴィヴィオさんの胸に両手を押し付け、爪先より生じる〝断空〟の衝撃を乗せて、リンジさん対策に思考錯誤中の技を掌打として放つ。
左右の異なる回転を加えた掌打はヴィヴィオさんの胸部を貫通し、彼女の身に纏っていたスポーツウェアの背部をくり貫いたように弾き飛ばす。
「あうっ」
どさり、と倒れ伏すヴィヴィオさん。やはりリンジさんのように一撃で倒すというのは難しいです。そんなことを考えながら私は倒れたヴィヴィオさんに向かう。
「よく鍛えています」
「ま、負けちゃいましたけど」
「一度の敗北など然したるものではありませんよ。少なくとも私はヴィヴィオさんと闘う以前に二度負けています。ひとりは貴女の先生であるノーヴェさんですし」
「えっ、そうなの!?」
私の発した言葉に驚きの反応を露にしたヴィヴィオさんは物凄い勢いでノーヴェさんのところに走ろうとし、また、地面に倒れてしまいました。
「まずはダメージを抜きましょう」
そう言って私は彼女に手を差し出す。
〈覇王流〉
ベルカ古流武術
古代ベルカにて『覇王』イングヴァルトの編み出した徒手格闘を旨とする戦闘技術。ありとあらゆる局面に対応・対策を講じており、現在はアインハルト・ストラトスに受け継がれている。